説明

廃棄物処理装置

【課題】仕切り板により多槽式の処理槽を構成した廃棄物処理装置において、安価で軽量な板状部材を用いても処理槽の変形が無く、低コスト化と重量の軽減を図ることが可能となる廃棄物処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽を構成する断面が略U字形状の板状部材36、37、38に仕切り板11a、11bを接合させ、処理槽の内部を前記仕切り板で区画することによって複数の槽が形成された廃棄物処理槽と、複数の各槽を貫通する攪拌軸に複数の攪拌棒を設けて構成された攪拌手段と、を有する廃棄物処理装置であって、断面が略U字形状の板状部材と前記仕切り板は、これらの接合部において相互に係止し合う係止部36a,b、37a,b、38a,bを備え、前記複数の槽は断面が略U字形状の板状部材を前記係止部で前記仕切り板に係止固定されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理装置に関し、特に仕切り板により多槽式の処理槽を構成した廃棄物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の廃棄物処理装置には、例えば特許文献1に開示されているように、処理槽の内部を仕切り板によって複数の区画に仕切って、該処理槽の上流側の区画に投入された有機廃棄物を、下流側の区画にオーバーフローさせて順次移送させ、該処理槽に設けられた攪拌手段と加熱手段によって、有機廃棄物を攪拌しつつ加熱下で好気性菌により発酵させて、コンポスト化する装置が提案されている。
【特許文献1】特開平9−57235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例である特許文献1の廃棄物処理装置は、以下のような課題を有していた。
この装置では、処理槽には断面が略U字形状の板状部材に仕切り板を接合させ、この処理槽の内部を前記仕切り板で区画することによって複数の槽が形成されており、また、この複数の各槽を貫通する攪拌軸には複数の攪拌棒が設けられている。このような構成のもとでは、処理槽を構成するU字形板には処理物を攪拌することに伴い、攪拌軸の円周方向への圧力が掛かることから、側板および仕切り板をU字形板に結合している溶接部に負担がかかり、最悪時には溶接部が破損する不具合があった。そしてこれら不具合を回避するため、側板や仕切り板およびU字形板の強度を高めるために板厚を厚くした場合には、コスト高になり、あるいは製品重量が重くなるという問題が生じることになる。
【0004】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、仕切り板により多槽式の処理槽を構成した廃棄物処理装置において、安価で軽量な板状部材を用いても処理槽の変形が無く、低コスト化と重量の軽減を図ることが可能となる廃棄物処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を達成するために、以下のように構成した廃棄物処理装置を提供するものである。
すなわち、本発明の廃棄物処理装置は、処理槽を構成する断面が略U字形状の板状部材に仕切り板を接合させ、前記処理槽の内部を前記仕切り板で区画することによって複数の槽が形成された廃棄物処理槽と、前記複数の各槽を貫通する攪拌軸に複数の攪拌棒を設けて構成された攪拌手段と、を有する廃棄物処理装置であって、前記断面が略U字形状の板状部材と前記仕切り板は、これらの接合部において相互に係止し合う係止部を備え、前記複数の槽は前記断面が略U字形状の板状部材を前記係止部で前記仕切り板に係止固定させて構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、仕切り板により多槽式の処理槽を構成した廃棄物処理装置において、安価で軽量な板状部材を用いても処理槽の変形が無く、低コスト化と重量の軽減を図ることが可能となる廃棄物処理装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記構成により、本発明の課題を達成することができるが、本発明の実施の形態においては、この廃棄物処理装置における処理槽の構成を、具体的にはつぎのように構成することができる。
廃棄物処理装置の処理槽を、断面が略半円以上の円弧部を有するU字形状の板金で構成された処理槽の内部を金属材料により形成された仕切り板によって区画し、この区画された複数の上流側から下流側の区画にオーバーフローさせるように構成する。また、前記複数の各槽を貫通して回転自在に横架した攪拌軸に複数の攪拌棒を設ける。そして、前記断面が略U字形状の板金と前記仕切り板との接合構造として、前記断面が略U字形状の板金における前記仕切り板との接合部に舌状の凸部を形成し、この舌状の凸部を前記仕切り板に形成された穴部に差し込んで係止し、この係止された部分を溶接することによって、前記断面が略U字形状の板金を前記仕切り板金に固定するように構成する。
その際、前記仕切り板で区画された複数の槽を、前記略U字形状の板状部材の曲率が上流側から下流側に行くにしたがって小さい曲率のもので構成することができる。
また、前記攪拌軸に設けられた複数の攪拌棒の先端には、V字形に曲げた攪拌羽根を配置し、このV字形に曲げた攪拌羽根の先端を、三角形状とする構成を採ることができる。
また、前記仕切り板に近接する攪拌棒の先端には、山形に曲げ且つ概略三角形をした攪拌羽根が配置された構成を採ることができる。
【実施例】
【0008】
以下に、本発明における実施例について説明する。
本実施例は、本発明を適用して仕切り板により多槽式の処理槽を備えた廃棄物処理装置を構成した。但し、この実施例に記載した以下の構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0009】
図1に本実施例の廃棄物処理装置の構成の概略斜視図を示す。
図2に図1のA視からみた廃棄物処理装置の概略断面図を、また図3に図1のB視からみた廃棄物処理装置の概略断面図を示す。
図4に本実施例の廃棄物処理装置の外装カバー装着時の概略斜視図を示す。
図5に本実施例の廃棄物処理装置の側板と仕切り板の位置の断面図を示す。
図6に本実施例の廃棄物処理装置の攪拌軸と側板と仕切り板と攪拌棒と攪拌羽根の位置の断面図を示す。
図7に本実施例の廃棄物処理装置の側板や仕切り板およびU字形板で構成される処理槽の模式図を示す。
【0010】
図1乃至図7において、1は動力源の正逆回転する駆動モーター、2は駆動モーター1の出力軸先端に固定された小スプロケット、3は小スプロケット2とかみ合うチェーンである。
4はチェーン3とかみ合う大スプロケット、5は廃棄物を撹拌する撹拌棒、6は撹拌棒5を回転させる撹拌軸、7a、7bは撹拌軸6を支持する軸受けであり、本実施例の撹拌手段はこれらの部材によって構成されている。
8は廃棄物処理装置を覆う枠体としての外装部、10は外装部8内に設けられ廃棄物を処理するための(廃棄物)処理槽である。この処理槽10は、互いに対向して設けられた一対の側壁としての処理槽側板右14および処理槽側板左15と、この一対の側壁間に横設されたU字形板36、37、38とを有し、さらに処理槽10を複数の槽に仕切るための仕切り板11a、11bを有して構成されている。
処理槽10の下部には、処理槽10を加熱する加熱手段としての面状ヒーター9が設けられる。12は廃棄物を分解処理させるための基材、13は分解処理の状態を基材の含水率で検知する含水率センサーである。
【0011】
16は微生物への酸素の供給と分解処理で生成する水分と炭酸ガスの排気を行う排気ファン、17は処理槽10内へ外気を取り込む吸気口、18は処理槽10内で発生した水分と炭酸ガスを排出する排気口である。
19は処理槽10の投入蓋21に取付けたマグネット、20は投入蓋21に付けたマグネットを検知する投入蓋検知センサー、21は投入蓋、22は廃棄物を投入する投入口である。
23は全体を制御する制御部、24は通気口、25は処理槽10内から発生する粉塵を取り除く除塵フィルタ、26(26a、26b、26c)は処理槽10内の排気口と外気を連通する排気ダクトである。
27は処理槽10から発生する臭気を帯びた空気を触媒ヒーター27aにより加熱し、酸化触媒27bを用いて脱臭する脱臭手段としての脱臭部、28は脱臭部27の出口温度を検知する温度センサーである。
また、29は外装部8の側面に設けた外気の取り入れ口としての外気取り入れ口、30は処理槽10内に設けられた排気ダクト26aの外側に配置され処理槽10内の気体の循環通路を構成する循環ダクトである。
31は処理槽10内の臭気を帯びた空気を循環ダクト30に吸い込む気体の吸い込み口、32は処理槽10内の気体を循環する循環ファン、33は処理槽10で廃棄物を処理後の分解残渣を排出させる排出口である。
また、34は攪拌棒5の先端に取り付けられたV字形攪拌羽根、35は側板14、15、および仕切り板11a、11bに近接している攪拌棒5の先端に取り付けられた山形攪拌羽根である。
【0012】
次に、上述のように構成された廃棄物処理装置の作用および動作について説明する。
処理槽10は中央に正逆回転する撹拌軸6を有し、中に基材12が入っている。基材12は、生分解し難い繊維素が主成分のおが屑でその一粒一粒が多孔質で吸水性と空隙を有し、かつ粒形が複雑で粒子間にも大きな空隙が形成されている。この空隙により処理生物への酸素が供給できることで、廃棄物の分解処理の効率が向上する。また、このときの混合物中の廃棄物を分解する処理生物は、好気性の微生物や菌である。
【0013】
また、処理槽10の中の基材12は、おが屑以外のそば殻やもみ殼などであっても、空隙を保てて、処理生物への酸素を供給できることから、基材12として好適である。
また、基材12は本実施例においては、生分解されにくい繊維質のおが屑を用いているが、空隙を保てて、処理生物への酸素供給できる機能を有するセラミックであっても良い。あるいは、生ごみだけを廃棄物処理装置で処理した処理物を種の基材とした基材12を使用しても、既に処理生物が活性状態で生息あるいは休眠していることから、基材12として好適である。
【0014】
運転中の廃棄物処理装置の投入蓋21を開けると、投入蓋21のマグネット19を検知していた投入蓋開閉検知センサー20は、投入蓋21が開かれたと判断し、撹拌状態の時は駆動モーター1が停止する。
ここで、投入蓋21に取り付けたマグネット19と投入蓋開閉検知センサー20とを備える投入蓋開閉検知手段は、処理槽10に取り付けた磁気に反応する磁気センサーで構成されているが、投入蓋21に突部を設け、その突部を処理槽10側に取り付けた光学センサーで検知しても良い。
また、投入蓋開閉検知センサー20は、本実施例においては、非接触式の磁気検知センサーを用いているが、機械式マイクロスイッチであってもよい。
また、投入蓋開閉検知センサー20の取り付け位置は、投入蓋21側あるいは処理槽10側あるいは投入蓋21と処理槽10のどちらか一方に検知センサーを取り付け、他方に検知部材を取り付けても可能である。
【0015】
次に、廃棄物投入後の撹拌運転について説明する。
廃棄物投入後の駆動モーター1による撹拌運転は、例えば通常は30分周期の間に5分間だけ正逆撹拌を行うが、廃棄物が投入された直後は、すぐに撹拌を開始し、例えば30分周期の間に10分間正逆撹拌をすることで、投入された廃棄物を細かく破砕するとともに基材12とまんべんなく混合できる。
また、正逆回転を行うことにより、投入された廃棄物が撹拌棒5や攪拌軸6に絡みつくことを防ぐ効果もある。
更に、撹拌は基材12と廃棄物の混合の効果以外にも、撹拌することで処理物12a(基材12と廃棄物の混合物)の温度の一定化と、処理物12a中に含まれる水分を積極的に処理物12aの外部へ飛ばすことが可能となることで、処理物12aの含水率調整効果もある。
【0016】
また、投入された廃棄物の大部分は、24時間以内で分解処理できることから、廃棄物が24時間以上投入されないときは、撹拌サイクルを5分間撹拌の55分間停止にすることで、撹拌に要する駆動モーター1への電力供給を削減でき、省電力化が可能となる。
また、本実施例において、撹拌棒5は、断面が棒状であり、撹拌軸6に複数個所定の間隔で取り付けられる構成であるが、撹拌軸6に平板状の撹拌羽根5を複数枚所定の間隔で取り付けても可能である。このほかにも撹拌軸6に断面が三角形状の撹拌棒を複数個所定の間隔で取り付けても良い。
【0017】
ここで処理槽10の断面形状は、処理物12aの全体が均一に軽い作用で撹拌されるように図1乃至図2に示すように、ほぼ半円以上の円弧部を有する略U字形状になっている。そして円弧部の円弧の中心と一致して水平方向に撹拌軸6が設けられている。この撹拌軸6には撹拌棒5が複数個所定の間隔で固定されている。なお、本実施例では、処理槽10に撹拌軸6を横架させているが、処理槽を略円筒状とし撹拌軸6が処理槽10に鉛直方向に設けられても良い。
【0018】
また、このとき撹拌により、水分と炭酸ガスが撹拌停止時以上に発生することから、排気ファン16の排気流量を増加し、吸気口17からの酸素の供給と同時に、分解で発生する水分と炭酸ガスを処理槽10の外部へと排出させることで、処理槽10内の処理物が多湿気味になることを防止でき、処理物12aの含水率を調整することができる。
また、このときの排気ファン16の取り付け位置は、本実施例では、排気口18に連通する脱臭部27を通過後、排気ダクト26内に排気ファン16を取り付けているが、代わりに吸気口17にファンを取り付けて吸い込ませても同様の効果が得られる。
【0019】
また、吸気口17に取り付けるファンは、処理槽10内に約40℃から約70℃に加熱した空気を送ることのできる熱風ファンでもよい。
吸気口17に熱風ファンを取り付けることにより処理槽10内の気体の温度を上昇させることができる。
処理槽10内の気体の温度が上昇することで気体に含まれる飽和水分量が増すことから、時間あたりの通気流量が同じであれば、短時間で処理物12a中の水分をより多く処理槽10から外へ出すことができる。
吸気口17への熱風ファンの取り付けは、処理物12aが多湿気味になるときに処理物12aの含水率を調整する手段として有効である。
また、排気口18と連通する排気ダクト26内に排気ファン16を設け、かつ吸気口17に熱風ファンを設ける構成にすることでも上記と同様の効果が得られる。
【0020】
このようにして、処理槽10aに投入された廃棄物と処理物12aがまんべんなく混合されて分解処理が始まる。
処理槽10aで分解処理された処理物12aが増えてくると処理槽10内に設けられた仕切り板11a、11bからオーバーフローし処理物12aは処理槽10b、さらに10cに移動する。
そして処理槽10cに処理物12aが蓄積されると、排出口33から処理物12aを回収することができる。本実施例では、仕切り板11により処理槽10を3槽に仕切っているが、2槽あるいは4槽以上に仕切っても良い。
【0021】
さらに、含水率センサー13で測定した結果に応じて撹拌運転時間を制御することも可能である。例えば撹拌の間欠運転時間を通常は、30分周期の間に5分間撹拌していたものを、基材状態が乾燥気味の時は、30分周期の間に2分間攪拌でも必要充分な撹拌時間となることから、基材状態によっては撹拌過多により基材12が破砕されるのを防ぎ、基材12の寿命を伸ばすことができる。
また、含水率センサー13で測定した結果に応じて、撹拌サイクルと排気流量を調整することで、処理物12aの含水率を調整することが可能となる。処理物12aが多湿気味になると、嫌気性の菌が増殖し、硫化水素等を発生し、臭気状態が悪臭となることから、処理物12aの含水率を20%から60%の範囲内に調整することが望ましい。
【0022】
また、水分が多くなると、撹拌に必要なトルクが大きくなり、動力に無理が生じたり、処理物12aが微粉化されているときは、水分を含むと粘土状になる傾向がある。処理物12aが粘土状になると、分解効率が極端に低くなることから、このようなときには、全量または半分以上の処理物12aの交換が必要となる。
また、このときの基材の含水率測定手段である含水率センサー13は、1対の電極を直接処理槽10内の処理物12aに接触させ、1対の電極間に電圧を印加して、処理物12a間を流れる電流を測定し、処理物12aの含水率を測定する抵抗方式であるが、ヒーターとサーミスタを組み合わせた熱容量方式で有っても良い。
【0023】
また、処理物12aは、投入される廃棄物である生ごみの種類により弱アルカリ性や弱酸性に変わることから、抵抗方式における、処理物12aに直接接触する電極を構成する材質は、耐酸性、耐アルカリ性に優れた金属材を使用すると良い。本実施例では、汎用性があり、価格の安いステンレス材のネジを電極として使用している。
また、基材の含水率測定手段はヒーターとサーミスタを組み合わせた熱容量方式で有っても良い。
あるいは、基材の含水率測定手段は処理槽10を加熱する加熱手段としての面状ヒーター9と面状ヒーター9の温度を測定する温度検知センサー(不図示)で構成され、処理槽加熱制御に用いられるものをそのまま使用する構成であっても良い。処理物12aは、含水率が大きい場合、熱伝導性が低下する。熱伝導性が低下した状態で処理槽10内の温度を制御する場合、その所要時間が長くなることから、面状ヒーター9の温度が予め設定された温度閾値に達した後において、面状ヒーター9を作動させたとき或はその作動を停止させたときの、前記温度検知センサーの出力変化から、前記処理物12aの含水状態等を測定することができる。処理槽加熱制御と基材の含水率測定手段を兼ねることで、従来の装置では別途に設けられていた基材の含水率測定手段を設置する必要がなくなり、装置のコストダウンや省スペース化を図ることができる。
【0024】
次に、廃棄物投入が中断したり、投入量が低下したときには、撹拌等によって処理物12aが乾燥しすぎるときがある。このときには、処理物12a中の微生物が乾燥によって活性化が鈍り処理効率が低くなるばかりではなく、処理物12aが微粉化したときには飛散したりして、周囲を汚すという欠点がある。また、このとき微粉末に混入している微生物や菌も飛散することから、安全衛生上好ましくない。
このようなとき、排気口18に設けた除塵フィルタ25により微粉末を外部に出さないようにすることで上記欠点を補うことができる。
【0025】
また、除塵フィルタ25は排気口18に機械的に係合または蝶ネジやパチン錠で固定されていることで、器具を使用しないで人手にて取り外すことができる。除塵フィルタ25を取り外せることで、除塵フィルタ25にとりついた処理物12aの微粉末を容易に清掃することが可能である。
更に、処理槽10から発生する臭気を帯びた空気は、脱臭部27で触媒ヒーター27aにより加熱され、酸化触媒27bを用いて脱臭されて排気ダクト26を通して処理機外へ排気される。
【0026】
以上のような本実施例の廃棄物処理装置において、その特徴的構成であるU字形板36、37、38と仕切り板11および側板14、15の接合方法について説明する。
本実施例では図7に示すように3槽構造の廃棄物処理装置において、1槽目10aのU字形板36の両側には舌状の凸部36a、36bがそれぞれ複数個形成されており、その一方の側の凸部36aは1槽目の側板14に複数個明けられた角穴に差しこまれている。
また、他方の凸部36bは1槽目の仕切り板11aに複数個明けられた角穴に差しこまれている。U字形板の凸部36aおよび36bは、側板14および仕切り板11aの角穴を貫通した外側で溶接されている(図7において、36a、36b矢示のハッチング部)。
この時、側板14および仕切り板11aの角穴は、U字形板36のU字形の曲げ曲率r(本実施例においてはr=270mm)に合わせて複数個明けられており、この角穴にU字形板36の凸部36a、36bを差し込み密着させて溶接することで、自ずとU字形板36と側板14と仕切り板11aの位置決めが可能となり、所定の寸法に精度良く製作できる。
【0027】
次に1槽目より少し小さい曲率r(本実施例では少し小さい曲率r=265mmに設定した場合を説明するが少し大きい曲率r、例えばr=275mmでもよい)で形成された2槽目10bのU字形板37を、上述r=270mmで形成された1槽目のU字形板36が溶接された1槽目仕切り板11aに(あらかじめr=270mmとは別にr=265mmの曲率に沿って角穴が複数個明けられてあるところに)2槽目のU字形板37の凸部37aを差し込み溶接する。さらに反対側の凸部37bに2槽目の仕切り板11bを差し込み密着させて溶接する。
【0028】
同様にして、2槽目より小さい曲率r(本実施例では少し小さい曲率r=260mmに設定した場合を説明するが少し大きい曲率r例えばr=270mmでもよい)で形成された3槽目のU字形板38を、上述r=265mmで形成された2槽目のU字形板37が溶接された2槽目仕切り板11bに(あらかじめr=265mmとは別にr=260mmの曲率に沿って角穴が複数個明けられてあるところに)3槽目のU字形板38の凸部38aを差し込み溶接する。さらに反対側の凸部38bに3槽目の側板15(あらかじめr=260mmの曲率に沿って角穴が複数個明けられてある)を差し込み密着させて溶接する。
【0029】
このように、各側板14、15および仕切り板11a、11bに、あらかじめ所定の曲率rで連なる角穴を複数個明けておき、そしてその角穴にU字形板36、37、38の凸部36a、36b、37a、37b、38a、38bを差し込み溶接することで寸法精度の良い処理槽を製作できる。
一般に薄板(1.2mm〜1.5mm)鋼鈑を比較的大きな曲率r(r=270mm程度)で曲げることは可能であるが、自重で変形すること等があり、その寸法を維持しつつ組立加工(溶接)することは難しい。
しかしながら、本実施例においては、各U字形板36、37、38の両側に形成する、舌状凸部36a〜38bの横方向距離寸法(攪拌軸方向)は比較的容易に寸法精度を出すことができ、また、側板14、15および仕切り板11a、11bに明けられた角穴にU字形板の凸部を差し込み密着させて溶接することで、容易に精度の高い曲率rと横幅寸法を満足する処理槽を製作できる。
【0030】
また、生ごみなどの廃棄物は、それらが投入される1槽目の10aから、攪拌・破砕され、廃棄物の分解と、水分排出が始まる。廃棄物の投入が継続すると1槽目10a中の処理物12a(廃棄物と基材12の混合物)は徐々にオーバーフローして2槽目の10bに移動し、さらに分解と水分排出が進んだ状態で3槽目の10cにオーバーフローして移動する。3槽目10c中でもさらに分解と水分排出が進み処理物12aは細片化され密度の高い処理物12aとなる。
ここで、処理槽の横幅(攪拌軸方向)は、生ごみなどの廃棄物が投入される1槽目10aは広く(本実施例においては397mm)、2槽目と3槽目は狭く(本実施例においては、両方とも150mm)設定している。所定量の廃棄物を投入する1槽目は所定の処理槽容積を確保しなければならないが、2、3槽目の処理槽容積については、廃棄物処理装置としての装置幅を小さくして省設置スペースとするために、横幅を狭くしなければならない。しかし横幅を狭くして槽の容積が小さくなった2、3槽内では、細片化が進み密度の高くなった処理物12aを攪拌する負荷は大きい傾向にある。
【0031】
ここで、各処理槽のU字形板の曲率rは、本実施例では1槽目10aのU字形板36はr=270mm、2槽目10bのU字形板37はr=265mm、3槽目のU字形板38はr=260mmと順次小さくしているが、これら各槽内で回転して処理物を攪拌する攪拌羽根の長さ(攪拌軸6からU字形板方向への突き出し長さ)もU字形板の曲率rが順次小さくなるのに合わせて短くしている。
2槽、3槽と処理槽の横幅が狭くなり、槽の容積が小さくなって、攪拌負荷が上昇する傾向を防止するのに、攪拌羽根の長さを短くすることは有効である。つまり、U字形板の曲率rを順次小さくすることは攪拌負荷を軽減することにおいては良い方法である。
【0032】
本実施例においては、3槽構造を説明したが、4槽構造、5槽構造、それ以上の多槽構造においても同様ににすることで、容易に精度の高い曲率rと横幅寸法を満足する多槽処理槽を製作できる。
また、本実施例においては、順次U字形板の曲率rを小さくした場合で説明したが、これに限らず順次大きくしても(攪拌負荷を軽減する効果は無くなるが、槽の容積が増加する効果が出てくる)、また交互に大きくしたり小さくしてもよい。
また、差し込み溶接部36a〜38bは、攪拌中に発生する処理槽の内側から外側へ掛かる圧力を直角に受ける方向に差し込まれていることから、溶接部に掛かる負荷は少なく、溶接強度が小さくても済むため、薄板鋼板が使用可能となり、重量減、コスト減が可能となる。
【0033】
また、溶接ポイントは、各側板14、15、および各仕切り板11a、11bの角穴に差しこまれた舌状凸部36a〜38bの先端部を溶接することから図7に示す37aと38aの2ヶ所以外の舌状凸部36a、36b、37b、38bの4箇所においては、各処理槽10a、10b、10cの槽外側に溶接部を置くことが可能となり、溶接痕が各処理槽内の処理物12aと接触することがなく、溶接部の腐食(本実施例においては、処理槽の材質はステンレス鋼板を用いているが、ステンレス鋼の場合、溶接により高温なった場所に粒界腐食が発生し易い)から逃れることができる。
【0034】
1槽目10aの槽内の処理物12aが増えてくると1槽目仕切り板11a、からオーバーフローして処理物12aは2槽目処理槽10bに移動する。同様に2槽目処理槽10bに処理物12aが増えてくると2槽目仕切り板11bからオーバーフローして3槽目処理槽10cに処理物12aは移動する。そして処理物12aは3槽目の処理槽10cに蓄積される。この間に各槽を貫通した攪拌軸6に植設された攪拌棒5により処理物12aを攪拌および破砕して廃棄物の分解と水分の排出が行なわれ、減重量、減容量するとともに、乾燥状態になった処理物12aは排出口33から回収する。
【0035】
ここで図2、図3に示すように、1槽目10aの中央部に配置された2本の攪拌棒5の先端にはVの字形に折り曲げた攪拌羽根34a、34bが取り付けてあり、そのV字形の羽根は110°程度の開き角に曲げられており且つその先端も図3に示す如く三角形状に突き出してある。この様な形状にすることにより攪拌軸の正逆両方の回転においても、攪拌羽根34a、34bは処理物12aにクサビ状に切りこんで行くことになり攪拌負荷の軽減効果が得られる。また、攪拌羽根34a、34bの先端とU字形板36の隙間にスプーンや豚骨の様な固くて大きな廃棄物としては異物となる固形物を噛み込む様な状況になってもV字羽根形状によってすくい上げることになり、異物の噛み込みを回避できる。
【0036】
また、1槽目10aのV字羽根34a、34bが配置された攪拌棒5の両隣の側板14および仕切り板11aに近接する攪拌棒5の先端には、山形に折り曲げ且つ、その攪拌軸方向および攪拌軸の周方向に投影した時の形状が概略三角形の形状を有する攪拌羽根35f、35eが設置されている。この様な形状の羽根にすることで、攪拌羽根35fと近接する側板14、および攪拌羽根35eと仕切り板11aおよびU字形板36との関係において上述した様に処理物12aにクサビ状に切りこむことによる攪拌負荷の軽減と異物の噛み込み防止が図られる。同様に2槽目10b、3槽目10cの攪拌棒5の先端にも山形に折り曲げ且つ、その攪拌軸方向に投影した時の形状が概略三角形の形状を有する攪拌羽根を配置する。
【0037】
また、この様なクサビ状の切り込みと、すくい上げの作用は、側板14、15および仕切り板11a、11bおよびU字形板36、37、38にこびりつく処理物12aの掻き落とし作用もある。また異物噛み込みの危険性を回避できることから処理槽10を構成する、側板14、15および仕切り板11a、11bおよびU字形板36、37、38を薄い鋼鈑で作ることが可能となり、攪拌負荷の軽減と合わせもって装置重量の軽減と製造コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例における廃棄物処理装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA視からみた廃棄物処理装置の概略断面図である。
【図3】図1のB視からみた廃棄物処理装置の概略断面図である。
【図4】本発明の実施例における廃棄物処理装置の外装カバー装着時の概略斜視図である。
【図5】本発明の実施例における廃棄物処理装置の側板と仕切り板の位置を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例における廃棄物処理装置の攪拌軸と側板と仕切り板と攪拌棒と攪拌羽根の位置を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例における廃棄物処理装置のU字形板からの舌状凸部と側板および仕切り板の溶接を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1:駆動モーター
2:小スプロケット
3:チェーン
4:大スプロケット
5:撹拌棒
6:撹拌軸
7:撹拌軸を支持する軸受け
8:外装部(枠体)
9:面状ヒーター(過熱手段)
10:処理槽
10a、10b、10c:仕切り板で区画された各槽部
11:仕切り板
12:基材
12a:処理物(廃棄物と基材12の混合物)
13:含水率センサー
14:処理槽側板右(側板)
15:処理槽側板左(側板)
16:排気ファン
17:吸気口
18:排気口
19:投入蓋に取り付けたマグネット
20:投入蓋開閉検知センサー
21:投入蓋
22:投入口
23:制御部
24:通気口
25:除塵フィルタ
26、26a、26b、26c:排気ダクト(管路)
27:脱臭部(脱臭手段)
27a:触媒ヒーター
27b:酸化触媒
28:温度センサー
29:外気取り入れ口
30:循環ダクト
31:気体吸い込み口
32:循環ファン
33:排出口
34:V字型攪拌羽根
35:山形攪拌羽根
36、37、38:U字形板
39:排出トビラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽を構成する断面が略U字形状の板状部材に仕切り板を接合させ、前記処理槽の内部を前記仕切り板で区画することによって複数の槽が形成された廃棄物処理槽と、前記複数の各槽を貫通する攪拌軸に複数の攪拌棒を設けて構成された攪拌手段と、を有する廃棄物処理装置であって、
前記断面が略U字形状の板状部材と前記仕切り板は、これらの接合部において相互に係止し合う係止部を備え、前記複数の槽は前記断面が略U字形状の板状部材を前記係止部で前記仕切り板に係止固定させて構成されていることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記相互に係止し合う係止部は、前記断面が略U字形状の板状部材における前記仕切り板との接合部に形成された舌状の凸部と、前記仕切り板に形成された前記板状部材の舌状の凸部を差し込む穴部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記板状部材と前記仕切り板は、ステンレス鋼で形成され、仕切り板に形成された舌状の凸部を前記仕切り板に形成された穴部に差し込み、該舌状の凸部が該穴部を貫通した外側で溶接することによって、前記板状部材が前記仕切り板に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記仕切り板で区画された複数の槽は、廃棄物を区画された槽の上流側から下流側にオーバーフローさせるように構成され、前記略U字形状の板状部材の曲率が上流側から下流側に行くにしたがって小さく形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記攪拌軸に設けられた複数の攪拌棒の先端には、V字形に曲げた攪拌羽根が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記V字形に曲げた攪拌羽根の先端は、三角形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の廃棄物処理装置。
【請求項7】
前記仕切り板に近接する攪拌棒の先端には、山形に曲げ且つ概略三角形をした攪拌羽根が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−231178(P2006−231178A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48164(P2005−48164)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】