説明

廃液処理装置

【課題】本発明は、所定の温度まで昇温するのに必要な時間を短くすると共に、消費電力を小さくすることが可能な廃液処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】水及び有機物を含む廃液を処理する廃液処理装置は、水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、有機物を酸化させる反応器10と、反応器10に廃液を供給する廃液供給部と、反応器10に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給部と、反応器10を加熱する加熱部40を有し、加熱部40は、反応器10に赤外線又は可視光線を照射する光照射装置41と、反応器10を収容する減圧容器42と、減圧容器42内を減圧する真空ポンプ43を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃液を処理する方法としては、焼却処理、生物処理等の方法が知られている。しかしながら、焼却処理は、前処理の脱水や固形分凝集において、エネルギーや薬品が必要となり、不完全燃焼によりダイオキシン類が発生するという問題があった。また、生物処理は、処理時間が長く、処理後に発生する活性汚泥が新たな廃棄物となるという問題があった。
【0003】
そこで、亜臨界水、過熱水蒸気、超臨界水等の熱水中で廃液を処理する方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、電力用トランスやコンデンサなどの電力機器に含まれるPCBを無害化処理するPCB処理方法が開示されている。このPCB処理方法は、電力用トランス或いはコンデンサなどの電力機器の構成材を分割破砕する工程と、分割破砕した破砕片からPCBに汚染された紙、木或いは樹脂などの有機廃棄物を他の構成材から分離して取り出す工程と、取り出した有機廃棄物を水熱分解処理または超臨界水酸化処理する工程を含む。
【0005】
一方、特許文献2には、金属管からなる液体加熱管の内部に原料液体を流し、該原料液体を液体加熱管の外部より加熱して超臨界流体を生成するための加熱装置が開示されている。このとき、加熱手段としては、電熱線をらせん状に巻いたヒータが用いられている。
【0006】
しかしながら、所定の温度まで昇温するのに必要な時間が長くなると共に、消費電力が大きくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、所定の温度まで昇温するのに必要な時間を短くすると共に、消費電力を小さくすることが可能な廃液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、水及び有機物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、前記水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、前記有機物を酸化させる反応器と、前記反応器に前記廃液を供給する廃液供給手段と、前記反応器に酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、前記反応器を加熱する加熱手段を有し、前記加熱手段は、前記反応器に赤外線又は可視光線を照射する光照射手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃液処理装置において、前記加熱手段は、前記反応器を収容する減圧容器と、前記減圧容器内を減圧する減圧手段をさらに有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の廃液処理装置において、前記光照射手段は、前記反応器に赤外線を照射し、前記減圧容器は、石英又は蛍石を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃液処理装置において、前記加熱手段は、前記光照射手段により照射された赤外線又は可視光線を反射して前記反応器に照射する反射部材をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の温度まで昇温するのに必要な時間を短くすると共に、消費電力を小さくすることが可能な廃液処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の廃液処理装置の一例を示す図である。
【図2】図1の加熱部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0015】
図1に、本発明の廃液処理装置の一例を示す。水及び有機物を含む廃液21aを処理する廃液処理装置100は、水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、有機物を酸化させる反応器10と、反応器10に廃液21aを供給する廃液供給部20と、反応器10に過酸化水素水31aを供給する過酸化水素水供給部30と、反応器10を加熱する加熱部40と、反応器10から排出された有機物が酸化した廃液と熱交換する熱交換器50と、反応器10から排出された有機物が酸化した廃液を気液分離する気液分離部60を有する。
【0016】
加熱部40は、図2に示すように、赤外線又は可視光線を反応器10に照射する光照射装置41と、反応器10を収容する減圧容器42と、減圧手段としての、減圧容器42内を減圧する真空ポンプ43と、開閉弁44と、反射部材としての、光照射装置41により照射された赤外線又は可視光線を反射して反応器10に照射する環状反射板45と、筐体46を有する。このとき、反応器10及び減圧容器42は、それぞれ円筒形状であり、二重管構造を形成している。なお、図2(a)及び(b)は、それぞれ正面断面図及び側面断面図である。
【0017】
光照射装置41としては、反応器10を加熱することが可能な赤外線又は可視光線を照射することが可能であれば、特に限定されないが、ハロゲンランプ、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、キセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、超高圧UVランプ、高圧UVランプ等が挙げられる。
【0018】
光照射装置41により反応器10に照射される赤外線又は可視光線の光量は、通常、数〜数十mW/cmである。
【0019】
減圧容器42を構成する材料としては、赤外線又は可視光線を透過することが可能であれば、特に限定されないが、フリントガラス、サファイア、石英、蛍石等が挙げられる。中でも、赤外線又は可視光線の透過性に優れることから、石英、蛍石が好ましい。
【0020】
減圧容器42の赤外線又は可視光線の透過率は、通常、85%以上である。減圧容器42の赤外線又は可視光線の透過率が85%未満であると、所定の温度まで昇温するのに必要な時間が長くなると共に、消費電力が大きくなることがある。
【0021】
減圧容器42は、光照射装置41により照射された赤外線又は可視光線の光路を含む領域のみが赤外線又は可視光線を透過することが可能な材料から構成されていてもよい。
【0022】
減圧容器42の形状としては、真空ポンプ43を用いて減圧することが可能であれば、特に限定されない。
【0023】
真空ポンプ43により減圧されている減圧容器42内の圧力は、通常、1×10−3Pa以下である。真空ポンプ43により減圧されている減圧容器42内の圧力が1×10−3Paを超えると、所定の温度まで昇温するのに必要な時間が長くなると共に、消費電力が大きくなることがある。
【0024】
減圧手段としては、減圧容器42内を減圧することが可能であれば、真空ポンプ43に限定されない。
【0025】
なお、所定の温度まで昇温するのに必要な時間を短くすると共に、消費電力を小さくすることが可能であれば、減圧容器42内を減圧しなくてもよい。
【0026】
環状反射板45を構成する材料としては、赤外線又は可視光線を反射することが可能であれば、特に限定されないが、反射率に優れるため、金メッキされているガラスが好ましい。
【0027】
反射部材としては、光照射装置41により照射された赤外線又は可視光線を反射して反応器10に照射することが可能であれば、環状反射板45に限定されない。
【0028】
反応器10は、有機物が酸化した廃液が排出される側の端部の近傍に、酸化触媒として、MnO(不図示)が充填されている。
【0029】
なお、MnOの代わりに、Pt、Ir、Ag、Pd、Rh、Ru、Cu、Ni、Co、Fe、W、PdO、PtO、PtO、AgO、RuO、CuO、Co、NiO、Fe、VO5、Cr、CdO、CeO、Al、ThO等を用いてもよい。
【0030】
反応器10の内部の温度は、温度センサTにより検知され、所定の温度になるように加熱部40が制御される。
【0031】
加熱部40により加熱される反応器10の内部の温度は、通常、100〜700℃であり、200〜600℃が好ましい。
【0032】
廃液供給部20は、廃液21aが貯蔵されているタンク21と、廃液21aを圧縮してタンク21から反応器10に連続供給するプランジャーポンプ22と、開閉弁23を有する。このとき、タンク21には、攪拌羽根21bが設置されており、廃液21aを攪拌することができる。また、反応器10に供給される廃液21aの圧力は、圧力センサPにより検知され、所定の圧力になるようにプランジャーポンプ22が制御される。
【0033】
反応器10に供給される廃液21aの圧力は、通常、1〜50MPaであり、5〜35MPaが好ましい。
【0034】
過酸化水素水供給部30は、過酸化水素水31aが貯蔵されているタンク31と、過酸化水素水31aを廃液が供給される圧力以上に圧縮してタンク31から反応器10に連続供給するシリンジポンプ32と、開閉弁33を有する。このとき、反応器10に供給される過酸化水素水31aの圧力は、圧力センサPにより検知され、所定の圧力になるようにシリンジポンプ32が制御される。
【0035】
以上のようにして、反応器10では、廃液供給部20から供給された廃液21aと、過酸化水素水供給部30から導入された過酸化水素水31aが混合される。次に、加熱部40により加熱されて、廃液21a及び過酸化水素水31aに含まれる水が亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化されると共に、廃液21aに含まれる有機物が酸化されて低分子化される。さらに、低分子化された有機物は、MnOの触媒作用により完全酸化される。
【0036】
熱交換器50には、水(不図示)が貯蔵されているため、反応器10から排出された有機物が酸化した廃液が水と熱交換することにより、水蒸気が発生する。
【0037】
気液分離部60は、熱交換器50から排出された有機物が酸化した廃液を大気圧まで減圧する背圧弁61と、減圧された有機物が酸化した廃液を気液分離する気液分離器62を有する。このとき、気液分離器62は、減圧された有機物が酸化した廃液を、無機酸等を僅かに含む水と、二酸化炭素ガス、窒素ガス等を含む気体に分離し、無機酸等を僅かに含む水が回収される。無機酸等を僅かに含む水は、水質基準を確認した後、工業用水として再利用される。
【0038】
なお、反応器10に過酸化水素水31aを供給する過酸化水素水供給部30の代わりに、反応器10に空気を供給する空気供給部、反応器10にオゾンを供給するオゾン供給部等を用いてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて、具体的に説明する。
【0040】
[実施例1]
廃液処理装置100を用いて、8質量%メタノール水溶液を処理した。このとき、光照射装置41として、波長が0.8〜1μmの近赤外線を照射するハロゲンランプ、減圧容器42を構成する材料として、石英、環状反射板45を構成する材料として、金メッキされているガラスを用いた。また、反応器10の有機物が酸化した廃液が排出される側の端部の近傍にMnO5gを充填した。
【0041】
まず、開閉弁23及び32を閉じた状態で、開閉弁44を開き、真空ポンプ43を用いて減圧容器42内の圧力を1×10−3Paに減圧した。次に、加熱部40を用いて、内部の温度が400℃になるまで反応器10を加熱した。その結果、内部の温度が400℃になるまで昇温するのに必要な時間は3分間であり、消費電力を小さくすることができた。
【0042】
次に、開閉弁23及び32を開き、プランジャーポンプ22を用いて、8質量%メタノール水溶液を10MPaで反応器10に供給すると共に、シリンジポンプ32を用いて、過酸化水素水31aを10MPaで反応器10に供給した。このとき、反応器10に供給される8質量%メタノール水溶液に対する過酸化水素水31aの質量比を30%とし、8質量%メタノール水溶液及び過酸化水素水31aの反応器10における滞留時間を1分間とした。
【0043】
次に、反応器10から排出された有機物が酸化した廃液は、熱交換器50に貯蔵されている水と熱交換することにより瞬時に25℃に冷却された。さらに、冷却された有機物が酸化した廃液は、背圧弁61により減圧された後、気液分離器62により液体成分と気体成分に分離された。
【0044】
気液分離器62により分離された液体成分と気体成分を分析したところ、TOC基準で99.999%の分解率が達成されていること、液体成分が水を含有すること、気体成分が二酸化炭素と水を含有することが確認された。
【0045】
[実施例2]
減圧容器42を構成する材料として、蛍石を用いた以外は、実施例1と同様にして、8質量%メタノール水溶液を処理した。その結果、内部の温度が400℃になるまで昇温するのに必要な時間は3分間であり、消費電力を小さくすることができた。
【0046】
[実施例3]
光照射装置41として、波長が1.2μmの近赤外線を照射する短波長赤外線ヒーターを用いた以外は、実施例1と同様にして、8質量%メタノール水溶液を処理した。その結果、内部の温度が400℃になるまで昇温するのに必要な時間は3分間であり、消費電力を小さくすることができた。
【0047】
[実施例4]
光照射装置41として、波長が2.6μmの近赤外線を照射する中波長赤外線ヒーターを用いた以外は、実施例1と同様にして、8質量%メタノール水溶液を処理した。その結果、内部の温度が400℃になるまで昇温するのに必要な時間は3分間であり、消費電力を小さくすることができた。
【0048】
[実施例5]
光照射装置41として、波長が60〜400nmの可視光線を照射するキセノンフラッシュランプを用いた以外は、実施例1と同様にして、8質量%メタノール水溶液を処理した。その結果、内部の温度が400℃になるまで昇温するのに必要な時間は5分間であり、消費電力を小さくすることができた。
【0049】
[実施例6]
真空ポンプ43を用いて減圧容器42を減圧しなかった以外は、実施例1と同様にして、8質量%メタノール水溶液を処理した。その結果、内部の温度が400℃になるまで昇温するのに必要な時間は15分間であり、消費電力を小さくすることができた。
【0050】
[比較例1]
加熱部40の代わりに、炉体としてのセラミクス成形品で覆われた管状電気炉を用いた以外は、実施例1と同様にして、8質量%メタノール水溶液を処理した。その結果、内部の温度が400℃になるまで昇温するのに必要な時間は60分間であり、消費電力が大きくなった。
【符号の説明】
【0051】
100 廃液処理装置
10 反応器
20 廃液供給部
21 タンク
21a 廃液
21b 撹拌羽根
22 プランジャーポンプ
23 開閉弁
30 過酸化水素水供給部
31 タンク
31a 過酸化水素水
32 シリンジポンプ
33 開閉弁
40 加熱部
41 光照射装置
42 減圧容器
43 真空ポンプ
44 開閉弁
45 環状反射板
46 筐体
50 熱交換器
60 気液分離部
61 背圧弁
62 気液分離器
T 温度センサ
、P 圧力センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2002−143825号公報
【特許文献2】特開2001−17851号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び有機物を含む廃液を処理する廃液処理装置であって、
前記水を亜臨界水、過熱水蒸気又は超臨界水に変化させると共に、前記有機物を酸化させる反応器と、前記反応器に前記廃液を供給する廃液供給手段と、前記反応器に酸化剤を供給する酸化剤供給手段と、前記反応器を加熱する加熱手段を有し、
前記加熱手段は、前記反応器に赤外線又は可視光線を照射する光照射手段を有することを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記反応器を収容する減圧容器と、前記減圧容器内を減圧する減圧手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の廃液処理装置。
【請求項3】
前記光照射手段は、前記反応器に赤外線を照射し、
前記減圧容器は、石英又は蛍石を含むことを特徴とする請求項2に記載の廃液処理装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記光照射手段により照射された赤外線又は可視光線を反射して前記反応器に照射する反射部材をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−50937(P2012−50937A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196133(P2010−196133)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】