説明

建具

【課題】開口枠へ障子を支持させる作業に支障を来すことなく、開口枠からの障子の不用意な脱落をより確実に防止すること。
【解決手段】固定網戸40の上框41において見込み方向の室内側に位置する内表面41aに取り付けたベース部材150と、ベース部材150を取り付けた上框41の長手方向に沿った軸心回りに回動可能となる態様でベース部材150に配設し、固定網戸40の外周囲となる外縁面41bから突出する突出状態と、外縁面41bから退行した非突出状態とにわたって回動する外れ止め部材250と、ベース部材150に対して外れ止め部材250が突出状態に配置された場合に外れ止め部材250を突出状態に維持するベース側鉤状部材154及びカバー側鉤状部材254とを備えた外れ止めユニット50を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口枠に対して障子をいわゆるけんどん式で装着する建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開口枠と網戸等の障子からなる建具では、開口枠に対して障子をいわゆるけんどん式で装着するものがある。けんどん式とは、例えば開口枠において互いに対向する上枠と下枠とにそれぞれ差込溝が形成してあり、障子の上框を先に上枠の差込溝に挿入し、その後、障子の下框を下枠の差込溝に落とし込むようにしたものである。また、開口枠において互いに対向する上枠と下枠とにそれぞれフィン状のレールが設けられた建具においては、障子の上框及び下框にそれぞれ差込溝が形成してあり、上框の差込溝に上枠のレールを先に挿入し、その後、下框の差込溝に下枠のレールが挿入するようにしたものもけんどん式の一つである。
【0003】
この種の建具においては、開口枠に対して障子が上方に移動した場合、下框が下枠から逸脱し、開口枠から障子が脱落する恐れがある。このため、従来の建具には、開口枠から障子が不用意に脱落する事態を防止するための手段が設けられているものも既に提供されている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、上框の外縁面から進退する態様で外れ止めユニットをスライド可能に配設するとともに、この外れ止めユニットと上框との間に外れ止めユニットを常時上方に向けて押圧する板バネを介在させるようにしている。こうした建具では、板バネの弾性力に抗して外れ止めユニットを上框に押し込むことができるため、けんどん式で障子を開口枠に支持させる際の作業が煩雑化することはない。しかも、開口枠に対して障子を支持させた後においては、板バネの弾性力によって外れ止めユニットが上框の外縁面から進出移動するため、開口枠に対する障子の上方への移動可能距離が制限されることになる。従って、障子に対してこれを上方に移動させるような外力が加えられたとしても、開口枠から障子が不用意に脱落する事態を防止することができるようになる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−311371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した建具において開口枠からの障子の脱落を確実に防止するためには、できるだけバネ定数の大きな板バネを適用し、障子に加えられた外力によって外れ止めユニットが容易に押し込まれないようにすることが好ましい。しかしながら、バネ定数の大きな板バネを適用した場合には、当然に、開口枠に障子を支持させる際に大きな操作力が必要となり、その作業性を著しく損ねる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、開口枠へ障子を支持させる作業に支障を来すことなく、開口枠からの障子の不用意な脱落をより確実に防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、開口枠と、四周框組みされた障子とを備え、前記開口枠に対して前記障子をけんどん式で装着することによって前記開口枠に前記障子を支持させるようにした建具において、前記框において見込み方向の室内側または室外側に位置する面に取り付けたベース部材と、前記ベース部材を取り付けた框の長手方向に沿った軸心回りに回動可能となる態様で前記ベース部材に配設し、前記障子の外周囲となる外縁面から突出する突出状態と、前記外縁面から退行した非突出状態とにわたって回動する外れ止め部材と、前記ベース部材に対して前記外れ止め部材が前記突出状態に配置された場合に該外れ止め部材を前記突出状態に維持する維持手段とを備えた外れ止めユニットを設けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記維持手段は、前記ベース部材及び前記外れ止め部材の互いに対応する部位にそれぞれ形成し、前記ベース部材に対して前記外れ止め部材が前記突出状態に配置された場合に互いに鉤状部を係合させることにより前記ベース部材に対して前記外れ止め部材が前記非突出状態へ移行する向きへの回動を規制する一対の鉤状部材を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記外れ止め部材は、前記非突出状態に配置された場合に前記ベース部材を取り付けた框の内縁面から前記障子の面内方向内側に向けて突出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記ベース部材と前記外れ止め部材との間に、前記外れ止め部材を前記非突出状態となる方向へ常時付勢するバネ部材を介在させたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記ベース部材は、該ベース部材に形成したネジ挿通孔を介してネジを締結することにより前記框に取り付けられるものであり、前記外れ止め部材は、前記突出状態に配置された場合に前記ネジの頭部を覆うカバー部を有したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る建具は、上述した建具において、前記外れ止め部材は、前記突出状態に配置された場合に前記框の外縁面に対向する対向部を有したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、障子を開口枠に支持させた後、ベース部材に対して外れ止め部材を回動して突出状態に配置させると、外れ止め部材が框の外縁面から外方に向けて突出するため、開口枠に対する障子の移動が規制されて開口枠からの脱落が防止される。しかも、ベース部材に対して外れ止め部材が框の長手方向に沿った軸心回りに回動するため、障子に大きな力が加えられた場合にも突出状態にある外れ止め部材が非突出状態に移行する恐れはなく、開口枠からの障子の不用意な脱落を確実に防止することが可能となる。さらに、外れ止め部材は非突出状態にある場合に框の外縁面よりも退行した位置に配置されるため、開口枠に対して障子を支持させる際の作業が煩雑化する恐れもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、開口枠10に固定障子20及び可動障子30を支持させ、さらに可動障子30の室外側に固定網戸(障子)40を支持させて構成したものである。
【0017】
開口枠10は、上下一対の上枠11、下框12の端部間をそれぞれ縦枠13,13によって連結した矩形の枠状を成すもので、家屋の壁Wに形成した開口WOに対してその縁部に沿うように配設してある。これら上枠11、下枠12及び一対の縦枠13,13には、それぞれの見込み面に仕切り壁部14が設けてある。仕切り壁部14は、上枠11の下面、下枠12の上面、一対の縦枠13,13の互いに対向する内側面において、それぞれ見込み方向のほぼ中央となる部位から互いに開口枠10の面内方向内側に向けて突出した薄板状部分である。
【0018】
固定障子20及び可動障子30は、図には明示していないが、それぞれが4つの框を組み立てることによって構築される框の内部にガラス板を保持した面材である。これら固定障子20及び可動障子30は、上下方向の寸法が開口枠10のほぼ1/2となり、かつ見込み方向の寸法が開口枠10を構成する上枠11,12,13の1/2より小さくなるように構成してある。
【0019】
固定障子20は、開口枠10の上半部において上述した仕切り壁部14よりも室外側に位置する部位に配設してある。より具体的に説明すると、固定障子20は、上框21が開口枠10の上枠11に取り付けることにより、開口枠10に対して固定された状態にある。この固定障子20の下框22は、開口枠10の下枠12及び一対の縦枠13,13の下半部とによって構成される下方開口枠(開口枠)10′の上枠としても機能しており、その見込み面となる下面に係合フィン22aを有している。係合フィン22aは、下框22の下面から下方開口枠10′の面内方向内側に向けて突設した薄板状部分であり、下框22の長手方向に沿って延在している。
【0020】
可動障子30は、開口枠10において仕切り壁部14よりも室内側となる部位に配設したもので、開口枠10に対して上下方向に移動可能となる態様で支持させてある。この可動障子30は、開口枠10に対して最も下方に配置した場合、固定障子20とともに開口枠10の開口全域を閉塞する大きさを有している。一方、可動障子30を上方に移動させた場合には、その移動量に応じて開口枠10を開放することが可能である。また、可動障子30は、図1において右方側の二点鎖線で示すように、開口枠10に対して最も下方から若干上昇した位置に配置した場合に内倒し窓として機能させることが可能である。すなわち、可動障子30は、この状態から可動障子30と開口枠10の縦枠13,13との間に設けた図示せぬロック手段を解除操作すると、可動障子30と縦枠13,13との係合状態が解除され、下框32を軸心として上端部を室内側に倒して開くことができるようになる。
【0021】
一方、固定網戸40は、図2に示すように、上框41、下框42、左右一対の縦框43,43を組み立てることによって構築される框の内部に網44を張設した面材であり、開口枠10において一対の縦枠13,13の間にはめ込めることのできる幅に構成してある。固定網戸40の上下方向に沿った寸法は、図1に示すように、開口枠10における下枠12の上面と固定障子20における下框22の下面との相互間距離よりも小さく、かつ固定障子20の下框22から突設した係合フィン22aの下端と開口枠10における下枠12の上面に設けた係合台部材12aの上面との相互間距離よりも大きくなるように構成してある。
【0022】
係合台部材12aは、見込み方向の室内側に位置する側面が、固定障子20の下框22に設けた係合フィン22aにおいて見込み方向の室内側に位置する側面と見込み方向において同位置となる部位に取り付けたもので、下枠12の仕切り壁部14との間に上方(開口枠10の面内方向内側)に開口する差込溝10aを構成している。この係合台部材12aの下枠12からの突出高さは、開口枠10における下枠12の上面と固定障子20における下框22の下面との相互間距離から固定網戸40の上下方向に沿った寸法を減算した値よりも小さくなるように設定してある。
【0023】
この固定網戸40には、図1及び図2に示すように、一対の縦框43,43にそれぞれ把持部材45が設けてあるとともに、上框41において見込み方向の室内側に位置する内表面41aに外れ止めユニット50が設けてある。
【0024】
把持部材45は、固定網戸40を取り扱う場合の持ち手となる部分である。本実施の形態では、矩形の枠状に構成した把持部材45をそれぞれの縦框43,43の見込み面に固定してある。
【0025】
外れ止めユニット50は、図3〜図8に示すように、ベース部材150及び外れ止め部材250を備えて構成してある。ベース部材150は、合成樹脂材によって基板部151、一対の軸受部152及び一対の押圧操作部153を一体に成形したものである。基板部151は、図3及び図7に示すように、横長の矩形平板状を成すもので、その中央部にネジ挿通孔151aを有し、また軸受部152とは反対側の長辺となる一方の端部が略直角に屈曲している。尚、以下においては便宜上、基板部151において屈曲した長辺を上辺151A、軸受部152側の他方の長辺を下辺151B、残りの2辺を短辺151Cと称し、また基板部151において見込み方向の室内側に位置する表面を内表面151D、見込み方向の室外側に位置する表面を外表面151Eと称する。
【0026】
一対の軸受部152は、それぞれ円柱状を成すもので、基板部151において下辺151Bの端面となる部位に互いに上框41の長手方向に沿った軸心を合致させた状態で設けてある。図からも明らかなように、一対の軸受部152は、互いの間に間隙を確保し、またそれぞれの端部が基板部151の短辺151Cから上框41の長手方向外方に突出する態様で基板部151に設けてある。尚、図には明示していないが、それぞれの軸受部152には、基板部151の外表面151E側に位置する開口から軸部材を受け入れてこれを回転可能に支承するための軸受溝が形成してある。
【0027】
一対の押圧操作部153は、軸受部152において基板部151の短辺151Cよりも上框41の長手方向外方に突出した周面から基板部151の短辺151Cに対向する態様でそれぞれ径外方向に突出した部分である。それぞれの押圧操作部153は、互いに上框41の長手方向外方となる部分が外方に向けて凸となるように湾曲形成してあり、この凸となる部分を押圧した場合、軸受部152との連結部を支点として基板部151の短辺151Cに近接する方向に弾性的に変形することが可能である。これらの押圧操作部153には、互いに内方となる部分にベース側鉤状部材154が設けてある。
【0028】
ベース側鉤状部材154は、押圧操作部153から互いに上框41の長手方向内方に向けて延在した後、軸受部152から離反する方向に向けて略直角に屈曲したもので、この屈曲端部にベース側鉤状部154Aを有している。ベース側鉤状部154Aは、図3、図4及び図8に示すように、ベース側傾斜面154A1とベース側係合面154A2とを備えており、互いに離反する方向に向けて突設している。ベース側傾斜面154A1は、見込み方向の室内側から室外側に向かうに従って漸次基板部151の短辺151Cから離反する方向に傾斜した平面である。それぞれのベース側傾斜面154A1は、押圧力が加えられた場合に押圧操作部153を基板部151の短辺151Cに近接する方向に向けて弾性的に変形させる機能を有している。ベース側係合面154A2は、ベース側傾斜面154A1において見込み方向の室外側に位置する端部から基板部151の短辺151Cに向かって延在した平面であり、それぞれ上框41において見込み方向の室内側に位置する内表面41aと平行となるように形成してある。
【0029】
上記の構成を有するベース部材150は、図3に示すように、基板部151の上辺151Aを上框41の上面である外縁面41bに近接させた状態で基板部151の外表面151Eを上框41において見込み方向の室内側に位置する内表面41aに当接させ、この状態からネジ挿通孔151aを介して取付ネジ160を上框41に締結することにより、当該上框41の内表面41aに取り付けられる。図からも明らかなように、この状態においてベース部材150は、基板部151、一対の軸受部152及び一対の押圧操作部153がそれぞれ上框41の内表面41aに収まる大きさ(上框41の見付け寸法に収まる大きさ)に構成してあり、上框41の上面である外縁面41b及び下面である内縁面41cのいずれからも突出していない。
【0030】
一方、図2〜図8に示すように、外れ止めユニット50の外れ止め部材250は、合成樹脂材によってカバー部251、軸部252及び規制部(対向部)253を一体に成形したものである。カバー部251は、ベース部材150において基板部151及び押圧操作部153に設けたベース側鉤状部材154を覆うだけの大きさを有した横長の平板状部材である。軸部252は、円柱状を成し、かつその両端面にそれぞれ細径の軸部材252aを有したもので、軸部材252aの軸心がカバー部251の長辺と平行(上框41の長手方向と同方向)となる態様で、カバー部251において一方の長辺となる部分の略中央部に配設してある。この軸部252は、軸心方向に沿った長さが上述したベース部材150において一対の軸受部152の間に配置することのできる寸法に構成してある。規制部253は、カバー部251において他方の長辺となる部分から略直角方向に屈曲して延在する部分である。規制部253において軸部252の軸部材252aから最も離反した延在端部までの距離は、上述したベース部材150において軸受部152の軸心から基板部151の上辺151Aまでの距離よりも十分に大きく構成してある。
【0031】
上記の構成を有する外れ止め部材250は、図3、図5〜図7に示すように、軸部252をベース部材150の軸受部152の間に配置し、かつ軸部252の両端面から延在する軸部材252aをそれぞれベース部材150の軸受溝(図示せず)に収容させることにより、軸部材252aの軸心を中心として互いに回動可能となる態様でベース部材150に連結してある。ベース部材150に対して軸部材252aの軸心回りに外れ止め部材250を回動すると、規制部253の屈曲先端部とベース部材150における基板部151の屈曲した先端部とが互いに近接して突出状態となる。
【0032】
図6からも明らかなように、外れ止め部材250の規制部253は、カバー部251からの突出長さがベース部材150の板厚方向寸法(見込み方向に沿った寸法)よりも大きく構成してあり、カバー部251によってベース部材150の基板部151を覆って上述した突出状態となった場合、その先端部が基板部151の外表面151Eを超え、上框41の外縁面41bに近接して対向することが可能である。
【0033】
この外れ止め部材250には、ベース部材150との間にバネ部材350が介在させてあるとともに、カバー部251においてベース部材150のベース側鉤状部材154に対応する部位にカバー側鉤状部材254が設けてある。バネ部材350は、図5及び図6に示すように、軸部材252aの周囲を巻回する態様で設けたねじりコイルバネであり、ベース部材150に対して外れ止め部材250が、後述する非突出状態(図3、図5)となる方向へ常時付勢している。
【0034】
カバー側鉤状部材254は、図3及び図4に示すように、外れ止め部材250のカバー部251においてベース部材150を覆う面から規制部253と同じ方向に向けて突設したもので、その突出端部にカバー側鉤状部254Aを有している。カバー側鉤状部254Aは、図3、図4及び図8に示すように、カバー側傾斜面254A1とカバー側係合面254A2とを備えており、互いに近接する方向に向けて突設している。カバー側傾斜面254A1は、カバー部251から離隔するに従って互いの間隔が漸次増大する方向に傾斜した平面である。これらのカバー側傾斜面254A1は、ベース部材150の押圧操作部153に外力が作用していない状態において外れ止め部材250を非突出状態(図3、図5)から突出状態(図6)となる方向へ回動させた場合に、それぞれがベース側鉤状部材154のベース側傾斜面154A1に当接する位置に設けてある。カバー側係合面254A2は、突出状態においてベース部材150のベース側係合面154A2と平行となる態様で延在した平面である。
【0035】
上記のように構成した外れ止めユニット50においては、図3及び図5に示すように、外れ止め部材250がベース部材150を覆っていない非突出状態にある場合、固定網戸40の上框41に対してその外縁面41bから突出する構成がない。つまり、固定網戸40の外周囲となる外縁面41bからはその面内方向の外側に突出する構成がなく、固定網戸40の上下方向に沿った寸法に変化はない。
【0036】
従って、この状態から図1において左方側に示すように、固定網戸40の上框41を、固定障子20の下框22に設けた係合フィン22aよりも室内側となる部位に挿入し、その後、固定網戸40の下框42を室内側に押し込めば、何ら大きな操作力を要することなく係合台部材12aを容易に乗り越えることできる。これにより、固定網戸40の下框42を開口枠10の下枠12に構成した差込溝10aに落とし込むことで、係合フィン22a、係合台部材12a及び下枠12の仕切り壁部14によって固定網戸40が下方開口枠10′に支持されることになる。
【0037】
この状態から、例えば可動障子30を内倒し窓として機能させ、図1において右方側に示すように、下框32を軸心として上端部を室内側に倒して開けば、室内側から外れ止めユニット50を操作することが可能となり、外れ止め部材250とベース部材150とが互いに対向した突出状態に操作することが可能となる。
【0038】
すなわち、図中の矢印Rのように、ベース部材150に対して外れ止め部材250を互いに対向する方向に回動させ、そのまま外れ止め部材250をベース部材150に対して押圧すれば、互いに当接するベース側鉤状部154Aのベース側傾斜面154A1とカバー側鉤状部254Aのカバー側傾斜面254A1との傾斜作用によってベース部材150の押圧操作部153が互いに近接する方向に弾性的に変形する。その後、ベース側傾斜面154A1とカバー側傾斜面254A1との摺接状態が終了してカバー側係合面254A2がベース側係合面154A2を超えて進入した時点でベース部材150の押圧操作部153が自身の弾性復元力によって元の状態に復帰し、この結果、図7の左半分及び図8の左半分に示すように、カバー側係合面254A2がベース側係合面154A2に対向した突出状態となる。
【0039】
外れ止め部材250が突出状態となると、押圧操作部153を操作することなく外れ止め部材250をベース部材150から離反させる方向に回動させた場合、その方向に対してほぼ直角となる向きに延在するカバー側係合面254A2及びベース側係合面154A2が互いに当接するため、ベース部材150に対する外れ止め部材250の回動が阻止されることになる。
【0040】
この突出状態においては、図1において右方側に示すように、固定網戸40の上框41から規制部253が上方に向けて突出し、実質的に固定網戸40と固定障子20における下框22の下面との間の距離が短縮され、下方開口枠10′に対する固定網戸40の上方への移動可能距離が制限されることになる。
【0041】
従って、固定網戸40に対してこれを上方に移動させるような外力が加えられたとしても、下方開口枠10′から固定網戸40が不用意に脱落する事態を防止することができるようになる。しかも、ベース部材150に対して外れ止め部材250が上框41の長手方向に沿った軸心回りに回動するため、さらには、規制部253の一部が上框41の外縁面41bに対向した状態となるため、固定網戸40に大きな力が加えられた場合にも閉塞状態にある外れ止め部材250がベース部材150から離反する方向に回動されることはなく規制部253が継続して上框41の外縁面41bから突出した状態に維持されることになり、下方開口枠10′からの固定網戸40の不用意な脱落を確実に防止することが可能となる。さらに、ベース部材150を上框41に保持させるための取付ネジ160の頭部が外れ止め部材250によって覆われることになり、建具としての外観品質が損なわれる恐れもない。
【0042】
一方、固定網戸40を下方開口枠10′から取り外す場合には、図7の右半分及び図8の右半分に示すように、外れ止めユニット50においてベース部材150に設けた押圧操作部153を互いに内方(近接する方向)に向けて押圧すると、ベース側係合面154A2に対してカバー側係合面254A2が上框41の長手方向に沿って内方側に移動し、互いに対向した状態から逸脱することになる。従って、この状態から外れ止め部材250をベース部材150から離反する方向に回動操作すれば、容易にこれを開放させ、規制部253を上框41の外縁面41bから退行した位置、つまり固定網戸40の外周囲となる外縁面41bからその面内方向の外側に突出しない位置(非突出状態)に配置させることができるようになる。
【0043】
従って、この非突出状態から固定網戸40を上方に移動させれば、下框42の下面が係合台部材12aの上面よりも上方に配置されることになり、そのまま下框42を手前側に引き出せば、固定網戸40を下方開口枠10′から取り外すことができる。
【0044】
尚、上述した実施の形態では、下方開口枠10′に対して固定網戸40を固定することによって構成される建具を例示しているが、障子としては必ずしも網戸である必要はなく、また可動する障子(引違い窓や片引き窓等)であっても同様に適用することが可能である。例えば、左右方向にスライド移動する引違い窓や片引き窓の場合では、外れ止めユニットによって開口枠に対する障子の上方向への移動が規制されることになる。また、上下方向に沿ったけんどん式で開口枠に障子を支持させるようにしているが、左右方向に沿ったけんどん式で開口枠に障子を支持させるものにも適用することは可能である。左右方向に沿ったけんどん式の場合、外れ止めユニットは、挿入される框、つまり縦框の少なくとも一方に取り付ければ良い。
【0045】
また、上述した実施の形態では、外れ止め部材250をベース部材150から離反させる方向に回動した場合、図2において二点鎖線で示すように、固定網戸40の上框41から外れ止め部材250が網44側(上框41よりも網戸40の面内方向の内側)へはみ出して外観が不自然な状態となるため、固定網戸40の外れ止めユニット50による外れ止めが機能していないことが目視で確認できる。従って、外れ止めユニット50をかけ忘れる恐れがない。しかしながら、外れ止め部材250の構成はこれに限らず、開放した状態において必ずしも框よりも障子の面内方向の内方側にはみ出させる必要はない。さらに、ベース部材150に対して外れ止め部材250を常時開放する方向に付勢するバネ部材350を介在させるようにしているため、押圧操作部153を互いに内方に向けて押圧した際にバネ部材350の付勢力によって外れ止め部材250を確実に非突出状態に配置させることができる。これにより、ベース部材150に対して外れ止め部材250が中途半端な回動位置で止まることがなく、使用者に対して突出状態と非突出状態とを目視で確認させることができる。しかしながら、外れ止めユニット50の構成はこれに限らず、必ずしもバネ部材350を設ける必要はない。
【0046】
またさらに、上述した実施の形態では、ベース部材150に対して外れ止め部材250を突出状態に配置した場合に外れ止め部材250の一部(規制部253)を框41の外縁面41bに対向させるようにしているため、外力に対する抗力が増すことになるが、必ずしもこれに限らない。
【0047】
また、上述した実施の形態では、ベース部材及び外れ止め部材にそれぞれ鉤状部材を設け、これらを互いに係合させることにより、ベース部材に対して外れ止め部材を突出状態に維持するようにしているが、維持手段としては必ずしも鉤状部を係合させるものに限らない。例えば、ベース部材と外れ止め部材との間にピンと穴とを形成し、ベース部材に対して外れ止め部材を対向させた場合にピンを穴に圧入させることによって外れ止め部材を突出状態に維持することも可能である。
【0048】
さらに、上述した実施の形態では、外れ止めユニット50のベース部材150を固定網戸40の上框41(障子の框)において見込み方向の室内側に位置する内表面41aに取り付けているが、上框41において見込み方向の室外側に位置する面に取り付けても構わない。この場合、外れ止めユニット50が上框41において見込み方向の室外側に位置することになり、室外側から外れ止めユニット50を操作することになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態である建具の縦断面図であり、左方側から右方側に向けて障子を支持させる過程を示している。
【図2】図1に示した建具に適用する障子の斜視図である。
【図3】図1に示した建具の外れ止めユニットを拡大して示す斜視図である。
【図4】図3に示した外れ止めユニットにおいてベース部材と外れ止め部材とが閉塞される途中の状態を示す断面平面図である。
【図5】図3に示した外れ止めユニットにおいてベース部材と外れ止め部材とが互いに開放した状態を示す断面側面図である。
【図6】図3に示した外れ止めユニットにおいてベース部材と外れ止め部材とが互いに閉塞した状態を示す断面側面図である。
【図7】図3に示した外れ止めユニットにおいて維持手段であるベース側鉤状部材とカバー側鉤状部材との係脱状態を示す概念図である。
【図8】図3に示した外れ止めユニットにおいてベース部材と外れ止め部材とが閉塞された状態を示す断面平面図である。
【符号の説明】
【0050】
10′ 下方開口枠
12 下枠
13 縦枠
22 下框
40 固定網戸
41 上框
50 外れ止めユニット
150 ベース部材
151 基板部
152 軸受部
153 押圧操作部
154 ベース側鉤状部材
160 取付ネジ
250 外れ止め部材
251 カバー部
252 軸部
253 規制部
254 カバー側鉤状部材
350 バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠と、四周框組みされた障子とを備え、前記開口枠に対して前記障子をけんどん式で装着することによって前記開口枠に前記障子を支持させるようにした建具において、
前記框において見込み方向の室内側または室外側に位置する面に取り付けたベース部材と、
前記ベース部材を取り付けた框の長手方向に沿った軸心回りに回動可能となる態様で前記ベース部材に配設し、前記障子の外周囲となる外縁面から突出する突出状態と、前記外縁面から退行した非突出状態とにわたって回動する外れ止め部材と、
前記ベース部材に対して前記外れ止め部材が前記突出状態に配置された場合に該外れ止め部材を前記突出状態に維持する維持手段と
を備えた外れ止めユニットを設けることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記維持手段は、前記ベース部材及び前記外れ止め部材の互いに対応する部位にそれぞれ形成し、前記ベース部材に対して前記外れ止め部材が前記突出状態に配置された場合に互いに鉤状部を係合させることにより前記ベース部材に対して前記外れ止め部材が前記非突出状態へ移行する向きへの回動を規制する一対の鉤状部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記外れ止め部材は、前記非突出状態に配置された場合に前記ベース部材を取り付けた框の内縁面から前記障子の面内方向内側に向けて突出することを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記ベース部材と前記外れ止め部材との間に、前記外れ止め部材を前記非突出状態となる方向へ常時付勢するバネ部材を介在させたことを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記ベース部材は、該ベース部材に形成したネジ挿通孔を介してネジを締結することにより前記框に取り付けられるものであり、
前記外れ止め部材は、前記突出状態に配置された場合に前記ネジの頭部を覆うカバー部を有したことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項6】
前記外れ止め部材は、前記突出状態に配置された場合に前記框の外縁面に対向する対向部を有したものであることを特徴とする請求項1に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−95908(P2010−95908A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267777(P2008−267777)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】