説明

廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法

【課題】可燃性ダストの急変に対し、遅れることなく燃焼室に適切な燃焼空気を供給することができる廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法を提供すること。
【解決手段】廃棄物溶融炉1で発生する可燃性ダストを含有する可燃性ガスを、燃焼空気により燃焼させる廃棄物溶融処理設備の燃焼室3の燃焼制御方法において、廃棄物溶融炉1の炉頂圧力及び炉内差圧の変化率に応じて、燃焼室3に吹き込む燃焼空気量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物、産業廃棄物等の廃棄物を廃棄物溶融炉で処理する際に発生する可燃性ガス及び可燃性ダストを燃焼させる廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物溶融炉で発生する可燃性ダストを含有する可燃性ガスは、除塵器で可燃性ダストを捕集し、この可燃性ダストを可燃性ガスと共に燃焼室へ供給し、燃焼空気により燃焼させている。
【0003】
したがって、燃焼室には可燃性ガス及び可燃性ダストを完全燃焼させるのに必要な量の燃焼空気を吹き込む必要があるが、通常、廃棄物溶融炉より排出される可燃性ガス及び可燃性ダストの量は、一定しておらず時々刻々と変化することから、これらの変化に応じて燃焼空気量を制御する必要がある。とくに、可燃性ダストの発生量は、廃棄物溶融炉の炉況により急変することがあることから、廃棄物溶融炉の炉況変化に伴う可燃性ダストの急変にも対応できるようにする必要がある。
【0004】
このような可燃性ダストの急変にも対応できる燃焼室の燃焼制御方法として、特許文献1には、燃焼室に、燃焼室内の温度を光によって検出する放射温度計を設け、この放射温度計の温度検出センサ出力の変化率に応じて、燃焼室に吹き込む燃焼空気量を変化させる方法が開示されている。すなわち、この特許文献1の方法は、燃焼炉内の温度変化を光として検出し、その変化量の瞬時値を用いて燃焼空気量を変化させることにより、可燃性ダストの急変に対する追従性を向上させるようにしたものである。
【0005】
しかし、特許文献1の方法において、可燃性ダストの急変の指標とする放射温度計の温度検出センサ出力は、あくまで燃焼室の温度変化を捉えたものであり、その対応も燃焼室の温度に変化が生じてからの対応となるので、可燃性ダストの急変に対する追従性は十分とはいえない。すなわち、燃焼室での可燃性ダストの滞留時間は、通常数秒という短時間であるので、可燃性ダストが急増した場合に、その可燃性ダストの燃焼によって燃焼室の温度が上昇してから燃焼空気量を増加させても、数秒という短時間で急増した可燃性ダストを完全燃焼させることは困難な場合がある。
【特許文献1】特開2005−147472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、可燃性ダストの急変に対し、遅れることなく燃焼室に適切な燃焼空気を供給することができる廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、可燃性ダストの急変が廃棄物溶融炉の炉況の変化に起因するものであることに着目し、廃棄物溶融炉の炉況を示すプロセス値、具体的には廃棄物溶融炉の炉頂圧力及び炉内差圧を可燃性ダストの急変の指標とし、これらのプロセス値の変化率に応じて、燃焼室に吹き込む燃焼空気量を変化させるようにしたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、廃棄物溶融炉で発生する可燃性ダストを含有する可燃性ガスを、燃焼空気により燃焼させる廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法において、廃棄物溶融炉の炉頂圧力及び炉内差圧の変化率に応じて、燃焼室に吹き込む燃焼空気量を変化させることを特徴とするものである。
【0009】
このように、燃焼室の前段の廃棄物溶融炉のプロセス値を指標として制御を行うことで、ダストの急変を早期に察知できると共に、可燃性ダストの急変に対し、遅れることなく燃焼室に適切な燃焼空気を供給することができる。
【0010】
ただし、とくに燃焼空気量を増加させる場合、燃焼室の下流側の誘引通風機による誘引ガス量が一定のままでは、十分な吹き込み量を確保できない場合がある。したがって本発明においては、燃焼室に吹き込む燃焼空気量の変化量に見合うように、燃焼室の下流に配置された誘引通風機による誘引ガス量を変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可燃性ダストの急変に対し、遅れることなく燃焼室に適切な燃焼空気を供給することができ、燃焼室の安定操業ひいては廃棄物溶融処理設備の安定操業に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用した廃棄物溶融処理設備の構成図である。同図に示す廃棄物溶融処理設備では、シャフト炉式の廃棄物溶融炉1で廃棄物を熱分解、燃焼及び溶融し、これによって発生した可燃性ダストを含有する可燃性ガスについては、サイクロン等の除塵器2で可燃性ダストを捕集するが、捕集されなかった可燃性ダストと可燃性ガスは、燃焼室3で燃焼空気により燃焼させている。燃焼空気は燃焼空気送風機4によって燃焼室3に吹き込まれる。
【0014】
燃焼室3で発生した高温の燃焼排ガスは、ボイラ5で熱交換された後、さらに排ガス温度調節器6で所定の温度まで冷却される。その後、ろ過式集塵器7で除塵され、誘引通風機8を経て煙突9から放散される。
【0015】
このような設備構成において、本発明では、可燃性ダストの急変に対し、遅れることなく燃焼室3に適切な燃焼空気を供給するために、廃棄物溶融炉1の炉頂圧力及び炉内差圧の変化率に応じて、燃焼室3に吹き込む燃焼空気量を変化させる制御を行う。
【0016】
具体的には、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10において、廃棄物溶融炉1の炉頂圧力センサ11及び炉内差圧センサ12からのセンサ出力の変化率に応じて、燃焼室3に吹き込む燃焼空気量の変化量(加算量又は減算量)を演算し、この変化量を加算器13によって現在の燃焼空気量に加算し、燃焼室3に吹き込むべき燃焼空気量を求め、燃焼空気送風機の流量調節弁4aの開度を調節する。
【0017】
また、本実施例では、上述の炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10に加え、燃焼室3内の温度を光によって検出する放射温度計14のセンサ出力の変化率に応じて、燃焼室3に吹き込む燃焼空気量の変化量を演算する放射温度計制御演算手段15を設けている。これらの炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10及び放射温度計制御演算手段15は、それぞれ入力されるセンサ出力の変化率が所定レベル以上になった場合に作動するが、実施例では切替器16を設け、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10及び放射温度計制御演算手段15の両方が作動した場合は、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10からの信号を加算器13に送信するようにしている。
【0018】
すなわち、可燃性ダストの急変は、廃棄物溶融炉1の炉況の変化に起因することから、可燃性ダストが急変する場合は、廃棄物溶融炉1のプロセス値(炉頂圧力及び炉内差圧)を入力信号とする炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10の方が先に作動し、その後、燃焼室3の温度に変化が現れて放射温度計制御演算手段15が作動する。炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10が作動中に、放射温度計制御演算手段15が作動する条件を満たす場合は、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10の作動中及び作動後タイマー間(約1秒間)は、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10の作動を優先する。
【0019】
このように、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10は、可燃性ダストの急変を、その影響が燃焼室3に現れる前の段階で捉えて、フィードフォワード的な制御により燃焼空気量を変化させるもので、これによって可燃性ダストの急変に対し、遅れることなく燃焼室に適切な燃焼空気を供給することができる。
【0020】
また、本実施例では、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10又は放射温度計制御演算手段15による燃焼空気の変化量に見合うように、誘引通風機8の誘引ガス量を変化させるようにしている。具体的には、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10又は放射温度計制御演算手段15からの燃焼空気の変化量に見合うように、誘引通風機8のサクションダンパ8aの開度を調節する。
【0021】
なお、この誘引通風機8の誘引ガス量を変化させる制御系統にも切替器17を設け、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10が作動中に、放射温度計制御演算手段15が作動する条件を満たす場合は、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10の作動中及び作動後タイマー間(約1秒間)は、炉頂圧力・炉内差圧制御演算手段10の作動を優先するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した廃棄物溶融処理設備の構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 廃棄物溶融炉
2 除塵器
3 燃焼室
4 燃焼空気送風機
4a 流量調節弁
5 ボイラ
6 排ガス温度調節器
7 ろ過式集塵器
8 誘引通風機
8a サクションダンパ
9 煙突
10 炉頂圧力・炉内圧力制御演算手段
11 炉頂圧力センサ
12 炉内差圧センサ
13 加算器
14 放射温度計
15 放射温度計制御演算手段
16、17 切替器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物溶融炉で発生する可燃性ダストを含有する可燃性ガスを、燃焼空気により燃焼させる廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法において、
廃棄物溶融炉の炉頂圧力及び炉内差圧の変化率に応じて、燃焼室に吹き込む燃焼空気量を変化させることを特徴とする廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法。
【請求項2】
燃焼室に吹き込む燃焼空気量の変化量に見合うように、燃焼室の下流に配置された誘引通風機による誘引ガス量を変化させる請求項1に記載の廃棄物溶融処理設備の燃焼室の燃焼制御方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−133660(P2010−133660A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311157(P2008−311157)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】