説明

建具

【課題】良好な操作性および良好な外観が得られ、製造コストを抑えることができる建具を提供すること。
【解決手段】窓枠に開閉自在に設けられた障子3を所定角度だけ開放した際に、障子3と窓枠2との吊元側の隙間に挿入される挿入位置と、隙間から後退した後退位置と、の間をスライド自在に支持される規制部材10を設ける。挿入位置にスライドされた規制部材10が障子3に当接することで障子3の回動が規制されるので、良好な操作性が得られ、障子3の開閉動作に応じて規制部材10が露出することがなく、良好な外観が得られ、障子3と規制部材10との当接によって障子3の回動を規制するので、規制部材10を小さい剛性の材料で製造することができ、また、規制部材10の部品点数を削減でき、製造コストを抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体と、この枠体に回動自在に支持されて開閉可能な面材とを備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓枠と、この窓枠に回動自在に支持されて開閉可能な障子とを備えた建具において、障子を全閉状態と全開状態との間の中間状態で停止させる窓ステーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の窓ステーは、窓枠に取付けられる長尺状のベースと、このベースに沿って前後に摺動自在に取付けられたスライダと、障子に取付けられる障子取付板と、第1,第2アームとの5つの部材から構成される。第1アームの一端は、スライダに回動自在に連結され、他端は、障子取付板の一端に回動自在に連結されている。第2アームの一端は、ベースの後退側の端部に回動自在に連結され、他端は、障子取付板の他端に回動自在に連結されている。そして、スライダを前進位置と後退位置との間で移動させると、障子取付板が、ベースと平行になる障子全閉位置とベースと直角をなす障子全開位置との間を移動するように構成されている。
【0003】
さらに、ベースには、スライダの前進位置と後退位置との間の中間位置に切り欠きが形成されている。また、スライダには、ベースの切り欠きに嵌合可能なストッパが形成されている。
このような構成において、障子が開く際に、スライダが移動して、スライダのストッパがベースの切り欠き位置に来ると、ストッパが切り欠き内に嵌まり込み、これによりスライダが前進位置と後退位置との間の中間位置で停止し、障子取付板が障子全開位置になる前に停止する。その結果、障子が、全閉状態と全開状態との間の中間状態で停止するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−355372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の窓ステーでは、開閉操作時に構成部材が互いに回動することによって、ベースと、第1アームと、障子取付板と、第2アームとで囲まれた多角形の形状が変化するので、これらのベースと、第1アームと、障子取付板と、第2アームとで囲まれた部分で指を挟む可能性がある。
また、開閉操作時に障子の開放移動に伴って、第1アームと、第2アームとが、窓枠と障子との間に露出されることで、窓ステーが室内側からも見えてしまい、良好な外観が得られないという課題があった。
さらに、特許文献1に記載の窓ステーは、構成部材の点数が多く、構造が複雑で製造コストの点で問題があった。
【0006】
本発明の目的は、良好な操作性および良好な外観が得られ、製造コストを抑えることができる建具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、枠体と、この枠体に回動自在に支持されて開閉可能な面材とを備えた建具であって、枠体には、面材を所定角度だけ開放した際に当該面材と枠体との吊元側の隙間に挿入される挿入位置と、隙間から後退した後退位置と、の間をスライド自在に支持される規制部材が設けられ、面材が所定角度だけ開放された状態において、挿入位置にスライドされた規制部材が面材に当接することで当該面材の少なくとも一方向の回動が規制されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、規制部材が枠体にスライド自在に支持されており、規制部材を枠体と面材との隙間に挿入するだけで、規制部材が面材に当接して当該面材の回動を規制することができる。従って、従来の窓ステーのように、開閉操作時に互いに回動する部材間で指を挟む可能性がなく、良好な操作性が得られる。
また、規制部材が枠体にスライド自在に支持されているので、従来のように面材の開閉動作に応じて部材が枠体と面材との間に露出されることがなく、規制部材が目立たず、良好な外観が得られる。
また、従来の窓ステーでは、アーム等の部材に引張りや曲げが作用するため、剛性の大きい材料(例えば、ステンレス鋼など)で部材を製造する必要があったが、これに対して、本発明では、面材と規制部材との当接によって面材の回動を規制するので、規制部材に引張りや曲げが作用せず、規制部材を従来よりも剛性の小さい材料(例えば、合成樹脂など)で製造することができる。また、規制部材が、挿入位置と後退位置との間をスライド自在に支持される簡単な構成とすることができ、必要な部品点数も削減でき、製造コストを抑えることができる。
【0009】
この際、本発明の建具では、規制部材は、枠体の見込み方向と直交する平面に略平行に形成されるとともに、面材の所定部位に当接する当接面を有することが好ましい。
この構成によれば、当接面が枠体の見込み方向と直交する平面に略平行に形成されているので、当接面と面材の所定部位とが当接する際に、当接面に見込み方向と直交する方向の力が作用しないので、規制部材がその方向に移動してしまうことがなく、面材の回動を確実に規制することができる。
【0010】
さらに、本発明の建具では、面材には、規制部材の当接面と当接可能でかつ当該面材の所定の開放角度ごとに枠体の見込み方向と直交する平面に略平行となる複数の被当接面が設けられ、当接面が複数の被当接面のうちのいずれかに当接することで、複数の開放角度において面材の回動が規制されることが好ましい。
この構成によれば、被当接面が、面材の所定の開放角度において規制部材の当接面と当接可能に設けられているので、規制部材が挿入位置にある状態で、当該被当接面と当接面とが互いに当接して、面材の回動が規制される。従って、面材を回動させようとする外力を当接面と被当接面との面同士で受けることができるので、当接部分が点接触や線接触する場合と比べて、面材および規制部材の当接部分の耐久性が向上する。
また、当接面および被当接面が、枠体の見込み方向と直交する平面に略平行となるように設けられているので、面材の回動を規制する際に、当接する面同士が面に平行な方向に相対移動しにくくすることができ、当接する面の磨耗が生じにくくなる。従って、当接面同士の摩擦によって面材の回動を規制する場合と比べて、面材および規制部材の当接部分の耐久性が向上する。
また、被当接面が、面材の所定の開放角度(例えば、45°や90°等)ごとに複数設けられているので、複数の開放角度で面材の回動を規制することができる。
【0011】
また、本発明の建具では、規制部材の当接面は、挿入位置にスライドされた状態において、面材の回動中心を通り枠体の見込み方向に平行な線と交差する点を跨いで形成され、この交差する点を跨ぐ少なくとも2箇所で当接面に面材が当接することで、当該面材の回動が規制されることが好ましい。
この構成によれば、当接面が、面材の回動中心を通り枠体の見込み方向に平行な線と交差する点を跨いで形成され、すなわち、その交差する点から見込み方向に直交する方向の両側に延設されているので、当接面が面材の所定部位と当接する際に、その交差する点を跨ぐ少なくとも2箇所で規制部材と面材とが当接する。従って、面材が所定の開放角度から開閉する両方向の回動を規制することができ、面材をその開放角度の状態で保持することができる。なお、点を跨ぐ少なくとも2箇所での当接面と面材との当接については、面材側の当接する部位が当該点を跨ぐ面で形成されて、当接面と面材との面接触であってもよい。
【0012】
さらに、本発明の建具では、規制部材の当接面は、互いに見込み方向位置が異なる複数位置に設けられ、これら複数の当接面に当接することで、複数の開放角度において面材の回動が規制されることが好ましい。
この構成によれば、面材の当接する部位が、開放角度によって見込み方向位置が変化しても、規制部材の当接面が、見込み方向位置が異なる複数位置に設けられているので、それぞれの開放角度で面材と規制部材との当接が可能となって、複数の開放角度で面材の回動を規制することができる。
また、面材ではなく規制部材側に複数の当接面を設けることによって、面材側の当接する部位を形成するために面材の框などを加工したり、新規の部材を用いたりする必要がなく、規制部材の単体部品だけを用意すればよい。従って、より簡単な構成で面材の回動を規制することができる。
【0013】
また、本発明の建具では、規制部材は、枠体に固定されるベースと、このベースにスライド自在に設けられて面材と当接可能なスライド体とを備えることが好ましい。
この構成によれば、規制部材が、枠体に固定されるベースと、このベースにスライド自在に設けられて面材と当接可能なスライド体とから構成されるので、規制部材をスライド可能とする案内部を枠体に形成する必要がなく、ベースを枠体に固定するだけでよい。また、枠体の加工が不要となるので、既存の建具等に後付けで取り付けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る建具である片開き窓1を示す縦断面図および横断面図である。図3は、片開き窓1における規制部材10を示す斜視図である。図4は、規制部材10を示す分解斜視図である。
図1および図2において、片開き窓1は、窓枠2と、この窓枠2内部に開閉自在に支持された障子3とを有して構成されている。窓枠2は、上枠4、下枠5および左右の縦枠6,7を四周枠組みして形成され、建物の外壁開口部に固定されている。障子3は、上框31、下框32および左右の縦框33,34を四周框組みした内部に、ガラス製や樹脂製のパネル材35を嵌め込んで構成されている。そして、障子3の吊元側の端縁である縦框33の上端部が上側軸部材36を介して上枠4に軸支され、下端部が下側軸部材37を介して下枠5に軸支されている。このようにして、障子3は、戸先側端縁である縦框34が縦枠7から離れる方向に開放可能に設けられている。下枠5の吊元側部分には、障子3の回動を規制する規制部材10が設けられ、この規制部材10によって開放時の障子3が窓枠2に対して所定の開放角度(例えば、45°,90°)で規制されるようになっている。
【0016】
図3にも示すように、下枠5は、見込み方向に延設される見込み部51と、この見込み部51の室内側端縁から立上る立上り部52と、この立上り部52の上端から室外側に突出する突出部53とを備え、これらの部位51〜53によって断面略矩形状に区画形成された溝部54を有する。溝部54の内側面(立上り部52の室外側の面)55は、図1に示す障子3が閉じた状態での下框32の室内側の面38と略平行となっている。この内側面55に規制部材10が、窓枠2の見付け方向に沿ってスライド自在に固定されている。見込み部51の吊元側部分には、障子3の下側軸部材37が固定される。
【0017】
以下、図4も参照して規制部材10の構造を詳しく説明する。
図4において、規制部材10は、合成樹脂製で略直方体状に形成されたベース11と、このベース11にスライド自在に設けられる合成樹脂製のスライド体12とを有する。
ベース11は、長手方向が窓枠2の見付け方向となるように、2つのねじ13によって溝部54の内側面55にねじ止めされている。なお、ベース11とスライド体12は、合成樹脂製に限られず、金属製(アルミ、鋼、ステンレス等)の材料で構成されてもよい。
【0018】
スライド体12は、ベース11側に開口する中空状に形成され、ベース11の長手方向に平行な一対の側面111と、この側面111に対応するスライド体12の一対の内側面とが摺動することで、ベース11に対してスライド自在に取り付けられている。
ベース11の長手方向の片方の側面111には突起部14が形成され、これに対応するスライド体12の内側面には、突起部14に係止可能な係止部15が形成される。そして、スライド体12は、ベース11に対して、係止部15に突起部14が係止される位置(挿入位置)と、係止部15から突起部14が外れる位置(後退位置)との間を、長手方向にスライド可能に構成されている。
【0019】
スライド体12の室外側(図4中の上側)の端部には、ベース11からの距離が互いに異なる二つの第1当接面16および第2当接面17がベース11の長手方向に沿って並設されている。第1当接面16は、スライド体12の一端に形成され、第2当接面17は、第1当接面16よりも中央側に形成されている。第2当接面17は、第1当接面16よりもベース11から離れた位置となっている。また、第1,第2当接面16,17は、略45度の傾斜面18で連続して形成されている。そして、スライド体12の第1当接面16が吊元側となるようにして、規制部材10が溝部54内に取り付けられた状態で、第1,第2当接面16,17は、溝部54の内側面55に略平行に設けられ、互いに見込み方向位置が異なる位置に設けられている。
また、スライド体12の長手方向の他端には、操作用の凹部19が形成されている。スライド体12をスライド操作する際、使用者が手の指などをこの凹部19に引っ掛けることで、スライド体12をスライド移動できるようになっている。
以上のような規制部材10は、図1〜図3から明らかなように、下枠5の溝部54に設置され、室内側からは見えないようになっている。
【0020】
次に、障子3が所定角度だけ開放された状態で、規制部材10が障子3の回動を規制する仕組みについて、図2および図5,図6に基づいて説明する。
図2は、障子3を閉じた状態での片開き窓1を示す横断面図である。図5(A),(B)は、障子3を45°開放した状態で障子3のフリー状態およびロック状態を説明する横断面図である。図6(A),(B)は、障子3を90°開放した状態で障子3のフリー状態およびロック状態を説明する横断面図である。
図2に示すように、障子3の吊元側の縦框33の断面形状は、中空状の略四角形となっている。すなわち吊元側の縦框33は、縦枠6側(図2中右側)の見込み面である第1被当接面331と、縦框33の室内側の見付け面332と、第1被当接面331に対向する見込み面333と、見付け面332に対向する室外側の見付け面334とから構成されている。障子3が閉じた状態では、第1被当接面331は溝部54の内側面55と略直交し、見付け面332は内側面55と略平行となっている。第1被当接面331と見付け面332とは、45度の傾斜面である第2被当接面335によって連結されている。
【0021】
このような構成の吊元側の縦框33に対して、規制部材10のスライド体12は、ベース11に対して後退位置(前述の突起部14が係止部15に係止されない位置)に設定されている。後退位置では、スライド体12の第1当接面16が、縦框33の見付け面332よりも室内側となり、第2当接面17が、見込み面333よりも見付け方向の内方側となっている。このようにして、障子3と規制部材10とが干渉せず、障子3が開方向に回動できるようになっている。
【0022】
図5(A)には、規制部材10のスライド体12が後退位置にある状態で、障子3が45°まで開放された状態が示され、障子3の第2被当接面335が溝部54の内側面55に対して略平行となっている。そして、第2被当接面335と規制部材10の第1当接面16との間には見付け方向に所定寸法W1の隙間が形成され、障子3は窓枠2に対して開閉可能な状態となっている。
図5(B)には、規制部材10のスライド体12を挿入位置までスライド移動させた状態が示されている。この挿入位置とは、スライド体12を見付け方向の吊元側にスライド移動させて、前述の突起部14が係止部15に係止される位置である。すなわち、障子3の第2被当接面335と溝部54の内側面55との隙間にスライド体12が挿入され、第2被当接面335と第1当接面16とが当接した状態となっている。ここで、Pは障子3の回動中心を示す。また、Lは、回動中心Pを通り窓枠2の見込み方向に平行な線を示す。Cは、第1当接面16と線Lとが交差する点を示す。そして、第1当接面16は、点Cを跨いで見付け方向に沿って両側に延設されている。このようにして、点Cを跨ぐ所定領域W2で第1当接面16に第2被当接面335が当接して、障子3の開閉両方向の回動が規制されるようになっている。
【0023】
次に、図6(A)には、規制部材10のスライド体12が後退位置にある状態で、障子3が90°まで開放された状態が示され、障子3の第1被当接面331が溝部54の内側面55に対して略平行となっている。そして、第1被当接面331と規制部材10の第2当接面17との間には見付け方向に所定寸法W3の隙間が形成され、障子3は窓枠2に対して開閉可能な状態となっている。
図6(B)には、障子3の第1被当接面331と溝部54の内側面55との隙間にスライド体12が挿入され、第1被当接面331と第2当接面17とが当接した状態となっている。図6(B)に示すように、第2当接面17は、線Lよりも見込み方向の内方側の所定領域W4で第2当接面17に第1被当接面331が当接するようになっている。このようにして、障子3が閉じる方向に回動する場合に、第2当接面17と第1被当接面331とが当接して、障子3の閉方向の回動が規制されるようになっている。
【0024】
次に、規制部材10の取付方法について説明する。規制部材10は、ベース11とスライダ体12とから構成されているので、窓枠2を組立工場で組立てられる際に所定の位置に予め取り付けておくことが可能となっている。また、片開き窓1の施工現場において窓枠2を外壁の開口部に固定した後、所定の位置に固定することも可能となっている。さらに、既存の片開き窓1に追加して取り付けることも可能となっている。
【0025】
このような本実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)規制部材10が窓枠2にスライド自在に支持されており、規制部材10を窓枠2と障子3との吊元側の隙間に挿入するだけで、規制部材10が障子3に当接して当該障子3の回動を規制することができ、良好な操作性が得られる。
(2)規制部材10が窓枠2にスライド自在に支持されているので、障子3の開閉動作に応じて規制部材10が窓枠2と障子3との間に露出することがなく、規制部材10が目立たず、良好な外観が得られる。
【0026】
(3)障子3と規制部材10との当接によって障子3の回動を規制するので、規制部材10に引張りや曲げが作用せず、規制部材10を合成樹脂製とすることができ、製造コストを抑えることができる。
(4)第1,第2被当接面331,335が、障子3の所定の開放角度において規制部材10の第1,第2当接面16,17と当接可能に設けられているので、規制部材10が挿入位置にある状態で、当該第1,第2被当接面331,335と第1,第2当接面16,17とが互いに当接して、障子3の回動が規制される。従って、障子3を回動させようとする外力を第1当接面16と第2被当接面335、または、第2当接面17と第1被当接面331のいずれかの面同士で受けることができるので、障子3および規制部材10の当接部分の耐久性が向上する。
【0027】
(5)第1,第2当接面16,17および第1,第2被当接面331,335が、窓枠2の見込み方向と直交する平面に略平行となるように設けられているので、障子3の回動を規制する際に、当接する面同士が面に平行な方向に相対移動しにくくすることができ、当接する面の磨耗が生じにくくなる。従って、障子3および規制部材10の当接部分の耐久性が向上する。
【0028】
(6)障子3が45°の開放角度の場合、第1当接面16が、障子3の回動中心Pを通り窓枠2の見込み方向に平行な線Lと交差する点Cを跨いで形成され、すなわち、その交差する点Cから見込み方向に直交する方向の両側に延設されているので、第1当接面16が障子3の第2被当接面335と当接する際に、その交差するC点を跨ぐ所定領域W2で規制部材10と障子3とが当接する。従って、障子3が所定の開放角度から開閉する両方向の回動を規制することができ、障子3をその開放角度の状態で保持することができる。
(7)障子3が90°の開放角度の場合、第2当接面17が第1被当接面331に当接することのよって、障子3の閉方向の回動を規制することができる。
【0029】
(8)開放角度によって第1,第2被当接面331,335の見込み方向位置が変化しても、規制部材10の第1,第2当接面16,17が、見込み方向位置の異なる複数位置に設けられているので、それぞれの開放角度で障子3と規制部材10との当接が可能となって、複数の開放角度で障子3の回動を規制することができる。
(9)規制部材10が、窓枠2に固定されるベース11と、このベース11にスライド自在に設けられて障子3と当接可能なスライド体12とから構成されるので、ベース11を窓枠2に固定するだけでよく、窓枠2の加工が不要となる。また、規制部材10を既存の建具等にも後付けで取り付けることもできる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る片開き窓1Aについて図7および図8に基づいて説明する。図7は、片開き窓1Aを示す縦断面図である。図8(A),(B)は、障子3を45°開放した状態での障子3のフリー状態およびロック状態を説明する横断面図である。
図7において、片開き窓1Aは、前述の第1実施形態の片開き窓1に対して規制部材10が下枠5だけでなく上枠4にも設けられている構成と、規制部材10Aが吊元側の縦枠6の中間高さ位置に設けられている構成とが相違するもので、その他の構成は略同様である。規制部材10Aは、下枠5の溝部54と同様に、上枠4の溝部44の内側面45に固定されている。
【0031】
図8に示すように、規制部材10Aは、合成樹脂製のベース11Aと、このベース11Aにスライド自在に設けられる合成樹脂製のスライド体12Aとを有して構成されている。ベース11Aは、スライド体12Aの案内方向が窓枠2の見付け方向となるように、2つのねじ13Aによって縦枠6の内側面61にねじ止めされている。スライド体12Aは、第1実施形態のスライド体12と同様の第1当接面16および第2当接面17を有するとともに、つまみ部20を有している。使用者は、このつまみ部20を見付け方向に押し引きすることによって、スライド体12Aをベース11Aに対して、スライド移動できるようになっている。
【0032】
このような本実施形態によれば、前記(1)〜(9)の効果と略同様の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(10)規制部材10が、障子3の上枠4および下枠5、吊元側の縦枠6の中間高さの合計3箇所に取り付けられているので、障子3の回動を確実に規制することができる。
(11)スライド体12Aにつまみ部20が設けられているので、つまみ部20を操作することでスライド体12Aを容易にスライド移動させることができる。
【0033】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る片開き窓1Bについて図9に基づいて説明する。図9は、障子3の閉状態、45°開放した状態、60°開放した状態、90°開放した状態のそれぞれの状態において、規制部材10Bを用いて障子3をフリー状態およびロック状態にする仕組みを説明する横断面図である。
図9に示すように、片開き窓1Bは、前述の第1実施形態の片開き窓1に対して、障子3の吊元側の縦框33に第3被当接面336が形成されている構成と、規制部材10Bのスライド体12Bに形成される当接面16Aの構成とが相違するもので、その他の構成は略同様である。
すなわち、第3被当接面336が第1被当接面331と第2被当接面335との間に形成され、障子3の60°まで開放された状態では、第3被当接面336が溝部54の内側面55に対して略平行となっている。そして、スライド体12Bを挿入位置までスライド移動させた状態で、第3被当接面336とスライド体12Bの当接面16Aとが当接して、障子3の開閉両方向の回動が規制されるようになっている。
また、これらの第1,第2,第3被当接面331,335,336は、障子3の回動中心Pとの距離が同一となるように形成されている。これによって、障子3の各開放角度(45°,60°,90°)の状態で、各被当接面331,335,336と溝部54の内側面55との間隔が同一となり、各被当接面331,335,336がスライド体12Bの当接面16Aと当接可能に構成されている。このようにスライド体12Bには、3つの開放角度(45°,60°,90°)のいずれの状態の障子3とも当接可能な当接面16Aが形成されている。
【0034】
このような本実施形態によれば、前記(1)〜(9)の効果と略同様の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(12)規制部材10Bによって、障子3の3つの開放角度(45°,60°,90°)の状態で、障子3の回動を規制することができる。
(13)3つの開放角度で第1,第2,第3被当接面331,335,336の見込み方向位置が変化しないので、規制部材10Bのスライド体12Bに共通の当接面16Aを一つだけ形成すればよいので、規制部材10Bの構造を簡単にすることができる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、建具として片開き窓1を例示して説明したが、本発明の建具としては、片開き窓1に限られず、突き出し窓、両開き窓、外倒し窓、内倒し窓、天窓等の窓でもよい。あるいは、窓に限られず玄関のドア等でもよい。また、規制部材の取付位置や個数にも制限はない。
【0036】
本発明の規制部材としては、建具に使用する場合に限られず、支持体に回動自在に支持された面材(例えば、戸棚の扉など)において、その回動を規制する規制部材としても利用できる。
また、既存の片開き窓において、障子の吊元側の縦框の形状を変更することなく、障子の所定の開放角度の状態で、障子と当接可能な当接面を規制部材に形成するようにしてもよい。これによって、障子の縦框等の当接する部位を新たに形成する必要がなく、規制部材の単体部品だけを用意するだけで障子の回動を規制することができる。
【0037】
また、前記各実施形態では、当接面と被当接面との面同士の当接によって障子の回動を規制する場合を説明したが、これに限られず、例えば、一方の当接する部位に単数あるいは複数の突起部を備えることによって、障子側と規制部材側との当接が面と突起部との当接となるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図2】前記建具を示す横断面図である。
【図3】前記建具における規制部材を示す斜視図である。
【図4】前記規制部材を示す分解斜視図である。
【図5】前記建具における面材を45°開放した状態でのフリー状態およびロック状態を説明する横断面図である。
【図6】前記建具における面材を90°開放した状態でのフリー状態およびロック状態を説明する横断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図8】前記建具における面材を45°開放した状態でのフリー状態およびロック状態を説明する横断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る建具における面材のフリー状態およびロック状態を説明する横断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A,1B…片開き窓(建具)、2…窓枠(枠体)、3…障子(面材)、10,10A,10B…規制部材、11,11A…ベース、12,12A,12B…スライド体、16…第1当接面、16A…当接面、17…第2当接面、335…第1被当接面、331…第2被当接面、P…面材の回動中心、L…枠体の見込み方向に平行な線、C…枠体の見込み方向に平行な線と交差する点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、この枠体に回動自在に支持されて開閉可能な面材とを備えた建具であって、
前記枠体には、前記面材を所定角度だけ開放した際に当該面材と前記枠体との吊元側の隙間に挿入される挿入位置と、前記隙間から後退した後退位置と、の間をスライド自在に支持される規制部材が設けられ、
前記面材が所定角度だけ開放された状態において、前記挿入位置にスライドされた前記規制部材が前記面材に当接することで当該面材の少なくとも一方向の回動が規制される建具。
【請求項2】
前記規制部材は、前記枠体の見込み方向と直交する平面に略平行に形成されるとともに、前記面材の所定部位に当接する当接面を有する請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記面材には、前記規制部材の当接面と当接可能でかつ当該面材の所定の開放角度ごとに前記枠体の見込み方向と直交する平面に略平行となる複数の被当接面が設けられ、
前記当接面が前記複数の被当接面のうちのいずれかに当接することで、複数の開放角度において前記面材の回動が規制される請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記規制部材の当接面は、前記挿入位置にスライドされた状態において、前記面材の回動中心を通り前記枠体の見込み方向に平行な線と交差する点を跨いで形成され、
この交差する点を跨ぐ少なくとも2箇所で前記当接面に前記面材が当接することで、当該面材の回動が規制される請求項2または請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記規制部材の当接面は、互いに見込み方向位置が異なる複数位置に設けられ、
これら複数の当接面に当接することで、複数の開放角度において前記面材の回動が規制される請求項2から請求項4のいずれかに記載の建具。
【請求項6】
前記規制部材は、前記枠体に固定されるベースと、このベースにスライド自在に設けられて前記面材と当接可能なスライド体とを備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−68314(P2009−68314A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241051(P2007−241051)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】