説明

廃棄物処理方法及び該システム

【課題】廃棄物を乾式メタン発酵するに際して、安定的且つ効率的に処理を行うことができる廃棄物処理方法及び該システムを提供する。
【解決手段】有機性廃棄物31を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備15と、可燃ごみ30を燃焼する廃棄物燃焼設備16と、を備えた廃棄物処理システムにおいて、前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣29を他の有機性廃棄物31とともに乾式メタン発酵設備15に投入し、乾式メタン発酵設備からの消化汚泥28の少なくとも一部を固液分離することなく廃棄物燃焼設備16に投入するとともに、廃棄物燃焼設備16にて発生した廃熱40を乾式メタン発酵設備15の加温に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を乾式メタン発酵により処理する技術に関し、特に、メタン発酵槽内のTS濃度を適正に維持し、また槽内の温度を適正に保つことにより安定的且つ効率的な処理を行うようにした廃棄物処理方法及び該システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性廃棄物の処理方法として、環境負荷が小さく且つエネルギや資源を回収できるメタン発酵処理が広く用いられている。メタン発酵には、一般的に槽内のTS濃度を3〜8%程度とする湿式メタン発酵と、TS濃度を15〜40%とする乾式メタン発酵がある。このうち乾式メタン発酵は、発酵槽内のTS濃度を高く維持することで菌体濃度を高く保ち、高負荷での発酵が可能である。乾式メタン発酵にて発酵効率が高く且つメタンガス生成効率が高い処理を行うためには、発酵槽内のTS濃度を適正に保つことが重要となる。
【0003】
そこで、特許文献1(特開2004−17024号公報)に開示される乾式メタン発酵では、有機性廃棄物を乾式メタン発酵槽にて乾式メタン発酵し、得られた汚泥の一部を脱水した後に発酵槽に返送している。このとき、必要に応じて返送汚泥に水を添加して槽内のTS濃度を調整している。脱水した濾液は排水処理される。これにより、TS濃度を適正な値に調整するようになっている。
また、乾式メタン発酵槽内のC/N比を適正に保つ方法として、特許文献2(特開2001−347247号公報)には、発酵槽内に投入する有機性廃棄物のC/N比が20〜250となるように、紙や草等の繊維含有有機物を添加する方法が開示されている。
【0004】
一方、乾式メタン発酵槽を安定的且つ効率的に運転するためには、槽内のTS濃度の適正な制御とともに槽内の温度制御も重要な要件となる。特許文献3(特開2004−284917号公報)では、乾式メタン発酵槽からの発酵残渣の70〜90%を炭化炉にて炭化処理し、残りのメタン発酵残渣を堆肥化装置にて堆肥化する構成とし、乾式メタン発酵槽からのメタンガス及び炭化炉からの乾留ガスを発電に利用するとともに、発電にて得られた排熱を乾式メタン発酵槽内に導入する構成が開示されている。乾留ガスの他の一部は発酵残渣の乾燥の熱源に用いられる。これにより、乾式メタン発酵に十分な熱源を確保でき、発酵を効率的に且つ安定的に行うことができる。さらに、エネルギーの利用効率を向上させることも可能となる。
【0005】
また、特許文献4(特開2003−275722号公報)には、熱利用効率の高いシステムとして、低カロリーごみを処理するバイオガス生成装置にて発生したバイオガスを、高カロリーごみを処理するガス化炉の熱源として用いる構成が開示されている。また、このシステムでは、バイオガス生成装置にて発生したバイオガスをガス化炉に供給して補助燃料として用いている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−17024号公報
【特許文献2】特開2001−347247号公報
【特許文献3】特開2004−284917号公報
【特許文献4】特開2003−275722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、乾式メタン発酵において有機性廃棄物のTS濃度を、返送汚泥の調整により適正に維持することが記載されているが、実際は、搬入される有機性廃棄物の性状に変動があるため、返送汚泥のみではこれを適正に保つことは困難であった。また、特許文献2に記載される方法では、TS濃度の制御については特に言及されておらず、C/N比のみに焦点をあてた構成となっている。さらに、これらの乾式メタン発酵では、発酵槽から排出される消化汚泥を脱水して水処理する必要があり、設備の大型化及びランニングコストの増加という問題があった。さらにまた、メタン発酵後の排水は処理し難い水質性状であるため、処理が困難であった。また、乾式メタン発酵を円滑に行うためには、TS濃度の調整の他に発酵の温度条件も重要な要件となるが、特許文献1及び2はこれに対応した方法ではない。
【0008】
特許文献3では炭化炉と堆肥化装置の両方を備えており装置の大型化が懸念され、また炭化炉からの廃熱が有効利用されていないという問題がある。また、特許文献4では乾式メタン発酵の温度制御については何ら言及されていない。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、廃棄物を乾式メタン発酵するに際して、従来の乾式メタン発酵の不具合を解消して安定的且つ効率的に処理を行うことができる廃棄物処理方法及び該システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、有機性廃棄物を乾式メタン発酵する廃棄物処理方法において、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を他の有機性廃棄物とともに乾式メタン発酵することを特徴とする。
また、前記有機性廃棄物のTS濃度が15〜40%となるように、前記し渣の混合量を調整することが好適である。
【0010】
本発明によれば、乾式メタン発酵設備に投入する有機性廃棄物にし渣を混入することで、TS濃度を適正な値に確実に調整することができ、乾式メタン発酵の安定化、効率化が達成できる。また、し渣はメタン発酵するための栄養源を十分に含有しており、これらを有機性廃棄物とともに発酵処理することでバイオガス生成量が増大するという利点も有している。
【0011】
また、有機性廃棄物を乾式メタン発酵設備にて乾式メタン発酵し、該乾式メタン発酵設備に併設された廃棄物燃焼設備により可燃ごみからなる廃棄物を燃焼する廃棄物処理方法において、
前記乾式メタン発酵設備からの消化汚泥の少なくとも一部を前記廃棄物燃焼設備に投入して燃焼させるとともに、前記廃棄物燃焼設備の廃熱を前記乾式メタン発酵設備の加温に用いることを特徴とする。
【0012】
本発明では、廃棄物燃焼設備の余剰熱を乾式メタン発酵設備の加温に利用して乾式メタン発酵設備の温度調整を行うことにより、乾式メタン発酵を安定的に且つ効率的に行うことができるとともに、熱効率の向上が期待できる。また、乾式メタン発酵設備から排出される消化汚泥の少なくとも一部を脱水等の固液分離を行うことなく廃棄物燃焼設備に投入することにより、脱水装置及び水処理設備を設ける必要がなくなり、ランニングコストの削減、設備の簡素化が可能となる。
【0013】
また、有機性廃棄物を乾式メタン発酵設備にて乾式メタン発酵し、該乾式メタン発酵設備に併設された廃棄物燃焼設備により可燃ごみからなる廃棄物を燃焼する廃棄物処理方法において、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を他の有機性廃棄物とともに前記乾式メタン発酵設備に投入して乾式メタン発酵し、該乾式メタン発酵後の消化汚泥の少なくとも一部を前記廃棄物燃焼設備に投入して燃焼させるとともに、前記廃棄物燃焼設備の廃熱を前記乾式メタン発酵設備の加温に用いることを特徴とする。
本発明によれば、乾式メタン発酵設備のTS濃度調整及び温度調整の問題が同時に解消され、処理の安定化及び効率化が達成できる。
【0014】
さらに、これらの発明において、前記乾式メタン発酵する前段で、前記有機性廃棄物の少なくとも一部を低分子化処理することを特徴とする。
これにより、乾式メタン発酵設備における負荷軽減及びバイオガス発生量の増大が可能となる。
【0015】
また、有機性廃棄物を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備を備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を前記乾式メタン発酵設備に投入する手段を備え、該し渣を他の有機性廃棄物とともに乾式メタン発酵することを特徴とする。
また、前記し尿若しくは浄化槽汚泥からし渣を捕集する夾雑物除去装置と、該捕集したし渣を脱水して脱水し渣を得る夾雑物脱水装置と、前記し渣と前記脱水し渣を前記乾式メタン発酵設備に投入する手段と、前記乾式メタン発酵設備に投入する有機性廃棄物のTS濃度に基づいて前記し渣若しくは前記脱水し渣の投入量を調整する手段と、を備えたことを特徴とする。
さらに、前記有機性廃棄物を夾雑物除去することなく脱水してし渣を含む脱水汚泥を得る脱水装置と、該脱水汚泥を前記乾式メタン発酵設備に投入する手段と、前記乾式メタン発酵設備のTS濃度に基づいて前記脱水汚泥の投入量を調整する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、廃棄物のうち有機性廃棄物を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備と、可燃ごみを燃焼する廃棄物燃焼設備と、を備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記乾式メタン発酵設備からの消化汚泥の少なくとも一部を固液分離することなく前記廃棄物燃焼設備に投入する手段を備えるとともに、前記廃棄物燃焼設備にて発生した廃熱を前記乾式メタン発酵設備に供給する手段を備えることを特徴とする。
さらに、前記廃棄物燃焼設備の廃熱から水蒸気を生成するボイラを設け、該ボイラからの水蒸気を前記乾式メタン発酵設備内部に直接導入することを特徴とする。
【0017】
また、廃棄物のうち有機性廃棄物を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備と、可燃ごみを燃焼する廃棄物燃焼設備と、を備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を他の有機性廃棄物とともに乾式メタン発酵設備に投入する手段と、前記乾式メタン発酵設備からの消化汚泥の少なくとも一部を固液分離することなく前記廃棄物燃焼設備に投入する手段とを備えるとともに、前記廃棄物燃焼設備にて発生した廃熱を前記乾式メタン発酵設備に供給する手段を備えることを特徴とする。
また、前記乾式メタン発酵設備の前段に、前記有機性廃棄物に対して爆砕、超臨界分解、亜臨界分解の少なくとも何れかの処理を行う低分子化装置を設けたことを特徴とする。
さらに、前記低分子化装置に前記廃棄物燃焼設備の廃熱を供給する手段を設けることが好ましい。
さらにまた、前記乾式メタン発酵設備に未利用のコンポストを投入する手段を設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
以上記載のごとく本発明によれば、乾式メタン発酵設備のTS濃度調整、温度調整を行うことによって、メタン発酵の安定化且つ効率化が図れる。また、バイオガスの発生効率が向上する。さらに、エネルギー効率の高い廃棄物複合処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例1に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図、図2は図1の他の形態に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図、図3は本発明の実施例2に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図、図4及び図5は図3の他の形態に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図、図6は本発明の実施例3に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図である。
本実施例に係るシステムは、乾式メタン発酵設備を備えており、該乾式メタン発酵設備を安定的に且つ効率的に行う構成となっている。
【実施例1】
【0020】
図1乃至図2の本実施例1に係る廃棄物処理システムは、し尿若しくは浄化槽汚泥を含む有機性廃棄物を乾式メタン発酵する処理であり、近隣若しくは同一敷地内のし尿・浄化槽汚泥処理施設から得られたし渣を他の有機性廃棄物とともに乾式メタン発酵設備にて乾式メタン発酵することを主要構成とし、し渣の混入により有機性廃棄物のTS濃度を調整してメタン発酵における運転の安定化・効率化を図るようになっている。
【0021】
上記構成に基づいて、図1を参照して具体的な処理フローの一例につき説明する。
まず、し尿若しくは浄化槽汚泥、或いはこれらの混合物である有機性廃棄物20は、スクリーン等の夾雑物除去装置10に投入されてし渣21が除去される。除渣後の有機性廃棄物22にはBOD、SS、T−N等が残存するため、該有機性廃棄物22は生物処理設備12にて生物処理される。生物処理設備12は、例えば生物学的脱窒素処理、活性汚泥処理、生物膜処理等のように、微生物の分解作用によりBOD、SS、T−N等を除去する装置であれば何れでも良い。生物処理後の処理水は固液分離装置13にて分離液と分離汚泥24とに固液分離された後、分離液は水処理設備へ送給され、分離汚泥24は必要に応じて脱水装置14にて脱水される。水処理設備では、生物処理、凝集沈殿処理、高度処理等の処理が適宜選択的に行われる。
【0022】
一方、夾雑物除去装置10で補足されたし渣21の少なくとも一部は、夾雑物脱水装置11に送給され脱水される。し渣21は、し尿・浄化槽汚泥に混入している紙ごみ、布等の繊維類、或いはポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック類が主体となっている。
夾雑物脱水装置11に投入しなかった分のし渣21と、夾雑物脱水装置11にて得られた脱水し渣26は、他の有機性廃棄物27とともに乾式メタン発酵設備15に投入され、乾式メタン発酵される。他の有機性廃棄物27は特に限定されないが、厨芥ごみ、食品加工残渣、家畜糞尿等である。尚、し尿処理系統の脱水装置14にて得られた脱水汚泥25も乾式メタン発酵設備15に投入してもよい。
【0023】
乾式メタン発酵設備15は、槽内のTS濃度が15〜40%程度で、温度条件は高温発酵の場合は約40〜50℃、中温発酵の場合は30〜40℃に維持される。また、発酵槽の前段に投入調整槽を設け、ここで被処理物の濃度調整、水分調整、混合等を行うようにしてもよい。メタン発酵設備15では、有機性廃棄物が混練されながら発酵が進み、消化汚泥28として排出される。消化汚泥28の一部はメタン発酵槽若しくは調整槽に返送される。
本実施例では、乾式メタン発酵設備15に投入するTS濃度を調整する際に、夾雑物除去装置10にて補足されたし渣21若しくは夾雑物脱水装置11から得られた脱水し渣26を適宜投入するようにしている。し渣・脱水し渣はメタン発酵のための栄養源を十分に含有しており、これらを有機性廃棄物とともに発酵処理することでバイオガスの生成量が増大する。
【0024】
一般的に、除渣後のし渣21のTS濃度は10%程度であり、脱水し渣26のTS濃度は30%程度である。従って、乾式メタン発酵設備15のTS濃度に応じてし渣21若しくは脱水し渣26を適宜投入することによって、発酵設備内のTS濃度を適正に保つことが可能となる。この制御方法として、例えば、メタン発酵設備のTS濃度が40%より大きい場合には脱水していないし渣21を投入し、TS濃度が15%より小さい場合には脱水し渣26を投入してTS濃度を調整する。
乾式メタン発酵設備15にて生成したバイオガスは発電等に有効利用され、乾式メタン発酵設備15から排出される消化汚泥28は、廃棄物燃焼設備16若しくは堆肥化設備17等に送給される。廃棄物燃焼設備16を備えた構成については実施例2以降に記載する。
【0025】
また、図2に示すように、夾雑物除去装置10を設けない構成とすることもできる。この場合、し尿・浄化槽汚泥20を必要に応じて破砕した後、脱水装置14にて脱水し、し渣を含む脱水汚泥29を乾式メタン発酵設備15に投入し、有機性廃棄物27とともにメタン発酵する。このとき、し渣を含む脱水汚泥29のTSは約30%程度である。本構成においても、図1と同様にし渣・脱水汚泥29によりTS濃度の調整を行うことにより、メタン発酵の安定化・効率化が可能となるとともに、バイオガス発生量の増大が図れる。
【実施例2】
【0026】
図3乃至図5に示す本実施例2に係る廃棄物処理システムは、廃棄物燃焼設備と乾式メタン発酵設備を有機的に組み合わせて、燃焼設備にて発生する余剰熱を乾式メタン発酵設備の加温に利用する構成となっており、乾式メタン発酵設備の温度条件を調整することにより処理の安定化・効率化を図っている。また、乾式メタン発酵設備からの消化汚泥を脱水せずに廃棄物燃焼設備に投入し、水処理設備を設けない構成、若しくは水処理設備を小型化することを可能としている。
【0027】
図3に示すように本実施例2に係るシステムは、可燃ごみ30を燃焼する廃棄物燃焼設備16と、有機性廃棄物31を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備15とを備える。
可燃ごみ30は廃棄物燃焼設備16にて燃焼される。廃棄物燃焼設備16は、流動床炉、ストーカ炉、ロータリーキルン炉等の焼却炉、溶融炉、ガス化炉、炭化炉などの廃棄物を加熱処理する設備である。可燃ごみ30は、紙ごみ、プラスチック等の燃焼処理が可能な廃棄物である。
有機性廃棄物31は、乾式メタン発酵設備15に投入されてメタン発酵される。このとき、廃棄物燃焼設備16からの廃熱40を乾式メタン発酵設備40に導入し、発酵槽の加温に利用する。好適には、廃棄物燃焼設備16からの廃熱40を利用してボイラ(不図示)にて水蒸気を生成して乾式メタン発酵設備15に送給する。乾式メタン発酵設備15では、水蒸気を用いた間接加熱により加温してもよいが、水蒸気を発酵槽内に直接吹き込んで加温することがより好ましい。水蒸気を直接吹き込むことにより、廃棄物の負荷軽減が図れるとともに、装置面では部品点数の削減、伝熱効率の向上が図れる。
本実施例によれば、廃棄物燃焼設備16の余剰熱を乾式メタン発酵設備15の加温に利用して乾式メタン発酵設備15の温度調整を行うことにより、乾式メタン発酵を安定的に且つ効率的に行うことができるとともに、熱効率の向上が期待できる。
【0028】
乾式メタン発酵設備15から排出される消化汚泥28の少なくとも一部は、脱水等の固液分離を行うことなく廃棄物燃焼設備16に投入する。本実施例では乾式メタン発酵を用いているため槽内のTS濃度は15〜40%程度であり、消化汚泥28の含水率が比較的低いため、脱水することなく直接燃焼することを可能としている。これにより、消化汚泥用の脱水装置及び水処理設備を設ける必要がなくなり、ランニングコストの削減、設備の簡素化が可能となる。
【0029】
また、図4に示すように、乾式メタン発酵設備15の前段において、廃棄物燃焼設備16から回収される熱を利用し、有機性廃棄物の少なくとも一部を可溶化処理して低分子化するようにしても良い。低分子化装置19は、有機性廃棄物31を低分子化する装置であり、爆砕、超臨界分解、亜臨界分解の少なくとも何れか一を備えることが好ましい。勿論、これらの組み合わせであってもよい。爆砕、超臨界分解、亜臨界分解は何れも高温、高圧条件下で行うが、このとき廃棄物燃焼設備16からの廃熱を低分子化装置19に導き、加温に利用する。廃熱はボイラにて水蒸気に変換した後、低分子化装置19に供給することが好適である。尚、爆砕とは、廃棄物を高温高圧の水蒸気で短時間蒸煮し、活性な水による化学反応を起こした後に瞬時に圧力開放することによって、凝縮水の気化に伴う爆発的な体積膨張を利用して粉砕し、廃棄物の低分子化を行う処理である。超臨界分解、亜臨界分解は夫々の状態における特徴的な性質を利用して廃棄物を加水分解して低分子化する処理であり、何れも周知の技術である。
本構成により、乾式メタン発酵設備15における負荷軽減及びバイオガス発生量の増大が可能となる。
【0030】
また、図5に示すように、堆肥化設備にて製造したコンポスト35を有機性廃棄物31とともに乾式メタン発酵設備15に投入するようにしてもよい。従来、家畜糞尿、食品残渣、生ごみ等から堆肥化して得られたコンポストは利用先が見つからずに焼却して処理することがあった。そこで、活用できず余剰となっているコンポスト35を有機性廃棄物とともに31乾式メタン発酵設備15に投入することにより、メタン発酵槽内の水分調整を図るとともに、コンポスト中に含まれるメタン菌が供給されることで、槽内状況を安定化させることができる。
【実施例3】
【0031】
図6に示す実施例3に係る廃棄物処理システムは、実施例1及び実施例2を組み合わせたシステムであり、乾式メタン発酵設備のTS濃度調整及び温度調整の問題を同時に解消し、運転の安定化且つ効率化を図っている。
図6に示すように、可燃ごみ30は廃棄物燃焼設備16にて燃焼され、有機性廃棄物31は必要に応じてし渣・汚泥29を添加されて、前処理設備18、低分子化装置19を経てTS濃度調整が行われた後、乾式メタン発酵設備15に投入されてメタン発酵される。
一方、廃棄物燃焼設備16にて回収された廃熱40は乾式メタン発酵設備15に導入されて、槽内の温度調整が行われる。
乾式メタン発酵設備15から排出される消化汚泥28の少なくとも一部は廃棄物燃焼設備16に送給され、可燃ごみ30とともに燃焼される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図である。
【図2】図1の他の形態に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図である
【図3】本発明の実施例2に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図である。
【図4】図3の他の形態に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図である。
【図5】図3、図4の他の形態に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図である。
【図6】本発明の実施例3に係る廃棄物処理システムを示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0033】
10 夾雑物除去装置
11 夾雑物脱水装置
12 生物処理設備
13 固液分離装置
14 脱水装置
15 乾式メタン発酵設備
16 廃棄物燃焼設備
19 低分子化装置
20 有機性廃棄物(し尿・浄化槽汚泥)
21 し渣
25 脱水汚泥
26 脱水し渣
27 有機性廃棄物(厨芥等)
28 消化汚泥
29 し渣・汚泥混合物
30 可燃ごみ
31 有機性廃棄物
35 コンポスト
40 廃熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を乾式メタン発酵する廃棄物処理方法において、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を他の有機性廃棄物とともに乾式メタン発酵することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記有機性廃棄物のTS濃度が15〜40%となるように、前記し渣の混合量を調整することを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項3】
有機性廃棄物を乾式メタン発酵設備にて乾式メタン発酵し、該乾式メタン発酵設備に併設された廃棄物燃焼設備にて可燃ごみからなる廃棄物を燃焼する廃棄物処理方法において、
前記乾式メタン発酵設備からの消化汚泥の少なくとも一部を前記廃棄物燃焼設備に投入して燃焼させるとともに、前記廃棄物燃焼設備の廃熱を前記乾式メタン発酵設備の加温に用いることを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項4】
有機性廃棄物を乾式メタン発酵設備にて乾式メタン発酵し、該乾式メタン発酵設備に併設された廃棄物燃焼設備にて可燃ごみからなる廃棄物を燃焼する廃棄物処理方法において、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を他の有機性廃棄物とともに前記乾式メタン発酵設備に投入して乾式メタン発酵し、該乾式メタン発酵後の消化汚泥の少なくとも一部を前記廃棄物燃焼設備に投入して燃焼させるとともに、前記廃棄物燃焼設備の廃熱を前記乾式メタン発酵設備の加温に用いることを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項5】
前記乾式メタン発酵設備の前段で、前記有機性廃棄物の少なくとも一部を低分子化処理することを特徴とする請求項1、3若しくは4記載の廃棄物処理方法。
【請求項6】
有機性廃棄物を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備を備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を前記乾式メタン発酵設備に投入する手段を備え、該し渣を他の有機性廃棄物とともに乾式メタン発酵することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項7】
前記し尿若しくは浄化槽汚泥からし渣を捕集する夾雑物除去装置と、該捕集したし渣を脱水して脱水し渣を得る夾雑物脱水装置と、前記し渣と前記脱水し渣を前記乾式メタン発酵設備に投入する手段と、前記有機性廃棄物のTS濃度に基づいて前記し渣若しくは前記脱水し渣の投入量を調整する手段と、を備えたことを特徴とする請求項6記載の廃棄物処理システム。
【請求項8】
前記有機性廃棄物を夾雑物除去を行うことなく脱水してし渣を含む脱水汚泥を得る脱水装置と、該脱水汚泥を前記乾式メタン発酵設備に投入する手段と、前記有機性廃棄物のTS濃度に基づいて前記脱水汚泥の投入量を調整する手段と、を備えたことを特徴とする請求項6記載の廃棄物処理システム。
【請求項9】
廃棄物のうち有機性廃棄物を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備と、可燃ごみを燃焼する廃棄物燃焼設備と、を備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記乾式メタン発酵設備からの消化汚泥の少なくとも一部を、固液分離することなく前記廃棄物燃焼設備に投入する手段を備えるとともに、前記廃棄物燃焼設備にて発生した廃熱を前記乾式メタン発酵設備に供給する手段を備えることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項10】
前記廃棄物燃焼設備の廃熱から水蒸気を生成するボイラを設け、該ボイラからの水蒸気を前記乾式メタン発酵設備内部に直接導入することを特徴とする請求項9記載の廃棄物処理システム。
【請求項11】
廃棄物のうち有機性廃棄物を乾式メタン発酵する乾式メタン発酵設備と、可燃ごみを燃焼する廃棄物燃焼設備と、を備えた廃棄物処理システムにおいて、
前記有機性廃棄物がし尿若しくは浄化槽汚泥を含み、該し尿若しくは浄化槽汚泥から得られたし渣を他の有機性廃棄物とともに乾式メタン発酵設備に投入する手段と、前記乾式メタン発酵設備からの消化汚泥の少なくとも一部を固液分離することなく前記廃棄物燃焼設備に投入する手段とを備えるとともに、前記廃棄物燃焼設備にて発生した廃熱を前記乾式メタン発酵設備に供給する手段を備えることを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項12】
前記乾式メタン発酵設備の前段に、前記有機性廃棄物に対して爆砕、超臨界分解、亜臨界分解の少なくとも何れかの処理を行う低分子化装置を設けたことを特徴とする請求項6、9若しくは11の何れかに記載の廃棄物処理システム。
【請求項13】
前記低分子化装置に前記廃棄物燃焼設備の廃熱を供給する手段を設けたことを特徴とする請求項12記載の廃棄物処理システム。
【請求項14】
前記乾式メタン発酵設備に未利用のコンポストを投入する手段を設けたことを特徴とする請求項6、9若しくは11の何れかに記載の廃棄物処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−105614(P2007−105614A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298399(P2005−298399)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】