説明

床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シート

【課題】 床面等の構築物面に貼着するための粘着シートであって、剥離した後の再接着性に優れた再剥離再接着型粘着シートを提供する。
【解決手段】 この再剥離再接着型粘着シートは、シート本体11と、シート本体11の裏面に設けられた再剥離再接着性粘着剤層5とからなる。再剥離再接着性粘着剤層5は、主鎖又は側鎖にウレタン結合及び/又は尿素結合を持ち、末端に加水分解性シリル基を含有する特定末端シリル基ポリマーの硬化物100質量部と、粘着付与樹脂10〜35質量部とを含有する。この再剥離再接着型粘着シートは、特定末端シリル基ポリマー100質量部と、粘着付与樹脂10〜35質量部と、特定末端シリル基ポリマーの硬化触媒とを均一に混合した再剥離再接着性粘着剤前駆体を、シート本体11の裏面に塗布した後、特定末端シリル基ポリマーを硬化させることにより得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面、壁面又は窓面等の構築物面に貼着して使用する粘着シートであって、剥離して再使用しうる再剥離再接着型粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、床面等の構築物面に滑り止めのため、粘着シートを貼着することが行われている(特許文献1)。特許文献1に記載されている粘着シートは、床面に貼着するためのものであって、凹凸が付された合成樹脂シートの裏面に粘着剤層を設けたものである(特許文献1の図2)。しかしながら、この粘着シートは、いったん床面に貼着すると、それを剥離して再度床面に貼着することができなかった。すなわち、剥離するときに本体である合成樹脂シートが損傷するか、又は合成樹脂シートが損傷しない場合でも再度床面に貼着しうる接着力を粘着剤層が発揮できず、再剥離再接着型ではなかった。
【0003】
かかる粘着シートに、再剥離再接着型を実現するためには、粘着剤層として再剥離再接着性を持つものを採用すればよいと考えられる。しかしながら、粘着シートに再剥離型を与える再剥離性を持つ粘着剤は種々知られているが(特許文献2及び3)、再剥離再接着性を持つ粘着剤はあまり知られていない。ここで、再剥離型粘着シートと再剥離再接着型粘着シートとは、剥離後に被着体に再度接着しうるか否かの点で相違する。すなわち、前者は被着体に糊残りなしに剥離しやすい粘着シートのことであり、剥離後に再度使用して被着体に接着するものではない。これに対して、後者は被着体に糊残りなしに剥離しやすく、かつ、剥離後に再度使用して被着体に接着するものである。
【0004】
再剥離再接着型粘着シートとしては、基材フィルムの片面に、シロキサン変性ポリウレタン樹脂からなる再剥離再接着性粘着剤層を設けたものが知られている(特許文献4)。しかしながら、この再剥離再接着型粘着シートは、平滑面を有する被着体に適用しうるもので、構築物である床面等の比較的粗な面を持つ被着体に適用しうるものではなかった。すなわち、シロキサン変性ポリウレタン樹脂からなる再剥離再接着性粘着剤層は、再剥離性及び再接着性が不十分で、粗な面を持つ被着体には適用できなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−47511号公報
【特許文献2】特開平10−158595号公報
【特許文献3】特開2006−241419号公報
【特許文献4】特開平11−80678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特殊な再剥離再接着性粘着剤を使用することによって、床面等の比較的粗な面を持つ構築物面に対して、高強度で貼着でき、かつ、構築物面に糊残りすることなく剥離でき、剥離後に再度使用しうる再剥離再接着型粘着シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、シート本体の裏面に再剥離再接着性粘着剤層が設けられてなり、該再剥離再接着性粘着剤層は、主鎖又は側鎖にウレタン結合及び/又は尿素結合を持ち、末端に下記一般的(1)で表される加水分解性シリル基を含有する末端シリル基ポリマーの硬化物100質量部と、粘着付与樹脂10〜35質量部とを含有していることを特徴とする床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シートに関するものである。
【化1】

(式中、Xはヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表し、nは0、1又は2を表す。)
【0008】
シート本体11は、粘着シートから再剥離再接着性粘着剤層5を除いたものである。したがって、シート本体11としては、粘着シートの基材シートとなりうるものであれば、どのようなもので使用しうる。本発明に係る粘着シートは、床面等の構築物面に貼着されるものであるから、踏みつけたり擦ったりしても損傷又は変形しにくいものを用いるのが好ましい。具体的には、図1に示したシート本体11が挙げられる。シート本体11は、表面から順に、硬質のオーバーコート層6、ウレタン樹脂シート1、プライマー層2、接着剤層3及び支持体4が積層一体化されてなるものである。硬質のオーバーコート層6は、踏みつけたときに粘着シートが損傷するのを防止するために設けられているものである。したがって、踏みつけたりして損傷する恐れが少ないときは、この層6を省略することもできる。ウレタン樹脂シート1は合成樹脂シートの一種であって、床面に貼着する場合には、クッション性を与えるために必要である。クッション性等が必要でないときは、その他の合成樹脂シートが用いられてもよいし、金属箔や布等の合成樹脂シート以外のシートが用いられてもよい。プライマー層2は、ウレタン樹脂シート1と接着剤層3との接着力を向上させるために用いられるものである。したがって、ウレタン樹脂シート1と接着剤層3との間に十分な接着力があれば、用いる必要はない。接着剤層3は支持体4とウレタン樹脂シート1とを一体化するものであり、支持体4は粘着シートの寸法安定性を向上させるために用いられるものである。したがって、用いる用途によって、ウレタン樹脂シート1に十分な寸法安定性があれば、接着剤層3及び支持体4を省略してもよい。
【0009】
以上の説明から、シート本体11としては、種々のものが用いられることが理解される。たとえば、合成樹脂シートのみからなるもの、オーバーコート層/合成樹脂シートの積層物、合成樹脂シート/接着剤層/支持体の積層物、オーバーコート層/合成樹脂シート/接着剤層/支持体の積層物等が挙げられる。また、合成樹脂シートに代えて、金属箔や布等も用いてシート本体11とすることもできる。
【0010】
シート本体11の表面には、凹凸を設けておくことが好ましい。本発明に係る粘着シートは、床面に用いられることが多いので、この凹凸により滑り止め機能を与えるのである。凹凸を設けるのは、合成樹脂シート、特にウレタン樹脂シートに設ける。もちろん、オーバーコート層6が存在する場合には、合成樹脂シートと共にオーバーコート層6にも凹凸を設ける。かかる凹凸は、従来公知のエンボス加工を行うことによって、容易に付与しうる。
【0011】
シート本体11の裏面には、再剥離再接着性粘着剤層5が設けられている。再剥離再接着性粘着剤層5は、主鎖又は側鎖にウレタン結合及び/又は尿素結合を持ち、末端に上記一般的(1)で表される加水分解性シリル基を含有する末端シリル基ポリマーの硬化物100質量部と、粘着付与樹脂10〜35質量部とを含有している。
【0012】
本発明で用いる末端シリル基ポリマー(以下、「特定末端シリル基ポリマー」という。)は、公知のものであって、特許第3317353号公報、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特表2004−518801号公報、特表2004−536957号公報及び特表2005−501146号公報に記載されているものである。かかる特定末端シリル基ポリマーは、主鎖又は側鎖中に、ウレタン結合及び/又は尿素結合が導入されているので、硬化が十分となり緊密な三次元網目構造を持つ粘着剤層5が得られる。したがって、粘着剤層5が流動しにくく、再剥離して再接着を繰り返しても、粘着剤層5が流れ落ちたり、脱落しにくいので好ましい。なお、主鎖又は側鎖に導入されているウレタン結合及び/又は尿素結合における活性水素は、有機基で置換されていてもよい。したがって、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に属するし、ビュレット結合も尿素結合の範疇に属する。
【0013】
特定末端シリル基ポリマーの末端を構成する加水分解性シリル基は、一般式(1)において、nが1であるのが好ましい。すなわち、末端に二つの加水分解性基を持っていることが好ましい。nが0のものは末端に三つの加水分解性基を持っているが、このような特定末端シリル基ポリマーは、nが1のものに比べて、硬化後における三次元網目構造が緻密になりすぎて粘着剤層5が硬くなり、テープ基材又はシート基材の曲げ等に対する追随性に劣る傾向がある。また、nが2のものは末端に一つの加水分解性基しか持っていないため、硬化後における三次元網目構造が不十分となり、粘着剤層5が軟らかくなり過ぎ、流れ落ちやすくなったり、脱落しやすくなる恐れがある。また、このことから分かるように、粘着剤層5に所望の硬さや柔らかさを実現するには、nが0、1又は2のものを所定割合で混合して調整すればよい。特定末端シリル基ポリマーの主鎖には、ウレタン結合及び/又は尿素結合が導入されているが、主鎖の主体としては、ポリオキシプロピレンやポリオキシエチレンの如きポリオキシアルキレンであるのが好ましい。主鎖の主体がポリオキシアルキレンであると、得られる粘着剤層5に適度な柔らかさを発現しやすくなるからである。
【0014】
本発明においては、特定末端シリル基ポリマーと他の末端シリル基ポリマーとが混合されていてもよい。たとえば、特定末端シリル基ポリマーと、主鎖及び側鎖にウレタン結合及び/又は尿素結合が導入されていない末端シリル基ポリマーとを混合してもよい。後者の末端シリル基ポリマーは、特定末端シリル基ポリマーと比べて硬化しにくいものであるが、特定末端シリル基ポリマーと混合することによって、硬化の程度を高めることができる。
【0015】
本発明で用いる粘着付与樹脂としては、粘着剤を得る際に用いられる公知の粘着付与樹脂が用いられる。たとえば、ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステル等のロジン系樹脂;テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、ロジンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂;脂肪族石油樹脂;芳香族系石油樹脂;芳香族系水添石油樹脂、ジシクロペンタジエン系水添石油樹脂、脂肪族系水添石油樹脂等の各種水添石油樹脂;クマロンインデン樹脂;スチレン系樹脂;マレイン酸系樹脂;アルキルフェノール樹脂;キシレン樹脂等を用いることができる。特に、本発明においては、スチレン系樹脂又はテルペン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0016】
粘着付与樹脂の配合量は、特定末端シリル基ポリマーの硬化物100質量部に対して、10〜35質量部配合される。粘着付与樹脂の配合量が10質量部未満であると、初期の接着力が不十分となり、床面の構築物面に貼着するには適さない。また、粘着付与樹脂の配合量が35質量部を超えると、再剥離して再接着したときの接着力が低下するので好ましくない。すなわち、粘着付与樹脂の配合量を10〜35質量部に調整しておくと、5回程度再剥離して再接着しても、再接着時の接着力の低下が少ないのである。
【0017】
本発明に係る再剥離再接着型粘着シートは、たとえば、以下の方法による製造することができる。まず、上記した特定末端シリル基ポリマーとその硬化触媒と粘着付与樹脂とを均一に混合して、粘着剤前駆体を得る。一般的に、粘着剤前駆体は、特定末端シリル基ポリマーと粘着付与樹脂とを均一に混合して混合物を得た後に、硬化触媒を添加混合し、攪拌して全体を均一に混合して得るのが好ましい。すなわち、硬化触媒を最後に添加混合して粘着剤前駆体を得るのが好ましい。この理由は、硬化触媒は特定末端シリル基ポリマーに対して触媒的作用を及ぼすため、当初から混合すると粘着剤前駆体をシート本体の裏面に塗布する前に硬化する恐れが生じるからである。なお、特定末端シリル基ポリマーと粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、両者の相溶性が不十分な場合は、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、特定末端シリル基ポリマーと粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合には、有機溶剤を使用しなくてもよい。
【0018】
硬化触媒としては、塩化チタン、塩化すず、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化銅、塩化アンチモン等の金属ハロゲン化物、及び、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素等のハロゲン化ホウ素化合物等が用いられる。また、前記化合物のアミン錯体、アルコール錯体、エーテル錯体等も用いられる。本発明では、特に、塩化チタン(IV)、塩化すず(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、塩化アルミニウム(III)、三フッ化ホウ素のアミン錯体やアルコール錯体が好ましい。
【0019】
前述した理由で、粘着付与樹脂は、特定末端シリル基ポリマー100質量部に対して、10〜35質量部配合される。また、硬化触媒は、特定末端シリル基ポリマー100質量部に対して、0.001〜10質量部配合するのが好ましい。硬化触媒の配合量が0.001質量部未満であると、触媒的作用が不十分となり、緊密な三次元網目構造を持つ粘着剤層を形成しにくくなる傾向が生じる。また、硬化触媒の配合量が10質量部を超えると、触媒的作用が過剰となり、粘着剤前駆体を得る際に硬化する恐れがある。
【0020】
粘着剤前駆体には、その他に以下のような化合物乃至物質を添加混合しておいてもよい。たとえば、シランカップリング剤、老化防止剤、ビニルシラン化合物や酸化カルシウム等の脱水剤、充填剤、可塑剤、無水シリカ、アマイドワックス等の揺変剤、イソパラフィン等の希釈剤、水酸化アルミニウム、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等の難燃剤、シリコーンアルコキシオリゴマー,アクリルオリゴマー等の機能性オリゴマー、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を添加混合しておいてもよい。
【0021】
任意の添加剤である脱水剤としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、塩化カルシウム、オルト珪酸エステル、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物、メチルシリケート、エチルシリケート等のシリケート化合物、活性炭、ゼオライト等が挙げられる
【0022】
任意の添加剤である老化防止剤としては、ラジカル連鎖開始阻止剤(ヒドラジド系、アミド系等)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等)、クエンチャー(有機ニッケル系等)、ラジカル捕捉剤としてHALS(ヒンダードアミン系等)、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系等)、過酸化物分解剤としてリン系酸化防止剤(ホスファイト系、ホスホナイト系等)、イオウ系酸化防止剤(チオエーテル系等)等が用いられる。市販品の老化防止剤としては、旭電化工業社製のアデカスタブシリーズ;クラリアントジャパン社製のホスタノックスシリーズ、ホスタビンシリーズ、サンデュボアシリーズ、ホスタスタットシリーズ;三共ライフテック社製のサノールシリーズ;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビンシリーズ、イルガフォスシリーズ、イルガノックスシリーズ、キマソーブシリーズ等が用いられる。
【0023】
以上のようにして粘着剤前駆体を得た後、これをシート本体11の裏面に塗布する。粘着剤前駆体の塗布方法は、従来公知の方法を採用でき、たとえばナイフコーター法やロールコーター法等を用いることができる。さらに、粘着剤前駆体の塗布厚も従来と同様であり、50〜100μm程度である。
【0024】
粘着剤前駆体をシート本体11の裏面に塗布した後、粘着剤前駆体に含まれている特定末端シリル基ポリマーを硬化させる。特定末端シリル基ポリマー同士は、水分の存在下で縮合して三次元網目構造となって硬化するから、塗布後の粘着剤前駆体を水蒸気等の水分の存在下に置けばよい。具体的には、大気中に置けば、水蒸気の存在下に置くことになる。また、粘着剤前駆体中には有機溶剤等が含まれている場合があるので、これらを蒸発させるために、80℃以上の温度に加熱するのが一般的である。したがって、一般的に、粘着剤前駆体をシート本体11の裏面に塗布した後、大気中で加熱することにより、再剥離再接着性粘着剤層5を形成することができ、再剥離再接着型粘着シートが得られる。
【0025】
また、本発明では、以下のような方法によって両面粘着テープを得た後に、再剥離再接着型粘着シートを得ることもできる。すなわち、支持体4の片面に接着剤層3を設け、他面に再剥離再接着性粘着剤層5を設けた両面粘着テープを得る。再剥離再接着性粘着剤層5は、前記した粘着剤前駆体を支持体4の他面に塗布して設けるか、又は離型紙7の面に塗布して設けた後、支持体4に転写すればよい。このような方法で得られた両面粘着テープの接着剤層3を、合成樹脂シート1の裏面に、直接又はプライマー層2を介して接着すれば、本発明に係る再剥離再接着型粘着シートを得ることができる。
【0026】
本発明に係る再剥離再接着型粘着シートは、駅、商店或いは居室等の建造物の床面、浴槽の床面又は風呂場の床面に貼着して滑り止めシートとして使用することができる。また、駅、商店或いは居室等の建造物の壁面や窓面に貼着して、壁や窓が傷つくのを防止するために使用することができる。すなわち、各種構造物面に種々の目的で貼着して使用されるものである。そして、貼着後に再剥離再接着型粘着シートを剥離して、再剥離再接着性粘着剤層に付着したゴミを、水洗によって洗い落とす。具体的には、水を含浸させたウレタンスポンジや拭き布等を用いて、再剥離再接着性粘着剤層面を擦って、ゴミを落とす。そして、再度床面等に貼着して使用するのである。本発明に係る再剥離再接着型粘着シートは、かかる剥離及び貼着を数回繰り返して使用しうるものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る再剥離再接着型粘着シートは、再剥離再接着性粘着剤層が特定末端シリル基ポリマーを三次元網目構造となした硬化物中に、特定量の粘着付与樹脂を含有してなるものであるため、床面等に貼着した後、剥離して再度床面等に貼着して使用することができる。そして、再度床面等に貼着して場合において、その接着力が殆ど低下しないという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一例に係る床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シートの模式的断面図である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、特定末端シリル基ポリマーの硬化物と特定量の粘着付与樹脂とからなる粘着剤層は、再剥離再接着性に優れているとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0030】
実施例1
[特定末端シリル基ポリマーの合成]
反応容器に、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランを206質量部、アクリル酸メチルを172質量部仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で10時間反応させることで、シリル化剤となるシラン化合物を得た。
一方、別の反応容器にPML S4015(ポリオキシプロピレンジオール、分子量15000:旭硝子社製)1000質量部、イソホロンジイソシアネート24.6質量部(NCO/OH比=1.7)及びジブチルスズジラウレート0.05質量部を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、85℃で7時間反応させて、主鎖の主体がポリオキシプロピレンで、主鎖中にウレタン結合が導入されたウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマー1000質量部に、上記シラン化合物42.1質量部を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら80℃で1時間反応させることで、特定末端シリル基ポリマーを得た。IRでイソシアネート基の吸収(2265cm-1)の消失より反応の進行を確認した。
この特定末端シリル基ポリマーは、一般的(1)で表される加水分解性シリル基として二つのメトキシ基を有し、主鎖の主体がポリオキシプロピレンで、主鎖にウレタン結合が導入されてなるものである。
【0031】
[再剥離再接着型粘着シートの製造]
上記特定末端シリル基ポリマー100質量部に、溶媒として酢酸エチル20質量部と、粘着付与樹脂としてスチレン系樹脂(三井化学社製、商品名「FTR8100」)9.5質量部(小数点以下を四捨五入して10質量部とする。)を添加混合し、均一に攪拌して、混合物を得た。
この混合物130質量部に、硬化触媒である三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(三フッ化ホウ素として59質量%含有)を1.0質量部、老化防止剤(チバ社製、商品名「イルガノックス1010」)を2質量部及び脱水剤(信越化学工業社製、商品名「KBM1003」)を1質量部添加し、十分に攪拌し均一に混合して、粘着剤前駆体を得た。
この粘着剤前駆体を、シート本体である厚さ25μmのポリエステルフィルムの裏面に、塗布厚が90μm程度となるようにナイフコーター法で塗布した。その後、120℃で5分間、大気中で加熱した後、室温で15分間放置し、さらにその後40℃で1週間熟成することにより、特定末端シリル基ポリマーを硬化させると共に、酢酸エチル及び水分を蒸発させて、再剥離再接着性粘着剤層を得た。これにより、シート本体の裏面に再剥離再接着性粘着剤層が積層されてなる再剥離再接着型粘着シートが得られた。
【0032】
実施例2
粘着付与樹脂の添加量を20質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0033】
実施例3
粘着付与樹脂の添加量を30質量部に変更し、かつ、酢酸エチルの添加量を25質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0034】
実施例4
粘着付与樹脂の添加量を35質量部に変更し、かつ、酢酸エチルの添加量を25質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0035】
実施例5
硬化触媒である三フッ化ホウ素アミノプロピルトリエトキシシラン錯体を0.2質量部添加混合するのに代えて、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート(マツモト交商社製、商品名「オルガチックスTC−100」)を4質量部添加混合する他は、実施例3と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0036】
実施例6
粘着付与樹脂として、スチレン系樹脂(三井化学社製、商品名「FTR8100」)に代えて、テルペン系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスター T145」)を用いる他は、実施例3と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0037】
実施例7
粘着付与樹脂として、スチレン系樹脂(三井化学社製、商品名「FTR8100」)に代えて、テルペン系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスター T145」)を用いる他は、実施例4と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0038】
参考例1
粘着付与樹脂を用いない他は、実施例1と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0039】
参考例2
粘着付与樹脂の添加量を0.5質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0040】
比較例1
粘着付与樹脂の添加量を40質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0041】
比較例2
粘着付与樹脂の添加量を60質量部に変更する他は、実施例1と同一の方法により再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0042】
比較例3
実施例1で使用したシート本体裏面に、アクリル溶剤型粘着剤(日本合成化学社製、商品名「コーポニール N−4105」)を塗布厚が90μm程度となるようにナイフコーターで塗布して、再剥離再接着型粘着シートを得た。
【0043】
実施例1〜7、参考例1、2及び比較例1〜3で得られた再剥離再接着型粘着シートの再剥離再接着性を以下の方法で評価した。そして、その結果を表1に示した。
[初期接着強さ]
被着体である硬質塩化ビニル板に再剥離再接着型粘着シートを貼着し、23℃で3日間養生した後に、被着体以外は、JIS Z 0237 10.4 180度引きはがし粘着力の測定に記載の方法に準拠して初期接着強さ(N/20mm)を測定した。
[汚染後の接着強さ]
再剥離再接着性粘着剤層全面に、シリチン粉末[ホフマンミネラル社〔独〕製「シリチンV85」(平均粒径3μm)]をまぶして手で圧締し、再剥離再接着性粘着剤層を汚染する。5分間放置した後、再剥離再接着性粘着剤層全面に水を供給しながら、ウレタンスポンジで擦ってシリチン粉末を落として洗浄する。その後、10分間60℃の雰囲気下で乾燥する。そして再度、被着体である硬質塩化ビニル板に再剥離再接着型粘着シートを貼着し、23℃で3日間養生した後に、被着体以外は、JIS Z 0237 10.4 180度引きはがし粘着力の測定に記載の方法に準拠して接着強さ(N/20mm)を測定した。なお、汚染−洗浄−乾燥を1回行ったものを、汚染後の接着強さ(1回)とし、汚染−洗浄−乾燥を2回行ったものを、汚染後の接着強さ(2回)とし、以下、これを5回まで行った。この汚染−洗浄−乾燥をn回行った後の接着強さは、被着体からn回剥離した後に、再剥離再接着性粘着剤層を洗浄及び乾燥し、被着体に再貼着させた場合の接着強さとよく相関している。
【0044】
[表1]
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汚 染 後 の 接 着 強 さ
────────────────────
初期接着強さ 1回 2回 3回 4回 5回
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実施例1 4.8 5.0 5.4 5.7 6.0 5.5
実施例2 5.5 5.8 6.3 5.4 6.3 5.7
実施例3 7.1 7.4 7.6 7.7 6.8 6.5
実施例4 8.7 9.1 9.0 8.8 8.5 8.6
実施例5 7.1 7.8 7.4 7.9 7.5 7.0
実施例6 9.1 9.8 9.5 9.6 10.1 9.1
実施例7 9.7 9.8 10.2 9.3 9.5 8.8
──────────────────────────────────────
参考例1 4.2 4.9 5.3 5.2 4.8 4.6
参考例2 4.3 4.6 5.2 5.1 5.3 4.9
──────────────────────────────────────
比較例1 10.4 8.0 7.5 7.6 7.0 7.4
比較例2 14.0 10.2 10.0 8.2 9.7 8.5
比較例3 11.6 9.0 8.5 6.6 6.0 5.5
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【0045】
表1の結果から、初期接着強さを100%とし、初期接着強さに対して汚染後の接着強さが何%になっているかを計算すると、以下のとおりである。すなわち、実施例1では104〜125%、実施例2では98〜115%、実施例3では92〜108%、実施例4では98〜105%、実施例5では99〜111%、実施例6では100〜111%、実施例7では91〜105%となっている。また、参考例1では110〜126%、参考例2では107〜123%となっている。一方、比較例1では67〜77%、比較例2では59〜73%、比較例3では47〜78%となっている。なお、初期接着強さ及び汚染後の接着強さの測定時において、破壊は被着体と再剥離再接着性粘着剤層の界面で起こり、被着体に糊残りしなかった。
【0046】
以上のことから、特定末端シリル基ポリマーの硬化物を主体とする粘着剤層は、再剥離再接着性に優れていることが分かる。そして、当該硬化物100質量部に対して、粘着付与樹脂を35質量部まで添加しても再接着性は良好である(実施例1〜7、参考例1及び2)が、40質量部以上添加すると再接着性が低下することが分かる(比較例1及び2)。なお、粘着付与樹脂の添加量が少ない参考例1及び2に係る再剥離再接着型粘着テープは、再剥離再接着性に優れているが、初期接着強さが4N/20mm程度であるため、床面等の構築物面貼着用としては不適当である。
【符号の説明】
【0047】
1 ウレタン樹脂シート
2 プライマー層
3 接着剤層
4 支持体
5 再剥離再接着性粘着剤層
6 オーバーコート層
7 離型紙
11 シート本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体の裏面に再剥離再接着性粘着剤層が設けられてなり、該再剥離再接着性粘着剤層は、主鎖又は側鎖にウレタン結合及び/又は尿素結合を持ち、末端に下記一般的(1)で表される加水分解性シリル基を含有する末端シリル基ポリマーの硬化物100質量部と、粘着付与樹脂10〜35質量部とを含有していることを特徴とする床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シート。
【化1】

(式中、Xはヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表し、nは0,1又は2を表す。)
【請求項2】
シート本体が、表面から合成樹脂シート、接着剤層及び支持体の順で積層されてなる請求項1記載の床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シート。
【請求項3】
合成樹脂シートが表面に凹凸を有するウレタン樹脂シートである、滑り止め機能のある請求項2記載の床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シート。
【請求項4】
主鎖の主体がポリオキシアルキレンである末端シリル基ポリマーを用いる請求項1記載の床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シート。
【請求項5】
一般式(1)中のnが1である請求項1記載の床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シート。
【請求項6】
粘着付与樹脂としてスチレン系樹脂又はテルペン系樹脂を用いる請求項1記載の床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シート。
【請求項7】
主鎖又は側鎖にウレタン結合及び/又は尿素結合を持ち、末端に下記一般的(1)で表される加水分解性シリル基を含有する末端シリル基ポリマー100質量部と、粘着付与樹脂10〜35質量部と、該末端シリル基ポリマーの硬化触媒とを均一に混合した再剥離再接着性粘着剤前駆体を、シート本体の裏面に塗布した後、該末端シリル基ポリマーを硬化させることにより、該再剥離再接着性粘着剤前駆体を再剥離再接着性粘着剤層とすることを特徴とする請求項1記載の床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シートの製造方法。
【化2】

(式中、Xはヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表し、nは0,1又は2を表す。)
【請求項8】
支持体の片面に接着剤層が設けられ、他面に請求項1記載の再剥離再接着性粘着剤層が設けられてなる両面接着シートの接着剤層を合成樹脂シートの裏面に貼合することを特徴とする請求項2記載の床面等の構築物面貼着用再剥離再接着型粘着シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の再剥離再接着型粘着シートが貼着されている床面等の構築物面から、該再剥離再接着型粘着シートを剥離し、該再剥離再接着型粘着シートの再剥離再接着性粘着剤層表面に付着しているゴミを水洗により洗い落とした後に、該再剥離再接着型粘着シートを床面等の構築物面に再接着することを特徴とする再剥離再接着方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−6644(P2011−6644A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154088(P2009−154088)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】