説明

延伸フィルム

【課題】高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含むフィルムを一軸延伸して、ヒゲの発生が少なく易カット性と直進カット性の特性をバランスよく保持しているフィルムを提供する。
【解決手段】高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を6〜16倍に一軸延伸したフィルムであり、さらに、樹脂組成物が、高密度ポリエチレン100質量部に対し低密度ポリエチレンを1〜25質量部含むフィルムである。又、このフィルムを用いた袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系の一軸延伸したフィルムとその用途に関する。尚、本発明の配合組成を示す「部」の単位は、特に断らない限り質量基準で表示する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂からなるフィルムは、食品や各種の部品等の包装用に広く用いられている。これらのフィルムを包装用に用いる場合は、これらのフィルムは、袋状に加工されている。近年、これらの袋が、はさみやナイフ等を用いなくても手で容易に開封できることが求められている。易引裂き性を主目的とした高密度ポリエチレン99〜70質量部とポリオレフィン1〜30質量部からなる重合体組成物の成形フィルムを縦方向の3〜8倍に延伸してなる縦方向易引裂性フィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−53155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、フィルムを引き裂いた面(カット面)に細い繊維状物((以下「ヒゲ」と略記する)の発生が少なく易カット性と直進カット性の特性をバランスよく兼ね備えたポリエチレン系のフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、高密度ポリエチレンに低密度ポリエチレンを混合した樹脂組成物からなるフィルムを一軸方向に延伸することによって、易カット性および直進カット性を保持しつつ、ヒゲ発生が極めて少ない特長をバランスよく兼ね備えたフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を6〜16倍に一軸延伸したフィルムである。さらに、樹脂組成物が、高密度ポリエチレン100質量部に対し低密度ポリエチレンを1〜25質量部含むことが好ましい。又、このフィルムを用いた袋である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフィルムは、ヒゲの発生が少なく易カット性と直進カット性の特性をバランスに優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフィルムは、高密度ポリエチレン(以下「HDPE」と略記する)と低密度ポリエチレン(以下「LDPE」と略記する)を混合したポリエチレン系樹脂組成物からなる。HDPEを単独で用いると、後述する延伸フィルムにしたときに、ヒゲの発生が多いフィルムとなる。又、LDPEを単独で用いると、延伸したときに、易カット性、直進カット性が劣る。
【0008】
本発明で用いられるHDPEは、融点がDSC法の測定で126〜136℃の範囲であって、密度が0.94〜0.97g/cm3の範囲でメルトフローレート(MFR)がJISK−6922−2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下において、好ましくは0.05〜10.0g/10分であり、さらに好ましくは0.05〜5.0である。
【0009】
本発明で用いられるLDPEは、融点がDSC法の測定で100〜125℃の範囲であって、密度が0.91〜0.93g/cm3の範囲でメルトフローレート(MFR)がJISK−6922−2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下において、好ましくは0.05〜10.0g/10分であり、さらに好ましくは0.05〜5.0である。
【0010】
HDPEとLDPEの配合比は、HDPE100質量部に対して、LDPEを1〜25質量部含有することが好ましく、更に好ましくは5〜15質量部である。LDPEが1質量部未満では、充分なヒゲの発生の低減の効果が得られない恐れがあり、25質量部を超えると、十分な易カット性あるいは直進カット性が得られない場合がある。
【0011】
また、必要に応じて前記樹脂組成物の中に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗ブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料等の添加剤を加えてもよい。
【0012】
混合した樹脂組成物を得る方法には、特に制限はなく、公知の混合方法が用いられる。例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、タンブラーミキサー等公知の混合機を用いて、室温又はその近傍の温度において混合する方法が挙げられる。混合した後、ミキシングロール、一軸又は二軸スクリュー押出機等を用いて混練、溶融した後、得られたシート状物又はストランドを粉砕、切断する等してペレット状に成形してもよい。各樹脂が既にペレット状に成形されている場合は、各樹脂を混合してそのまま用いてもよい。
【0013】
本発明のフィルムは以下のようにして得ることができる。まず前記樹脂組成物を用いて未延伸フィルムを形成する。未延伸フィルムの形成方法としては、前記の原料樹脂の混合物を押出機に供給し、溶融させ、フィルムダイを通して押し出し、成形機で冷却することにより、厚みが約20〜1400μの範囲である未延伸フィルムを形成し、得られた未延伸フィルムを100℃〜140℃縦方向又は横方向に一軸延伸することにより得られる。
【0014】
本発明のフィルムの延伸倍率は、6〜16倍、好ましくは9〜15倍の範囲である。延伸倍率が6倍以下では、延伸方向に直線的に引裂けなくなる。一方16倍を超えると延伸が困難になる。又、延伸されたフィルムの厚さは、5〜100μ、好ましくは10〜60μの範囲である。5μ未満ではフィルムとして必要な強度が不足し、一方、100μを超えると引裂くことが困難となる場合がある。
【0015】
未延伸フィルムを延伸する方法としては、ロール延伸による縦一軸延伸法、又はテンター延伸による横一軸延伸法の採用が挙げられる。好ましくは、テンター延伸による横一軸延伸法である。
【0016】
延伸後のフィルムに寸法を安定させるために、延伸方向に1〜10%程度収縮させ、1〜60秒間、100〜165℃で熱処理(ヒートセット)を施すことが考えられる。又フィルムの表面にはコロナ処理等の表面処理を施すことが考えられる。
【0017】
また易カット性、直進カット性が失われない範囲で、延伸方向と垂直方向に1〜3倍に延伸しても構わない。
【0018】
このフィルムの他の特長としては発明の効果に加え、視認性の向上が得られる場合がある。
【実施例】
【0019】
以下に、表1を参照しつつ、実施例、比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらは、いずれも例示的なもので、本発明の内容を限定するものではない。
【0020】
【表1】

【0021】
表1において「易カット性」とは、フィルムを延伸方向に引裂き、以下の基準で目視評価した。
優良 フィルムが指先のひねりで容易に直線状に切れたもの。
良 指先の爪をたてることによって切れたもの。
不良 指先の爪をたててもフィルムの伸びが生じて、傷などできっかけができて切れるもの。
【0022】
表1において「直線カット性」とは、フィルムを引裂いた時の引裂き方向を、以下の基準で目視評価した。
優良 ほぼ延伸方向に直線的に切れたもの。
良 延伸方向を逸脱する場合があるもの。
不良 方向性がほとんどないもの。
【0023】
表1において「ヒゲ発生率」とは、延伸方向に150mm、延伸と垂直方向に50mmに切り取ったサンプルに延伸と垂直方向の中央部に延伸方向に50mmのスリットを「図1」のように入れる。オートグラフでスリットの両端を持ち、上下に引裂く。これを10回繰り返し、ヒゲの発生する頻度を%で表した。引っ張り方法は、感応オートグラフで1000mm/分の速度で行った。
【0024】
表1において「HAZE」とは、ヘイズメータ(スガ試験機株式会社製、積分球式)を用いて、JIS K7015に準拠し測定したものである。
【0025】
(実施例1)
HDPE(融点=129℃、DSC法の測定)、密度=0.957g/cm3、MFR=0.2g/10分(JISK−6922−2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下))100質量部にLDPE(融点=108℃、DSC法の測定)、密度=0.927g/cm3、MFR=0.4g/10分(JISK−6922−2に規定される温度190℃、荷重2.16kgの測定条件下))10質量部をドライブレンドしたものを押出機内に供給し、溶融したものをフィルムダイに通して押し出し、成形機で冷却することにより、厚みが200μの未延伸フィルムを成形した。この未延伸フィルムを120℃のテンター内で10倍に延伸し、20μの一軸延伸フィルムを得た。
【0026】
(実施例2〜4)及び(比較例1、2)
実施例2〜4及び比較例1、2においては、実施例1のLDPE及び延伸倍率を、それぞれ表1に記載した数値に変更し、実施例1と同様にしてフィルムを得た。比較例2は、延伸倍率が18倍のため、延伸工程が安定しなく表1の特性は、ばらつきが大であった。
【0027】
(比較例3)
LDPEを配合せずにHDPEのみを用いて10倍に延伸した以外、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0028】
(比較例4)
HDPEを配合せずにLDPEのみを用いて10倍に延伸した以外、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0029】
表1から明らかなように、本発明のフィルムは、ヒゲの発生が少なく易カット性と直進カット性の特性をバランスよく保持している。又、表1には示さなかったが該フィルムは、透湿度が低いフィルムである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のフィルムは、例えば、粉末あるいは粒状医薬品等の薬包紙、ジュース類、ゼリー状飲料、栄養ドリンク剤、飲料水、お茶、コーヒー飲料、まんじゅう、どら焼き、ケーキ等の洋菓子、スナック菓子、おにぎり、カップ麺、調味料等の袋に好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】「ヒゲ発生率」を測定するために、フィルムに入れるスリットの説明図である。
【符号の説明】
【0032】
11 スリット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を6〜16倍に一軸延伸したフィルム。
【請求項2】
樹脂組成物が高密度ポリエチレン100質量部に対して低密度ポリエチレンを1〜25質量部を含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載したフィルムを用いた袋。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−348197(P2006−348197A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177404(P2005−177404)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】