説明

廃棄物の熱分解処理方法及び装置

【課題】 高品位な燃料として利用可能な熱分解ガス及び熱分解残渣を得る。
【解決手段】 廃棄物1を乾燥兼脱塩化水素処理装置2にて低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱して、廃棄物1を熱分解させずに、水分の蒸発と、塩素含有プラスチックからの塩素分6の放出を行わせ、水蒸気5と塩素分6を含むガス成分4を分離させた固体成分3を回収する。この際、固体成分3は、熱分解時に生成する灰成分をほとんど含まないため、塩素含有プラスチックより放出された遊離の塩素と灰成分中のアルカリ金属との反応による塩をほとんど含まないものとなる。次いで、固体成分3を、熱分解装置7で400〜500℃に加熱して熱分解処理することで、水分が少なくて高カロリーとなり且つ塩素分を含まない可燃性ガスである熱分解ガス8と、塩素含有プラスチックの塩素に由来する塩を含まない固定炭素主体の熱分解残渣9を生成させて回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を熱分解処理して可燃性の熱分解ガスと固定炭素主体の熱分解残渣を回収する廃棄物の熱分解処理方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物を処理し、再利用を図る手法の1つとして、廃棄物の熱分解処理が知られている。
【0003】
これは、廃棄物を、低酸素雰囲気(無酸素雰囲気を含む、以下同様)下で所要温度に加熱して熱分解処理することにより、該廃棄物中の可燃分を熱分解させて可燃性の熱分解ガスと、固定炭素(チャー)を主体とする熱分解残渣を生成させ、上記熱分解ガスと熱分解残渣を分離して回収できるようにしたものであり、上記可燃性の熱分解ガスと熱分解残渣を共に溶融炉へ導き、少ない空気量(たとえば、空気比1.3程度)で高温にして燃焼させて、溶融スラグを取り出すようにした廃棄物の熱分解ガス化溶融システムや、上記回収される熱分解残渣を、炭化物として各種施設の石炭炊きボイラ等で燃料として再利用して、サーマルリサイクルを図るようにする廃棄物の炭化燃料化システム等の試みが行われてきている。更に、上記熱分解ガス化溶融システムや、廃棄物の炭化燃料化システムにおいて、回収される熱分解ガスの一部を、上記廃棄物の熱分解処理用の熱源とするための高温ガス(熱風)を発生させる熱風発生炉で燃料として利用することも考えられてきている。
【0004】
ところで、上記都市ごみ等の廃棄物を熱分解処理する際には、廃棄物中の水分と、塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの混入が問題となる。
【0005】
すなわち、水分は、廃棄物の熱分解処理時に混入していても、加熱されて水蒸気になるだけだが、水分の混入した廃棄物を熱分解処理するためには、廃棄物の熱分解に必要とされる熱量に加えて、廃棄物中に混入している水分の蒸発潜熱が必要とされる。この際、水分量が多い廃棄物を処理する場合は、水分の蒸発潜熱が全体必要熱量の70〜80%を占めることもあり、そのため、廃棄物の熱分解処理時に多量の熱量が必要になるという問題が生じる。
【0006】
更に、上記廃棄物の熱分解により発生する熱分解ガスに、上記廃棄物中の水分に由来する水蒸気が含まれることで、上記熱分解ガスの見かけ上の発熱量が低下するという問題も生じる。
【0007】
一方、廃棄物に塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックが混入している場合は、該塩素含有プラスチックの熱分解処理に伴って塩素(Cl)が放出され、この放出された塩素が有害な塩化水素ガスとなるため、廃棄物の熱分解処理によって得られる熱分解ガスのガス性状を著しく悪化させ、又、腐食性を助長するという問題が生じる。そのために、上記熱分解ガスの流通に用いる管路や燃焼に用いる燃焼装置やボイラ等の熱回収装置が大きく制限されてしまう。又、排ガス処理装置の設置も必要になる。
【0008】
更に、上記塩素含有プラスチックの熱分解処理時に放出される塩素の一部が、遊離した状態で熱分解残渣中の灰成分に含まれるK、Ca、Na等のアルカリ金属と反応して、KCl、CaCl、NaCl等の塩となり、これらの塩が熱分解残渣に含まれることになるが、この塩を含んだ熱分解残渣を、炭化物として取り出して燃料として燃焼させると、その時点で再び塩素が放出されて塩化水素ガスの発生に繋がる虞が生じるようになるため、上記熱分解残渣を燃料として用いるには、予め該熱分解残渣を水洗して脱塩する処理が必要になってしまう。
【0009】
以上の点に鑑みて、本出願人は、たとえば、図2に示す如く、外熱キルン炉b内の廃棄物aを、熱風発生炉cで発生させた高温ガスdを熱源として乾燥、熱分解し、熱分解ガスe及び熱分解残渣fを下流の溶融炉gへ送って処理するようにしてある廃棄物熱分解ガス化溶融装置において、上記外熱キルン炉bの上流側に、該外熱キルン炉bに供給する前の廃棄物aを乾燥させるための通気乾燥機hを設置してなる構成として、廃棄物aを該通気乾燥機hで50%以上の水分を除去してから、この乾燥後の廃棄物aを上記外熱キルン炉bへ供給させる手法を従来提案している。
【0010】
かかる手法によれば、上記外熱キルン炉bでは、上記通気乾燥機hで予め水分量が50%以下まで低減された廃棄物aを処理対象として、その乾燥と熱分解処理を行うことができるため、該外熱キルン炉bより回収される熱分解ガスe中に含まれる水蒸気(水分)を少なくすることができて、該熱分解ガスeの見かけ上の発熱量の低下を抑えて、高発熱量(高カロリー)のガスを取り出すことができるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0011】
又、本出願人は、図3に示す如く、廃棄物aを、一次熱分解炉iへ供給して低酸素雰囲気条件の下で塩素含有プラスチックが熱分解され且つアルミニウム合金の溶融が生じない温度範囲、具体的には、350〜450℃に加熱して熱分解し、発生する一次熱分解ガスjと一次熱分解残渣kを分離して回収した後、該一次熱分解炉iより回収された一次熱分解残渣kを、二次熱分解炉lへ供給して低酸素雰囲気条件の下でより高温の熱分解温度、たとえば、750℃まで加熱することにより更に熱分解し、発生する二次熱分解ガスmと二次熱分解残渣nとを分離して回収するようにした廃棄物の熱分解ガス化方法及び装置も従来提案している。
【0012】
かかる構成としてある廃棄物の熱分解ガス化方法及び装置によれば、一次熱分解炉iで廃棄物aを350〜450℃に加熱して熱分解させ、この際発生する一次熱分解ガスjを一次熱分解残渣kより分離して回収することで、該一次熱分解jガス中に、処理対象とした水分を含んだ廃棄物aが上記一次熱分解炉i内で乾燥される際に放出される水蒸気(水分)、及び、上記廃棄物a中の塩素含有プラスチックに含まれる塩素に由来する塩化水素等の腐食性を有する成分を回収することができる。よって、その後、上記一次熱分解炉iより上記水分及び腐食性を有する成分を含んだ一次熱分解ガスjと分離された状態で回収される一次熱分解残渣kを、上記二次熱分解炉lへ供給して更に高温の熱分解温度で熱分解することにより、該二次熱分解炉lから、上記水分や塩化水素等の腐食性を有する成分を含まない高発熱量(高カロリー)で且つクリーンな可燃性ガスである二次熱分解ガスmと、固定炭素主体の二次熱分解残渣nとをそれぞれ回収できるようにしてある(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−141834号公報
【特許文献2】特開2007−238858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、上記特許文献1に示した手法は、通気乾燥機hで予め乾燥して水分を除去した後の廃棄物aを外熱キルン炉bで熱分解するようにしてあるため、水蒸気の低減した高発熱量の熱分解ガスeを回収するのに有効である。しかし、上記通気乾燥機hは、廃棄物aの完全な乾燥を行うことを目的としたものではないため、上記外熱キルン炉bより回収される熱分解ガスe中には、廃棄物a中の水分に由来する水蒸気(水分)が多少残ることがある。
【0015】
又、上記特許文献1に示した手法では、上記外熱キルン炉bより回収される熱分解ガスeに、塩化ビニル樹脂等の塩素含有プラスチックに含まれる塩素に由来する塩化水素等の腐食性を有する成分が含まれないようにするための対策は特に図られていないというのが実状である。
【0016】
上記特許文献2に示した手法は、一次熱分解炉iで水分及び腐食性を有する成分を含んだ一次熱分解ガスjを分離してから、残る一次熱分解残渣kを二次熱分解炉lで更に高温の熱分解温度で熱分解することで、該二次熱分解炉lより高発熱量(高カロリー)でクリーンな二次熱分解ガスmと、固定炭素主体の二次熱分解残渣nを発生させて回収するのに有効である。しかし、上記一次熱分解炉iにおいても350〜450℃の温度条件での熱分解処理を行うようにしていることから、塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックと、その他の350〜450℃の温度条件の下で熱分解される廃棄物a中の相当量の可燃分の熱分解反応が進行して可燃性ガスが生じるため、その分、二次熱分解炉lより回収されるクリーンな可燃性ガスである二次熱分解ガスmの回収量が減ってしまう。
【0017】
更に、上記一次熱分解炉iでは、上記塩素含有プラスチックの熱分解により発生する塩素の一部が、遊離した状態で、該一次熱分解炉iにおける350〜450℃の温度条件の下で塩素含有プラスチックやその他の廃棄物が熱分解されることで発生する一次熱分解残渣k中の灰成分に含まれるアルカリ金属と反応して塩になり、この塩が一次熱分解残渣kと一緒に二次熱分解炉lへ送られるようになるため、該二次熱分解炉lより回収される二次熱分解残渣n中にも、上記塩が含まれるようになる。よって、上記二次熱分解残渣nを燃料として使用する場合は、水洗等の脱塩処理が必要になるというのが実状である。
【0018】
そこで、本発明者は、上記した従来提案している手法を更に発展させて、高カロリーで且つ塩化水素等の腐食性を有する成分を含まない高品位の熱分解ガスをより多く回収できるようにすると共に、固定炭素(チャー)主体で且つ塩素含有プラスチックに含まれる塩素に由来して生成される塩の濃度が低いという性状を備えた高品位の熱分解残渣を回収できるようにするための工夫、研究を重ねた。その結果、塩素含有プラスチックの主体をなす塩化ビニル樹脂の低酸素雰囲気条件における脱塩化水素反応は280℃程度をピークとして250〜300℃程度の温度条件で進行する一方、この温度条件の下では該塩化ビニル樹脂におけるサーマルリサイクルに有効な炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる点、及び、プラスチックは種類により熱分解温度は大きく異なるが、生産量から4大プラスチックとして知られているポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレンのうち、塩化ビニル樹脂以外のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンは、いずれも400〜500℃程度の温度条件の下で熱分解の反応が進行する点、更に、木や紙等の主成分のセルロースの主要な熱分解反応は350℃程度をピークとして300〜400℃程度の温度条件の下で進行する点に着目して、熱分解処理する前の廃棄物を、低酸素雰囲気下で250〜300℃の温度条件で一旦加熱処理することで、上記廃棄物中に含まれている水分を蒸発させることができると共に、上記棄物中の可燃分の熱分解反応をあまり進行させることなく、該廃棄物中に含まれる塩素含有プラスチックについての脱塩化水素反応を効率よく進行させることができ、よって、上記加熱処理後に固体成分をガス成分より分離して回収することで、上記廃棄物中の可燃分を多く含み且つ水分と塩素含有プラスチックに由来する塩素が除去されてなる固体成分を得ることができて、この固体成分を熱分解処理することにより、水分及び塩素分が除去された可燃性ガスである熱分解ガスと、上記塩素分の除去に伴い塩の生成が抑えられた固定炭素主体の熱分解残渣を得ることができることを見出して本発明をなした。
【0019】
したがって、本発明の目的とするところは、高カロリーで且つ塩化水素等の腐食性を有する成分を含まない高品位の熱分解ガスを多く回収できると共に、固定炭素主体で且つ塩素含有プラスチックに含まれる塩素に由来する塩の含有量が低減された高品位の熱分解残渣を回収することができる廃棄物の熱分解処理方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行し且つ該塩素含有プラスチックの炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる温度条件に加熱し、該加熱に伴い水蒸気及び塩素分を含むガス成分の放出後に残存する固体成分を、上記ガス成分より分離した状態で回収し、次に、上記固体成分を3%以下の低酸素雰囲気下で可燃分の主体を成すプラスチック類及びセルロースの熱分解反応が進行する温度条件で熱分解して、発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離した状態でそれぞれ回収する廃棄物の熱分解処理方法とする。
【0021】
又、請求項2に対応して、廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱し、該加熱に伴い水蒸気及び塩素分を含むガス成分の放出後に残存する固体成分を、上記ガス成分より分離した状態で回収し、次に、上記固体成分を3%以下の低酸素雰囲気下で400〜500℃の温度条件で熱分解して、発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離した状態でそれぞれ回収する廃棄物の熱分解処理方法とする。
【0022】
更に、請求項3に対応して、廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行し且つ該塩素含有プラスチックの炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる温度条件で加熱するための乾燥兼脱塩化水素処理装置と、該乾燥兼脱塩化水素処理装置より上記所要の温度条件での加熱に伴い放出される水蒸気及び塩素分を含むガス成分と分離した状態で回収する固体成分を、3%以下の低酸素雰囲気下で可燃分の主体を成すプラスチック類及びセルロースの熱分解反応が進行する温度条件で熱分解して発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離して回収できるようにしてある熱分解装置とを備えてなる構成を有する廃棄物の熱分解処理装置とする。
【0023】
更に又、請求項4に対応して、廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱するための乾燥兼脱塩化水素処理装置と、該乾燥兼脱塩化水素処理装置より上記所要の温度条件での加熱に伴い放出される水蒸気及び塩素分を含むガス成分と分離した状態で回収する固体成分を、3%以下の低酸素雰囲気下で400〜500℃の温度条件で熱分解して発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離して回収できるようにしてある熱分解装置とを備えてなる構成を有する廃棄物の熱分解処理装置とする。
【0024】
上述の各構成において、乾燥兼脱塩化水素処理装置を、廃棄物を熱源となる加熱ガスと直接接触させて加熱する形式のものとした構成とする。
【0025】
更に、上記各構成において、熱分解装置を、熱風発生炉で発生させた加熱ガスを熱源とする外熱により固体成分を間接加熱して所定の温度条件で熱分解させる形式のものとし、且つ該熱分解装置における固体成分の熱分解用の熱源に供した後の加熱ガスを、乾燥兼脱塩化水素処理装置における廃棄物の加熱用の熱源として用いるようにした構成とする
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行し且つ該塩素含有プラスチックの炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる温度条件に加熱し、該加熱に伴い水蒸気及び塩素分を含むガス成分の放出後に残存する固体成分を、上記ガス成分より分離した状態で回収し、次に、上記固体成分を3%以下の低酸素雰囲気下で可燃分の主体を成すプラスチック類及びセルロースの熱分解反応が進行する温度条件で熱分解して、発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離した状態でそれぞれ回収する廃棄物の熱分解処理方法及び装置、より具体的には、廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱し、該加熱に伴い水蒸気及び塩素分を含むガス成分の放出後に残存する固体成分を、上記ガス成分より分離した状態で回収し、次に、上記固体成分を3%以下の低酸素雰囲気下で400〜500℃の温度条件で熱分解して、発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離した状態でそれぞれ回収する廃棄物の熱分解処理方法及び装置としてあるので、廃棄物の上記所定の低酸素雰囲気下における塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行し且つ該塩素含有プラスチックのサーマルリサイクルに有効な炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる温度条件である250〜300℃への加熱により、該廃棄物に含まれていた水分は水蒸気として放出させることができると共に、廃棄物中の塩素含有プラスチックの塩素分をガス成分として放出させることができるため、このガス成分を分離した状態で回収する固体成分は、水分及び塩素分が除去されたものとすることができる。更に、上記温度条件では廃棄物の熱分解反応はほとんど進行しないために灰成分はほとんど発生しないことから、上記固体成分は、廃棄物より放出される塩素分中の遊離の塩素と灰成分に含まれるアルカリ金属との反応で生じる塩をほとんど含まないものとすることができる。よって、上記固体成分を、上記所定の低酸素雰囲気下で可燃分の主体を成すプラスチック類及びセルロースの熱分解反応が進行する温度条件である400〜500℃の温度条件で熱分解することにより、水蒸気及び塩素分を含まない高カロリーで且つ高品位な可燃性ガスとなる熱分解ガスと、廃棄物中の塩素含有プラスチックの塩素に由来する塩を含まない高品位の固定炭素主体の熱分解残渣を生成させることができる。
(2)以上により、分離して回収される上記熱分解ガス及び熱分解残渣を、それぞれ良質で高カロリーの燃料ガス、及び、良質な炭化燃料として利用することができて、廃棄物のサーマルリサイクルを図る場合に、上記熱分解ガスや熱分解残渣を燃料として広範な燃焼装置で利用することが可能になる。
(3)乾燥兼脱塩化水素処理装置を、廃棄物を熱源となる加熱ガスと直接接触させて加熱する形式のものとした構成とすることにより、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置にて廃棄物を加熱するときの熱効率を高めることができると共に、廃棄物より放出される水蒸気や塩素分を含むガス成分を、該廃棄物の加熱用の熱源として用いる加熱ガスの流れに乗せて固体成分より容易に分離させることができる。
(4)熱分解装置を、熱風発生炉で発生させた加熱ガスを熱源とする外熱により固体成分を間接加熱して所定の温度条件で熱分解させる形式のものとし、且つ該熱分解装置における固体成分の熱分解用の熱源に供した後の加熱ガスを、乾燥兼脱塩化水素処理装置における廃棄物の加熱用の熱源として用いるようにした構成とすることにより、熱分解装置における固体成分の熱分解用の熱源に供した後の加熱ガスに残存する熱を、乾燥兼脱塩化水素処理装置における廃棄物の加熱用の熱源として有効利用することができるため、装置全体の熱効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の廃棄物の熱分解処理方法及び装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】本出願人が従来提案している廃棄物の熱分解処理手法の一例の概要を示す図である。
【図3】本出願人が従来提案している廃棄物の熱分解ガス化方法及び装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0029】
図1は本発明の廃棄物の熱分解処理方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0030】
すなわち、廃棄物1を乾燥兼脱塩化水素処理装置2へ供給し、該乾燥兼脱塩化水素処理装置2へのリークによって生じる3%以下の低酸素雰囲気を保持した状態で、塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行し且つ該塩素含有プラスチックのサーマルリサイクルに有効な炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる温度条件である250〜300℃、たとえば、300℃に加熱して、上記廃棄物1の乾燥と、該廃棄物1中に含まれる塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチック(図示せず)の脱塩化水素反応を行わせる。
【0031】
次に、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2より、固体成分3を、上記廃棄物1の乾燥に伴い放出された水蒸気(水分)5及び塩素含有プラスチックより放出された塩化水素ガス等の塩素分6を含むガス成分4と分離した状態で回収する。
【0032】
次いで、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2より回収された固体成分3を、熱分解装置7へ供給し、該熱分解装置7へのリークによって生じる3%以下の低酸素雰囲気を保持した状態で、可燃分の主体を成すプラスチック類及びセルロースの熱分解反応が進行する温度条件である400〜500℃、たとえば、450℃に加熱して、上記固体成分3中の可燃分を熱分解して、可燃性ガスである熱分解ガス8と、固定炭素(チャー)を主体とする熱分解残渣9を生成させ、その後、該生成した熱分解ガス8と熱分解残渣9を分離して回収するようにする。
【0033】
詳述すると、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2は、たとえば、円筒状のキルン本体10を一端の入口10a側よりも他端の出口10b側が低くなるように所要角度傾斜させて横置きに配置して回転駆動できるようにしてある。上記キルン本体10の上記入口10a側には、投入ホッパ11の下端部に接続したスクリューコンベヤ形式等の給じん機12を取り付けて、上記投入ホッパ11内に投入された廃棄物1を、上記給じん機12により上記キルン本体10内へ供給できるようにしてある。
【0034】
上記キルン本体10の出口側には、固体成分回収口14を底部に備えた分離室13を設け、該分離室13に、加熱ガス入口15を設けると共に、助燃用のバーナ16が設置してある。更に、上記キルン本体10の入口10a側にガス出口17を設けた構成としてある。これにより、上記キルン本体10を低速で回転させた状態において、上記投入ホッパ11内の廃棄物1を給じん機12によりキルン本体10内へ徐々に供給しつつ、所要温度の加熱ガス18aを、上記キルン本体10内へ加熱ガス入口15より導入し、該キルン本体10内にて上記ガス出口17に向けて流通させることにより、上記キルン本体10内を上記所定の低酸素雰囲気に保持した状態にて、キルン本体10の回転に伴って該キルン本体10内を入口10a側から出口10b側へ順次移送される廃棄物1を、上記加熱ガス18aによる直接加熱により300℃に加熱できるようにしてある。
【0035】
なお、上記加熱ガス18aにより上記キルン本体10内の廃棄物1を300℃に加熱するための必要熱量が得られない場合は、図1に二点鎖線で示すように、上記助燃用のバーナ16の燃焼により発生させる高温の燃焼ガス19を補助熱源として、上記キルン本体10内で廃棄物1を300℃に加熱できるようにしてある。よって、この廃棄物1の300℃への加熱に伴い、該廃棄物1中に含まれていた水分を蒸発させることができるようにしてあると共に、上記廃棄物1中に含まれている塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応を進行させて、塩素分6を塩化水素ガス等のガスとして放出させることができるようにしてある。
【0036】
更に、上記所定温度の加熱処理により水分の除去と塩素分6の除去が行われた後に上記分離室13に達する固体成分3は、該分離室13の底部の固体成分回収口14より固体成分回収ライン20へ回収できるようにしてある。
【0037】
一方、上記廃棄物1の300℃への加熱用の熱源として供された後の加熱ガス18a、及び、必要に応じて補助熱源として供された後の上記助燃用のバーナ16の燃焼ガス19と、上記廃棄物1中に含まれていた水分の蒸発により生じた水蒸気5及び上記廃棄物1中の塩素含有プラスチックの脱塩化水素処理により生じた塩化水素ガス等の塩素分6を含むガス成分4は、上記ガス出口17より取り出して、ガス排出ライン21を通して図示しない所要の排ガス処理設備へ排出できるようにしてある。
【0038】
上記熱分解装置7は、一端の入口23a側に供給管24を一体に接続し且つ他端の出口23b側に排出管25を一体に接続した内筒23と、その外側に同心状に配置した外筒26との間に加熱流路27を形成してなる二重筒構造とした熱分解キルン炉22を、上記内筒23の一端の入口23a側よりも他端の出口23b側が低くなるように所要角度傾斜させて横置きに配置して回転駆動できるようにしてある。
【0039】
上記熱分解キルン炉22における上記内筒23の入口23aには、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2における分離室13の固体成分回収口14より固体成分3を導く固体成分回収ライン20の下流側に接続したホッパ28の下端部に設けてあるスクリューコンベヤ形式等の供給装置29を取り付けて、上記投入ホッパ28内の固体成分3を、上記供給装置29により上記内筒23内へ供給できるようにしてある。
【0040】
一方、上記熱分解キルン炉22における内筒23の出口23bには、上記固体成分3の熱分解処理により発生する熱分解ガス8と熱分解残渣9を分離させて、頂部の熱分解ガス回収口31と底部の熱分解残渣回収口32よりそれぞれ回収できるようにした分離室30が設けてある。
【0041】
更に、上記内筒23と外筒26との間に形成した加熱流路27における内筒23の出口23b寄りに設けた加熱ガス入口33に、熱風発生炉34が加熱ガス供給ライン35を介して接続してある。
【0042】
上記加熱流路27における内筒23の入口23a寄りには加熱ガス出口36が設けてある。これにより、上記熱分解キルン炉22を低速で回転させた状態において、ホッパ28内の固体成分3を供給装置29により内筒23内へ徐々に供給しつつ、内筒23と外筒26との間に形成された加熱流路27内に、上記熱風発生炉34で所要の燃料の燃焼により発生させた高温の加熱ガス(熱風)18を、加熱ガス供給ライン35を介し加熱ガス入口33より導入すると共に、該加熱流路27内を加熱ガス出口36へ向けて流通させることにより、内筒23内を上記所定の低酸素雰囲気に保持した状態にて、熱分解キルン炉22の回転に伴って内筒23内を入口23a側から出口23b側へ順次移送される固体成分3を、内筒23の周壁を介して上記加熱ガス18を熱源とする外熱により450℃に間接加熱して、可燃性ガスである熱分解ガス8と固定炭素主体の熱分解残渣9に熱分解させることができるようにしてある。
【0043】
更に、上記固体成分3の熱分解により発生する熱分解ガス8と熱分解残渣9は、上記分離室30で分離させた後、熱分解ガス8は分離室30の頂部の熱分解ガス回収口31より熱分解ガス回収ライン37を通して回収できるようにしてある。一方、上記熱分解残渣9は上記分離室30の底部の熱分解残渣回収口32より熱分解残渣回収ライン38を通して回収できるようにしてある。
【0044】
上記熱分解ガス回収ライン37には、途中の所要位置より2本の熱分解ガスライン39と40をそれぞれ分岐させて設け、一方の熱分解ガスライン39を上記熱風発生炉34に接続して、上記可燃性ガスである熱分解ガス8の一部を、熱風発生炉34に供給して加熱ガス18を発生させるための燃料として利用できるようにしてある。
【0045】
又、上記熱分解ガス回収ライン37より分岐させた他方の熱分解ガスライン40は、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2に設けた助燃用のバーナ16に接続して、上記熱分解ガス8の一部を、上記助燃用のバーナ16に供給して燃焼用燃料として利用できるようにしてある。
【0046】
上記熱分解装置7における加熱流路27の加熱ガス出口36には、循環ファン42を備えた加熱ガス循環ライン41が接続してあり、上記熱分解装置7における加熱流路27を流通して上記固体成分3の熱分解処理用の熱源に供された後に加熱ガス出口36より排出される加熱ガス18aを、上記熱風発生炉34に循環させることができるようにしてある。
【0047】
更に、上記加熱ガス循環ライン41における循環ファン42よりも下流側の所要個所に加熱ガス回収ライン43の上流側端部を接続すると共に、該加熱ガス回収ライン43の下流側端部を2本に分岐させて、一方の分岐ライン43aを、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2における分離室13の加熱ガス入口15に接続すると共に、他方の分岐ライン43bを上記ガス排出ライン21の途中位置に接続し、且つ上記各分岐ライン43aと43bに、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2の固定成分回収口14より固体成分3を導く固体成分回収ライン20上に温度検出部を接続した温度調節器44によって制御される流量調整弁45aと45bを、それぞれ設けた構成としてある。上記温度調節器44は、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2の固体成分回収口14より固体成分回収ライン20へ回収されて該温度調節器44の温度検出部により検出される固体成分3の温度が常に300℃に保持されるように、上記加熱ガス回収ライン43の各分岐ライン43a,43b上の各流量調整弁45a,45bへ制御指令を与えるようにしてある。これにより、上記熱分解装置7の加熱流路27を流通した後、加熱ガス出口36より加熱ガス循環ライン41へ導かれる加熱ガス18aの一部を、上記加熱ガス回収ライン43へ回収すると共に、該加熱ガス回収ライン43と上記一方の分岐ライン43aを通して上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2の加熱ガス入口15へ供給することができるようにしてあり、この加熱ガス18aの保有する熱、すなわち、上記熱分解装置7における固体成分3の熱分解用熱源に供した後の加熱ガス18aに残存する熱を、乾燥兼脱塩化水素処理装置2にて廃棄物1を300℃まで加熱するための熱源として利用できるようにしてある。この際、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2にて加熱される廃棄物1の温度が300℃に保持されるように、上記温度調節器44により上記加熱ガス回収ライン43を通して導かれる加熱ガス18aの一方の分岐ライン43aを通した上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2への供給量を適宜調整できるようにしてある。なお、上記加熱ガス18aの余剰分は、他方の分岐ライン43bを経てガス排出ライン21へ排出できるようにしてある。
【0048】
以上により、上記熱分解装置7における固体成分3の熱分解処理によって生じる可燃性ガスである熱分解ガス8の燃焼熱を熱源として、上記熱分解装置7における固体成分3の熱分解処理と、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2における廃棄物1の300℃までの加熱を共に行わせることができるようにしてある。
【0049】
なお、本発明の廃棄物の熱分解処理装置の運転開始時等、上記熱分解装置7における固体成分3の熱分解処理が開始される以前は、上記熱分解ガス8は発生しないことから、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2の助燃用のバーナ16、及び、上記熱風発生炉34には、図示しない外部燃料の供給ラインをそれぞれ接続して、上記熱分解ガス8が燃焼用燃料として利用できるようになるまでは、上記外部燃料の燃焼熱を熱源として、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2における廃棄物1の300℃までの加熱と、上記熱分解装置7における固体成分3の450℃での熱分解処理を行わせることができるようにしてあるものとする。
【0050】
46は上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2の助燃用のバーナ16へ供給する燃焼用空気、47は熱風発生炉34へ供給する燃焼用空気である。48は熱分解装置7の熱分解残渣回収口32より熱分解残渣9を導く熱分解残渣回収ライン38上に温度検出部を接続した温度調節器であり、該温度調節器48により、上記熱分解残渣回収ライン38を通して熱分解装置7より回収される熱分解残渣9の温度が450℃に保持されるように、図示しない調整手段を介して上記熱分解装置7の加熱流路27へ流通させる加熱ガス18の流量を適宜調整させるようにすればよい。
【0051】
以上の構成としてある本発明の廃棄物の熱分解処理装置を用いる場合は、先ず、廃棄物1を乾燥兼脱塩化水素処理装置2へ供給し、キルン本体10内で上記所定の低酸素雰囲気を保持した状態で加熱ガス18aを熱源とし、又、必要に応じて燃焼させる助燃用のバーナ16の燃焼ガス19を補助熱源として300℃に加熱する。これにより、上記廃棄物1では、含まれていた水分が蒸発して水蒸気5として放出されると共に、該廃棄物1中に含まれる塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行することで、塩素分6がガスとして放出される。
【0052】
上記のようにして廃棄物1より水蒸気5と塩素分6を含むガス成分4が放出されると、該ガス成分4は、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2のキルン本体10にて上記廃棄物1の加熱用の熱源として供された後の加熱ガス18a、及び、必要に応じて補助熱源として供された後の上記助燃用のバーナ16の燃焼ガス19と一緒にガス出口17よりガス排出ライン21を通して図示しない所要の排ガス処理設備へ排出されるようになるため、上記キルン本体10内で上記ガス成分4の分離が行われた後に残存する固体成分3は、水分及び塩素分6が除去されたものとなる。
【0053】
しかも、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2における廃棄物1の加熱温度である300℃では、該廃棄物1の可燃分の熱分解反応はほとんど進行しないため、灰成分はほとんど発生しない。このため、上記廃棄物1より放出される塩素分6中の遊離の塩素が、灰成分に含まれるアルカリ金属と塩を生成する反応は抑制される。
【0054】
よって、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2の固体成分回収口14より回収される固体成分3は、水分と塩素が除去され、且つ上記廃棄物1中の塩素含有プラスチックの塩素に由来する塩もほとんど含まないものとなる。
【0055】
次いで、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2より回収した固体成分3が、熱分解装置7へ供給されると、該固体成分3を、熱分解装置7における熱分解キルン炉22内で、上記所定の低酸素雰囲気を保持した状態にて熱風発生炉34で発生させた加熱ガス18を熱源として450℃に加熱する。これにより、上記固体成分3では、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2にて予め塩素の除去が行われた塩化ビニル樹脂等の塩素含有プラスチックにおけるサーマルリサイクルに有効な炭化水素成分である可燃分と、残りの可燃分の主体を成すポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチック類、及び、木や紙等の主成分のセルロースの熱分解反応が行われて、可燃性ガスである熱分解ガス8と、固定炭素を主体とする熱分解残渣9が生成される。この際、上記したように熱分解の対象となる固体成分3が、予め水分と塩素が除去され且つ上記廃棄物1中の塩素含有プラスチックの塩素に由来する塩もほとんど含まないものとなっていることから、上記生成する熱分解ガス8は水分としての水蒸気及び塩素分を含まない高カロリーで且つ高品位な可燃性ガスとなり、又、熱分解残渣9は上記廃棄物1中の塩素含有プラスチックの塩素に由来する塩を含まない高品位の固定炭素主体のものとなる。
【0056】
よって、上記高カロリーで且つ高品位の可燃性ガスである熱分解ガス8が、上記熱分解装置7より熱分解ガス回収ライン37を通して、又、高品位な固定炭素主体の熱分解残渣9が、上記熱分解装置7より熱分解残渣回収ライン38を通してそれぞれ回収されるようになる。
【0057】
このように、本発明の廃棄物の熱分解処理方法及び装置によれば、高カロリーで且つ高品位の熱分解ガス8を得ることができるため、該熱分解ガス8を良質で高カロリーの燃料ガスとして利用することができる。又、塩素含有プラスチックの塩素に由来する塩の低減された高品位の固定炭素主体の熱分解残渣9を得ることができるため、該熱分解残渣9を、良質な炭化燃料として利用することができる。よって、廃棄物1のサーマルリサイクルを図る場合に、上記熱分解ガス8や熱分解残渣9を燃料として広範な燃焼装置で利用することが可能になる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、乾燥兼脱塩化水素処理装置2は、廃棄物1の加熱温度が250〜300℃であって、多少の酸素が存在していても廃棄物1の燃焼がほとんど進行しない温度条件であるため、熱効率の観点、及び、廃棄物1より放出させる水蒸気5や塩素分6を含むガス成分4を該廃棄物1の加熱用熱源として用いる加熱ガス18aや補助熱源として用いる助燃用のバーナ16の燃焼ガス19の流れに乗せて排出させることで固体成分3からの分離を容易に行うことができるという観点からすると、上記加熱ガス18aや燃焼ガス19を、廃棄物1に直接接触させる形式とすることが好ましいが、廃棄物1を3%以下の低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱すると共に固体成分3をガス成分4より分離して回収できれば、熱分解装置7における固体成分3の加熱方式と同様に、廃棄物1を上記加熱ガス18aや助燃用のバーナ16の燃焼ガス19により間接加熱する形式としてもよい。又、廃棄物1を上記所定の低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱すると共に固体成分3をガス成分4より分離して回収できれば、図示した以外のいかなる形式の乾燥兼脱塩化水素処理装置2を用いるようにしてもよい。
【0059】
熱分解装置7は、上記乾燥兼脱塩化水素処理装置2より回収される固体成分3を3%以下の低酸素雰囲気下で400〜500℃に加熱して該固体成分3中の可燃分を熱分解することができるようにしてあれば、固体成分3を熱源により直接加熱する方式等、図示した以外のいかなる形式の熱分解装置7を採用してもよい。
【0060】
熱分解装置7より回収される熱分解ガス8をより高温で処理してタール成分を分解させるようにしてもよい。又、熱分解装置7より回収される熱分解残渣9をより高温で処理することで、該熱分解残渣9に残存している揮発分をより多くガス化させて、可燃性ガスである熱分解ガス8の収量を増加させるようにしてもよい。
【0061】
乾燥兼脱塩化水素処理装置2における廃棄物1の加熱用熱源、及び、熱分解装置7における固体成分3の熱分解処理用の熱源は、熱分解ガス8の燃焼熱により自給できる形式とすることが好ましいが、外部の熱源を使用するようにしてもよい。
【0062】
熱分解装置7より熱分解残渣9を回収する熱分解残渣回収ライン38の下流側に、該熱分解残渣9中の金属や不燃物を分離するための選別装置を設けて、熱分解残渣9における固定炭素の比率を高めるようにしてもよい。
【0063】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1 廃棄物
2 乾燥兼脱塩化水素処理装置
3 固体成分
4 ガス成分
5 水蒸気
6 塩素分
7 熱分解装置
8 熱分解ガス
9 熱分解残渣
18,18a 加熱ガス
34 熱風発生炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行し且つ該塩素含有プラスチックの炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる温度条件に加熱し、該加熱に伴い水蒸気及び塩素分を含むガス成分の放出後に残存する固体成分を、上記ガス成分より分離した状態で回収し、次に、上記固体成分を3%以下の低酸素雰囲気下でプラスチック類及びセルロースの熱分解反応が進行する温度条件で熱分解して、発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離した状態でそれぞれ回収することを特徴とする廃棄物の熱分解処理方法。
【請求項2】
廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱し、該加熱に伴い水蒸気及び塩素分を含むガス成分の放出後に残存する固体成分を、上記ガス成分より分離した状態で回収し、次に、上記固体成分を3%以下の低酸素雰囲気下で400〜500℃の温度条件で熱分解して、発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離した状態でそれぞれ回収することを特徴とする廃棄物の熱分解処理方法。
【請求項3】
廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で塩化ビニル樹脂を主体とする塩素含有プラスチックの脱塩化水素反応が進行し且つ該塩素含有プラスチックの炭化水素成分の分解が10%以下に抑えられる温度条件で加熱するための乾燥兼脱塩化水素処理装置と、該乾燥兼脱塩化水素処理装置より上記所要の温度条件での加熱に伴い放出される水蒸気及び塩素分を含むガス成分と分離した状態で回収する固体成分を、3%以下の低酸素雰囲気下でプラスチック類及びセルロースの熱分解反応が進行する温度条件で熱分解して発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離して回収できるようにしてある熱分解装置とを備えてなる構成を有することを特徴とする廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項4】
廃棄物を3%以下の低酸素雰囲気下で250〜300℃に加熱するための乾燥兼脱塩化水素処理装置と、該乾燥兼脱塩化水素処理装置より上記所要の温度条件での加熱に伴い放出される水蒸気及び塩素分を含むガス成分と分離した状態で回収する固体成分を、3%以下の低酸素雰囲気下で400〜500℃の温度条件で熱分解して発生する熱分解ガスと熱分解残渣とを分離して回収できるようにしてある熱分解装置とを備えてなる構成を有することを特徴とする廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項5】
乾燥兼脱塩化水素処理装置を、廃棄物を熱源となる加熱ガスと直接接触させて加熱する形式のものとした請求項3又は4記載の廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項6】
熱分解装置を、熱風発生炉で発生させた加熱ガスを熱源とする外熱により固体成分を間接加熱して所定の温度条件で熱分解させる形式のものとし、且つ該熱分解装置における固体成分の熱分解用の熱源に供した後の加熱ガスを、乾燥兼脱塩化水素処理装置における廃棄物の加熱用の熱源として用いるようにした請求項3、4又は5記載の廃棄物の熱分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−67800(P2011−67800A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223325(P2009−223325)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】