説明

廃棄物被覆シート

【課題】本発明は、廃棄物の埋立容量の減少を抑制でき、廃棄物を簡易に覆うことができる廃棄物被覆シートを提供することを目的とする。
【解決する手段】本発明の代表的な構成は、廃棄物処分場で堆積した廃棄物を被覆する廃棄物被覆シートにおいて、厚さ0.4mm以上2.0mm以下、吸水倍率5倍以上30倍以下、縦方向および横方向の伸度がいずれも40%以上の織布または不織布からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場において、廃棄物の飛散・流出防止、悪臭の発生、衛生害虫の忌避や繁殖防止のために、廃棄物の上を覆う土に変えて使用する廃棄物被覆シートに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場は地表を適度な深さに掘り下げて形成されており、その底から順に廃棄物を埋め立てるようになっている。この廃棄物の飛散・流出防止、悪臭の拡散防止、衛生害虫の繁殖防止をするために、日々の埋め立て作業終了後、廃棄物の上を30〜50cm程度の厚みの土で覆っている。
【0003】
しかし、廃棄物を土で覆うことは、多くの問題を抱えている。1つには、廃棄物処分場の埋立容量の問題がある。覆土層は廃棄物容積の20〜25%に達することになり、その分の廃棄物の埋立容量が制限されていることになる。これは、廃棄物処分場の用地確保がますます困難になる現況においては問題である。
【0004】
また、覆土の確保やその運搬に関しても問題がある。廃棄物を覆土するために多量の土を必要とし、その土の確保もますます困難になって来ているとともに、土の置場を確保することも問題である。
【0005】
また、覆土が風等により舞い上がり、あたかも廃棄物の焼却物が飛散している疑いが持たれるという問題もある。さらに図2に示すように、廃棄物2は平面部と斜面部を有しており、斜面部を覆土することは非常に困難である。また、平面部のみの場合に比べて、より多量の土が必要になるとともに、雨水等により斜面部の覆土3が流出し、廃棄物2が剥き出しになり、降雨の度に再度覆土する手間を要するという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するものとして、特許文献1、2、3に開示される技術がある。
【0007】
特許文献1には、廃棄物を堆積した後、この廃棄物堆積層の上に生分解性材で形成した覆層を設ける廃棄物処分場が記載されている。覆層としては、澱粉や膠等を主体とした増膜性の材料を廃棄物堆積層の上に散布機などで散布して形成した覆層が記載されている。
【0008】
特許文献2には、不織布または織編物からなる覆土代替材が開示されている。
【0009】
特許文献3には、雨水防止性、ガス透過性、生分解性を有する合成高分子製の不織布シートからなる廃棄物被覆シートが開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平11−28434号公報
【特許文献2】特開2003−103230号公報
【特許文献3】実開平7−21793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の覆層は、廃棄物堆積層の表層が平滑、均質なものでないため、欠陥が出やすく、完全に表面を覆うことが困難である。また、欠陥を減らすためには、比較的厚い覆層を形成する必要があり、使用材料が多くなって廃棄物の埋立て容量が減少する問題がある。
【0012】
特許文献2に記載の覆土代替材として用いられる不織布または織編物は、100N以上の引裂強力を有し、土のうや釘、ワイヤー、ネット等を使用して固定される。土のうによる固定方法は、土のうを作製する手間がかかるうえ、土のうを作製するために土を用いることになり、覆土代替材を使用するために土が必要となってしまう問題がある。また、土のう以外の釘、ワイヤー、ネット等で固定する方法は、堆積した廃棄物に釘等の引抜力は期待できない問題がある。
【0013】
特許文献3に記載の不織布シートは、雨水浸透防止を主目的とするものであり、被覆施工方法としては、一方の端末を遮水シートに熱融着または接着材で接合し、他端部を穴をあけた集水管に巻き付け固定するような方法をとる必要があり、固定のための作業に手間がかかるものである。また雨水の浸透を防止をすることは廃棄物に水分が行き渡らず、準好気での廃棄物安定化を阻害することになり、廃棄物被覆シートには適さない。
【0014】
そこで本発明は、廃棄物の埋立容量の減少を抑制でき、廃棄物を簡易に覆うことができる廃棄物被覆シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の構成は、廃棄物処分場で堆積した廃棄物を被覆する廃棄物被覆シートにおいて、厚さ0.4mm以上2.0mm以下、吸水倍率5倍以上30倍以下、縦方向および横方向の伸度がいずれも40%以上の織布または不織布からなることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の構成は、第1の構成において、セルロースを主成分とする不織布からなることを特徴とする。
【0017】
上記構成の廃棄物被覆シートを堆積した廃棄物の上に被覆し、その上から散水する。これにより、特別な固定方法を使用することなく廃棄物の凹凸に追従し、張り付く。従って、覆土のように30〜50cmの厚みを持つことなく、廃棄物の埋立容量の減少を抑制できる。また、廃棄物を簡易に覆うことができ、廃棄物の飛散・流出を防ぐことができる。さらに、被覆層としての機能を終えた後は、通水性や通気性を損なうことなくバクテリア等によって分解できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、廃棄物の埋立容量の減少を抑制でき、廃棄物を簡易に覆うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る廃棄物被覆シートの実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態にかかる廃棄物被覆シート4を用いた廃棄物処分場1の簡易断面である。
【0020】
(廃棄物処分場1)
図1に示すように、廃棄物処分場1は、地表5を適度な深さに掘り下げて形成されており、その底1aから順に廃棄物2を埋め立てるようになっている。廃棄物2の飛散・流出防止、悪臭の拡散防止、衛生害虫の繁殖防止をするために、日々の埋め立て作業終了後、廃棄物2の上を廃棄物被覆シート4で覆っている。
【0021】
(廃棄物被覆シート4)
廃棄物被覆シート4は、吸水倍率が5倍以上30倍以下の織布または不織布である。好ましくは、10倍以上30倍以下の織布または不織布である。吸水倍率を5倍以上とすることにより、吸水による織布または不織布と廃棄物2の密着性を十分に向上させることができる。また、吸水倍率を30倍以下とすることにより、必要以上に水を含んで膨張しすぎることを抑制し、廃棄物の埋立容量の減少を抑制できる。
【0022】
廃棄物被覆シート4は、厚さ0.4mm以上2.0mm以下である。かかる厚さとすることにより覆土のように30〜50cmの厚みを持つことなく、廃棄物の埋立容量の減少を抑制できる。
【0023】
廃棄物被覆シート4は、上記の吸水性を有するとともに、準好気での廃棄物安定化のため従来の覆土3と同等の透水性を有する素材であることが好ましい。従来の覆土3と同等の透水性を有するかどうかは、例えばJIS−A−1218土の透水試験方法に準拠した測定で、1×10−2cm/sec以上の透水性があることで判断できる。廃棄物被覆シート4が上記の吸水倍率を有し、かつ上記の透水性素材であることにより、廃棄物被覆シート4と廃棄物2との密着性をより向上できるとともに、雨水等を廃棄物2に浸透させ、廃棄物2の安定化に優れる。
【0024】
廃棄物被覆シート4は、縦方向および横方向の伸度がいずれも40%以上である。これにより、廃棄物被覆シート4の柔軟性を十分なものとすることができ、廃棄物2の凹凸へ十分に追従でき、廃棄物2との間の空隙を減少でき、廃棄物表面から剥がれにくくすることができる。なお、廃棄物2の凹凸への追従性を高めるためには、縦方向又は横方向の伸度が100%以上である必要がある。
【0025】
このように、廃棄物被覆シート4は、上記の吸水倍率と上記の透水性と上記の伸度を有することにより、廃棄物被覆シート4が柔軟であるとともに吸水することにより極めて廃棄物2への張り付き性が良くなる。そして、廃棄物被覆シート4は、廃棄物2の凹凸に密着するため、特に煩雑な操作をすることなく、廃棄物2の早期安定化に優れた覆土代替材として使用できる。
【0026】
廃棄物被覆シート4は、目付量が40g/m以上150g/m以下程度であることが好ましい。目付量が40g/m以上とすることにより、繊維間空隙が開きすぎ、廃棄物2が露出しにくく、廃棄物2の飛散・流出を抑制できる。一方、目付量が150g/m以下とすることにより、重量が重くなりすぎず、作業性の低下を抑制できるとともに、廃棄物2への張り付け性の悪化も抑制できる。
【0027】
廃棄物被覆シート4は、1枚の織布または不織布から構成されるものでもよく、複数の織布または不織布を重ね合わせたものでも良い。また、複数の織布または不織布を重ね合せ、接合したものでも良い。1枚の織布または不織布と同等の厚さとなるような複数の織布または不織布を用いた廃棄物被覆シート4は、1枚の場合に比べて腰が弱く、廃棄物2の凹凸への追従性、廃棄物表面への密着性をより良い。
【0028】
織布または不織布を構成する繊維の素材は、各種の化学繊維、合成繊維を用いることができるが、セルロースを主成分とすることが好ましい。セルロースはコットンなど植物を形成する植物繊維素であり、バクテリア等により分解される。これにより、廃棄物堆積層に対する一時的な被覆という機能を終えた廃棄物被覆シート4を時間の経過につれて実質的に消滅させることができ、廃棄物被覆シート4の容積はほぼなくなり、廃棄物容積が廃棄物処分場の埋立容量を占めることとなり、廃棄物処分場の埋立容量の利用効率を100%に近づけることができる。
【0029】
織布としては、スパンヤーン織物、ストランドヤーン織物等の公知のものを用いることができる。不織布としては、連続長繊維不織布、短繊維不織布等の公知のものを用いることが出来るが、連続長繊維不織布が好ましく用いられる。連続長繊維不織布を用いることにより、強度、伸度が均一でかつ、吸水時の廃棄物2への密着性が良好となりやすく、廃棄物2を押さえる際に破れ等の欠陥を発生させない効果の一因となっている。連続長繊維不織布としては、セルロースを主成分とする連続長繊維不織布が最も好ましく用いられる。具体例としては、コットンリンターを使用した湿式スパンボンド法による長繊維不織布である「ベンリーゼ」(旭化成せんい(株))の商品名)が挙げられる。
【0030】
(廃棄物被覆シートの被覆方法)
廃棄物被覆シート4の被覆方法は、散水固定である。廃棄物被覆シート4で廃棄物2を覆った後、廃棄物被覆シート4上に散水することにより、廃棄物被覆シート4が廃棄物2の凹凸に密着し、張り付く。このような被覆方法を用いることで、特別な固定方法を使用する必要がなく、廃棄物を簡易に覆うことができ、廃棄物の飛散・流出を防ぐことができる。
【0031】
この廃棄物被覆シート4の被覆方法により、特別な材料や重し変わりの土のう等を必要とせず、簡易に施工できる。散水量は、1.0以上5.0L/m以下である。散水量を1.0L/m以上とすることにより、廃棄物2への張り付き性を高めることができる。散水量の上限は特に制限はないが、余計な水は浸透水となり水処理施設に負担をかけるため、5.0L/m以下が上限の目安である。散水に用いる水は、河川水、井戸水、水道水等を用いることが出来、消臭剤や鳥嫌味剤等の成分を添加することもできる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例及び比較例によって本発明を説明する。尚、実施例、比較例に記載した諸数値は以下の手順に従って測定した。
【0033】
(1)織布または不織布の吸水率
直径5cmの試料の重量を測定(W1)し、充分に水を含ませたスポンジ上に置き、1g/cmの加重を均一にかけ、吸水した試料の重量を測定(W2)し、W2/W1で吸水倍率を測定した。
【0034】
(2)織布または不織布の伸度
織布または不織布の伸度は、JIS−L−1096一般織物試験方法によって測定した。
【0035】
<実施例1>
図1に示す廃棄物処分場1で傾きが約18°(1:3.0)で高さが1m、幅4mの廃棄物堆積斜面を、廃棄物被覆シート4で覆った。この廃棄物被覆シート4はセルロース長繊維不織布を2枚重ねしたものであり、目付量55g/mで厚みが0.6mm、伸度縦54%横180%、吸水倍率14倍のものを用いた。ロール巻きにしている廃棄物被覆シート4を転がして敷設し、2.0L/mの水で散水固定した。この状態で1ヶ月放置した結果、途中台風通過による暴風雨があったが、廃棄物をしっかり固定し、飛散・流出は起こらなかった。
【0036】
<実施例2>
上記実施例の廃棄物被覆シート4で覆った隣りの廃棄物堆積斜面に、セルロース長繊維不織布の1枚もので、目付量55g/mで厚みが0.6mm、伸度縦54%横180%、吸水倍率14倍のものを、実施例1と同様に敷設、散水固定した。そして、1ヶ月放置した結果、実施例1同様に廃棄物をしっかり固定し、飛散・流出は起こらなかった。
【0037】
<比較例>
上記実施例の廃棄物被覆シート4で覆った隣りの廃棄物堆積斜面に、セルロース長繊維不織布で目付量27.5g/mで厚みが0.3mmのものを用い、実施例と同様に敷設、散水固定した。そして、1ヶ月放置した結果、繊維間空隙が開き、廃棄物が露出している箇所が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る廃棄物被覆シートを用いて実施した廃棄物処分場の簡易断面である。
【図2】従来の複土を用いた廃棄物処分場の簡易断面図である。図である。
【符号の説明】
【0039】
1 …廃棄物処分場
1a …底
2 …廃棄物
3 …覆土
4 …廃棄物被覆シート
5 …地表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処分場で堆積した廃棄物を被覆する廃棄物被覆シートにおいて、
厚さ0.4mm以上2.0mm以下、吸水倍率5倍以上30倍以下、縦方向および横方向の伸度がいずれも40%以上の織布または不織布からなることを特徴とする廃棄物被覆シート。
【請求項2】
セルロースを主成分とする不織布からなることを特徴とする請求項1記載の廃棄物被覆シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−155136(P2008−155136A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347263(P2006−347263)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】