説明

廃棄物の安定化処理方法および安定化処理装置

【課題】 多量のリン酸類を必要とせず、廃棄物のろ過特性が低下することなく、廃棄物のろ液におけるフッ素およびリン酸を低減して、廃棄物からのフッ素の溶出を一定基準値以下に確実に低減させることができ、省資源化を図ることができる廃棄物の安定化処理方法および安定化処理装置を提供する。
【解決手段】 スラリ撹拌槽2に収容される廃棄物のスラリに、このスラリの水素イオン濃度指数が7.0以上かつ8.6未満となるようにアルカリ物質または酸物質を撹拌し、アルカリ物質または酸物質が撹拌されたスラリを脱水機4によって脱水して、脱水ケーキを生成し、脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を、処理液貯留槽5から処理液供給ポンプ21によって前記生成された脱水ケーキに供給して、脱水ケーキに接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副生石こう、廃石こうボード(リサイクル石こう)、脱水スラッジ、上水汚泥、下水汚泥、砕石・凝集砂スラッジ、汚染土壌および集塵ダストなどの廃棄物の安定化処理方式および安定化処理装置に関し、より詳細には、これらの廃棄物が含有している微量の有害物質であるフッ素を難溶化し、環境への溶出を抑制する廃棄物の安定化処理方法および安定化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物中には、環境規制物質として指定されている微量の環境有害元素が含まれている場合が多く、有効利用時または埋立て処分時に問題となる。特に2001年に土壌環境基準に追加されたフッ素などの溶出量が規制値を超える場合が問題となる。フッ素が含まれる廃棄物には、副生石こう、廃石こうボードおよび脱水スラッジなどがある。
【0003】
一般に石こうは、建築材料として石こうボードやセメントの原料として大量に使用されている。特に石こうボードは、安価で耐火性に優れるため、建築物の内装材として、年間約470万トン(2003年度)が使用され、建築物解体時の廃石こうボードは86万トン(2004年度)になると推計され、ほとんどが他の産業廃棄物とともに埋立て処分されている。特に、石こうボード原料の約4〜5割を占める副産石こうの多くはフッ素を含有するため、フッ素の難溶化、安定化技術の開発が望まれている。
【0004】
石こうのスラリに消石灰などのカルシウム化合物を添加し、フッ素をフッ化カルシウムとして固定する技術がある。しかしながら、フッ化カルシウムのフッ素としての溶解度は8ppm程度であり、フッ素の場合、土壌環境基準として溶出量が0.8mg/L以下に定められていることから、石こうからのフッ素の溶出量を低減するために充分に有効な技術とはいえない。
【0005】
このような問題に鑑み、廃棄物としての石こうに関してフッ素の溶出量を0.8mg/L以下に低減しようとする方法として、以下の(1)〜(3)のような従来の技術がある。
【0006】
(1)二水石こうのスラリまたは半水石こうのスラリに、アルカリを添加してpHを9以上に上げて、その後、リン酸類、および/または、酸を添加して、pHの下げ幅が1以上、下げたpHが6以上になるよう調整することによって溶出するフッ素を低下させた後、ろ過して石こうを得る技術(たとえば特許文献1参照)。
【0007】
(2)ろ過した二水石こうを、硫酸バンドを含む弱酸性の洗浄水で洗浄し、フッ素を洗浄液中に溶出除去しようとする技術(たとえば特許文献2参照)。
【0008】
(3)ろ過した二水石こうに、リン酸およびアルカリ剤を加えて、混練機を用いた機械的混練と養生によって、二水石こうのフッ素溶出量を低減させようとする技術(たとえば特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−206133号公報
【特許文献2】特開2004−299962号公報
【特許文献3】特願2003−305833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来技術では、以下の課題が残っている。
特許文献1の技術では、アルカリを添加して石こうのスラリのpHを9まで上げることから、多量のアルカリが必要であり、その後リン酸類および/または酸を添加して、pHを6付近まで低下させることから、石こうのスラリに残存したアルカリを中和するために、リン酸および/または酸がさらに多く必要となり、石こうの純度が低下するとともに、石こう硬化体の純度も低下する。これは、石こうのスラリ中にリン酸類および/または酸を添加すると、石こうのスラリ中に溶解したカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびそのほかのカチオンとの反応が進み、多くのリン酸および/または酸が必要となるためである。
【0011】
また、特許文献1に開示される方法で作成される石こうのスラリ中には、主として添加したリン酸とアルカリ物質とによって生成されるリン酸カルシウムなどの微粒子が存在するため、石こうのスラリをろ過するときに、石こう中に水分がとどまりやすくなり、ろ過特性が悪くなる。
【0012】
さらに特許文献1に開示される方法で生成されるろ液中には、未反応のリン酸が多く残ってしまうので、その処理が問題となる。
【0013】
特許文献2に開示される方法では、フッ素を洗浄液中に溶出除去するので、洗浄液中に多量のフッ素が残ってしまい、洗浄液中からのフッ素の除去が問題となる。また、洗浄液との反応によって生成されるフッ化アルミニウムは、pH=7〜8.6では溶解度が高くなり、溶出量の基準値(0.8mg/L)を満足することができない。
【0014】
特許文献3に開示される方法では、リン酸、アルカリ物質および石こう粒子を分散させるための機械的撹拌に大きな動力が必要となる。
【0015】
本発明の目的は、多量のリン酸類を必要とせず、廃棄物のろ過特性が低下することなく、廃棄物のろ液におけるフッ素およびリン酸を低減して、廃棄物からのフッ素の溶出を一定基準値以下に確実に低減させることができ、省資源化を図ることができる廃棄物の安定化処理方法および安定化処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、廃棄物のスラリに、このスラリの水素イオン濃度指数が7.0以上かつ8.6未満となるようにアルカリ物質または酸物質を撹拌し、
アルカリ物質または酸物質が撹拌されたスラリを脱水して、脱水ケーキを生成し、
脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を、前記生成された脱水ケーキに透過させることを特徴とする廃棄物の安定化処理方法である。
【0017】
本発明に従えば、まずアルカリ物質または酸物質によって廃棄物のスラリの水素イオン濃度指数を7.0以上8.6未満とする。廃棄物のスラリは、この廃棄物のスラリの水素イオン濃度指数を調整することができる状態であれば、いずれの濃度であってもよく、廃棄物のスラリに含まれる固形物の濃度が数10%であってもよいし、数%以下であってもよい。また廃棄物のスラリの分散媒体としては、たとえば水を用いるが、有機物などの溶媒が含有されていてもよい。廃棄物のスラリの水素イオン濃度指数が7.0未満では、廃棄物のスラリに含まれる物質と、脱水ケーキに透過されるリン酸類水溶液に含まれるリン酸類との反応が不充分となり、廃棄物のスラリの水素イオン濃度指数を8.6以上とする場合、過剰なアルカリ物質の添加が必要となる。スラリの水素イオン濃度指数を7.0以上8.6未満とすることによって、安定化処理に使用されるリン酸類およびアルカリ物質の量を最小限とすることができる。
【0018】
リン酸類としては、リン酸とカチオンとの反応によって生成される酸性のリン酸塩であってもよいし、リン酸自体であってもよい。リン酸類は、たとえば次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸およびメタリン酸などの酸物質であってもよいし、さらにリン酸水素カルシウムおよびリン酸水素アルミニウムなどであってもよい。リン酸類としては、リン酸処理水として水に溶解する酸が望ましい。特に効果があるのは、リン酸である。
【0019】
アルカリ物質としては、アルカリのカルシウム化合物ならいずれでもよく、たとえば消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウム、ドロマイト、セメントおよび鉄鋼高炉スラグ粉などが適用可能である。
【0020】
酸物質としては、前述したリン酸類、硫酸および硝酸などの無機酸であってもよく、酢酸などの有機酸であってもよい。
【0021】
水素イオン濃度指数が7.0以上8.6未満に調整された廃棄物のスラリを脱水した後に、脱水して生成された脱水ケーキにリン酸類溶液を透過させて、脱水ケーキにリン酸類溶液を接触させるので、リン酸類が反応して生成される生成物が生成される前に、廃棄物のスラリが脱水されることによって、廃棄物に水分が留まってしまうことが抑制され、良好な脱水特性を得ることができる。
【0022】
フッ素が含まれる廃棄物のスラリでは、アルカリ物質を撹拌して、水素イオン濃度指数を7.0以上8.6未満とした後、脱水して生成される脱水ケーキには、廃棄物の固形分とアルカリ物質とが存在し、この脱水ケーキにリン酸類溶液を透過させると、リン酸類溶液が脱水ケーキに接触することによって、リン酸類溶液に含まれるリン酸類とアルカリ物質とが反応して、リン酸水素カルシウム二水和物(第2リン酸カルシウム)が合成され、フッ素とリン酸水素カルシウム二水和物とが反応して、フッ化リン酸カルシウムが生成されることによって、フッ素が廃棄物に固定され、廃棄物に含まれるフッ素が廃棄物の粒子から外部に溶出する量を低減することができる。
【0023】
脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を脱水ケーキに透過させることによって、リン酸類溶液が脱水ケーキを透過して得られるろ液に含まれるリン酸類を低減することができる。また特許文献2に開示される方法と比較して、ろ液に溶出するフッ素の溶出量を低減することができるので、ろ液の処理が容易となる。リン酸類が、脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部未満のリン酸類しか含まない場合には、フッ素の溶出量の低減は充分ではない。また脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて15重量部以上のリン酸類を含む場合には、処理後生成された脱水ケーキの水素イオン濃度指数が6.5以下となってしまう。したがって、リン酸類溶液に含まれるリン酸類の量はフッ素含有量と安定化処理を行って生成される生成物の水素イオン濃度指数によって定まり、廃棄物のスラリにおけるフッ素含有量に応じ、安定化処理を行って生成される生成物の水素イオン濃度指数が低い廃棄物を処理する場合には、リン酸類溶液に含まれるリン酸類の量を少なくする。
【0024】
脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含むリン酸類溶液を、脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満とすることによって、安定化処理を行って生成した生成物の水素イオン濃度指数が6.5〜8.5となり、また過不足なくフッ素の安定化をすることができる。
【0025】
また本発明は、リン酸類溶液が脱水ケーキを透過して得られるろ液を、脱水ケーキに透過させることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、リン酸類溶液が脱水ケーキを透過して得られるリン酸類を含んだろ液を溜めおき、リン酸類溶液を脱水ケーキに透過させる前またはリン酸類溶液を脱水ケーキに透過させた後に、ろ液を脱水ケーキに透過させるので、ろ液に残存するリン成分を再び脱水ケーキと接触させることができ、リン酸類が脱水ケーキに接触する機会を多くすることができるので、リン酸類溶液中に含まれるリン酸類の濃度を低くして、より省資源化を図ることができる。
【0027】
また本発明は、撹拌槽と、
撹拌槽に入れられた廃棄物のスラリの水素イオン濃度指数が7.0以上かつ8.6未満となるようにアルカリ物質または酸物質を、前記撹拌槽に供給する第1供給手段と、
第1供給手段によって供給されたアルカリ物質または酸物質が撹拌された廃棄物のスラリを脱水して、脱水ケーキを生成する脱水手段と、
脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を、前記脱水ケーキに供給する第2供給手段とを含むことを特徴とする廃棄物の安定化処理装置である。
【0028】
本発明に従えば、前記撹拌層、第1供給手段、脱水手段および第2供給手段によって、前述した廃棄物の安定化処理方法を実現することができる。これらの装置では、前述した安定化処理方法を実現するために、特別な設備を必要とせず、廃棄物を洗浄脱水する既存の設備を用いて装置を作製することができる。脱水手段は、たとえば真空ベルトフィルタ方式の脱水機によって実現されてもよい。
【0029】
また本発明は、リン酸類溶液が脱水ケーキを透過して得られるろ液を貯留するろ液貯留槽と、
脱水ケーキに、ろ液貯留槽に貯留したろ液を供給する第3供給手段とを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明に従えば、脱水ケーキを透過して得られるろ液をろ液貯留槽によって貯留して、貯留したろ液を第3供給手段によって再び脱水ケーキに供給して、リン酸類溶液供給手段によって、脱水ケーキにリン酸類溶液を透過させる前あるいは後に、前記ろ液を脱水ケーキに透過させることができ、脱水ケーキを透過したろ液に残存しているリン酸類を、再び脱水ケーキと接触させることができ、リン酸類が脱水ケーキに接触する機会を多くすることができるので、リン酸類溶液中に含まれるリン酸類の濃度を低くして、より省資源化を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、廃棄物のスラリにアルカリ物質または酸物質を加えて撹拌処理し、スラリの水素イオン濃度指数が7.0以上かつ8.6未満になるようにし、スラリを脱水して、脱水ケーキを生成し、脱水ケーキにこの脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を接触させることによって、使用するリン酸類の量を最小限とし、廃棄物のろ過特性が低下することがなく、処理の過程で生成されるろ液に含まれるリン酸類を低減して、効率よく、フッ素溶出量が低減された脱水ケーキである廃棄物を生成することができる。
【0032】
また本発明は、フッ素を安定化するのに多量の薬剤を必要とせずに、新たな追加設備を最小限として、フッ素溶出量を低減した廃棄物を得ることができ、経済的で、環境負荷を小さくすることができる。
【0033】
また本発明は、廃棄物中のフッ素含有量および水素イオン濃度指数によって、リン酸類と、アルカリ物質または酸物質とである薬剤の添加量を調整するので、多種多様な廃棄物に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。
【0035】
図1は、本発明の第1の実施の形態の安定化処理装置1を系統的に示す図である。以下では、廃棄物のうち、副生石こうおよび廃石こうボードなどを総称した石こうを例にとって説明する。安定化処理装置1は、真空ベルトフィルタ方式の脱水機に適応している。
【0036】
本実施の形態では、廃棄物のスラリが石こうのスラリであり、この石こうのスラリに含まれる石こうとしては、天然でも人工的に合成したものでもいずれでもよい。合成された石こうとしては種々にあるが、たとえば、リン酸製造時に副生するリン酸石こう、発電所などからの排煙脱硫に由来する排煙脱硫石こう、チタン製造の際に副生するチタン石こう、建築廃棄物などリサイクルを目的に石こうボードから紙と分別した廃石こう(リサイクル石こう)などがある。本発明は、フッ素を含有する副産石こうに適用可能であり、天然石こうでもフッ素を含有するものであれば、同じように適応できる。また、石こうにはその結晶形態によって二水石こう、半水石こうおよび無水石こうがあるが、本発明はフッ素を含有するいずれの石こうにも適用可能である。
【0037】
処理前の石こうのスラリは、石こうの水素イオン濃度指数(pH)を調整できる状態であれば、いずれの濃度でもよく、石こうのスラリにおける石こう濃度が数10wt%(重量パーセント)のいわゆるスラリ状態でもよいし、数wt%以下の分散状態でもよい。また分散媒体としては、通常、水(HO)を用いるが、石こうの製造工程で発生する副産物や混入物を含んでもよく、有機物などの溶媒が含有されていてもよい。本実施の形態では、石こうのスラリの分散媒体として、工業用水を用いる。
【0038】
安定化処理装置1は、スラリ撹拌槽2、第1供給機3、脱水機4、処理液貯留槽5、第2供給機6および第3供給機7を含んで構成される。
【0039】
スラリ撹拌槽2には、石こうのスラリが収容される。スラリ撹拌槽2には、石こうのスラリを撹拌する撹拌装置が設けられており、収容された石こうのスラリが撹拌されることによって、スラリ撹拌槽2内での固形分の沈降が防止される。本実施の形態では、スラリ撹拌槽2に供給される石こうのスラリの濃度は、20重量パーセント〜30重量パーセント(wt%)程度としている。スラリ撹拌槽2に供給される石こうのスラリの水素イオン濃度指数(pH)は、5.5〜7.0程度である。
【0040】
第1供給機3は、第1供給管11を介して、アルカリ物質または酸物質をスラリ撹拌槽2に供給する。本実施の形態では石こうのスラリの水素イオン濃度指数(pH)は、5.5〜7.0程度であるので、第1供給機3は、アルカリ物質をスラリ撹拌槽2に供給する。第1供給機3からのアルカリ物質は、第1供給管11によって形成される管路を経て、スラリ撹拌槽2に供給される。スラリ撹拌槽2に供給されたアルカリ物質は、このスラリ撹拌槽2に収容される石こうのスラリに撹拌されて、石こうのスラリとアルカリ物質とが混合される。スラリ撹拌槽2には、このスラリ撹拌槽2に収容される石こうのスラリのpHを測定するpH測定器が設けられる。第1供給機3は、前記pH測定器の測定結果に基づいて、スラリ撹拌槽2に収容されている石こうのスラリのpHが、7.0以上かつ8.6未満になるようにアルカリ物質を石こうのスラリを供給する。
【0041】
石こうのスラリのpHを上げる、すなわち石こうのスラリのpHの値を大きくする際には、アルカリ物質をそのまま石こうのスラリに添加してもよいし、水などによって希釈して石こうのスラリに添加してもよい。アルカリ物質の添加した後、撹拌を充分にする必要がある。第1供給機3からのアルカリ物質の供給量は、基本的にはスラリ撹拌槽2の石こうのスラリのpHの値によって制御するが、石こうのスラリおよび供給するアルカリ物質の性状が安定している場合、石こうのスラリに対して一定な割合としてもよい。
【0042】
スラリ撹拌槽2では、第1供給機3からアルカリ物質が供給されると、石こうのスラリの濃度が均一となるように、アルカリ物質が添加された石こうのスラリを予め定める時間撹拌する。前記予め定める時間は、たとえば30分程度に選ばれる。スラリ撹拌槽2に収容された石こうのスラリにおいて、この石こうのスラリの液中に溶出するフッ素は、微量である。
【0043】
アルカリ物質としては、アルカリのカルシウム化合物ならいずれでもよく、たとえば消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウム、ドロマイト、セメントおよび鉄鋼高炉スラグ粉などが適用可能である。
【0044】
pHが7.0以上かつ8.6未満となるように、pHを調整された石こうのスラリは、スラリ供給ポンプ12によって、スラリ供給管13を介して脱水機4に供給される。石こうのスラリは、スラリ供給管13によって形成される管路を経て、脱水機4に設けられるスラリ供給ノズル部30から脱水機4に与えられる。石こうのスラリの水素イオン濃度指数が7.0未満では、石こうのスラリに含まれる物質と、脱水ケーキに透過されるリン酸類水溶液に含まれるリン酸類との反応が不充分となり、石こうのスラリの水素イオン濃度指数を8.6以上とする場合、過剰なアルカリ物質の添加が必要となる。石こうのスラリの水素イオン濃度指数を7.0以上8.6未満とすることによって、安定化処理に使用されるリン酸類およびアルカリ物質の量を最小限とすることができる。
【0045】
脱水機4は、スラリ撹拌槽2から供給されるアルカリ物質が撹拌された石こうのスラリを、脱水して、脱水ケーキ層14とろ液15に固液分離する。本実施の形態では、脱水機4は、真空ポンプ16と、石こうのスラリを乗載して搬送する搬送部31と、ろ液タンク61とを含んで構成され、真空ベルトフィルタ方式によって石こうのスラリを脱水する。
【0046】
図2は、安定化処理装置1における脱水機4の搬送部31を模式的に示す平面図であり、図3は安定化処理装置1における脱水機4の搬送部31を模式的に示す断面図である。搬送部31は、筐体32、ローラ33、ベルト34および駆動部45を含んで構成される。筐体32に複数のローラ33が、その回転軸線を並行にした状態で、所定の間隔をあけて設けられる。複数のローラ33は、筐体32にその回転軸線まわりに回転自在に保持される。この複数のローラ33に、ベルト34が張架される。ベルト34には、細かい穴が形成されている。ベルト34は、ろ布によって実現される。ろ布の目の粗さは、ベルト34に乗載される石こうのスラリに含まれる石こうが透過しないように選ばれる。駆動部45によってローラを回転駆動することによって、このベルト34が循環回転する。駆動部45は、複数のローラ33のうち、搬送方向下流側の端部のローラ46を基準位置から搬送方向下流側に向かうに連れて下方に押し出すことができる駆動源であるエアシリンダ47を含んで構成される。ベルト34の下張架部36には、エアシリンダ47が前記ローラ46を押し出したときにベルト34の変位を許容する変位許容部48が設けられる。変位許容部48は、搬送方向下流側の端部で、エアシリンダ47に近接して設けられる。変位許容部48は、下張架部36を下部から支持する1対の支持ローラ49と、搬送方向において前記1対の支持ローラ49の間で下張架部36を下方に押圧する重錘ローラ71とを含んで構成される。支持ローラ49および重錘ローラ71の回転軸線は、前記ローラ33の回転軸線と平行に延びる。支持ローラ49は、筐体32にその回転軸線に回転自在に保持され、重錘ローラ71は上下方向すなわち重力の作用する方向に変位可能であり、かつ回転軸線まわりに回転自在に筐体32に設けられる。支持ローラ49のうち搬送方向下流側の支持ローラ49、すなわち図2の右側の支持ローラ49は、一方向にのみ回転可能であり、これによってベルト34を回転方向の一方向にのみ移動させ、ベルト34が逆回転してしまうことを防止することができる。エアシリンダ47によって、ローラ46を搬送方向下流側に向かって押し出すと、図3の仮想線で示すようにベルト34が搬送方向下流側に押出され、一方向にのみ回転可能な支持ローラ49によってベルト34が逆回転してしまうことが防止されているので、ベルト34の上張架部35が搬送方向下流側に移動し、これに伴って重錘ローラ71が上方に移動する。エアシリンダ47がローラ46を基準位置に戻すと、これに伴って、重錘ローラ71が下方に移動し、ベルト34が張架される。搬送部31では、エアシリンダ47がローラ46を押し出して、元に戻すという動作を繰返すことによって、ベルト34を回転駆動することができる。
【0047】
ベルト34の上張架部35は、水平に延びる。この上張架部35の搬送方向上流側の端部に石こうのスラリを供給するようにスラリ供給ノズル部30が筐体32に設けられる。ノズル部30は、ベルト34の幅方向の両端部間にわたって石こうのスラリを吐出し、石こうのスラリは、ベルト34の幅方向の両端部間にわたって、上張架部35に乗載される。ベルト34の上張架部35の、搬送方向およびベルト34の厚み方向に垂直な方向の両側には、上張架部35から離反するにつれて上方に傾斜する傾斜部材72が設けられる。傾斜部材72は真空トレー部37に固定される。傾斜部材72は、スラリ供給ノズル部30よりも搬送方向上流側から、ベルト34の上張架部35の搬送方向下流側端部にわたって延びる。傾斜部材72によって、ベルト34に乗載された石こうのスラリおよび脱水ケーキ層14が、搬送途中で搬送部31から落ちてしまうことが防止される。
【0048】
また上張架部35のうち、搬送方向上流側の端部は、搬送方向上流側に向かうに連れて上方に傾斜する。これによって、スラリ供給ノズル部30から供給された石こうのスラリが上張架部35の搬送方向上流側の端部から落ちてしまうことが防止される。また上張架部のうち搬送方向下流側の端部は、搬送方向下流側に向かうに連れて下方に傾斜する。これによって、ベルト34上の脱水ケーキ層14を搬送部31から搬出しやすくなる。
【0049】
また搬送部31には、ベルト34を洗浄する洗浄部73が設けられる。洗浄部73は、ベルト34の搬送方向下流側に設けられ、下張架部36を水で洗浄する。
【0050】
ベルト34の上張架部35と下張架部36との間には、石こうのスラリから分離されたろ液を受ける真空トレー部37が設けられる。真空トレー部37は、上張架部35に接触して設けられる。真空トレー部37は、ベルト34の幅方向の両端部間にわたって設けられ、かつ搬送方向においてスラリ供給ノズル部30よりも搬送方向上流側から処理液供給ノズル部41よりも搬送方向下流側まで延びる。真空トレー部37に、真空ポンプ16からの吸引力を導くろ液吸引管17を介して、吸引力が導かれる。これによって上張架部35に乗載された石こうのスラリは、吸引ろ過されて、脱水ケーキ層14とろ液15とに固液分離される。真空ポンプ16によって吸引されたろ液15は、ろ液吸引管17を介して、ろ液タンク61に貯留される。ろ液タンク61は、真空ポンプ16で吸引されたろ液15と空気を分離するために設けられる。ろ液タンク61には、ろ液吸引管17からのろ液15が貯留されるとともに、真空ポンプ吸引管62が接続されて、真空ポンプ16からの吸引力が導かれる。真空ポンプ16は、真空ポンプ吸引管62を介して、ろ液タンク61の内部の空気を吸引する。真空ポンプ吸引管62およびろ液吸引管17は、ろ液タンク61内に貯留されたろ液15の液面よりも上方に設けられ、真空ポンプ吸引管62は、ろ液吸引管17よりも、ろ液タンク61において上方に設けられる。これによって真空ポンプ16は、ろ液タンク61内の空気のみを吸引することができる。ろ液タンク61内の空気が吸引されることによって、ろ液吸引管17に吸引力を導くことができる。
【0051】
ろ液タンク61の下部には、ろ液排出管63が接続され、ろ液排出管63は、ろ液貯留槽18に接続される。ろ液排出管63を介してろ液タンク61内のろ液15がろ液貯留槽18に移送されて、ろ液貯留槽18にろ液15が貯留される。また下張架部36の下方には、下張架部36に残存して付着している液を受ける下受け皿38が設けられる。
【0052】
上張架部35の搬送方向の中間部、本実施の形態では搬送方向の中央部には、上張架部35に臨んで処理液供給ノズル部41が設けられる。処理液供給ノズル部41は、ベルト34の載置面から上方に予め定める距離T1、離間して設けられる。予め定める距離T1は、上張架部35の載置面上の脱水ケーキ層14の厚みよりも大きくなるように選ばれる。前記脱水ケーキ層14の厚みは、20〜30mmに選ばれる。この厚みは、スラリ供給ノズル部からの石こうのスラリの単位時間当たりの吐出量と、ベルト34の移動速度とによって決定される。
【0053】
処理液供給ノズル部41には、後述する処理液供給管22を介して処理液が供給され、処理液供給ノズル部41は、供給された処理液を鉛直下方に吐出する。処理液供給ノズル部41は、供給された処理液を、ベルト34の幅方向の両端部間にわたって吐出する。これによって、ベルト34に乗載される脱水ケーキ層14の幅方向の全領域にわたって処理液を脱水ケーキ層14に透過させることができる。
【0054】
前記処理液供給ノズル部41とスラリ供給ノズル部30とは、搬送方向において予め定める距離T2離間して設けられる。予め定める距離T2は、処理液供給ノズル部41から処理液が供給される位置における脱水ケーキ層14の含水率が20%程度となるように選ばれる。スラリ供給ノズル部30から供給された石こうのスラリは、脱水されながら搬送され、含水率が20%程度となる位置に、処理液供給ノズル部41から処理液が供給される。このように本装置では、脱水処理と、脱水ケーキへの処理液の供給処理とを連続して行うことができる。脱水ケーキ層14のうち、処理液が供給される位置よりも搬送方向下流側における部分の含水率は、10%程度となる。搬送方向下流側ではベルト34の搬送方向下流側の端部から脱水ケーキ層14が搬出されて、処理が完了した脱水ケーキとなる。
【0055】
再び図1を参照して、第2供給機6は、水である工業用水を処理液貯留槽5に供給する。第3供給機7は、リン酸類を処理液貯留槽5に供給する。処理液貯留槽5には、撹拌装置が設けられ、第2供給機6から供給された水と、第3供給機7から供給されたリン酸類とを収容して、これらを撹拌混合する。水によって希釈され撹拌混合されたリン酸類は、処理液供給ポンプ21によって、処理液供給管22を介して、処理液供給ノズル部41に供給される。
【0056】
リン酸類としては、リン酸とカチオンとの反応によって生成される酸性のリン酸塩であってもよいし、リン酸自体であってもよい。リン酸類は、たとえば次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸およびメタリン酸などの酸物質であってもよいし、さらにリン酸水素カルシウムおよびリン酸水素アルミニウムなどであってもよい。リン酸類としては、リン酸処理水として水に溶解する酸が望ましい。特に効果があるのは、リン酸である。
【0057】
処理液が脱水ケーキ層14に供給されると、処理液は脱水ケーキ層14を透過する間に、脱水ケーキ層14と接触する。脱水ケーキ層14内部では、この脱水ケーキ層14に含まれるアルカリ物質と、処理液に含まれるリン酸類とが反応し、リン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO・2HO)が生成される。このリン酸水素カルシウム二水和物が石こうに含まれるフッ素と反応してフッ化リン酸カルシウム(Ca10(PO)が生成されることによって、フッ素が石こうに固定され、フッ素を安定化する、すなわちフッ素の溶出量が低減される。処理液のうち脱水ケーキ層14を透過したろ液は、真空ポンプ16によって吸引されて、ろ液貯留槽18に蓄えられる。
【0058】
第3供給機7が処理液貯留槽5に供給するリン酸類の量は、このリン酸類を供給する脱水ケーキ層14に含まれるフッ素含有量と、処理後の石こうのpHに応じて、必要な割合で供給する。リン酸類を含む処理液の濃度は、石こうのスラリの性状、流量がともに安定している場合には、脱水ケーキ層14に含まれる石こうの重量に対して、処理性能に応じて決定される。石こうのスラリの性状、流量のいずれかが変動する場合には、脱水ケーキ層14に含まれる石こうの重量、ろ液のpHなどによってリン酸類を含む処理液の濃度を調整する。
【0059】
リン酸類は第3供給機7によって、処理液貯留槽5に供給される。リン酸類を処理液貯留槽5に供給する方法については、望ましくは、処理液貯留槽5の処理液のpHを検知しておいて、pHの値が所定値の範囲になるように、リン酸類を第3供給機7によって処理液貯留槽5に供給する。なお、処理液のpHの所定値の範囲については、廃棄物の種類、リン酸類の種類によって異なる。
【0060】
第3供給機7は、処理液貯留槽5に、液体のリン酸類の場合そのまま供給してもよいし、水溶液として供給してもよい。また、固体のリン酸類の場合そのまま供給してもよいし、水溶液あるいはスラリとして供給してもよい。
【0061】
排煙脱装置の石こう分離機に真空ベルトフィルタ方式を用いた場合は、副生する石こうの不純物を洗浄する目的で洗浄水を使うことが一般的であるが、この洗浄水中にリン酸類を供給し、使うことによって本発明の効果が得られる。既存の設備を利用し、安定化のための特別な機器を追加しないという意味で有効な方法である。
【0062】
前述した処理液貯留槽5、第2供給機6、第3供給機7、処理液供給ポンプ21、処理液供給管22および処理液供給ノズル部41を含んで第2供給手段が実現され、この第2供給手段によって、脱水ケーキ層14に、脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を透過させることができる。これによって、リン酸類溶液が脱水ケーキ層14を透過して得られるろ液15に含まれるリン酸類を低減することができる。またろ液15に含まれるフッ素は、微量であるので、ろ液15の後処理が容易となる。リン酸類が、脱水ケーキ層14に含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部未満のリン酸類しか含まない場合には、フッ素の溶出量の低減は充分ではない。また脱水ケーキ層14に含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて15重量部以上のリン酸類を含む場合には、安定化処理した後、生成された脱水ケーキの水素イオン濃度指数が6.5以下となってしまう。したがって、リン酸類溶液に含まれるリン酸類の量はフッ素含有量と安定化処理を行って生成される生成物の水素イオン濃度指数によって定まり、石こうのスラリにおけるフッ素含有量に応じ、安定化処理を行って生成される生成物の水素イオン濃度指数が低い廃棄物を処理する場合には、リン酸類溶液に含まれるリン酸類の量を少なくする。
【0063】
ろ液貯留槽18に貯留されるろ液のpHの値が、4.5以下であり、望ましくは4.0以下となるように、第3供給機7によってリン酸類を処理液貯留槽5に供給することによって、脱水ケーキからのフッ素溶出量を土壌環境基準値以下とすることができるという知見が得られた。
【0064】
また安定化処理装置1では、水素イオン濃度指数が7.0以上8.6未満に調整された石こうのスラリを脱水した後に、脱水して生成される脱水ケーキ層14にリン酸類溶液を透過させて、脱水ケーキ層14にリン酸類溶液を接触させるので、リン酸類が反応して生成される生成物が生成される前に、石こうのスラリが脱水されることによって、石こうに水分が留まってしまうことが抑制され、良好な脱水特性を得ることができる。脱水ケーキ層14に、この脱水ケーキ層14に含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を接触させることによって、使用するリン酸類の量を最小限とすることができ、処理の過程で生成されるろ液に含まれるリン酸類を低減して、効率よく、フッ素溶出量が低減された脱水ケーキである石こうを生成することができる。また安定化装置1は、多くの薬剤によってフッ素の安定化することなく、新たな追加設備を最小限として、フッ素溶出量を低減した石こうを得ることができ、経済的で、環境負荷を小さくすることができる。さらに、石こう中のフッ素含有量および水素イオン濃度指数によって、リン酸類と、アルカリ物質または酸物質とである薬剤の添加量を調整するので、多種多様な廃棄物に適用できる。
【0065】
本実施の形態では、脱水機4として真空ベルトフィルタ方式のものを用いているが、本発明の他の実施の形態において、アルカリ物質の添加後、石こうのスラリ中の水分を除去して固液分離する方式については、遠心分離力を利用した方式でもよく、水分を効果的に除去する方式であればよい。
【0066】
また本実施の形態では、廃棄物のスラリを石こうのスラリとしているが、廃棄物のスラリは、たとえば脱水スラッジおよび集塵ダストスラリであってもよく、これらの廃棄物についても同様に安定化を図ること、すなわちフッ素の溶出量を低減することができる。第1供給機3によってスラリ撹拌槽2に酸物質を供給する場合、酸物質としては、前述したリン酸類、硫酸および硝酸などの無機酸であってもよく、酢酸などの有機酸であってもよい。
【0067】
図4は、本発明の第2の実施の形態の安定化処理装置40の構成を系統的に示す図である。本実施形態の安定化処理装置40は、真空ベルトフィルタ方式の脱水機に適応したものである。安定化処理装置40において、前述した図1に示す実施の形態の安定化処理装置1と同様な構成には、同様の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。安定化処理装置40は、図1に示される安定化処理装置1の構成に加えて、脱水ケーキ層14を一度透過したろ液を、脱水機4に再度供給するためのろ液供給ポンプ81と、再度脱水ケーキ層14を透過したろ液を蓄える第2ろ液貯留槽18bを含んで構成される。
【0068】
図5は、安定化処理装置40における脱水機4の搬送部31を模式的に示す平面図であり、図6は安定化処理装置40における脱水機4の搬送部31を模式的に示す断面図である。本実施の形態では、脱水機4に、ろ液供給ノズル部51が設けられる。ろ液供給ノズル部51には、ろ液供給管52を介してろ液が供給され、ろ液供給ノズル部51は、供給されたろ液を鉛直下方に吐出する。ろ液供給ノズル部51は、ベルト34の載置面から上方に予め定める距離T3、離間して設けられる。予め定める距離T3は、上張架部35の載置面上の脱水ケーキ層14の厚みよりも大きくなるように選ばれる。ろ液供給ノズル部51は、供給されたろ液を、ベルト34の幅方向の両端部間にわたって吐出する。これによって、ベルト34に乗載される脱水ケーキ層14の幅方向の全領域にわたってろ液を脱水ケーキ層14に透過させることができる。
【0069】
本実施の形態では、真空トレー部37は、第1真空トレー部37aおよび第2真空トレー部37bを含む。第1真空トレー部37aは、ベルト34の幅方向の両端部間にわたって設けられ、かつ搬送方向において処理液供給ノズル41が設けられる位置から、この処理液供給ノズル部41よりも搬送方向下流側まで延びる。また第2真空トレー37bは、ベルト34の幅方向の両端部間にわたって設けられ、かつ搬送方向においてスラリ供給ノズル部30よりも搬送方向上流側からろ液供給ノズル部51の搬送方向下流側で、処理液供給ノズル部41付近まで延びる。
【0070】
第1真空トレー37aには、第1真空ポンプ16aからの吸引力を導く第1ろ液吸引管17aを介して、吸引力が導かれる。これによって、処理液供給ノズル部41から吐出された処理液が供給された脱水ケーキ層14が吸引ろ過され、脱水ケーキと、処理液が脱水ケーキ層14を透過することによって得られるろ液15aとに固液分離される。第2真空トレー37bには、第2真空ポンプ16bからの吸引力を導く第2ろ液吸引管17bを介して、吸引力が導かれる。これによって、石こうのスラリに含まれる液体とともに、ろ液供給ノズル部51から吐出されたろ液が供給された脱水ケーキ層14が吸引ろ過され、脱水ケーキと、ろ液供給ノズル部51から供給されるろ液が脱水ケーキ層14を透過することによって得られるろ液15bとに固液分離される。
【0071】
ろ液供給ノズル部51は、搬送方向において、スラリ液供給ノズル部30と処理液供給ノズル部41との間に設けられる。ろ液供給ノズル部51とスラリ液供給ノズル部30とは、予め定める距離T4離間し、ろ液供給ノズル部51と処理液供給ノズル部41とは、予め定める距離T5離間する。前記予め定める距離T4は、ろ液供給ノズル部51からろ液が供給される位置における脱水ケーキ層14の含水率が20%程度となるように選ばれる。スラリ供給ノズル部30から供給された石こうのスラリは、脱水されながら搬送され、含水率が20%程度となる位置に、ろ液供給ノズル部51からろ液が供給される。また前記予め定める距離T5は、処理液供給ノズル部41から処理液が供給される位置における脱水ケーキ層14の含水率が20%程度となり、かつろ液供給ノズル部51から供給されるろ液と、処理液供給ノズル部41から供給される処理液とができるだけ混ざらないように選ばれる。このように本装置においても、脱水処理と、脱水ケーキへの処理液の供給処理とを連続して行うことができる。脱水ケーキ層14のうち、処理液が供給される位置よりも搬送方向下流側における部分の含水率は、10%程度となる。搬送方向下流側ではベルト34の搬送方向下流側の端部から脱水ケーキ層14が搬出されて、処理が完了した脱水ケーキとなる。
【0072】
再び図4を参照して、第1真空ポンプ16aによって吸引されたろ液15aは、第1ろ液吸引管17aを介して、第1ろ液タンク61aに貯留される。第1ろ液タンク61aは、第1真空ポンプ16aで吸引されたろ液15aと空気を分離するために設けられる。第1ろ液タンク61aには、第1ろ液吸引管17aからのろ液15aが貯留されるとともに、第1真空ポンプ吸引管62aが接続されて、第1真空ポンプ16aからの吸引力が導かれる。第1真空ポンプ16aは、第1真空ポンプ吸引管62aを介して、第1ろ液タンク61aの内部の空気を吸引する。第1真空ポンプ吸引管62aおよび第1ろ液吸引管17aは、第1ろ液タンク61a内に貯留されたろ液15aの液面よりも上方に設けられ、第1真空ポンプ吸引管62aは、第1ろ液吸引管17aよりも、第1ろ液タンク61aにおいて上方に設けられる。これによって第1真空ポンプ16aは、第1ろ液タンク61a内の空気のみを吸引することができる。第1ろ液タンク61a内の空気が吸引されることによって、第1ろ液吸引管17aに吸引力を導くことができる。
【0073】
第1ろ液タンク61aの下部には、第1ろ液排出管63aが接続され、第1ろ液排出管63aは、第1ろ液貯留槽18aに接続される。第1ろ液排出管63aを介して第1ろ液タンク61a内のろ液15aが第1ろ液貯留槽18aに移送されて、第1ろ液貯留槽18aに貯留される。
【0074】
第2真空ポンプ16bによって吸引されたろ液15bは、第2ろ液吸引管17bを介して、第2ろ液タンク61bに貯留される。第2ろ液タンク61bは、第2真空ポンプ16bで吸引されたろ液15bと空気を分離するために設けられる。第2ろ液タンク61bには、第2ろ液吸引管17bからのろ液15bが貯留されるとともに、第2真空ポンプ吸引管62bが接続されて、第2真空ポンプ16bからの吸引力が導かれる。第2真空ポンプ16bは、第2真空ポンプ吸引管62bを介して、第2ろ液タンク61bの内部の空気を吸引する。第2真空ポンプ吸引管62bおよび第2ろ液吸引管17bは、第2ろ液タンク61b内に貯留されたろ液15bの液面よりも上方に設けられ、第2真空ポンプ吸引管62bは、第2ろ液吸引管17bよりも、第2ろ液タンク61bにおいて上方に設けられる。これによって第2真空ポンプ16bは、第2ろ液タンク61b内の空気のみを吸引することができる。第2ろ液タンク61b内の空気が吸引されることによって、第2ろ液吸引管17bに吸引力を導くことができる。
【0075】
第2ろ液タンク61bの下部には、第2ろ液排出管63bが接続され、第2ろ液排出管63bは、第2ろ液貯留槽18bに接続される。第2ろ液排出管63bを介して第2ろ液タンク61b内のろ液15bが第2ろ液貯留槽18bに移送されて、第2ろ液貯留槽18bに貯留される。
【0076】
第1ろ液貯留槽18aに貯留されたろ液15aは、ろ液供給ポンプ81によって、ろ液供給管52によって形成される管路を介してろ液供給ノズル部51に与えられる。
【0077】
真空ベルトフィルタ方式の脱水機4の場合、ベルト34の移動速度が速く、かつ脱水ケーキ層14の厚みが薄い場合には、処理液が脱水ケーキ14を透過するときに、処理液に含まれるリン酸類が脱水ケーキ層14に滞留する時間が短く、透過時間が短いことによって、処理液と脱水ケーキ層14との接触が不十分となる。これによって処理液に含まれるリン酸類と、脱水ケーキ層14に含まれるアルカリ物質との反応時間が充分でないために、リン酸類がろ液に残る、すなわち脱水ケーキ層14を透過したろ液にリン酸類が残留してしまう場合がある。この場合、脱水ケーキ層14にリン酸類溶液を1回透過させただけでは、ろ液中に未反応のリン酸類が残った状態になり、供給したリン酸類が無駄になってしまう。そのため、処理液供給ノズル部41から脱水ケーキ層14に供給される処理液が、脱水ケーキ層14を一度透過することによって得られるろ液を、第1ろ液貯留槽18aに一旦貯めおき、第1ろ液貯留槽18aに貯められたろ液を脱水ケーキ層14に繰返して透過させる。これによって、薬剤量を低減する、すなわち処理に使用されるリン酸類の量を低減することができる。また安定化処理装置40では、前述した安定化処理装置1と同様な効果を達成することができるとともに、ろ液を繰り返し脱水ケーキ層14に透過させる処理を行うことによって、処理に使用されるリン酸類の量をより低減することができる。ろ液を繰り返し脱水ケーキ層14に透過させる処理は、ろ液にリン酸類が残存してしまうことを抑制するためにも有効であり、第2ろ液貯留槽18bにリン酸類が残存してしまうことを抑制することができるので、廃液の処理が容易になる。第1ろ液貯留槽18a、ろ液供給ポンプ81、ろ液供給管52およびろ液供給ノズル部51を含んで第3供給手段が実現される。
【0078】
第1ろ液貯留槽18aに貯留されるろ液のpHの値が、5.5以下であり、望ましくは5.0以下となるように、かつ第2ろ液貯留槽18bに貯留されるろ液のpHの値が、6.5以下、望ましくは6.0以下となるように、第3供給機7によってリン酸類処理液貯留槽5に供給することによって、脱水ケーキからのフッ素溶出量を土壌環境基準値以下とすることができるという知見が得られた。
【0079】
また本実施の形態の安定化処理装置40では、脱水ケーキ層14に処理液が供給されなければ、ろ液が生成されないが、第1ろ液貯留槽18aにろ液が貯留されるまでは、前述した実施の形態の安定化処理装置1と同様な脱水ケーキを生成することができる。
【0080】
本発明の他の実施の形態において、脱水ケーキ層14を透過して得られるろ液を、繰返して脱水ケーキ層14を透過させてもよい。ろ液を繰り返し脱水ケーキ層14に透過させる処理は、ろ液にリン酸類が残存してしまうことを防止するためにも有効であるので、繰返す回数は、2回と限ったものではなく、3回ないしはそれ以上であってもよい。
【実施例】
【0081】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。図7および図8は、本発明の安定化処理方法を確認するために実施したバッチ方式の確認試験手順を示す図である。
【0082】
石こうのスラリとしては、表1に示す性状の石こうのスラリを用いた。表1は、石こうのスラリの濃度、石こうのスラリをろ過して得られるろ液のpH、および石こうのフッ素含有量とフッ素溶出量とpHとを示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1において、石こう中のフッ素含有量は、45℃で、24時間乾燥した石こうにおけるものである。またフッ素溶出量は、溶出試験(環境庁告示第46号)に準拠した。石こう中のフッ素含有量はJIS R 9101に準拠し、水蒸気蒸留の留出液を使い、緩衝溶液(全イオン強度調節液)を加えて、pH=5.0〜5.5に調整した後、フッ化物イオン電極を用いて電位を測定した。
【0085】
石こう中のフッ素溶出量は溶出試験(環境庁告示第46号)に準拠した。試料は50g以上を純水を溶媒に500mL以上(pH=5.8〜6.3)とし、1L程度のポリ製容器に入れる。毎分約200回、水平に振とう(振とう幅4cm以上5cm以下、室温約20℃)を6時間行い、10〜30分放置した後、毎分約3000回転で20分間遠心分離し、上澄み液をろ紙孔径0.45μmのメンブレンフィルタを使って吸引ろ過した。ろ液中のフッ素濃度をフッ素イオン電極で測定した。イオン電極法はJIS R 9101によった。
【0086】
(実施例1)
実施例1では、第1の実施の形態の安定化処理方法によって、石こうの安定化処理を行った。
【0087】
石こう(160g)を水(約600g)に撹拌して生成される石こうのスラリ(スラリ濃度21.0wt%、約760g)を1Lのビーカに入れ、撹拌しながら石こうのスラリに含まれる石こうに対して0.40wt%(0.64g)の消石灰を加え、充分撹拌してpH=8.3とした。撹拌時間は約10分とした。次に、ろ過a工程に移り、消石灰が撹拌された石こうのスラリを、約10分かけて吸引ろ過して含水率を8%程度となるように、石こう(石こうa)と、ろ液(ろ液a)とに固液分離した。次に、石こうのスラリに含まれる石こう(石こうa)に対して0.78wt%のリン酸(約1.25g)を蒸留水で薄めて100mLにした洗浄水(pH=1.84)を、石こうaに透過させ、ろ過b工程に移り、吸引ろ過しながら洗浄して、ろ液(ろ液b)と石こう(石こうb)とに固液分離した。石こうbを45℃で、24時間乾燥機に放置して、乾燥させた後、溶出試験(環境庁告示第46号)を行った結果、フッ素溶出量は0.5[mg/L]、石こうのpHは6.6となった。結果を表2に示す。
【0088】
(実施例2)
実施例2では、第1の実施の形態の安定化処理方法によって、石こうの安定化処理を行った。
【0089】
石こう(160g)を水(約600g)に撹拌して生成される石こうのスラリ(スラリ濃度21.0wt%、約760g)を1Lのビーカに入れ、撹拌しながら石こうのスラリに含まれる石こうに対して0.27wt%(0.43g)の消石灰を加え、充分撹拌してpH=8.1とした。撹拌時間は約10分とした。次にろ過a工程に移り、消石灰が撹拌された石こうのスラリを、約10分かけて吸引ろ過して含水率を8%程度となるように、石こう(石こうa)と、ろ液(ろ液a)とに固液分離した。次に石こうのスラリに含まれる石こう(石こうa)に対して、0.51wt%のリン酸(0.82g)を蒸留水で薄めて100mLにした洗浄水(pH=2.28)を、石こうに透過させ、ろ過b工程に移り、吸引ろ過しながら洗浄し、ろ液(ろ液b)と石こう(石こうb)に固液分離する。石こうbを45℃で、24時間乾燥機に放置して、乾燥させた後、溶出試験(環境庁告示第46号)を行った結果、フッ素溶出量は0.7[mg/L]、石こうのpHは7.5となった。結果を表2に示す。実施例2では、実施例1よりもリン酸の濃度が低いので、実施例1よりはフッ素溶出量が高い結果となった。
【0090】
【表2】

【0091】
(実施例3)
実施例3では、第2の実施の形態の安定化処理方法によって、石こうの安定化処理を行った。
【0092】
石こう(160g)を水(約600g)に撹拌して生成される石こうのスラリ(スラリ濃度21.0wt%、約760g)を1Lのビーカに入れ、撹拌しながら石こうのスラリに含まれる石こうに対して0.27wt%(0.43g)の消石灰を加え、充分撹拌してpH=8.1とした。撹拌時間は10分とした。次にろ過c工程に移り、消石灰が撹拌された石こうのスラリを、約10分かけて吸引ろ過して含水率を8%程度となるように、石こう(石こうc)と、ろ液(ろ液c)とに固液分離した。
【0093】
石こうケーキを1回透過したろ液(ろ液b)(pH=5.19、100mL)を、石こう(石こうc)に透過させ、吸引ろ過しながら処理し、ろ液(ろ液d)と石こう(石こうd)に固液分離した。次に、固液分離された石こう(石こうd)に対して0.51wt%のリン酸(0.82g)を蒸留水で薄めて100mLにした洗浄水(pH=2.28)を石こう(石こうd)に透過させ、吸引ろ過しながら処理し、ろ液(ろ液e)と石こう(石こうe)に固液分離して、合計2回洗浄した石こうeとした。本実施例の処理によって得られた石こうeを45℃で、24時間乾燥機に放置して、乾燥させた後、溶出試験(環境庁告示第46号)を行った結果、フッ素溶出量は0.2[mg/L]以下、石こうのpHは7.1となった。結果を表2に示す。実施例1に比べて使用したリン酸および消石灰の量が少ないにもかかわらず、フッ素の溶出量が実施例1よりも低下した。
【0094】
(実施例4)
実施例4では、廃棄物のスラリとして製紙スラッジを用いて、第2の実施の形態の安定化処理方法を行った。
【0095】
製紙スラッジ灰(フッ素含有量:259mg/kg、フッ素溶出量:2.4mg/L)スラリ(スラリ濃度:20wt%)760gを1Lのビーカに入れ、10分間撹拌したところpH=11.0であったので、硫酸40gを加え、10分間撹拌して、pHを8.4とし、吸引ろ過した。その後、製紙スラッジ灰に対して、0.26wt%のリン酸(0.40g)を蒸留水で薄めて100mLとした洗浄水(pH=4.1)を脱水ケーキに透過させ、さらに透過後のろ液を再度脱水ケーキに透過した。45℃で、24時間乾燥機に放置し、乾燥させて、溶出試験(環境庁告示第46号)を行った結果、フッ素溶出量は0.2[mg/L]以下、製紙スラッジ灰のpHは8.3となった。
【0096】
前述した実施例1の手順で、アルカリ物質をリン酸の約半分の量となり、またpHが約8.0程度となるように添加して得られる脱水ケーキを、45℃で、24時間乾燥機に放置して、乾燥させた後、溶出試験(環境庁告示第46号)を行ってフッ素の溶出量を測定した結果から、脱水ケーキに含まれるフッ素含有量に対して、2〜15倍程度のリン酸を含む溶液を、この脱水ケーキに透過させればよいことがわかった。つまり、脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を、脱水ケーキに透過させることによって、フッ素の溶出量を環境基準値以下とすることができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施の形態の安定化処理装置1を系統的に示す図である。
【図2】安定化処理装置1における脱水機4の搬送部31を模式的に示す平面図である。
【図3】安定化処理装置1における脱水機4の搬送部31を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の安定化処理装置40の構成を系統的に示す図である。
【図5】安定化処理装置40における脱水機4の搬送部31を模式的に示す平面図である。
【図6】安定化処理装置40における脱水機4の搬送部31を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の安定化処理方法を確認するために実施したバッチ方式の確認試験手順を示す図である。
【図8】本発明の安定化処理方法を確認するために実施したバッチ方式の確認試験手順を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1,40 安定化処理装置
2 スラリ撹拌槽
3 第1供給機
4 脱水機
5 処理液貯留槽
6 第2供給機
7 第3供給機
11 第1供給管
12 スラリ供給ポンプ
13 スラリ供給管
14 脱水ケーキ層
15,15a,15b ろ液
16 真空ポンプ
16a 第1真空ポンプ
16b 第2真空ポンプ
17 ろ液吸引管
17a 第1ろ液吸引管
17b 第2ろ液吸引管
18 ろ液貯留槽
18a 第1ろ液貯留槽
18b 第2ろ液貯留槽
21 処理液供給ポンプ
22 処理液供給管
30 スラリ供給ノズル部
31 搬送部
32 筐体
33,46 ローラ
34 ベルト
35 上張架部
36 下張架部
37 真空トレー部
37a 第1真空トレー部
37b 第2真空トレー部
38 下受け皿
41 処理液供給ノズル部
45 駆動部
47 エアシリンダ
48 変位許容部
49 支持ローラ
51 ろ液供給ノズル部
52 ろ液供給管
61 ろ液タンク
61a 第1ろ液タンク
61b 第2ろ液タンク
62 真空ポンプ吸引管
62a 第1真空ポンプ吸引管
62b 第2真空ポンプ吸引管
63 ろ液排出管
63a 第1ろ液排出管
63b 第2ろ液排出管
71 重錘ローラ
72 傾斜部材
73 洗浄部
81 ろ液供給ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物のスラリに、このスラリの水素イオン濃度指数が7.0以上かつ8.6未満となるようにアルカリ物質または酸物質を撹拌し、
アルカリ物質または酸物質が撹拌されたスラリを脱水して、脱水ケーキを生成し、
脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を、前記生成された脱水ケーキに透過させることを特徴とする廃棄物の安定化処理方法。
【請求項2】
リン酸類溶液が脱水ケーキを透過して得られるろ液を、脱水ケーキに透過させることを特徴とする請求項1記載の廃棄物の安定化処理方法。
【請求項3】
撹拌槽と、
撹拌槽に入れられた廃棄物のスラリの水素イオン濃度指数が7.0以上かつ8.6未満となるようにアルカリ物質または酸物質を、前記撹拌槽に供給する第1供給手段と、
第1供給手段によって供給されたアルカリ物質または酸物質が撹拌された廃棄物のスラリを脱水して、脱水ケーキを生成する脱水手段と、
脱水ケーキに含まれるフッ素1重量部に対して、リンの含有量が同一となるように換算したリン酸相当重量にて2重量部以上かつ15重量部未満のリン酸類を含み、かつ脱水ケーキ10重量部に対して、5重量部以上かつ10重量部未満のリン酸類溶液を、前記脱水ケーキに供給する第2供給手段とを含むことを特徴とする廃棄物の安定化処理装置。
【請求項4】
リン酸類溶液が脱水ケーキを透過して得られるろ液を貯留するろ液貯留槽と、
脱水ケーキに、ろ液貯留槽に貯留したろ液を供給する第3供給手段とを含むことを特徴とする請求項3記載の廃棄物の安定化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−237948(P2008−237948A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77744(P2007−77744)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】