説明

廃棄物処理方法

【課題】 高温高圧媒体を用いた廃棄物処理においては、廃棄物中の無機物が反応器内に析出し、これが容器口を閉塞してしまうなどのトラブルの原因となる。この問題の解決手段を提供する。
【解決手段】 有機廃棄物もしくは無機廃棄物と媒体とを混合工程2を経て、酸化剤の存在下、媒体の水素イオン濃度を、媒体1kgに対して10-4モル以上として酸化工程4で所定の時間保持する。無機物を析出させることなく効率よく廃棄物を処理できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機廃棄物及び無機廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題に対応し、ポリ容器やポリ塩化ビニルなどの樹脂や、放射性物質を含む有機廃棄物の処理が大きな問題となっている。一般的に有機廃棄物は焼却処理されているが、こうした処理方法では、ダイオキシン、窒素酸化物などの有毒物質を発生したり、これら有毒物質を回収するために大規模な装置を要したりするなど問題が多い。
【0003】
また、原子力の分野の無機廃棄物は、放射性物質の他に硝酸ナトリウム塩を多量に含む。これらは固化体として地下に位置する処分場に埋設される。近年、地下環境について研究が進み、地下は酸素分圧が低く還元性雰囲気であり、硝酸イオンがアンモニアとなる恐れが報告されている。その結果、プルトニウム等の核物質、ニッケル等の処分評価上重要な核種が、アンモニアと錯体を形成し、固化体中から溶出する可能性が指摘されている。
【0004】
近年、有機物を分解する方法として、水の臨界点(温度374℃、圧力22.1MPa)を超える高温高圧下の水(超臨界水)を用いる方法が注目されている。
【0005】
超臨界状態とは、個々の化合物に固有の物理量である臨界温度と臨界圧力以上の温度と圧力下にある物質の状態をいい、この状態にある物質を超臨界流体と称する。
【0006】
有機物と水と酸素含有流体を混合し、水の臨界点を超える超臨界状態で、有機物を酸化分解する方法が知られている(特許文献1「臨界超過水中における有機物酸化法」)。
【特許文献1】特開昭57−004225号公報 超臨界水は、液体と気体の中間の性質をもち有機物や酸素と任意に混合するため、短時間で効率的に有機物を酸化分解できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、超臨界状態では、無機物の溶解度が著しく小さいため、有機廃棄物に含まれる無機物が反応器表面に析出し、反応器を閉塞してしまうなどの問題が生じる。無機物の酸化物は特に溶解度が小さく、こうしたトラブルの原因となりやすい。
【0008】
例えば、原子力発電所で発生する廃棄物を処理する場合には、放射性物質が析出するため、取り扱いが容易でなく、廃棄物処理装置の保守点検に多大なコストがかかる。
【0009】
したがって、超臨界状態を利用して、無機物を析出させることなく有機廃棄物を分解する方法や装置の開発が待たれている。
【0010】
また、上述したように、固化体中にアンモニアが存在するとプルトニウムのような核物質が固化体から溶出する可能性がある。したがって、無機物のみを含む廃棄物を処理する場合であっても、廃棄物中の硝酸イオンや硝酸塩を窒素とすることで、固化体中への硝酸イオンの混入を防げる廃棄物処理方法の開発が待たれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上より、本発明は、従来の技術が有する課題を解決するためになされたもので、有機廃棄物や無機廃棄物を短時間で効率的に分解する方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、無機物を析出させることなく有機廃棄物や無機廃棄物を分解する方法を提供することを目的とする。
【0013】
なお、本発明においては、亜臨界状態とは、臨界状態より温度が低い場合、圧力が低い場合、温度と圧力の両方が低い場合のいずれをも含む概念である。
【0014】
本発明の請求項1記載の廃棄物処理方法は、有機廃棄物と媒体との混合物を超臨界状態で所定の時間保持し、前記有機廃棄物に含まれる有機物を分解する廃棄物処理方法において、前記媒体が酸化剤を含み、かつ水、二酸化炭素、もしくは炭化水素、またはこれらの2種以上の混合物であり、媒体の水素イオン濃度が前記媒体1kgに対して10-4モル以上であることを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、あらかじめ超臨界状態において酸化剤の非存在下で有機物を低分子量化した後に、無機物が析出しがたい亜臨界条件で酸化剤を添加して有機物を分解することもできるため、有機物を効率良く分解しかつ無機物の析出を防ぐことができる。
【0016】
有機廃棄物としては特に限定されないが、例えば、紙、ウエス、活性炭、アスファルト、各種樹脂等がある。有機廃棄物が硝酸塩、硫酸塩、塩化物、燐酸塩、もしくは珪酸塩、またはこれらの2種以上を含んでもよい。
【0017】
有機廃棄物の中には、砂、砂利、石ころ等の不溶性物質を含むものもある。
【0018】
また、樹脂の中には、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET樹脂、各種イオン交換樹脂等の無機添加物や有機金属塩添加物を含まないものと、塩化ビニル、シリコーン、繊維強化プラスチック(FRP)等の無機添加物や有機金属塩添加物を含むものがある。
【0019】
無機添加物としては、鉛塩やSn塩等の安定剤、CaCOやSiOのような充填剤、Al(OH)、Sb、MgO等の難燃剤、導電用あるいは補強用のカーボンなどがある。有機金属塩添加物としては、例えば、ステアリン酸鉛がある。
【0020】
有機廃棄物が多量の夾雑物や、無機添加物や有機金属塩添加物を含む場合には、無機物の析出を防ぐため、一度に処理する量を減らすことが望ましい。あるいは、前記低分子量化工程と酸化工程の間に、前記有機廃棄物に含まれていた不溶性の夾雑物を分離する分離工程を設けることもできる。こうした構成にすれば、上述のような有機廃棄物が多量の不溶性夾雑物や、無機添加物や有機金属塩添加物を含んでいても、超臨界状態での処理の後に、これらの夾雑物等を除去してから、亜臨界状態で酸化剤を添加して有機物を酸化するため、有機物を効率良く分解しかつ亜臨界状態での無機物の析出を防ぐことができる。一度に処理する量を減らす必要もない。
【0021】
また、好ましくは、媒体の水素イオン濃度を前記媒体1kgに対して10-4モル以上にする。無機物の溶解度を高め、無機物の析出をさらに減少させるためである。
【0022】
請求項2記載の廃棄物処理方法は、無機廃棄物と媒体との混合物を超臨界状態で所定の時間保持し、前記無機廃棄物に含まれる無機物を分解する廃棄物処理方法において、前記媒体が酸化剤を含み、かつ水、二酸化炭素、もしくは炭化水素、またはこれらの2種以上の混合物であり、媒体の水素イオン濃度が前記媒体1kgに対して10-4モル以上であることを特徴とする。
【0023】
この方法によれば、媒体の水素イオン濃度を前記媒体1kgに対して10-4モル以上とすることで、無機物の析出を防ぐことができる。
【0024】
上述の請求項1記載の廃棄物処理方法と同様な有機廃棄物を処理対象とできるが、有機廃棄物が酸化物を含んでもよい。本廃棄物処理方法によれば、効率良くこうした物質を処理できるからである。
【0025】
超臨界状態の媒体中では無機物は効率良く分解される。また、本廃棄物処理方法によれば、媒体1kg当たり水素イオン濃度が10-4モルとなるように調整すれば、分解された無機物が析出することなく流体中に存在できる。
【0026】
処理対象としては、無機物のみを含む廃棄物が好ましく、例えば、α廃棄物を含む固化体を処理することもできる。無機廃棄物が硝酸または硝酸塩を含んでもよい。しかし、これに限られるものではなく、有機物をいくらか含む廃棄物を対象としてもよい。
【0027】
本発明の請求項1および請求項2記載の廃棄物処理方法においては、媒体を超臨界状態とする媒体超臨界化工程と、超臨界状態とされた前記媒体と前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物との混合物を得る混合工程とを設けてもよい。超臨界状態の媒体に連続的に有機廃棄物あるいは無機廃棄物を供給することで、連続的に廃棄物処理を行うことができ効率がよく好ましい。
【0028】
もちろん、媒体と有機廃棄物あるいは無機廃棄物を混合してから、得られた混合物を加熱・加圧して超臨界状態としてもよい。
【0029】
媒体としては、水、二酸化炭素、もしくは炭化水素、またはこれらの2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0030】
一般に超臨界状態の媒体中では、常温常圧においては気体や液体の物質も、任意の割合に均一に混合することができる。また、超臨界状態の媒体中では、液体溶媒を用いた場合と比較して、高い物質移動速度が期待できる。したがって、本発明の超臨界状態の媒体としては、上述のような特性を持つ水、二酸化炭素、炭化水素を、処理対象に合わせて使うことができる。
【0031】
また、これらを混合することにより、媒体の臨界点を変えることができる。
【0032】
酸化剤としては、酸素、空気、過酸化水素、もしくはオゾン、またはこれらの2種以上を、前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物を完全に酸化するのに必要な化学量論量の1倍以上使用することが好ましい。さらに好ましくは、化学量論量の1.2倍〜10倍使用する。
【0033】
水素イオン濃度を調節する際には、無機酸を使用することが望ましく、硫酸や塩酸が好ましく用いられる。しかし、例えば、硝酸のように、高熱で熱分解する酸は使用に適さない。
【0034】
本発明に用いられる廃棄物処理装置の第1の形態は、超臨界状態の媒体中で、有機廃棄物に含まれる有機物の全部または大部分を低分子量化させるための反応器と、前記反応器に前記有機廃棄物を供給するための有機廃棄物供給手段と、前記反応器に前記媒体を供給するための媒体供給手段と、前記反応器で生成した生成物を亜臨界状態で酸化するための酸化反応器と、前記酸化反応器に酸化剤を供給するための酸化剤供給手段と、前記酸化反応器で生じた生成物の流体を回収するための回収手段とを有する。
【0035】
本発明に用いられる廃棄物処理装置の第2の形態は、超臨界状態の媒体中で有機廃棄物に含まれる有機物の全部または大部分を低分子量化させ、次いで亜臨界状態で生成物を酸化剤と混合して酸化させるための反応器と、前記反応器に前記有機廃棄物を供給するための有機廃棄物供給手段と、前記反応器に前記媒体を供給するための媒体供給手段と、前記反応器に酸化剤を供給するための酸化剤供給手段と、前記反応器で生成した生成物の流体を回収するための回収手段とを有する。
【0036】
本発明に用いられる廃棄物処理装置の第3の形態は、第1または第3の廃棄物処理装置において、前記反応器内の水素イオン濃度を調整するための調整手段を設けたものである。
【0037】
本発明に用いられる廃棄物処理装置の第4の形態は、超臨界状態の媒体中で、有機廃棄物に含まれる有機物を分解するための反応器と、前記反応器に前記有機廃棄物を供給するための有機廃棄物供給手段と、前記反応器に前記媒体を供給するための媒体供給手段と、前記反応器内の水素イオン濃度を調整するための調整手段と、前記反応器で生成した生成物の流体を回収するための回収手段とを有する。
【0038】
第1、第2および第4の廃棄物処理装置は、前記反応器へ供給する媒体に中性塩を添加するための中性塩添加装置を有してもよい。
【0039】
前記反応器に、内容物に紫外線または放射線を照射するための手段を設けてもよい。
【0040】
前記液体処理手段に、液体中の酸を中和するための中和手段を設けてもよい。本発明に用いられる廃棄物処理装置の第5の形態は、超臨界状態の媒体中で無機廃棄物に含まれる無機物を分解するための反応器と、前記反応器に前記無機廃棄物を供給するための無機廃棄物供給手段と、前記反応器に前記媒体を供給するための媒体供給手段と、前記反応器内の水素イオン濃度を調整するための調整手段と、前記反応器で生成した生成物の流体を回収するための回収手段とを有する。
【0041】
本発明に用いられる廃棄物処理装置の第6の形態は、第4または第5の廃棄物処理装置において、前記反応器に酸化剤を供給するための酸化剤供給手段を設けたものである。
【0042】
第3、第4および第5の廃棄物処理装置は、前記調整手段が無機酸と媒体を所定の水素イオン濃度となるように混合して反応器に供給するように構成されてもよい。
【0043】
前記調整手段が、前記反応器に無機酸を供給するための酸供給手段と、前記反応器内の水素イオン濃度を計測するための水素イオン濃度計測手段と、前記水素イオン濃度計測手段からの信号に基づいて、計算量の無機酸を前記酸供給手段から前記反応器内へ供給させる制御手段とを有するように構成してもよい。
【0044】
前記無機酸として、硫酸および塩酸の少なくとも一方を用いることが望ましい。
【0045】
第3または第6の廃棄物処理装置において、前記調整手段が前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物の種類および前記酸化剤の供給量に応じて前記水素イオン濃度を調整するように構成してもよい。多種多様の廃棄物を効率良く処理でき好ましい。
【0046】
第1、第2、第4および第5の廃棄物処理装置は、前記反応器に、前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物に含まれていた不溶性の夾雑物を分離する分離手段を備えてもよい。
【0047】
前記反応器内の媒体の状態を検知するための手段を具備することが好ましい。反応器内の媒体が超臨界状態であるかどうかを、正確に把握し、最適の状態で廃棄物を処理するためである。例えば、前記反応器内の温度および圧力を計測する手段を設ければ、媒体の状態を知ることができる。反応器内の温度および圧力を直接測定する代わりに、反応器に供給する前の媒体と廃棄物の混合物の温度および圧力を測定してもよい。
【0048】
前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物供給手段、及び前記媒体供給手段に、それぞれ有機廃棄物あるいは無機廃棄物、および媒体を加圧するための加圧手段と予熱するための予熱手段を設置し、前記回収手段に、前記反応器で生成した流体を減圧するための減圧手段と冷却するための冷却手段を設置してもよい。酸供給手段や酸化剤供給手段を有する場合には、酸や酸化剤を加圧するための加圧手段と予熱するための予熱手段を設置してもよい。こうした構成により、廃棄物等を連続的に供給・回収して、処理することができるため、処理効率を向上させる事ができる。
【0049】
前記酸化剤として、酸素、空気、過酸化水素、もしくはオゾン、またはこれらの2種以上を、前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物を完全に酸化するのに必要な化学量論量の1倍以上使用することが好ましい。好ましくは、1.2倍から10使用する。
【0050】
前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物供給手段の少なくとも一部を覆う覆い手段を設けることが好ましい。例えば、前記有機廃棄物あるいは無機廃棄物供給手段の少なくとも一部をグローブボックスまたはフード内に設置することが好ましい。
【0051】
前記覆い手段は防爆性を有することがさらに好ましい。
【0052】
前記回収処理手段が、気液分離手段、気体処理手段、および液体処理手段を有することが好ましい。
【0053】
前記気体処理手段が、気体中の固形成分、放射性物質や有害物質を除去するためのフィルタと、気体中の放射性物質や有害物質を回収するためのスクラバーとを有することがさらに好ましい。
【0054】
さらに、前記スクラバーに使用される溶液として、水、水酸化ナトリウムを含むアルカリ溶液、もしくは還元剤を含む水のうち少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0055】
前記液体処理手段は、液体を採取して分析するための手段を具備することが好ましい。
【0056】
前記液体処理手段は、液体を攪拌するための攪拌手段を有することが好ましい。
【0057】
前記液体処理手段は、液体を冷却するための手段を有することが好ましい。
【0058】
前記液体処理手段は、液体中の無機イオンを凝集させて沈澱させる手段を有することが好ましい。
【0059】
前記液体処理手段は、液体中の固体成分を分離するための手段を有することが好ましい。
【0060】
前記液体処理手段は、液体中のイオン成分を除去するためのイオン交換手段を有することが好ましい。
【0061】
前記液体処理手段は、液体を抽出剤と接触させて液体中の無機イオンを抽出回収するための抽出回収手段を有することが好ましい。
【0062】
前記抽出剤として、中性有機リン化合物または酸性有機リン化合物の少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。
【0063】
前記抽出剤の希釈剤として二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0064】
前記液体処理手段には、液体やスラッジを乾燥させるための乾燥手段を有することが好ましい。
【0065】
前記液体処理手段には、液体やスラッジを固化させるための固化手段を有することが好ましい。
【0066】
前記固化手段は、液体もしくはスラッジまたはこれらの混合物と固化剤との混練物を容器内で固化させることが好ましい。
【0067】
このように、本発明によれば、超臨界状態の媒体を利用して、有機廃棄物あるいは無機廃棄物を処理するにあたり、無機物の析出を効果的に防ぎ、かつ多量の廃棄物を効率良く処理できるため、装置の建設費やランニングコストを大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0068】
以上のように、本発明によれば、有機廃棄物あるいは無機廃棄物の処理に際して、無機物を析出させることなく効率良く処理できる。
【0069】
したがって、無機物の析出に起因する反応器の閉塞などのトラブルを回避でき、装置のランニングコストやメンテナンスコスト等を低減できる。
【0070】
また、無機物が放射性物質である場合は、作業員の被ばくを低減できる。
【0071】
無機塩を酸化物にすることなくイオン状で回収できるだけでなく、始めから酸化物として存在していた無機物も少量であればイオン状として液体中に回収できるため、廃棄物から酸化物を分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下に本発明の実施の形態を実施例に基づき具体的に説明する。
【0073】
以下の実施例あるいは図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0074】
(実施例1)
図1に本発明の実施例1のプロセス図を示す。図2は従来例のプロセス図である。
【0075】
図2に示すように、従来の方法では、媒体超臨界化工程1において媒体である水を超臨界状態とする。混合工程2においてこの超臨界状態の水へ、硫酸塩を含む有機廃棄物を加える。得られた混合物を超臨界分解工程6において、水の臨界点を超える高温高圧下で酸化剤と共に所定時間保持する。硫酸塩を含む有機廃棄物は、超臨界状態の水中で酸化分解される。
【0076】
生成した分解ガスと分解液、および有機廃棄物に含まれていた硫酸塩などの無機物(酸化物など)は、回収工程5に送られ、有害物を回収され、固化等の処理を受ける。
【0077】
これに対して、実施例1の方法では、媒体超臨界化工程1において媒体である水を超臨界状態とする。混合工程2においてこの超臨界状態の水へ、硫酸塩を含む有機廃棄物を加える。
【0078】
なお、超臨界状態とした媒体と有機廃棄物を混合する代わりに、まず媒体と有機廃棄物を混合してから、混合物を加温加熱して媒体を超臨界状態としてもよい。
【0079】
得られた混合物を低分子量化工程3において、酸化剤なしで超臨界状態の水中に所定時間保持し、硫酸塩を含む有機廃棄物に含まれる有機物の全部または大部分を低分子量化する。
【0080】
次いで、酸化工程4においては、低分子量化工程で生成した生成物を酸化剤と混合し、亜臨界状態で所定の時間保持する。
【0081】
生成した分解ガスと分解液、および有機廃棄物に含まれていた硫酸塩などの無機物(イオン)は、回収工程5に送られ、有害物を回収され、固化等の処理を受ける。
【0082】
従来の方法では、有機廃棄物に含まれる有機物を効率良く酸化分解することができるが、有機廃棄物中に無機物が含まれている場合には、超臨界状態では亜臨界状態と比較して無機物が酸化物などを形成して析出しやすかった。
【0083】
鉛を例にとり説明する。図3は、超臨界、亜臨界条件での酸化鉛の溶解度を示すグラフである(化学工学会第63回年会、東北大学工学部、陶他「亜臨界、超臨界水中における金属酸化物の溶解度測定」)。374℃以上の超臨界領域での酸化鉛の溶解度は小さく、450℃では、0.5x10-3 mol/kgとなる。しかし、亜臨界領域では溶解度が上昇し、0.5x10-2mol/kgと、約10倍になる。溶解度は酸素が共存すると更に小さくなる傾向がある。
【0084】
したがって、無機添加物や有機金属塩添加物を含む有機廃棄物を、従来のように酸化剤の存在下で超臨界状態で処理すると、無機添加物や有機金属塩添加物等に含まれる無機物が酸化物として析出する。
【0085】
本実施例においては、低分子量化工程においては酸化剤が存在しないため、有機廃棄物に含まれていた硫酸塩などの無機物は酸化されず、したがって、無機酸化物等の析出を防ぐことができる。
【0086】
その後に、亜臨界状態で酸化剤を加えて酸化することで、有機物を効率良く分解することができる。
【0087】
有機物を酸化剤と混合して酸化する前に、水と混合して超臨界状態で反応させると、有機物内に存在する結合エネルギーの小さい結合が選択的に熱分解または加水分解され、高分子量の有機物を低分子量化できる。次に、低分子量化された有機物に酸化剤を添加して亜臨界状態で反応させれば、有機物の分子量が小さいため酸素と反応する速度が速く、短時間で酸化することできる。
【0088】
したがって、有機廃棄物を超臨界状態で所定の時間反応させた後に、亜臨界状態で所定の時間保持することで、有機廃棄物を効果的に分解でき、かつ無機物の析出を防ぐこともできる。
【0089】
実施例1においては、酸化剤として過酸化水素を使用したが、特にこれに限定されるものではない。酸素、空気、もしくはオゾン、または酸素、空気、過酸化水素、オゾンの2種以上等を、使用することができる。
【0090】
有機物は一般的にラジカルと反応して分解する。特に有機物に対して活性なラジカルはヒドロキシラジカル(・OH:以下OHラジカル)である。OHラジカルは25℃の酸性溶液中ではI式のような酸化還元電位をもちオゾンよりも強力な酸化剤である。
【0091】
OH・+H+ +e- →H2 O 2.85V.vs. NHE …Iそのため、有機物を効果的に分解するにはOHラジカルの生成が大きな鍵となる。
【0092】
超臨界水中で水と酸素は反応し、II式に示すようなOHラジカルとヒドロペルオキシラジカル(・OOH)を生成する。
【0093】
2 O+O2 →HO2 ・+OH・ …II
Baulchらは500℃におけるII式の反応速度定数を10-10.5 mol/s と大変遅いと報告している(酸素0.00631mol 水6.31mol )。さらに、ヒドロペルオキシラジカルはIII 式のように反応して過酸化水素と酸素を生成しさらにIV式のように分解してOHラジカルを生成する。
【0094】
HO2 ・+HO2 ・→H22 +O2 …III
22 →2OH・ …IV
一般的にラジカル同士の反応は速く、過酸化水素の分解反応は100℃以上の温度で容易におこるため、III 、IV式の反応速度は速いと考えられる。
【0095】
超臨界水中で酸素を用いて有機物を分解する場合、II式の反応が律速になるため、過酸化水素を添加して直接OHラジカルを生成させると、効果的に有機物の分解反応を起こすことができる。
【0096】
以下に、実施例1の方法によりポリエチレンを分解した結果を示す。
【0097】
硫酸セリウムが2mg付着したポリエチレン10mgと水2mlを、反応器(5.6ml)に加え、400℃、30MPaで30分反応させた。
【0098】
反応後、常温常圧に戻して測定すると、最初に固体として存在したポリエチレンの99%以上が熱分解して、C=1〜30のアルカン類とアルケン類となり、気体または液体中に存在していた。
【0099】
続いて、過酸化水素0.3gと水1.6g(全体で3.6gになるように)を加え、350℃、30MPaで60分保持した。反応後、常温常圧に戻し、気体及び液体中の有機体炭素量を測定すると、99%以上の有機物が酸化されて分解していた。
【0100】
反応後、常温常圧に戻し、分解液を濾過し、濾液中のセリウムをICP(Inductively Coupled Plasma Spectroscopy) で測定した。また、ろ紙を酸で溶解して同様にICPでセリウムを測定したところ、沈殿物がないことが確認された。したがって、セリウムはすべてイオンの形で存在し、酸化物として沈殿していないことが解った。
【0101】
比較のために、従来のように、酸化剤の存在下にポリエチレンを超臨界水中で分解した。
【0102】
硫酸セリウムが2mg付着したポリエチレン10mg、水2ml、過酸化水素0.3gを、反応器(5.6ml)に加え、400℃、30MPaで30分反応させた。
【0103】
その結果、99%以上のポリエチレンが酸化・分解され、二酸化炭素と水を生成した。セリウムの半分は酸化物として沈殿した。
【0104】
以上より、実施例1の方法によれば、無機物を析出させることなく、有機廃棄物を効率良く分解できることが解った。
【0105】
(実施例2)
実施例2の方法では、図2に示す従来の媒体超臨界化工程1において、水1kgに対し水素イオンが10-4モル以上となるよう無機酸を加えたものを超臨界状態とし、その後の工程で超臨界媒体として使用する。
【0106】
Smith らは硝酸廃液中の金属元素が高温高圧下でV式に示すように加水分解し、その後VI式に示すように熱分解し最終的に酸化物になると報告している。
【0107】
また、V式で生成した硝酸が熱分解して酸素を発生するため、酸化物が形成されやすくなる。
【0108】
M(NO3 )n +nH2 O → M(OH)n +nHNO3 …V
M(OH)n → MOm …VI
こうした加水分解を防ぐには、酸を添加してV式の平衡を左に移動させる必要がある。
【0109】
水中の水素イオン濃度は、水のイオン積と密接な関係をもつ。図4に温度および圧力を変化させた場合の水のイオン積の変化を示す。
【0110】
例えば、圧力が25MPaでは、水のイオン積は300℃付近で最も大きく10-11(mol/kg)2 となる。そのため酸などが共存しない場合の超臨界水中の水素イオン濃度は、3.3×10-6 mol/kgとなる。また、374℃以上の超臨界水の条件では水のイオン積は10-11(mol/kg)2 より小さくなり、特に600℃では、10-24(mol/kg)2 となる。そのため600℃での水素イオン濃度は、10-12 mol/kgと、300℃に比べて極端に小さくなる。
【0111】
従来、超臨界水を用いて有機物を分解する場合には、高温でかつ比較的低圧な条件(例えば600℃、25MPa)を用いることが多かった。したがって、無機物を含む有機物に水のみを加えて高温で反応させると、反応器中の水素イオン濃度が極端に小さくなり、V式の平衡を右に移動させ、無機物が酸化物として析出した。
【0112】
超臨界水中のイオン濃度を増加させるためには、イオン積を増加させる必要がある。図4に示すように、イオン積は圧力の上昇に伴って増加する傾向があるが、実用上使用できる圧力は50MPa以下と考えられる。
【0113】
例えば350℃、50MPaでは、イオン積は10-12(mol/kg)2 となり、常温常圧でのイオン積10-14(mol/kg)2 に比べて100倍大きい値となるが、水素イオン濃度は10-6mol/kg程度である。このように、温度と圧力を選択することでは、超臨界水中の水素イオン濃度を極端に増加させられないため、本実施例においては、超臨界水中に酸を添加することによって、水素イオン濃度を調整し、無機物の析出を防ぐこととした。
【0114】
本実施例の方法により、超臨界水中に酸を添加して、無機物が析出しない条件を検討した。
【0115】
水の水素イオン濃度が、10-4mol/kgとなるように、5×10-5 モルの硫酸を添加し媒体とした。
【0116】
得られた媒体と硝酸セリウム(セリウムとして1mg)を混合し、400℃、25MPaで30分反応させた。反応後、常温常圧に戻し、分解液を濾過し、濾液中のセリウムをICPで測定した。また、ろ紙を酸で溶解して同様にICPでセリウムを測定し、沈殿物の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0117】
また、従来例として、硫酸を加えず水のみを媒体として使用した結果と、硫酸を水1kgに対し5×10-6 モル、即ち水素イオン濃度にして10-5 mol/kgを添加した媒体を使用した結果とを併せて記す。
【0118】
表1から明らかなように、従来例でセリウムは100%が酸化セリウムとして沈殿したのに対し、5×10-5モルの硫酸を添加すると、沈殿率は0%となり、セリウムの全量が溶解した状態で液中に残存した。また、5×10-6モルの硫酸を添加した場合は、70%のセリウムが沈殿した。
【0119】
以上より、水素イオン濃度として10-4mol/kgとなるように酸を添加すると、セリウムが沈殿しないことがわかった。
【表1】

【0120】
無機物は酸素が存在すると酸化されて酸化物となる。そこで、本実施例の方法において、媒体中に酸化剤が存在する場合に、無機物を析出させることなく有機物を分解できる条件を調べた。
【0121】
図5に硝酸セリウム(セリウムとしてlmg)に水、硫酸および酸化剤を添加し、400℃、30MPaで30分反応させた結果を示す。
【0122】
硫酸は水1kgに対し、5×10-3モル添加した。ICPで測定したところ、セリウムは酸化剤添加量の増加に伴って沈殿した。特に酸化剤を化学量論量(セリウムが二酸化セリウムになると仮定)の600倍(過酸化水素を0.3g)添加すると97%のセリウムが沈殿した。
【0123】
したがって、酸化剤が存在する場合は、酸化剤添加量の増加に伴って、酸の添加量を増加させる必要があることがわかった。
【0124】
表2に硝酸セリウム(セリウムとしてlmg)に酸化剤を化学量論量の4倍添加し、400℃、30MPaで30分反応させた結果を示す。水に対して硫酸を5×10-2mol/kg添加するとセリウムの沈殿率は0%になった。
【0125】
したがって、酸化剤の存在下では水1kgに対して硫酸を5×10-2mol(水素イオン濃度にして、10-1モル/kg)添加する必要があることがわかった。
【表2】

【0126】
以上により、酸化剤が存在する場合は、媒体1kgに水素イオン濃度にして10-1モルの酸を添加すると、無機物を析出させることなく有機物を分解できることがわかった。
【0127】
さらに、本実施例の方法において、有機物廃棄物に硝酸塩以外の無機酸が含まれている場合を検討した。
【0128】
セリウムの硝酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩および酸化物(それぞれセリウムとしては1mg)のそれぞれに、酸化剤を化学量論量の4倍添加したものを処理対象とした。水に対して硫酸を5×10-2mol/kg添加したものを媒体として、それぞれの処理対象を400℃、30MPaで30分反応させた。表3に結果を示す。
【0129】
硝酸塩、硫酸塩、塩化物およびリン酸塩の場合には、ICPで測定したところ、水中にイオンとして存在するセリウムの量が100%となり、セリウムの沈殿率は0%となった。また、最初に固体で存在していた酸化物の50%が液中に溶解しており、酸化物でも少量であれば液中に回収できることがわかった。
【表3】

【0130】
以上より、本実施例の方法によれば、硝酸塩だけでなく、硫酸塩、塩化物、リン酸塩や酸化物が含まれていても無機物を析出させることなく有機物を分解できることがわかった。
【0131】
例えば、プルトニウムの酸化物を含む有機廃棄物を処理する場合は、液中にプルトニウムをイオンとして回収できるため、プルトニウムで汚染された有機廃棄物(例えば、ウエス、グローブ)を非α廃棄物(α線を放出しない元素のみを含む廃棄物)とすることができ、処分コストを低減することができ好ましい。
【0132】
さらに、本実施例の方法において、媒体の水素イオン濃度を調整するための無機酸として、硫酸、塩酸を使用して、無機物を析出させることなく有機廃棄物の処理ができるかどうかを検討した。
【0133】
硝酸セリウム(セリウムとしてlmg)に酸化剤を化学量論量の4倍添加し、水1kgに対して硫酸5×10-2molを添加したもの、塩酸1×10-1molを添加したもの、硝酸1×10-1molを添加したものを媒体として、それぞれ400℃、30MPaで30分反応させた結果を表4に示す。
【0134】
ICPで測定したところ、硫酸、塩酸ではセリウムの沈殿は見られなかったが、硝酸を添加すると100%のセリウムが沈殿した。硝酸は高温では熱分解するため、水素イオン濃度が水1kgに対し10-4グラムイオン以下となり、無機物の溶解度が下がり沈殿したものと考えられた。
【0135】
以上より、硫酸や塩酸を無機酸として用いれば、無機物を析出させることなく有機廃棄物を分解できることが解った。
【表4】

【0136】
(実施例3)
図6に本実施例の廃棄物処理装置の概略を示す。
【0137】
本実施例の廃棄物処理装置は、有機廃棄物を水の超臨界状態で処理するための反応器7と、反応器7に有機廃棄物を投入するための有機廃棄物供給装置8と、反応器7に媒体である水を供給するための水供給装置9と、反応器7で生成した低分子量有機物を酸化し、さらに分解するための酸化反応器10と、酸化反応器10に酸化剤を供給するための酸化剤供給装置11と、酸化反応器10からの生成物を回収するための回収装置12からなる。
【0138】
回収装置12は気液分離器15、気体処理装置16、液体処理装置17を有する。
【0139】
液体処理装置17は液体スラッジを乾燥する乾燥器18と固化する固化器19を有する。
【0140】
本実施例においては、反応器7と酸化反応器10を別に設け、パイプ等で両者を結び、反応器7で生成した生成物を酸化反応器10に送るように構成したが、1つの容器を邪魔板等で2室に分けた構造としてもよい。また、圧力や温度を適当に調整すれば、1つの容器を反応器7と酸化反応器10として使用することもできる。
【0141】
処理対象としては特に限定されない。樹脂等を含む有機廃棄物、放射線物質で汚染された有機廃棄物等、様々な有機廃棄物を処理することができる。
【0142】
砂、砂利等の不溶性の夾雑物をふくむ有機廃棄物や、無機添加剤や有機金属塩添加剤を含む樹脂等の有機廃棄物を処理する場合には、超臨界状態で有機物を低分子量化してから、亜臨界状態で酸化・分解を行っても、無機物の析出を充分に防げないことがある。
【0143】
こうした場合には、一度に処理する有機廃棄物の量を少なくすることが望ましい。また、図7に示すように反応器7の下部に分離器20を設けて、超臨界状態で析出した無機物を、重力や慣性を利用して除去してもよい。そうすれば、亜臨界状態での無機物の析出を防げる。
【0144】
分離器20は、図7に示すように、反応器7の内部に設けてもよいし、反応器7と酸化反応器10との間に別に設けてもよい。
【0145】
本実施例では、超臨界媒体として水を使用したが、特にこれに限定されるものではなく、二酸化炭素、各種炭化水素、あるいはこれらの混合物を使用してもよい。
【0146】
図8は、水と炭化水素類との混合物の臨界点を示す臨界曲線である。水の臨界点は、374℃、22MPaであるが、図8において、例えば水−べンゼン系では、2成分を特定の割合で混合することにより、臨界点を300℃以下にまで下げることができる。したがって、水、二酸化炭素、炭化水素の混合物を媒体として用いれば、超臨界状態を維持しつつ、より低温、低圧のマイルドな条件で有機廃棄物を処理することが可能となる。図中、a:水ーベンゼン、b:ベンゼンー重水、c:水ートルエン、d:水ーoーキシレン、e:水ー1,2,5- トリメチルベンゼン、f:水ーシクロベンゼン、g:水ーエタン、h:水ーnーブタン、i:水ーナフタレン、j:水ービフェニルである。本実施例では酸化剤として、過酸化水素を使用しているが、特にこれに限定されるものではなく、酸素、空気、もしくはオゾン、または、酸素、空気、過酸化水素、もしくはオゾンの2種以上を混合したものでもよい。
【0147】
過酸化水素を使用すると、効率よく有機物を分解できるので好ましい。
【0148】
また、有機物を完全に分解するためには、添加する過酸化水素の量は、有機物が、二酸化炭素や水に分解されるのに必要な量の1倍以上添加することが望ましい。好ましくは、1.2倍〜10倍添加する。
【0149】
本装置を用いて、実際に有機廃棄物を処理する場合には、水供給装置9により、反応器7に媒体としての水を供給する。反応器7で超臨界状態とされた水に、有機廃棄物供給装置8で、有機廃棄物を供給し、超臨界水と混合し超臨界状態に所定時間保持する。
【0150】
有機廃棄物は、反応器7において、媒体である水の超臨界状態で低分子量化される。生成物を酸化反応器10に移し、酸化剤を添加して亜臨界状態で酸化する。
【0151】
酸化反応器10で生じた生成物は回収装置12に送られ、気液分離器15で気体と液体に分けられ、それぞれ気体処理装置16と液体処理装置17に送られ有害物質が回収される。
【0152】
分解により生成した固相または液相は、乾燥器18で乾燥された後に固化器19において固化剤を混入され、ドラム缶などの処分容器内で固化され、安定な固化体となる。これにより、貯蔵、処分の際の安全性が確保でき、また管理が容易になる。固化剤としては、例えば、セメントミルクが好ましく用いられる。
【0153】
有機廃棄物供給装置8と、水供給装置9と、酸化剤供給装置11を設けたことにより、有機廃棄物、水、酸化剤を反応器7や酸化反応器11へ連続的に供給でき、また、回収装置12により、連続的に生成物を取出せる。したがって、有機廃棄物を連続的に処理することができる。
【0154】
以上のように、本実施例の廃棄物処理装置によれば、超臨界状態を利用して有機廃棄物を処理するにあたって、従来法で問題となっている無機物の析出を防げる。
【0155】
したがって、無機物の析出に起因する反応器の閉塞などのトラブルを回避でき、装置のランニングコスト、メンテナンスコストを低減できる。また、無機物が放射性物質である場合は、作業員の被ばく低減についての効果も期待できる。
【0156】
また、過酸化水素を酸化剤として添加することで、OHラジカルを短時間に生成させることができるため、短時間に大量の有機物を分解処埋できる。
【0157】
無機塩を酸化物とすることなくイオン状で回収し、さらに始めから酸化物として存在していた無機物も少量であれば、液体中に回収できるため、有機廃棄物を均質・均一な廃棄体にすることができる。
【0158】
(実施例4)
図9に本実施例の廃棄物処理装置の概略を示す。
【0159】
実施例4の廃棄物処理装置は、有機廃棄物を水の超臨界状態で処理するための反応器7と、反応器7に有機廃棄物を投入するための有機廃棄物供給装置8と、反応器7に媒体である水を供給するための水供給装置9と、反応器7内の水の水素イオン濃度を測定するpH メータ21と、反応器7に酸を供給するための酸供給装置22と、pH メータ21の計測値に基づいて酸供給装置22を制御して計算量の酸を反応器7に供給させるためのコントローラ23と、反応器7からの生成物を回収するための回収装置12からなる。
【0160】
回収装置12は気液分離器15、気体処理装置16、液体処理装置17を有する。
【0161】
液体処理装置17は、液体スラッジを乾燥するための乾燥器18と固化するための固化器19を有する。
【0162】
酸供給装置22から供給する酸としては、媒体である水中で電離する無機酸を使用するが、例えば、硝酸のように、高熱で熱分解する酸は使用に適さない。好ましくは硫酸や塩酸が用いられる。
【0163】
実施例2で述べたように、有機廃棄物の分解に際して、水の水素イオン濃度10-4モル/kg以上にすれば、超臨界状態での無機物の析出を押さえることができる。
【0164】
しかし、有機廃棄物の種類によっては、分解生成物により水の水素イオン濃度が影響を受けるため考慮が必要である。
【0165】
例えば、ポリエチレンやポリ塩化ビニルからなるポリ容器を、水の存在下で温度374℃以上、圧力22.1MPa以上で反応させると、ポリエチレンは加水分解してアルコールや有機酸などを生成するが、ボリ塩化ビニルはアルコールや有機酸の他に塩酸を生成する。ポリ塩化ビニル中の塩素量は56wt%であり、水1kgに対し0.006gのポリ塩化ビニルを添加すれば、反応器中の水素イオン濃度は10-4モル/kgとなる。
【0166】
したがって、ポリ塩化ビニルを水1kgに対し0.006g以上添加する場合には酸の添加は不要である。しかし、ポリエチレンは酸を生成しないため、水1kg当たり水素イオン濃度が10-4モルとなるように酸を添加する必要がある。
【0167】
また、酸を生成しないポリエチレンと酸を生成するポリ塩化ビニルが混合した廃棄物を分解する場合には、混合比を調べ有機物より生成する酸の量を把握する必要がある。
【0168】
そこで本実施例においては、pHメータ21で、反応器7中の水素イオン濃度をリアルタイムで測定し、その測定値に基づいて、コントローラ23で、水1kg当たり水素イオン濃度が10-4 モルとなるような酸の量を計算し、算出された量の酸を反応器7に供給するように酸供給装置26を制御する。
【0169】
こうした構成により、有機廃棄物の種類に関わらず、反応器内の水素イオン濃度を最適の状態に維持することができる。
【0170】
また、処理対象に応じて、最適量の酸を供給することで、供給する酸の量を大幅に減少することが可能となる。
【0171】
さらに、下記の理由から、従来例に比べてコンパクトな気液分離器15を用いることが可能になる。
【0172】
二酸化炭素はVII 式に示すように水に溶けて炭酸となり、さらに水中で炭酸はVIII、IX式に示すようなイオンに解離する。
【0173】
CO2 + H2 O→H2 CO3 …VII
2 CO3 → H+ + HCO3- …VIII
HCO3- → H+ + CO32- …IX
VII 、VIII、IX式の平衡を左に動かし二酸化炭素と水を分離するには、液中の水素イオン濃度を増加させる必要がある。VIII式の酸解離定数は20℃で10-3.6(mol/l )と報告されている。水素イオン濃度を変化させた場合の[HCO3-]/[H2 CO3 ]比を表5に示す。
【0174】
2 CO3 は気相中の二酸化炭素と平衡にあるため、液中に溶解するHCO3- の割合がH2 CO3 に比べて多いと、水と二酸化炭素の分離が困難になる。従来法では液中の水素イオン濃度が10-7 モル/kg程度であったため液中のH2CO3 の割合が少なく二酸化炭素を分離するには、多量の空気と接触させる必要があり、気液分離器としては比較的大きな物が必要であった。
【0175】
しかし、本発明では水素イオン濃度を、10-4グラムイオン/kg以上にしているため、従来例に比べてコンパクトな気液分離器を使用でき、設備コストを低減できる。また、空気を添加する必要がなく気体処理ラインの処理量を減少させ、設備コストやランニングコストの低減が図れる。
【表5】

【0176】
なお、本実施例においては、pH メータ21で、反応器7中の水素イオン濃度を直接測定しているが、実際には反応器内は高温・高圧であり、pHメータの設置が難しいこともある。
【0177】
処理対象である廃棄物の種類や量等から、水に加える酸の量を算出し、水に必要量の酸を混合してから反応器7に供給してもよい。直接反応器内の媒体の水素イオンを測定しなくても、水素イオン濃度を制御することができるため、pHメータを設置する必要がなく好ましい。
【0178】
以上のように、本実施例の有機廃棄物分解装置においては、無機酸の供給量を、有機廃棄物の種類に応じて調整することにより、水素イオン濃度を無機物の析出を防ぐのに最適な状態に制御し、多種多様の有機物が混合した廃棄物でも容易に処理できる。
【0179】
また、装置内の有機廃棄物水中の無機酸の量を、水素イオン換算で水1kgに対し10-4モル以上にすることにより、大掛りな設備投資なしに、無機物の析出を効果的に防げる。また、気液分離器もコンパクト化できる。
【0180】
無機塩を酸化物にすることなくイオン状で回収し、さらに始めから酸化物として存在していた無機物も少量であれば液体中に回収できるため、有機廃棄物を均質・均一な廃棄体にすることができる。
【0181】
(実施例5)
図10に本実施例の廃棄物処理装置の概略を示す。
【0182】
本実施例の廃棄物処理装置は、実施例4の廃棄物処理装置において、反応器7に酸化剤を供給するための酸化剤供給装置11を設けたものである。
【0183】
本実施例の廃棄物処理装置においては、反応器7において、まず水の超臨界状態で有機物を低分子量化してから、反応器7内の圧力と温度を下げて、亜臨界状態で、低分子化された有機物の酸化・分解を行う。
【0184】
反応器7中の水素イオン濃度は、pHメータ21の測定値に基づいて、コントローラ23で酸供給装置22を制御して、水1kg当たり水素イオン濃度が10-4モルとなるように調整しておく。
【0185】
有機廃棄物としては、夾雑物や、無機添加剤や有機金属塩添加剤を多量に含まないものが好ましい。もし、有機廃棄物がこうした無機添加剤等を多量に含む場合には、処理する有機廃棄物の量を少なくする、あるいは、析出物の分離装置を設けて、超臨界状態における処理の後に、析出した無機物を除去してから亜臨界状態における処理を行えばよい。
【0186】
以上のように、本実施例の有機廃棄物分解装置においては、超臨界状態で有機物を低分子量化してから、亜臨界状態で酸化分解を行うことで、無機物の析出を防ぐことができる。
【0187】
超臨界状態における処理と亜臨界状態における処理を同一の反応器で行えるため、装置のコストを抑えられ、操作も簡単である。
【0188】
また、水1kg当たり水素イオン濃度が10-4モルとなるように調整することで、さらに効果的に無機物の析出を防ぐことができる。
【0189】
無機酸の供給量を、有機廃棄物の種類や量、使用する酸化剤の量等に応じて調整することにより、水素イオン濃度を最適な状態に制御し、多種多様の有機物が混合した廃棄物でも容易に処理できる。
【0190】
したがって、無機物の析出に起因する反応器の閉塞などのトラブルを回避でき、装置のランニングコスト、メンテナンスコストを低減できる。また、無機物が放射性物質である場合は、作業員の被ばく低減についての効果も期待できる。
【0191】
また、酸化剤を添加することで、短時間に大量の有機物を分解処埋できる。
【0192】
無機塩を酸化物にすることなくイオン状で回収し、さらに始めから酸化物として存在していた無機物も少量であれば液体中に回収できるため、有機廃棄物を均質・均一な廃棄体にすることができる。
【0193】
(実施例6)
図11に本実施例の廃棄物処理装置の概略を示す。
【0194】
本実施例の廃棄物処理装置は、有機廃棄物供給装置8の代わりに、反応器7に無機廃棄物を供給するための無機廃棄物供給装置24を設け、気体処理装置16にアンモニア処理装置25を備え、液体処理装置17にα核種回収装置26を備えた以外は、実施例5の廃棄物処理装置と同様の構成を有する。α核種回収装置26は、凝集沈殿装置と液体中の固形成分を分離する分離器からなる。
【0195】
無機廃棄物供給装置24を設けずに、有機廃棄物供給装置8で無機廃棄物も供給するようにしてもよい。同一の装置で有機廃棄物も無機廃棄物も両方処理できるため、コストの点からも好ましい。
【0196】
処理対象としては、無機物のみを含む廃棄物が好ましく、例えば、α廃棄物を含む固化体を処理することもできる。しかし、これに限られるものではなく、有機物を含む廃棄物を対象としてもよい。
【0197】
本装置を用いて、実際にα核種のような放射性物質や硝酸塩を含む無機廃棄物を処理する場合には、水供給装置9により、反応器7に媒体としての水を供給する。反応器7で超臨界状態とされた水に、無機廃棄物供給装置24で、無機廃棄物を供給し、超臨界水と混合し超臨界状態に所定時間保持する。
【0198】
反応器7中の水素イオン濃度は、pH メータ21の測定値に基づいて、コントローラ23で酸供給装置22を制御して水に硫酸を加え、水1kg当たり水素イオン濃度が10-4モルとなるように調整しておく。
【0199】
無機廃棄物は、反応器7において、酸化剤の存在下に、媒体である水の超臨界状態で酸化分解される。
【0200】
本実施例では、水1kg当たり水素イオン濃度が10-4 モルとなるように調整されているため、放射性物質(例えば、プルトニウム等のα核種)を析出させることなく、液体中に回収することができる。無機廃棄物中に含まれる硝酸や硝酸塩も析出することなく分解され、アンモニアとして気体中に回収される。
【0201】
生じた生成物は回収装置12に送られ気液分離器15で気体と液体に分けられ、それぞれ気体処理装置16と液体処理装置17に送られる。
【0202】
アンモニア含有気体は、アンモニア処理装置25において、白金触媒存在下で310℃以上に加熱され、アンモニアが窒素となる。
【0203】
プルトニウム等のα核種を含む液体は、α核種回収装置26の凝集沈殿装置において、バリウムを添加され、難溶性の硫酸バリウムを生成する。III 価とIV価のα核種は、硫酸バリウムと共沈する。V 価とVI価のα核種は、還元剤でIII 価とIV価に還元されて硫酸バリウムと共沈する。セシウム、ストロンチウム等が含まれるときには、ゼオライト、フェロシアン化コバルト、チタン酸などの吸着剤に吸着させ沈殿させる。
【0204】
また、液体がアンモニアを含む場合には、水酸化ナトリウムを添加して液体のpHを9とした後に、アンモニアを気相に追い出して液体中から除去することも可能である。
【0205】
沈殿したα核種を含む硫酸バリウム塩を分離器で分離して回収し、ガラス固化体とする。セメント固化体としてもよい。
【0206】
また、バリウム以外に鉄を添加してpHを4以上とし、生成した水酸化鉄にα核種を共沈させ、水酸化鉄をセメント固化体にして処分することもできる。ランタンのリン酸塩と共沈させてもよい。
【0207】
α核種を除去された液体は、乾燥器18で乾燥された後に、固化器19において固化剤と混合され、ドラム缶などの処分容器内で固化させられ、非α廃棄物の固化体となる。固化剤としては、例えば、セメントミルクが好ましく用いられる。
【0208】
以上のように、本実施例の廃棄物処理装置においては、超臨界状態の媒体の水素イオン濃度を水1kg当たりが10-4モルに調整することで、放射性物質や硝酸塩等の無機物の析出を防ぐことができる。したがって、無機物の析出に起因する反応器の閉塞などのトラブルを回避でき、装置のランニングコスト、メンテナンスコストを低減できるのみならず、作業員の被ばく低減についての効果も期待できる。
【0209】
本実施例によれば、硝酸イオンは分解して大部分窒素になるため、超臨界処理後のα廃棄物の固化体は硝酸塩を含まない。したがって、固化体を還元性雰囲気の地中に埋設してもアンモニアが生じることがなく、固化体中からのプルトニウム等の放射性物質の溶出を防げる。
【0210】
また、α核種を除去した液体とスラッジを固化させた固化体は、非α廃棄物であるから、浅地層処分可能で廃棄処分が容易となる。その分、深地層処分する廃棄物を減容でき、処分コストの低減につながる。
【0211】
例えば、通常の方法で得られた放射性廃棄物の固化体からプルトニウム等のα核種を回収してガラス固化体とすれば、α廃棄物の量を大幅に減らすことができる。
【0212】
本実施例では、α核種を沈殿させ分離回収するように構成したが、α核種のみでなく、液相に溶解している金属などの無機イオンを凝集させ沈殿処理するように構成してもよい。
【0213】
また、実施例3または4の処理装置に、こうした無機イオンを凝集させ沈殿させる装置を設けてもよい。
【0214】
(実施例7)
本実施例の廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、有機廃棄物供給装置8、水供給装置9、酸化剤供給装置11のそれぞれに、加熱器および加圧器を設け、回収装置12に、減圧器と冷却器を設けたものである。
【0215】
実施例4や実施例5の廃棄物処理装置において、有機廃棄物供給装置8、水供給装置9、酸化剤供給装置11、酸供給装置22に同様な加熱器と加圧器を設け、回収装置12に、同様な減圧器と冷却器を設けてもよい。
【0216】
実施例6の廃棄物処理装置において、無機廃棄物供給装置24、水供給装置9、酸化剤供給装置11、酸供給装置22に同様な加熱器と加圧器を設け、回収装置12に、同様な減圧器と冷却器を設けてもよい。
【0217】
加熱器は、それぞれ有機廃棄物、媒体、酸化剤を加熱し、加圧器は、それぞれ有機廃棄物、媒体、酸化剤を加圧する。こうした構成により、有機廃棄物、水、および酸化剤を、反応器7に連続的に供給し、かつ反応温度および反応圧力を低下させることなく有機廃棄物を連続処理できる。
【0218】
酸化反応器10で生じた分解生成物は回収装置12に送られ、減圧器と冷却器で減圧され冷却される。こうした構成により、生成物である流体を連続的に酸化反応器10から抜き出し、また、続いて行われる気液分離器15での流体の気液分離を効果的に行うことができる。
【0219】
有機物に酸素を添加して分解すると炭素は二酸化炭素に、水素は水になる。超臨界水の条件では、媒体液である水と分解により生成した二酸化炭素は任意に混合し分離が難しい。しかし、分解により生成した流体を減圧し温度を下げ常温常圧にすると、水と二酸化炭素の大部分を分離することができる。
【0220】
このように、本実施例によれば、バッチ処理に比べて処理速度が速くランニングコストを大幅に低減することが可能となる。また、気液分離器15での気液分離を効果的に行うことができる。
【0221】
(実施例8)
本実施例の廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、反応器7に温度センサおよび圧力センサを設けたものである。
【0222】
実施例4、5、6または7の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0223】
図12に水の状態図を示す。水の状態は温度と圧力によって決まるため、反応器7内が超臨界状態あるいは亜臨界状態であるかどうかは、反応器内の温度および圧力を監視することにより把握することができる。
【0224】
温度センサおよび圧力センサで反応器7内の温度と圧力をモニターすることで、反応器7内の媒体が超臨界状態であるかどうかを、正確に把握し、最適の状態で廃棄物を処理することができる。
【0225】
反応器7のみでなく、酸化反応器10にも同様の温度センサと圧力センサを設け、酸化反応器10内が亜臨界状態であるかどうかを把握することが好ましい。
【0226】
また、実施例7の廃棄物処理装置のように、加熱器や加圧器を有する装置では、加熱あるいは加圧された廃棄物、媒体等の温度と圧力を、反応器内へ供給する前に測定するようにしてもよい。反応器内温度や圧力を直接測定しなくても、反応器内の状態を把握することができるため好ましい。
【0227】
(実施例9)
実施例9の廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、反応器7および有機廃棄物供給装置8の少なくとも一部を、グローブボックス内に設置するものである。
【0228】
実施例4、5、6,7、または8の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0229】
放射性物質や有害物質で汚染されている有機廃棄物を処理する場合は、放射性物質や有害物質が外部に漏れ出さないような処置を講じる必要がある。実施例3における廃棄物処理装置は、大部分を閉鎖した系の中で処理するが、有機廃棄物供給装置8の一部は有機廃棄物を受け入れるため開放系となる。そのため、放射性物質や有害物質で汚染されている有機廃棄物を処理する場合は、開放系となる有機廃棄物供給装置8を何らかの覆い部材内に設置して、汚染の拡大を防止する必要がある。こうした覆い部材としては、フードやグローブボックス等を使用できる。
【0230】
また、グローブボックスやフード等の覆い部材を防爆仕様にすることが望ましい。有機廃棄物の分解により、爆発の危険性のある揮発性有機物が生成したり、あるいは、有機廃棄物に爆発の危険性のある揮発性有機物が付着しているような場合でも処理が可能となるからである。
【0231】
本実施例によれば、処理装置の一部をグローブボックス内に設置するため、装置全体をこうした覆い部材内に設置する場合に比べて、設備規模をコンパクトにすることができる。
【0232】
(実施例10)
本実施例は、実施例3の廃棄物処理装置において、媒体である水に中性塩を添加するための中性塩供給装置を設けたものである。
【0233】
実施例4、5、7、8、または9の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0234】
一般的に難溶性の塩Mn Lm の溶解度積Ksは活量を用いてX 式のように表わされる。
【0235】
m+ + Ln- → Mnm ,Ks=a1m ・a2n …X
al :Mm+の活量 a2 :Ln-の活量活量aは活量係数γと濃度Cを用いてXI式のように表される。
【0236】
a=γ・C …XI温度と圧力が一定の場合、活量aが一定となり、Ksは一定の値を持つ。希薄溶液ではγ=1となり活量aと濃度Cは一致する。しかし、イオン強度が増加するとγ<1となりその結果濃度Cが増加し、溶液中に溶解するMm+とLn-が増加して溶解度が増加する傾向がある。
【0237】
したがって、中性塩を添加すると難溶性の塩の溶解度が増加して、沈殿を抑制することができる。
【0238】
こうした中性塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムが好ましく用いられる。
【0239】
本実施例によれば、中性塩を添加することにより、無機物の析出をさらに効果的に抑制することができる。
【0240】
(実施例11)
本実施例に係る廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、反応器7の内容物に放射線を照射する放射線照射装置を備えたものである。
【0241】
実施例4、5、7、8、9、または10の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0242】
放射線照射装置の代わりに、紫外線を照射する紫外線照射装置を使用してもよい。
【0243】
水に放射線を照射するとXII 式に示すようにOHラジカルを生成する。
【0244】
2 O→H十OH・ …XII
OHラジカルはI式に示すように強力な酸化剤となるため、酸化剤が存在しなくても有機物を分解することができる。
【0245】
また、酸化剤の存在下で紫外線および放射線を照射すればこの反応をさらに加速させることができる。例えば、酸素は放射線を照射するとラジカルを生成し最終的に過酸化水素を生成する。過酸化水素は放射線の存在下でXIII式のように反応してOHラジカルを生成し、有機物を分解することができる。
【0246】
22 +hν→2OH・ …XIII
オゾンはXIIII 式に示すように紫外線と反応して過酸化水素を生成する。さらに過酸化水素は紫外線とXIII式のように反応してOHラジカルを生成する。
【0247】
3 +H2 O+hν → H22 十 O2 …XIIII
さらにXV式に示すようにXII 式で生成した水素原子は酸素と反応してヒドロペルオキシラジカルを生成し、さらにXVI 式のようにオゾンと反応してOHラジカルを生成する。
【0248】
H 十 O2 →HO2 ・ …XV
3 +HO2 ・→OH・+2O2 …XVI
したがって、放射線を照射することによりOHラジカルを効率的に生成することができ有機物の分解がより効率的に行える。
【0249】
なお、放射性物質を含んだ廃棄物を処理する場合は、放射線を外部から照射することなしに容易に放射線場を作ることができるため、放射線照射装置を備えなくても上述の効果が得られる。
【0250】
(実施例12)
本実施例の廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、気体処理装置16が気体中の固形分や有害成分を除去するフィルタと水中に有害成分を回収するスクラバーを備えたものである。
【0251】
実施例4、5、6、7、8、9、10、または11の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0252】
例えば、再処理工場から発生する放射性物質で汚染されている廃棄物を処理すると、テクネチウムやルテニウムといった揮発性の元素が気相中に移行する。
【0253】
ルテニウムは四酸化ルテニウムとして気相中に移行するが、有機物が存在すると還元されて二酸化ルテニウムとなる。二酸化ルテニウムは常温では固体であるため、回体成分を除去するフィルターで除去できる。
【0254】
また、テクネチウムは七酸化二テクネチウムや過テクネチウム酸となって気相中に移行するが、XVII、XVIII 式に示すように水と接触すると水中にイオンの形態で溶解する。
【0255】
Tc27 (g)+H2 O→2HTcO4 (g) …XVII
HTcO4 (g)→TcO4- +H+ …XVIII
そのため、スクラバーを設置すると液中にテクネチウムを回収することが可能である。
【0256】
テクネチウムなどの元素をより効率的に回収するためには、スクラバ−には水の他に水酸化ナトリウムを含むアルカリ溶液や還元剤を含む水を用いることが好ましい。
【0257】
テクネチウムは水と接触すると、XVII、XVIII 式に示すように陰イオンの形態で溶解する。この陰イオンは、ナトリウムイオンと反応して塩を作るため、テクネチウムを塩の形で溶液中に回収できる。
【0258】
HTcO4 +NaOH→NaTcO4 +H2 O …XVIIII
また、テクネチウムは還元剤が存在すると還元されて過テクネチウム酸(VII価)から二酸化テクネチウム(IV価)になる。常温常圧の水に対する二酸化テクネチウムの溶解度は小さいため、テクネテウムは水中に固体の形で回収される。
【0259】
以上より、本実施例によれば、飛沫同伴で気相中に移行する固体や揮発性の有害な元素を除去でき、放射性物質で汚染されている廃棄物でも安全に処理できる。
【0260】
(実施例13)
実施例13に係る廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、液体処理装置17が、液体を攪拌するための攪拌装置と液体を採取して分析する採取・分析装置を備えるものである。
【0261】
実施例4、5、6、7、8、9、10、11、または12の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0262】
気液分離器15から液体処理装置17に送られた液体を、攪拌装置で攪拌すると、液相は均一化される。均一化された液体の一部を、採取・分析装置で採取して分折すれば、液相全体の組成がわかり、固化器19において、貯蔵、処分に最適な固化手段が選定できる。また、固化処理後の固化体の内容物が明らかとなるので、貯蔵、処分時の管理が容易になる。
【0263】
たとえ、液体に懸濁固形物が含まれていても、攪拌装置で攪拌すれば均一化でき、固化器19において固化処理しやすくなる。
【0264】
採取・分析装置を設けないと、固化体の内容物が不明であるため管理上なんらかの手段で内容物を測定する必要がある。しかし、固化体の内容物の測定は、代表サンプルの採取が困難であるため、精度が悪く、廃棄物管理上問題である。
【0265】
(実施例14)
本実施例に係る廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、液体処理装置17に、液体中に含まれる酸、アルカリを中和処理する中和処理装置を備えたものである。
【0266】
実施例4、5、7、8、9、10、11、12、または13の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0267】
例えば、テクネチウムが含まれる放射性固体廃棄物を処理する場合、テクネチウムは七酸化二テクネチウムとなって、気相中に移行する。
【0268】
しかし、酸化反応器10から分解生成物を回収装置12に回収後、中和処理装置で水酸化ナトリウムのようなアルカリを加えると、XVIIII式に示すように、気液分離後の液体中に微量に残存しているテクネチウムを、液相中に安定化することができる。
【0269】
このように、本実施例によれば、液体中に含まれる放射性物質などの有害物質が安定化し、固化器において固化処理しやすくなる。
【0270】
(実施例15)
実施例15に係る廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、液体処理装置17に、液相を冷却するための冷却器を設けたものである。
【0271】
実施例4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0272】
放射性廃棄物を処理する場合、液体処理装置17内の放射性物質からの発熱で、冷却なしでは、液が沸騰し、放射性物質の汚染が拡大する恐れがある。冷却器で液体を冷却すれば、こうした危険を回避し、放射性物質を液相中に安定に保持することが可能となる。
【0273】
(実施例16)
本実施例に係る廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、液体処理装置17に、イオン交換塔を設けたものである。
【0274】
実施例4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0275】
例えば、再処理工場から発生する放射性物質で汚染されている廃棄物を処理すると、テクネチウムやルテニウムといった揮発性の元素が気相中に移行するが、その一部は液相中に残存し、テクネチウムは過テクネチウム酸として、ルテニウムは塩化物イオンや硝酸イオンの錯体として溶液中に存在する。
【0276】
過テクネチウム酸は陰イオンであるため、陰イオン交換樹脂脂で除去でき、ルテニウムは陽イオンであるため、陽イオン交換樹脂で除去できる。
【0277】
以上のように、本実施例によれば、分解生成物の溶液中に含まれる放射性物質のような有害なイオン成分を除去できるため、残った溶液を系外に放出でき、廃棄物の処分コストを低減できる。
【0278】
また、こうして液体中の有害なイオン成分を取り除く結果、液体処理ラインから固化器に供給される廃液は、液相と固相が、均一、均質となっている。この廃液に固化剤を混入するだけで、均一、均質な固化体を形成でき、シンプルなプロセスで貯蔵、処分のための安定な固化体とすることができる。
【0279】
(実施例17)
本実施例に係る廃棄物処理装置は、実施例3の廃棄物処理装置において、液体処理装置17に、液体を抽出剤と接触させ、水中の有害な無機イオンを抽出剤に回収するための抽出回収装置を設けたものである。
【0280】
実施例4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16の廃棄物処理装置において同様の構成としてもよい。
【0281】
例えば、再処理工場から発生する放射性廃棄物中には、ウラン、プルトニウムなどの核燃料物質が含まれている。これらの元素を含んだ有機廃棄物をそのまま固化するとα廃棄物となり、固化体の処分コストが増加する。そのため廃棄物中からこれらの元素を除去する必要がある。
【0282】
抽出剤としては、リン酸トリブチル(以下TBP)など中性有機リン化合物や、ジヘキシルリン酸(HDEHP)などの酸性有機リン化合物を使用することができる。
【0283】
図13に30vol %のTBP−硝酸系のアクチノイド元素の分配係数を示す。硝酸濃度3mol/リットルではウラン、プルトニウム、ネプツニウムの分配係数は10以上、トリウムの分配係数は3以上となった。
【0284】
抽出回収装置により、液体処理装置に回収される液体の酸濃度を3mol /リットルに調整してから、TBPと接触させると、TBP中にプルトニウムなどのアクチノイド元素を回収できる。さらに、プルトニウムなどのアクチノイド元素を含んだTBPに希酸を接触させると、希酸中にプルトニウムなどのアクチノイド元素を回収できる。
【0285】
図14にHDEHPを用いたアクチノイド元素の分配係数を示す。硝酸濃度が10-1mol /リットル以下でもプルトニウム、ウラン、アメリシウムの分配係数が100以上となり、HDEHP中に回収できる。また、HDEHPにヒドラジンなどの還元剤を含んだ1mol /リットル程度の酸を接触させると、プルトニウムやウランのVI価が還元されて III価となり酸中に回収される。
【0286】
HDEHPを使用すれば、酸濃度を10-1 mol /リットル程度でアクチノイド元素が回収できるため、TBPなど中性有機リン化合物を使用する場合と比べて、分離回収器に添加する酸の量を減じることができ、ランニングコストを低減することができる。
【0287】
上述のTBPやHDEHP等の抽出剤の希釈剤として、超臨界二酸化炭素を用いることが好ましい。使用済みの有機溶媒の量を減じることができ二次廃棄物処理コストを大幅に低減できるからである。
【0288】
常温常圧でのTBPの比重は水と同じlg/ml程度であり、TBPに希釈剤としてノルマルドデカンを添加すると有機相と水相とを容易に分離できる。プルトニウムなどの放射性物質を、TBPで回収すると、使用後のTBPやノルマルドデカンは放射性を帯びるため、放射性有機廃棄物として処理する必要が生じる。
【0289】
一般的にTBPが30vol %、ノルマルドデカンが70vol %の割合で混合するため、ノルマルドデカンの処理量はTBPの2倍以上となる。そのため、ノルマルドデカンを処理する必要がなければ、処理コストは3分の1にまで減少する。
【0290】
二酸化炭素は31℃、7.4MPa以上の条件で超臨界状態となり有機物と任意に混合するため、TBPを超臨界状態の二酸化炭素と接触すると、分解液中からプルトニウムなどのアクニチノイド元素をTBP中に回収できる。使用後に常温常圧にすると、二酸化炭素は気体となりTBPと容易に分離できるため、二酸化炭素の処理は不要となる。
【0291】
したがって、超臨界状態の二酸化炭素を希釈剤として用いると、処理コストを大幅に削減することができる。
【0292】
以上のように、本実施例によれば、液体中の有害な無機イオンを抽出剤に回収し、固化体の処分コストを減少させることができる。
【0293】
また、こうして液体中の有害な無機イオンを取り除く結果、液体処理装置から固化器に供給される廃液は、液相と固相が、均一、均質となっている。この廃液に固化剤を混入するだけで、均一、均質な固化体を形成でき、シンプルなプロセスで貯蔵、処分のための安定な固化体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0294】
【図1】本発明の実施例1の廃棄物処理方法のプロセス図。
【図2】従来例の廃棄物処理方法プロセス図。
【図3】超臨界、亜臨界条件での酸化鉛の溶解度を示すグラフ。
【図4】温度および圧力を変化させた場合の水のイオン積の変化を示すグラフ。
【図5】酸化剤添加量を変化させた場合のセリウムの沈殿率を示すグラフ。
【図6】本発明に用いる廃棄物処理装置の概略を示す図。
【図7】反応器の下部に設けられた分離器を示す図。
【図8】水と炭化水素類との混合物の臨界軌跡を示す。
【図9】本発明に用いる廃棄物処理装置の概略を示す図。
【図10】本発明に用いる廃棄物処理装置の概略を示す図。
【図11】本発明に用いる廃棄物処理装置の概略を示す図。
【図12】水の状態図。
【図13】30%TBP−硝酸系のアクチノイド元素の分配比を示すグラフ。
【図14】HDEHP−硝酸系のアクチノイド元素の分配比を示すグラフ。
【符号の説明】
【0295】
1…媒体超臨界化工程、2…混合工程、3…低分子量化工程、4…酸化工程、5…回収工程、6…超臨界分解工程、7…反応器、8…有機廃棄物供給装置、9水供給装置、10…酸化反応器、11…酸化剤供給装置、12…回収装置、15…気液分離器、16…気体処理装置、17…液体処理装置、18…乾燥器、19…固化器、20…分離器、21…pHメータ、22…酸供給装置、23…コントローラ、24…無機廃棄物供給装置、25…アンモニア処理装置、26…α核種回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物と媒体との混合物を超臨界状態で所定の時間保持し、前記有機廃棄物に含まれる有機物を分解する廃棄物処理方法において、
前記媒体が酸化剤を含み、かつ水、二酸化炭素、もしくは炭化水素、またはこれらの2種以上の混合物であり、媒体の水素イオン濃度が前記媒体1kgに対して10-4モル以上であることを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
無機廃棄物と媒体との混合物を超臨界状態で所定の時間保持し、前記無機廃棄物に含まれる無機物を分解する廃棄物処理方法において、
前記媒体が酸化剤を含み、かつ水、二酸化炭素、もしくは炭化水素、またはこれらの2種以上の混合物であり、媒体の水素イオン濃度が前記媒体1kgに対して10-4モル以上であることを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項3】
前記媒体を超臨界状態とする媒体超臨界化工程と、超臨界状態とされた前記媒体と前記有機廃棄物との混合物を得る混合工程とを有することを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項4】
前記媒体を超臨界状態とする媒体超臨界化工程と、超臨界状態とされた前記媒体と前記無機廃棄物との混合物を得る混合工程とを有することを特徴とする請求項2記載の廃棄物処理方法。
【請求項5】
前記有機廃棄物が硝酸塩、硫酸塩、塩化物、燐酸塩、もしくは珪酸塩、またはこれらの2種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項6】
前記酸化剤として、酸素、空気、過酸化水素、もしくはオゾン、またはこれらの2種以上を、前記有機廃棄物を完全に酸化するのに必要な化学量論量の1倍以上使用することを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項7】
前記酸化剤として、酸素、空気、過酸化水素、もしくはオゾン、またはこれらの2種以上を、前記有機廃棄物を完全に酸化するのに必要な化学量論量の1倍以上使用することを特徴とする請求項2記載の廃棄物処理方法。
【請求項8】
前記超臨界媒体に、硫酸及び塩酸の少なくとも一方を加えて、前記超臨界媒体の水素イオン濃度が前記超臨界媒体1kgに対して10-4モル以上となるように調整することを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項9】
前記超臨界媒体に、硫酸及び塩酸の少なくとも一方を加えて、前記超臨界媒体の水素イオン濃度が前記超臨界媒体1kgに対して10-4モル以上となるように調整することを特徴とする請求項2記載の廃棄物処理方法。
【請求項10】
前記無機廃棄物が硝酸または硝酸塩の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理方法。
【請求項11】
前記無機廃棄物が硝酸または硝酸塩の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項2記載の廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−30040(P2008−30040A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213642(P2007−213642)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【分割の表示】特願平10−230549の分割
【原出願日】平成10年8月17日(1998.8.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】