説明

座標測定機械用プローブヘッド

【課題】低いコストで、3つの座標方向における高分解能の測定を可能にする。
【解決手段】ハウジング12内に弾力性をもって吊り下げられた探針18を備えた座標測定機械用のプローブヘッド10。センサー構成26は前記ハウジング12に対する前記探針18の片寄りを検出する。前記センサー構成26は、磁石34と前記磁石に近接して配設されたホール素子36とを有する少なくとも1つのホールセンサーを備えている。前記探針18が片寄ると、前記磁石34が磁石34のN極とS極とによって規定されるその軸方向において前記ホール素子36に沿ってその側方を通過する。極性の変化するホール電圧が前記ホール素子36で得られる。極性が反転する点付近にあるホール電圧の直線的な範囲が、探針18の片寄りを表す量として処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に弾力的に吊り下げられた探針と、前記ハウジングに対する前記探針の片寄りを検出するためのセンサー構成とを備えた座標測定機械用プローブヘッドに関し、前記センサー構成が磁石と前記磁石に近接して配設されたホール素子とを有する少なくとも1つのホールセンサーを有することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプのプローブヘッドが下記特許文献1に開示されている。
前記既知のプローブヘッドは、シャフトの寸法を求めるために設計されている。これは回転シャフトの外周面に押しつけられた球状のプローブ先端部を有する細長いアームを有する。前記アームは、断面積が減じられた節(セグメント)からなり膜ヒンジの様態で設計された関節構造を有する平行四辺形型構造の一部である。全体の構成は単一部材のように設計されている。前記プローブ先端部を有するアームの運動を電気的に検出可能な信号に変換するために、プローブ先端部によって間接的に動かされるコアが測定コイル内に押し込まれるようになされた誘導センサー構造が利用される。この場合、センサー構造の別の実施形態としてホール素子も提案されている。
【0003】
前記既知のプローブヘッドは、1次元測定を実行するための専用として提供され、またそれに適したものである。ホール素子の配設の詳細とホール電圧の評価に関しては、何も示されていない。
下記特許文献2には、物体の空間的位置を検出する方法および装置が開示されている。この既知の装置では、この目的のために提案されたホールセンサーなどの4×4個のセンサーの配列が利用される。この場合も、ホール素子の配設の性格とホール電圧の評価とに関しては、それ以上何も示されていない。
【0004】
下記特許文献3には、3次元測定のために設計された座標測定機械の測定プローブが開示されている。これらの3次元位置測定のために、磁気抵抗センサーが提案されている。この既知のプローブの場合、探針はその極の一方が磁界に依存して抵抗に対向するように位置し、探針の片寄りによって磁極と抵抗との間の間隔が変化させられる。この場合も、一定の空間分解能を実現するために、磁界に感応する複数の抵抗の配列が利用される。
【0005】
下記特許文献4には、あらゆる方向に片寄ることのできる探針を有するプローブヘッドが開示されている。これもまた、座標測定機械を利用した測定に関するものである。この既知のプローブヘッドの場合、探針の運動を測定および検出するために誘導センサーの配列が利用されているが、これは3つの軸の各々に探針の端の両側に配設された2個の誘導センサーを備えたものである。各誘導センサーは、ブリッジ回路を構成するように接続されている。
【0006】
下記特許文献5には、はさみ尺が開示されている。この既知のはさみ尺の場合、はしご形の配列がバーの上で利用され、バー上をすべる移動子にホールセンサーが備えられている。ホールセンサーは磁石の近く、具体的にはN極とS極との間の対称面内に配設され、それにより強磁性による擾乱が存在しない場合は、磁石の磁力線が対称形にホール素子を貫通し、その結果ホール電圧が厳密にゼロとなるように構成されている。もしもホールセンサーを有する移動子がバー上で変位すると、はしご形配列の強磁性の横棒がホールセンサーを通過して磁界をゆがめ、その結果磁力線が非対称にホール素子を貫通し、有限な値のホール電圧が印加される。強磁性の横棒が通過すると、前記ホール電圧は先ずゼロから最小値に低下し、次にゼロを通過した後最大値まで増加し、その後再度ゼロに戻るという事実によって、ホール電圧のパターン(プロファイル)における上記の現象が示される。この信号の変化パターンが閾値ステージに供給され、これが上記の信号の変化パターンからパルスを形成し、その後でパルスをカウントすることによりバー上の移動子の位置が求められる。
【0007】
下記特許文献6には、可動物体、つまり空圧シリンダー内のピストンの位置を検出する装置が開示されている。この場合も、ゼロ点を通過するホール電圧の上記の変化パターンが、具体的にはホールを磁石が横方向に横切ることにより利用される。この場合も、ホール信号は閾値ステージにより更に処理される。
最後に、下記特許文献7には、ホールセンサーにより可動部品の位置を検出するための別のセンサー構成が開示されているが、上記のホール電圧パターンと閾値ステージを使用して自動車のフロントガラスのワイパーを制御するために、このホールセンサーも同様に磁石で横方向に横切られる。
【0008】
座標測定機械(下記特許文献8および下記特許文献2)に関する限り、前記既知の構成は、設置状況および信号の評価に関する詳しい特徴の詳細な説明を行わずに、ホールセンサーを提案している。
ゼロ点を通過するホール電圧のパターンを発生する他の応用において、位置を求めるためにホールセンサーが使用される限り(下記特許文献5、下記特許文献6、下記特許文献7および下記特許文献9)、これは全く異なる応用分野に関し、かかる応用は通過する物体の数を数えるか、またはそれにより特定の端部位置を求めるために、変調されたホール信号を閾値ステージによりパルスもしくは矩形信号に変換することに限定される。
【特許文献1】独国特許出願公開第3721682号明細書
【特許文献2】独国特許発明第19823059号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3708105号明細書
【特許文献4】独国特許発明第2620099号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3720524号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第19712829号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第19639801号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第3721681号明細書
【特許文献9】独国特許発明第19858214号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それに対して、本発明の目的は上記の不利益を回避するように、最初に述べたタイプの座標測定機械のためのプローブヘッドを提供することである。特に、座標測定機械における従来の測定用の構成では実現できなかった、低い装置費および低いコストで、3つの座標方向における高分解能の測定を可能にすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、磁石のN極とS極とによって規定されるその軸の方向において磁石の側方をホール素子が通過して、それにより極性が変化するホール電圧をホール素子から取り出すことができ、また極性の変化点付近におけるある範囲のホール電圧が探針の片寄り量として処理されることで特徴づけられる、最初に述べたタイプのプローブヘッドによって達成される。
【0011】
本発明の目的はこのようにして完全に達成される。
本発明の手段は座標測定機械の分野において初めて、他の応用分野でそれ自体は知られているホールセンサーの構成により、任意の座標方向における探針の片寄りを、高分解能と直線的な信号パターン(プロファイル)で検出することを提案する。ここで一般に座標の各方向について1個のホールセンサーしか必要でないが、以下説明されるように、ある種の用途においては他の理由により2個または4個のホールセンサーを使用することが有利である。
【0012】
したがって、座標測定機械用の既知のプローブヘッドと異なり、アクティブな(作動中の)測定素子の数が大幅に低減され、前記素子をアレイ状に、つまり多数使用する必要がなくなる。他の応用分野におけるホールセンサーの使用と比較して、移動距離の関数として知られるホール電圧のパターンが、閾値の検出という意味だけでなく評価されるという利点がある。すなわち、本発明は移動距離の関数であるホール電圧のパターンがゼロ通過点の領域において比較的広い範囲にわたって直線的であり、測定値の連続的な検出および処理が可能であるという、従来認識されていなかった事実を利用するものである。
【0013】
本発明の実施形態において、この範囲は実質的に直線性を有することが好ましい。
この手段は、ホール素子の元来非直線的な特性曲線を、例えば事前に求められている補正値によって直線に補正した場合に、測定値をより単純に処理することが可能になるという利点がある。
本発明によるプローブヘッドの好適な改良においては、それ自体は既知の仕方でハウジング内に平面が規定され、この平面は探針の待機位置において探針の半径方向の平面を形成している。
【0014】
探針は好適には、前記平面内にある支点のまわりに旋回するようになされ、また前記旋回運動を検出するために、探針には少なくとも1つの第一の磁石が備えられ、ハウジングには少なくとも1つの第一のホール素子が備えられているか、またはその逆でもよい。
この場合、少なくとも1つの第一の磁石の軸が探針の軸と平行となり、かつ探針の待機位置では、その両極の間に規定された対称平面が前記平面内にあるように位置することが特に好適である。
【0015】
この手段は、測定がこの平面内での探針の旋回に依存しないので、いわゆるX−Y平面内での精密な測定が可能になるという利点を有する。
ある具体的な実施形態の場合、探針はダイアフラムにより前記平面内にカルダン方式で吊り下げられ、第一の磁石と第一のホール素子とはダイアフラム内の第一の開口を通って突出している。
【0016】
この手段は、この目的のために必要とされる素子が障害をもたらすことなく、カルダン平面内でのX−Y方向の片寄りを測定できるという利点がある。
この場合、第一の磁石が探針から離れる半径方向に延びるホルダー上に配設され、第一のホール素子がハウジングの軸方向に延びる内壁上に配設されていることが特に好適である。
【0017】
この手段は、ホルダーの長さに渡って探針の旋回を強化するという利点がある。ここで、ハウジングの内壁上でのホール素子の配置は、ホルダーの最大の長さに対応している。
別の実施形態の一群では、少なくとも1つの第一の磁石がその軸を探針の軸に直交させて配設され、前記第一の磁石は探針から離れる半径方向に延びる第一のホルダーの上に配設され、前記第一のホール素子はハウジングの半径方向に延びる内壁上に配置されている。
【0018】
この手段は、X−Y平面内での旋回を検出するために必要な各素子を互いに空間的に離して配置することができ、したがってより単純に実現できるという利点を有する。
本発明の別の実施形態では、ハウジング内に長手方向の軸が規定され、この軸は探針が待機位置にあるときに探針の長手方向の軸と一致し、探針はその長手方向の軸に沿って弾性的に変位可能であり、また探針には少なくとも1つの第二の磁石が備えられ、かつハウジングにはその変位を検出するための少なくとも1つの第二のホール素子が備えられているか、またはその逆でもよい。
【0019】
この実施形態はいわゆるZ軸に沿った測定に関するものであり、それは本発明の範囲内で同様に有利な仕方で実行可能である。
このことは特に、探針が平面内にある支点の回りを旋回できるならば常に言えることであり、その場合は第二の磁石はその軸が探針の軸と平行となるように配列され、また探針が待機位置にあるときはその両極の間に規定された対称面が平面内に位置している。
【0020】
この手段もまた、Z軸のセンサー構成が探針のカルダン平面内に位置する場合でも、非常に精密な測定を実行できるという利点を有する。
この実施形態の実際的な形態では、探針はやはりダイアフラムにより前記平面内にカルダン方式で吊り下げられ、また第二の磁石と第二のホール素子とはダイアフラム内の第二の開口を通って突出する。
【0021】
この方法はすでに述べた利点を有する。すなわち必要な素子は全て衝突の危険無しにダイアフラムの平面内に配設することができる。
更にZ軸上の変位を測定するための構成の上記の実施形態において、第二の磁石が探針上に配設され、また第二のホール素子がハウジングの内壁から半径方向に離れるように延びるホルダー上に配設されていることが特に好適である。
【0022】
この構成は、X−Y平面内での測定のためにセンサー素子の配列に直接対向する仕方で設計されており、したがって同様に、X−Y平面内で同時に起きる片寄りをZ軸上で独立な特に精密な測定を行うことができるという利点を有する。
別の実施形態では、第二の磁石はその軸が探針の軸と平行となるように配設され、探針が待機位置にあるときはその両極の間に規定された対称面が前記平面から間隔を開けるように配置されている。
【0023】
この手段は一方では測定素子の間隔を開けた配置により、また他方ではカルダン平面の間隔をあけた配置により、単純な構成が可能となるという利点がある。
最後に挙げた実施形態の場合、2つの磁石が互いに軸方向に離間して備えられているという事実により、特に良好な動きが更に得られる。
この手段は、Z軸に沿った変位の方向を信頼性良く検出できるという利点を有する。
【0024】
最後に、第二の磁石が探針上に配設され、また第二のホール素子がハウジングの内壁から半径方向に離れるように延びるホルダー上に配設されていることが好適である。
この手段は、探針がX−Y平面内で同時に旋回していても、Z軸上で精密な測定が可能であるという、すでに述べた利点を有する。
これまでに述べた全ての実施形態において、複数のホールセンサー、特に4つの第一のホールセンサーまたは2つの第二のホールセンサーが、プローブヘッドの周縁部にわたって分布するように配列されていることが特に好適である。
【0025】
この手段は差動測定が可能である、すなわち例えばX−Y平面内での旋回の測定中に、互いに対向して配置されたセンサーにおいて反転する信号の変化のみが検出され、同じ方向における変化はZ軸に沿った探針の運動から生じるものなので無視され、第一のホールセンサーでは検出されずに第二のホールセンサーで検出されるという利点を有する。
最後に、本発明の範囲内において、旋回の検出に供される少なくとも磁石および/またはホール素子が球面を備えており、その球面の曲率半径が旋回運動の半径に対応していることが特に好適である。
【0026】
この手段は、ホールセンサーの各素子が互いに相対的に旋回したときに、素子間の空隙が一定のままとなることが有利である。
更に別の利点が、説明および添付図面から理解される。
上で説明した特徴および以下で説明する特徴が、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ説明した組み合わせだけでなく、他の組み合わせ、または単独で利用できることは、自明である。
【0027】
本発明の実施形態が図面で図示され、以下の記述により更に詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1ないし図4Bにおいて、10は座標測定機械による3次元測定用のプローブヘッド全体を示す。プローブヘッド10は、軸方向に延びる内壁14を有するハウジング12を有する。軸方向の内壁14の円周面にはダイアフラム16が固定されている。ダイアフラム16はその中央で探針18を支持しているが、その軸19は図1に示すように探針18が待機位置にあるときにハウジング12の長手方向の軸と一致する。更に、軸19はプローブヘッド10のZ軸上にあり、その横方向の軸は通常の仕方でXおよびYで示されている。
【0029】
プローブヘッド18は、ダイアフラム16の中央で支点20にカルダン方式で取り付けられ、ダイアフラム16は同時に待機位置においていわゆるカルダン平面21を形成している。探針18はしたがって、矢印22で示されるように、X−Y平面内で支点20のまわりで旋回することができる。
探針18はその下端にある接触球24で終わる。
【0030】
明晰さのために、図1にはX−Y測定システムだけを示し、Z測定システムは図示していない。
以下、図2ないし図4Bを参照して、プローブヘッド10を更に詳しく説明する。
探針18上で、カルダン平面21よりも少し上方に星形のホルダー30が配設されているが、これは4本のアーム32aないし32dを有し、探針18から半径方向に突出し、かつ前記探針に固定されている。
【0031】
アーム32aないし32dの自由端には第一のホールセンサー33aないし33dが配設されているが、これらはX−Y平面内での支点20のまわりの探針18の旋回運動を検出する役割を果たす。
第一のホールセンサー33aないし33dは、アーム32aないし32dの自由端に配設された第一の永久磁石34aないし34dを有する。第一の永久磁石34aないし34dは、ダイアフラム16の外周部で第一の開口35aないし35dを通って突出している。これらと直接対向して、ハウジング12の軸方向の内壁14に第一のホール素子36aないし36dが配設され、第一の永久磁石34aないし34dと第一のホール素子36aないし36dとの間に非常に小さな空隙(エアギャップ)だけが残るようになされている。
【0032】
探針18のZ方向での変位を検出するために、第二のホールセンサー37a、37bが備えられている。前記センサーは、探針18上に互いに反対側の2つの位置に直接配設されている。第二の永久磁石38a、38bが、ホルダー30によって支持され、ダイアフラム16内の第二の開口39a、39bを通って突出している。それに付随する第二のホール素子40a、40bが、ハウジング12の軸方向の内壁14から半径方向に突出しているアーム42a、42bの自由端に配設されている。
【0033】
図3Aは、第一の永久磁石34aないし34dの磁極NおよびSによって規定される軸44が、探針18の軸19と平行に向けられていることを示す。第二の永久磁石38a、38bについても同様である。
更に、第一の永久磁石34aないし34dがZ方向に配置され、それらの対称面45が、探針18の待機位置において、磁極NおよびSの間で厳密にカルダン平面21内にあるように配置されている(図1および図3A)。このことは第二の永久磁石38a、38bについても同様である。
【0034】
第一の永久磁石34aないし34dは、全て同じように軸19の方向に向けられている。図示された実施形態では、N極は全て上に位置している。それに対して第二の永久磁石38a、38bは、図4Aおよび図4Bに明確に示されるように反対方向に配置されている。
最後に図3Aには、第一の永久磁石34aの第一のホール素子36aに面する表面46が、第一のホール素子36aの対向する表面48と同様に、球形となるように設計され、その曲率半径が支点20からのそれぞれの表面の距離に厳密に対応するようになされていることが示されている。
【0035】
図1ないし図4によるプローブヘッド10の作動は下記のようである。
探針18が図1、図3Aおよび図4Aに示すように待機位置にあるときは、X−Y平面内での旋回を検出するための第一のホールセンサー33aないし33dと、Z方向内の旋回を検出するための第二のホールセンサー37a、37bの両方に、ゼロ信号が存在する。これは、永久磁石34aないし34dおよび38a、38bの磁力線が、それぞれ、それらと位置合わせされたホール素子36aないし36dおよび40a、40bを対称形に貫通するからである。
【0036】
図3Bは、探針18がその待機位置18から旋回位置18’に旋回した状態を示し、図3Bにおける旋回角度はαで示されている。図3Bにおいて、全ての旋回した素子の参照符号にはプライム符号を付して示す。
容易に理解できるように、信号すなわちホール電圧は、ホール素子36a、36cにおいて反対方向に変化するが、その目的のために図5および図6を簡単に参照する。
【0037】
図5において、50はハウジングに固定されており、またその上にホールセンサー51が配設されるベースを示す。後者のホール素子52はベース50に恒久的に接続されている。ホール電圧UHはホール素子52の接続部54で得ることができる。
ホールセンサー51の永久磁石56は、わずかな間隔でホール素子52を横切って移動する。これは、永久磁石56のN極58とS極60とによって規定される軸61が運動の方向xと一致するように行われる。
【0038】
図5に示された基本的位置において、永久磁石56の対称面62は厳密にホール素子52の中央に位置している。したがって、これは永久磁石56の磁力線によって対称的に貫通され、厳密に対称形であるが反対方向に向いている対称面62の両側でホール素子52内でホール効果が起きるように、また荷電粒子が同じように、しかし反対方向に移動方向が曲げられるようになされている。
【0039】
ここで永久磁石56が軸61の方向にホール素子52を超えて左から右に移動すると、図6のグラフ64で示されるような移動量xに対するホール電圧UHが端子54で得られる。
ホール電圧UHはゼロ点を通過するときにプラスからマイナスに変わり、ゼロ点の近傍は好適には直線範囲66として、電圧範囲68または移動範囲70内で、ホール電圧UHが移動量xに対して依存するとみなされるものが設定されている。ホール素子52が非線形の特性カーブを有する場合は、事前に求めた補正値などにより直線に補正すればよい。
【0040】
ここで再度、図3Aおよび図3Bで示した状況を考えると、図3Aおよび図3Bによる角度αの純粋に旋回的な運動の場合、第一のホール素子36aと第一のホール素子36cとには厳密に反対のホール電圧が現れることが容易に分かる。これは純粋に旋回的な運動が生じたことを示すものである。
図3AでΔZと記され破線および点線で示され、かつ矢印示したように探針18がその軸19に沿ってのみ変位させられると、第一のホール素子36aと第一のホール素子36cとには同一の信号が現れるが、これらを通常の手段で除外して、旋回の測定に擬似的な値が入り込むのを防ぐことができる。
【0041】
また図3Aおよび図3Bからは、比較的長いアーム32aないし32dにより、第一のホールセンサー33aないし33dの測定点に、探針18の旋回が大きく伝えられることが分かる。
図4Aおよび図4Bは、Z軸に沿った探針18の変位の測定に関する状況を示している。図4Aは、初期状態を示しており、図4Bは、探針18が図4BでΔZと記されたように待機位置18から18‘まで変位させられたときの測定状態を示す。
【0042】
第二の永久磁石38A、38Bが反対向きに向けられているため、図3Aおよび図3Bを参照して前に述べたものと同じ結果が得られる。測定すべき量、具体的にはZ方向での探針18の直線的な変位の場合、2つのホール素子40aおよび40bに反対の電圧が現れ、一方、測定すべきでない量、具体的には探針18の旋回の場合には、同一の信号が生じる。この場合も、信号を望みの信号とそうでない信号とに分離することができる。
【0043】
Z方向の変位を測定するときに上記のような運動の伝達は起きないので、探針18の近傍で測定が行われ、これもまた図3Aおよび図3Bに示した状況とは異なる。
最後に、図7はプローブヘッド80の別の実施形態を示す。
プローブヘッド80もまた、その中にダイアフラム86が固定されている内部84を有するハウジング82を有する。
【0044】
ダイアフラム86は、探針88を支持しており、探針88の長手方向の軸が89で示されている。探針88もまたダイアフラム86の中央に吊り下げられ、支点90とカルダン平面91とがそこに規定されるようになされている。
ここで円または球面92は、探針88の旋回の測定がカルダン平面91から間隔を保って行われることを示す。
【0045】
接触球94は、やはり探針88の下端に配設されている。
第一のセンサー構成96は、X−Y平面内の探針88の旋回を測定する役割を果たす。第一のセンサー構成96は、探針88の半径方向の平面内の板として設計され、後者に固定されている。
第一のホルダー98の下には第一のホールセンサーが配置され、そのうちの2個、具体的にはホールセンサー99aおよび99bだけが図7に示してある。ただしこれらのホールセンサーは4個備えられ、探針88のまわりに90°間隔で配置されている。
【0046】
ホールセンサー99a、99bは、第一の永久磁石100a、100bを含む。
ハウジング82の下端には、ハウジング82の頂部に面する半径方向の内壁103をなす第二のホルダー102が配置されている。内壁103の上には、第一の永久磁石100a、100bと共に第一のホールセンサー99a、99bを構成する第一のホール素子104a、104bが配設されている。
この場合も106は、永久磁石100a、100bまたはホール素子104a、104bの互いに対向する表面が、その半径が円または球面92で決まる球面形状を有することを示す。この場合も、探針88を支点90のまわりに旋回させても、第一の永久磁石100a、100bと第一のホール素子104a、104bとの間の空隙が一定となる。
【0047】
探針88の上部領域内には、Z方向における探針88の変位を測定するための第二のセンサー構成110が支点90と第一のホルダー98との間に配設されている。
第二のセンサー構成110は、探針88の互いに反対側で軸方向に離して配列された2つのホールセンサー111a、111bを含む。第二のホールセンサー111a、111bはそれぞれ第二の永久磁石112a、112bおよび第二のホール素子114a、114bを含む。後者は、ハウジング82の内壁84から半径方向に突出するアーム116a、116bの自由端に配設されている。
【0048】
探針88が支点90のまわりに旋回すると、第一の永久磁石100a、100bが第一のホール素子104a、104bを通過して移動し、図6に対応する信号パターンがこの場合にも得られる。
第二の永久磁石112a、112bが第二のホール素子114a、114bを通過して移動する場合のZ方向での探針88の運動についても、同様のことが言える。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるプローブヘッドの第一の実施形態を側方から見た図2のI−I線に沿った非常に単純化した断面図である。
【図2】図1によるプローブヘッドの内部の、図1のII−II線による拡大した平面図である。
【図3A】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図3B】図2のIII−III線に沿った断面図で、図3Aと異なる作動位置を示す。
【図4A】図3Aおよび図3Bと同様の図であるが、図2のIV−IV線による。
【図4B】図3Aおよび図3Bと同様の図であるが、図2のIV−IV線による。
【図5】本発明で使用されるホールセンサーの模式的側面図である。
【図6】図5のセンサーにおける移動量に対するホール電圧を示すグラフである。
【図7】図1と同様の図であるが、本発明によるプローブヘッドの第二の実施形態のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(12;82)内に弾力性をもって吊り下げられた探針(18;88)と、前記ハウジング(12;82)に対する前記探針(18;88)の片寄り(α、ΔZ)を検出するためのセンサー構成(26;96,110)とを備えた座標測定機械用のプローブヘッドであって、
前記センサー構成(26;96,110)が磁石(34,38,56;100,112)と前記磁石に近接して配設されたホール素子(36,40;52;104,114)とを有する少なくとも1つのホールセンサー(33,37,51;99,111)を有し、
前記磁石(34)が、そのN極(N)とS極(S)とによって規定される軸の方向において、前記ホール素子(36)によって側方を通過され、その結果極性の変化するホール電圧(UH)が前記ホール素子(36,40;52;104,114)で得られ、また極性が反転する点付近におけるホール電圧(UH)の範囲(66,68,70)が前記探針(18;88)の前記片寄りを表す量として処理されるプローブヘッド。
【請求項2】
前記範囲(66,68,70)が実質的に直線性を有する、請求項1記載のプローブヘッド。
【請求項3】
前記ハウジング(12;82)内に平面(21;91)が規定され、この平面が前記探針(18;88)の待機位置における前記探針(18;88)の半径方向の平面を形成している、請求項1または2記載のプローブヘッド。
【請求項4】
前記探針(18;88)が前記平面(21;91)内にある支点(20;90)のまわりに旋回(X、Y)するようになされ、前記旋回を検出するために、前記探針(18;88)には少なくとも1つの第一の磁石(34;100)が備えられ、かつ前記ハウジング(12,82)には少なくとも1つのホール素子(36;104)が備えられているか、またはその逆の構成である、請求項3記載のプローブヘッド。
【請求項5】
少なくとも1つの第一の磁石(34)が、その軸(44)を前記探針(18)の軸(19)と平行になるように配設され、前記探針(18)が前記待機位置にあるときは、その両極の間に規定されるその対称面(45)が前記平面(21)内にあるように位置している、請求項4記載のプローブヘッド。
【請求項6】
前記探針(18)が前記平面(21)内にあるダイアフラム(16)によってカルダン方式で吊り下げられ、かつ前記第一の磁石(34)と前記第一のホール素子(36)とが前記ダイアフラム(16)内の第一の開口(35)から突出している、請求項5記載のプローブヘッド。
【請求項7】
前記探針(18)から半径方向に延びるホルダー(30)上に、前記第一の磁石(34)が配設されており、また前記第一のホール素子(36)が前記ハウジング(12)の軸方向に延びる内壁(14)上に配設されている、請求項4ないし6のいずれかに記載のプローブヘッド。
【請求項8】
少なくとも1つの第一の磁石(100)が、その軸と前記探針(88)の軸(89)とが直交するように配設され、前記第一の磁石(100)が前記支点(90)から軸方向に間隔をおいて、前記探針(88)から離れるように半径方向に延びる第一のホルダー(98)上に配設され、かつ前記第一のホール素子(104)が前記ハウジング(82)の半径方向に延びる内壁(103)上に配置されている、請求項4記載のプローブヘッド。
【請求項9】
前記探針(18;88)の前記待機位置において、前記探針(18;88)の長手方向の軸(19;89)と一致する長手方向の軸(Z)が前記ハウジング(12;82)内に規定され、前記探針(18;88)がその長手方向の軸(19;89)に沿って弾性的に変位可能であり、前記旋回を検出するために、前記探針(18;88)には少なくとも1つの第二の磁石(38;112)が備えられ、かつ前記ハウジング(12,82)には少なくとも1つの第二のホール素子(40;114)が備えられているか、またはその逆の構成である、請求項3記載のプローブヘッド。
【請求項10】
前記探針(18)が前記平面(21)内にある支点(20)のまわりに旋回(X,Y)するようになされ、前記第二の磁石(38)はその軸が前記探針(18)の前記軸(19)と平行になるように配設され、前記探針(18)の前記待機位置においてはその両極の間に規定されるその対称面が前記平面(21)内にあるように位置している、請求項9記載のプローブヘッド。
【請求項11】
前記探針(18)がダイアフラム(16)によって前記平面(21)内にカルダン方式で吊り下げられており、また前記第二の磁石(38)と前記第二のホール素子(40)とが前記ダイアフラム(16)内の第二の開口(39)から突出している、請求項10記載のプローブヘッド。
【請求項12】
前記第二の磁石(38)が前記探針(18)上に配設されており、前記第二のホール素子(40)が前記ハウジング(12)の内壁(14)から離れるように半径方向に延びるホルダー(42)上に配設されている、請求項9ないし11のいずれかに記載のプローブヘッド。
【請求項13】
前記第二の磁石(112)が、その軸と前記探針(88)の軸(89)とが平行になるように配設され、前記探針(18)の前記待機位置においては、その両極の間に規定される対称面が前記平面(21)から距離をおいて配置されている、請求項9記載のプローブヘッド。
【請求項14】
2個の第二の磁石(112a、112b)が軸方向に互いに距離をおいて備えられている、請求項13記載のプローブヘッド。
【請求項15】
前記第二の磁石(112)が前記探針(88)上に配設されており、また前記第二のホール素子(114)が前記ハウジング(82)の内壁(84)から離れるように半径方向に延びるホルダー(116)上に配設されている、請求項13または14記載のプローブヘッド。
【請求項16】
複数の前記ホールセンサー(33,37;99,111)が前記プローブヘッド(10;80)の周縁部にわたって分布するように配設されている、請求項1ないし15のいずれかに記載のプローブヘッド。
【請求項17】
4個の第一のホールセンサー(33a,33b,33c,33d;99a,99b)が前記周縁部にわたって分布して配設されている、請求項16記載のプローブヘッド。
【請求項18】
2個の第二のホールセンサー(37a,37b;111a,111b)が前記周縁部にわたって分布して配設されている、請求項16または17記載のプローブヘッド。
【請求項19】
旋回を検出するための少なくとも磁石(34;100)および/またはホール素子(36;104)が球面(46,48;106)を備え、前記表面(46,48;106)の曲率半径が前記旋回運動の半径に対応している、請求項1ないし18のいずれかに記載のプローブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−504085(P2006−504085A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545866(P2004−545866)
【出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011473
【国際公開番号】WO2004/038324
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504262889)カール ツァイス インドゥストリーレ メステクニーク ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Industrielle Messtechnik GmbH
【Fターム(参考)】