説明

床材用化粧シート及びその製造方法

【課題】ポリプロピレン樹脂層である合成樹脂層(バッカー層)と装飾シート(化粧シート中間体)とを接着してなる床材用化粧シートであって、簡便な方法によって得られ、しかもバッカー層と装飾シートが十分に接着されている床材用化粧シート及びその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】基材シートの表面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートであって、
(1)前記基材シート及び前記合成樹脂層は、いずれもポリプロピレン樹脂を含有し、
(2)前記床材用化粧シートは、前記化粧シート中間体と前記合成樹脂層とを熱ラミネートすることにより得られる、床材用化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材用化粧シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂を用いた床材用化粧シートとしては、例えば、特許文献1及び2において、ポリオレフィン系樹脂からなる厚手の合成樹脂層(いわゆるバッカー層)上に装飾シートを積層したものが開示されている。かかる床材用化粧シートは、バッカー層を各種被着材に貼着して床用化粧材とされる。なお、バッカー層は床材用化粧シートに硬度、強度等を付与するために設けられる厚手の合成樹脂層(補強層)である。
【0003】
従来、バッカー層を有する上記床材用化粧シートは、ドライラミネーション等によって装飾シート裏面にバッカー層を貼り付けることにより製造されているが、このような製造方法においては接着剤の配合や粘度調整などの作業に時間を要し、且つ、貼り合わせ後に硬化反応を待つために養生時間を要するという問題がある。更にドライラミネーションによる場合には、接着性が十分でない場合もある。なお、接着性を高めるために、接着面にプライマー層を更に積層する試みがあるが、これは生産工程をより長時間化する。
【0004】
従って、簡便な方法によって製造でき、しかもバッカー層と装飾シートとが十分に接着されている床材用化粧シートの開発が望まれている。
【特許文献1】特開平8−13740号公報
【特許文献2】特開平8−1883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリプロピレン樹脂層である合成樹脂層(バッカー層)と装飾シート(化粧シート中間体)とを接着してなる床材用化粧シートであって、簡便な方法によって得られ、しかもバッカー層と装飾シートが十分に接着されている床材用化粧シート及びその簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、装飾シートの基材と合成樹脂層にポリプロピレン樹脂を含有させ、更に装飾シートと合成樹脂層とを熱ラミネートによって接着させる場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の床材用化粧シート及びその製造方法に関する。
1. 基材シートの表面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートであって、
(1)前記基材シート及び前記合成樹脂層は、いずれもポリプロピレン樹脂を含有し、
(2)前記床材用化粧シートは、前記化粧シート中間体と前記合成樹脂層とを熱ラミネートすることにより得られる、床材用化粧シート。
2. 化粧シート中間体は、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有する、上記項1に記載の床材用化粧シート。
3. 基材シートと絵柄模様層との間に、更に着色隠蔽層が形成されている、上記項2に記載の床材用化粧シート。
4. 透明性表面保護層のおもて面からエンボス加工が施されている、上記項2又は3に記載の床材用化粧シート。
5. 前記基材シートは、当該基材シートを幅5mm、長さ10mm、厚さ0.06mmの形状にしたものを試料とし、JIS K0129(TMA:熱機械分析)の規定に従って、前記試料の長さ方向に5gfの引張り荷重をかけながら前記試料の温度を5℃/minの速度で30〜180℃まで推移させた場合に、前記試料が長さ方向に1.7mm延伸した時の温度が140℃以下である、上記項1〜4のいずれかに記載の床材用化粧シート。
6. 基材シートの表面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートの製造方法であって、
(1)前記基材シート及び前記合成樹脂層は、いずれもポリプロピレン樹脂を含有し、
(2)前記化粧シート中間体の基材シートと前記合成樹脂層とを熱ラミネートすることにより接着する、製造方法。
7. 前記基材シートは、当該基材シートを幅5mm、長さ10mm、厚さ0.06mmの形状にしたものを試料とし、JIS K0129(TMA:熱機械分析)の規定に従って、前記試料の長さ方向に5gfの引張り荷重をかけながら前記試料の温度を5℃/minの速度で30〜180℃まで推移させた場合に、前記試料が長さ方向に1.7mm延伸した時の温度が140℃以下である、上記項6に記載の製造方法。
8. 上記項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シートにおける合成樹脂層の裏面と被着材とを貼着してなる床用化粧材。
【0008】
以下、本発明の床材用化粧シート及びその製造方法について説明する。
【0009】
床材用化粧シート
本発明の床材用化粧シートは、基材シートの表面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層(バッカー層)とを有する床材用化粧シートであって、
(1)前記基材シート及び前記合成樹脂層は、いずれもポリプロピレン樹脂を含有し、
(2)前記床材用化粧シートは、前記化粧シート中間体と前記合成樹脂層とを熱ラミネートすることにより得られる。
【0010】
上記特徴を有する本発明の床材用化粧シートは、基材シート及びバッカー層がポリプロピレン樹脂を含有しているため、両者は熱ラミネートによって強固に接着する。このため、ドライラミネートと比べて簡便な熱ラミネートによって十分な接着強度が得られる。
【0011】
(合成樹脂層)
本発明の床材用化粧シートは、基材シートの裏面に厚さ150μm以上の合成樹脂層(いわゆるバッカー層)を有する。
【0012】
バッカー層は、ポリプロピレン樹脂を含有する。ポリプロピレン樹脂としては、ポリプロピレンを主成分とする単独重合体だけでなく、共重合体であってもよい。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。その他、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も挙げられる。
【0013】
バッカー層は、2層以上の積層体であってもよい。例えば、ポリプロピレン樹脂層を2層以上積層したものでもよい。
【0014】
バッカー層の厚さは150μm以上であればよく、250〜400μm程度が好ましい。
【0015】
バッカー層は、例えば、溶融樹脂の押出しによって容易に形成できる。同時押出し法を用いる場合には、積層体からなるバッカー層も容易に形成できる。同時押出し製膜には、例えば、マルチマニホールドタイプやフィードブロックタイプのTダイを使用できる。
【0016】
(化粧シート中間体)
化粧シート中間体は、ポリプロピレン樹脂を含有する基材シートの表面に1又は2以上の層が積層されている。
【0017】
化粧シート中間体としては、例えば、基材シート上に少なくとも絵柄模様層、接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を有し、透明性表面保護層が最表面層である層構成が好ましい実施態様として挙げられる。化粧シートの最表面層には、エンボス加工によって凹凸模様が付与されてもよい。
【0018】
各層の形成方法は限定的でなく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、転写印刷等の印刷;スプレー、ローラー、刷毛等の塗布;シート状物等の成形体を積層等のいずれも採用することができる。これらの方法の中から、各層の特性、原料等に応じて適宜組み合わせて選択すれば良い。
【0019】
各層の厚みは限定的でなく、最終製品の用途、特性等に応じて適宜決定できる。通常は0.1〜500μm程度の範囲内とできる。
【0020】
以下、上記の実施態様を代表例として各層について説明する。
【0021】
≪基材シート≫
基材シートは、その表面(おもて面)には絵柄模様層等が順次積層される。
【0022】
基材シートとしては、ポリプロピレン樹脂を含有するものを用いる。ポリプロピレン樹脂としては、ポリプロピレンを主成分とする単独重合体だけでなく、共重合体であってもよい。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。その他、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も挙げられる。
【0023】
基材シートは、10〜60重量%程度(好ましくは20〜40重量%程度)の熱可塑性エラストマー成分を含有することが好ましい。これにより、基材シートと合成樹脂層との接着性をより高めることができる。
【0024】
基材シートは、当該基材シートを幅5mm、長さ(=チャック間距離)10mm、厚さ0.06mmの形状にしたものを試料とし、JIS K0129(TMA:熱機械分析)の規定に従って、前記試料の長さ方向に5gfの引張り荷重をかけながら前記試料の温度を5℃/minの速度で30〜180℃まで推移(30℃を始点とし前記速度で180℃まで昇温)させた場合に、前記試料が長さ方向に1.7mm延伸した時の温度が140℃以下であるものが好ましい。この中でも、130〜140℃がより好ましく、下限値は120℃程度である。上記温度が140℃を超えると、却って熱ラミネート特性が悪くなるおそれがある。なお、上記熱機械分析に供する試料は、110℃程度の温度で十分に熱乾燥させたものを用いる。
【0025】
上記温度特性を具備する場合には、特に基材シートとバッカー層との接着強度を高めることができる。
【0026】
基材シートは、着色されていても良い。その場合は、着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0027】
基材シートを着色する場合には、基材シートを3層構成とし、中間層に着色剤を含有させる態様とすることにより、基材シートとバッカー層とを熱ラミネートする際の接着強度をより向上させることができるとともに、汚染防止にも寄与する。
【0028】
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0029】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には50〜250μmが好ましい。
【0030】
基材シートは、必要に応じて、絵柄層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。
【0031】
≪絵柄模様層(絵柄層)≫
絵柄層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0032】
絵柄層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。
【0033】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0034】
結着材樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。
【0035】
より具体的には、例えば、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等を使用できる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性又は混合樹脂、その他の樹脂も使用できる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0036】
絵柄層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等がある。また、基材シートと絵柄層との間に全面ベタ状の着色層(着色隠蔽層とも言う)を更に形成する場合には、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。
【0037】
上記以外にも、例えば、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0038】
絵柄層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。着色隠蔽層の乾燥後の膜厚としても0.1〜10μm程度が好ましい。
【0039】
≪接着剤層≫
接着剤層は、絵柄層と透明性樹脂層との間に存在する。接着剤層で使用する接着剤は、絵柄層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等を含む各種接着剤を使用できる。また、反応硬化タイプのほか、ホットメルトタイプ、電離放射線硬化タイプ、紫外線硬化タイプ等の接着剤でもよい。
【0040】
なお、本発明では、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって絵柄層と透明性樹脂層とを積層することもできる。
【0041】
接着剤層は、絵柄層が認識できる限り、透明でも半透明でもよい。
【0042】
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0043】
接着剤層の厚みは、透明性樹脂層、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0044】
≪透明性樹脂層≫
透明性樹脂層は透明である限り着色されていてもよく、絵柄層が視認できる範囲内で半透明であってもよい。
【0045】
上記樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。より好ましくは、立体規則性を有するポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、溶融ポリオレフィン系樹脂を押し出し法により透明性樹脂層を形成することが望ましい。
【0046】
透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0047】
透明性樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般的には10〜150μm程度とする。
【0048】
≪透明性表面保護層≫
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層が形成されている。透明性表面保護層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により透明性表面保護層を形成する場合には、化粧シートの耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【0049】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0050】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0051】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
【0052】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0054】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0055】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0056】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0057】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0058】
これらの透明性表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等を含んでもよい。
【0059】
透明性表面保護層は、例えば、透明性樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電子線照射により樹脂硬化する。
【0060】
透明性表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0061】
≪エンボス加工≫
化粧シート中間体は、透明性表面保護層側からエンボス加工されていてもよい。さらには、エンボス加工による凹部にインキを充填するワイピング加工を施し、その表面を2液硬化型ウレタン系樹脂で被覆(オーバーコート処理)するのが好ましい。
【0062】
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチァーを付与するために行う。例えば、加熱ドラム上で透明性表面保護層を加熱軟化させた後、さらに赤外線輻射ヒーターで140〜170℃に加熱し、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。
【0063】
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
【0064】
ワイピング加工は、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する加工である。ワイピングインキとしては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。ワイピング加工では、特に木目導管溝凹凸に対して行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
【0065】
本発明では、透明性表面保護層中に他の成分が含まれていても良い。例えば、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、光安定剤、ツヤ調整剤、ブロッキング防止剤、滑剤等の添加剤を配合できる。
【0066】
床材用化粧シートの製造方法
上記床材用化粧シートは、特に化粧シート中間体の基材シートとバッカー層とを熱ラミネートによって接着することにより製造する。基材シートとバッカー層は、いずれもポリプロピレンを含有するため、熱ラミネートによって十分に密着させることができる。基材シート及びバッカー層の説明については、前記の通りである。
【0067】
熱ラミネートの条件は両者が接着する限り特に限定されない。例えば、バッカー層を150〜300℃程度(好ましくは240〜280℃程度)に加熱し、そこに化粧シート中間体(基材シート側)を密着させることにより熱ラミネートする。
【0068】
また、バッカー層を溶融押出しにより基材シート裏面に直接製膜する方法によって熱ラミネートしてもよい。この場合には、溶融押出しに供されるポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は2〜20g/10分(230℃押出し)が好ましく、2〜15g/10分がより好ましい。なお、上記MFRはJIS−K7210の方法により測定した値である。
【0069】
床用化粧材
本発明の床材用化粧シートは、各種被着材と接合することにより、床用化粧材とできる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
【0070】
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。
【0071】
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。
【0072】
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
【0073】
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料からなる単板又は合板が挙げられる。また、前記の樹脂を発泡させた発泡樹脂材料も使用できる。このようなプラスチック系材料は、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー等の無機充填剤を含んでもよい。
【0074】
このような被着体の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0075】
被着材と接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【発明の効果】
【0076】
本発明の床材用化粧シートは、基材シート及びバッカー層がポリプロピレン樹脂を含有しているため、両者は熱ラミネートによって強固に接着する。このため、ドライラミネートと比べて簡便な熱ラミネートによって十分な接着強度が得られる。特に接着剤の塗布やプライマー層の形成などを省略できる点で優位性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0078】
実施例1
(床材用化粧シートの作製)
0.06mm厚の着色ポリプロピレン(基材シート)を用意した。基材シートの上に、絵柄模様層(2μm)を印刷により形成した。次に、絵柄模様層の上に0.08mm厚の透明性ポリプロピレン系樹脂フィルム(透明性樹脂層)を、ウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いて接着した。透明性接着剤層の厚さは3μmであった。次に、透明性樹脂層の上に電子線硬化型透明性表面保護層(15μm)を形成した。次に、透明性表面保護層側からエンボス加工を施して化粧シート中間体を作製した。エンボス加工では、深さ30μm程度の木目導管模様を付与した。
【0079】
最後に260℃で溶融した樹脂(2種3層)を同時押出し製膜することによりバッカー層を得、そこに化粧シート中間体の基材シート側を載せて、熱ラミネートにより両者を接着した。バッカー層は、ホモポリプロピレン30μm(MFR:6g/10分)/ホモポリプロピレン190μm(MFR:2g/10分)/ホモポリプロピレン30μm(MFR:6g/10分)から形成される積層体とした。
(床用化粧材の作製)
作製した床材用化粧シートの裏面(バッカー層側)に12mmラワン合板を貼着して床用化粧材を作製した。貼着にはウレタン変性エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン接着剤(9g/尺wet)を利用した。
【0080】
比較例1
化粧シート中間体とバッカー層との接着を熱ラミネートではなく、ドライラミネートによって行った以外は、実施例1と同様にして床用化粧材を作製した。バッカー層は、予め作製しておき、常温となったものを使用した。
【0081】
ドライラミネートに用いた接着剤は2液性の熱硬化型ウレタン系接着剤であり、塗布量は約2g/mとした。
【0082】
試験例1
実施例及び比較例で作製した床用化粧材の基材シートとバッカー層との層間強度を測定及び評価した。
【0083】
層間強度は、JIS−K6854に準拠して測定した。具体的には、床用化粧材の化粧シート側に25mm幅の切り込みを入れ、前記JISの規定に従って基材シートとバッカー層との間で剥離させることにより、常態強度と湿熱試験後の強度とを調べた。湿熱試験の条件は、温度80℃,湿度90%の条件下で床用化粧材を200時間放置することとした。結果を下記表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1から明らかなように、ドライラミネートによって接着した従来品よりも、熱ラミネートにより接着した本発明の床用化粧材の方が、基材シートとバッカー層との層間強度が高いことが分かる。特にドライラミネート品では湿熱試験による強度低下が顕著であるが、熱ラミネート品では、湿熱試験後も十分な層間強度を維持している。
【0086】
参考例1〜3
実施例1において、基材シートのTMA引張り特性を下記表2に示す通りに変えた場合の基材シートとバッカー層との層間強度(常態強度)を測定及び評価した。常態強度の測定方法は前記と同じである。なお、実施例1で用いた基材シートは、TMA引張り特性が138℃であった。
【0087】
【表2】

【0088】
上記TMA引張り特性は、基材シートを幅5mm、長さ10mm、厚さ0.06mmの形状にしたものを試料とし、JIS K0129(TMA:熱機械分析)の規定に従って、前記試料の長さ方向に5gfの引張り荷重をかけながら前記試料の温度を5℃/minの速度で30〜180℃まで推移させた場合に、前記試料が長さ方向に1.7mm延伸した時の温度である。なお、試料は110℃で十分に熱乾燥したものを用いた。
【0089】
表2の結果からは、TMA引張り特性が140℃以下の基材シートを用いることが層間強度の発現に有効であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの表面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートであって、
(1)前記基材シート及び前記合成樹脂層は、いずれもポリプロピレン樹脂を含有し、
(2)前記床材用化粧シートは、前記化粧シート中間体と前記合成樹脂層とを熱ラミネートすることにより得られる、床材用化粧シート。
【請求項2】
化粧シート中間体は、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有する、請求項1に記載の床材用化粧シート。
【請求項3】
基材シートと絵柄模様層との間に、更に着色隠蔽層が形成されている、請求項2に記載の床材用化粧シート。
【請求項4】
透明性表面保護層のおもて面からエンボス加工が施されている、請求項2又は3に記載の床材用化粧シート。
【請求項5】
前記基材シートは、当該基材シートを幅5mm、長さ10mm、厚さ0.06mmの形状にしたものを試料とし、JIS K0129(TMA:熱機械分析)の規定に従って、前記試料の長さ方向に5gfの引張り荷重をかけながら前記試料の温度を5℃/minの速度で30〜180℃まで推移させた場合に、前記試料が長さ方向に1.7mm延伸した時の温度が140℃以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の床材用化粧シート。
【請求項6】
基材シートの表面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートの製造方法であって、
(1)前記基材シート及び前記合成樹脂層は、いずれもポリプロピレン樹脂を含有し、
(2)前記化粧シート中間体の基材シートと前記合成樹脂層とを熱ラミネートすることにより接着する、製造方法。
【請求項7】
前記基材シートは、当該基材シートを幅5mm、長さ10mm、厚さ0.06mmの形状にしたものを試料とし、JIS K0129(TMA:熱機械分析)の規定に従って、前記試料の長さ方向に5gfの引張り荷重をかけながら前記試料の温度を5℃/minの速度で30〜180℃まで推移させた場合に、前記試料が長さ方向に1.7mm延伸した時の温度が140℃以下である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シートにおける合成樹脂層の裏面と被着材とを貼着してなる床用化粧材。

【公開番号】特開2008−274738(P2008−274738A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252422(P2007−252422)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】