説明

廃液処理方法とそれに用いる廃液処理装置およびこれを用いた洗浄装置

【課題】 ドライクリーニング等の廃液中に含まれる塩素系有機物を分解、除去するための廃液処理方法および廃液処理装置であって、処理効率に優れ、塩素系ガス等の2次副産物の排出を抑制し得る廃液処理方法および廃液処理装置を提供する。
【解決手段】 塩素系有機物を含有する廃液を気化処理し、これによって生じた塩素系有機物を含む気化ガスを、光触媒顆粒体がガス流通管路に充填されてなる光触媒反応部に送入し、この光触媒反応部に紫外線光源から光を照射することによって、気化ガスを光酸化分解させ、該光酸化分解によって生成された分解生成ガスを、処理剤によって吸収、吸着、中和させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、廃液中に含まれる塩素系有機物を分解、除去する廃液処理方法、それに用いる廃液処理装置、およびこれを用いた洗浄装置であって、処理効率に優れ、塩素系ガス等の2次副産物の排出を抑制し得る廃液処理方法、およびそれに用いる廃液処理装置、およびこれを用いた洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、塩素系有機溶剤は、優れた洗浄性、安定性、不燃性を有することから、優秀な洗浄剤として広く用いられてきた。近年、大気汚染防止法において、塩素系有機物が有害大気汚染物質として、優先取組物質・自主管理物質・指定物質等に指定されて以来、ドライクリーニング等の洗浄装置等から廃出される廃液・排ガス中に含有される塩素系有機物の排出量を、排出基準値以下に抑えるための方法として、活性炭での吸着処理方法や、加熱蒸発処理方法等の手法が用いられてきた。
【0003】上記活性炭を用いた吸着処理方法では、活性炭が吸着飽和に達した段階で、吸着機能を失うため、活性炭を取り替える必要がある。しかしながら、活性炭が吸着機能を失う時期を把握することは難しく、また、吸着飽和した活性炭は、指定廃棄物として専門処理業者へ処分を委託するか、水蒸気等で脱着再生してから再利用しなければならない等、処理効率が低く、余分なコストがかかるといった問題点があった。
【0004】また、上記加熱蒸発処理方法では、塩素系有機物を気化させることにより、廃液中の塩素系有機物含有濃度を、上記排出基準内に下げることができる。しかしながら、上記方法では、廃液中の塩素系有機物濃度が低い場合には、処理効率に劣るといった問題点があった。また、気化された塩素系有機物が未分解のまま大気中へ放出されることになるため、排ガス中に含まれる塩素系有機物の排出量を、年々規制が強化される上記排出基準内に抑えることができなくなる可能性があるといった問題点があった。
【0005】一方、最近では、自然光もしくは蛍光燈に含まれる紫外線レベルで活性化する光触媒を用いて、塩素系有機溶剤等を光分解し、無害化する廃液処理方法および装置が、例えば特開平8−323346号公報等において提案されている。しかしながら、塩素系有機物が分解された時に生じる塩素系ガスを、無害化するための配慮がなされていないといった問題点があった。また、上記塩素系有機物の排出規制が年々強化されているため、より優れた分解処理効率を発揮し得る廃液処理方法および廃液処理装置が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、廃液中に含まれる塩素系有機物を分解、除去する廃液処理方法およびそれに用いる廃液処理装置およびこれを用いた洗浄装置であって、処理効率に優れ、塩素系ガス等の2次副産物の排出を抑制した廃液処理方法、廃液処理装置およびこれを用いた洗浄装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するために、請求項1は、廃液中の塩素系有機溶剤を気化する気化処理過程と、前記廃液中より気化された気化ガスを、光触媒顆粒体がガス流通管路に充填されてなる光触媒反応部に送入し、該光触媒反応部に紫外線光源から光を照射し、気化ガスを光酸化分解する光酸化分解処理過程と、前記光酸化分解によって生成された分解生成ガスを、吸収、吸着、中和する後処理過程からなる廃液処理方法を提供する。また、請求項2は、請求項1に記載の廃液処理方法において、気化処理過程が、曝気方式または加熱蒸発方式である廃液処理方法を提供する。
【0008】また、請求項3は、請求項2に記載の廃液処理方法において、曝気方式が、廃液を曝気槽に注入後、大気圧に対して+0.1kg/cm2〜+5kg/cm2に曝気槽内を加圧し、曝気した気化ガスを、曝気槽内の圧力を利用して光触媒反応部に導入する方式である廃液処理方法を提供する。また、請求項4は、請求項1〜3のいずれかに記載の廃液処理方法において、後処理過程が、分解生成ガスを、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、石灰、アンモニア、苛性ソーダ、アルカリイオン水、水等の中から選択される少なくとも1種を含んだ液状もしくは粉末状の処理剤中に注入し、これを吸収、吸着、中和する過程である廃液処理方法を提供する。
【0009】また、請求項5は、請求項1〜4のいずれかに記載の廃液処理方法において、光触媒顆粒体を洗浄するための中性もしくはアルカリ性水溶液を光触媒反応部に流通させて、光触媒顆粒体に蓄積された分解生成物を除去する光触媒洗浄過程を具備する廃液処理方法を提供する。また、請求項6は、廃液中の塩素系有機溶剤を気化する気化処理部と、前記廃液中より気化された気化ガスを光酸化分解する光酸化分解処理部と、前記光酸化分解によって生成された分解生成ガスを吸収、吸着、中和する後処理部を具備する廃液処理装置を提供する。
【0010】また、請求項7は、請求項6に記載の廃液処理装置において、光酸化分解処理部が、光によって活性化され、ガス中の有機物を光酸化分解させる光触媒顆粒体がガス流通管路内に充填されてなる光触媒反応部と、光触媒顆粒体に紫外線光を照射するための紫外線光源を有する人工光照射部を備えたものであり、前記光触媒顆粒体が、最小粒径が1mm以上および最大粒径が20mm以下に成形されたものであり、前記ガス流通管路が、内径5〜30mm、長さ200〜800mmの直線管路複数本が、全体として一つの流路を形成するように相隣接する直線管路の端部同士が接続されたものである廃液処理装置を提供する。
【0011】また、請求項8は、請求項7に記載の廃液処理装置において、光触媒顆粒体が、塩素系有機ガスおよび塩素系ガスを吸着する無機物粉体と、光触媒粒子の混合物であり、光触媒顆粒体中における光触媒粒子の含有量が10〜95重量%である廃液処理装置を提供する。また、請求項9は、請求項8に記載の廃液処理装置において、光触媒粒子が二酸化チタン微粒子であり、前記無機物粉体が、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石灰、カオリンクレー、ワラストナイト、タルク、ネフェリンシナイト、ゼオライト、活性炭の中から選択される1種または2種以上である廃液処理装置を提供する。
【0012】また、請求項10は、請求項7〜9のいずれかに記載の廃液処理装置において、直線管路および紫外線光源が鉛直方向に設置されている廃液処理装置を提供する。また、請求項11は、請求項6〜10のいずれかに記載の廃液処理装置において、後処理部が、処理槽内部に、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、石灰、アンモニア、苛性ソーダ、アルカリイオン水、水等の中から選択される少なくとも1種を含んだ液状もしくは粉末状の吸収、吸着、中和処理剤を備えたものである廃液処理装置を提供する。
【0013】また、請求項12は、請求項6〜11のいずれかに記載の廃液処理装置において、光酸化分解処理部および後処理部における、前記気化ガスおよび/または分解生成ガスの流路の一部もしくは全部が、高分子物質を素材としたもので構成されている廃液処理装置を提供する。また、請求項13は、請求項6〜12のいずれかに記載の廃液処理装置において、気化処理部として、廃液中の塩素系有機溶剤を曝気させる曝気処理部、もしくは廃液中の塩素系有機溶剤を加熱蒸発させる加熱蒸発処理部を用いた廃液処理装置を提供する。
【0014】また、請求項14は、請求項13に記載の廃液処理装置において、曝気処理部が、曝気槽に、廃液を注入するための廃液入口部と、曝気処理後の排液を排出するための排液出口部と、圧縮空気を送入するための圧縮空気入口部と、気化ガスを光酸化分解処理部に排出するための気化ガス出口部を具備したものであって、前記圧縮空気入口部には、開閉バルブと、レギュレータと、圧力計と、圧縮空気供給口が設けられ、曝気槽の内圧を、大気圧に対して+0.1kg/cm2〜+5kg/cm2に調整することができるように構成されており、曝気槽内の圧力を利用して、気化ガスを気化ガス出口部から光触媒反応部へ排出できるように構成されている廃液処理装置を提供する。
【0015】また、請求項15は、請求項14に記載の廃液処理装置において、曝気槽内壁が、フッ素系樹脂またはポリエチレン系樹脂によりコーティングされている廃液処理装置を提供する。また、請求項16は、請求項14または15に記載の廃液処理装置において、曝気槽内部に廃液攪拌装置を具備する廃液処理装置を提供する。また、請求項17は、請求項14〜16のいずれかに記載の廃液処理装置において、圧縮空気を曝気槽内部に送入するための圧縮空気入口部に散気管を具備する廃液処理装置を提供する。
【0016】また、請求項18は、請求項14〜17のいずれかに記載の廃液処理装置において、光触媒反応部に接続している洗浄液供給管路が、分岐バルブを介して排液出口部に連結されており、光触媒反応部に、あらかじめ曝気槽に注入された洗浄用の中性もしくはアルカリ性水溶液を送入、流通させることができるように構成されている廃液処理装置を提供する。また、請求項19は、請求項6〜18のいずれかに記載の廃液処理装置を具備する洗浄装置を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明する。図1は本発明の廃液処理装置の実施の形態の一例を模式的に示す説明図である。図1において、符号1は、気化処理部を示す。上記気化処理部1は、気化ガス供給管路2を介して、光酸化分解処理部3に接続されており、光酸化分解処理部3は、分解生成ガス供給管路4を介して、後処理部5に接続されている。
【0018】そして、上記気化処理部1において、塩素系有機溶剤を含む廃液が、曝気方式もしくは加熱蒸発方式によって気化され、気化された塩素系有機ガス等を含む気化ガスが、気化ガス供給管路2を通って光酸化分解処理部3に導入されて光酸化分解され、該光酸化分解反応によって生じた塩素系ガス等を含む分解生成ガスが、分解生成ガス供給管路4を通って後処理部5に導入され、後処理部5において吸収、吸着、中和され、無害な塩類へと変換される。
【0019】図2は、本発明の廃液処理装置の一例を示す概略斜視図であり、図3は図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とした概略側面図であり、図4は図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とし、該透視図の一部を断面図とした概略背面図であり、図5は図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とした概略平面図である。
【0020】図2〜図5において、上記気化処理部1として、曝気処理部が用いられている。図2に示すように、この曝気処理部は、曝気槽6に、廃液を注入するための廃液入口部7と、曝気処理後の排液を排出するための排液出口部8と、圧縮空気を送入するための圧縮空気入口部13と、曝気後のガスを排出するための気化ガス出口部18とが設けられたものである。ここで、廃液とは、無害化するために本発明の廃液処理装置に投入される被処理溶液を示し、排液とは、該廃液処理装置によって無害化処理が施され、装置外に排出される処理済溶液を示す。
【0021】上記曝気槽6は、直径10〜30cm程度、高さ20〜100cm程度の略円柱状の圧力容器であり、耐食性、耐薬品性、撥水性に優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の高分子物質を素材としたもの、あるいはこれらを槽内壁にコーティングしたもの等が用いられる。また、上記曝気槽6の内部には、曝気効率を向上させるために、噴流式、プロペラ式等の攪拌装置が設置されている。
【0022】上記排液出口部8には、第1の分岐バルブ9と、第1の開閉バルブ10と、排液チューブ11と、洗浄液供給管路12とが設けられており、曝気処理後の排液を外部に排出する時には、第1の分岐バルブ9を排液チューブ11に接続し、また、光触媒洗浄用溶液を下記光触媒反応部22に供給する時には、第1の分岐バルブ9を洗浄液供給管路12に接続し、第1の開閉バルブ10を開放すれば良いように構成されている。
【0023】また、上記圧縮空気入口部13には、第2の開閉バルブ14と、レギュレータ15と、圧力計16と、圧縮空気供給管路17とが設けられており、これらを調節することにより、曝気槽6内の圧力を制御することができるようになっている。また、曝気時に用いられる圧縮空気の供給源としては、クリーニング業や洗浄業の工場等で一般的に配備されているものを用いることができ、圧縮空気供給管路17は、上記供給源と簡単に着脱できるように構成されている。また、上記圧縮空気入口部13には、曝気槽6内において、曝気効率を向上させるために、散気管が取り付けられている。
【0024】また、上記気化ガス出口部18には、第3の開閉バルブ19が設けられており、これを開閉することにより、曝気処理後のガスを気化ガス供給管路2に排出できるようになっている。
【0025】上記気化生成ガス供給管路2は、耐食性に優れたフッ素系樹脂やポリエチレン系、ナイロン系樹脂等の高分子物質で形成されており、光酸化分解処理部3に接続されている。図4に示すように、上記光酸化分解処理部3は、上記気化ガス供給管路2から供給された気化ガスが流通するガス流通管路20内に、ガス中の有機物を光酸化分解させる光触媒顆粒体21が充填された光触媒反応部22と、光触媒顆粒体21に紫外線光を照射する紫外線光源23を有する人工光照射部24とを備え、図5に示すように、上記光触媒反応部22に対向するように人工光照射部24が配置されたものである。
【0026】図4に示すように、上記ガス流通管路20は、入口部20bと出口部20cを有し、鉛直方向上下に走行する一つの経路を形成するように、2〜20本程度の直管状の直線管路20aが、8〜35mmのピッチ間隔で同一鉛直面上に並列され、相隣接する直線管路20aの端部同士が接続部材25によって接続され、流路28aを形成するように、光酸化分解処理部3全体の構造体を兼ねる接続部材本体部28によって互いに固定されて構成されている。
【0027】図2に示すように、上記入口部20bには、第2の分岐バルブ26が設けられており、気化ガスを光触媒反応部22に注入する時には、第2の分岐バルブ26を気化ガス供給管路2に接続し、光触媒洗浄用溶液を光触媒反応部22に供給する時には、第2の分岐バルブ26を洗浄液供給管路12に接続すれば良いように構成されている。また、出口部20cには、第4の開閉バルブ27が設けられており、これを分解生成ガス供給管路4と接続することにより、光酸化分解処理後のガスを分解生成ガス供給管路4に排出できるようになっている。
【0028】図4に示すように、上記直線管路20aの素材としては、紫外線光等の人工光や自然光が透過可能なものが用いられ、ホウケイ酸ガラス、合成樹脂等の透明材料が使用可能である。
【0029】上記直線管路20aの内径は、5〜30mm、より好ましくは8〜16mm程度とされる。上記内径が、5mm未満であると、ガス流通管路20内に充填される光触媒顆粒体21の充填量が少なくなるため、光酸化分解処理効率が低下し、また、内径が小さいことによるガス流量の減少のために、処理量が低下する。また、30mmを超えると、紫外線光源23から照射された光が直線管路20aの中心付近まで届き難くなり、光触媒顆粒体21の受光効率が低下するため、光酸化分解処理効率が低下する。
【0030】また、上記直線管路20aの長さは、200mm〜800mmの範囲となるように構成され、紫外線光源23の長さと等しくなるように設定されるのが好ましい。これにより、光触媒顆粒体21に、紫外線光源23からの紫外線光を、光触媒反応部22の全長にわたって均一に照射することができ、光酸化分解処理効率を向上させることができる。
【0031】また、上記直線管路20aの両端には、直線管路20a内に、光触媒顆粒体21を保持するための保持材31が設けられている。この保持材31としては、通気可能な形状を有し、耐食性に優れたフッ素系樹脂やエチレン系、ナイロン系樹脂などの高分子物質を素材とするものであって、直線管路20aの内径と略同一の径で、5〜30mm程度の厚みのものが用いられる。
【0032】上記光触媒顆粒体21としては、塩素系有機ガスや塩素系ガス等を吸着する無機物粉体と、光触媒粒子とを、混合してなるものが用いられる。上記光触媒粒子としては、光、例えば、近紫外線の照射等により活性化され、これに接触する有機物の光酸化分解反応を促進することができるものが用いられ、具体的には、TiO2、CdS、SrTiO3、Fe23等が挙げられる。これらの中でも、性能に優れ、安価なコストのTiO2が最も好適に用いられる。
【0033】上記無機物粉体の具体例としては、例えば、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石灰、カオリンクレー、ワラストナイト、タルク、ネフェリンシナイト、ゼオライト、活性炭等が挙げられ、これらの中から1種もしくは2種以上が混合して用いられる。
【0034】上記光触媒顆粒体21における光触媒粒子の含有量は、10〜95重量%、好ましくは30〜70重量%程度、さらに好ましくは40〜60重量%程度とされる。上記含有量が10重量%未満であると、光酸化分解処理能力が低下し、塩素系有機ガスが未分解のまま排出される可能性があり、95重量%を超えると、光触媒顆粒体21の塩素系有機ガス吸着保持力が低下し、高濃度の塩素系有機ガスが短時間で投入された場合に、塩素系有機ガスが捕捉されずに、やはり未分解のまま排出される恐れがある。
【0035】また、上記光触媒顆粒体21は、粒状に圧縮成形したものが好適に用いられる。上記光触媒顆粒体21の具体的な形状としては、球状、樽状、短棒状、楕円球状、タブレット状(略円柱状)等が挙げられる。また、光触媒顆粒体21には、穴を形成しても良いし、表面突起を形成しても良い。
【0036】上記光触媒顆粒体21の粒径は、1〜20mm、好ましくは2〜10mm程度であり、その平均粒径は、4〜8mm程度、好ましくは5〜7mm程度であるのが望ましい。上記粒径が1mm未満であると、目詰まりを生じ易くなり、光触媒反応部22におけるガス流通量が減少するため、光酸化分解処理効率が低下する傾向にあり、20mmを超えると光触媒顆粒体21の比表面積(単位重量当たりの表面積)が小さくなり、また、紫外線光源23から照射された光がガス流通管路20の中心まで届き難くなり、光触媒顆粒体21の受光効率が低下するため、光酸化分解処理効率が低下する傾向にある。
【0037】上記接続部材25は、直線管路20aの端部同士を連結する本体部28と、本体部28に取付可能な蓋部29と、環状シール材であるOリング30とを備えている。上記本体部28は、直線管路20aの端部が挿入される開口部が設けられた直方体状の部材であり、この開口部に挿入された直線管路20a、20aの一方から他方に、本体部28内に設けられた流路28aを介して通気できるように構成されている。ここで、上記流路28aの内壁面は、耐食性、耐薬品性に優れたフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の高分子物質によってコーティングされている、あるいは、本体部28そのものが、耐食性、耐薬品性に優れたハステロイ等の金属もしくはフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、PPS等の高分子物質によって形成されていることが望ましい。
【0038】上記開口部の周縁には、開口端に向かって徐々に拡径するOリング設置用テーパ部が形成されており、このテーパ部と直線管路20aとの間に、Oリング30が設置されるようになっている。上記蓋部29には、直線管路20a、20aが挿通する挿通孔が設けられており、本体部28の開口端に当接した状態で本体部28に止め付けられている。上記Oリング30は、テーパ部と直線管路20aの隙間において、本体部28、蓋部29、および直線管路20a外面のいずれにも当接した状態で設置されている。Oリング30は、本体部28と蓋部29とによって圧縮され、弾性変形した状態となっていることが好ましく、ゴムなどの弾性材料からなるものが用いられる。
【0039】また、上記本体部28は、直線管路20aが長手方向に移動可能となるように、上端側の開口部の開口径と挿通孔の開口径とが、直線管路20aの外径よりも大きくなるように構成されている。また、直線管路20aの交換を、蓋部29を外すことなく容易に行うことができるように、直線管路20aを上端方向に移動させると、下端側が蓋部29の上面から離れ、直線管路20aを傾斜できるように構成されており、直線管路20aの下端側が蓋部29と本体部28とに長さaだけ挿入され、かつ、直線管路20aの上端部と本体部28内流路の最奥部とが距離bだけ離れているとすると、b>aとなるように構成されている。また、直線管路20aが挿入される長さaが上端側と下端側とで均等となるように、下端側の本体部28の直線管路20aの挿通孔には、直線管路20aが長さa以上挿入されないように、直線管路20aの外径よりも小さい段部が設けられている。
【0040】図3および図5に示すように、上記人工光照射部24は、光触媒反応部22の正面側および背面側に設けられており、光触媒反応部22と対向するように面状に配列された複数本の直管状の紫外線光源23と、紫外線光源を固定する矩形板状のホルダ23aとを備えたものである。上記紫外線光源23は、光触媒反応部22全体に均一に紫外線光を照射できるように鉛直方向に配置され、また、紫外線光源23による発熱が光触媒反応部22に影響を及ぼさないように、2〜4本の直線管路20aに対して、光触媒反応部22の正面側と背面側にそれぞれ一本ずつ紫外線光源23が配置されるように、水平方向に2〜100cm程度のピッチ間隔で並列されている。このような紫外線光源23としては、汎用のエキシマランプやブラックライトなどが用いられる。
【0041】また、上記ホルダ23aには、放熱のための開口部32が設けられている。上記開口部32の形状は、円形や四角形など限定されないが、開口径が10〜20mm程度であり、ホルダ23aの全表面積に対して開口部32の全表面積が占める割合(開口率)が10〜40%程度であるものが好ましい。
【0042】上記光触媒反応部22と人工光照射部24とを取り囲むように、反射板33が設けられている。この反射板33は、紫外線光源23が点灯した時に、紫外線光源23から反射板33に照射された光を高い効率で反射し、光触媒顆粒体21に照射することができるように、かつ、光が外部に漏れないように構成されており、図5に示すように水平面での断面形状が6角形となるように設置されていることが好ましい。上記反射板33としては、アルミニウム、ステンレス、銅などを素材とし、表面が滑らかで、かつ、放熱性に優れたものが用いられる。また、紫外線光源23の点灯装置34は、紫外線光源23による発熱の影響を受けないように、光触媒反応部22の左右両側部に、鉛直方向に整列して設けられている。
【0043】図2に示すように、上記分解生成ガス供給管路4は、後処理部5に接続されている。上記後処理部5は、処理槽35に、分解生成ガス入口部36と、排ガス及び排水出口部37とが設けられたものである。また、上記分解生成ガス供給管路4、処理槽35、分解生成ガス入口部36は、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂などの耐食性、耐薬品性に優れた高分子物質によって形成されていることが望ましい。
【0044】上記処理槽35は、底面積が100〜300cm2程度、高さが100〜500cm程度、容量が10〜30l程度である略四角柱状の容器であり、耐食性に優れたポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等を素材とする、またはこれらを内壁面に被覆した容器等が用いられる。上記処理槽35には、分解生成ガス入口部36より供給される分解生成ガスを、吸収、吸着、中和するための処理剤が注入されている。上記処理剤としては、例えば、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、石灰、アンモニア、苛性ソーダ、アルカリイオン水、水などの中から選択される1種、または2種以上を含むアルカリ性イオン水などが用いられる。これらの処理剤の形態は、液相に限らず、粉体状の流動床であっても良く、また、それらの複合形であっても構わない。また、上記後処理効率を高めるために、分解生成ガス入口部36の処理槽35内部側には、図示略の散気管が設けられていることが好ましい。
【0045】上記廃液処理装置の構成要素である気化処理部1、光酸化分解処理部3、および後処理部5は、いずれか一つが不良状態に陥った場合に、不良状態に陥った構成要素のみを良好状態であるものに取り替えることができるように、着脱可能に構成されており、縦20〜50cm程度、横20〜50cm程度で、底部に4つのキャスターが設けられているベース部39に集約して収納されている。
【0046】このような構造の廃液処理装置にあっては、気化処理部1によって廃液中より気化された塩素系有機ガスを含む気化ガスを、光酸化分解処理部3によって光酸化分解し、これによって生じた塩素系ガスを含む分解生成ガスを後処理部5によって無害な塩類に変換することができるように構成されているため、処理後の排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、排出基準内に抑制することができ、環境汚染の抑制に貢献し得るものである。また、ドライクリーニング等からの廃液中に含まれる塩素系有機物を、気化処理部1において気化させてから、光酸化分解処理部3において光酸化分解させるように構成されているため、廃液をそのまま光酸化分解させる場合よりも、光酸化分解処理効率を向上させることができ、処理に要する時間やコストを削減できるものである。
【0047】また、光酸化分解処理部3における直線管路20aとして、内径が5〜30mm、長さが200〜800mmのものを用いることによって、紫外線光源23からの紫外線光を光触媒反応部22の全長にわたって均一に中心付近まで照射させ、かつ、ガス流通管路20内に光触媒顆粒体21を十分に充填させることができるため、光酸化分解処理効率に優れたものである。また、光触媒顆粒体21として、粒径が1〜20mmのものを用い、光触媒顆粒体21の比表面積を大きくすることによって、光触媒顆粒体21と気化ガスとの接触効率を高め、かつ、光触媒顆粒体21の受光効率を高めることができるため、光酸化分解処理効率に優れたものである。また、光触媒顆粒体21として、塩素系有機ガスや塩素系ガス等を吸着する無機物粉体と光触媒粒子との混合物を用いることによって、塩素系有機ガス等が光触媒顆粒体に吸着保持された状態で光酸化分解されることになるため、光酸化分解処理効率に優れ、未分解の塩素系有機物が光酸化分解処理部3の外部に排出されることがないものである。
【0048】また、気化ガスおよび/または分解生成ガスが流通する経路の内壁面が、耐食性、耐薬品性に優れたフッ素系樹脂やポリエチレン系樹脂などの高分子物質でコーティングもしくは経路がこれらの物質で形成されているため、塩素系ガス等によって腐食され難いものである。また、曝気時における曝気槽6内の圧力を、+0.1〜+5.0kg/cm2に調整できるように構成されているため、廃液中に発生する曝気泡径を微小化することができ、廃液と空気との接触面積、時間を増加させることができ、曝気効率を向上させ、処理に要する時間を短縮することができるものである。また、曝気槽6内の圧力によって、気化ガスを気化ガス供給管路2へ排出することができ、エネルギーを有効に利用することができるものである。また、曝気時に用いられる圧縮空気の供給源としては、クリーニング業や洗浄業の工場等で一般的に配備されているものを用いることができるため、新技術導入に際してのコストを低減させることができるものである。
【0049】また、曝気槽6の内壁がフッ素系樹脂やポリエチレン系樹脂などの高分子物質で被覆されているので、塩素系有機物が内壁に付着することを防ぐことができ、塩素系有機物と気泡との接触効率を向上させることができ、優れた曝気効率を発揮し得るものである。また、曝気槽6の内部に攪拌装置を具備しているので、塩素系有機物が底部や内壁面に滞留することを防ぐことができ、塩素系有機物と気泡との接触効率を高め、優れた曝気効率を発揮し得るものである。また、曝気槽6内部側の圧縮空気入口部13には散気管が設けられているので、廃液中に生じる曝気泡径を微小化することができ、廃液と気泡との接触面積、時間を増加させることができ、優れた曝気効率を発揮し得るものである。
【0050】また、曝気槽6として、鉛直方向に長い構造の容器を用いているため、廃液と空気との接触面積、時間を増加させることができ、曝気効率を向上させ、処理に要する時間を短縮することができるものである。また、直線管路20aおよび紫外線光源23を鉛直方向に配置しているため、光酸化分解処理部3が鉛直方向に長い構造となっており、装置の設置面積を小さくすることができるものである。
【0051】また、光触媒顆粒体21を洗浄するための中性もしくはアルカリ性水溶液を、光触媒反応部22に送入し、光触媒顆粒体21に吸着、蓄積した塩素系ガスなどの分解生成物を容易に洗浄排除することができるように構成されているため、光触媒顆粒体21の光酸化分解処理能率を良好に維持し続けることができ、未分解の塩素系有機物が光酸化分解処理部3の外部に排出される危険性を抑制することができるものである。
【0052】次に、上記廃液処理装置を用いた廃液処理方法の一例について説明する。まず、廃液10〜20l程度を、まず、第1、第2、第3の開閉バルブ10、14、19を各々閉じた状態で、廃液入口部7より曝気槽6内に注入する。ここで、上記廃液の具体例としては、ドライクリーニングや金属部品洗浄等の洗浄装置等により排出される塩素系有機物を含有する産業廃水等が挙げられる。
【0053】次いで、圧力計16を確認しながらレギュレータ15を使って、0.1〜5kg/cm2程度に調整された圧縮空気を、図示略の供給源から圧縮空気入口部13に設けられらた圧縮空気供給管路17へ供給し、第2の開閉バルブ14と第3の開閉バルブ19を開くことによって、曝気処理を開始し、5〜50l/分程度の曝気量で曝気処理を行う。この時、上記圧縮空気供給管路17から供給される圧縮空気の圧力を調整することによって、曝気槽6の内部を、大気圧に対して+0.1〜+5.0kg/cm2、より好ましくは+0.5〜+3.0kg/cm2程度の加圧状態に維持することができる。これによって、廃液中に発生する曝気泡径を、微小化することができ、同じ空気容量で比較した時の気液の接触面積と接触時間を増加させることができ、曝気効率を高めることができる。
【0054】また、上記曝気槽6の内圧により、曝気処理された塩素系有機ガス等の気化ガスは、気化ガス出口部18から気化ガス供給管路2に排出され、第2の分岐バルブ26を気化ガス供給管路2と開通させることにより、気化ガス供給管路2から入口部20bへ送入され、光酸化分解処理部3の光触媒反応部22へと導入される。
【0055】上記光触媒反応部22に供給された塩素系有機ガス等の気化ガスは、光触媒反応部22中を流れる過程で、光触媒顆粒体21と接触し、光触媒顆粒体21に含有される無機物粉体に捕捉される。この時、光触媒顆粒体21に、紫外線光源23から紫外線光を照射することにより、光触媒顆粒体21に含有される光触媒粒子が活性化され、その触媒作用により、上記無機物粉体に捕捉された塩素系有機物等を光酸化分解させることができる。
【0056】このようにして塩素系有機物等が酸化分解されて生じる塩素系ガス等の分解生成ガスは、第4の開閉バルブ27を分解生成ガス供給管路4と接続させることによって、出口部20cから光酸化分解処理部3の外部へ排出され、分解生成ガス供給管路4を通って、後処理部5の分解生成ガス入口部36から処理槽35へと注入される。上記処理槽35に供給された分解生成ガス中に含まれる塩素系ガス等は、処理槽35内に予め注入されている処理剤中のアルカリイオンによって中和され、無害な塩類へ変換されるか、液中に吸収除去される。このようにして得られた無害化処理ガス、処理水は、排ガス及び排水出口部37を介して外部に排出される。
【0057】所要時間経過後、上記第2、第3の開閉バルブ14、19を閉じ、次いで、排液出口部8の第1の分岐バルブ9を、排液チューブ11に接続し、さらに第1の開閉バルブ10を開放し、曝気槽6内残圧を利用して、曝気後の排液を排液チューブ11を介して、外部へ排出させる。
【0058】また、上記廃液の代わりに、光触媒顆粒体21を洗浄するための中性またはアルカリ性水溶液を、上記と同様の手順で曝気槽6内に注入し、圧縮空気を曝気槽6内に送入して、曝気槽6内を加圧後、排液出口部8における第1の分岐バルブ9を洗浄液供給管路12と接続し、この洗浄液供給管路12と第2の分岐バルブ26とを接続し、第1の開閉バルブ10を開放することにより、曝気槽6の内圧によって排出された洗浄用の中性またはアルカリ性水溶液を、光触媒反応部22に供給することができ、光触媒顆粒体21に蓄積された分解生成物を洗浄、排除することができる。
【0059】このような廃液処理方法にあっては、気化処理部1において廃液中より気化された塩素系有機ガスを含む気化ガスを、光酸化分解処理部3において光酸化分解し、これによって生じた塩素系ガスを含む分解生成ガスを、後処理部5において無害な塩類に変換するものであるため、処理後の排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、排出基準内に抑制することができ、環境汚染の抑制に貢献し得る廃液処理方法である。また、廃液中に含まれている塩素系有機物を、気化処理部1において気化させてから、光酸化分解処理部3において光酸化分解させるので、廃液をそのまま光酸化分解させる場合よりも、光酸化分解処理効率を向上させることができ、処理に要する時間やコストを削減することができる。
【0060】また、曝気槽6内の圧力を、+0.1〜+5.0kg/cm2に調整した状態で曝気を行うため、廃液中に発生する曝気泡径を微小化することができ、気液の接触面積、時間を増加させることができ、曝気効率を向上させ、処理に要する時間を短縮することができる。また、曝気槽6内の圧力によって、気化ガスを気化ガス供給管路2へ排出することができ、エネルギーを有効に利用することができ、処理に要する時間やコストを削減できる。
【0061】また、中性もしくはアルカリ性水溶液を、光触媒反応部22に送入し、光触媒顆粒体21に吸着、蓄積した分解生成物を、洗浄排除する工程を設けているため、光触媒顆粒体21の光酸化分解処理能率を良好に維持し続けることができ、処理に要する時間やコストを削減することができる。
【0062】本発明の洗浄装置は、現在汎用されているドライクリーニング装置等の洗浄機能を有する洗浄装置と本発明の廃液処理装置とを組み合わせたものである。
【0063】
【実施例】以下、実験例を示して本発明を、より具体的に説明する。かかる具体例は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲で任意に変更が可能である。
(実験例)本実験例では、図2〜図5に示す廃液処理装置を用いた。この廃液処理装置では、直線管路20aとして、内径10mm、外径12mm、長さ690mmのものを12本用い、これらを水平方向に20mmの間隔で面状に並列し、相隣接する直線管路20aの端部同士を接続して、鉛直方向上下に走行するガス流通管路20を構成した。
【0064】直線管路20aに充填させる光触媒顆粒体21中に含まれる光触媒粒子としてはTiO2を用い、無機物粉体としてはタルクを用い、光触媒顆粒体21中におけるTiO2の含有量が66重量%となるようにこれらを配合し、直径5mm、最大高さ3mmのタブレット状に圧縮成形したものを、光触媒顆粒体21として用いた。紫外線光源23としては、外径32mm、長さ690mmの30Wブラックライトを8本用い、光触媒反応部22の正面側と背面側とに4本づつ配置し、これらを均一な間隔で面状に並列させ、正面側と背面側の両面から紫外線光を、光触媒反応部22全長にわたって均一に照射した。処理槽35に注入する処理剤としては、3%カ性ソーダ溶液を用いた。ベース部39としては、横幅450mm、縦幅400mmの大きさで、底部に4つのキャスターが取り付けられているものを用いた。
【0065】曝気槽6内に、塩素系有機物濃度が150mg/lである廃液を15l注入し、曝気量10l/分、曝気槽6内圧2kg/cm2となるように調整しながら、90分間曝気処理を行い、曝気槽6内圧を利用して気化ガスを光触媒反応部22に導入し、光酸化分解処理によって生じた分解生成ガスを処理槽35に導入した。上記処理中における、気化ガス出口部18から排出される気化ガス中に含まれる塩素系有機ガス濃度、出口部20cから排出される分解生成ガス中に含まれる塩素系有機ガス濃度および塩素系ガス濃度、並びに排ガス出口部37から排出されるガス中に含まれる塩素系ガス濃度について、公知のガス検知管吸引方式に従って測定を行った。また、90分間の曝気処理を施行した後の廃液中に含まれる塩素系有機物濃度についても、同様に測定を行った。
【0066】結果、気化ガス出口部18から排出された気化ガス中に含まれていた塩素系有機ガスの最大濃度は、6000ppmと高いものであった。これに対して、出口部20cから排出された分解生成ガス中に含まれていた塩素系有機ガス濃度は、検出限界以下であった。また、出口部20cから排出された分解生成ガス中に含まれていた塩素系ガスの最大濃度は、40ppmと高いものであった。これに対して、排ガス出口部37から排出されたガス中に含まれていた塩素系ガス濃度は、検出限界以下であった。また、90分間曝気処理後の廃液中に含まれていた塩素系有機物濃度は、0.05mg/lであり、排出基準値(0.1mg/l)以下であった。
【0067】(参考例)上記実験例で用いた光触媒顆粒体21が有する塩素系有機物に対する吸着性と、市販品のネット上に担持されたTiO2が有する塩素系有機物に対する吸着性との比較検討を行った。50gの光触媒顆粒体21または市販品のネット上に担持されたTiO2が設置されたデシケーター内に、50μlのトリクロロエチレンを注入後、これを密閉遮光した状態で10分、20分、30分経過させた時のデシケーター内のトリクロロエチレン濃度を、ガス検知管吸引方式によって測定した。結果を表1に示す。表1に示す結果より、上記実験例で用いた光触媒顆粒体21は、塩素系有機物に対する優れた吸着性を有するものであることが示された。
【0068】
【表1】


【0069】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の廃液処理装置にあっては、光酸化処理効率や曝気処理効率に優れたものであるので、廃液処理に要する時間やコストを削減することができ、かつ、排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、排出基準値内に抑制することができ、環境汚染の抑制に貢献し得るものである。また、気化処理部として、従来技術で用いられている装置を活用することができるため、新技術を導入するに際して負荷されるコストを低減することができるものである。
【0070】また、強力な金属腐食性を有する塩素系ガスと接触する部位が、耐食性に優れた素材となるように構成されたものであり、また、光触媒顆粒体21を洗浄することができるように構成されたものであるため、長期にわたって使用することができ、メンテナンスに要するコストを削減することができるものである。また、鉛直方向に細長い構造となっているので、水平面での空面積が小さい場所にも設置可能なものであり、また底部にキャスターが設けられているので、持ち運びが容易なものである。また、塩素系有機物を含む廃液を排出する各種洗浄装置と、容易に接続することができるものである。
【0071】また、本発明の廃液処理方法にあっては、処理に要するコストや時間を削減することができ、排液、排ガス中に含まれる塩素系有機物、および2次副産物である塩素系ガスの排出量を、容易に排出基準値内に抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の廃液処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】 本発明の廃液処理装置の一例を示す概略斜視図である。
【図3】 図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とした概略側面図である。
【図4】 図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とし、該透視図の一部を断面図とした概略背面図である。
【図5】 図2に示す廃液処理装置の一部を透視図とした概略平面図である。
【符号の説明】
1…気化処理部、2…気化ガス供給管路、3…光酸化分解処理部、4…分解生成ガス供給管路、5…後処理部、6…曝気槽、7…廃液入口部、8…排液出口部、9…第1の分岐バルブ、12…洗浄液供給管路、13…圧縮空気入口部、14…第2の開閉バルブ、15…レギュレータ、16…圧力計、17…圧縮空気供給管路、18…気化ガス出口部、20…ガス流通管路、20a…直線管路、21…光触媒顆粒体、22…光触媒反応部、23…紫外線光源、24…人工光照射部、35…処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】 廃液中の塩素系有機溶剤を気化する気化処理過程と、前記廃液中より気化された気化ガスを、光触媒顆粒体がガス流通管路に充填されてなる光触媒反応部に送入し、該光触媒反応部に紫外線光源から光を照射し、気化ガスを光酸化分解する光酸化分解処理過程と、前記光酸化分解によって生成された分解生成ガスを、吸収、吸着、中和する後処理過程からなることを特徴とする廃液処理方法。
【請求項2】 前記気化処理過程が、曝気方式または加熱蒸発方式であることを特徴とする請求項1に記載の廃液処理方法。
【請求項3】 前記曝気方式は、曝気槽に廃液を注入後、大気圧に対して+0.1kg/cm2〜+5kg/cm2に曝気槽内を加圧し、曝気した気化ガスを、曝気槽内の圧力を利用して光触媒反応部に送入する方式であることを特徴とする請求項2に記載の廃液処理方法。
【請求項4】 前記後処理過程は、分解生成ガスを、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、石灰、アンモニア、苛性ソーダ、アルカリイオン水、水等の中から選択される少なくとも1種を含んだ液状もしくは粉末状の処理剤中に注入し、これを吸収、吸着、中和する過程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃液処理方法。
【請求項5】 光触媒顆粒体を洗浄するための中性もしくはアルカリ性水溶液を前記光触媒反応部に流通させて、光触媒顆粒体に蓄積された分解生成物を除去する光触媒洗浄過程を具備することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の廃液処理方法。
【請求項6】 廃液中の塩素系有機溶剤を気化する気化処理部と、前記気化処理部によって気化された気化ガスを光酸化分解する光酸化分解処理部と、前記光酸化分解処理部によって生成された分解生成ガスを吸収、吸着、中和する後処理部を具備することを特徴とする廃液処理装置。
【請求項7】 前記光酸化分解処理部は、気化ガスが流通するガス流通管路内に、光によって活性化され、ガス中の有機物を酸化分解させる光触媒顆粒体が充填されてなる光触媒反応部と、光触媒顆粒体に紫外線光を照射するための紫外線光源を有する人工光照射部を備えたものであって、前記光触媒顆粒体が、最小粒径が1mm以上および最大粒径が20mm以下に成形されたものであり、前記ガス流通管路が、内径5〜30mm、長さ200〜800mmの直線管路複数本が、全体として一つの流路を形成するように相隣接する直線管路の端部同士が接続されたものであることを特徴とする請求項6に記載の廃液処理装置。
【請求項8】 前記光触媒顆粒体は、塩素系有機ガスおよび塩素系ガスを吸着する無機物粉体と光触媒粒子の混合物であり、光触媒顆粒体中における光触媒粒子の含有量が10〜95重量%であることを特徴とする請求項7に記載の廃液処理装置。
【請求項9】 前記光触媒粒子は二酸化チタン微粒子であり、前記無機物粉体は、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石灰、カオリンクレー、ワラストナイト、タルク、ネフェリンシナイト、ゼオライト、活性炭の中から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項8に記載の廃液処理装置。
【請求項10】 前記直線管路および紫外線光源が鉛直方向に設置されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項11】 前記後処理部は、処理槽内部に、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、石灰、アンモニア、苛性ソーダ、アルカリイオン水、水等の中から選択される少なくとも1種を含んだ液状もしくは粉末状の吸収、吸着、中和処理剤を備えたものであることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項12】 前記光酸化分解処理部および後処理部において、前記気化ガスおよび/または分解生成ガスの流路となる部位の一部もしくは全部の内壁面が、高分子物質を素材としたもので構成されていることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項13】 前記気化処理部として、廃液中の塩素系有機溶剤を曝気させる曝気処理部、もしくは廃液中の塩素系有機溶剤を加熱蒸発させる加熱蒸発処理部を用いたものであることを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項14】 前記曝気処理部は、曝気槽に、廃液を注入するための廃液入口部と、曝気処理後の排液を排出するための排液出口部と、圧縮空気を送入するための圧縮空気入口部と、気化ガスを光酸化分解処理部に排出するための気化ガス出口部を具備するものであって、前記圧縮空気入口部には、開閉バルブと、レギュレータと、圧力計と、圧縮空気供給口が設けられ、曝気槽の内圧を、大気圧に対して+0.1kg/cm2〜+5kg/cm2に調整することができるように構成されており、曝気槽内の圧力を利用して、気化ガスを気化ガス出口部から前記光触媒反応部へ排出できるように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の廃液処理装置。
【請求項15】 前記曝気槽は、槽内壁をフッ素系樹脂またはポリエチレン系樹脂によりコーティングされているものであることを特徴とする請求項14に記載の廃液処理装置。
【請求項16】 前記曝気槽は、内部に廃液攪拌装置を具備していることを特徴とする請求項14または15に記載の廃液処理装置。
【請求項17】 前記曝気槽は、圧縮空気を曝気槽内部に送入するための圧縮空気入口部に散気管を具備していることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項18】 前記排液出口部には、光酸化分解処理部に接続している洗浄液供給管路が、分岐バルブを介して連結されており、光酸化分解処理部に、あらかじめ曝気槽に注入された洗浄用の中性もしくはアルカリ性水溶液を送入、流通させることができるように構成されていることを特徴とする請求項14〜17のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項19】 請求項6〜18のいずれかに記載の廃液処理装置を具備することを特徴とする洗浄装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開2001−347258(P2001−347258A)
【公開日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−305316(P2000−305316)
【出願日】平成12年10月4日(2000.10.4)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】