説明

建物ユニット及びこれを用いたユニット建物

【課題】新築後の後日において建物の構造性能を比較的容易に変更することができる建物ユニット及びこれを用いたユニット建物を得る。
【解決手段】建物ユニットの門型架構体56には、耐力壁58が後付けにより固定されている。耐力壁58は追加柱60を備えており、その下端部は既設アンカーボルトである埋め込みアンカーボルト54に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、門型に構成されたラーメン構造の門型架構体を備えた建物ユニット及びこれを用いたユニット建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、梁と耐力壁によって建物躯体が構成される住宅において、建物躯体は共通とし、建物躯体に着脱自在な耐震部材を取り付けることで、需要者の耐震性能に対するニーズに応じて耐震性能を段階的に変更できるようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−90383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術による場合、新築時には耐震性能を変更することが可能であるが、新築後に耐震性能を強化したいと需要者が望んでも、同じ手法で耐震性能の変更を調整することはできない。
【0004】
特に、住宅の長寿命化が今後の政策の方向性となっている状況下では、今後の法改正や需要者の意識の変化等により、耐震性能に対する要求レベルが上がることが考えられるが、一度建ててしまった建築物の耐震性能を変更するのは容易ではない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、新築後の後日において建物の構造性能を比較的容易に変更することができる建物ユニット及びこれを用いたユニット建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る建物ユニットは、一対の柱と、当該一対の柱の上端部を繋ぐ上梁と、柱の下端部から上梁に対して平行に延出されかつ上梁よりもスパン長が短い下梁と、を含んで門型に構成されたラーメン構造の門型架構体と、前記下梁の延出端側に設定された既設アンカーボルトと、この既設アンカーボルトを利用して門型架構体の架構面内に建物完成後に後付けされて当該架構面を補強する追加構造要素と、を有している。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の建物ユニットにおいて、前記追加構造要素は、前記既設アンカーボルトを用いて柱に対して平行に立設された追加柱と、当該柱及び追加柱間の面内を補強する補強部材と、を含んで構成された耐力壁とされている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1記載の建物ユニットにおいて、前記追加構造要素は、前記既設アンカーボルトを用いて架構面内に固定された制振装置とされている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の建物ユニットにおいて、前記下梁におけるアンカーボルト配設位置には、当該下梁のアンカーボルト配設部位の断面形状を保持する下梁補強ブラケットが設けられている。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4記載の建物ユニットにおいて、前記追加構造要素は、前記下梁補強ブラケットに固定されている。
【0011】
請求項6の発明に係るユニット建物は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載された建物ユニットを一つ以上用いて構築されている。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、建物ユニットは、ラーメン構造として門型に構成された門型架構体を備えている。この門型架構体の柱の下端部には下梁が延出されており、その延出端側には既設アンカーボルトが設定されている。従って、この門型架構体を備えた建物ユニットを用いてユニット建物を構築した場合、架構面に玄関ドアを設置する等のプランニングが可能となる。
【0013】
一方、建物完成後に耐震補強や耐風補強といった構造性能を変更する必要が生じた場合には、門型架構体が備えている下梁の延出端側に設定された既設アンカーボルトを利用して、門型架構体の架構面内に追加構造要素が後付けされる。これにより、架構面が補強されて架構面の変形が抑制される。従って、その分、架構面ひいては当該建物ユニットの水平剛性が高くなる。従って、建物ユニット単体の耐震強度等の構造性能ひいてはユニット建物の構造性能を比較的容易に変更することができる。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、追加構造要素が、既設アンカーボルトを用いて柱に対して平行に立設された追加柱と、当該柱及び追加柱間の面内を補強する補強部材と、を含んで構成された耐力壁として構成されているため、剛性及び耐力がラーメンと比べても非常に高いという耐力壁の性能がラーメン構造の門型架構体に付加される。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、追加構造要素が、既設アンカーボルトを用いて架構面内に固定された制振装置として構成されているため、地震時の応答値(加速度や変位等)を減らしたり、地震時の振動を速やかに小さくするというように減衰性能を増やして構造性能の向上を図るという制振装置としての性能がラーメン構造の門型架構体に付加される。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、地震荷重等の荷重作用時、その荷重は追加柱から下梁におけるアンカーボルト配設位置に配設された下梁補強ブラケットに入力され、更に既設アンカーボルトに伝達される。つまり、架構面に作用した荷重を下梁内に配設した下梁補強ブラケットを介して確実にアンカーボルトに伝達することができる。
【0017】
請求項5記載の本発明によれば、追加構造要素が下梁補強ブラケットに固定されているため、既設アンカーボルトの仕様を変更する必要がない。つまり、仮に下梁補強ブラケットが下梁内に配設されて下梁を補強するものの、追加構造要素の固定相手にはされておらず、追加構造要素は既設アンカーボルトの延長部分に固定される構造とした場合(アンカーボルトを延長させて下梁を貫通させてその貫通端部に追加構造要素を締結固定する場合)、既設アンカーボルトの長さを通常のものよりも長くした上で基礎からの突出量を追加構造要素の固定が可能な程度に予め長くしておく必要があるが、そのようにすると、従来使用してきたアンカーボルトを使うことができず、特殊仕様のアンカーボルトを使用することになる。さらに、それに伴ってアンカーボルトの延長部分の納まり等を変更する必要が生じる(下梁を貫通した端部は新築時には使用しないので、外部から見えないように周辺の納まりを変更する必要がある)。その場合、コストアップに繋がるだけでなく、通常、このような後処理は建築地での作業となることが多いので、施工性も低下する。しかし、本発明によれば、追加構造要素は下梁補強ブラケットに固定されているので、既設アンカーボルトの仕様は従来通りのものとすることができ、施工性に影響を与えることなく、コストも抑制される。
【0018】
請求項6記載の本発明によれば、ユニット建物が上記請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載された建物ユニットを一つ以上用いて構成されているので、将来の構造性能の変更が比較的容易という特長を持ったユニット建物が得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る建物ユニットは、新築後の後日において建物の構造性能を比較的容易に変更することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係る建物ユニットは、剛性及び耐力が非常に高いという耐力壁の性能をラーメン構造の門型架構体に付加することで、建物ユニットの耐震強度等の構造性能の向上を図ることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3記載の本発明に係る建物ユニットは、減衰性能をラーメン構造の門型架構体に付加することで、建物ユニットの耐震強度等の構造性能の向上を図ることができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4記載の本発明に係る建物ユニットは、変更した構造性能に対する信頼性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項5記載の本発明に係る建物ユニットは、ユニット建物の生産性を低下させることなく、コストも抑制することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項6記載の本発明に係るユニット建物は、将来的に耐震性能等を上げたいと思った場合には比較的容易に耐震性能等の構造性能を変更することができ、従来よりも永い期間快適で安心した住空間を確保することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
【0026】
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係る建物ユニット及びこれを用いたユニット建物の第1実施形態について説明する。
【0027】
図5には、本実施形態に係るユニット住宅の概略正面図が示されている。この図に示されるように、ユニット建物としてのユニット住宅10は、基礎12と、基礎12上に設けられた一階部分14と、一階部分14の上に設けられた二階部分16と、二階部分16の上に設けられた屋根部分17と、によって構成されている。さらに、一階部分14は、箱型に構成された複数個の一階ユニット18によって構成されている。同様に、二階部分16は、一階ユニット18と同一サイズの箱型に構成された複数個の二階ユニット20によって構成されている。一階ユニット18及び二階ユニット20は、一階ユニット18の柱頭部と二階ユニット20の柱脚部との間に配設される図示しないドッキングプレート並びに同一階で対向して配置された大梁間に配設される梁間連結ブラケット等の連結手段によって上下左右に相互に連結されている。
【0028】
図4には、一階部分14において後述する玄関土間部44を構成する建物ユニットとしての一階ユニット18の躯体構造が示されている。この図に示されるように、一階ユニット18は、四隅に立設された4本の柱22と、対向する柱22の下端部同士を連結する長短二種類の床大梁28、30と、対向する柱22の上端部同士を連結する長短二種類の天井大梁32、34と、によって構成されたユニット本体36を備えている。なお、図4に示される一階ユニット14は、後述するように玄関土間部44として用いるため、一対の長辺側の床大梁28のうち、屋外側に位置される床大梁28については本来の長さを有していないが、他の一階ユニット14及び二階ユニット20については対向する床大梁28、30の長さは同一である。
【0029】
なお、床大梁28、30は床パネルの床フレーム38の一部として構成されており、長辺側の床大梁28間には図示しない床小梁が所定の間隔で配置されている。同様に、天井大梁32、34は天井パネルの天井フレーム40の一部として構成されており、長辺側の天井大梁32間には図示しない天井小梁が所定の間隔で配置されている。また、図5では、同一サイズの箱型ユニットである一階ユニット18によって一階部分14が構成されているが、これは一例に過ぎず、使用するユニットの個数及びサイズは任意であり、完全な箱型ユニットのみならず、プランニングや用途に応じて一部がカットされた略箱型のカットユニット等の異形ユニットを使用してもよい。
【0030】
各柱22の下端部には、先付けアンカーボルト42が鉛直下向きに突出されており、この先付けアンカーボルト28が図示しない基礎に形成されたアンカホールに挿入され、グラウト材が注入されて基礎12に固定されるようになっている。なお、先付けアンカーボルト42は、図4に示されるように柱22の下端部の直下に設けられている必要は必ずしもなく、柱22の下端部近傍から突出させるようにしてもよい。具体的には、柱22の下端部側面に先付けアンカーボルト固定用のブラケット等の取付部材を隣接して配置し、この取付部材から先付けアンカーボルト42を鉛直下向きに突出させるようにしてもよい。
【0031】
ここで、図4に示される一階ユニット18は、玄関土間部44を形成するべく、一方の長辺側の床大梁28が途中でカットされている。以下、この部分を「梁カット部46」と称し、梁カット部46が形成されたことによりスパン長が短くなった一対の床大梁28を「土間側床大梁48」と称す。この梁カット部46に玄関ドア50(図5に二点鎖線で図示)が開閉可能に取付けられるようになっている。
【0032】
図3及び図4に示されるように、各土間側床大梁48は溝形鋼とされており、屋外側に配置されたウェブ48Aと、上下一対の上フランジ48B及び下フランジ48Cと、によって構成されている。土間側床大梁48の自由端側(柱22に接合される側と反対側)の下フランジ48Cは、基礎又は土間コンクリート52に先埋めされた既設アンカーボルトとしての埋め込みアンカーボルト54に締結固定されている。
【0033】
本実施形態では、上記埋め込みアンカーボルト54を利用して、追加構造要素が新築後の改築時等において後付けされており、以下に詳細に説明する。なお、いずれの土間側床大梁48の自由端側の固定構造も同様であるから、図4のA線矢視部側の土間側床大梁48の自由端側に付加される構造要素について説明することとする。
【0034】
図1(A)には、上述した一階ユニット18の土間側床大梁48を備えた側面側の架構が模式的に示されている。この図に示されるように、当該側面の架構は、ラーメン構造の門型架構体56として表される。
【0035】
図1(B)には、図1(A)の門型架構体56に追加構造要素である耐力壁58を付加した状態が模式的に示されている。図2に示されるように、耐力壁58は、埋め込みアンカーボルト54上に立設される追加柱60と、この追加柱60と元々ある柱22と、天井大梁32及び土間側床大梁48と、これらの部材によって形成された矩形平面の対角線上に張られた補強部材としてのブレース62と、によって構成されている。
【0036】
図3には、追加柱60の柱脚部廻りの詳細構造が示されている。この図に示されるように、土間側床大梁48における埋め込みアンカーボルト54の配設位置には、床大梁内ブラケット64が追加設定されている。床大梁内ブラケット64は、土間側床大梁48の上フランジ48Bの下面に面接触状態で配置される矩形平板状の上板部材66と、下フランジ48Cの上面に面接触状態で配置される矩形平板状の下板部材68と、上下に対向する上板部材66の下面と下板部材68の上面とを垂直に連結する一対の側壁部70と、によって構成されている。下板部材68の中央部には、埋め込みアンカーボルト54の先端部が挿通可能なボルト挿通孔72が形成されている。また、上板部材66の両側部には、ボルト挿通孔74がそれぞれ形成されている。
【0037】
追加柱60の下端部には、平面視で上板部材66と重なる矩形平板状のベースプレート76が溶接等により予め取り付けられている。このベースプレート76の両側部にも、ボルト挿通孔74と同軸上にボルト挿通孔78が形成されている。そして、ベースプレート76の上方側から固定ボルト80がボルト挿通孔78、74内へ挿入されて、下板部材68の下方からナット82が螺合されることにより、追加柱60の下端部が上フランジ48Bを介して床大梁内ブラケット64に固定されている。
【0038】
また、床大梁内ブラケット64の下板部材68のボルト挿通孔72内には埋め込みアンカーボルト54の上端部が挿通されて、下板部材68の上方側から埋め込みアンカーボルト54の上端部にナット84が螺合されることにより、追加柱60の下端部が床大梁内ブラケット64を介して埋め込みアンカーボルト54に締結固定されている。なお、下フランジ48Cの下面と基礎又は土間コンクリート52との間には、スペーサ86が介在されている。
【0039】
また、天井大梁32における追加柱60の上端部と対向する内部にも床大梁内ブラケット64と同一又は類似の天井大梁内ブラケットが装着されて、追加柱60の上端部と天井大梁32とが当該天井大梁内ブラケットを介してボルト接合されている。
【0040】
(作用・効果)
【0041】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0042】
一階ユニット18及び二階ユニット20は、予め工場内の生産ラインで組み立てられる。そして、輸送車両の荷台に一階ユニット18及び二階ユニット20を個別に載せて建築地まで輸送する。
【0043】
建築地では、クレーンで一階ユニット18を基礎12上に順次据付けた後、二階ユニット20が一階ユニット18上に据付けられて、一階ユニット18と二階ユニット20とが上下左右に連結手段によって相互に連結される。その後、屋根部分17が二階ユニット20上に据付けられることによりユニット住宅10が構築される。
【0044】
一方、ユニット住宅10の完成後に耐震補強や耐風補強といった構造性能を変更する必要が生じた場合には、玄関土間部44を構成する一階ユニット18の門型架構体56に追加構造要素が付加される。
【0045】
具体的には、新築時に土間側床大梁48内に予め装着された床大梁内ブラケット64の真上に追加柱60を立設させ、追加柱60の下端部に配設されたベースプレート76をボルト80及びナット82で床大梁内ブラケット64の上板部材66に締結固定する。なお、下板部材68は、新築時に埋め込みアンカーボルト54に固定されている。同様に、追加柱60の上端部と天井大梁32とも図示しない天井大梁内ブラケットを介して締結固定する。さらに、ブレース62を張って耐力壁58が形成される。
【0046】
このように本実施形態では、ラーメン構造の門型架構体56の柱22の隣接位置に耐力壁58が追加されることにより、門型架構体56の架構面が補強されて架構面の変形が抑制される。従って、その分、架構面ひいては当該一階ユニット14の水平剛性が高くなる。これにより、一階ユニット14単体の耐震強度等の構造性能ひいてはユニット住宅10の構造性能を比較的容易に変更することができる。その結果、本実施形態によれば、新築後の後日においてユニット住宅10の構造性能を比較的容易に変更することができる。
【0047】
また、本実施形態では、追加構造要素が、既設アンカーボルトである埋め込みアンカーボルト54を用いて柱22に対して平行に立設された追加柱60と、当該柱22及び追加柱60間の面内を補強するブレース62と、を含んで構成された耐力壁58として構成されているため、剛性及び耐力がラーメンと比べても非常に高いという耐力壁の性能を、ラーメン構造の門型架構体56に付加することができ、その結果として、一階ユニット14の耐震強度等の構造性能の向上を図ることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、地震荷重等の荷重作用時は、追加柱60から土間側床大梁48におけるアンカーボルト配設位置に配設された床大梁内ブラケット64に入力され、更に埋め込みアンカーボルト54に伝達される。つまり、架構面に作用した荷重を土間側床大梁48内に配設した床大梁内ブラケット64を介して確実に埋め込みアンカーボルト54に伝達することができる。従って、本実施形態によれば、変更した構造性能に対する信頼性を向上させることができる。
【0049】
上記効果について補足すると、前述した先行技術でもそうであるが、一般に耐震部材を後から付加することは、新築設計時には想定していない。ここで、耐震部材の付加は二階及び三階建て規模の住宅については、地震や風による水平力が最も大きく作用する一階で実施したい行為であり、かつ付加した耐震部材の種類にもよるが、本実施形態のようにブレース62等の耐震部材を付加する場合には、脚部の固定度が小さいと耐震部材として有効に機能しない。よって、本実施形態のように埋め込みアンカーボルト54を利用して追加柱60を基礎又は土間コンクリート52に固定すると充分な耐震強度、風強度を付加することができ、この点に本構造の技術的意義が認められる。
【0050】
更に言及すると、仮に本実施形態のように、追加する耐震部材を鉄筋コンクリートの基礎とアンカーボルトで緊結することを新築設計時点で企図した場合、新築時にアンカーボルトを埋設しておくか或いはアンカーボルト挿入用の孔を予め設けておく等して、後施工のアンカーボルトを設置する必要が生じるが、本実施形態によれば既存アンカーボルトである埋め込みアンカーボルト54を利用するので、そのような配慮は不要である。
【0051】
また、本実施形態では、耐力壁58の追加柱60の下端部が床大梁内ブラケット64に固定されているため、埋め込みアンカーボルト54の仕様を変更する必要がない。つまり、仮に床大梁内ブラケットが土間側床大梁48内に配設されて土間側床大梁48を補強するものの、耐力壁58の追加柱60の下端部の固定相手にはされておらず、当該下端部は埋め込みアンカーボルトの延長部分に固定される構造とした場合(埋め込みアンカーボルト54を土間側床大梁48の上フランジ48B側へ延長させて土間側床大梁48の上フランジ48Bを貫通させてその貫通端部に追加柱60の下端部のベースプレート76を締結固定する場合)、埋め込みアンカーボルトの長さを通常のものよりも長くした上で基礎又は土間コンクリート52からの突出量を追加柱60の下端部が固定可能な程度に予め長くしておく必要があるが、そのようにすると、従来使用してきた埋め込みアンカーボルト54を使うことができず、特殊仕様の埋め込みアンカーボルトを使用することになる。さらに、それに伴って埋め込みアンカーボルトの延長部分の納まり等を変更する必要が生じる(土間側床大梁48の上フランジ48Bを貫通した端部は新築時には使用しないので、外部から見えないように周辺の納まりを変更する必要がある)。その場合、コストアップに繋がるだけでなく、通常、このような後処理は建築地での作業となることが多いので、施工性も低下する。しかし、本実施形態によれば、追加柱60の下端部は床大梁内ブラケット64に固定されているので、埋め込みアンカーボルト54の仕様は従来通りのものとすることができ、施工性にも影響を与えず、コストも抑制される。その結果、本実施形態によれば、ユニット10の生産性を低下させることなく、コストも抑制することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、ユニット住宅10が上記構成を備えた一階ユニット14を含んで構成されているため、将来の構造性能の変更が比較的容易である。その結果、本実施形態によれば、将来的に耐震性能等を上げたいと思った場合には比較的容易に耐震性能等の構造性能を変更することができ、従来よりも永い期間快適で安心した住空間を確保することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、耐力壁58が門型架構体56の両側に設けられていたが、これに限らず、図6に示されるようにいずれか一方の柱22側にのみ耐力壁58を配設するようにしてもよい。
【0054】
〔第2実施形態〕
【0055】
次に、図7を用いて、本発明に係る建物ユニット及びこれを用いたユニット建物の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0056】
図7に示されるように、この第2実施形態に係るユニット住宅10では、鋼板90を用いた耐力壁92を追加構造要素とした点に特徴がある。
【0057】
具体的には、追加柱60と柱22と天井大梁32と土間側床大梁48とで耐力壁92の枠状のフレームが構成されており、その内側には当該耐力壁92のフレームの内周面よりも一回り小さい一枚板から成る鋼板90が配置されている。鋼板90には縦リブ94及び横リブ96が溶接等により固定されており、鋼板90を補強している。さらに、鋼板90の外周縁には、アングル形状の取付金具98が配置されている。取付金具98の基部98Aは鋼板90の外周部にボルト又はリベット等により固定されており、又取付金具98の屈曲部98Bは門型架構体56の内周面にボルト又はリベット等により固定されている。
【0058】
(作用・効果)
【0059】
上記構成によれば、ブレース62の替わりに鋼板90を備えた耐力壁92を、既設アンカーボルトである埋め込みアンカーボルト54を用いて門型架構体56の架構面内に後付けしたので、前述した第1実施形態と同様に、耐力壁92としての性能が門型架構体56に付加される。従って、前述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0060】
〔第3実施形態〕
【0061】
次に、図8を用いて、本発明に係る建物ユニット及びこれを用いたユニット建物の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0062】
図8に示されるように、この第3実施形態に係るユニット住宅10では、既設アンカーボルトである埋め込みアンカーボルト54を用いて、門型架構体56の架構面内に制振装置100を後付けした点に特徴がある。
【0063】
具体的には、追加柱60の下端部が第1実施形態と同様構成にて埋め込みアンカーボルト54に固定されている。なお、追加柱60の上端部は天井大梁32の下面に近接して配置されているが、連結はされていない。但し、図示は省略するが、天井大梁32の下面には下方が開放されたコ字状断面の支持部材が取り付けられており、又追加柱60の上端部には支持部材内に相対変位可能に挿入される板材が取り付けられている。これにより、地震時等に、追加柱60及び制振フレーム102が架構面の面外方向へ倒れるのが規制されるようになっている。
【0064】
また、追加柱60の上端部近傍の側面と土間側床大梁48の柱22側の端部近傍とは、制振フレーム102によって斜めに連結されている。さらに、天井大梁32の下面における柱22の近傍位置には、ブラケット104が下向きに突出した状態で取り付けられており、このブラケット104と追加柱60の上端部側面との間に制振ダンパ106が架け渡されている。制振ダンパ106は天井大梁32に対して平行に配置されており、ブラケット104との連結部位及び追加柱60の側面との連結部位は各々相対回転可能にピン結合されている。
【0065】
(作用・効果)
【0066】
上記構成によれば、地震時等において、門型架構体56に水平荷重が入力され、天井大梁32と土間側床大梁48との間に相対変位が生じようとすると、制振ダンパ106が伸縮することによって当該相対変位が抑制される。これにより、門型架構体56ひいては一階ユニット14の変位が抑制される。
【0067】
このように本実施形態では、追加構造要素が、前述した第1実施形態の耐力壁58、第2実施形態の耐力壁92とは異なり、既設アンカーボルトである埋め込みアンカーボルト54を用いて門型架構体56の架構面内に設置された制振装置100として構成されているため、地震時の応答値(加速度や変位等)を減らしたり、地震時の振動を速やかに小さくすることができる。換言すれば、本実施形態によれば、減衰性能を増やして構造性能の向上を図るという制振装置100としての性能がラーメン構造の門型架構体56に付加される。これにより、ラーメン構造の門型架構体56に減衰性能が付加され、一階ユニット14ひいてはユニット住宅10の耐震強度等の構造性能の向上を図ることができる。
【0068】
〔本実施形態の補足説明〕
【0069】
以上説明した各実施形態では、一般住宅(ユニット住宅10)に対して本発明を適用したが、これに限らず、他の用途(商業的用途、工業的用途、農業的用途、福祉施設・公共施設等の非営利目的の行政的用途を含む)のユニット建物に対して本発明を用いてもよい。
【0070】
また、上述した各実施形態では、ユニット住宅10は、図4に図示された門型架構体56を有する一階ユニット14を一箇所に備えたプランニングとされていたが、これに限らず、当該一階ユニット14を複数箇所に備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に係り、(A)は門型架構体に追加構造要素を付加する前の状態を模式化した模式図であり、(B)は当該門型架構体に追加構造要素が付加された状態を示す模式図である。
【図2】図1(B)に示される門型架構体の具体的な構造を示す概略正面図である。
【図3】追加柱の柱脚部の詳細構造を示す拡大図である。
【図4】玄関土間部に用いられる一階ユニットの躯体構造を示す概略斜視図である。
【図5】図5に示される一階ユニットを備えたユニット住宅の全体正面図である。
【図6】図1の門型架構体の変形例を示す図1に対応する模式図である。
【図7】第2実施形態に係る一階ユニットの門型架構体を示す図2に対応する拡大図である。
【図8】第3実施形態に係る一階ユニットの門型架構体を示す図2に対応する拡大図である。
【符号の説明】
【0072】
10 ユニット住宅(ユニット建物)
18 一階ユニット(建物ユニット)
22 柱
32 天井大梁(上梁)
48 土間側床大梁(下梁)
54 埋め込みアンカーボルト(既設アンカーボルト)
56 門型架構体
58 耐力壁(追加構造要素)
60 追加柱
62 ブレース(補強部材)
64 床大梁内ブラケット(下梁補強ブラケット)
80 ボルト
82 ナット
84 ナット
90 鋼板(補強部材)
92 耐力壁(追加構造要素)
100 制振装置(追加構造要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柱と、当該一対の柱の上端部を繋ぐ上梁と、柱の下端部から上梁に対して平行に延出されかつ上梁よりもスパン長が短い下梁と、を含んで門型に構成されたラーメン構造の門型架構体と、
前記下梁の延出端側に設定された既設アンカーボルトと、
この既設アンカーボルトを利用して門型架構体の架構面内に建物完成後に後付けされて当該架構面を補強する追加構造要素と、
を有する建物ユニット。
【請求項2】
前記追加構造要素は、前記既設アンカーボルトを用いて柱に対して平行に立設された追加柱と、当該柱及び追加柱間の面内を補強する補強部材と、を含んで構成された耐力壁である請求項1記載の建物ユニット。
【請求項3】
前記追加構造要素は、前記既設アンカーボルトを用いて架構面内に固定された制振装置である請求項1記載の建物ユニット。
【請求項4】
前記下梁におけるアンカーボルト配設位置には、当該下梁のアンカーボルト配設部位の断面形状を保持する下梁補強ブラケットが設けられている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の建物ユニット。
【請求項5】
前記追加構造要素は、前記下梁補強ブラケットに固定されている請求項4記載の建物ユニット。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載された建物ユニットを一つ以上用いて構築されたユニット建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−263897(P2009−263897A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111682(P2008−111682)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】