説明

廃棄物由来着色骨材の製造方法

【課題】廃棄物から生じる骨材の製品化収率を向上させ、その用途の拡大を図ること。また廃棄物の再利用により、廃棄物問題の解消に寄与すること。
【解決手段】原料を水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との前処理剤で前処理し、次いで着色剤を添加し、所定の加熱温度及び所定の加熱時間にて処理する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却灰から生じる溶融スラグといった一般廃棄物、あるいは鉄鋼製造
過程において生じるスラグといった産業廃棄物の処理に関し、これら溶融スラグ又はスラ
グを原料とする着色骨材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ焼却灰から生じる溶融スラグあるいは鉄鋼製造過程において生じるスラグを
原料とする骨材は、着色処理に用いる顔料が酸化チタンであることから、単色にしか着色することができなかった。
【0003】
他の着色原料として、硅砂、マイカ、寒水石、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アロフェン、カオリン、タルク、モンモリロナイト、バーミキュライト、パーライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、珪藻土、ポリエチレン樹脂ビーズ、ポリメタクリル酸メチル樹脂ビーズを用いる方法があるが、これらはいずれも自然から採取するため自然破壊につながり、また粉砕において粉塵が発生することにより作業環境の悪化をもたらす。
【0004】
自然破壊と作業環境の悪化という点では酸化チタンを用いる方法も同様である。
【特許文献1】特開2004−155815
【特許文献2】特開2004−149776
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような背景技術を鑑みてなされたものであって、着色される骨材の着色自由度を拡大すること、廃棄物から生じる骨材の製品化収率を向上させること、及び/又は、廃棄物から生じる骨材の用途の拡大を図ることを目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は、廃棄物の再利用により、廃棄物問題の解消に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、長年、着色骨材についての研究開発に従事しており、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)を、例えば、粒径(直径)が、5nm以上100nm以下の範囲内にあるシリカを分散させた水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との前処理剤(混合液)で前処理した後に、着色剤を添加し、所定の加熱温度、及び所定の加熱時間にて処理するようにすれば、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)の表面と着色剤との接着性が劇的に改善され、均一に染着された着色スラグを得ることができる、ということを、実験により知見するに至り、その後、鋭意努力した結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、請求項1に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、原料を水性コロイダルシリカ分散液とアルコキシシラン化合物との前処理剤(混合液)で前処理し、次いで着色剤を添加し、所定の加熱温度、及び所定の加熱時間にて処理する工程を備える。
【0009】
アルコキシシラン化合物としては、水溶性のジアルコキシシラン又はトリアルコキシシランを用いるができる。
【0010】
より具体的に説明すると、アルコキシシラン化合物としては、特に以下の場合に限定されることは無いが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン・N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリトキシシラン・3−グリシドキシプロピルメチル ジメトキシシランをその好ましい例として挙げることができる。
【0011】
請求項2に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、水性コロイダルシリカ分散液中のシリカの粒径が、5nm以上100nm以下の範囲内である。
【0012】
水性コロイダルシリカ分散液中のシリカの粒径は、5nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましく、また、10nm以上50nm以下の範囲のものが更に好ましい。
【0013】
通常は、水性コロイダルシリカ分散液は、市販されているものをそのまま使用することができる。
【0014】
尚、水性コロイダルシリカ分散液中のシリカの粒径が、5nm未満の場合には、着色剤との接着性が低下し、また、100nmを超える大粒径のものを使用すると、着色剤の染着性が低下し着色効果が劣るようになる。
【0015】
請求項3に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、原料が、溶融スラグを含む。
【0016】
請求項4に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、原料が、スラグを含む。
【0017】
請求項5に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、着色剤が、接着剤を含む。
【0018】
請求項6に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項5に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、接着剤が、溶剤樹脂系接着剤を含む。
【0019】
請求項7に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項5に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、接着剤が、水性樹脂系接着剤を含む。
【0020】
請求項8に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1〜7のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、着色剤が、有機質顔料を含む。
【0021】
請求項9に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1〜8のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法で用いる、着色剤が、無機質顔料を含む。
【0022】
請求項10に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1〜9のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法の、所定の加熱温度が、約20℃以上約300℃以下である。
【0023】
請求項11に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法は、請求項1〜10のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法の、所定の加熱時間が、約3秒を超え約60分以下である。
【0024】
実験結果に基づけば、より具体的には、請求項1〜10のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法の、所定の加熱時間が、約30秒以上約60分以下であり、より確かには、約1分以上約60分以下である。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)を、例えば、粒径(直径)が、5nm以上100nm以下の範囲内にあるシリカを分散させた水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との前処理剤(混合液)で前処理した後に、着色剤を添加し、所定の加熱温度、及び所定の加熱時間にて処理するようにしている。
【0026】
即ち、本発明では、粒径(直径)が、5nm以上100nm以下の範囲内にあるシリカ微粒子が、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)の表面に被覆され、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)の表面が、均一で、微細な凹凸構造を形成するという物理的効果と、シリカ粒子表面を覆う水酸基(Si−OH)による化学的な相互作用力と、シリカ粒子表面を覆う水酸基(Si−OH)とアルコキシシラン化合物とがキレート結合を生成することとの協働により、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)への着色剤の着色が強固になり、退色し難い、という特有の効果を奏する、と考えられる。
【0027】
且つ、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法を用いれば、着色自由度が拡大するので、種々の色彩を有する廃棄物由来着色骨材を製造することができる。
【0028】
のみならず、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法は、原料として、例えば、スラグ又は溶融スラグといった廃棄物を用いて、付加価値の高い、廃棄物由来着色骨材を製造することができるので、廃棄物の回収率を向上させることができ、また、廃棄物由来着色骨材としての、スラグ又は溶融スラグといった廃棄物の用途の拡大が図れる。
【0029】
更に、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法を用いれば、種々の色彩を有する廃棄物由来着色骨材を製造することができるので、廃棄物由来着色骨材自体の用途の拡大を図ることができる。
【0030】
また、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法では、原料として、例えば、スラグ及び/又は溶融スラグといった廃棄物の再利用ができるので、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法は、廃棄物問題の解消に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法の一例を図面を参照しながら更に詳しく説明する。
【0032】
本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法は、原料を水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との混合液で前処理し、次いで着色剤を添加し、所定の加熱温度、及び所定の加熱時間にて処理する工程を備える。
【0033】
原料は、ごみ焼却灰等の一般廃棄物から生じる溶融スラグであってもよく、産業廃棄物、例えば、鉄鋼製造過程におけて生じるスラグであってもよく、又、これらの双方であってもよい。
【0034】
また、水性コロイダルシリカ分散液中のシリカの粒径は、5nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましく、また、10nm以上50nm以下の範囲のものが更に好ましい。
【0035】
通常は、水性コロイダルシリカ分散液は、市販されているものをそのまま使用することができる。
【0036】
尚、水性コロイダルシリカ分散液中のシリカの粒径が、5nm未満の場合には、着色剤との接着性が低下し、また、100nmを超える大粒径のものを使用すると、着色剤の染着性が低下し着色効果が劣るようになる。
【0037】
アルコキシシラン化合物としては、特に以下の場合に限定されることはないが、例えば、水溶性のジアルコキシシラン又はトリアルコキシシランを用いるができる。
【0038】
より具体的に説明すると、アルコキシシラン化合物としては、特に以下の場合に限定されることは無いが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランをその好ましい例として挙げることができる。
【0039】
着色剤は、有機質顔料及び/又は無機質顔料を含む。
【0040】
有機質顔料としては、特に以下の場合に限定されることは無いが、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピール系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料等を挙げることができる。
【0041】
また、無機顔料としては、特に以下の場合に限定されることは無いが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、赤色酸化鉄(弁柄)、カーボンブラック、酸化クロム、モリブデンレッド、コバルトブルー、マンガンバイオレット、紺青、群青等を挙げることができる。
【0042】
また、着色剤には、接着剤を含有するようにすることが、望ましい。
【0043】
接着剤としては、溶剤樹脂系接着剤であってもよく、水性樹脂系接着剤であってもよい。
溶剤樹脂系接着剤としては、特に以下の場合に限定されることは無いが、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂,ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0044】
水性樹脂系接着剤としては、特に以下の場合に限定されることは無いが、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0045】
所定の加熱温度は、後述の理由により、約20℃以上約300℃以下にすることが好ましく、約20℃以上約180℃以下にすることがより好ましい。
【0046】
所定の加熱時間は、後述の理由により、約3秒を越え、60分以下にすることが好ましく、約3秒を超え、30分以下にすることがより好ましい。
【0047】
次に、図1を参照しながら、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法の一例の反応工程を説明する。
【0048】
まず、原料として、例えば、スラグ及び/又は溶融スラグを用いる。
【0049】
これに、水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との混合液(前処理剤)を混合する。
【0050】
次いで、この状態で着色剤が添加される。
【0051】
水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との混合液(前処理剤)を混合すると、アルコキシシラン化合物が、原料(この例では、スラグ、溶融スラグ)及びコロイダルシリカ表面に作用して活性化せしめる何らかの機構が存在するであろうと推定され、シリカ粒子表面やスラグ粉末面の水酸基とアルコキシシラン化合物がキレート結合を生成する、と考えられる。
【0052】
そして、シリカ粒子表面やスラグ粉末面の水酸基とアルコキシシラン化合物がキレート結合が生成されることと、水性コロイダルシリカ分散液として、粒径(直径)が、5nm以上100nm以下の範囲内にあるシリカ微粒子が分散した、水性コロイダルシリカ分散液場合には、原料(この例では、スラグ、溶融スラグ)の表面に、5nm以上100nm以下の範囲内にあるシリカ微粒子被覆され、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)の表面が、均一で、微細な凹凸構造を形成するという物理的効果と、シリカ粒子表面を覆う水酸基(Si−OH)による化学的な相互作用力との協働により、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)への着色剤の着色が強固になり、退色し難い、という特有の効果を奏する、と考えられる。
【0053】
この結果、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法を用いれば、原料への着色剤の着色が強固になり退色し難くなるとともに、着色自由度が拡大する。
【0054】
図2に、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法に従って製造した廃棄物由来着色骨材(以下、「本発明実施品」という。)と、従来品との、退色性の比較試験の結果を示す。
【0055】
従来品は、スラグに着色原料を混合して着色したものである。
【0056】
図2から明らかなように、本発明実施品は、従来品に比し、3000時間後の色差において、約3倍の耐色性がある、ということが明らかになった。
【0057】
即ち、本発明実施品1は、従来品に比べ、耐久性が、より優れている、という効果がある。
【0058】
また、図3に、本発明実施品と、従来品との、隠蔽率の比較試験の結果を示す。
【0059】
ここで、供試片1は、本発明実施品であり、原料が、スラグである。
【0060】
一方、供試片2、供試片3及び供試片4は、比較例であり、順に、原料として、[寒水石]、[珪砂]、[砕石]を用いている。
【0061】
また、供試片1、供試片2、供試片3及び供試片4の各々では、いずれも着色剤の原料として、カーボンブラックを使用し、また、接着剤として、水性アクリルを使用している。
【0062】
図3の結果から、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法に従って、原料の表面を水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との前処理剤(混合液)を用いて、表面処理をした場合は、原料が、スラグであっても、着色効果の点において、従来の原料である、[寒水石]、[珪砂]、[砕石]と実質上同一である、ということが明らかになった。
【0063】
即ち、本発明では、粒径(直径)が、5nm以上100nm以下の範囲内にあるシリカ微粒子が、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)の表面に被覆され、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)の表面が、均一で、微細な凹凸構造を形成するという物理的効果と、シリカ粒子表面を覆う水酸基(Si−OH)による化学的な相互作用力と、シリカ粒子表面を覆う水酸基(Si−OH)とアルコキシシラン化合物とがキレート結合を生成することとの協働により、原料(例えば、スラグ、溶融スラグ)への着色剤の着色が強固になり、退色し難い、という特有の効果を奏する、と考えられる。
【0064】
又、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法を用いれ、ば、廃棄物由来の原料(例えば、スラグや、溶融スラグ)であっても、着色することができ、しかも、その着色は、エーテル結合[−O−]により強固なものであるから、着色自由度が、例えば、白色、黒色、赤色、黄色、青色、緑色等に拡大される。
【0065】
また、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法を用いれば、原料表面への着色剤の着色むらが皆無に近くなり、製品化収率を向上させるので、廃棄物から生じる骨材の用途の拡大を図ることができる。
【0066】
更に、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法では、原料として、例えば、スラグや、溶融スラグといった、廃棄物を再利用できるので、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法は、廃棄物問題の解消に寄与することができる。
【実施例1】
【0067】
原料として、スラグ、溶融スラグを用いた。
【0068】
この溶融スラグの成分は、SiOが30重量%以上40重量%以下の範囲、Alが10重量%以上20重量%以下の範囲、CaOが20重量%以上30重量%以下の範囲、Feが10重量%以上20重量%以下の範囲、NaOが1重量%以上5重量%以下、MgOが1重量%以上5重量%以下の範囲、KOが1重量%以上5重量%以下の範囲、及び、その他の成分が1重量%以上5重量%以下の範囲であった。
【0069】
次に、この原料に、まず、水性コロイダルシリカ分散液(水性コロイダルシリカ分散液として、水性コロイダルシリカ分散液中に分散しているシリカの粒径が、10nm以上20nmの範囲内にあるものを用いた。)と、アルコキシシラン化合物との混合液(前処理剤)を混合し、次いで、着色剤(この例では、白色酸化チタン顔料と水性アクリル樹脂とを用いた。白色酸化チタン顔料と水性アクリル樹脂の配合割合は、重量比では、白色酸化チタン顔料:水性アクリル樹脂は、1:9としたものを用いた)を添加した。
【0070】
この例では、アルコキシシラン化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
【0071】
各材の構成比は、原料(この例では、溶融スラグ)が87重量部に対し、水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との混合液(前処理剤)が13.2重量部、また、着色剤が10重量部であった。
【0072】
また、各試料の、水性コロイダルシリカ分散液の濃度、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの濃度を、表1中に示す。
【0073】
次に、この材料について、原料(この例では、スラグ、溶融スラグ)に対する着色剤(この例では、白色酸化チタン顔料と水性アクリル樹脂とを用いた。白色酸化チタン顔料と水性アクリル樹脂の配合割合は、重量比では、白色酸化チタン顔料:水性アクリル樹脂は、1:9としたものを用いた)の着色効果を試験した。
【0074】
【表1】

表1中、「○」は、着色効果が有ること(「有」)を、また、「×」は、着色効果が無いこと(「無」)を示す。
「着色効果」は、温水試験を行うことにより原料表面の造膜の有無を評価した。
温水試験は、試料を投入し、水を入れた試験管を、沸騰水中に、10分間入れて、原料表面の着色造膜を剥離するか否かをみた。
【0075】
表1の結果から、原料(この例では、溶融スラグ)に対して、シリカ固形分が、1重量%以上5重量%以下の範囲にある場合に、着色効果が「有り」に、又、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、シリカ固形分に対して、0.3重量%以上10重量%以下の範囲にある場合に、着色効果が「有り」となることが、明らかになった。
【0076】
次に、原料(この例では、溶融スラグ)に対して、シリカ固形分が、1重量%以上5重量%以下の範囲にあり、又、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、シリカ固形分に対して、0.3重量%以上10重量%以下の範囲にある試料を用い、表2に示す条件(加熱時間、加熱温度)にて、試験した。
【0077】
【表2】

表2中、「○」は、着色効果が有ること(「有」)を、また、「×」は、着色効果が無いこと(「無」)を示す。
「着色効果」は、温水試験を行うことにより原料表面の造膜の有無を評価した。
温水試験は、試料を投入し、水を入れた試験管を、沸騰水中に、10分間入れて、原料表面の着色造膜を剥離するか否かをみた。
【0078】
また、表2中、「A」は接着剤が水性エポキシ樹脂であり、「B」は接着剤がウレタン樹脂であり、「C」は接着剤がアクリル樹脂であり、また、「D」は接着剤が酢酸ビニル樹脂の場合を示している。
【0079】
表2の結果から、加熱時間が1分のときは、加熱温度が70℃以上180℃以下の温度範囲において、着色効果が「有」であり、加熱時間が5分のときは、加熱温度が60℃以上180℃以下の温度範囲において、着色効果が「有」であり、加熱時間が10分のときは、加熱温度が50℃以上180℃以下の温度範囲において、着色効果が「有」であり、加熱時間が15分のときは、加熱温度が50℃以上180℃以下の温度範囲において、着色効果が「有」であり、加熱時間が20分のときは、加熱温度が40℃以上180℃以下の温度範囲において、着色効果が「有」であり、加熱時間が25分のときは、加熱温度が30℃以上180℃以下の温度範囲において、着色効果が「有」であり、また、加熱時間が30分のときは、加熱温度が20℃以上180℃以下の温度範囲において、着色効果が「有」となる、ということが、明らかになった。尚、実験により、原料に前処理剤を混合した後、約50℃以上90℃以下の温度で、約1分間以上15分以下の間、加熱処理を行った後、着色剤を添加し、その後、約20℃以上約300℃以下の温度範囲で、約3秒を越え60分間以下の加熱処理を行った場合も、着色効果が「有」となる、ということが、明らかになった。
【0080】
表2の結果からは、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法の、所定の加熱時間は、約3秒を超え約60分以下である。
【0081】
実験結果に基づけば、より具体的には、本発明に係る廃棄物由来着色骨材の製造方法の、所定の加熱時間は、約30秒以上約60分以下であり、より確かには、約1分以上約60分以下である。
【0082】
尚、上記した発明の実施の形態は、いずれも、本発明を説明するために用いたものであって、本発明は、上記した発明の実施の形態に限定されないことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本願発明は廃棄物処理乃至廃棄物の再利用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本願発明にかかる廃棄物由来着色骨材の製造方法の着色のメカニズムを説明する反応工程図である。
【図2】本願発明にかかる廃棄物由来着色骨材と従来品とによる退色性の比較試験を示す図である。
【図3】本願発明にかかる廃棄物由来着色骨材と従来品とによる隠蔽率の退色性の比較試験を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を水性コロイダルシリカ分散液と、アルコキシシラン化合物との前処理剤で前処理し、次いで着色剤を添加し、所定の加熱温度及び所定の加熱時間にて処理する工程を備える、廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項2】
前記水性コロイダルシリカ分散液中のシリカの粒径が、5nm以上100nm以下の範囲内である、請求項2に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項3】
前記原料が、溶融スラグを含む、請求項1又は請求項2に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項4】
前記原料が、スラグを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項5】
前記着色剤が、接着剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤が、溶剤樹脂系接着剤を含む、請求項5に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤が、水性樹脂系接着剤を含む、請求項5に記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項8】
前記着色剤が、有機質顔料を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項9】
前記着色剤が、無機質顔料を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項10】
前記所定の加熱温度が、約20℃以上約300℃以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。
【請求項11】
前記所定の加熱時間が、約3秒を超え約60分以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の廃棄物由来着色骨材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−182639(P2006−182639A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340741(P2005−340741)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(303048411)
【Fターム(参考)】