説明

廃水処理槽用スクリーン装置及び廃水処理方法

【課題】微生物が固定化された流動担体を使用する廃水処理において、処理槽から流動担体が流出するのを防止する濾過部における、流動担体による目詰まりを防止する。
【解決手段】廃水処理槽に設置されるスクリーン装置であって;前記スクリーン装置は、流動担体排除部と駆動機構とが本体に付設されてなり、前記本体は、前記処理槽内の処理水を取り入れる入水部と、処理水を処理槽外に排出する排水部とを備え、前記入水部は周面に濾過部が設けられた回転可能な有底円筒状のスクリーン部を有し、前記流動担体排除部は、前記スクリーン部の回転周面に近接又は当接するように配置され、前記駆動機構は、前記スクリーン部を回転駆動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を固定化する流動担体を使用する廃水処理装置(廃水処理槽)に組み込むスクリーン装置に関するものである。また、本発明は、当該スクリーン装置を用いた廃水処理方法である。
【背景技術】
【0002】
微生物を固定化した粒状の流動担体を使用する廃水処理装置は、処理槽内に廃水(処理対象水)と共に流動担体を浮遊状態とし、流動担体に固定化された微生物で廃水を処理するものである。この浮遊状態の流動担体が処理槽から流出すると微生物処理能力が低下してしまうので、粒状の流動担体が浮遊する処理槽からの処理水排出箇所には、流動担体の流出を防止するスクリーン(濾過部)を設けている。
【0003】
そして処理槽には、スクリーン(濾過部)に流動担体による目詰まりが生じない構造が採用されている。例えば特許文献1、2には、処理槽内において、固定スクリーンに添う流れ(側流)を生じさせるようにした手段が開示されている。特許文献3には、半没した横軸回転ドラムスクリーン内に高圧水噴射機構を設ける手段が開示されている。
【0004】
特許文献4には、槽内に微生物付着担体粒子を懸濁させ、気体撹拌により該微生物付着担体粒子を循環させて排水を好気的に処理する排水処理装置が開示されている。特許文献4において、微生物付着担体としては、砂、アンスラサイト、活性炭、ゼオライト、プラスチック球、人工骨材などを用いることが記載されている。また、排水処理装置のスクリーンがウェッジワイヤーによって構成されていることが記載されている。また、ウェッジワイヤーの目開きは担体の粒径よりも小さく設定してあり、かつ外部には目詰まりを防ぐための洗浄ブラシが固定してあることも記載されている。
【0005】
特許文献5には、微生物担体が充填された反応槽と、処理水を反応槽の外に排出する排水手段を備えた円筒型の担体分離手段と、該担体分離手段の外周面を旋回する担体除去手段と、反応槽の液及び微生物担体を攪拌する攪拌手段とを備えていることを特徴とする担体添加生物処理装置が開示されている。ここで、担体分離手段は、具体的に、担体の粒径よりも小さい空隙を有するウェッジワイヤーやパンチングメタルのスクリーンで円筒面が構成された、有底の担体分離筒であることが記載されている。また、担体除去手段は、具体的に、担体分離筒の外周面を旋回する逆U字形の担体分離翼であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−86176号公報
【特許文献2】特開2005−254116号公報
【特許文献3】特開平8−215693号公報
【特許文献4】実開昭61−22599号公報
【特許文献5】特開平11−267678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2において、固定スクリーン(固定濾過部)に対して側流を生じさせる目詰まり解消手段は、流動担体が排出流に流されてスクリーンの通水箇所に引っかかってしまっても、側流で当該流動担体を流してしまうというものである。しかしながら、流動担体が引っかかってしまうと通水面積が減少し、これによって他の通水部分の流出量が多くなり、更に流動担体が詰まり易い状態となる。したがって固定スクリーンの場合には、スクリーン側流を生じさせたとしても、通水箇所に排出流が存在する限り目詰まり防止が完全になされるとは言えない。
【0008】
特許文献3に記載されているように、回転ドラムスクリーン内に高圧噴射を行う場合には、スクリーンの駆動時に噴射水のための駆動ポンプも必要となる。しかも高圧噴射水は、スクリーンに詰まった流動担体と一緒に処理槽に戻るので、処理対象水(廃水)を増加させることになる。
【0009】
特許文献4において用いられる担体は、砂、アンスラサイト、活性炭、ゼオライト、プラスチック球、人工骨材などの弾力の無い硬い担体であり外力によって変形し難いものである。したがって担体の粒径よりも小さく設定してあるスクリーンの目開きに担体が詰まるという問題は生じ難い。また、スクリーン面は常時ブラッシングされているが、目開きに担体が嵌り込んだ場合、ブラシがたわみ、嵌り込んだ担体を掻き出すことができない問題もある。
【0010】
特許文献5に記載の担体添加生物処理装置における担体分離翼は、担体分離筒を撫でるように回転するか、担体分離筒の外周面との間に微生物担体の粒径よりも小さい間隔を保って回転するものである。そのため、担体がスクリーンの奥に嵌り込んだ場合、当該担体を掻き出すことができず、目詰まりを十分に解消することができない。
【0011】
そこで本発明は、目詰まりが生じた際には、目詰まりを直ちに且つ確実に解消する廃水処理槽用スクリーン装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は廃水処理槽に設置されるスクリーン装置であって;前記スクリーン装置は、流動担体排除部と駆動機構とが本体に付設されてなり、前記本体は、前記処理槽内の処理水を取り入れる入水部と、処理水を処理槽外に排出する排水部とを備え、前記入水部は周面に濾過部が設けられた回転可能な有底円筒状のスクリーン部を有し、前記流動担体排除部は、前記スクリーン部の回転周面に近接又は当接するように配置され、前記駆動機構は、前記スクリーン部を回転駆動させることを特徴とするスクリーン装置を提供することによって解決される。
【0013】
処理槽においては流動担体に固定化された微生物の働きで、廃水処理(BOD除去、窒素除去)がなされ、当該処理槽内の処理対象水は次段の処理槽等に排出される。この排出に際して、排出流はスクリーン部の濾過部を通過することで、流動担体(多孔質材)の流出を防止するものである。前記濾過部の通水箇所に流動担体が嵌まり込んで目詰まりを生じても、スクリーン部が回転作動しており、通水箇所である円筒周面に対して流動体排除部が近接又は当接しているので、目詰まり原因となっている流動担体と流動体排除部が衝突し、流動担体を通水箇所より押し剥がすことになり、直ぐに目詰まりが解消される。また、流動体排除部は、金属で形成されている場合には摩擦・摩耗を考慮して近接配置とするのがよいが、樹脂で形成されている場合は当接配置としても良い。
【0014】
前記濾過部を、回転方向に沿う多段の凹条溝内に設けた通水孔で形成すると共に、前記流動担体排除部を、前記凹条溝内と噛み合う櫛歯形状としてなることが好ましい。これにより流動担体が変形して凹条溝内に嵌まり込んだとしても、櫛歯部分で流動担体を濾過部から掻き出すように分離させることができる。したがって、流動担体による目詰まりは確実に解消される。また、槽内浮遊汚泥が凹条溝内に堆積したとしても、櫛歯部分で汚泥を濾過部から掻き出すように分離させるので、汚泥による目詰まりも確実に解消される。
【0015】
前記本体が立筒型であり、該本体の上部には前記駆動機構の駆動源部が設けられ、下端には前記入水部が設けられ、側面には前記排水部が横設され、かつ該本体内には駆動軸が設けられ、前記駆動軸の下端に設けられた前記スクリーン部と前記駆動源部とが前記駆動軸で連結されてなることも好ましい。これにより、駆動モータや減速機構等の駆動源部を水中ではなく、処理槽水面の上方に配置することができる。したがって、駆動源部を密封構造として組み込む必要が無い。
【0016】
前記排水部は前記本体から突設された排水筒部と前記処理槽に装着される装着排水部で構成され、前記排水部と前記装着排水部とに連結着脱構造を設けてなることも好ましい。これにより処理槽の側面に固定された装着排水部に対して、本体側を排水筒部の箇所で分離できるので、処理槽をそのままの状態で、スクリーン装置を分離して取り出すことができ、メンテナンス(点検・補修)に便利である。
【0017】
上記課題は、上記スクリーン装置を用いた廃水処理方法であって、前記廃水処理槽内の流動担体に固定化された微生物により廃水を処理することを特徴とする廃水処理方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスクリーン装置は、回転動作をなすスクリーン部を備えると共に、スクリーン部の濾過部(回転周面)に対して近接又は当接配置している流動体排除部を備えるので、目詰まりを確実に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る廃水処理槽用スクリーン装置を示す図である。
【図2】図1のスクリーン部を拡大した図である。
【図3】図1のスクリーン部の断面図である。
【図4】図1のスクリーン部の分解斜視図である。
【図5】図2において実線で囲んだ箇所を拡大した図である。
【図6】図2のXY平面と平行な面で濾過部を切断した断面図である。
【図7】廃水処理槽用スクリーン装置の使用状態を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る廃水処理槽用スクリーン装置を示す図である。
【図9】図8のスクリーン装置のスクリーン部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施形態について説明する。例示した実施形態は、本体1と、本体1に設けたスクリーン部2、駆動機構3、流動体排除部4及び装着排水部5で構成されている。
【0021】
本体1は立筒型であり、後述する処理槽Aに設置する際に、上面部分が十分に処理槽Aの水位以上となり、下方が処理槽Aの予定水位以下の位置となる高さを備えるものである。図1は本発明の実施形態に係るスクリーン装置を示す図である。図1に示すように、本体1は、下方端面を円形に開口し、当該開口箇所に樹脂材で形成した環状の入水部11が設けられている。本体1の側面適宜高さ(予定水位以下)に、本体1内と連通する排水筒部12が設けられている。排水筒部12の開口端には連結装着部13が設けられている。連結装着部13は矩形フランジである。更に本体1の上面には吊下用リング14が装着されている。
【0022】
図2はスクリーン部2を拡大した図である。図3はスクリーン部2の断面図である。図2及び3に示すように、スクリーン部2は、濾過部21と、樹脂筒体22と上部透孔板23で構成されている。図4はスクリーン部の分解斜視図である。図4に示すように、濾過部21は、底板211と、多数の積層環板212と、多数の間隙形成体213と、下部透孔板214と、積層連結ボルト部215で形成されている。
【0023】
前記濾過部21は、円形の底板211の上に、内周側にボルト孔212aが設けられた積層環板212と、ボルト孔を備えた間隙形成体213を交互に且つ多段に積層したものである。更に前記濾過部21は、下方透孔板214を被冠し、全体を積層連結ボルト部215で一体としたものである。下方透孔板214は中心に軸連結部214aを備え、且つ放射状の腕板214bと環板部214cを有する。図3では、積層連結ボルト部215の端部をナットで締め付けることによって前記濾過部21が形成されている例を示した。前記濾過部21を構成する各部材を一体にするときに用いられる連結部材は前記積層連結ボルト部215に限定されない。例えば、連結部材として丸棒や角棒を用いて、棒の端部を溶接することにより前記濾過部21が形成されていてもよい。
【0024】
前記構成によって有底円筒状で、且つ外周面に多段の凹条溝aを有すると共に、前記凹条溝a内方の連結箇所以外は通水孔bとなる濾過部21が形成されるものである。前記凹条溝aの幅は、流動担体が処理槽から流出しない観点から、廃水処理において用いられる担体の粒径よりも狭いものである。ここで、前記凹条溝aの幅は、前記間隙形成体213の厚みによって調節できる。すなわち、前記間隙形成体213の厚みを変えるだけで前記凹条溝aの幅を調節することができる。したがって、本発明のスクリーン装置においては、前記濾過部21がウェッジワイヤーやパンチングメタルで構成されている場合に比べて、前記凹条溝aの幅を容易に調節することができる利点がある。
【0025】
スクリーン部2には、上部透孔板23と濾過部21との間に、入水部11と対応する樹脂筒体22が介装されている。上部透孔板23は、中心に軸連結部231を備えると共に、放射状の腕板232と環板部233を有する。
【0026】
駆動機構3は、駆動モータや減速機構を備えた駆動源部31と、駆動軸32とで構成されている。駆動源部31は、本体1の上面部上に設けてなり、駆動軸32は本体内を貫通して、下方のスクリーン部2の上部透孔板23及び下部透孔板214の各々の軸連結部231、214aを貫通してスクリーン部2に連結固定されるものである。
【0027】
そして前記駆動軸32とスクリーン部2とを連結固定することによって、入水部11に樹脂筒体22を、略水封状態で嵌合装着する。
【0028】
流動担体排除部4は、本体1の下方側面から垂設したもので、一側辺を前記濾過部21の凹条溝a内に突出して噛み合う櫛歯部41としたものである。ここで図面を用いて凹条溝aと櫛歯部41の寸法について説明する。図5は、図2において実線で囲んだ箇所を拡大した図である。図5に示すように、櫛歯部41が濾過部21の凹条溝a内に突出して噛み合っている箇所は、積層環板212と櫛歯部41が交互に並んだ構造をしている。ここで、積層環板212の回転周面から積層連結ボルト部215までの距離をdとする。また、櫛歯部41の頂部から積層環板212の回転周面までの距離をdとする。このとき、積層連結ボルト部215と櫛歯部41の頂部とは接触していてもよいが、摩擦、摩耗を考慮して、距離dは距離dよりも短いことが好ましい。一方、凹条溝a内に嵌り込んだ担体や堆積した汚泥、特に積層連結ボルト部215の表面などに付着した汚泥を効率的に掻き出す観点から、距離dは距離dの1/4よりも長いことが好適であり、距離dの1/2よりも長いことがより好適である。また、図5に示すように、積層環板212の回転周面と流動体排除部4との距離dは流動担体の粒径よりも短いことが好適である。
【0029】
図5に示すように、凹条溝aの幅をwとし、櫛歯部41の幅をwとする。このとき、積層環板212の表面と櫛歯部41の側面とは接触していてもよいが、摩擦、摩耗を考慮して、幅wは幅wよりも狭いことが好ましい。一方、積層環板212の表面に付着した汚泥を効率的に掻き出す観点から、幅wは幅wの2/3よりも広いことが好適である。また、積層環板212の形状は特に限定されず、平板状でも、厚みが内周側に至るにしたがって次第に薄くなる又は厚くなる形状であってもよい。積層環板212の厚みが異なるときの幅wは凹条溝aの最も広い箇所の幅のことをいう。積層環板212の表面全体に付着した汚泥を効率的に掻き出す観点から、図5に示したように、積層環板212が平板状であり、隣り合う積層環板212は平行であることが好ましい。
【0030】
櫛歯部41の形状は特に限定されない。図示例では、櫛歯部41の形状は四角形であるが、これに限定されず、三角形や台形であってもよい。櫛歯部41の頂面の形状も限定されず、頂部が平坦でもよいし、丸みを帯びていてもよい。さらに、櫛歯部41の素材も限定されず、凹条溝aや通水孔bの目詰まりを確実に解消できるものであればよく、金属や樹脂などを採用することができる。中でも、スクリーン部2の回転に伴う変形や破損が生じ難い観点から、櫛歯部41が金属であることが好適である。
【0031】
次にスクリーン部2に対する流動担体排除部4の設置位置について説明する。図6は、図2のXY平面と平行な面で濾過部21を切断した断面図である。また、図6の矢印はスクリーン部2の回転方向を示す。ここで、図6に示すように、櫛歯部41が積層環板212の回転周面に重なる点を接点Pとする。この接点Pから回転方向と逆の方向に延ばした接線を接線Lとして、当該接線Lと櫛歯部41とがなす角を角度αとする。掻き出された担体や汚泥をスクリーン部2から容易に解離させる観点から、角度αは鈍角であることが好適である。具体的には、角度αは90°よりも大きいことが好適である。一方、角度αは通常180°よりも小さい。
【0032】
発明者らは、スクリーン部2を図6に示した回転方向と逆に回転させて凹条溝a内に嵌り込んだ担体や汚泥を掻き出すことを試みた。この場合、角度αは鋭角、すなわち90°よりも小さくなった。その結果、掻き出された担体や汚泥が流動担体排除部4とスクリーン部2との間に滞留するという問題が生じた。
【0033】
装着排水部5は、排水管部51と排水管部51の途中外周に突出形成した壁面装着板部52と、管端に設けた連結部53で構成されている。連結部53は、前記連結装着部(矩形フランジ)13が上方より挿入できる左右内溝部531と、連結装着部13を載置できる下方支持突部532を備えているものである。
【0034】
そして、前記装着排水部5の排水管部51(連結部53の形成側と反対側)は、処理槽Aの壁面に設けられた排水孔に挿入されている。処理槽Aの壁面に壁面装着板部52をあてがいアンカーボルト等で装着排水部5を固定する。前記状態で連結部53は処理槽A内に突出することになる。
【0035】
本体1を処理槽A内に組み込むに際しては、吊下用リング14を使用して本体1を吊り上げ、連結部53の上方から連結装着部13を内溝部531に差し入れる。そして、下方支持突部532に連結装着部13を載置し、当該状態で連結装着部13と連結部53を一体として、本体1を処理槽A内に立て込むものである。このとき、必要に応じて連結装着部13と連結部53とはボルトにより固定されていてもよい。
【0036】
処理槽Aには、処理対象水(廃水)Bと、必要量の流動担体Cが満たされている。所定の処理(BOD除去・窒素除去等の嫌気処理や好気処理)を終えた処理対象水Bは、濾過部21からスクリーン部2内および本体1内を通過して排水部(排水筒部12及び排水管部51)から次段の処理槽D等に排出される。このとき、濾過部21は、排出流とともに流動担体Cが排出されるのを阻止する。
【0037】
そして駆動機構3の駆動源部31は、常時又は適宜間隔で作動し、この回転作動は駆動軸32でスクリーン部2を回転させるものである。
【0038】
したがって、排出流と共に流されて濾過部21に衝突する流動担体Cは、多孔質材でスポンジ様の部材や、ゲル状の部材のように変形可能な部材である場合には、一部変形して凹条溝a内に嵌まり込む可能性もある。具体的には、排出流と共に流されて濾過部21に衝突したとき変形しやすいため、凹条溝aに嵌りやすい。しかしながら、このような流動担体Cが凹条溝aに嵌まり込んで目詰まりが生じたとしても、スクリーン部2の回転動作によって櫛歯部41が流動担体Cを掻き出す。その結果、前記の目詰まりは直ぐに解消される。また、排出流と共に流された槽内浮遊汚泥が濾過部21に衝突して、当該槽内浮遊汚泥が凹条溝aに堆積する可能性もある。しかしながら、流動担体排除部4の櫛歯部41が凹条溝aに堆積した汚泥を掻き出すので、前記の目詰まりは直ぐに解消される。
【0039】
処理槽A内に投入される流動担体Cは微生物を固定化することのできる部材であればよい。中でも、ゲル状の部材が好適に用いられる。ゲル状の部材としては、ポリビニルアルコール含水ゲルを用いることが好適である。ポリビニルアルコール含水ゲルは、多数の水酸基を有しているために親水性が高く、生体との親和性も高いことから微生物担体に適している。また、アセタール化されたポリビニルアルコール含水ゲルを用いることがより好適である。これにより微生物の保持量をより増大させることができると共に、繰り返し使用における耐久性を確保することもできる。
【0040】
中でも、ポリビニルアルコールと、アルギン酸塩のような水溶性高分子多糖とが溶解した水溶液を、塩化カルシウム水溶液のような多価金属イオンを含む水溶液中に滴下することによって球状に成形し、次いでホルマリンなどを用いてアセタール化処理した球状含水ゲルを用いることが好ましい。こうすることによって、均一な球状ゲルが得られるので、凹条溝aの幅を設定しやすくなる。また、繰り返し使用における耐久性がより向上する。
【0041】
前記装置(本体1)のメンテナンス等が必要になった場合には、連結装着部13と連結部53の連結を解除し、本体1を引き上げることで、スクリーン装置の主要部を処理槽Aから簡単に取り外すことができる。また、本体1の上部を覆っている蓋15と駆動源部31とは一体になっているので、吊下用リング14を留めているナットを取り外すことで、本体1からスクリーン部2を取り外すこともできる。このとき、櫛歯部41は凹条溝a内に突出して噛み合っているので、本体1の下方側面から垂設されている流動担体排除部4も取り外す。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態に係るスクリーン装置を説明する。以下の説明においては、上述したスクリーン装置と異なる点についてのみ説明し、同様の構成要素は同じ参照符号を付してその説明は省略する。図8は本発明の他の実施形態に係るスクリーン装置を示す図である。図8に示すように、本体1の上部を覆っている蓋15には、取っ手16が設けられている。さらに、蓋15と本体1とはパッチン錠17で固定されている。
【0043】
また、図1に示したスクリーン装置では流動担体排除部4は本体1の下方側面にボルトなどにより固定されていたが、図8に示すスクリーン装置では流動担体排除部4は入水部11と溶接などにより一体化されている。図1に示したスクリーン装置では、本体1からスクリーン部2を取り外す場合、流動担体排除部4を予め取り外しておく必要があった。しかしながら、図8に示すスクリーン装置では、パッチン錠17を解除し取っ手16を引き上げるだけで、流動担体排除部4とともにスクリーン部2を本体1から簡単に取り外すことができる。したがって、スクリーン部2のメンテナンス等が必要になった場合には、重い本体1を処理槽Aに残したまま、スクリーン部2と流動担体排除部4とを簡単に取り外すことができるという利点がある。
【0044】
さらに、図1に示したスクリーン装置では櫛歯部41を構成する部材は流動担体排除部4から取り外すことができないものであったが(図2参照)、図8に示すスクリーン装置では櫛歯部41を構成する部材のみを流動担体排除部4から取り外せるようになっている(図9参照)。したがって、櫛歯部41をメンテナンスする際には、櫛歯部41を構成する部材だけを取り外せばよいので、流動担体排除部4の全体を取り外す場合と比べて作業性が向上する。
【0045】
本体1を処理槽A内に組み込むに際しては、本体1の上部の取っ手16を使用して連結部53の上方から連結装着部13を内溝部531に差し入れる。そして、下方支持突部532に連結装着部13を載置し、当該状態で連結装着部13と連結部53を一体として、本体1を処理槽A内に立て込むものである。結装着部13と連結部53とをボルトを用いて固定することを想定していない場合には、図8に示すように、ボルトを挿入するための穴を設ける必要はない。
【0046】
そして、前記装置(本体1)のメンテナンス等が必要になった場合には、本体1の取っ手16を引き上げるだけで、スクリーン装置の主要部を処理槽Aから簡単に取り外すことができる。
【0047】
本発明の好適な実施形態は、スクリーン装置を用いた廃水処理方法であって、前記廃水処理槽内の流動担体に固定化された微生物により廃水を処理することを特徴とする廃水処理方法である。
【0048】
廃水処理槽に投入される流動担体は、微生物を固定化することのできる部材であればよく、上述した流動担体を用いることができる。また、流動担体に微生物を担持させる方法も限定されず、流動担体に予め微生物を担持させたものを廃水処理槽に加える方法を採用してもよいし、流動担体と汚泥とを廃水処理槽内で混合し、汚泥に含まれる微生物を流動担体に担持させる方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 本体
11 入水部
12 排水筒部
13 連結装着部
14 吊下用リング
15 蓋
16 取っ手
17 パッチン錠
2 スクリーン部
21 濾過部
211 底板
212 積層環板
213 間隙形成体
214 下部透孔板
215 積層連結ボルト部
22 樹脂筒体
221 段差部
23 上部透孔板
231 軸連結部
232 腕板
233 環板部
3 駆動機構
31 駆動源部
32 駆動軸
4 流動担体排除部
41 櫛歯部
5 装着排水部
51 排水管部
52 壁面装着板部
53 連結部
531 内溝部
532 下方支持突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水処理槽に設置されるスクリーン装置であって;
前記スクリーン装置は、流動担体排除部と駆動機構とが本体に付設されてなり、
前記本体は、前記処理槽内の処理水を取り入れる入水部と、処理水を処理槽外に排出する排水部とを備え、前記入水部は周面に濾過部が設けられた回転可能な有底円筒状のスクリーン部を有し、
前記流動担体排除部は、前記スクリーン部の回転周面に近接又は当接するように配置され、
前記駆動機構は、前記スクリーン部を回転駆動させることを特徴とするスクリーン装置。
【請求項2】
前記濾過部を、回転方向に沿う多段の凹条溝内に設けた通水孔で形成すると共に、前記流動担体排除部を、前記凹条溝内と噛み合う櫛歯形状としてなる請求項1記載のスクリーン装置。
【請求項3】
前記本体が立筒型であり、該本体の上部には前記駆動機構の駆動源部が設けられ、下端には前記入水部が設けられ、側面には前記排水部が横設され、かつ該本体内には駆動軸が設けられ、前記駆動軸の下端に設けられた前記スクリーン部と前記駆動源部とが前記駆動軸で連結されてなる請求項1又は2記載のスクリーン装置。
【請求項4】
前記排水部は前記本体から突設された排水筒部と前記処理槽に装着される装着排水部で構成され、前記排水部と前記装着排水部とに連結着脱構造を設けてなる請求項3記載のスクリーン装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載のスクリーン装置を用いた廃水処理方法であって、前記廃水処理槽内の流動担体に固定化された微生物により廃水を処理することを特徴とする廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−107075(P2013−107075A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235760(P2012−235760)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(593099229)株式会社環境システム開発 (2)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】