説明

床被覆材とそれを用いた床構造

【課題】床面だけでなく排水溝までも被覆することが可能で、美観や防水性、施工性が極めて良好な床被覆材を提供する。
【解決手段】長尺の床被覆材1であって、軟質ないし半硬質の熱可塑性樹脂で形成された領域Aと、領域Aよりも柔軟性が高い領域Bとからなり、領域Bが領域Aの端辺に帯状に一体に設けられた構成とする。柔軟性が高い領域Bを領域Aの端辺に帯状に一体に設けることで、排水溝6のような複雑な地形でも被覆することができ、従来のように、床面の排水溝側にある被覆材端縁をシール剤5によってシーリング処理することが不要となり、水が滞溜することがなくなって美観が向上すると共に、施工時間や労力を大幅に軽減することができる。耐引き裂き性、寸法安定性が求められる床面Fは、領域Aによって被覆すれば、強度や耐久性を充分に確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にバルコニーや集合住宅の屋外共用廊下などの床面を被覆する床被覆材とそれを用いた床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下などは、美観の向上、コンクリート躯体の漏水防止、歩行音の低減、転倒時の衝撃緩和などを目的とし、その床面を床シートで被覆するようになってきている。
【0003】
かかる床面を被覆する床シートは、耐引き裂き性、寸法安定性を向上させるために、硬質塩化ビニルシートの上層部と軟質塩化ビニルシートの下層部からなる二層構造の防水シートなどが用いられることが多い(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記のような二層構造の防水シートは、耐引き裂き性、寸法安定性に優れる反面、柔軟性に乏しいため、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床面などを被覆しようとすると、特にシート端縁の処理が難しく、施工性がよくないという問題があった。
【0005】
即ち、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床面に防水シートを貼着するだけでは、シート端縁から水が浸入してコンクリート躯体を濡らしてしまう恐れが生じる。コンクリート躯体が水で濡れてしまうと、モルタルが中性化されたり、鉄骨の錆を誘発したりする不具合が生じるので、通常、図8に示すように、防水シート100の端縁はシール剤5によってシーリング処理が施されている。
【0006】
バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床面Fは、床面Fの水が排水溝6に導かれるように1/200〜3/100程度の水勾配が付与されているが、上記のように、防水シート100の端縁をシール剤5によってシーリングすると、そのシール剤5が堰のような働きをして、水勾配に沿って流れてきた水を堰止めて滞溜させてしまうので、床面Fがなかなか乾かず、美観上好ましくないばかりか、歩行者が滑って転倒する恐れもある。
【0007】
また、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床面Fと同様に、排水溝6にも防水処理を施すことが一般的になってきているが、上記二層構造の防水シート100は、前述したように柔軟性に乏しく、排水溝6のような複雑な地形を被覆することができないため、図8に示すように、床面Fの排水溝6側の端部から排水溝6内面に塗膜防水層101を形成することで対応していた。
【0008】
しかしながら、この塗膜防水層101は、耐久性を向上させるために、何層(通常、三層程度)も形成する必要があり、一層毎に硬化乾燥させる時間を要するので、施工に時間がかかるという問題があった。また、塗膜防水層101を形成する業者と防水シート100を敷設する業者は別業者であることが大半であり、施工性やコストの観点からも好ましいものとはいえなかった。
【0009】
一方、排水溝とは反対の壁側(居室側)のシート端縁を処理する際も、上記のような二層構造の防水シート100は柔軟性に乏しく、特に、バルコニーの出入隅の処理が困難なため、出入隅の形状に沿うように形成された耐水綱板と、該耐水綱板を被覆する軟質樹脂製の防水シートと、出入隅に固定される軟質樹脂製の出入隅カバーを用いて処理を施すことが多い(特許文献2)。
【0010】
このような方法でバルコニーの出入隅を処理すると、別途、耐水綱板、軟質樹脂製の防水シート、軟質樹脂製の出入隅カバーなどの部材が必要となり、施工が面倒なだけでなく、コストが嵩んでしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平06−000738号公報
【特許文献2】特開2001−040831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、床面だけでなく排水溝までも被覆することが可能で、美観や防水性、施工性が極めて良好な床被覆材とそれを用いた床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る床被覆材は、長尺の床被覆材であって、軟質ないし半硬質の熱可塑性樹脂で形成された領域Aと、上記領域Aよりも柔軟性が高い領域Bとからなり、上記領域Bが上記領域Aの端辺に帯状に一体に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の床被覆材においては、上記の床被覆材において、上記領域Aが床面を覆う領域であり、上記領域Bが床面の排水溝側の端部から排水溝内面の一部又は全部を覆う領域であることが好ましい。また、上記領域Aの中間又は裏面に繊維層を積層したことが好ましく、上記領域Bの肉厚が上記領域Aの肉厚と同じ若しくは薄いことがより好ましい。
【0015】
そして、本発明の床構造は、前述した構成の床被覆材を用いた床構造であって、床被覆材の領域Aで床面を覆うと共に、床被覆材の領域Bで床面の排水溝側の端部から排水溝内面の一部又は全部を覆ったことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の床被覆材は、軟質ないし半硬質の熱可塑性樹脂で形成された領域Aよりも柔軟性が高い領域Bを、領域Aの端辺に帯状に一体に設けることで、例えば排水溝のような複雑な地形でも、その柔軟性が高い領域Bによって被覆することができる。従って、従来のように、床面の排水溝側にある被覆材端縁をシール剤によってシーリング処理することが不要となり、加えて塗膜防水層を形成する必要もなくなるので、水が滞溜することがなくなって美観が向上すると共に、施工時間や労力を大幅に軽減することができる。このように排水溝のような複雑な地形は領域Bによって被覆する一方、耐引き裂き性、寸法安定性が求められるバルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床面は、領域Aによって被覆すれば、強度や耐久性を充分に確保することができる。このように本発明の床被覆材は、排水溝と床面を一枚の被覆材で一体的に被覆できるため、従来の問題点を一挙に解決することができる。
【0017】
特に、上記構成の床被覆材において、領域Aが床面を覆う領域であり、領域Bが床面の排水溝側の端部から排水溝内面の一部又は全部を覆う領域である床被覆材は、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床面及び排水溝を被覆するのに最適な被覆材である。
【0018】
また、上記領域Aの中間又は裏面に繊維層を積層した床被覆材は、繊維層を領域Aの中間又は裏面に積層することで、領域Aの耐引き裂き性、寸法安定性、耐久性が向上すると共に、床面の美観も向上する。
【0019】
更に、上記領域Bの肉厚が上記領域Aの肉厚と同じ若しくは薄い床被覆材は、領域Bの肉厚を領域Aの肉厚と同じ若しくは薄くすることで、領域Bの柔軟性がより一層向上して施工性が極めて良好となり、また、水勾配に沿って導かれてきた水の流下を妨げることもなくなる。
尚、ここでいう肉厚とは、例えば、領域Aに防滑性を向上させるための突起などが形成されていた場合であっても、その突起の高さは含まず、突起を除いた被覆材単体での厚みのことをいう。
【0020】
そして、本発明の床構造は、前述したような優れた作用効果を奏する床被覆材を用いて、床面だけでなく排水溝までも一枚の被覆材で被覆するので、美観や防水性が極めて高く、特に、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床面に好適に施工される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る床被覆材を示す斜視図である。
【図2】同被覆材を用いた本発明の一実施形態に係る床構造の断面図である。
【図3】同被覆材の部分断面図である。
【図4】同被覆材を用いた本発明の他の実施形態に係る床構造の断面図である。
【図5】同被覆材を用いた本発明の更に他の実施形態に係る床構造の断面図である。
【図6】同被覆材の突起についての説明図である。
【図7】同被覆材のB領域に付した導水補助溝の説明図である。
【図8】従来の床構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0023】
図1、図2に示す本発明の床被覆材1は、主にバルコニーや集合住宅の屋外共用廊下など、床面Fと共に排水溝6をも同時に被覆できる長尺の被覆材であって、軟質ないし半硬質の熱可塑性樹脂で形成された領域Aと、この領域Aの端辺に帯状に一体に設けられた、領域Aよりも柔軟性が高い領域Bとからなる。
【0024】
上記床被覆材1の領域Aは、図2に示すように、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下など床面Fを被覆するための領域であり、その上を歩行者が歩いたりするので、耐引き裂き性、寸法安定性、耐久性が求められる。従って、それ相応の強度が求められる領域であり、具体的には、10%モジュラスが1〜5N/mmの範囲内であることが好ましく、本実施形態では、10%モジュラスが2N/mm程度となっている。
【0025】
一方、上記床被覆材1の領域Bは、図2に示すように、床面Fの排水溝6側の端部から排水溝6の内面を被覆するための領域であり、排水溝6のような凹んだ形状にも隙間なく追従できる柔軟性が求められる。具体的には、10%モジュラスが0.3〜1.0N/mmの範囲内であることが好ましく、本実施形態では、10%モジュラスが0.5N/mm程度となっている。
【0026】
尚、上記の測定は、温度が20℃、引張り速度が20mm/分、試験片の一辺が10mmで厚みが1.5mm、ダンベル1号、チャック間の距離が70mmの条件で行った。
【0027】
このような領域Aと領域Bで柔軟性が異なる本発明の床被覆材1は、軟質塩化ビニル樹脂やオレフィン系樹脂などの合成樹脂やゴムを用いて形成される。この際、領域Aと領域Bで柔軟性が異なるようにするには、種々の方法が考えられる。即ち、その一つに、領域Aと領域Bで柔軟性が異なる樹脂(領域Bのほうが柔らかい樹脂)を用いて形成する方法がある。このように領域Aと領域Bで異なる樹脂を用いる場合は、互いに熱融着性の高い樹脂で形成することに留意する必要がある。
【0028】
また、領域Aと領域Bを同一組成の樹脂で形成しても、その硬軟の性能を付与することができる。即ち、領域Aよりも領域Bに多くの可塑剤を添加することによって、領域Bの柔軟性を領域Aより高めることができる。
【0029】
また、領域Aと領域Bを同一組成の樹脂で形成したうえで、領域Aの中間又は裏面に同種又は異種の合成樹脂等であって、比較的柔軟性が低く、強度の優れた層を積層してもよい。更に、同一組成の樹脂で形成する場合、領域Aの中間に、織布や不織布等の繊維層2を積層することで、領域Aの耐引き裂き性、寸法安定性、耐久性を向上させて、領域Aよりも領域Bのほうの柔軟性が高くなるようにすることもできる。
【0030】
即ち、本実施形態の床被覆材1の領域Aの中間には、耐引き裂き性、寸法安定性を向上させるための繊維層2が積層されている。この繊維層2としては、ガラス繊維、ポリエステル、オレフィンなどの合成樹脂繊維、麻などの天然繊維が好適に用いられ、このように領域Aの中間に繊維層2を積層することで、耐引き裂き性、寸法安定性がより一層向上すると共に、床被覆材1の耐久性も向上する。勿論、領域Aと領域Bを柔軟性が異なる樹脂で形成する、或いは、領域Bに多くの可塑剤を添加すると共に、更に領域Aの中間に繊維層2を積層することで硬柔の差を付与してもよい。
尚、領域Aの裏面には、床面Fとの接着性を改善するなど、種々の目的のもとに、同種又は異種の合成樹脂等からなるバッカー層を形成してもよい。また、前記の繊維層2は領域Aの中間ではなく、その裏面に繊維層2を積層してもよい。
【0031】
このように本発明の床被覆材1は、領域Aと領域Bでその柔軟性が異なるように形成されたものであるが、更に、領域Bに排水溝6のような複雑な地形にも隙間なく追従できる柔軟性を付与するため、図3に示すように、領域Bの肉厚H2を領域Aの肉厚H1よりも薄くしている。領域Aの肉厚H1が1mmよりも薄いと、床面Fに被覆される被覆材として求められる耐引き裂き性、寸法安定性が確保できない。その逆に、5mmよりも領域Aの肉厚H1が厚いと、床被覆材1が重くなって施工性が悪くなり、コストも嵩んでしまうので、領域Aの肉厚H1は1〜5mm程度に設定することが好ましい。従って、上記を勘案して、領域Bの肉厚H2は、この領域Aの肉厚H1よりも薄い0.5〜3mm程度に設定されている。
尚、床被覆材1の領域Bは、排水溝6の形状に沿って被覆できるような柔軟性が求められる領域であるので、領域Bに繊維層2を積層することは好ましくないが、柔軟性を阻害しない範囲でなら、温度変化による伸縮を緩和して領域Bの寸法安定性を確保したり、床面Fとの接着性等を確保する目的で、領域Bの中間や裏面に寒冷紗等を積層してもよい。また、領域Bの裏面には、床面Fとの接着性を改善するなど、種々の目的のもとに、同種又は異種の合成樹脂等からなるバッカー層を形成してもよい。
【0032】
また、図1、図3に示すように、この床被覆材1の領域Aの表面には、防滑性を向上させるために、高さH3が0.1〜5mm程度の突起3が多数設けられている。この突起3を設ける際は、水勾配に沿って排水溝6へと導かれる水の流れを妨げないように、水下に向って流れやすくする配慮が必要である。具体的には、図6の(a),(b)に示すように、その形状は円柱形の突起3aであっても四角柱形の突起3b(多角注形も可)であってもいいし、この他にも円錐形や四角錐形(多角錐形も可)、截頭円錐形や截頭四角錐形(截頭多角錐形も可)など種々の形状が考えられる。また、その配列も特に限定されるものではなく、図6の(a),(b)に示すような規則的な配列でもよいし、水の流れを妨げないのであればランダムな配列でもよい。これら(a),(b)では、突起3aや突起3bの間を縫って、排水溝6に達する流水通路4が形成されるので、水の流れが阻害されることなく、スムーズに床被覆材1の領域A表面上を流下して排水溝6に排水することができる。ただし、この際、床被覆材1の表面に凹部を形成すると、水が凹部内に滞留するため、凹部を形成することは、できるだけ排除しなければならない。
【0033】
しかしながら、図6の(c)に示すように、水勾配に沿って排水溝6へと導かれる水を遮ってしまう、排水溝6と平行に設けられた凸条などの突起3cを設けること、即ち、排水溝6に達する流水通路4が形成されていない態様を採ることは不可である。また、流水通路4が形成されていたとしても、水勾配に沿って流れてきた水を滞溜させてしまうような形状(例えば、図6の(d)に示すような、壁側Wに相対向する凹部が形成された凹型の突起3dなど)も、流下しようとする水を滞溜させる原因となるので採用することはできない。
【0034】
そして、本発明の床被覆材1は、図1に示すように、領域Aの表面に、上記突起3のない箇所をある一定の間隔をあけて規則的(縦横方向)に設けることで流水通路4が形成されている。この流水通路4を形成することで、床面Fの水が排水溝6に導かれて床被覆材1の表面に滞溜しにくくなると共に、見た目にアクセントができるので意匠性が向上する。
【0035】
また、本発明の床被覆材1の領域Bに、図7に示すような導水補助溝7を設けてもよい。図7の(a)は、領域Bに導水補助溝7を設けた床被覆材1の斜視図で、図7の(b)は、その施工断面図である。このように領域Bの領域A側端縁よりある一定の長さで導水補助溝7を形成しておくことで、領域Bで床面Fの排水溝6側端縁から排水溝6内にかけて被覆すると、雨水等が領域Aから流下する際の導水路として機能し、雨水等を素早く、効果的に排水溝6内に導くことができるので、非常に好ましい。
尚、上記導水補助溝7は、領域Aの流水通路4の延長上に設けるのがより効果的である。また、導水補助溝7の長さは排水溝6の内壁の途中まで形成されるように設けることが好ましい。排水溝6の底面や底面近くまで導水補助溝7が達してしまうと、ゴミや埃が溜まるなどして排水溝6内を流下する排水に悪影響を及ぼすためである。
【0036】
以上のような構成の床被覆材1は、次のような製法で形成される。
即ち、バッカー層用の軟質塩化ビニル樹脂又はオレフィン系樹脂製のシートを支持ベルトの上に載置する。本発明の床被覆材1は、領域Aの中間に繊維層2を積層するので、まず領域Aの肉厚H1の半分のシートを載置し、その上に繊維層2を積層させて、更にその繊維層2の上にペレットを散布する。このとき柔軟性の異なる樹脂を用いて領域Aと領域Bの柔軟性の差を付与する場合は、領域Aと領域Bとの境界予定線の領域Bの側に柔軟性が高い樹脂のペレットを散布する。また、同一組成の樹脂で、添加する可塑剤の量によって領域Aと領域Bの硬柔の差を付与する場合は、境界予定線の領域Bの側のペレットに可塑剤を多く添加するようにすればよい。また、領域Aと領域Bの肉厚H1,H2が異なる(肉厚H1よりも肉厚H2が薄く)ように形成するには、高さの異なるペレットの掻き取り部(領域Aよりも領域Bの方が低い)を設置することで対応することができる。このようにペレットを支持ベルトに載せたまま加熱炉を通過させて、領域A内の各ペレットと領域B内の各ペレット、及び領域Aと領域Bとの境界にあるペレット同士を熱融着させてシーティングする。本発明の床被覆材1の表面に突起3を設ける必要があるので、加熱炉から出てきた床被覆材1にエンボスロールでエンボス加工して完成する。
本発明の床被覆材1は、上記製法で簡単に形成することができるが、従来の押出成形等によって形成してもよいことは言うまでもない。
【0037】
次に、前述した構成の床被覆材1を用いた本発明の床構造は、1/200〜3/100程度の水勾配(本実施形態では1/150)が付与されたバルコニーや屋外共用廊下の床面Fを、図2に示すように、床被覆材1の領域Aで被覆し、領域Bで床面Fの排水溝6側の端部からバルコニーや屋外共用廊下の屋外側に設けられた排水溝6内面の全部を被覆したものである。この床被覆材1によって被覆される床面Fは、コンクリート製の床下地に限定されるものではなく、モルタル製の床下地など、建築物に採用される一般的な床下地がいずれも適用可能である。
【0038】
床被覆材1を床面F及び排水溝6に貼着する接着剤(不図示)は、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、変成シリコーン系などの硬化型の床用接着剤やゴム系の床用接着剤等が使用される。特に、耐水性に優れたウレタン系やエポキシ系(2液混合型でも水分硬化型等の1液型でもよい)が好適に用いられる。
【0039】
上記のような接着剤で床面Fに貼着された床被覆材1の領域Aの壁側W(居室側)端縁は、図2に示すように、シール剤5によってシーリング処理が施されている。また、排水溝6内面を被覆する床被覆材1の領域Bの端縁も、排水溝6の屋外側上端でシール剤5によってシーリング処理されている。床被覆材1の端縁をシーリングするシール剤5は、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、変成シリコーン系や、床被覆材1との接着性がよいものが好適に用いられる。このように床被覆材1の端縁をシーリングすることによって、仕上がりが美麗になり、雨水等の浸入、床被覆材1の捲れ上がりを防止することができる。
尚、床被覆材1の領域Bによって被覆する排水溝6は、必ずしも内面の全部を被覆する必要はなく、図4に示すように、その内面の一部を被覆するだけでもよい。その際も、端部をシール剤5によってシーリング処理することに留意する。また、この場合、床被覆材1で被覆されない排水溝6の内面に、前述した塗膜防水層101を形成してもよい。
【0040】
この図2に示す床構造の施工方法は特に限定されるものではないが、次のような工程で施工すると、床被覆材1の領域A、領域Bの境目がずれたりすることなく、高精度で、且つ、容易に被覆することができる。
【0041】
まず、領域Aと領域Bの境目と、床面Fの排水溝6側の端縁の位置合わせをして割付を行う。次に、領域Aの排水溝6側の略半分に相当する床面Fに接着剤を塗布し、排水溝6側の領域Aを貼着して固定したのち、領域Aの残り半分(壁側W)に相当する床面Fに接着剤を塗布して領域Aの床被覆材1を貼着する。そして、排水溝6の内面に接着剤を塗布し、床被覆材1の領域Bを排水溝6の形状に沿うように貼着したのち、最後に、床被覆材1の端縁をシール剤5によってシーリング処理することによって施工が完了する。
【0042】
以上のような本発明の床構造は、柔軟性が異なる領域A、領域Bからなる床被覆材1を用いることで、床面Fと排水溝6を一枚の床被覆材1で一体的に被覆できるため、美観や防水性、施工性が極めて良好となり、特に、バルコニーや集合住宅の屋外共用廊下の床構造として最適である。
【0043】
上記床構造は、前述した床被覆材1を用いて構築されたものであるが、図5に示す床構造は、次に説明する床被覆材10を用いて構築されている。
【0044】
前述した床被覆材1は、柔軟性が高い領域Bが、領域Aの長さ方向の一端辺にのみ設けられていたのに対して、この床被覆材10は、柔軟性の高い領域Bが、領域Aの長さ方向の両端辺に設けられたものである。このように領域Aの両端辺に柔軟性の高い領域Bが設けられた床被覆材10は、領域Bの柔軟性が高いので、排水溝6の内面だけでなく、壁Wも床被覆材10の領域Bによって被覆(折り上げ施工)することができる。
【0045】
このように柔軟性が高い領域Bが、領域Aの両端辺に設けられた床被覆材10を用いた床構造は、寸法の汎用性(幅方向)はなくなるが、壁側Wの防水性が更に向上する。
【符号の説明】
【0046】
1,10 床被覆材
A 領域A
B 領域B
2 繊維層
3 突起
3a 突起(円柱形)
3b 突起(四角柱形)
3c 突起(凸条)
3d 突起(凹型)
4 流水通路
5 シール剤
6 排水溝
7 導水補助溝
F 床面
W 壁(居室側)
H1 領域Aの肉厚
H2 領域Bの肉厚
H3 突起の高さ
100 従来の防水シート
101 塗膜防水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の床被覆材であって、軟質ないし半硬質の熱可塑性樹脂で形成された領域Aと、上記領域Aよりも柔軟性が高い領域Bとからなり、上記領域Bが上記領域Aの端辺に帯状に一体に設けられていることを特徴とする床被覆材。
【請求項2】
請求項1に記載の床被覆材において、上記領域Aが床面を覆う領域であり、上記領域Bが床面の排水溝側の端部から排水溝内面の一部又は全部を覆う領域であることを特徴とする床被覆材。
【請求項3】
上記領域Aの中間又は裏面に繊維層を積層したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床被覆材。
【請求項4】
上記領域Bの肉厚が上記領域Aの肉厚と同じ若しくは薄いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の床被覆材。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の床被覆材を用いた床構造であって、床被覆材の領域Aで床面を覆うと共に、床被覆材の領域Bで床面の排水溝側の端部から排水溝内面の一部又は全部を覆ったことを特徴とする床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−174295(P2011−174295A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39172(P2010−39172)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】