説明

廃棄物の熱分解処理装置および熱分解処理方法、ならびに肥料の製造方法

【課題】含水率の高い廃棄物であっても、内部まで完全に処理することによって、一度に大量の廃棄物を処理することが可能な熱分解処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の熱分解炉2内の中心には、中空の管で形成され、下部外周に複数の吸気管8aを備えた対流補助管8が設置されている。対流補助管8の開口部分は、煙突4と熱分解炉2との接合部4aに対向するように設けられている。煙突4は外気と連通しているので、熱分解炉2内よりも圧力が低い装置外部への空気の吸引力が発生する。この吸引力により、磁気処理された空気は熱分解炉2内に山積みにされた廃棄物の間をすり抜けるようにして吸気管8aから対流補助管8へと吸い込まれ、対流補助管8の上部から吐き出される。これにより、熱分解炉2内には空気の対流が生じ、山積みにされた廃棄物に満遍なく磁気処理された空気が行きわたるので完全に熱分解して処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解処理する装置に関し、より詳しくは、生ゴミ・有機汚泥・家畜糞尿・屎尿・食品残渣・魚介残渣などの含水率が比較的高い有機系廃棄物を熱分解して処理するための熱分解処理装置および熱分解処理方法、ならびに熱分解処理方法によって製造される肥料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業、経済の発展にともない大量に発生している産業廃棄物や、一般家庭から排出される生ゴミ等の廃棄物は、一般的に、焼却(熱分解)処理して可燃成分を除去し、残存する不燃成分のみを最終的に埋め立てることによって処理されている。
【0003】
生ゴミ・有機汚泥・家畜糞尿・屎尿・食品残渣・魚介残渣などの含水率の高い廃棄物においても同様に焼却処理が施される。しかし、このような廃棄物は、まず、液体成分が十分に乾燥しないと燃焼が始まらず、また、焼却処理が始まっても、廃棄物の表面のみが急速に処理されるだけで廃棄物の中心部分は十分に処理されにくい。また、このような含水率の高い廃棄物を処理する場合、焼却炉内での燃焼条件を一定に保つことが難しいため、不完全燃焼による煙や煤塵の発生、或いはダイオキシン等の有害ガスなどによる環境汚染を引き起こしやすい。
【0004】
そこで、近時の焼却設備においては、燃焼温度を高めて完全燃焼を図ったり、燃焼ガスから硫黄酸化物、窒素酸化物、塩素化合物などを捕捉除去して、排気を無害化したりする方向での改良が進められている。
【0005】
ところが、このような燃焼条件の管理、燃焼ガスの無害化を徹底して行おうとすると、広い敷地に複雑な装置を配置する必要があるため、建設費も嵩むこととなる。また、ダイオキシン等の有害ガスの発生を抑えるには、850℃以上の燃焼温度が必要となるので、廃棄物の処理に大量のエネルギーを消費することとなる。
【0006】
そこで、空気に磁界を加えて熱処理用空気として利用することにより、ダイオキシン等の有害ガスの発生を抑制しつつ、できるだけ簡単な構造で建設費を安価に抑えることが可能な分解処理装置が特許文献1に記載されている。
【0007】
特許文献1に記載の分解処理装置は、熱処理室を形成する耐熱容器と、この耐熱容器の壁部を貫通して設けられ、外部の大気に磁界を加えて熱処理用空気として熱処理室に取り入れる吸気通路と、この吸気通路を通る熱処理用空気に対して乱流を生じさせる流れ調節手段とを有している。
【0008】
特許文献1には、磁界を加えた空気を熱処理用空気として熱処理室に送ることにより、廃棄物が効率的に且つ緩やかに燃焼され、また、廃棄物が明確に認識できる程の炎を上げることもなく、そして、廃棄物の表面だけでなく主に内部の広い領域で時間をかけて緩やかな酸化ないしは炭化さらには灰化が進行され、その結果、炉内の炉壁部分等において、著しい高温化を回避しつつ、廃棄物を完全燃焼させるとともにダイオキシン類の発生を抑えて熱処理することが可能であると記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−91367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の分解処理装置においては、磁界が加えられた空気を自然吸気またはファン等によって強制的に熱処理室に送ることが記載されている。固体の廃棄物を処理する場合であれば、廃棄物を山積みすると、この廃棄物同士に隙間が形成されるので、ファン等によって強制的に送り込まれた空気はこの隙間を流れ、廃棄物の表面だけでなく内部の領域においても熱分解を促すことが考えられる。
【0011】
しかしながら、含水率が高く、固体状態が維持されずに流動物状に近い形状となっている廃棄物においては、特許文献1に記載されているように磁界が加えられた空気をただ熱処理室に送っても、空気は熱処理室内に山積みに投入された廃棄物のほんの表層部を沿うように流れるだけで、内部にある廃棄物には行きわたりにくい。従って、表層部にある廃棄物のみが熱分解され、内部にある廃棄物は処理されずにそのまま残ってしまい、一度に大量の廃棄物を処理することが難しい。
【0012】
そこで、本発明は、含水率の大きさにかかわらず、内部にある廃棄物まで完全に熱分解することが可能であり、これにより一度に大量の廃棄物を処理することができる熱分解処理装置、および熱分解処理方法ならびにこのような廃棄物の熱分解処理により肥料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の熱分解処理装置は、空気を磁気処理する磁気処理手段と、磁気処理手段によって磁気処理された空気が導入され、この導入される空気により廃棄物を熱分解処理するための熱分解炉とを備え、熱分解炉は、熱分解炉内に導入される空気を、熱分解炉内の下部から吸い込むとともに上部へと吐き出して熱分解炉内で対流させる対流補助管を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の熱分解処理装置によれば、磁気処理手段によって磁気処理された空気は熱分解炉内へと導入され、そして、熱分解炉内に備えられた対流補助管により、熱分解炉内の下部から吸い込まれて上部へと吐き出される。従って、熱分解炉内に導入された空気は、熱分解炉の壁面付近で留まることなく、熱分解炉内で対流を起こす。この対流により、山積みにされた廃棄物の表層部だけでなく内部にある廃棄物にまで磁気処理された空気を行きわたらせることができ、満遍なく接触させることができる。これにより、含水率の高い流動物状の廃棄物であっても、内部にある廃棄物まで完全に熱分解処理することができる。
【0015】
本発明の熱分解処理装置における熱分解炉は、磁気処理手段によって磁気処理された空気を分配して導入するための空気導入管群を備えたことを特徴とする。
【0016】
熱分解炉には、空気導入管が複数備えられていることによって、磁気処理手段によって磁気処理された空気は分配されて各空気導入管から熱分解炉内へと導入される。これにより、一度にまとめて空気を磁気処理し、この磁気処理された空気をそれぞれの空気導入管から熱分解炉内へと導入することができるので、各空気導入管に磁気処理手段を設ける必要がない。
【0017】
本発明の熱分解処理装置における対流補助管は、外周面に複数の吸気管を備えたことを特徴とする。
【0018】
吸気管が対流補助管の外周面に複数備えられたことにより、空気導入管から熱分解炉内に導入された空気を、熱分解炉内のあらゆる方向から吸気管に吸い込むことができる。よって、熱分解炉内全体に空気の対流を生じさせることができ、この対流により、山積みにされた廃棄物の表層部だけでなく内部にある廃棄物にまで磁気処理された空気を行きわたらせることができ、満遍なく接触させることができるので、含水率の高い流動物状の廃棄物であっても、内部にある廃棄物まで完全に熱分解処理することができる。
【0019】
さらに、本発明の熱分解処理装置における熱分解炉は、熱分解炉内で発生したガスを熱分解炉外に排出する煙突を備え、対流補助管は、その先端開口が、煙突と熱分解炉との接合部に対向するように設けられた方が望ましい。
【0020】
熱分解炉内で発生した排気ガスは、熱分解炉に接合されている煙突から外部へ放出される。つまり、煙突は外気と連通している状態である。熱分解処理装置の外部は熱分解炉よりも圧力が低いので、この煙突と熱分解炉との接合部に対向するように対流補助管の先端開口を設けることにより、対流補助管内には吸引力が発生する。このように、煙突と熱分解炉との接合部に対向するように対流補助管の先端開口を設けるだけで、対流補助管には、特に公知の吸引手段を設けることなく、熱分解炉内に導入された空気を、吸気管を通じてあらゆる方向から対流補助管内に吸い込むことができる。従って、熱分解炉内に空気の対流を生じさせるために特別な吸引手段を設ける必要がないので、熱分解処理装置を簡単な構造で構成することができ、しかも安価に製造することができる。なお、煙突をもうけたことにより生じる吸引力の大きさは煙突の高さに比例するので、なるべく高い煙突を設けるとよい。
【0021】
さらに、本発明の熱分解処理装置における熱分解炉は円筒状に形成され、対流補助管は、熱分解炉内の中心に設けられた方が望ましい。
【0022】
熱分解炉が円筒状に形成され、対流補助管が熱分解炉内の中心に設けられたことにより、空気導入管から導入された空気は熱分解炉内の中心方向へと吸い寄せられる。これにより、熱分解炉の内周壁面付近で空気を留まらせることなく、満遍なくあらゆる方向から対流補助管内に吸い込むことができる。よって、熱分解炉内全体に空気の対流を生じさせることができ、熱分解炉内に山積みにされた廃棄物のうち、最も空気が行きわたりにくい熱分解炉の中央部分の廃棄物にまで空気を接触させることができる。
【0023】
本発明の廃棄物の熱分解処理方法は、熱分解処理装置の熱分解炉内に投入された廃棄物を、磁気処理された空気によって熱分解処理する廃棄物の熱分解処理方法であって、熱分解炉内に導入される磁気処理された空気を、熱分解炉内に設けられた対流補助管によって熱分解炉内の下部から吸い込むとともに上部へと吐き出させて熱分解炉内を対流させることを特徴とする。
【0024】
本発明の廃棄物の熱分解処理方法によれば、磁気処理された空気は熱分解炉内へと導入され、そして、熱分解炉内に備えられた対流補助管により、熱分解炉内の下部から吸い込まれて上部へと吐き出される。従って、熱分解炉内に導入された空気は、熱分解炉の壁面付近で留まることなく、熱分解炉内で対流を起こす。この対流により、山積みにされた廃棄物の表層部だけでなく内部にある廃棄物にまで磁気処理された空気を行きわたらせることができ、満遍なく接触させることができる。これにより、含水率の高い流動物状の廃棄物であっても、内部にある廃棄物まで完全に熱分解処理することができる。
【0025】
本発明の熱分解処理方法で用いられる廃棄物は、液状の廃棄物であって、液状の廃棄物は、粉体と混合した状態で熱分解処理されることを特徴とする。
【0026】
ドレッシング、味噌、醤油粕、焼酎粕、マヨネーズ、たれ類、乳製品、または、魚や家畜の解体時における血液成分などの液状の廃棄物を処理する場合、それ単独では熱分解されにくい。そこで、これらの廃棄物を大鋸屑や米糠、籾殻、刻んだ藁などの粉体と混合することによって、液状の廃棄物の表面積を増加させ、液体成分の乾燥を促すことができ、液状の廃棄物を内部まで完全に熱分解処理することが可能となる。
【0027】
本発明の肥料の製造方法は、熱分解処理装置の熱分解炉内に投入された廃棄物を、磁気処理された空気によって熱分解処理して製造する肥料の製造方法であって、熱分解炉内に導入される磁気処理された空気を、熱分解炉内に設けられた対流補助管によって熱分解炉内の下部から吸い込むとともに上部へと吐き出させて熱分解炉内を対流させることを特徴とする。
【0028】
熱分解炉内に導入される磁気処理された空気を、熱分解炉内に設けられた対流補助管によって熱分解炉内の下部から吸い込むとともに上部へと吐き出させて熱分解炉内を対流させ、熱分解炉内の廃棄物に満遍なく接触させて該廃棄物を完全に熱分解処理することによって、廃棄物は磁気を帯びた灰となり、この灰を農作物の肥料とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の廃棄物の熱分解処理装置は、以下のような効果を奏す。
(1)熱分解炉内に、空気導入管から前記熱分解炉内に導入された空気を吸い込む対流補助管を備えたことによって、含水率の高い流動物状の廃棄物であっても、内部にある廃棄物まで完全に熱分解することができ、不完全な熱分解などによるダイオキシン等の有害ガスの発生を抑制しつつ、一度に大量の廃棄物を処理することができる。
(2)熱分解炉には、空気導入管が複数備えられていることによって、磁気処理手段で一度にまとめて空気を磁気処理し、この磁気処理された空気をそれぞれの空気導入管から熱分解炉内へと導入することができる。よって各空気導入管に磁気処理手段を設ける必要がなく、装置建設費のコストダウンを図ることができる。
(3)吸気管が対流補助管の外周面に複数備えられたことにより、熱分解炉内全体に空気の対流を生じさせることができ、この対流により、山積みにされた廃棄物の表層部だけでなく内部にある廃棄物にまで磁気処理された空気を行きわたらせることができ、満遍なく接触させることができるので、含水率の高い流動物状の廃棄物であっても、内部にある廃棄物まで完全に熱分解処理することができる。
(4)煙突と熱分解炉との接合部に対向するように対流補助管の先端開口を設けるだけで、対流補助管には、特に公知の吸引手段を設けることなく、熱分解炉内に導入された空気を、吸気管を通じてあらゆる方向から対流補助管内に吸い込むことができる。従って、熱分解炉内に空気の対流を生じさせるために特別な吸引手段を設ける必要がないので、熱分解処理装置を簡単な構造で構成することができ、しかも安価に製造することができる。
(5)対流補助管が円筒状に形成された熱分解炉内の中心に設けられたことにより、山積みにされた廃棄物のうち、最も空気が行きわたりにくい熱分解炉の中央部分の廃棄物にまで空気が侵入するので、含水率が高い廃棄物であっても完全に熱分解して処理することができる。
【0030】
また、本発明の廃棄物の熱分解処理方法によれば、以下のような効果を奏す。
(1)熱分解炉内に導入された空気は、熱分解炉の壁面付近で留まることなく、熱分解炉内で対流を起こすので、この対流により、山積みにされた廃棄物の表層部だけでなく内部にある廃棄物にまで磁気処理された空気を行きわたらせるとともに満遍なく接触させることができ、含水率の高い流動物状の廃棄物であっても、内部にある廃棄物まで完全に熱分解処理することができる。
(2)液状の廃棄物は、粉体と混合した状態で処理することによって、液状の廃棄物の表面積を増加させ、液体成分の乾燥を促すことができ、液状の廃棄物を内部まで完全に熱分解処理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態における熱分解処理装置を、図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態における熱分解処理装置の正面図である。図2は、本実施の形態における熱分解処理装置の平面図である。図3は、本実施の形態における熱分解処理装置の縦断面図である。図4は、図1のA−A線断面図、図5は、図1のB−B線断面図である。図6は、図2のC−C線断面図である。図7は、送風装置を示す図である。図8は、磁気処理装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は軸垂直断面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態における熱分解処理装置1は、廃棄物を投入して熱分解処理するための熱分解炉2と、空気を熱分解炉2内に送り込む送風装置3と、熱分解炉2で発生した分解ガスを炉外に排出する煙突4とを備える。また、送風装置3内には、後述する磁気処理装置が備えられており、この磁気処理装置は、空気を磁気処理する磁気処理手段として機能する。
【0033】
熱分解炉2は、数百℃の高温に耐えることができる金属製の材料により、縦長の円筒状に形成されている。本実施の形態においては、熱分解炉2は、直径が1200mm、高さ1500mmに形成されている。
【0034】
熱分解炉2の上面には、廃棄物を熱分解炉2内へ投入するための廃棄物投入口5が設けられている。廃棄物投入口5には、この廃棄物投入口5を覆う蓋5aがヒンジなどを用いて取り付けられており、これにより開閉が可能となっている。蓋5aは、廃棄物の熱分解処理中に外気が廃棄物投入口5から侵入しないように、閉じた状態では廃棄物投入口5を密閉するように形成されている。
【0035】
また、熱分解炉2の外周面の下部正面には、熱分解処理中の廃棄物の様子および熱分解炉2内の様子を点検するための点検口6が設けられている。点検口6には、この点検口6を覆う蓋6aがヒンジなどを用いて取り付けられており、これにより開閉が可能となっている。蓋6aは、廃棄物の熱分解処理中に外気が点検口6から侵入しないように、閉じた状態では点検口6を密閉するように形成されている。
【0036】
熱分解炉2の外周面の下部側面には、送風装置3によって空気を熱分解炉2内に導入するための空気導入管7が複数設けられている。図4から図6に示すように、空気導入管7は、左右対称となるように、また、上下2段となるように配置され、片側に7箇所ずつ合計で14箇所設けられている。
【0037】
上段には、片側3箇所ずつ合計で6箇所の空気導入管7a,7bが設けられている。これらの空気導入管7a,7bは、その先端が熱分解炉2の中心線(図4中一点鎖線P)に向かうように取り付けられている。これにより、熱分解炉2のほぼ中心に設けられた空気導入管7aよりも外側に取り付けられている空気導入管7bの先端は、熱分解炉2の内周面に沿うような配置となっている。また、下段には片側4箇所ずつ合計で8箇所の空気導入管7c,7dが設けられている。これらの空気導入管7c,7dは、その先端が、それぞれ中心線(図5中の点線QおよびR)を挟んで対向する空気導入管7c,7dと向かい合うように取り付けられている。これらの空気導入管7には、それぞれ、後述する送風装置3から導入される空気の量を調整するためのバルブ(図示せず)が備えられている。
【0038】
図3および図5に示すように、熱分解炉2内の中心には、空気導入管7から熱分解炉2内に導入された空気を下部から吸い込む対流補助管8が備えられている。対流補助管8は、外周に複数の吸気管8aを備えている。対流補助管8は、数百℃の高温に耐えることができる金属製の材料により形成された中空管であり、この対流補助管8の先端の開口は、後述する煙突4と熱分解炉2との接合部4aに対向するように設けられている。吸気管8aは、対流補助管8よりも小さい外径の中空管で形成されている。この吸気管8aは、対流補助管8の下部外周面に、同一平面内において120°間隔で3箇所、上下方向に3段設けられている。また、吸気管8aは、その先端部が、対流補助管8に接合された基端に対して水平方向より下方に位置するように傾斜して設けられている。なお、本実施の形態における対流補助管8は外径114mm、内径100mm、吸気管8aは外径27.2mm、内径20mmで形成されている。
【0039】
送風装置3は、熱分解炉2の外周面の側面に2箇所設けられている。送風装置3は、観音開きの扉を備えた矩形状の筐体内に備えられており、図7に示すように、送風装置3内に外気を取り込む送風機14と、外気を磁気処理する磁気処理装置10と、磁気処理された空気を一度溜めるための磁界溜め11b,11cとにより構成される。磁界溜め11bに一度溜められた磁気処理された空気は、送風機14の送風力によって、パイプ9aおよびL字状の連結パイプ9bを通り、磁界溜め11cに送られる。磁界溜め11cの下部には、空気導入管7の本数分だけ連結管11aが形成されており、この連結管11aと空気導入管7とをゴム製のホース12により連結することで、磁気処理装置10によってまとめて磁気処理された空気を、分配して各空気導入管7から熱分解炉2内に導入することが可能となる。送風機14は、磁界溜め11bとパイプ9aとの間に設けられているが、外気を取り込むとともに空気導入管7へと送風することができれば、磁気処理装置10よりも外気取り込み側となる位置に設けてもよい。
【0040】
図8に示すように、磁気処理装置10は、円柱のケース10aの中に、一方の面がN極、他方の面がS極であるドーナツ状の永久磁石10bが同じ向きで連続して配置され、1つの中空の管となるように構成されている。永久磁石10bがドーナツ状に形成されていることにより、永久磁石10bの中央部には、空気路10cが形成される。送風機14により磁気処理装置10内に取り込まれた空気は、永久磁石10bの中央部の空気路10cを通り抜けることにより、磁気処理された空気となる。なお、永久磁石10bの数およびN極、S極の配置は、廃棄物の熱分解に必要とされる空気の磁界の強さまたは永久磁石の磁力によって任意に設定することができる。
【0041】
煙突4は、熱分解炉2の上面に接合されており、熱分解炉2の上面のすぐ上方に、熱分解炉2で発生した分解ガスを脱臭するための脱臭装置13を備えている。熱分解炉2で発生した分解ガスは、煙突4と熱分解炉2との接合部4aから吸い上げられ、脱臭装置13を通過して煙突4の先端から装置外部へと放出される。なお、煙突4の高さは、任意に設定することができるが、対流補助管8内に空気を吸い込むための吸引力はこの煙突4の高さに比例するので、できるだけ高くする方が望ましい。
【0042】
以上のような本実施の形態における熱分解処理装置1を用いて、特に含水率の高い廃棄物を処理する場合の処理方法について説明する。
【0043】
本実施の形態における熱分解処理装置1で処理される含水率の高い廃棄物としては、例えば、生ゴミ・有機汚泥・家畜糞尿・屎尿・食品残渣・魚介残渣などが挙げられる。このような含水率の高い廃棄物をそのまま廃棄物投入口5から熱分解炉2に投入すると廃棄物が乾燥しにくく、また乾燥しても、その際に大きな塊となってしまうこともある。そこで、液状を呈するような含水率の高い廃棄物の場合は、熱分解炉2内へ投入する際には、大鋸屑や米糠、籾殻、藁などの粉体と混合させて投入するか、大鋸屑や米糠、籾殻、藁などの粉体を投入した後に、廃棄物を熱分解炉2内へ投入し、十分に混ぜた状態とする方がよい。このような含水率の高い廃棄物を粉体と混合することにより、廃棄物の表面積を増加させることができ、空気導入管7より導入された空気が廃棄物の間に侵入しやすくなるため、廃棄物が早く乾燥しやすくなり、また、完全に乾燥しても大きな塊になりにくいので、熱分解を促進させて熱分解処理にかかる時間が短縮することができる。なお、熱分解処理にかかる時間をさらに短縮したい場合は、熱分解処理をする前に廃棄物と粉体を混合して自然乾燥させておき、ある程度含水率が低くなった状態で熱分解炉2内に投入してもよい。
【0044】
熱分解炉2内に廃棄物を投入したら、廃棄物投入口5の蓋5aを閉じ、熱分解炉2を密閉状態とする。
送風装置3の送風機14により、外気が、3つの磁気処理装置10のそれぞれへと流れ込み、磁気処理装置10の永久磁石10bの中央部の空気路10cを通り抜ける。磁気処理装置10の永久磁石10bは、同じ向きで連続して配置され、1つの中空の管となるように構成されており、空気がこの管の中央部である空気路10cを通り抜けることにより、送風装置3内に取り込まれた空気は磁気処理されて磁気を帯びた磁気風となる。この磁気風は、磁界溜め11bで一度滞留し、パイプ9aおよびL字状の連結パイプ9bを通って、さらに、磁界溜め11cで滞留する。そして、磁界溜め11c下部に設けられた複数の連結管11aからゴム製のホース12を通って空気導入管7へと送られ、熱分解炉2内に導入される。空気導入管7にはバルブが取り付けられているので磁気風の量はこのバルブにより調整することができる。
【0045】
空気導入管7a,7c,7dから導入された磁気風は、熱分解炉2の中心に向かうように広がっていく。また、空気導入管7bから導入された磁気風は、熱分解炉2の内周に沿うように広がっていく。対流補助管8の先端開口は、煙突4と熱分解炉2との接合部4aと対向するように配置されており、煙突4は外気と連通しているので、対流補助管8内には、熱分解炉2内から、熱分解炉2内部よりも圧力が低い熱分解処理装置1外部へ空気を吸い上げるような吸引力が発生する。この吸引力により、熱分解炉2内に満遍なく広がった磁気風を対流補助管8の外周下部に複数設けられた吸気管8aから対流補助管8内へと吸い込み、対流補助管8の上部から吐き出すといった一定の空気の流れが発生する。熱分解炉2内に満遍なく広がった磁気風は対流補助管8内の吸引力により、熱分解炉2内に山積みにされた廃棄物の間をすり抜けるようにして廃棄物の中心部まで侵入し、吸気管8aから対流補助管8内へと吸い込まれる。そして、図3に示すように、磁気風は対流補助管8の上端部から吐き出されて熱分解炉2内の上部壁面を伝い、対流補助管8の吸引力により再び熱分解炉2の下部へと流れる。このようにして、熱分解炉2内全体に一定の強制的な空気の対流を生じさせることにより、磁気風が熱分解炉2内に山積みにされた廃棄物に満遍なく行きわたることとなる。なお、磁気風の一部は分解ガスとともに煙突4から熱分解炉2外へと排出される。
【0046】
また、吸気管8aは、同一平面内120°間隔で対流補助管8の外周に3箇所設けられており、なおかつ、その先端部が対流補助管8に接合された基端に対して水平方向より下方に位置するように傾斜して設けられているので、対流補助管8は、円筒状の熱分解炉2内のあらゆる方向から磁気風を吸い上げるようにして吸引することができる。また、吸気管8aは、対流補助管8の径よりも小さいもので構成されているので、対流補助管8内よりも大きな吸引力で磁気風を吸い上げることができる。このようにして、熱分解炉2内には、全体的に一定の強制的な空気の流れが発生し、このような空気の対流により、磁気風は山積みになった廃棄物の隅々にまで行きわたり、山積みにされた廃棄物の表層部だけでなく、最も磁気風が行きわたりにくい内部および下部にある廃棄物までもが磁気風と接触することができる。
【0047】
磁気風が廃棄物の間をすり抜けるようにして侵入していくことで、山積みにされた廃棄物全体の乾燥が進む。点検口6から熱分解炉2内の様子を観察し大部分の廃棄物の乾燥が確認されたら、熱分解の開始を補助するために着火を行う。または、廃棄物の乾燥が進み、熱分解炉2内の温度が上昇していくことによって自然発火が起こり廃棄物の熱分解が開始される。廃棄物の熱分解は炎を上げて燃焼するようなものではなく、100℃前後の低温で酸化および炭化が徐々に進行していく。このように、廃棄物の熱分解が低温で徐々に進行していくことにより、ダイオキシンは発生せず、また廃棄物は炭化された後に灰化されるまで完全に熱分解されるので、有害ガス等の発生もない。なお、炎を上げて燃焼するような熱分解が起こっている場合には、空気導入管7のバルブを調整することによって、熱分解炉2内に導入される磁気風の量を少なくするとよい。
【0048】
以上のように、本実施の形態における熱分解処理装置1によれば、熱分解炉2内に設けられた対流補助管8により、空気導入管7から導入された磁気風を、山積みにされた廃棄物の間をすり抜けるようにして内部や下部にある廃棄物にまで接触させることができる。これにより、含水率の高い廃棄物の乾燥を促進することができるとともに、廃棄物全体を、著しい高温化を回避しつつ完全に熱分解させることができる。従って、ダイオキシン類等の有害ガスの発生を抑えて処理することができる。また、廃棄物を熱分解炉2内に山積みにしても内部や下部にある廃棄物まで完全に処理することができるので、一度に大量の廃棄物の処理が可能となる。
【0049】
また、本実施の形態における熱分解処理装置1によれば、送風装置3内の磁気処理装置10により空気を磁気処理し、そして、各空気導入管7へと分配して送ることができるので、各空気導入管7に磁気処理装置10を設ける必要がない。従って、磁気処理装置10内の永久磁石の数や配置などに自由度をもたせることができる。
【0050】
また、本実施の形態における熱分解処理装置1によれば、熱分解の途中で廃棄物の掻き混ぜを行うなどの作業を何ら加えることなく、山積みにされた廃棄物全体を完全に熱分解させることができる。廃棄物の掻き混ぜを行うために、廃棄物の処理中に熱分解炉2の廃棄物投入口5をあけると、外気が熱分解炉2内に一気に流れこんで炎があがってしまうこともあり、作業者にとっては非常に危険であるが、本実施の形態における熱分解処理装置1によれば、このような作業者の危険を排除することもできる。
【0051】
また、本実施の形態における熱分解処理装置1は、熱分解炉2内に対流補助管8を設けただけで山積みにされた廃棄物を完全に処理することができるので、ダイオキシン等の有害ガスの発生しない800℃以上の高温で処理するために装置を大型化したり、有害ガスを無害化するための複雑な装置を配置したりする必要もなく、熱分解処理装置1を簡単な構造で安価に製造することができる。なお、対流補助管8を熱分解炉2内に複数設ける構成としてもよい。これにより、熱分解炉2が比較的大型である場合でも、空気導入管7から導入された磁気風をそれぞれの対流補助管8から吸い込んで吐き出し、熱分解炉内の廃棄物に満遍なく接触するように、熱分解炉2内に空気の対流を生じさせることができる。
【0052】
なお、熱分解処理装置1は、本実施の形態に限るものではなく、例えば、空気導入管7の先端を枝分かれさせた構造としたり、送風装置3内にブロワを取り付けて強制的に外気を吸い込み、そして、強制的に熱分解炉2内に導入する構成としたりしてもよい。これにより、熱分解炉2内への磁気風の広がりをさらに促進させることができる。また、点検口6は、耐熱の透明なガラス等によって形成された窓状のものであってもよい。
【0053】
また、煙突が熱分解炉2の外周面上部にL字状に設けられ、対流補助管8の先端開口を煙突の熱分解炉2との接合部の開口に対向するように配置できない場合は、公知の吸引手段を対流補助管8に設け、対流補助管8内に磁気風を吸い込む力を補助する構成としてもよい。
【0054】
次に、本実施の形態における熱分解処理装置を用いて廃棄物を熱分解処理し、肥料を製造する方法を説明する。
【0055】
肥料を製造するための原料となる廃棄物は、缶詰食品、麺類等の食品残渣、または、家畜糞など固体物や、ドレッシング、味噌、醤油粕、焼酎粕、マヨネーズ、たれ類、乳製品、または、魚や家畜の解体時における血液成分などの液状物である。
【0056】
上記のような固体の廃棄物を原料とする場合は、熱分解処理装置1の熱分解炉2内にそのまま投入することができる。また、上記のような液状の廃棄物を原料とする場合は、それ単独では熱分解されにくい。そこで、これらの廃棄物を大鋸屑や米糠、籾殻、藁などの粉体と混合して熱分解炉2内へ投入するか、または、熱分解炉2内に粉体を投入してから、液状の廃棄物を投入し、よく攪拌して混合させる。そして、熱分解炉2内に投入された廃棄物を、上述したように、磁気処理された空気により灰化されるまで熱分解する。なお、固体の廃棄物の場合でも、含水率が高い場合や、熱分解処理にかかる時間を短縮したい場合は、粉体と混合して熱分解処理してもよい。
【0057】
完全に熱分解されて灰化した廃棄物は、窒素やリンなどの成分を含んでおり、露地栽培や家庭菜園、果樹園等における農作物の肥料として使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下に、固体の廃棄物として鶏糞を、液状の廃棄物としてドレッシングを原料として製造した肥料の成分分析表を示す。なお、鶏糞は、大鋸屑と10対3の割合で混合して1週間程度自然乾燥させた後、熱分解処理した。また、ドレッシングは、大鋸屑と2対1の割合で混合して攪拌したものを熱分解炉に投入して熱分解処理した。
【0059】
表1は、鶏糞を原料として製造した肥料の成分分析表である。
【表1】

【0060】
表2は、ドレッシングを原料として製造した肥料の成分分析表である。
【表2】

【0061】
以上のように、本実施の形態における肥料の製造方法により製造された肥料は、窒素やリン、カリウムなどの成分を含んでおり、農作物の肥料として使用することができる。また、塩基成分を含んだ肥料であるため、ナメクジなどの害虫の発生の抑制や、除草効果を期待することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、熱分解炉内に山積みにされた内部や下部にある廃棄物まで磁気処理された空気を接触させることができ、これにより完全に熱分解処理することができるので、特に、含水率の高い廃棄物を処理する熱分解処理装置や熱分解処理方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施の形態における熱分解処理装置の正面図である。
【図2】本実施の形態における熱分解処理装置の平面図である。
【図3】本実施の形態における熱分解処理装置の縦断面図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】図1のB−B線断面図である。
【図6】図2のC−C線断面図である。
【図7】送風装置を示す図である。
【図8】磁気処理手段を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は軸垂直断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 熱分解処理装置
2 熱分解炉
3 送風装置
4 煙突
4a 接合部
5 廃棄物投入口
5a 蓋
6 点検口
6a 蓋
7,7a,7b,7c 空気導入管
8 対流補助管
8a 吸気管
9a,9b パイプ
10 磁気処理装置
10a ケース
10b 永久磁石
10c 空気路
10d 磁石ケース
11b,11c 磁界溜め
11a 連結管
12 ホース
13 脱臭装置
14 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を磁気処理する磁気処理手段と、
前記磁気処理手段によって磁気処理された空気が導入され、この導入される空気により廃棄物を熱分解処理するための熱分解炉とを備え、
前記熱分解炉は、前記熱分解炉内に導入される空気を、前記熱分解炉内の下部から吸い込むとともに上部へと吐き出して前記熱分解炉内で対流させる対流補助管を備えた廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項2】
前記熱分解炉は、前記磁気処理手段によって磁気処理された空気を分配して導入するための空気導入管群を備えたことを特徴とする請求項1記載の廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項3】
前記対流補助管は、外周面に複数の吸気管を備えたものである請求項1または2記載の廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項4】
さらに、前記熱分解炉は、熱分解炉内で発生したガスを熱分解炉外に排出する煙突を備え、
前記対流補助管は、その先端開口が、前記煙突と前記熱分解炉との接合部に対向するように設けられた請求項1から3のいずれかの項に記載の廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項5】
前記熱分解炉は円筒状に形成され、
前記対流補助管は、前記熱分解炉内の中心に設けられた請求項1から4のいずれかの項に記載の廃棄物の熱分解処理装置。
【請求項6】
熱分解処理装置の熱分解炉内に投入された廃棄物を、磁気処理された空気によって熱分解処理する廃棄物の熱分解処理方法であって、
前記熱分解炉内に導入される磁気処理された空気を、前記熱分解炉内に設けられた対流補助管によって前記熱分解炉内の下部から吸い込むとともに上部へと吐き出させて前記熱分解炉内を対流させることを特徴とする廃棄物の熱分解処理方法。
【請求項7】
前記廃棄物は、液状の廃棄物であって、
前記液状の廃棄物は、粉体と混合した状態で熱分解処理されることを特徴とする請求項6記載の廃棄物の熱分解処理方法。
【請求項8】
熱分解処理装置の熱分解炉内に投入された廃棄物を、磁気処理された空気によって熱分解処理して製造する肥料の製造方法であって、
前記熱分解炉内に導入される前記磁気処理された空気を、前記熱分解炉内に設けられた対流補助管によって前記熱分解炉内の下部から吸い込むとともに上部へと吐き出させて前記熱分解炉内を対流させることを特徴とする肥料の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−341245(P2006−341245A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348347(P2005−348347)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501152662)豊南電工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】