説明

建物の外壁構造およびこれを備える建物

【課題】本発明は、コストをかけずに建物外壁の防水性および外観を長期にわたり維持することが可能な外壁構造およびこれを適用した建物を提供することをその目的とする。
【解決手段】地面に対して垂直に施工された第1の壁と、前記第1の壁に対して、下部から上部に向って離れるように傾斜をつけて施工された第2の壁と、を少なくとも備えることを特徴とする、建物の外壁構造およびこれを適用した建物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造およびこれを備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁は、通常、地面に対して垂直な躯体(下地壁)表面に、塗壁やサイディング材等の外壁仕上材層を形成することで施工されており、これにより建物の外観や防水性等を確保している。
【0003】
しかし、建物の外壁表面(仕上材層表面)は、排気ガス、埃、雨水、紫外線などに暴露されるに従い、汚れや色あせが生じ、さらには、外壁仕上材層そのものが劣化してくるため、定期的なメンテナンスが必要であり、そのための維持コストは小さくない。
【0004】
一方、近年では、光触媒活性を示すセルフクリーニング塗料など、外壁表面の汚れや劣化等を防止するための様々な技術が開発されているが、そのような新技術を採用する場合には、大きなイニシャルコストがかかるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を鑑みて、本発明は、コストを抑えて建物外壁の防水性や外観を比較的長期にわたり維持することが可能な建物の外壁構造およびこれを適用した建物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、建物の外壁表面を、当該表面に対する太陽光(紫外線や赤外線)や雨水等の入射角が浅くなるように傾斜させる構造とすることにより、太陽光や雨水に対する暴露量を低減させ、その防水性および外観を従来以上に長く維持することが可能であることを見出し、為されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(7)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0008】
(1)地面に対して垂直に施工された第1の壁と、前記第1の壁に対して、下部から上部に向って離れるように傾斜をつけて施工された第2の壁と、を少なくとも備えることを特徴とする、建物の外壁構造。
【0009】
(2)前記第1の壁と前記第2の壁のなす角αが、45度未満であることを特徴とする、上記(1)に記載の建物の外壁構造。
【0010】
(3)前記第1の壁と前記第2の壁のなす角αが、0.2〜0.5度の範囲であることを特徴とする、上記(1)に記載の建物の外壁構造。
【0011】
(4)前記第1の壁に対して所定の傾斜が付与されるように前記第2の壁を誘導するためのキャンバーを挟んで、前記第1の壁および前記第2の壁が固定されていることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の建物の外壁構造。
【0012】
(5)前記第2の壁が、2枚以上の外壁材を用いて形成されていることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の建物の外壁構造。
【0013】
(6)前記第2の壁の外表面上に塗壁が形成されていることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の建物の外壁構造。
【0014】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の外壁構造を備えることを特徴とする建物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大きな初期コストまたは維持コストをかけずに建物外壁の防水性および外観を比較的長期にわたり維持することが可能な建物の外壁構造およびこれを適用した建物を提供することが可能となる。
【0016】
また、本発明の外壁構造は、公知の外壁下地材や外壁仕上材を適用して施工することができ、さらには、既存建物の垂直な外壁に対しても容易に施工することができるため、リフォームにも好適である。
【0017】
また、本発明の外壁構造は、遠近効果により建物上部が小さく見える縮小現象を補正することができるため、建物のデザインや存在感を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の外壁構造は、例えば、図1に示すように、地面に対して垂直に施工された第1の壁1と、当該第1の壁に対して、下部から上部に向って離れるように傾斜をつけて施工された第2の壁2と、を少なくとも備えることをその特徴とするものである。すなわち、本発明の外壁構造を適用した建物は、その外壁が上部に行くほど外側に開いたような形状となる。
【0019】
第1の壁と第2の壁のなす角(傾斜角)αは、上記課題を解決しうる範囲であればよく、特に限定されないが、施工性や意匠性を考慮すると、45度未満であることが好ましく、5度未満であることがより好ましく、1度未満であることがさらに好ましく、0.2〜0.5度の範囲であることが特に好ましい。より具体的には、例えば、一般的な2階建て住宅における外壁の高さを約5〜6mとすると、当該外壁(第1の壁)の最上部と第2の壁の最上部間の距離が2〜3cm程度離れるように傾斜をつけて施工することが特に望ましい。
【0020】
上記第1の壁は、建物本体(構造体)を支える柱と同様、地面(土台)に対して垂直に施工された壁であり、第2の壁を固定するための下地壁としての役割を果たす。第1の壁は、各種ボード、合板、木板等の公知の外壁下地材を用いて公知の方法により施工することができ、また、リフォームの場合には、既存の垂直外壁を当該第1の壁として扱うこともできる。
【0021】
また、上記第2の壁は、前述の通り、第1の壁に対して、塗壁やサイディング材等の公知の外壁仕上材を、傾斜をつけて配置、固定することで施工することができる。固定方法は、接着材等を用いる湿式法や固定金具等を用いる乾式法でもよく、特に限定されない。また、上記第2の壁に傾斜を付与する手段は、特に限定されないが、好ましくは、所定の傾斜が付与されるように第2の壁を誘導(ガイド)するためのキャンバーを用い、これを第1の壁および第2の壁で挟むようにして固定する。より具体的には、例えば、図2に示すように、第2の壁を施工する前に、第1の壁1もしくは柱の少なくとも1箇所、好ましくは第2の壁の固定部となる箇所にキャンバー3を固定した後、当該キャンバー3の斜面に沿って第2の壁2を配置、固定する。なお、キャンバーの材質、大きさ、形状は、コスト、設置位置、傾斜角等を適宜考慮して決定すればよく、特に限定されないが、好ましくは、前述の好ましい角度αを有する直角三角柱状のキャンバーを用いる。また、キャンバーと第1の壁もしくは第2の壁の間に防水シートが挟まれていてもよい。
【0022】
また、図3に示すように、第2の壁2の外表面上に、当該面に沿って塗壁21が形成されていてもよい。この場合、例えば、第2の壁は、サイディング材等の外壁材ではなく、上記第1の壁と同様の外壁下地材を用いて施工され、当該第2の壁上に防水シートとラス網(図示せず)を順に固定し、その上から公知の外壁仕上用塗材(左官用塗材)を塗付け、乾燥することにより、上記塗壁を形成することができる。もちろん、当該第2の壁(外壁下地材)上に予め上記塗壁が形成されたものを配置、固定してもよい。また、第1の壁全体を覆うようなキャンバーを用い、その上に直接塗壁を形成し、これを第2の壁としてもよい。
【0023】
また、第1の壁や柱として、第2の壁を施工する側に上記キャンバーの代わりになるような傾斜が予め付与されたものを用い、当該傾斜面に沿って直接第2の壁を配置、固定してもよく、また、当該傾斜面に塗壁を形成し、これを第2の壁としてもよい。
【0024】
また、図4(a)に示すように、外壁仕上材を2枚以上用いて、第2の壁を形成することもでき、これによれば、大きな建機等を用いずに施工することが可能となる。この場合、例えば、第1の壁下部から、第2の壁となる外壁仕上材を順次上部に向ってずらしながら重ね、固定していくことで施工することができ、好ましくは、上記キャンバーを併用する。また、この場合における第2の壁の施工性を向上させるため、図4(b)に示すように、一方の外壁材上部に切欠き4を設け、他方の外壁材下部が当該切欠き4に嵌合するように重ねて固定することもできる。なお、切欠きの形状や大きさは、第2の壁となる外壁仕上材の大きさ、傾斜角度、固定方法等を考慮して適宜決定することが望ましい。
【0025】
また、本発明の建物は、上記本発明の外壁構造をその外壁の全てもしくは一部に適用して建築されたものであり、基礎構造や屋根等、その他の構造は特に限定されない。上記本発明の外壁構造を適用することで、外壁面の汚れ、温度上昇、劣化進行などを低減することができ、結果として、建物の寿命やメンテナンス間隔を低コストで延ばすことが可能となる。なお、扉や窓等の建具が配置される外壁においては、建具の種類や配置箇所等を考慮して、当該建具に不具合が生じないように適宜設計、施工すればよい。例えば、建具を第1の壁面に沿って配置し、第2の壁の斜面が当該建具の配置箇所において途切れるように施工する、または、建具の配置箇所にかかる外壁構造は従来公知の垂直外壁とし、それ以外の箇所に本発明の外壁構造を適用して施工することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の外壁構造の一実施形態を示す断面概略図である。
【図2】本願発明の外壁構造を形成する手段の一実施形態を示す断面概略図である。
【図3】本願発明の外壁構造の一実施形態を示す断面概略図である。
【図4】本願発明の外壁構造の一実施形態を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 第1の壁
2 第2の壁
21 塗壁
3 キャンバー
4 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に対して垂直に施工された第1の壁と、前記第1の壁に対して、下部から上部に向って離れるように傾斜をつけて施工された第2の壁と、を少なくとも備えることを特徴とする、建物の外壁構造。
【請求項2】
前記第1の壁と前記第2の壁のなす角αが、45度未満であることを特徴とする、請求項1に記載の建物の外壁構造。
【請求項3】
前記第1の壁と前記第2の壁のなす角αが、0.2〜0.5度の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の建物の外壁構造。
【請求項4】
前記第1の壁に対して所定の傾斜が付与されるように前記第2の壁を誘導するためのキャンバーを挟んで、前記第1の壁および前記第2の壁が固定されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の建物の外壁構造。
【請求項5】
前記第2の壁が、2枚以上の外壁材を用いて形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の建物の外壁構造。
【請求項6】
前記第2の壁の外表面上に塗壁が形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の建物の外壁構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の外壁構造を備えることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−202281(P2008−202281A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38347(P2007−38347)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(597128897)株式会社 高千穂 (11)
【Fターム(参考)】