説明

座標指示装置

【課題】 ステップカーソル操作とフリーカーソル操作の両立が図れるトラックボールを用いた座標指示装置を提供する。
【解決手段】 球体10と、この球体10を回転可能に支持する球体支持台26と、前記球体の回転方向を検知する回転検知部24と、球体の回転中心Pを通るX軸方向の両側に配置されるY軸回転支点機構部60と、前記X軸方向と90度ずれて前記回転中心を通るY軸方向の両側に配置されるX軸回転支点機構部50とを備え、前記Y軸回転支点機構部60と前記X軸回転支点機構部50は、球体10の両側から球体10に接触する一対の回転支点部51,61と、該回転支点部51,61を球体10の表面に接触または離脱させる支点機構部52、62とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックボールを用いた座標指示装置に関するものであり、特に、表示画面に各種の選択ボタンとカーソルを表示し、このカーソルをトラックボールの操作で所望の選択ボタンに移動させて、当該選択ボタンに割り当てられた機能を遠隔操作で実行させる座標指示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、放送の多チャンネル、多情報化(データ放送など)によりテレビの機能が増えてきている。また、ハードディスクレコーダーも普及し、EPGや録画予約、録画済みコンテンツの検索など、パーソナルコンピュータ並の機能が家庭内に入ってきている。これらの基本的な操作は、表示画面に各種の選択ボタンとカーソルを表示し、このカーソルを座標指示装置の操作で所望の選択ボタンに移動させて、当該選択ボタンに割り当てられた機能を実行させるものである。
【0003】
従来のテレビのリモコンは、赤外線を用いて遠隔操作が可能なものが主流である。これらリモコンは、決定キーの上下左右にカーソルの移動キーを備えた十字カーソルが一般的である。また、テレビの場合、表示画面に表示される複数の選択ボタンは、必ず1つが選択状態(強調表示)となっており、前記移動キーを操作することで、移動方向の選択ボタンが選択状態となり、前記決定キーの操作で強調表示された選択ボタンに割り当てられた機能が実行されるのが一般的である。
【0004】
また、テレビ放送が受信可能なパーソナルコンピュータではマウスで操作するものがある。また、マウスと同様な座標指示装置としてマウスを反転させた構造を備えたトラックボールがある。これらトラックボールでは、平らな操作面を必要とすることなく自由な座標を指示することができる反面、細かな操作性が苦手であり、項目を行き過ぎたり、あるいは、戻り過ぎたりして、操作に苛立ち易い課題がある。これらのトラックボールの課題を解決するために、トラックボールの球面に接するように駆動部を備えたX軸トルクローラとY軸トルクローラを設けて、カーソルの移動にともなうクリック感や移動制限を与えるようにしたものがある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−272630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テレビの操作系は、パーソナルコンピュータの机上での操作系と違い、ソファーに寝転んだり自由な姿勢での遠隔操作が可能なリモコンによる操作が主体となっている。したがって、パーソナルコンピュータ並の機能が導入されたテレビの操作系は、自由な姿勢でも複雑な操作が可能なリモコンとGUIが求められている。特に、メニュー操作やコンテンツの選択など、リスト表示されたアイテムを選択するステップカーソル操作と、Webや地図表示などを自由にポインティングできるフリーカーソル操作を両立するデバイスが望まれる。そのためには、細かな操作と大雑把な操作(大きな移動と微調整)の両立が重要である。
【0007】
従来のテレビの操作では十字カーソルを使った遠隔操作のリモコンが中心であり、リストや表の項目数が多くなるとボタンを押す回数が増えると言う課題がある。この課題に対して、ボタンを押し続けるとカーソルが連続的に移動するなど工夫はされているが、そのスピードが速いと項目を行き過ぎるし、遅いと時間がかかるという問題がある。
【0008】
また、マウスは画面の中の機能ボタンを自在に選択するために有効な手段だが、平らな操作面を必要とし、あるいは操作姿勢に制約があり十分な解決手段ではない。この点、トラックボールは、平らな操作面を必要とすることなく、ボタンを押す回数が増えると言う課題がない反面、細かな操作性が苦手であり、項目を行き過ぎたり、あるいは、戻り過ぎたりして、操作に苛立ち易い課題がある。
【0009】
前記トラックボールの課題は、この課題の解決を目的とした前記従来例である程度解決することができる。しかし、この従来例は、トラックボールの球面に常に駆動部を備えたX軸トルクローラとY軸トルクローラが接触しているために、移動制限を与えるには有効であるが、トラックボールの最も特徴的なフリーカーソル操作に課題を備えている。
【0010】
そこで、この発明の目的とするところは、ステップカーソル操作とフリーカーソル操作の両立が図れるトラックボールを用いた座標指示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係る座標指示装置は、球体と、この球体を回転可能に支持する球体支持台と、前記球体の回転方向を検知する回転検知部とを備え、前記球体の中心の両側に配置され、該球体の回転方向を規制する回転支点機構部を備え、前記回転支点機構部は、球体の両側から球体に接触する一対の回転支点部と、該回転支点部を球体の表面に接触または離脱させる支点機構部とから構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械的の構造により、ステップカーソル操作とフリーカーソル操作の両立が図れるトラックボールを用いた座標指示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1から図12を参照して、この発明に係る座標指示装置を備えたテレビジョン受像機の実施の形態を具体的に説明する。図1から図9が第1の実施の形態、図10から図12が他の実施の形態を示している。なお、同一の部位や矢印などは同一符号をもって示し、重複した説明を省略する。
(第1の実施の形態)
図1から図9は、この発明に係る座標指示装置の基本的な構造を備えたテレビジョン受像機の実施の形態を説明するものである。なお、同一部位や矢印などは同一符号をもって示し、重複した説明を省略する。
【0014】
先ず、図1を参照して、この実施の形態に係るテレビジョン受像機の概略構造を説明する。ここで、図1は第1の実施の形態に係るテレビジョン受像機の概略構造図である。
【0015】
図1において、この実施の形態に係るテレビジョン受像機は、表示部101を備えた受像機本体100と、この受像機本体100の各種の操作を入力する遠隔操作装置1とから構成される。受像機本体100は、1つの筐体に表示部101や記憶部108(図2で図示)などを収めた一体型の極一般的なテレビジョン受像機でも良いし、表示部101を他の装置と独立して設けた表示部分離型の筐体構造でも良い。ここでは、一体型のテレビジョン受像機で説明している。また、遠隔操作装置1は、表示部101に表示されるカーソル90の操作をトラックボール10で行う遠隔操作型のリモコンである。この実施の形態では、赤外線信号を用いてチャンネル選局や各種の操作を遠隔操作できる事例で説明するが、これに限定されるものではなく、無線装置を備えたり、あるいは、コードを介して操作信号を受像機本体に指示する構造のものでも良い。
【0016】
このテレビジョン受像機は、受像機本体100に内蔵したチューナ104(図2で図示)によりテレビ放送などのコンテンツの視聴ができる他、受像機本体100に内蔵した制御部109が遠隔操作装置1からの指示操作に基づいて、特定の機能が割り当てられた複数の操作ボタンやアイコン、あるいは写真画像や動画像などの選択枝を表示部101の表示画面101aに表示し、これらの選択枝に対してトラックボール10で指示されるX座標とY座標からなる座標位置信号によりカーソルを移動させ、このカーソルを位置合わせすることにより選択し、この選択された選択枝に対し、特定の機能が割り当てられていれば、その特定の機能を実行することができる。
【0017】
そして、この実施の形態の大きな特徴の1つは、メニュー操作やコンテンツの選択などのリスト表示されたアイテムを選択するステップカーソル操作と、Webや地図表示などを自由にポインティングできるフリーカーソル操作を両立するトラックボール10からなる座標指示装置を備えた遠隔操作装置1を採用した点にある。
【0018】
この実施の形態では、前記特徴を実現するために、自由に回転可能に取り付けられるトラックボール10に対して、X軸方向とY軸方向の2つの方向に、トラックボール10の球面に対して接触と離脱が可能な回転支点機構部40を備えるようにする。この回転支点機構部4は、X軸回転支点機構部50とY軸回転支点機構部60とから構成される。これら2つの回転支点機構部50、60は、それぞれ対となって対向する方向からトラックボール10を挟む支点部51、61と、この支点部51、61をトラックボールの球面と接触させたり離脱させたりする支点機構部52、62とから構成される。
【0019】
この特徴的な構造によれば、支点機構部52,62を介して1対の支点部51,61を移動させてトラックボール10を対向する方向から挟みつけることにより、この1対の支点部51,61を結ぶ回転軸PX、PYを介してトラックボール10を回転させることができる。逆に、この1対の支点部51,61をトラックボール10の球面から離脱させると、トラックボールは元の自由な回転を取り戻すことができる。
【0020】
例えば、Y軸方向に配置されるX軸回転支点機構部50では、1対のX軸支点機構部52を介して1対のX軸支点部51をトラックボール10の球面に接触させると、この1対のX軸支点部51で形成されるX軸回転軸PXを中心にトラックボール10をX軸方向に回転させて、他の方向への回転を阻害することができる。このため、トラックボール10を回転させると、その回転方向は直線的な回転となるので表示画面101aのカーソル90をX軸方向に直線的に移動させることができる。
【0021】
同様に、X軸方向に配置されるY軸回転支点機構部60では、1対のY軸支点機構部62を介して1対のY軸支点部61をトラックボール10の球面に接触させると、この1対のY軸支点部61で形成されるY軸回転軸PYを中心にトラックボール10を回転させて、他の方向への回転を阻害することができる。このため、トラックボール10を回転させると、その回転方向は直線的な回転となるので表示画面101aのカーソル90をY軸方向に直線的に移動させることができる。
【0022】
一般に、トラックボールと称される座標指示装置は、ボールを指先でどの方向へも自由に、かつ素早く回転することができる反面、一方向への直線的な動きや位置合わせがしにくい操作特性を備えている。この操作性は、フリーカーソル操作は得意であるが、ステップカーソル操作は苦手であるといえる。
【0023】
しかし、図1に示すように、この実施の形態では、X軸回転支点機構部50を動作させることにより、トラックボールの回転に制限を加えて、カーソル90をX軸方向に直線的に移動させることができるし、また、Y軸回転支点機構部60を動作させることにより、カーソル90をY軸方向に直線的に移動させることができるから、メニュー操作やコンテンツの選択などのリスト表示されたアイテムを選択するステップカーソル操作に適した操作環境を提供することができる。
【0024】
一方、X軸回転支点機構部50とY軸回転支点機構部60を動作させないと、トラックボール10に回転制限や負荷を加えないので、通常の回転に規制のない動きができるから、Webや地図表示などを自由にポインティングできるフリーカーソル操作に適した操作環境を提供することができる。
【0025】
さらにまた、X軸回転支点機構部50とY軸回転支点機構部60とを同時に動作させると、トラックボール10の回転を止めることができるから、カーソル90の移動を受け付けない操作環境を提供することができる。
【0026】
加えて、この実施の形態では、一方の回転支点機構部を動作させ、他方の回転支点機構部をブレーキとして利用することができる。さらにまた、他方の回転支点機構部を断続的にON、OFFさせることによりクリック感を与えたり、あるいは、単発的にONさせることにより操作ボタンの枠を乗り越える感覚を与えることができる。
【0027】
また、この実施の形態の特徴の他の1つは、トラックボール10に回転方向を示す表示機能を備えた点である。この実施の形態では、トラックボール10の回転方向に制限を備える構造としているので、動作可能な回転方向を利用者に認識させる点は重要である。そこで、この実施の形態では、トラックボール10を、透明または半透明な素材、あるいは表面近くに乱反射させる層を設けたりして形成し、このトラックボール10の下に回転方向を表示する表示部20を置き、トラックボール10の中に表示が見える構造としている。表示部20を介して左右、上下のインジケータ21をトラックボール10内に表示することにより、操作性を向上することができる。しかも、メールの着信などTV機能のお知らせ表示にも展開することができる。
【0028】
このように、この実施の形態では、トラックボール10は球を物理的に転がす直感的操作が可能で、細かな操作と同時に、球を勢い良く回して大きな操作も快適に行える。また、この実施の形態では、トラックボール10の利点であるフリーカーソル操作に加えて、苦手としていた、メニュー操作のように縦や横に一列に並んだ項目を選択するステップカーソル操作にも適した操作性を実現することができる。しかも、トラックボール10の規制される回転方向はトラックボール10内に投影されるので認識が容易である。
【0029】
以下、図2から図9を参照して、この第1の実施の形態に係るを具体的に説明する。
【0030】
先ず、図2を参照して、テレビジョン受像機の装置構成を説明する。図2はテレビジョン受像機の装置ブロック図である。
【0031】
図2において、遠隔操作装置1は、トラックボール10に対して回転方向を規制する回転支点機構部40と、この規制されたトラックボール10の回転方向を表示する表示部20と、この遠隔操作装置1の動作制御を統括的に制御する制御部21と、操作プログラムや操作履歴などを格納する記憶部22と、赤外線発信窓から赤外線信号を送受信するための赤外線通信部23と、トラックボール10の回転検知部24と、操作ボタン25とを含んで構成される。
【0032】
一方、この遠隔操作装置1の操作指示に基づいて動作する受像機本体100は、操作のためのメニュー画面やリストを表示するための表示部101と、スピーカなどの音声出力部102と、アンテナ103からコンテンツを受信するためのチューナ104と、通信回線を介してインターネット105からコンテンツを取得するためのネットワーク通信部106と、遠隔操作装置1からの赤外線信号を送受信するための赤外線通信部107と、各種のプログラムやコンテンツなどを格納する記憶部108と、これら受像機本体100の各装置を統括的に制御する制御部109とを備えた極一般的な装置である。なお、この実施の形態では、赤外線通信を採用しているが、これに替えて電波による無線通信を採用してもよい。
【0033】
次に、図3と図4を参照して、遠隔装置の外観構造と内部構造を具体的に説明する。ここで図3は遠隔操作装置の外観図である。図4は遠隔操作装置の構造図であり、(a)図が平面の配置構成図、(b)図が中央断面図である。
【0034】
図3において、この実施の形態に係る遠隔操作装置1は、その外観を正方形状の箱型に形成している。正方形状の上面中央にはトラックボール10の球面の上部が露出して形成され、その一方の片側には、決定機能が付与されたOKボタンと、戻り機能が付与されたBACKボタンと、メニュ表示表示機能が付与されたMENUボタンと、フアンクションボタンとからなる操作ボタン25が配置されている。なお、実施の形態では、この遠隔操作装置1の外観形状を機能本意のコンパクトな正方形状の箱型としているが、片手操作に適した棒状の形態としてもよい。
【0035】
図4において、この実施の形態では、トラックボール10は、筺体2内に設けられるボール支持台26によって回転可能に指示される。このボール支持台26は、少なくとも回転可能な3個の球体で下方より3点支持する構造を備えている。このボール支持台26の近傍には、トランクボール10の回転を検知する回転検知部24が設けられている。この実施の形態では、マウスなどで使用されている公知の光学式の構造を採用しているが、一対の回転ローラを備えた機械式の構造の検知部を採用してもよい。
【0036】
トラックボール10の回転中心Pの左右方向(X軸方向)には、1対の支点部61を結ぶ回転軸PYが前記左右方向と一致するように、一対のY軸回転支点機構部60が配置され、この左右方向と90度ずれた回転中心Pの前後方向(Y軸方向)には、1対の支点部51を結ぶ回転軸PXが前記前後方向と一致するように、一対のX軸回転支点機構部50が配置される。このトラックボール10の4方向に分かれて配置されるX軸回転支点機構部50とY軸回転支点機構部60は同じ構造で備えて、筺体2に設けた取付ベース27に取り付けられる。
【0037】
例えば、(a)図の右側に配置されるY軸回転支点機構部60は、Y軸支点部61とY軸支点機構部62とから構成され、その具体的な構造は方向のみが異なり、他の構造は同じである。そこで、この具体的な構造をさらに詳細に説明することで、他の3箇所の構造体の説明を省略する。
【0038】
Y軸支点部61は、鍵形に屈曲して形成されるアーム61aと、このアーム61aの角部に設けられてこのアーム61aを回転可能に固定する回転軸部61bと、アーム61aのトラックボール10側の一端側に形成される突起部61cと、アーム61aの他端に取り付けられるバネ体61dとから構成される。一方、Y軸支点機構部62は電源がONされると前記バネ体61dと対向する方向にバネ体61dの他端を引き付けるように動作するソレノイドで構成される。
【0039】
前記回転軸部61bは、前記突起部61cがトラックボール10の回転軸PY上の球面と接するようにアーム61aを回転可能に支持する。一方、前記バネ体61dは、前記突起部61cがトラックボール10の球面と常に接しないように取り付けられる。そして、Y軸支点機構部62は、前記バネ体61dの作用に対抗して、電源ONの状態でアーム61aの他端を引き付けて前記突起部61cがトラックボール10の球面と接触するように動作する。
【0040】
前記したようの、詳細に説明した(a)図の右側のY軸回転支点機構部60は他方側(左側)のY軸回転支点機構部50の構造も同じであり、さらに、上下に配置した一対のX軸回転支点機構部50も同じ構造を備えている。
【0041】
これらX軸回転支点機構部50とY軸回転支点機構部60とは、それぞれの対がトラックボール10の球面と同時に接触したり離脱したりするように制御部21が制御する。この制御は、この遠隔操作装置1の操作ボタン25の操作により動作させてもよいし、受像機本体100の制御部109からの信号に基づいて、即ち、表示画面101aに表示される画面に割り当てられたカーソル動作信号に基づいて動作させてもよい。
【0042】
この構造によれば、通常の状態では、X軸回転支点機構部50とY軸回転支点機構部60とはともにバネ体61dの作用により、突起部61cがトラックボール10の球面に接しない状態継続されるので、抵抗がなく自由に回転可能な操作感覚でトラックボール10を操作することができる。X軸回転支点機構部50をON状態とすると、トラックボール10は回転軸PXを中心とする回転のみに制限されるので、X軸方向の直線的なカーソル移動に制限される。また、Y軸回転支点機構部60をON状態とすると、トラックボール10は回転軸PYを中心とする回転のみに制限されるので、Y軸方向の直線的なカーソル移動に制限される。そして、X軸回転支点機構部50とY軸回転支点機構部60とを同時にON状態とすると、トラックボール10は固定された状態となるので、カーソルの移動をロック状態とすることができる。
【0043】
加えて、一方の回転支点機構部を動作させ、他方の回転支点機構部を必要によりONさせることによりブレーキとして利用することができる。この制御動作は、例えば、それ以上カーソルを移動できないときに、ある一方の方向を制限するときに有効である。また、他方の回転支点機構部を断続的にON、OFFさせることによりクリック感を与えることができる。あるいは、単発的にONさせることにより操作ボタンの枠や障害物を乗り越える感覚を与えることができる。
【0044】
次に、図5から図8を参照して、トラックボール10に回転方向を示す表示機能について説明する。ここで、図5は、トラックボールの表示方向を示す遠隔操作装置の構造図であり、(a)図が表示方向の表示した平面図、(b)遠隔操作装置の中央断面図である。図6がトラックボールに表示される表示状態図である。図7と図8がテレビジョン受像機の動作フロー図である。図9が図7,8のテレビジョン受像機とトラックボールの画面遷移図である。
【0045】
図5において、この実施の形態では、トラックボール10を、その表面近くに拡散層を持つ透明素材で形成している。この製造方法としては、例えば、レーザーを照射して内部に微細なクラックを生じさせるレーザーマーキングを使うことで実現できる。また、単純に、このトラックボール10を透明材料で形成してもよい。この場合は、光学式の回転検知部24は採用できないので、機械式の回転検知部24を採用するとよい。
【0046】
ボール支持台26の近傍には、トラックボール10の中心Pを挟んだ回転軸PXと回転軸PYの4ケ所に配置される発光源20aからなる表示部20が配置される。この発光源20aは、極端に扁平な配光特性をもつLED、あるいは、ビーム状の狭角度特性のLEDに円柱型レンズを組み合せたものを採用する。そして、発光源20aの照射方向は中心Pを通過するように斜めに照射される。したがって、例えば、(b)図に示すように、回転軸PXの右側に配置された発光源20aの光は、トラックボール10の回転軸PXの左側に表示される。
【0047】
この発光源20aによれば、(a)図に示すように、トラックボール10の中心Pを挟んで回転軸PXとPYの両側の4ケ所の表面に線状の光が投影される。これらの発光源20aは制御部21により、それぞれ独立してそのON、OFFが制御される。また、発光源20aから照射される投影光のパターンはホログラフィックフィルターなどにより、任意の形状(矢印や文字など)とすることもできる。
【0048】
図6は、投影光のパターン例を示すものである。(a)図に示す表示例30aは、外側に向かった矢印を示すものである。この表示例では左右方向を示しているが上下方向や一方の方向を表示させることができる。また、表示例30bは文字で表現したものである。
【0049】
(b)図に受像機本体100からイベント信号を受けて制御部21が表示させるものであり、表示例30cはメール着信時の表示例を示している。にもちろん、文字だけでなく、記号で表示してもよい。また、(c)図の表示例は、動作状態を表示する事例を示している。表示例30dは再生中の記号例、表示例30eは再生中の文字例、表示例30fは録画中の文字表示例を示している。
【0050】
次に、図7と図8の動作フローと図9の画面遷移図を参照して、この実施の形態の基本的な動作を説明する。ここで、図9は左側に表示画面例を示し、その右側にはトラックボールの表示例を示している。
【0051】
図7において、例えば、図9(a)図に示すように、テレビ放送を受信中に利用者が遠隔操作装置1のMENUボタンを操作すると(ステップ300)、その操作信号を受けた受信機本体100の制御部109は表示画面に図9(b)図に示す第1メニュー画面300を表示する(ステップ202)。この第1メニュー画面300は画面左側に上下に配列される第1階層メニュー301が表示されている。そして、この第1メニュー画面300では、初期画面において所定の第1階層メニューのボタンの1つにフォーカス(カーソルが位置した状態)があたっている。そして、この第1メニュー画面300にはフォーカスの移動制限情報が付加されている。
【0052】
制御部109は、第1メニュー画面300を表示すると、前記移動制限情報を遠隔操作装置1の制御部21に送信する。これを受けた制御部21はY軸回転支点機構部60をONさせて、トラックボール10をY軸方向のみ回転動作可能に制御する(ステップ202)。制御部109は、遠隔操作装置1のBACKボタンの操作指示があれば(ステップ204)、テレビ放送画面に戻し、OKボタンが操作されれば(ステップ206)、図8のステップ230に移行させる。
【0053】
ステップ208において、トラックボール10によりY軸方向の座標移動指示を受け付けるとフォーカス位置に応じたトラックボール10の表示と回転制限を行う。この制御は、
制御部21と制御部109との連携でおこなわれる(ステップ208)。例えば、フォーカス位置が上端の場合、下方向のみイルミネーション表示とし、上に動かすとブレーキ動作を行う(ステップ216)。また、図9の(c)図に示すように、フォーカス位置が下端の場合、上方向のみイルミネーション表示とし、下に動かすとブレーキ動作を行う(ステップ218)。その他のフォーカス位置の場合は、図9の(b)(c)図に示すように、上下方向にイルミネーション表示を行い、ブレーキ動作は行わない(ステップ220)。さらに、トラックボール10の回転に応じたフォーカス移動を行わせ、フォーカス枠を超える瞬間には短時間回転を止める制御を行う(ステップ210)。そして、フォカス位置が上下端の場合(ステップ212)、トラックボール10の回転を止める制御を行う(ステップ214)。
【0054】
一方、ステップ206において、第1階層メニュー301の特定の第1階層でOKボタンが操作された場合、図8のステップ230に移行するとともに、図9の(e)図に示す第2階層メニュー画面310が表示される。この第2階層メニュ画面310は、フォカスされた第1階層の横軸方向に左右並びの第2階層メニュー311が表示される。この第2階層メニュー311でも初期画面において所定の第2階層の1つにフォーカスが当たっている。この第2階層メニュー画面310を表示すると、制御部109は、この第2階層メニュー画面310に付加される移動回転制限情報を制御部21に送信する。これを受けた制御部21は、Y軸回転支点機構部60をOFFにしてX軸回転支点機構部50をONさせてトラックボール10をX軸方向のみ回転動作可能に制御する。
【0055】
このステップ230でBACKボタンが操作された場合、テレビ放送の画面に戻す。また、OKボタンが操作されると(ステップ232)、フォカスされている第1階層メニューに割り付けられる機能をスタートさせる。
【0056】
ステップ234において、トラックボール10によりX軸方向の座標移動指示を受け付けるとフォーカス位置に応じたトラックボール10の表示と回転制限を行う。この制御は、
制御部21と制御部109との連携でおこなわれる。例えば、図9の(e)図に示すように、フォーカス位置が左端の場合、右方向のみイルミネーション表示とし、左に動かすとブレーキ動作を行う(ステップ242)。また、フォーカス位置が右端の場合、左方向のみイルミネーション表示とし、右に動かすとブレーキ動作を行う(ステップ244)。その他のフォーカス位置の場合は、図9の(f)図に示すように、左右方向にイルミネーション表示を行い、ブレーキ動作は行わない(ステップ246)。さらに、トラックボール10の回転に応じたフォーカス移動を行わせ、フォーカス枠を超える瞬間には短時間回転を止める制御を行う(ステップ236)。そして、フォカス位置が左右端の場合(ステップ238)、トラックボール10の回転を止める制御を行う(ステップ240)。
【0057】
このように、この実施の形態では、表示画面101aに表示される表示内容により、トラックボール10の回転が自動的に制御され、その内容はトラックボール10に表示されるため、誤操作が起こりにくい。
【0058】
このように、この実施の形態では、縦または横それぞれ水平方向の対向2点をはさむことができる機構を入れ、それを軸とする回転方向のみ回りやすくなる。この方式で、例えば画面上で横方向に一列に並んだメニューを選択するシチュエーションで、上下をはさみこみ横方向のみ回りやすくすることによって操作性が向上する。また、はさみこんでいる軸と直角方向のはさみこみ機構を使い、はさんだり開放したりをタイミング良くうまく制御することにより、回転のカチカチ感を出すことができるので、機械的仕組みで、ステップカーソルのカチカチ感を出すことができる。さらには、この機構を利用して、リストの端までフォーカスが行き着いた時に球を止めたり、反対に回すと再び軽く回ったりさせることができる。
(他の応用例)
次に、図10から図12を参照して、前記第1の実施の形態の応用例を説明する。
【0059】
先ず、図10は表示部20の他の応用例を説明する遠隔操作装置1aの中央断面図である。図10において、この実施の形態は、トラックボール10の背面に小型の液晶表示部20b、あるいはOLEDなどのフラットディスプレイを配置し、任意の映像が操作者に見えるようにするものである。この場合はトラックボール10は透明素材とし、これに伴って、回転検知部24を機械式の構造のものを採用する。この実施の形態によれば、トラックボール10内に多様な情報を表示することができる。
【0060】
また、図11は、表示部20の他の応用例を説明する遠隔操作装置1bの中央断面図である。図11において、この実施の形態は、トラックボール10の背面に小型のプロジェクター20cを配置し、任意の映像が操作者に見えるようにするものである。この場合は、トラックボール10の透明材料で形成し、その球面近くに拡散層を設けてスクリーン効果を持たせるようにする。これにより、図10の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0061】
また、図12は、トラックボール10の背面側に指紋認証装置28を備えた遠隔装置1cの中央縦断面図である。図12において、この実施の形態は、トラックボール10の背面側に指紋認証が可能なカメラ28aと光源28bを備えている。この実施の形態では、利用者はトラックボール10を操作する際に、自然に指を触れることとなり、この実施の形態は、このトラックボール10に触れた指の指紋を自然な形で認証することができる。しかも、透明なトラックボール10は接写レンズの役割を果たすので、光源28bから照射され、指によって反射された光をカメラ28aで撮影することを容易に行うことができる。
【0062】
以上述べたように、この実施の形態に係る遠隔操作装置に採用される座標指示装置は、球体(トラックボール)と、この球体を回転可能に支持する球体支持台(ボール支持台)と、前記球体の回転方向を検知する回転検知部とを備えた座標指示装置であって、前記球体の中心の両側に配置され、該球体の回転方向を規制する回転支点機構部を備え、前記回転支点機構部は、球体の両側から球体に接触する一対の回転支点部と、該回転支点部を球体の表面に接触または離脱させる支点機構部とから構成する。
【0063】
この場合、球体の回転中心を通るX軸方向の両側に配置されるY軸回転支点機構部と、前記X軸方向と90度ずれて前記回転中心を通るY軸方向の両側に配置されるX軸回転支点機構部とを備え、前記Y軸回転支点機構部と前記X軸回転支点機構部は、球体の両側から球体に接触する一対の回転支点部と、該回転支点部を球体の表面に接触または離脱させる支点機構部とを備えるようにする。
【0064】
さらに、前記座標指示装置は、支点機構部を動作制御する制御部を備え、前記制御部は、2組の前記回転支点部を球体と離脱させた第1の状態と、どちらか1組の前記回転支持部を前記球体に接触する第2の状態と、2組の前記回転支点部を前記球体の表面に接触させる第3の状態を取り得るように前記支点機構部を動作制御するようにする。この場合、前記制御部は、前記外部装置からの動作信号に基づいて前記第1の状態と第2の状態と第3の状態を動作制御する。そして、前記第2の状態では、球体に接触しない回転支点部を、所定の時間間隔、または外部装置からのイベント情報に基づいて球体に接触させるように前記支点機構部を動作制御することもできる。
【0065】
また、前記球体を透光性素材で形成し、該球体の表面から前記球体の規制される回転方向を表示する表示装置を前記球体を介して視認可能な筺体内部に配置してもよい。さらに前記球体を透光性素材で形成し、筺体内部に、発光源と、この発光源から照射されて、球体の表面の障害物の反射光を撮影するカメラを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態に係るテレビジョン受像機の概略構造図である。
【図2】テレビジョン受像機の装置ブロック図である。
【図3】遠隔操作装置の外観図である。
【図4】遠隔操作装置の構造図である。
【図5】トラックボールの表示方向を示す遠隔操作装置の構造図である
【図6】トラックボールに表示される表示状態図である。
【図7】テレビジョン受像機の動作フロー図である。
【図8】テレビジョン受像機の動作フロー図である。
【図9】図7,8のテレビジョン受像機とトラックボールの画面遷移図である。
【図10】遠隔操作装置の表示部の他の応用例を説明する遠隔操作装置の中央断面図である。
【図11】遠隔操作装置の表示部の他の応用例を説明する遠隔操作装置の中央断面図である。
【図12】指紋認証装置を備えた遠隔操作装置の中央断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1…遠隔操作装置、2…筺体、10…トラックボール、20…表示部、21…制御部、22…記憶部、
23…赤外線通信部、24…回転検知部、25…操作ボタン、26…ボール支持台、27…取付ベース、40…回転支点機構部、50…X軸回転支点機構部、51…支点部、52…支点機構部、60…Y軸回転支点機構部、61…支点部、61a…アーム、61b…回転軸部、61c…突起部、61d…バネ体、62…支点機構部、90…カーソル、100…受像機本体、101…表示部、101a…表示画面、100…受像機本体、101…表示部、101a…表示画面、102…音声出力部、103…アンテナ、104…チューナ、105…インターネット、106…ネットワーク通信部、107…赤外線通信部、108…記憶部、109…制御部、300…第1メニュー画面、301…第1階層メニュー、310…第2階層メニュ画面、P…トラックボール中心、PX…回転軸、PY…回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体と、この球体を回転可能に支持する球体支持台と、前記球体の回転方向を検知する回転検知部とを備えた座標指示装置であって、
前記球体の中心の両側に配置され、該球体の回転方向を規制する回転支点機構部を備え、
前記回転支点機構部は、球体の両側から球体に接触する一対の回転支点部と、該回転支点部を球体の表面に接触または離脱させる支点機構部とから構成する
ことを特徴とする座標指示装置。
【請求項2】
請求項1記載の座標指示装置において、
球体の回転中心を通るX軸方向の両側に配置されるY軸回転支点機構部と、前記X軸方向と90度ずれて前記回転中心を通るY軸方向の両側に配置されるX軸回転支点機構部とを備え、
前記Y軸回転支点機構部と前記X軸回転支点機構部は、球体の両側から球体に接触する一対の回転支点部と、該回転支点部を球体の表面に接触または離脱させる支点機構部とを備えている
ことを特徴とする座標指示装置。
【請求項3】
前記請求項2記載の座標指示装置において、
前記支点機構部を動作制御する制御部を備え、
前記制御部は、2組の前記回転支点部を球体と離脱させた第1の状態と、どちらか1組の前記回転支持部を前記球体に接触する第2の状態と、2組の前記回転支点部を前記球体の表面に接触させる第3の状態を取り得るように前記支点機構部を動作制御する
ことを特徴とする座標指示装置。
【請求項4】
前記請求項3記載の座標指示装置において、
前記制御部は、前記外部装置からの動作信号に基づいて前記第1の状態と第2の状態と第3の状態を動作制御する
ことを特徴とする座標指示装置。
【請求項5】
前記請求項3または4記載の座標指示装置において、
前記第2の状態では、球体に接触しない回転支点部を、所定の時間間隔、または外部装置からのイベント情報に基づいて球体に接触させるように前記支点機構部を動作制御する
ことを特徴とする座標指示装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の座標指示装置において、
前記球体を透光性素材で形成し、該球体の表面から前記球体の規制される回転方向を表示する表示装置を前記球体を介して視認可能な筺体内部に配置した
ことを特徴とする座標指示装置。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれかに記載の座標指示装置において、
前記球体を透光性素材で形成し、
筺体内部に、発光源と、この発光源から照射されて、球体の表面の障害物の反射光を撮影するカメラを備えた
ことを特徴とする座標指示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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