説明

建物の壁面緑化方法

【課題】作業時の安全性を向上させ、作業工程を短縮して、少ない作業員で作業を可能にし、施工性が良好な建物の壁面緑化方法を提供する。
【解決手段】建設現場を外部と区画するために設けられる仮囲い11の内側に沿って枠組足場13を立設し、該枠組足場13の上部に、プランター21と、該プランター21を収納すべく上部が開口した函形のプランター部22と、プランター21に植生する植物34を登はんさせるためのメッシュ29を張設したパネル部23とから構成されるプランターユニット20を仮設し、プランター21の植物を、仮設場所において先行栽培して、メッシュ29に植物34を登はんさせ、当該植物を先行栽培したプランターユニット20を、建物35壁面に沿って設けた足場36解体時に、枠組足場13から取り外して揚重し、建物35壁面の所定の設置位置に移設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面緑化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁面緑化方法としては、次のような手順による方法が知られている(図12参照)。
(1)建物1から外部にはね出した鉄骨梁2に対して、壁面緑化用のユニットフレーム3を受けるメッシュプランター4を設ける。
(2)そのメッシュプランター4にユニットフレーム3を取り付ける。
(3)植物を育成中の植栽5を設置階まで揚重して、ユニットフレーム3に連結する。
【0003】
なお、特開2000−300079号公報には、ユニット式壁面緑化装置及び壁面緑化方法が開示されており(特許文献1参照)、特開2002−305962号公報には、建物の壁面緑化方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−300079号公報
【特許文献2】特開2002−305962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来例の建物の壁面緑化方法においては、(a)枠組足場6の上で行う作業が多く、転落事故等の危険性が伴い、(b)植栽5を設置階まで揚重する作業は手間が掛かって施工性が悪く、(c)作業工程の中での取り合いが多くて厄介である、という種々の問題点を有している。
【0006】
従って、従来例における建物の壁面緑化方法においては、枠組足場6の上での作業を少なくして安全性を向上させることと、作業効率を上げて施工性を良好にすることと、作業工程の中での取り合いを減らして施工性を向上させることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、建設現場を外部と区画するために設けられる仮囲いの内側に沿って足場を立設し、該枠組足場の上部に、プランターと、該プランターを収納すべく上部が開口した函形のプランター部と、前記プランターに植生する植物を登はんさせるためのメッシュを張設したパネル部とから構成されるプランターユニットを仮設し、前記プランターの植物を前記仮設場所において先行栽培して、前記メッシュに植物を登はんさせ、当該植物を先行栽培したプランターユニットを、建物壁面に沿って設けた足場解体時に、前記枠組足場から取り外して揚重し、前記建物壁面の所定の設置位置に移設することである。
【0008】
また、前記プランター部の両端には、それぞれ一対の吊り上げ用の係止部が設けられ、該係止部にロープを係止して揚重すること、;
前記建物壁面に移設したプランターユニットは、水槽と、該水槽からの送水をコントロールするコントローラーと、該コントローラーに連結し前記プランターユニットのプランターに灌水する灌水パイプとから少なくとも成る灌水装置が配設されること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る建物の壁面緑化方法によれば、従来例と比較して、枠組足場の上で行う作業が少なくなるので、転落事故等の危険性が減少して安全性が向上する。また、作業工程が短縮できて、少ない作業員で作業が可能になり、施工性が良好である。
そして、プランターの植物は、枠組足場の上部で先行栽培してメッシュに登はんさせるので、建物の竣工時には十分な緑化の被覆度が期待できる。また、建設現場においてのエコ活動、CO2削減活動としての効果が期待でき、環境技術や環境意識の高さを広告、宣伝できる。
更に、枠組足場の上部に設置したプランターユニットは、モックアップの代わりとなり、建物壁面への設置前に緑化の完成形を確認できるだけでなく、建設現場での気象条件等による成長具合の確認ができるという種々の優れた効果を奏する。
【0010】
プランター部の両端には、それぞれ一対の吊り上げ用の係止部が設けられ、該係止部にロープを係止して揚重することによって、プランターユニットを安定した状態で揚重できるという優れた効果を奏する。
【0011】
建物壁面に移設したプランターユニットは、水槽と、該水槽からの送水をコントロールするコントローラーと、該コントローラーに連結し前記プランターユニットのプランターに灌水する灌水パイプとから少なくとも成る灌水装置が配設されることによって、植物への水やりを自動的に行えるので、メンテナンス性が良好であるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】仮囲い11の正面図である。
【図2】仮囲い11の側面図である。
【図3】プランターユニット20をプランター21とプランター部22とパネル部23とに分離して示す斜視図である。
【図4】プランターユニット20の側面図である。
【図5】枠組足場36を降ろす状態を説明する、建物35の側面図である。
【図6】プランターユニット20を揚重する状態を説明する、枠組足場13の側面図である。
【図7】プランターユニット20を枠組足場36の作業員まで吊り上げる状態を説明する、建物35の側面図である。
【図8】プランターユニット20の取付状態を説明する、要部の側面図である。
【図9】プランター部22の取付状態を説明する、要部の側面図である。
【図10】プランターユニット20の取付状態を説明する、要部の側面図である。
【図11】灌水装置61を説明する建物35の斜視図である。
【図12】従来例の建物の壁面緑化方法を説明する、建物1の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1は、建設現場を外部と区画するために設けられる仮囲い11の正面図であり、図2は、仮囲い11の側面図である。
【0014】
仮囲い11は、単管パイプを所定の間隔を開けて地面に立設し、この単管パイプに対して直交方向に単管パイプを配設して、これらの単管パイプに鋼板12を一枚づつ併設して固定治具で固定して設置する。なお、図1中の符号11aは、出入口用のゲートを示す。
【0015】
仮囲い11の内側に沿った位置には、当該仮囲い11と同程度の高さ、やや低い高さ又はやや高い高さの枠組足場13を立設する(図2参照)。なお、足場は、枠組足場13に限らず、単管足場、架台あるいは枠組等であってもよく、要するに安定した状態で設置できる足場であればよい。
【0016】
枠組足場13は、一対の縦材14と両縦材14の上端部を連結する横材15とからなる門形の足場用建枠16を所定の間隔を開けて立設し、対向する足場用建枠16の縦材14間に図示しない筋交いを取り付け、両方の横材15同士の間に足場板17を架け渡して設置する。また、縦材14の下部には、パイプ18を介して補強用の打込単管19が地中に埋設される。
【0017】
枠組足場13の上部には、図2に示すように、プランターユニット20を仮置き状態に設置する。枠組足場13の上部とプランターユニット20の上部との間には、補強用パイプ13aを架け渡してクランプ13bで固定する。
【0018】
プランターユニット20は、図3に示すように、プランター21と、プランター部22と、パネル部23とから構成される。
【0019】
プランター21は、上部が開口した横長の函形に形成されて、植物の栽培に用いられるものであり、登はん植物又は垂下植物等の適宜の植物を植生させる。
【0020】
プランター部22は、プランター21を収納すべく上部が開口した横長の函形に形成され、両側部24及び両端部25に金網が張設される。両端部25の上端には、それぞれ一対の吊り上げ用の係止部26が設けられ、この係止部26にロープを係止して揚重することができる。一方の側部24の下端縁には、適宜の間隔を開けて3個の固定用のブラケット27aが設けられている。両端部25の下端縁には、固定用のブラケット27bが設けられている。プランター部22の底部には、排水管27cが設けられている。
【0021】
パネル部23は、矩形状の枠部28に金網(メッシュ)29が張設されると共に、適宜の間隔を開けてアングル材30及び手摺材31が配設されている。枠部28の両端における上方には、固定用のブラケット32が設けられており、下方には、プランター部22と連結固定する連結プレート33が設けられている。
【0022】
このようなプランター部22とパネル部23とは、スチール材で形成されると共に、メッキ処理が施されている。また、図4に示すように、連結プレート33によって、プランター部22とパネル部23とが連結固定される。
【0023】
このように構成されるプランターユニット20は、図2に示すように、枠組足場13の上部に設置して、プランター21に植生する植物を先行栽培し、金網29に植物34を登はんさせる。従って、建物35の竣工時には十分な緑化の被覆度が期待できる。また、建設現場においてのエコ活動、CO2削減活動としての効果が期待でき、環境技術や環境意識の高さを広告、宣伝できる。そして、プランターユニット20は、モックアップの代わりとなり、建物壁面への設置前に緑化の完成形を確認できる。更に、建設現場での気象条件等による成長具合の確認ができる。
【0024】
次に、プランターユニット20を、建物35の壁面に沿って設けた枠組足場35の解体時に、枠組足場13から取り外して、建物35の壁面へ移設する工程について、図5から図7を参照しながら説明する。
【0025】
まず、建物35の建設に伴い壁面に沿って多段に設置されている枠組足場36を、プランターユニット20の設置位置(設置階)まで上段から順番に解体して降ろす(図5参照)。
【0026】
一方、枠組足場13から取り外したプランターユニット20は、図示しないクレーンのフック37に取り付けたロープ38を、プランター部22の係止部26に係止して、揚重する(図6参照)。
【0027】
そして、プランターユニット20を枠組足場36の作業員の近傍まで吊り上げて、設置位置への取付作業を開始する(図7参照)。なお、プランターユニット20の取り付けは、上方の設置階から順次行う。図5及び図7中の符号35aは、プランターユニット20を取り付けるバルコニーを示す。
【0028】
図8は、最上部に取り付けるプランターユニット20を示す。プランターユニット20の上方のブラケット32に、ボルト39でアングル材40を固定し、アングル材40にボルト41で連結部材42を固定する。連結部材42の他端部は、建物35壁面の取付部43にボルト44で固定する。
【0029】
また、図9に示すように、プランター部22は、ブラケット27bを鉄骨材45にボルト47で固定する。また、ブラケット27aを鉄骨材48にボルト49で固定する。
【0030】
図10は、2段目以下のプランターユニット20を示す。プランターユニット20の上方のブラケット32に、ボルトでアングル材50を固定し、アングル材50を鉄骨材51にボルト52で固定する。
【0031】
また、プランター部22は、ブラケット27bを鉄骨材53にボルト54で固定し、ブラケット27aを鉄骨材55にボルト56で固定する。
【0032】
以上のように本発明の建物の壁面緑化方法は、枠組足場13の上部に仮設したプランターユニット20の植物34を、仮設場所において先行栽培し、そのプランターユニット20を枠組足場13から取り外して揚重し、建物35の壁面に移設するので、従来例と比較して、枠組足場13の上で行う作業が少なくなり、転落事故等の危険性が減少して安全性が向上する。また、作業工程が短縮できて施工性が良好である。
【0033】
次に、プランターユニット20に配設される灌水装置61について、図11を参照しながら説明する。
【0034】
建物35の壁面には、複数のプランターユニット20が取り付けられており、プランターユニット20同士の間に灌水ホース62が設置されている。
【0035】
灌水ホース62は、送水管63を介して、送水をコントロールするコントローラー64と、送水の圧力を調整する減圧弁65と、屋上の水槽66とに連結している。
【0036】
このような灌水装置61は、コントローラー64で電磁弁の開閉操作をして、植物への水やりを自動的に行うので、メンテナンス性が良好となる。なお、図11中の符号67は、水抜き弁を示し、符号68は、点検用コックを示し、符号69は、AC100V電源を示す。
【符号の説明】
【0037】
1 建物
2 鉄骨梁
3 ユニットフレーム
4 メッシュプランター
5 植栽
6 枠組足場
11 仮囲い
11a ゲート
12 鋼板
13 枠組足場
13a 補強用パイプ
13b クランプ
14 縦材
15 横材
16 足場用建枠
17 足場板
18 パイプ
19 打込単管
20 プランターユニット
21 プランター
22 プランター部
23 パネル部
24 側部
25 端部
26 係止部
27a、27b ブラケット
27c 排水管
28 枠部
29 金網(メッシュ)
30 アングル材
31 手摺材
32 ブラケット
33 連結プレート
34 植物
35 建物
35a バルコニー
36 枠組足場
37 フック
38 ロープ
39 ボルト
40 アングル材
41 ボルト
42 連結部材
43 取付部
44 ボルト
45 鉄骨材
47 ボルト
48 鉄骨材
49 ボルト
50 アングル材
51 鉄骨材
52 ボルト
53 鉄骨材
54 ボルト
55 鉄骨材
56 ボルト
61 灌水装置
62 灌水ホース
63 送水管
64 コントローラー
65 減圧弁
66 水槽
67 水抜き弁
68 点検用コック
69 AC100V電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場を外部と区画するために設けられる仮囲いの内側に沿って足場を立設し、
該枠組足場の上部に、プランターと、該プランターを収納すべく上部が開口した函形のプランター部と、前記プランターに植生する植物を登はんさせるためのメッシュを張設したパネル部とから構成されるプランターユニットを仮設し、
前記プランターの植物を前記仮設場所において先行栽培して、前記メッシュに植物を登はんさせ、
当該植物を先行栽培したプランターユニットを、建物壁面に沿って設けた足場解体時に、前記枠組足場から取り外して揚重し、前記建物壁面の所定の設置位置に移設すること
を特徴とする建物の緑化方法。
【請求項2】
プランター部の両端には、それぞれ一対の吊り上げ用の係止部が設けられ、該係止部にロープを係止して揚重すること
を特徴とする請求項1に記載の建物の緑化方法。
【請求項3】
建物壁面に移設したプランターユニットは、水槽と、該水槽からの送水をコントロールするコントローラーと、該コントローラーに連結し前記プランターユニットのプランターに灌水する灌水パイプとから少なくとも成る灌水装置が配設されること
を特徴とする請求項1に記載の建物の緑化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−191860(P2012−191860A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56416(P2011−56416)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(391024696)住友林業緑化株式会社 (39)
【出願人】(591083901)共和ハーモテック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】