説明

廃棄物分別装置

【課題】 産業廃棄物を風力によって効率良く分別し、産業廃棄物のリサイクルに貢献し、かつ大気汚染の恐れもない廃棄物分別装置を提供する。
【解決手段】 直方体の廃棄物の分別室10の天板の一部にフィルタ17を備えた開口部16を構成し、この開口部16の上部に吸込み用の第1送風機20を備え、前記開口部16の周囲にミスト発生装置18を設けると共に、前記分別室10の底板13を開閉可能に構成する。
前記分別室10の一側面に、先端に吸込部31を備えたダクトホース30によって構成した廃棄物の吸込み装置を構成し、前記吸込部31の先端を廃棄物を運搬する振動篩装置40の表面に配置した廃棄物分別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機の吸引力によって生じる風力を利用して産業廃棄物を効率的に選別する廃棄物分別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋やビル等の構造物を取り壊した際等に発生する混合廃棄物は、石や土、コンクリート、ガラス、木材、廃プラスチック、金属等の雑多なものが異なる大きさで含まれている。このような混合廃棄物の種類や大きさ等に応じて分別するために、風力を利用して重量物と軽量物を分別するようにした風力選別機が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す風力選別機は、混合廃棄物を移送する振動コンベアー(2)と、該振動コンベアーの落下口の下に複数段の送風噴出口(3)を設けてある。また、風力選別した回収資材を収容するコンテナーと前記送風噴出口付近を覆うチャンバー(5)を備え、該チャンバー内を大気圧より僅かに負圧に保つための吸気装置を具備した風力選別機である。
【0004】
前記特許文献1記載の発明によれば、簡単で確実な選別ができ、作業環境も良好で大気汚染の原因にもならず、極力リサイクルを可能にすることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−175683号公報しかし前記発明によれば、振動コンベアーの落下口の下に送風噴出口(3)を設けて、その風力で落下してくる廃棄物を選別するものであるため、廃棄物の量や質によって選別にばらつきがでることがあると共に、装置が大掛かりとなるなどの問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、材質の異なる混合物である産業廃棄物を送風機の吸引力によって生じる風力によって効率良く分別するものであり、空気を吸引するため空気の流れが一方向となり乱流が発生せず分別精度が良くなり、産業廃棄物のリサイクルに貢献し、かつ粉塵も最終段階で集塵して大気汚染の恐れも少ない廃棄物分別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上部に開口部を設けた廃棄物の分別室を構成し、この開口部の上方に吸込み用の第1送風機を設け、前記分別室の側面に廃棄物の吸込み装置を取り付け、前記分別室内部上方で、開口部の下方にミスト発生装置を設け、このミスト発生装置の下方にフィルタを設けると共に、分別室の底板を開閉可能に構成し、前記分別室に隣接して廃棄物を運搬する振動篩装置を配置し、前記廃棄物の吸込み装置の先端を前記振動篩装置の前端に配置した廃棄物分別装置である。
【0008】
本発明は、上部に開口部を設けた廃棄物の分別室を構成し、この開口部の上に吸込み用の第1送風機を設け、その側方に送風用の第2送風機を設け、前記分別室の側面に廃棄物の吸込み装置を取り付け、前記分別室内部上方で、開口部の下方にミスト発生装置を設け、このミスト発生装置の下方にフィルタを設けると共に、分別室の底板を開閉可能に構成し、前記分別室に隣接して廃棄物の運搬装置を配置し、前記廃棄物の吸込み装置の先端と第2送風機の送風装置の先端を廃棄物の運搬装置の表面に配置した廃棄物分別装置。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、廃棄物の分別室の上方に設けた第1送風機と、分別室の側面に設けた廃棄物の吸込み装置によって、振動篩装置によって動摩擦を生じながら運搬されている産業廃棄物を分別室に送り込み効率良く分別し、分別室の底板を開閉可能に構成することで、分別室内の廃棄物を効率よく取り出し、前記開口部の下方に設けたミスト発生装置とフィルタによって、粉塵の外部流出を防ぎ大気汚染の恐れも少ない等の効果を奏する。
【0010】
請求項2の発明によれば、廃棄物の分別室の上方に設けた吸込み用の第1送風機と、送風用の第2送風機と、分別室の側面に設けた廃棄物の吸込み装置によって、運搬装置の上で静止状態で運搬されている産業廃棄物を、送風口から空気を噴出させて動摩擦を生じさせ、かつ前記送風口からの風力より大きな吸引力を有する第1送風機によって、廃棄物を外部に流出することなく分別室に送り込み効率良く分別し、分別室の底板を開閉可能に構成することで、分別室内の廃棄物を効率よく取り出し、前記開口部の下方に設けたミスト発生装置とフィルタによって、粉塵の外部流出を防ぎ大気汚染の恐れも少ない等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の正面図
【図2】本発明の実施例1の平面図
【図3】本発明の実施例1の作動説明図
【図4】本発明の実施例1の分別室の側面図
【図5】本発明の実施例1の分別室の一部省略平面図
【図6】本発明の実施例2の正面図
【図7】本発明の実施例2の平面図
【図8】本発明の実施例2の作動説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
直方体の廃棄物の分別室の天板の一部に開口部を構成し、この開口部の上方の天板上に吸込み用の第1送風機を設置する。そして分別室内の上端で開口部の下方周囲にミスト発生装置を設けると共に、このミスト発生装置下方にフィルタを取り付ける。一方、前記分別室の底板を開閉可能に構成する。
前記分別室の側板に、先端に吸込部を備えたダクトホースからなる廃棄物の吸込み装置を取り付け、前記吸込部の先端を廃棄物運搬用の振動篩装置の前端に配置した廃棄物分別装置である。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1は図1から図5に示すものである。
本実施例は、架台90上に設置した直方体の廃棄物の分別室10と、この分別室10の一側板11aに固定したダクトホース30と、前記分別室10の近傍に設置した廃棄物の運搬手段である振動篩装置40からなる。以下、上記構成を図に基づいて詳しく説明する。
【0014】
前記分別室10の天板12には開口部16を構成する。この開口部16の上部の天板上には吸込み用の第1送風機20を設置する。
そして分別室10内の上端で前記開口部16の下方位置にミスト発生装置18を設ける。さらにこのミスト発生装置18下方にフィルタ17を構成する。このフィルタ17は、開口部16からの微細な粉塵の排出防止用であるため、分別室10の上端面全域にわたって構成されている。
【0015】
前記分別室10の底板であるデッキ13は、側板11bの下端に蝶番14によって開閉自在に取り付けてあり、中央の一側部を外側に延長して突起部13aを構成する。
一方、側板11bの表面には前記デッキ13開閉用のパワーシリンダ15が設けてあり、このパワーシリンダ15の先端を、前記デッキ13の突起部13aに固定してある。
【0016】
廃棄物の吸込み装置は、分別室10の側板11aに一端を固定したダクトホース30と、この他端に設けた吸込部31によって構成され、前記吸込部31の先端を振動篩装置40の前端表面近傍に配置する。
【0017】
前記振動篩装置40は、長尺の篩部42を架台91上にスプリング49を介して前方(図1左方)に向かって低くなるように傾斜して設置し、この篩部42の中央に振動装置44を備えたものである。
そして、前記篩部42の後端にホッパー45を配置し、前端の先端部41には、前記吸込部31の先端が配置されている。
【0018】
上記のように構成した実施例1の作用を説明する。
まず、産業廃棄物100をホッパー45に投入し振動篩装置40の後端に落下させる。その後振動装置44を作動させると、廃棄物は篩部42の傾斜に伴って、篩部42上を前方に向かって移動していく。このとき細かい廃棄物、具体的には20mm程度より小さいものは、篩部42によって落下して堆積物83となる。これは、土、砂としてリサイクルして使用される。
【0019】
一方、分別室10の吸込み用の第1送風機20を作動させることで、ダクトホース30の中には、図1の矢印に示す空気の流れが形成され吸引力が発生する。
これによって、廃棄物100が篩部42の先端部41に到ったときに、ダクトホース30の先端の吸込部31の吸引力によって空気と共に廃棄物のうち軽量物が吸引され、それらはダクトホース30を通って分別室10に送られていく。
ここで軽量物とは、手で拾えないような3mm以下の大きさで比重の小さいもの、例えば、木屑、プラスチックなど可燃性のものを指し、また体積が大きく比重の小さい物も指す。後者は、風量の調整によって吸引できるのである、
【0020】
このとき、篩部42上の廃棄物100は常に振動を与えられているため、篩部42上を滑りながらあるいは転がりながら運ばれていく。そのため廃棄物100には静止摩擦は生ぜず動摩擦が生じ、吸込部31によって容易に吸引できるのである。
この吸引時には、ダクトホース30の吸込部31は側板31a、31b、31c、31dが下方に向かって広がって構成されている。そのため、空気が吸込部31に吸引されていくときに、図3に示すように吸込部31内で渦巻き状の流れとなってスピードを加速させながら上昇していく。
この上昇力によって大量の廃棄物100が迅速にダクトホース30を通って分別室10へ運ばれるのである。
【0021】
一方、篩部42によって運ばれてきた重量物、例えば、瓦礫、陶磁器、金属等は、吸込部31によって吸引されずにそのまま前方に落下して容器82に収容される。
このように廃棄物は、篩部42の先端部41と、ダクトホース30の先端の吸込部31によって、軽量物と重量物とに分別されていく。
【0022】
前記のように、ダクトホース30によって吸引された軽量物は、分別室10へと運ばれていき、フィルタ17によって外部への流出が阻止されて、分別室10内を落下してデッキ13上に溜まっていく。
【0023】
デッキ13上の廃棄物の滞留が一定量、例えば1立米に達したら、パワーシリンダ15を作動して、シリンダを縮短してデッキ13の突起部13aを上昇させて、デッキ13を下方に開くのである(図4仮想線参照)。これによって、デッキ13上の廃棄物は、分別室10の下方に落下し容器81に収容される。
また、デッキ13が下方に開くと、前記第1送風機20は自動的に停止する構成となっている。これによって第1送風機20の吸引力がなくなるため、この吸引力でフィルタ17表面に付着していた軽量の廃棄物は自重で落下していくのである。
このように、デッキ13の開放によって、フィルタ17の目詰まりを自動的に防げるのである。
【0024】
図5に示すように、前記開口部16の周囲にはミスト発生装置18を設ける。このミスト発生装置18は、開口部16の周囲を囲むようにフィルタ17の下部に水平に配置された、一端を閉鎖したコ字型のパイプ18aからなり、このパイプの表面に所定間隔で孔18b,18b・・を穿設してある。
使用に際しては、開放端18cから水道水を、2kg/cm2の圧力で送り込み、孔18b,18b・・から噴出させる。このとき、開口部16には下方から上方へ空気が流れていて、孔18b,18b・・付近では気圧が低くなっているから、水は勢いよく噴出して細かいミスト(霧)となってフィルタ17の表面に満遍なく散布されていくのである。
このミストは、廃棄物に付着して空気と共に外部に放出され、分別室内に水滴となって付着することはない。
【0025】
これによって、フィルタ17を通過した微細な廃棄物つまり粉塵類は、ミストに付着して落下して外部流出が防げるため、大気汚染が防止されるのである。
このように本実施例によれば、風力によって効率的な産業廃棄物の分別が迅速に行えると共に、産業廃棄物のリサイクルに貢献し、かつ大気汚染の恐れもない等の効果を奏するのである。
【実施例2】
【0026】
図6ないし図8は、本発明の実施例2を示している。
本実施例の廃棄物の運搬装置85は、水平なベルトコンベヤ85であり、実施例1のような振動装置は備えていない。そのため、廃棄物100は、ベルトコンベヤ85の表面に面接触した状態で運搬されるため静止摩擦が働いているのである。
実施例2では、手選別を行う水平なベルトコンベヤ85を記載したが、これに限らず、傾斜した搬送用のベルトコンベヤも、本発明に含まれるものとする。
【0027】
また、本実施例の廃棄物の吸込み装置は、先端に吸込部71を備えたダクトホース70と、第2送風機75のダクトホース76からなる。そして前記吸込部71の先端を運搬装置のベルトコンベヤ85の表面近傍に配置すると共に、前記第2送風機75のダクトホース76先端の送風口78を前記吸込部71の側方に配置している。
他の構成要素は、実施例1と同様であるので、同一の番号を付して説明を省略する。
【0028】
上記のように構成した実施例2の作用を説明する。
図6に示すように、産業廃棄物100をベルトコンベヤ85後端に投入して、ベルトコンベヤ85を作動させると、廃棄物100はベルトコンベヤ85上で静止状態で、前方矢印方向に進んでいく。
【0029】
これと同時に前記第2送風機75を作動して、ダクトホース76先端の送風口78からベルトコンベヤ85の表面に空気を吹きつけて、静止状態の廃棄物100を強制的に動かす。
【0030】
これと同時に、前記第1送風機20を作動して、ダクトホース70の先端の吸込部71より空気を吸引する。これによって、前記第2送風機75の送風口78から噴出した空気は、ベルトコンベヤ85の表面に衝突して廃棄物100を移動させてから、吸込部71によって吸引されダクトホース70内を通って分別室10に流れていく。
このとき、前記送風口78から噴出される風力より、吸込部71の吸引力の方が大きく、かつ送風口78からの風力が吸込部71の吸引力を助長して大きな吸引力が得られるのである。
そのため、廃棄物100は外部に流出することなくすべて分別室10に送り込まれるのである。
【0031】
この状態を図8に基づいて説明すると、ダクトホース70の吸込部71は側板71a、71b、71c、71dが下方に向かって広がって構成されている。そのため、送風口78から噴出した空気は、ベルトコンベヤ85の表面に衝突してから吸込部71に吸引されていくときに、吸込部71内で渦巻き状の流れとなってスピードを加速させながら上昇していく。
この上昇力によって大量の廃棄物100が迅速にダクトホース70を通って分別室10へ運ばれるのである。
分別室10へ運ばれた後の作用、効果は、前記実施例1と同様のため省略する。
【0032】
このように実施例2によれば、廃棄物100がベルトコンベヤ85の表面に面接触していて静止摩擦が働いている状態で運搬されている場合、送風口78から空気を噴出させることによって、廃棄物100を吹き上げて動摩擦を生じさせ、吸込部71によって速やかに吸引することができるのである。
【符号の説明】
【0033】
10 廃棄物の分別室
12 天板
13 デッキ(底板)
14 蝶番
15 パワーシリンダ
16 開口部
17 フィルタ
18 ミスト発生装置
20 第1送風機
30 ダクトホース(廃棄物の吸込み装置)
31 吸込部
40 振動篩装置
41 先端部
42 篩部
44 振動装置
49 スプリング
70 ダクトホース
71 吸込部
75 第2送風機
76 ダクトホース(送風装置)
78 送風口
85 ベルトコンベヤ(廃棄物の運搬装置)
100 廃棄物(産業廃棄物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を設けた廃棄物の分別室を構成し、この開口部の上方に吸込み用の第1送風機を設け、前記分別室の側面に廃棄物の吸込み装置を取り付け、
前記分別室内部上方で、開口部の下方にミスト発生装置を設け、このミスト発生装置の下方にフィルタを設けると共に、分別室の底板を開閉可能に構成し、
前記分別室に隣接して廃棄物を運搬する振動篩装置を配置し、
前記廃棄物の吸込み装置の先端を前記振動篩装置の前端に配置した廃棄物分別装置。
【請求項2】
上部に開口部を設けた廃棄物の分別室を構成し、この開口部の上に吸込み用の第1送風機を設け、その側方に送風用の第2送風機を設け、前記分別室の側面に廃棄物の吸込み装置を取り付け、
前記分別室内部上方で、開口部の下方にミスト発生装置を設け、このミスト発生装置の下方にフィルタを設けると共に、分別室の底板を開閉可能に構成し、
前記分別室に隣接して廃棄物の運搬装置を配置し、
前記廃棄物の吸込み装置の先端と第2送風機の送風装置の先端を廃棄物の運搬装置の表面に配置した廃棄物分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−120986(P2011−120986A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279666(P2009−279666)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(502048324)
【Fターム(参考)】