説明

座金

【課題】プライヤやペンチ等の工具によって座金自体を掴んだり、座金を破損したりする行為を防ぐ。
【解決手段】座金が、円板形状の台座部と、台座部の外周縁から立ち上がる囲み部とを備え、台座部の中央にビスの軸が挿通可能な開孔を有し、開孔にビスの軸を挿通したときに、台座部と囲み部とによってビスの頭部が収容可能な凹部を形成し、囲み部の外周面が、台座部から遠ざかるにしたがって近づくように傾斜した平面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある部材を他の部材に固定するためのビスの頭部と被締結部材との間に挟み込む座金に関し、特に、いたずら等によってビスを緩めることを防止する座金に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気、ガス、水道等が供給される居住用、店舗用、工場等の建物には、電気の使用量を示す電力量計が設置されている。電力量計には、外部からの電力の入力線と建物への電力の供給線とが接続されており、建物内での電力の使用量に応じて電力量計の数値が上昇する。電力量計は、定期的に、電気等の供給者の作業員によって検針され、その検針に基づいて、建物内での電力の使用量に応じた料金の算出が行われる。
【0003】
一方、さまざまな理由により、建物への電力の供給を止める必要が生じることがある。そのときには、電力量計の端子から建物への電力の供給線を外すことによって対応している。ただし、その外した屋内への電力の供給線を誰でもが簡単に電力量計に再度接続できるとすると、その供給停止の目的が達成できなくなる。また、電力量計への外部からの電力の入力線及び建物への電力の供給線が接続される端子に、人が簡単に触れたりすることができると危険である。このため、外部からの電力の入力線と建物への電力の供給線との接続端子には端子カバーを取り付けてあり、さらに、容易に端子カバーを外すことができないようにするために、ビスでその端子カバーを固定している。
【0004】
しかし、市販の工具、例えば、プラス又はマイナスのネジ回しによって回すことができるビスを用いて端子カバーを固定すると、いたずら等によってビスとともに端子カバーが簡単に外されてしまい、上記の供給停止の目的が達成できなくなったり、安全が阻害されたりすることになる。そのため、その端子カバーを固定するために、市販されていない特殊な工具によって締め付けたり緩めたりすることができるビスを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2003−278727号公報 特許文献1は、ビス頭部との間に着脱工具の挿入を規制するための工具規制部が設けられた座金を示す。特許文献1によると、専用の着脱工具を用いるとビスを緩めることができるが、ビス頭部と座金の甲具規制部との間が狭いので、プライヤやペンチ等でビス頭部を掴んで回すことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、さらに、プライヤやペンチ等の工具によって座金自体を掴み、座金とともにビスを回してビスを緩めたり、座金を破損したりする行為を防ぐことの要望が強い。
【0007】
そこで、本発明は、プライヤやペンチ等の工具によって座金自体を掴み、座金とともにビスを回してビスを緩めたり、座金を破損したりする行為を防ぐことが可能な座金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る座金は、円板形状の台座部と、該台座部の外周縁から立ち上がる囲み部とを備え、前記台座部の中央にビスの軸が挿通可能な開孔を有し、該開孔にビスの軸を挿通したときに、前記台座部と前記囲み部とによって前記ビスの頭部が収容可能な凹部を形成し、前記囲み部の外周面が、前記台座部から遠ざかるにしたがって近づくように傾斜した平面であることを特徴とする。
【0009】
その座金において、前記凹部の深さが前記ビスの頭部の長さよりも大であってもよい。
【0010】
その座金において、前記凹部の広さが前記ビスの頭部の座面の面積よりもわずかに大であってもよい。
【0011】
その座金は、鉄−炭素−銅−ニッケル系の材質から形成されてもよい。
【0012】
その座金において、前記囲み部の外周面の傾斜角度が、前記台座部の下面から約60度であってもよい。
【0013】
また、本発明に係る取付具は、座金と、前記座金の前記台座部の前記開孔に挿通可能な軸と、該軸の端部に取り付けられていて前記座金の凹部内に収容可能な頭部とを有するビスとを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電力量計は、電力等の使用量を計量して表示する電力量計表示部と、外部からの電力の入力線と建物への電力の供給線とが接続される端子が設けられた端子部と、該端子部を覆う端子カバーと、上記の取付具とを備え、前記端子部の雌ねじ孔と前記端子カバーの開孔と前記取付具の座金の開孔とが整列していて、該取付具の前記ビスの軸が、前記座金の開孔から前記端子カバーの開孔を通って前記端子部の雌ねじ孔に挿通され、前記ビスの頭部を回して前記端子カバーが前記端子部に固定されて、前記ビスの頭部が前記座金の凹部内に収容されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る固定方法は、電力等の使用量を計量して表示する電力量計表示部と、外部からの電力の入力線と建物への電力の供給線とが接続される端子が設けられた端子部と、該端子部を覆う端子カバーと、上記の取付具とを備える電力量計の前記端子カバーを前記端子部に固定する固定方法であって、前記端子部の雌ねじ孔と前記端子カバーの開孔と前記取付具の座金の開孔とを整列し、前記取付具の前記ビスの軸を、前記座金の開孔から前記端子カバーの開孔を通って前記端子部の雌ねじ孔に挿通し、前記ビスの頭部を回して締め付けて前記端子カバーを前記端子部に固定すると、前記ビスの頭部が前記座金の凹部内に収容されている、電力量計の前記端子カバーを前記端子部に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、座金自体を掴んで回したり破損したりすることを防ぐ座金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る座金を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す座金の平面図である。
【図3】図3は、図2の3A−3A線から矢印方向に見た座金の断面図である。
【図4】図4は、図3に示す座金にビスを挿入して部材同士を固定した状態を示す一部断面図である。
【図5】図5は、図4に示すビスの頭部の平面図である。
【図6A】図6Aは、電力量計の簡略化した構成を示す正面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示す電力量計の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る座金について説明する。なお、全図において、各部材の厚さ、長さ、形状、部材同士の間隔、隙間等は、理解の容易のために、適宜、拡大・縮小・変形・簡略化等を行っているため、本発明は図面の形状等に限定されるものではない。図の説明の際の上下・左右の表現は、説明の便宜上、その図を鉛直面内に置いた状態でのその図面の面に沿った方向を表すものとする。また、異なる図面において、同じ部材には同じ参照符号を付し、場合に応じて説明を省略する。
【0019】
[座金の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る座金10の斜視図で、図2は、座金10の平面図で、図3は、図2の3A−3A線から見た座金10の断面図である。
【0020】
座金10は、例えば、鉄−炭素−銅−ニッケル系の材質からなり、表面を浸炭焼入処理した高硬度のもので、概略円板状の台座部11とその周縁から立ち上がった囲み部12とを備える。
【0021】
台座部11は、囲み部12と一体に形成されていて、上面11aと下面11bとを有する。囲み部12は、上方が近づくように傾斜した外周面12aと、台座部11の上面11aが底面となるような凹部13を形成する内周面12bと、内周面12bと外周面12aとを連結する頂面12cとを備える。台座部11の下面11bの外周縁と、囲み部12の外周面12aの下側縁とが接する位置には、狭い平面部分21dが形成されている。
【0022】
また、台座部11の中心には、開孔14が形成されており、この開孔14には、図4に示すビス40の軸45が挿通される。
【0023】
座金10の各部分の寸法の概略は次のとおりである。台座部11の円形の下面11bの直径(座金10の直径)は約18mm、上面11aの直径は約11mm、上面11aと下面11bとの間の距離(台座部11の厚さ)は約1mm、開孔14の直径は約4mmである。囲み部12の傾斜した外周面12aの上縁によって形成される円形の頂面12cの直径は約14mm、凹部13の直径は約11mm、凹部13の深さは約3mmである。台座部11の下面11bから外周面12aまでの角度は約60度である。また、台座部11の下面11bから囲み部12の頂面12cまでの距離(座金10の高さ)は約4mmである。
【0024】
囲み部12の傾斜した外周面12aは、平面の斜面である。この傾斜角度は、上記のとおり、約60度であるが、これは一例であり、座金10をビスの頭部と被締結部材との間に装着したときに、座金10をペンチやプライヤ等の工具によって掴んだり、座金10の縁からマイナスドライバをこじ入れたりすることが困難であるような角度であれば、他の傾斜角度であってもよい。また、外周面12aは平面であることが望ましいが、ペンチやプライヤ等の工具によって掴んだりすることができない程度であれば、多少の湾曲があってもよい。
【0025】
また、座金10は、例えば、電力量計の端子カバーを固定するために用いる場合には、座金10が電力量計の端子カバーの縁から突出しない程度の直径の大きさを有する必要がある。
【0026】
さらに、凹部13の深さは、望ましくは、ビスの頭部の高さより大きいが、座金10とビスの頭部との隙間からマイナスドライバをこじ入れたりすることが困難であれば、ビスの頭部の高さより小さくてもよい。
【0027】
[座金の使用態様]
図4は、図3に示す座金10にビス40を挿入した状態を示す一部断面図であり、図5は、図4に示すビス40の平面図である。図6Aは、電力量計60の簡略化した構成を示す正面図であり、図6Bは、電力量計60の側面図である。
【0028】
図4及び図5に示すように、ビス40は、頭部41と軸45とからなる。軸45は、ねじ山及びねじ溝が形成されたねじ部45sを有する。ビス40の頭部41は、概略トラス形状で、上面42が平らである。上面42には、角が丸められた三角形状の溝42bが形成され、さらに、中央に、突起42aが形成されている。このようなビスを回すための工具は、その三角形状の溝42bに嵌るような、角が丸められた三角形状の突出部を有し、中央に、突起42aが挿入される凹部が形成されている(図示せず)。
【0029】
図6A及び図6Bに示すように、電力量計60は、電力量計表示部62と端子部56とを備える。電力量計表示部62は、ガラス等の透明ケースで囲まれていて、建物での電力の使用に応じて計量を行ってその計量値を表示する窓を有する。端子部56は、図示していないが、外部からの電力の入力線と建物への電力の供給線とが接続される端子が設けられている。その前面に端子カバー52が座金10を介してビス40によって固定されている。
【0030】
図4に基づいて、電力量計の端子台56に端子カバー52を固定する場合を説明する。端子台56と端子カバー52との間の空間54には、図示せぬ外部からの電力の入力線が接続される端子と建物への電力の供給線が接続される端子とが収容されている。
【0031】
まず、端子台56に端子カバー52を被せて、端子台56の雌ねじ孔56sと端子カバー52の孔52hとを整列させ、さらに、座金10の開孔14が端子カバー52の孔52hと整列するように、座金10を端子カバー52の上に置く。次に、ビス40をねじ先から座金10の開孔14を通って端子台56の雌ねじ孔56sまで挿入する。次に、専用工具を用いて、ビス40を回して締め付けて端子カバー52を端子台56に固定する。この状態を図4、図6A及び図6Bに示す。
【0032】
いたずらの場合、まず、図6A及び図6Bに示すビス40を回して外そうとするが、ビス40の上面42の特殊な形状の溝42aと係合する専用工具がないため、ビス40の頭部をペンチやプライヤ等の工具で挟んで回すことを試みることが予測される。
【0033】
しかし、この場合には、図4に示すように、ビス40の頭部41が、座金10の凹部13に入り込んでいて、囲み部12の頂面12cから出ていないため、ペンチやプライヤ等の工具で頭部41を掴むことはできない。
【0034】
次に、マイナスドライバをビス40の頭部41と座金10との間に差しこんで、ビス40を座金10から持ち上げようとすることが予測される。
【0035】
この場合には、ビス40の頭部41の外周縁と座金10の囲み部12の内面12bまでの隙間は小さいため、ビス40の頭部41の間にマイナスドライバの先端を差し込むこともできない。
【0036】
次に、座金10自体をペンチやプライヤ等の工具で掴んで、座金自体を回転させようとしたり、マイナスドライバを座金10の台座部11の下面11bと端子カバー52との間に差しこんで、座金10又は端子カバー52を変形させて、ビス40の頭部41を座金10の囲み部12の凹部13から露出させようとしたりすることが予測される。
【0037】
この場合には、囲み部12の傾斜した外周面12aをペンチやプライヤ等の工具で掴むことは困難である。また、座金10の台座部11の下面11bが端子カバー52に密着しているためそれらの間にマイナスドライバの先端を挿入するのも困難である。さらに、囲み部12の傾斜した外周面12a上をマイナスドライバの先端が滑ってしまうことになる。
【0038】
以上のように、本発明に係る座金を用いると、囲み部12の傾斜した外周面12aによって、座金自体をペンチやプライヤ等の工具で掴むことやマイナスドライバの先端を引っ掛けたりすることは困難であるため、いたずらを防止する効果は高い。
【0039】
上記の実施形態では、座金は円板形状のものであるが、三角形状、四角形状、他多角形状のものであってもよい。
【0040】
以上、本発明に係る座金の一実施形態について説明したが、本発明はそれらの実施形態に拘束されるものではなく、当業者が容易になしえる追加、削除、改変等は、本発明に含まれるものであり、また、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められることを承知されたい。
【符号の説明】
【0041】
10・・・座金
11・・・台座部
11a・・・上面
11b・・・下面
12・・・囲み部
12a・・・外周面
12b・・・内周面
12c・・・頂面
13・・・凹部
14・・・開孔
40・・・ビス
41・・・ビスの頭部
42・・・上面
42a・・・突起
42b・・・溝
45・・・軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板形状の台座部と、
該台座部の外周縁から立ち上がる囲み部とを備え、
前記台座部の中央にビスの軸が挿通可能な開孔を有し、
該開孔にビスの軸を挿通したときに、前記台座部と前記囲み部とによって前記ビスの頭部が収容可能な凹部を形成し、
前記囲み部の外周面が、前記台座部から遠ざかるにしたがって近づくように傾斜した平面である、座金。
【請求項2】
請求項1の座金において、前記凹部の深さが前記ビスの頭部の長さよりも大である、座金。
【請求項3】
請求項1又は2の座金において、前記凹部の広さが前記ビスの頭部の座面の面積よりもわずかに大である、座金。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの座金において、鉄−炭素−銅−ニッケル系の材質から形成された、座金。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの座金において、前記囲み部の外周面の傾斜角度が、前記台座部の下面から約60度である、座金。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの座金と、
前記座金の前記台座部の前記開孔に挿通可能な軸と、該軸の端部に取り付けられていて前記座金の凹部内に収容可能な頭部とを有するビスとを有する、取付具。
【請求項7】
電力等の使用量を計量して表示する電力量計表示部と、
外部からの電力の入力線と建物への電力の供給線とが接続される端子が設けられた端子部と、
該端子部を覆う端子カバーと、
請求項6の取付具とを備え、
前記端子部の雌ねじ孔と前記端子カバーの開孔と前記取付具の座金の開孔とが整列していて、該取付具の前記ビスの軸が、前記座金の開孔から前記端子カバーの開孔を通って前記端子部の雌ねじ孔に挿通され、前記ビスの頭部を回して前記端子カバーが前記端子部に固定されて、前記ビスの頭部が前記座金の凹部内に収容されている、電力量計。
【請求項8】
電力等の使用量を計量して表示する電力量計表示部と、
外部からの電力の入力線と建物への電力の供給線とが接続される端子が設けられた端子部と、
該端子部を覆う端子カバーと、
請求項6の取付具とを備える電力量計の前記端子カバーを前記端子部に固定する固定方法であって、
前記端子部の雌ねじ孔と前記端子カバーの開孔と前記取付具の座金の開孔とを整列し、
前記取付具の前記ビスの軸を、前記座金の開孔から前記端子カバーの開孔を通って前記端子部の雌ねじ孔に挿通し、
前記ビスの頭部を回して締め付けて前記端子カバーを前記端子部に固定すると、前記ビスの頭部が前記座金の凹部内に収容されている、電力量計の前記端子カバーを前記端子部に固定する固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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