説明

廃インクタンク

【課題】小型化および携帯性機能を実現したインクジェット記録装置などにおいて、廃インクを効率よく確実に導入して保持することができる廃インクタンクを提供すること。
【解決手段】ドレインパックケース部材647に、その内部を大気に連通するための穴1を設け、その穴1は、記録装置が記録動作時の姿勢にあるときに上方に位置し、かつ記録装置が保管時の設置姿勢にあるときは、その設置姿勢におけるドレインパックケース部材647内の廃インク吸収体の下側の端部よりも上方に位置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録装置から排出される廃インクを吸収するための廃インクタンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器およびワークステーション等の出力機器として用いられる記録装置は、画像情報に基づいて、用紙やプラスチック薄板等の被記録材(記録媒体)に画像を記録するように構成されている。このような記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分けることができる。
【0003】
シリアルスキャン方式を採るシリアルタイプの記録装置は、被記録材の搬送方向(副走査方向)と交叉する方向(主走査方向)における記録手段の移動を伴って記録をする構成となっている。すなわち、記録手段は、被記録材に沿って主走査方向に移動するキャリッジ上に搭載されており、被記録材を所定の記録位置にセットした後に、キャリッジと共に記録手段が主走査方向に移動しつつ1行分の画像を記録し、その1行分の記録を終了した後に被記録材を副走査方向に所定量搬送する。このような1行分の画像の記録と、被記録材の所定量の搬送とを交互に繰り返すことによって、被記録材の記録面全体に画像を記録する。一方、ラインタイプの記録装置は、記録手段の移動を伴わずに記録をする構成となっている。すなわち、被記録材における記録面の幅方向の全域に渡って延在する記録手段を用い、被記録材を搬送しつつ、記録手段によって順次画像を記録する。
【0004】
また、このような記録装置において、インクジェット方式の記録装置(インクジェット記録装置)は、被記録材に向かってインクを吐出する記録ヘッド(記録手段)を用いて画像を記録する。このようなインクジェット記録装置は、記録ヘッドのコンパクト化が容易であること、高精細な画像を高速で記録することができること、普通紙に特別な処理を必要とせずに記録することができること、ランニングコストが安いこと、ノンインパクト方式であるため騒音が少ないこと、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であること、などの利点を有している。中でも、被記録材の幅方向に多数の吐出口が配列されたフルマルチタイプの記録ヘッドを用いるライン型のものは、記録の一層の高速化が可能である。また、記録ヘッドとして、特に、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット式の記録ヘッドは、エッチング、蒸着、スパッタリング等の半導体製造プロセスを経て、基板上に電気熱変換体、電極、液路壁、天板などを形成することができる。そのため、インクの路を高密度に配置した記録ヘッドを容易に製造することができ、一層のコンパクト化を図ることができる。
【0005】
ところで、インクジェット記録装置においては、一般に、記録ヘッドの安定したインク吐出機能を維持または回復するために回復動作(回復処理)を行う。この回復動作としては、記録ヘッドの吐出口付近に付着した増粘インクや紙粉などを除去するためのワイピング動作、記録ヘッド内の増粘したインクや気泡を排出するための排出動作、インクを吐出しない不使用ノズルから増粘したインクを吐出する予備吐出などがある。排出動作によって画像の記録に寄与しないインクを排出することによって、新鮮なインクが記録ヘッドに供給されることになる。また、この排出動作としては、吐出口からインクを吸引排出する吸引排出動作と、記録ヘッド内のインクを加圧して、吐出口からインクを加圧排出させる加圧排出動作を含めることができる。また、予備吐出は、例えば、記録動作中などにおいて、画像の記録に寄与しないインクを吐出口から吐出する。
【0006】
特に、吸引排出動作によっては、大量のインクが消費されて廃インクとなる。この吸引排出動作においては、吐出口から強制的にインクを吸い出すために負圧を導入する。そのため、回復装置には負圧発生用のポンプが備えられており、そのポンプとしては、チューブをコロで押しつぶすタイプの所謂チューブポンプや、シリンダ内をピストンが移動するピストンポンプなどが用いられている。
【0007】
回復動作によって生じた廃インクは、回復装置から本体内部に設けられた廃インク吸収体へ導かれて、外部へ漏れないように保持される。廃インク吸収体としては、インクに対して毛管吸収力および拡散性に優れた繊維によって形成されたシート部材が用いられることが多い。
【0008】
図8は、従来のインクジェット記録装置の構成例を表す斜視図である。同図は内部構成を示すために、上ケース(図示せず)を取り外した状態を示している。
【0009】
図8のインクジェット記録装置は、記録シート(記録媒体)を装置本体内搬送部200へと自動的に給送する自動給紙部100を備えている。この自動給紙部100から1枚ずつ送出される記録シートは、搬送部200によって、所望の記録位置へと導かれ、さらに、その記録位置から排出される。搬送部200よりも記録シートの搬送方向下流側には排出部300が位置する。記録部400は、搬送部200によって搬送された記録シートに所望の記録を行う。回復部600は、記録部400等に対する回復処理を行う。これらの各機構部100,200,300,400,600は、シャーシ701を中心とするように組み付けられていて、シャーシ701は下ケース4に固定されている。
【0010】
図9は、図8のインクジェット記録装置の回復部400と廃インク吸収体645の配置を表す斜視図である。
【0011】
下ケース4内には廃インク吸収体645が、回復部600の下方に位置するように配置されている。回復動作によって生じた廃インクは、重力によって回復部600から廃インク吸収体645に滴下された後、その廃インク吸収体645の毛管力によって、その内部に拡散される。廃インク吸収体645は、廃インクを蒸発させつつ保持する構造となっている。
【0012】
図10は、図8のインクジェット記録装置の電気基板部を表す斜視図である。シャーシ701に取り付けられた電気基板6には、図示しないコンデンサやドライバチップなどの発熱源となりえる電気部品が実装されていため、それらの電気部品を覆うように金属部材7が配置されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
近年、インクジェット記録装置に対しては、その小型化および携帯性機能の向上が求められている。このような要求に応えるためには、装置本体の高さ(厚み)を抑えることが必要となる。
【0014】
しかし、上述した従来のインクジェット記録装置のように、回復部600の下方に廃インク吸収体645を配置する構成は、それらが上下に重なるため、装置本体の高さを抑える上において好ましくない。また、携帯至便にするためには、記録装置がどのような向きになって移動されても廃インクを装置の外部に漏らさらにように、廃インクを廃インク吸収体645に保持することが要求される。しかし、前述したように廃インク吸収体645からのインクの蒸発を促す必要もあるため、廃インク吸収体645を完全に密閉することはできず、蒸発用の通気孔を設けなければならない。
【0015】
また、装置の小型化を進めるに当たっては、装置本体の限られた空間内にさまざまな構成部品を配置しなくてはならず、1つの部品に複数の役割を持たせることによる部品点数削減、スペースの有効利用を図る必要がある。従来の記録装置において、金属部材7は、電気基板6に実装された発熱源となりえる部品類を覆うための役割しか担っていないため、例えば、その機能を記録装置の外装部材に兼有させるべく、その外装部材を難燃性の高い材料によって形成することも考えられる。しかし、その場合には、体積の大きい外装部材に、コストの高い難燃材を使用することとなり、装置の高価格化を招いてしまい好ましくない。
【0016】
本発明の目的は、小型化および携帯性機能を実現したインクジェット記録装置などにおいて、廃インクを効率よく確実に導入して保持することができる廃インクタンクを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の廃インクタンクは、インクを用いて画像を記録する記録装置に備えられて、画像の記録に寄与しない廃インクを吸収するための吸収体を容器内に収容した廃インクタンクにおいて、前記容器に、その内部を大気に連通するための大気連通孔を設け、前記大気連通孔は、前記記録装置が記録動作時の姿勢にあるときに上方に位置し、かつ前記記録装置が前記記録動作時の姿勢とは異なる所定の設置姿勢にあるときは、その設置姿勢における前記吸収体の下側の端部よりも上方に位置する前記容器の部位に設けることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の非使用状態を表す斜視図である。
【0020】
記録装置の外装部材は、上ケース801、下ケース802、給紙カバー803、および排紙口カバー804により構成されている。上ケース801と下ケース802は、装置本体800の厚み方向(図1中の上下方向)の中間に位置するセンタ801bにおいて嵌合する。給紙カバー803は上ケース801を覆い、排紙口カバー80は装置本体800の正面部下方を覆う。給紙カバー803と排紙口カバー804は、それらの幅方向における中央部に位置する後述のロック機構によって、互いに結合している。給紙カバー803と排紙口カバー804との合わせライン803cは、装置本体800のセンタ801bよりも下方に設定されている。給紙カバー803には、それを記録装置の使用時に開けるための手掛かり凸部803bが設けられている。
【0021】
装置本体800の前面800aは図に示すように湾曲するR形状となっており、装置本体800を持ち運ぶ際に手になじんで持ちやすいようになっている。また、前面800aを持って装置本体800を任意の場所に収納しようとした場合、装置本体800のその他の面が設置面となる可能性が高いため、前面800a以外の他の5面は概ね平面形状となっている。このような構成により、装置本体800は、外観上において開口部が覆い隠された、いわゆるシェル構造となっている。したがって、装置本体800の開口部が覆い隠された状態において、例えば、R形状の前面800aと対向する背面800dを設置面として、装置本体800を縦置きにした場合にも、後述するように排紙開口部等が覆われているため、装置本体800内部への埃や異物の侵入を防止することができる。
【0022】
図2は、図1のインクジェット記録装置の使用状態を表す斜視図である。
【0023】
図1の状態においては、上ケース801に設けられた給紙開口部801aが給紙カバー803によって覆われ、また下ケース802に設けられた排紙口802aが排紙口カバー804によって覆われている。これにより、前述したように、装置本体800内部への埃や異物の侵入が防止されている。また、図1の状態においては、給紙カバー803に取り付けられた磁石ユニット818と、排紙口カバー804に取り付けられた金属部材819とが結合して、給紙カバー803と排紙口カバー804とが互いにロック状態となっていおり、それらは、その他の上ケース801等にはロックされていない。そのため、図2のように給紙カバー803を開くことにより、磁力による結合が解除されて、排紙口カバー804が自重により自動的に開く。したがって、記録時に排紙口カバー804が開いていないために発生するおそれがある紙ジャムを防止することができる。本例においては、給紙カバー803を開くことに連動して排紙口カバー804を開くことを目的として、給紙カバー803と排紙口カバー804とを磁石を用いて結合している。その目的を達成するためには必ずしも磁石を用いる必要はなく、磁石を用いない他の形態としては、例えば、爪などの引っ掛け部材を用いて両者をロックする方法、センサにより給紙カバー803が開いたことを検知し、モータ等を用いて排紙口カバー804を開く機構などを採用することができる。
【0024】
給紙カバー803は、装置本体800に対して軸線803aを中心に回動可能に取り付けられており、図2のように、不図示のストッパによって記録シート(記録媒体)の給紙に最適な角度に止められることによって、図中の点線で示す記録シートPを保持する。排紙口カバー804は軸線804aを中心として回動可能に取り付けられており、下ケース802に設けられた凸部802bに排紙口カバー804の凸部804bが当接することによって、図2のように、排紙口カバー804が所定の回動位置に止められる。この排紙口カバー804の停止位置は、装置本体800を図2のように設置した際に、排紙口カバー804が装置本体800の設置面に当接しない位置に設定されている。このように、排紙口カバー804の停止位置を設定することにより、それが装置本体800の設置面に当接することによる音の発生や、排紙口カバー804の外観面における傷の発生を防止することができる。給紙カバー803に積載された記録シートPは、上ケース801の給紙開口部801aから矢印A1方向に給紙され、不図示の分離機構によって1枚ずつ分離されてから、不図示の搬送機構によって記録部に送られる。記録部によって画像が記録された記録シートPは、搬送機構によって、下ケース802の正面に設けられた排紙口802aから矢印A2方向へ排出される。
【0025】
閉じたときの給紙カバー803の直下の位置には、アクセスカバー809が軸線809aを中心として回動可能に設けられており、このアクセスカバー809を開くように回動させることにより、インクタンクの交換や紙ジャムの処理などができる。アクセスカバー809の後方の位置には操作部が設けられており、装置本体800の状態を示すLED810、電源のオンオフを行うパワーキー811、紙送りやリセットを行うリセットキー812が配置されている。この操作部は、アクセスカバー809の回動軸線809a側に向かって膨出する円弧形状を成すように、つまりアクセスカバー809の中央付近をえぐるように設けられており、その形状に合わせて、アクセスカバー809の後端部は円弧形状部809bに形成されている。。アクセスカバー809の手前側には凹形状部809cが設けられている。この凹形状部809cは、給紙カバー803に設けられた磁石ユニット818との干渉を防ぐと共に、アクセスカバー809を開く際の手掛かりの役割を果たす。
【0026】
装置本体800の右側面800cにはサイドカバー806が取り付けられており、このサイドカバー806に設けられた開口部806aから、I/Fコネクタ816へのアクセスが可能となっている。したがって、開口部806aを変更したサイドカバー806を用意して、それを選択的に取り付けるこのより、I/Fコネクタ816の変更に対応することができる。つまり、製品のラインナップの拡充に容易に対応することができる。また、サイドカバー806の面には化粧板808が取り付けられている。したがって、記録装置の仕向け地毎に異なる製品名などが記録された化粧板808を用意しておいて、それを交換するだけで仕向け地に対応することができる。
【0027】
図3は、外装を除いて装置本体800内の記録動作機構を表す斜視図である。
【0028】
本実施形態における記録動作機構は、大別すると、自動給紙部100と、搬送部200と、排出部300と、記録部400と、回復部600とから構成されており、それらの機構部は、シャーシ701に対して組み付けられている。自動給紙部100は、記録シートPを装置本体800内の搬送部200へ自動的に給送する。搬送部200は、自動給紙部100から1枚ずつ送出される記録シートPを所望の記録位置へ導くと共に、画像が記録された記録シートPを記録位置から排出する。排出部300は、搬送部200よりも記録シートPの搬送方向の下流側に位置する。記録部400は、搬送部200に搬送された記録シートPに所望の記録を行う。回復部600は、記録部400等に対する回復処理を行う。記録シートPの搬送方向(副走査方向)は矢印A1,A2方向であり、記録部400の往復動作方向(主走査方向)は矢印B方向である。廃インク吸収部としてのドレインパック642は、自動給紙部100の後方に位置する。
【0029】
記録部400は、吐出口からインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドを用いて記録をするものであり、その記録ヘッドは、電気熱変換体やピエゾ素子などを用いてインクを吐出する。電気熱変換体を用いた場合には、それが発する熱エネルギーによってインクを沸騰させ、そのときの発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。このような記録ヘッドは、矢印B方向に往復移動可能なキャリッジに搭載される。そして、キャリッジと共に記録ヘッドを主走査方向に移動させつつ、その記録ヘッドからインクを吐出する記録動作と、記録シートPを副走査方向に所定量搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことによって、記録シートPの記録面の全域に画像が記録される。
【0030】
回復部600は、記録ヘッドの安定したインク吐出機能を維持または回復するために回復動作(回復処理)を行う。この回復動作としては、記録ヘッドの吐出口付近に付着した増粘インクや紙粉などを除去するためのワイピング動作、記録ヘッド内の増粘したインクや気泡を排出するための排出動作、インクを吐出しない不使用ノズルから増粘したインクを吐出する予備吐出などがある。排出動作によって画像の記録に寄与しないインクを排出することによって、新鮮なインクが記録ヘッドに供給されることになる。また、この排出動作としては、吐出口からインクを吸引排出する吸引排出動作(以下、「吸引回復」ともいう)と、記録ヘッド内のインクを加圧して、吐出口からインクを加圧排出させる加圧排出動作(以下、「加圧回復」ともいう)を含めることができる。また、予備吐出は、例えば、記録動作中などにおいて、画像の記録に寄与しないインクを吐出口から吐出する。
【0031】
回復部600には、ワイピング動作のためのワイパーと、記録ヘッドをキャッピング可能なキャップが備えられている。吸引回復時と加圧回復時には、そのキャップ内にインクが排出される。予備吐出時には、そのキャップ内にインクを吐出してもよい。吸引回復時には、記録ヘッドをキャッピングしているキャップ内に負圧を導入することによって、記録ヘッドの吐出口からインクを吸引排出させる。その負圧を発生するためのポンプとしては、チューブをコロで押しつぶすタイプの所謂チューブポンプや、シリンダ内をピストンが移動するピストンポンプなどを用いることができる。このようなポンプの排出口からは、記録ヘッドの吐出口から吸引排出されたインクが廃インクとして排出される。また、このようなポンプは、加圧回復や予備吐出によってキャップ内に受容されたインクをも吸引して、それを廃インクとして排出口から排出する。本例の回復部600には、後述するように、このようなポンプとしてピストンポンプ640が備えられている。
【0032】
図4は、回復部600、廃インク吸収部、および電気基板の配置を表す斜視図である。
【0033】
600aは、記録ヘッドをキャッピング可能なキャップであり、上述したように、吸引回復時には、このキャップ600aを通してインクが吸引排出される。キャップ600aは、加圧回復時と予備吐出時にインクを受容することもできる。キャップ600a内にはピストンポンプ640が接続されており、このピストンポンプ640の負圧によってキャップ600a内のインクが吸引され、そのインクはピストンポンプ640の排出口から廃インクとして排出される。
【0034】
641は、PGベース604にPGベース蓋部材643を溶着することによって構成された廃インク流路であり、ピストンポンプ640から排出された廃インクは、この廃インク流路641を通る。回復部600の後方にはドレインパック642が配備されており、その内部の廃インク吸収体645の毛管現象により、廃インク流路641から廃インクが吸収される。ドレインパック642は、インクの吸収、拡散に優れた廃インク吸収体645をドレインパックケース部材647に収めて、そのドレインパック蓋部材652を溶着して封止した構成となっている。
【0035】
廃インク吸収体645によって吸収される廃インクの量は、別途カウント機構により管理される。そのカウント機構は、例えば、回復動作の回数と、回復動作に応じて生じる廃インク量などに基づいて、廃インク吸収体645に吸収される廃インク量を測定することができる。このようなカウント機構は、後述するメイン基板703上などにおいて回路構成することができる。廃インク量を管理することによって、廃インク吸収体645の毛管力によって保持された廃インクは、ドレインパック642に設けられた後述する穴(大気連通孔)1から漏れ出さないようになっている。
【0036】
ドレインパック642の下方には、記録装置の制御用の回路を構成するメイン基板703が配置されている。メイン基板703上には、コンデンサ704、705やドライバチップ706などの電気部品が実装されている。コンデンサ704、705の上面には防爆弁704a、705aが設けられており、これらは、過電圧などによる異常時に、コンデンサ704、705内部の温度上昇に伴って上昇した内圧を逃がす。これら電気部品には発熱する可能性のあるものが存在する。また、これらの電気部品は図のようにドレインパック642によって覆われている。ドレインパック642の材質としては難燃材であることが望ましく、本例の場合は難燃グレードUL94−V0の材料を使用している。
【0037】
ドレインパックケース部材647には、その内部の廃インク吸収体645に吸収された廃インクの水分の蒸発を促すための穴1が設けられている。この穴1は、ドレインパックケース部材647の内部を大気に連通させるための大気連通孔を形成するものである。また、この穴1は、図に示すようにドレインパック642の長手方向の全幅Cに対して、両端部から距離E、Fだけ離れた中央部の範囲Dのみに設けられている。その理由は、装置本体800が両側面800b、800cを設置面(底面)として保管された場合を考慮したからである。
【0038】
例えば、記録装置が左側面800bを設置面として保管された場合、つまりドレインパック642のF側を上方、E側を下方とした場合には、廃インク吸収体645に吸収された廃インクは、廃インク吸収体645の毛管力と重力との作用を受けてE側へ移動する。すなわち、F側の廃インク吸収体645の毛管力により保持される量を超えた廃インクは、E側の廃インク吸収体645へ移動する。この結果、D側およびF側に比べて、E側の廃インク吸収体645における単位体積当たりの廃インクの吸収量が多くなる。このように廃インクの吸収量が多くなった廃インク吸収体645のE側の部分では、振動や衝撃によって廃インクが外部へ漏れが発生しやすくなる。しかし、そのE側の部分には穴1が形成されていないため、廃インクがドレインパック642内から穴1を通して外部に漏れることを防止できる。同様に、記録装置が右側面800cを設置面として保管された場合には、F側の廃インク吸収体645における廃インクの吸収量がD、E側に比べて多くなる。しかし、そのF側の部分には穴1が形成されていないため、廃インクがドレインパック642内から穴1を通して外部に漏れることを防止できる。本例において、範囲D、E、Fは、ドレインパック642の長手方向の全幅Cを概ね3等分した範囲されて、その中央部の範囲Dに穴1が複数形成されている。
【0039】
図5および図6は、廃インクの流路の構成部品を抜粋した斜視図である。
【0040】
廃インク吸収体645は、ドレインパック642内にほぼ一杯詰められている。PGベース604に設けられた廃インク流路641は、例えば、高さが約4mm、幅が4mmの断面矩形であって、約80mmの長さに渡って延在する空間を成している。この廃インク流路641は、図4に図示したPGベース蓋部材643をPGベース604に溶着することにより、ピストンポンプ640の排出口に接続される一端と、ドレインパック642内部の廃インク吸収体645につながる他端以外が密閉されるように形成される。廃インク流路641の内部には、厚さ2mmの流路吸収体644が設置されている。その流路吸収体644は廃インク吸収体645と同性能の素材であり、その一端は、ドレインパック642の廃インク吸収体645と接触してつながっている。
【0041】
そして、ピストンポンプ640の排出口から排出された廃インクは、流路吸収体644に吸収されてから、その毛管現象により廃インク吸収体645へと吸収拡散される。製品(記録装置)の姿勢差により廃インクの吸収拡散速度は異なるが、廃インクは回復部600からドレインパック642へと吸収拡散される。
【0042】
記録ヘッドの不具合等を解消する等の理由により連続的に廃インクが排出されて、その排出量が流路吸収体644の吸収速度を上回る場合には、あふれた廃インクが廃インク流路641内の密閉空間内に一旦保持される。そして、その後の時間の経過に伴い、廃インク流路641内の廃インクは流路吸収体644および廃インク吸収体645へと吸収される。
【0043】
図7は、ドレインパック642とメイン基板702との位置関係を説明するための一部切欠きの側面図である。
【0044】
メイン基板702はドレインパック642の下方に配置され、また、インク水分の蒸発を促す穴1はドレインパック642の上面に形成されている。したがって、記録装置の通常の使用状態においては、穴1を通してメイン基板702に廃インクが滴下することはない。
【0045】
また、穴1はドレインパック蓋部材652の底面部から距離Gだけ離れた位置に形成されており、それらの間には廃インク吸収体645が詰められている。そのため、記録装置がドレインパック蓋部材652側を設置面として保管された場合、つまり図1における装置本体800の背面800dを設置面として保管された場合にも廃インクの漏れを防止することができる。すなわち、廃インク吸収体645に吸収された廃インクの重力により、その廃インクがドレインパック蓋部材652側へと下がってきた場合にも、そのドレインパック蓋部材645から穴1までは距離Gだけ離れているため、廃インクがドレインパック642内から穴1を通して外部に漏れることを防止できる。
【0046】
コンデンサ704とドレインパック642との間の距離Hは、コンデンサ704の防爆弁704aな確実な作動(開く)を確保するだけの距離に設定されている。そのため、仮に、コンデンサ704の上面の防爆弁704aが図7中の点線のように開く場合にも、その動作がドレインパック642によって阻害されることはない。
【0047】
本実施形態において、ピストンポンプ640を含む回復部600と、この回復部600から排出される廃インクを保持するドレインパック642の廃インク吸収体645とは、記録装置の使用時の姿勢においてほぼ同じ高さに配置される。そして、それらの両者を接続する廃インク流路641は外部に対して密閉され、その密閉空間に、廃インク吸収体645に接続される流路吸収体644が配置される。
【0048】
なお、廃インク流路641は、ベース604に形成された溝に対して平板状の蓋部材643を取り付けることで形成されるもの、ベース604にチャネル状の蓋部材643を取り付けることで形成されるもの、あるいはベース604に形成された溝に対してチャネル状の蓋部材643を取り付けることで形成されるものでもあってよい。
【0049】
また、ベース604は、回復部600に備わるピストンポンプ640の他、そのピストンポンプ640の駆動源としてのモータと、その他の部材を取り付けるためのベースとすることができる。そのモータは、記録シートPの給紙および/または搬送動作を行うための駆動源として兼用されるものであってもよい。また、上述したように、ポンプとしては、ピストンポンプ640の他、チューブポンプ等の種々の形態のものを用いることができる。
【0050】
また、本実施形態におけるドレインパックケース部材647は、回復部600の後方に位置して、廃インク流路641に接続される部分から記録装置の背面に沿って主走査方向に延在している。また、ドレインパックケース部材647は、記録装置の他の構成部材と干渉しないよう適切に形状が定められると共に、給紙される記録シートPの案内面に沿うように記録装置の内方に向かって傾斜するテーパ面が形成されている。このようなドレインパックケース部材647には、その内部空間の形状に合わせて、図5に示すように、その内部空間のほぼ全体に渡って廃インク吸収体645が充填されている。
【0051】
(他の実施形態)
本発明は、シリアルスキャン方式の記録装置のみならず、ラインタイプの記録装置にも適用することができる。また、回復部600は、記録装置に備えられる回復装置として構成することもできる。
【0052】
以下に、本発明の実施態様を列挙する。
【0053】
[実施態様1] インクを用いて画像を記録する記録装置に備えられて、画像の記録に寄与しない廃インクを吸収するための吸収体を容器内に収容した廃インクタンクにおいて、
前記容器に、その内部を大気に連通するための大気連通孔を設け、
前記大気連通孔は、前記記録装置が記録動作時の姿勢にあるときに上方に位置し、かつ前記記録装置が前記記録動作時の姿勢とは異なる所定の設置姿勢にあるときは、その設置姿勢における前記吸収体の下側の端部よりも上方に位置する前記容器の部位に設ける
ことを特徴とする廃インクタンク。
【0054】
[実施態様2] 前記記録装置の設置姿勢は上下方向が逆転する2つの設置姿勢を含み、
前記容器は、前記2つの設置姿勢において逆転する上下方向に延在し、
前記大気連通孔は、前記容器の延在方向における中央部に設ける
ことを特徴とする実施態様1に記載の廃インクタンク。
【0055】
[実施態様3] 前記大気連通孔は、前記容器の延在方向において該容器をほぼ3等分した中央の部分に設けることを特徴とする実施態様2に記載の廃インクタンク。
【0056】
[実施態様4] 前記容器は、廃インクの導入部と前記大気連通孔を除いて密閉されていることを特徴とする実施態様1から3のいずれかに記載の廃インクタンク。
【0057】
[実施態様5] 前記大気連通孔は、前記記録装置において熱源となりうる部材の上方に位置する前記容器の部分に設けることを特徴とする実施態様1から4のいずれかに記載の廃インクタンク。
【0058】
[実施態様6] 前記熱源となりうる部材は、電気基板であることを特徴とする実施態様5に記載の廃インクタンク。
【0059】
[実施態様7] 前記電気基板にはコンデンサが実装され、
前記容器は、前記電気基板との間に前記コンデンサの防爆弁の開閉に十分な空間を形成する
ことを特徴とする実施態様6に記載の廃インクタンク。
【0060】
[実施態様8] 前記容器は難燃性の高い材料によって形成されることを特徴とする実施態様1から7のいずれかに記載の廃インクタンク。
【0061】
[実施態様9] 前記記録装置は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用いて画像を記録するインクジェット記録装置であり、
前記容器は、前記記録ヘッドの性能を維持するために排出される廃インクを導入する
ことを特徴とする実施態様1から8のいずれかに記載の廃インクタンク。
【0062】
[実施態様10] インクを吐出可能な記録ヘッドを用いて画像を記録するインクジェット記録装置において、
画像の記録に寄与しない廃インクを吸収するための廃インクタンクとして、実施態様1から9のいずれかに記載の廃インクタンクを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【0063】
[実施態様11] 前記記録ヘッドの性能を維持するための回復動作に伴って廃インクを排出する回復手段を備えたことを特徴とする実施態様10に記載のインクジェット記録装置。
【0064】
[実施態様12] 前記回復手段の回復動作は、前記記録ヘッドのインク吐出口からインクを吸引排出する吸引回復動作、前記記録ヘッド内のインクを加圧してインク吐出口から排出させる加圧回復動作、または前記記録ヘッドのインク吐出口からインクを吐出させる予備吐出の内のいずれかを少なくとも含むことを特徴とする実施態様11に記載のインクジェット記録装置。
【0065】
[実施態様13] インクを吐出可能な記録ヘッドの性能維持するための回復動作に伴って、画像の記録に寄与しない廃インクを排出する記録ヘッドの回復装置において、
廃インクを吸収するための廃インクタンクとして、実施態様1から9のいずれかに記載の廃インクタンクを備えたことを特徴とする記録ヘッドの回復装置。
【0066】
[実施態様14] 回復動作は、前記記録ヘッドのインク吐出口からインクを吸引排出する吸引回復動作、前記記録ヘッド内のインクを加圧してインク吐出口から排出させる加圧回復動作、または前記記録ヘッドのインク吐出口からインクを吐出させる予備吐出の内のいずれかを少なくとも含むことを特徴とする実施態様13に記載のインクジェット記録装置。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、記録装置の記録動作時の姿勢と、それ以外の設置姿勢を考慮して、廃インクタンクにおける大気連通口の位置を設定することにより、装置の小型化および携帯性機能を実現した記録装置などにおいて、その記録装置の設置姿勢に拘わらず、廃インクを漏らさないように確実に保持することができる。
【0068】
また、発熱源となりうる電気基板を覆うように廃インクタンクを配置することにより、さらにはその廃インクタンクの材質を難燃性の高いものとすることにより、別途特別な延焼防止部材を設けることなく防火対策を図ることができ、その分、部品点数削減およびコストダウンが可能となる。また、副次的な効果として、発熱源から発生した熱を利用し、廃インクタンク内に吸収された廃インクの水分の蒸発を促進させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における記録装置の非使用状態または携行時の外観斜視図である。
【図2】図1の記録装置の使用状態における外観斜視図である。
【図3】図1の記録装置の外装を除いた記録動作機構の斜視図である。
【図4】図1の記録装置における回復部、廃インク吸収部、および電気基板の斜視図である。
【図5】図4の回復部における廃インクの流路と廃インク吸収部を説明するための要部の斜視図である。
【図6】図4の回復部における廃インクの流路を説明するための要部の斜視図である。
【図7】図4におけるドレインパックの断面図である。
【図8】従来のインクジェット記録装置における要部の斜視図である。
【図9】図8のインクジェット記録装置の回復装置と廃インク吸収体の斜視図である。
【図10】図8のインクジェット記録装置における電気基板部の斜視図である。
【符号の説明】
1 穴(大気連通孔)
2 溶着位置決めリブ
3 リブ
4 下ケース
100 自動給紙部
200 搬送部
206 LFモータ
300 排出部
301 排紙ローラ
400 記録部
600 回復部
640 ピストンポンプ
641 廃インク流路
642 ドレインパック
643 PGベース蓋部材
644 流路吸収体
645 廃インク吸収体
647 ドレインパックケース部材
652 ドレインパック蓋部材
701 シャーシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを用いて画像を記録する記録装置に備えられて、画像の記録に寄与しない廃インクを吸収するための吸収体を容器内に収容した廃インクタンクにおいて、
前記容器に、その内部を大気に連通するための大気連通孔を設け、
前記大気連通孔は、前記記録装置が記録動作時の姿勢にあるときに上方に位置し、かつ前記記録装置が前記記録動作時の姿勢とは異なる所定の設置姿勢にあるときは、その設置姿勢における前記吸収体の下側の端部よりも上方に位置する前記容器の部位に設ける
ことを特徴とする廃インクタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2004−230845(P2004−230845A)
【公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−24921(P2003−24921)
【出願日】平成15年1月31日(2003.1.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】