説明

廃プラスチック類の溶融固化方法及び溶融固化装置

【課題】フィルム系の軟質廃プラスチック類を固形化することにより、石炭等の固形燃料の代替として供給する方法及び装置において、装置製作コストが安価で、装置運転コストが安価である、固形化方法及び装置を提供する。
【解決手段】上部箱型ボックス、側壁部、底部にヒーターを設置した下部箱型ボックス、側壁部にヒーターを設置したホッパー、周辺部にヒーターを設置したスクリューフィーダー、廃プラスチック類に荷重を掛ける手段、溶融廃プラスチック類を切断、冷却する手段を備えた装置を製作する。下部箱型ボックス側壁部、底部の温度を100〜400℃、ホッパー側壁部を100〜300℃、スクリューフィーダー周辺部を100〜250℃の範囲に保持する。これにより、事前破砕動力不要、スクリューフィーダーによる押し出し動力少、加熱電力少による運転動力少となり、安価な装置製作、運転コストを達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物として排出される廃プラスチック類のうち、フィルム系の軟質廃プラスチック類を溶融固化することにより、石炭等の固形燃料の代替として供給する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物として排出される廃プラスチック類は、発熱量が高く石炭等の固形燃料の代替として再利用することが可能であるが、フィルム系の軟質廃プラスチック類はそのまま再利用することは困難であり、固形化して塊状とし、それを石炭等の固形燃料の代替として再利用する方法が、従来から提案されている。以下に従来の固形化の方法について説明する。
【0003】
特開2004−136632号公報は、廃プラスチック類の造粒方法を示しており、竪型円筒型の容器の内部に回転羽根を装着し、事前に粗破砕したフィルム系の軟質廃プラスチック類を装入して、羽根の回転により廃プラスチック類を粉砕し、かつ回転接触によって生じる摩擦熱により、廃プラスチック類を半溶融、凝集、固化させるものである。
【0004】
一方、特開平6−143255号公報、及び株式会社ホーライ、株式会社プラコーのパンフレットは、廃プラスチック類の造粒方法を示しており、横型円筒の周辺部に多数の孔を設置して、円筒内部にローラーを設置し、事前に粉砕したフィルム系の軟質廃プラスチック類を装入して、ローラーの回転接触によって生じる摩擦熱により、廃プラスチック類を半溶融、凝集させ、横型円筒の周辺部の孔から外部に押し出し、出口で適当な大きさに切断するものである。
【特許文献1】特開2004−136632号公報
【特許文献2】特開平6−143255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2004−136632号公報にて提案されている廃プラスチック類の造粒方法では、5mm程度の固形化物が製造され、固形燃料の代替として再利用可能であるが、1mm未満の細粒も同時に生成し、取り扱いが面倒である。また羽根の回転動力が大きく、かつ事前破砕のための動力が必要であるため、装置の運転コストの大部分を占める電力原単位が高く、運転コストが高いという欠点がある。また装置製作コストは、構造が複雑なため高い。
【0006】
また、特開平6−143255号公報、及び株式会社ホーライ、株式会社プラコーのパンフレットにて提案されている廃プラスチック類の造粒方法では、直径5ないし10mm、長さ50mm程度の固形化物が製造され、固形燃料の代替として再利用可能である。しかしローラーの回転動力が大きく、かつ事前粉砕のための動力が必要であるため、装置の運転コストの大部分を占める電力原単位が高く、やはり運転コストが高いという欠点がある。また装置製作コストも、構造が複雑なため高い。
【0007】
以上を踏まえると、フィルム系の軟質廃プラスチック類を固形化することにより、石炭等の固形燃料の代替として供給する方法における課題は、装置製作コストを安価にすること、及び装置運転コストを安価にすることである。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、フィルム系の軟質廃プラスチック類を事前破砕せずに溶融し、溶融された廃プラスチック類を、石炭等の固形燃料の代替として再利用することができる形状に固化する方法に関して、安価な装置製作コストと、安価な装置運転コストを達成する、廃プラスチック類の溶融固化方法及び溶融固化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述目的を達成するために、請求項1に記載の発明の廃プラスチックの溶融固化方法は、廃プラスチック類を装入する上部箱型ボックスを備え、上部箱型ボックスの下部に、側壁部及び/又は底部にヒーターを設置してある下部箱型ボックスを備え、下部箱型ボックスの下部に、側壁部にヒーターを設置してあるホッパーを備え、ホッパーの出口部に、周辺部にヒーターを設置してあるスクリューフィーダーを備え、上部箱型ボックスに装入された廃プラスチック類に荷重を掛ける手段を備え、スクリューフィーダー出口部より流出する溶融廃プラスチック類を、切断、冷却する手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の前記廃プラスチック類の溶融固化方法において、前記下部箱型ボックスの側壁部及び/又は底部の温度を100ないし400℃の範囲に保持し、前記ホッパーの側壁部の温度を100ないし300℃の範囲に保持し、前記スクリューフィーダーの周辺部の温度を100ないし250℃の範囲に保持することを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明の廃プラスチック類の溶融固化装置は、廃プラスチック類が装入される上部箱型ボックスと、上部箱型ボックスの下部に連結して設けられ、側壁部及び/又は底部に棒状ヒーター及び/又は巻線状ヒーターを設置してある下部箱型ボックスと、下部箱型ボックスの下部に連結して設けられ、側壁部に棒状ヒーターを設置してあるホッパーと、ホッパーの出口部に連結して設けられ、周辺部に円環状ヒーターを設置してあるスクリューフィーダーと、下部箱型ボックス、ホッパー、スクリューフィーダーのヒーター近傍に設置された温度検出手段と、上部箱型ボックスに装入された廃プラスチック類に荷重を掛ける手段と、スクリューフィーダー出口部より流出する溶融廃プラスチック類を、切断、冷却する手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にて提案するフィルム系の軟質廃プラスチック類の溶融固化方法によると、後述するように、廃プラスチック類を事前に破砕する必要がないため、これに要する動力が不要であり、先ず最初に加熱溶融することにより、スクリューフィーダーによる押し出し動力が少なくなる。また、廃プラスチック類の適正な加熱方法を採用することにより、加熱電力を少なくすることができ、総合的な運転動力が少なくなり、安価な装置運転コストを達成できる。
【0013】
また、本発明にて提案するフィルム系の軟質廃プラスチック類の溶融固化装置は、石炭等の固形燃料の代替として再利用することができる形状に固形化するために、必要最小限の仕様を備えている装置としているため、安価な装置製作コストを達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図1に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明における廃プラスチック類の溶融固化方法の実施の形態、及び溶融固化装置を示す説明図である。廃プラスチック類を装入する上部箱型ボックス1は、フィルム系の軟質廃プラスチック類を破砕することなしに、例えば圧縮減容したブロック状の形状のもの(図1の11参照)も装入可能である。したがって、事前に粗破砕、粉砕の必要がないため、これらの処理に要する動力が不要となる。
【0016】
上部箱型ボックス1の下部に連結して設けられる下部箱型ボックス2は、側壁部及び/又は底部にヒーターを装着してある。側壁部のヒーター5は巻線状ヒーターが好ましく、底部のヒーター6は金物に保護された棒状ヒーターが好ましい。底部の棒状ヒーターは、格子状に2段に設置することにより、溶融能力が増加する。
【0017】
上部箱型ボックス1に装入された圧縮減容したブロック状のフィルム系の軟質廃プラスチック11は、上部から荷重装置9により荷重を掛けることにより、下部箱型ボックス2の底部ヒーター6との接触率が高くなり、溶融が促進される。
【0018】
下部箱型ボックス2の下部に連結して設けられるホッパー3は、側壁部にヒーター7を装着してある。側壁部のヒーターは金物に保護された棒状ヒーターが好ましい。
【0019】
ホッパー3の出口部に連結して設けられるスクリューフィーダー4は、周辺部にヒーター8を装着してある。周辺部のヒーターは円環状ヒーターが好ましい。
【0020】
本発明における廃プラスチック類の溶融固化方法においては、下部箱型ボックス2の側壁部及び/又は底部に装着されたヒーター5及び/又はヒーター6の近傍の金物に設置された温度検出手段(熱電対等を使用する)により検出された温度を、100ないし400℃の範囲に保持する。温度範囲を設定した理由は、廃棄物として排出されるフィルム系の軟質廃プラスチックは、溶融温度が異なるものが含まれ、そのほとんどすべてを処理できるようにするため、事前に実験を行って決定したものである。100℃未満の温度では溶融不十分であり、400℃を超える温度では過溶融となり、電気使用量が多くなり運転コストが高くなる。
【0021】
次に、ホッパー3の側壁部に装着されたヒーター7の近傍の金物に設置された温度検出手段(熱電対等を使用する)により検出された温度を、100ないし300℃の範囲に保持する。温度範囲の設定は、事前に実験を行って決定した。下部箱型ボックス2のヒーター5及び/又はヒーター6で事前加熱してあるので、ホッパー3の上限温度は低くてよく、300℃となる。100℃未満の温度では溶融不十分であり、300℃を超える温度では過溶融となり、電気使用量が多くなり運転コストが高くなる。
【0022】
さらに、スクリューフィーダー4の周辺部に装着されたヒーター8の近傍の金物に設置された温度検出手段(熱電対等を使用する)により検出された温度を、100ないし250℃の範囲に保持する。温度範囲の設定は、事前に実験を行って決定した。下部箱型ボックス2のヒーター5及び/又はヒーター6、及びホッパー3のヒーター7で事前加熱してあるので、スクリューフィーダー4の上限温度は低くてよく、250℃となる。100℃未満の温度では溶融不十分であり、250℃を超える温度では過溶融となり、電気使用量が多くなり運転コストが高くなる。
【0023】
またさらに、スクリューフィーダー4の出口部に、流出する溶融廃プラスチック類を、切断、冷却する装置を備え、石炭等の固形燃料の代替として供給するために十分な粒度である50mm以下の大きさに切断後、冷却を行う。切断装置としては、回転刃を適正な回転速度で動かす方法等を採用することができ、冷却装置としては、空冷、水冷等の方法を採用することできる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の廃プラスチック類の溶融固化方法及び溶融固化装置の実施例について、さらに詳細に説明する。
【0025】
実施例1
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルの混合物から成っている不織布の廃棄物を圧縮減容し、800×600×600mmのブロック状にしたものを、上部箱型ボックスに装入し、ブロック状不織布の上から鉄板と鉄塊で荷重を掛けた。
【0026】
次に、下部箱型ボックス2の側壁部(巻線状ヒーター5装着)、及び底部(金物に保護された棒状ヒーター6装着)のヒーター近傍の金物に設置された熱電対により検出される温度を、100ないし200℃の範囲に保持した。また、ホッパー3の側壁部(金物に保護された棒状ヒーター7装着)のヒーター近傍の金物に設置された熱電対により検出される温度を、100ないし175℃の範囲に保持した。さらに、スクリューフィーダー4の周辺部(円環状ヒーター8装着)のヒーター近傍の金物に設置された熱電対により検出される温度を、100ないし150℃の範囲に保持した。
【0027】
加熱開始後8分経過してから、スクリューフィーダー出口部より溶融した不織布が流出し始めたので、スクリューフィーダー出口部付近に設置した回転刃10を数回/秒の頻度で回転させて溶融物を切断し、水槽に落下させて冷却した。製造された固化物は30×50mm程度の塊状物であり、石炭等の固形燃料の代替として十分供給できる性状であった。
【0028】
実施例2
ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ペットボトル(PET)の混合物から成っているペットボトルのラベル破砕品(10mm程度の粒度)を、上部箱型ボックスの底部にフィルム系の軟質ポリエチレン(PE)を敷いて、その上に装入し、さらにその上から木板と鉄塊で荷重を掛けた。
【0029】
次に、下部箱型ボックス2の底部(金物に保護された棒状ヒーター6装着)のヒーター近傍の金物に設置された熱電対により検出される温度を、100ないし350℃の範囲に保持した。また、ホッパー3の側壁部(金物に保護された棒状ヒーター7装着)のヒーター近傍の金物に設置された熱電対により検出される温度を、100ないし300℃の範囲に保持した。さらに、スクリューフィーダー4の周辺部(円環状ヒーター8装着)のヒーター近傍の金物に設置された熱電対により検出される温度を、100ないし250℃の範囲に保持した。
【0030】
加熱開始後10分経過してから、スクリューフィーダー出口部より溶融したペットボトルのラベルが流出し始めたので、スクリューフィーダー出口部付近に設置した回転刃10を1〜2回/秒の頻度で回転させて溶融物を切断し、水槽に落下させて冷却した。製造された固化物は25×50mm程度の塊状物であり、石炭等の固形燃料の代替として十分供給できる性状であった。
【0031】
実施例3
廃プラスチック類が装入される上部箱型ボックス1を、800×600×1200mmの大きさに鉄製で作成し、上部箱型ボックスの下部に連結して、下部箱型ボックス2を、800×600×600mmの大きさに鉄製で作成し、側壁部に巻線状ヒーターを全周設置し、底部に金物で保護された棒状ヒーターを、10本×6本の格子状に2段設置した。
【0032】
また、下部箱型ボックスの下部に連結して、ホッパー3を、800×600×300mmの大きさ(側壁部斜面800×400mm)に鉄製で製作し、側壁部に金物で保護された棒状ヒーター8本を設置した。さらに、ホッパーの出口部に連結して、スクリューフィーダー4(直径80mm、溝深さ10mm、長さ1350mmのスクリューとケーシング)を鉄製で製作し、ケーシングの外部でホッパー出口部と接触していない部分に、円環状ヒーターを設置した。
【0033】
またさらに、スクリューフィーダー出口部付近に、回転刃と回転機構を設置した。スクリューフィーダー押し出し動力は7.5kW、ヒーターの加熱動力は40kWとした。
【0034】
上述した廃プラスチック類の溶融固化装置は、処理能力100kg/時間で比較すると、前述した従来の固形化機の装置製作コストの1/3ないし1/4を達成した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明における廃プラスチック類の溶融固化方法の実施の形態、及び溶融固化装置を示す正面図及び側面図。
【符号の説明】
【0036】
1:上部箱型ボックス
2:下部箱型ボックス
3:ホッパー
4:スクリューフィーダー
5:下部箱型ボックス側壁部のヒーター
6:下部箱型ボックス底部のヒーター
7:ホッパー側壁部のヒーター
8:スクリューフィーダー周辺部のヒーター
9:荷重装置
10:溶融廃プラスチック類の切断装置
11:圧縮減容されたフィルム系軟質廃プラスチック類
12:電動モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック類を固形化する方法において、廃プラスチック類を装入する上部箱型ボックスを備え、上部箱型ボックスの下部に、側壁部及び/又は底部にヒーターを設置してある下部箱型ボックスを備え、下部箱型ボックスの下部に、側壁部にヒーターを設置してあるホッパーを備え、ホッパーの出口部に、周辺部にヒーターを設置してあるスクリューフィーダーを備え、上部箱型ボックスに装入された廃プラスチック類に荷重を掛ける手段を備え、スクリューフィーダー出口部より流出する溶融廃プラスチック類を、切断、冷却する手段を備えていることを特徴とする、廃プラスチック類の溶融固化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の前記廃プラスチック類の溶融固化方法において、前記下部箱型ボックスの側壁部及び/又は底部の温度を100ないし400℃の範囲に保持し、前記ホッパーの側壁部の温度を100ないし300℃の範囲に保持し、前記スクリューフィーダーの周辺部の温度を100ないし250℃の範囲に保持することを特徴とする、廃プラスチック類の溶融固化方法。
【請求項3】
廃プラスチック類が装入される上部箱型ボックスと、上部箱型ボックスの下部に連結して設けられ、側壁部及び/又は底部に棒状ヒーター及び/又は巻線状ヒーターを設置してある下部箱型ボックスと、下部箱型ボックスの下部に連結して設けられ、側壁部に棒状ヒーターを設置してあるホッパーと、ホッパーの出口部に連結して設けられ、周辺部に円環状ヒーターを設置してあるスクリューフィーダーと、下部箱型ボックス、ホッパー、スクリューフィーダーのヒーター近傍に設置された温度検出手段と、上部箱型ボックスに装入された廃プラスチック類に荷重を掛ける手段と、スクリューフィーダー出口部より流出する溶融廃プラスチック類を、切断、冷却する手段とを備えていることを特徴とする、廃プラスチック類の溶融固化装置。

【図1】
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