説明

建物内の移動局の位置特定

移動局が建物内に存在する場合であっても無線通信のために使用される移動局の位置を特定することは、移動局によって使用される信号に関連づけられた少なくとも1つの標識が単一の知られた建物の位置を識別するかどうかを決定することを含む。標識のタイプの例は、特定の建物に専用される基地局セクタの基地局/セクタ識別子、特定の建物の位置から通信を行う場合に移動局によって使用される無線周波信号に関連する遅延、または移動局が特定の建物の位置内に存在する場合に移動局によって報告されるセル・コードの組合せを含む。そのような標識の1つまたは複数が、移動局がコールを発信した元である建物の位置の表示を提供する。その後、その建物の位置が、決定された移動局の位置として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年11月17日に出願された米国仮出願第60/859,613号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、通信に関する。より詳細には、本発明は、無線通信に関する。
【背景技術】
【0003】
無線通信は、音声コールおよびデータコールなどの様々な目的で、広く使用されている。無線通信の1つの限界は、移動局が容易に識別され得ない場所に存在する場合に、移動局から発信された緊急要求コール(例えば911または112コール)に応答するための能力である。そのような緊急コールに適切な応答を提供するためには、移動局の位置を特定することが必要である。
【0004】
緊急コールに応答するために使用される2つの汎用的な地理位置特定(geo−location)手法が存在する。どちらの手法も、「三角測量」に基づいており、無線周波信号を受信し、多数のマクロセル(macrocell)または多数の上空衛星(overhead satellite)からの無線周波伝播時間を測定する、移動局の能力に依存している。航法およびタイミング用に開発された、いくつかの異なる衛星システムが存在する。これらのうちで最も有名なものは、米国のNavistar GPSシステムと、ロシアのGLONASS GPSシステムである。Galileoシステム(欧州)、INRSSシステム(インド)、またはBeidouシステム(中国)など、他にも計画中のものが存在する。GPSという用語は、これらの衛星システムのいずれかを指している。移動局の位置を決定するために、推定距離(estimated range)を入力パラメータ値として使用して、三角測量計算が実行される。これらの三角測量手法には、セルラ技術、マクロセルまたは衛星の位置、および移動局の計算能力に応じたバリエーションが存在する。
【0005】
知られた手法の精度は、3つの主要な要因に依存しており、その第1は、少なくとも3つまたは4つの送信装置(マクロセルまたは衛星)からのRF信号を受信する移動局の能力であり、第2は、送信装置と受信装置の間の三角測量距離であり、第3は、タイミング精度および同期である。
【0006】
マクロセル三角測量の場合、より大きなセル半径は、多数のマクロセルから信号を受信する移動局の能力を低下させる。地方圏では、例えば、移動局から見えるマクロセルが十分な数だけ存在しないことがあり、そのような場合、マクロセルベースの三角測量は不可能である。都市圏および近郊圏では、RF妨害が、移動局から他のマクロセルを見えなくすることがあり、それがマクロセル三角測量を無効なものにする。マクロセル距離を用いる三角測量は、衛星三角測量と比べてもともと精度が低く、それがタイミング精度および同期をきわめて重大なものにする。GSMまたはUMTSなど、基地局間のタイミングを十分に同期させることのない基地局技術を用いる場合、各基地局時計がどれだけずれているかを追跡するために、全地球測位システム(GPS)情報が使用され、移動局が距離推定を補正できるように、「タイミング補正」メッセージが移動局に定期的にブロードキャストされる。特に短い三角測量距離を用いる場合、小さなタイミング誤差が大きな地理位置特定誤差を生み出すので、これらのタイミング補正は頻繁に送信され、これが、基地局とGPSタイマの間およびGPSタイマと移動局の間に相当なトラフィック負荷を生み出す。
【0007】
GPS地理位置特定(衛星ベース)は、マクロセル三角測量と比べてもともとはるかに精度がよい。GPS三角測量を用いる場合、移動局から見える上空衛星が少なくとも4機存在しなければならない(すなわち、X、Y、Z位置決定のために使用される3機の衛星と、移動局タイミング・オフセット情報のための第4の衛星)。GPSの場合、各軌道が4機の非GEO同期衛星(non−GEO synchronized satellite)で占められた6つの地球軌道が存在し、常時、見通しのよい空(clear sky)に6機から11機の上空衛星が見えるように、衛星軌道が設計されている。それにもかかわらず、例えば、RF妨害が衛星受信を妨げる場合には、少なくとも4機の衛星さえも移動局から見えないことがあり得る。そのような状況は、例えば、移動局がマンハッタンの通りなど都市の深い奥底(deep urban cannon)に存在する場合に生じることがあり得る。摩天楼や他の建造物は、移動局の上空の視界(view of the sky)を阻害する傾向にある。移動局の上空の視界が狭くならない場合や制限されない場合、GPS三角測量精度が助けになる。
【0008】
衛星の各々は原子時計を備えており、きわめて高精度な衛星タイミング同期を提供するために、地上通信は時計精度を継続的に監視し続けるので、GPS三角測量の場合、タイミング同期は問題とならない。第4の衛星の距離測定を使用することによって、高精度な移動局時計の必要性は回避される。
【0009】
GPSベースの地理位置特定手法は、米国では緊急コールの地理位置を30秒以内に特定するよう求める連邦通信委員会要件を満たすうえでの特有の問題を有する。移動局は、電源投入時に、GPS位置特定のために必要な衛星を見つけるのに15分間も要することがある。この時間の多くは、50BPSのデータ・チャネルを介して衛星のアルマナック・データ(almanac data)を送信することに費やされる。FCCの30秒位置決定要件を満たすために、アシストGPS(AGPS)は、高速通信チャネルを介して移動局に動的衛星測位データを提供する。もちろん、すべての緊急コールが、最初に移動局をオンにすることによって発信されるわけではない。すでにオンにされている移動局からコールが発信される場合、衛星はすでに捕捉されている。そのような場合、コールおよび地理位置特定は、直ちに開始される。
【0010】
チップセット製造業者およびハンドセット製造業者は、緊急コールの地理位置特定のためのGPSに向かって進んでいる。市販のGPSチップセットは、HSDPA、GPRS、およびEDGEをサポートする端末のGSMおよびUMTSハンドセットで機能するように設計されている。GPS受信機は、CDMA2000技術の一部であり、CDMAハンドセットおよび類似装置に含まれる。GPSベースの地理位置特定は、緊急コールの地理位置特定のための新興の最有力な技術手法であると思われる。
【0011】
戸外の移動局からの緊急コールの位置を特定するよう求める要件を満たすことには大きな困難が伴うが、建物内部における地理位置特定問題は、それをはるかに上回る難題である。主要な躓きの石(stumbling block)は、建物の外部であれば利用可能なマクロセル信号および衛星信号を、建物自体が妨害する傾向にあることである。建物の内部では、マクロセル信号および衛星信号がその建物内で利用可能でない場合、知られた地理位置特定三角測量方法はどれも機能しない。せいぜい、従来の地理位置特定を実行するために必要な数のマクロセルまたは衛星を「見る」のに十分な信号強度があることもある、おそらく上層階の窓際の位置からコールを発信することによって、地理位置特定三角測量が可能になることがあるくらいである。そうは言っても、建物のすべての窓のそばで、これが一般に可能なわけではない。さらに、建物の中央付近の場所はどこも、受信可能なGPS信号を一般にもたらさない。建物内でコールを発信するために、セルラ基地局信号を配信するための分散アンテナ・システム(DAS:distributed antenna system)を有する建物であっても、地理位置特定に役立つ三角測量信号は提供しない。基本的に、誰かが移動局を使用して緊急コールを発信する可能性があり得る、ほとんどの建物の内部の領域の大部分は、既存の三角測量地理位置特定方法が機能しない領域である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国仮出願第60/859,613号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
無線通信のために使用される移動局の位置を特定する例示的な方法は、無線通信のために移動局によって使用される信号に関連づけられた少なくとも1つの標識(indicator)が単一の知られた建物の位置を識別するかどうかを決定するステップを含む。移動局の位置は、その標識に基づいて、その知られた建物の位置として決定される。
【0014】
一例では、建物の位置を識別する標識は、(i)移動局がその中でサービスを受けた基地局セクタの基地局/セクタ表示、(ii)移動局との通信のために使用される無線周波信号の時間遅延、または(iii)移動局によって報告されるセル・コード(cell code)の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
以下の詳細な説明から、本発明の様々な特徴および利点が、当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に伴う図面については、以下のように簡潔に記述することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に役立つ無線通信システムの選択された部分を概略的に示す図である。
【図2】一手法例を要約したフローチャート図である。
【図3】本発明の一実施形態に役立つ一通信構成例を概略的に示す図である。
【図4】別の通信構成例を示す図である。
【図5】別の通信構成例を概略的に示す図である。
【図6】本発明の一実施形態例で使用される、遅延をRF信号に導入する一技法例を概略的に示す図である。
【図7】別の通信構成を概略的に示す図である。
【図8】本発明の一実施形態例による、付加的なセル・コードを導入するための一技法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に開示される実施例は、従来の三角測量ベースの位置特定技法が機能しないような、移動局が建物内に存在する場合であっても、その移動局の位置を特定することを可能にする。開示される実施例は、例えば、移動局がGPS衛星信号を検出できないためにGPS三角測量方法が可能でない、移動局が建物内に存在する場合であっても、その移動局の位置を特定することを容易にする。開示される実施例は、移動局から発信された緊急コールに応答することを含む様々な目的で移動局の位置を特定することを容易にする、低コストで多様性および柔軟性のある手法を提供する。
【0018】
図1は、一般に知られた方法で動作する無線通信ネットワーク22を含む、無線通信構成20を概略的に図示している。移動局24は、建物26内からコールを発信するために使用される。この例では、移動局24は、建物26内で無線通信カバレージを提供する分散アンテナ・システム(DAS)28を介して通信する。DAS28は、移動局24のユーザのためにコールを容易にするように、ネットワーク22と通信する。
【0019】
いくつかの場合には、移動局24の位置を決定することが必要になる。例えば、移動局24が緊急サービス・コール(例えば911または112コール)を発信するために使用された場合、適切な対応人員を派遣するために、移動局24の位置を決定することが必要になる。建物26内の移動局24は、移動局24が全地球測位システム(GPS)受信機機能を備えていても、建物26が三角測量のための十分な信号を検出する能力を妨げるので、三角測量技法に基づいた位置推定を提供することができない。代わりに、移動局24との無線通信のために使用される信号に関連づけられた表示(indication)が、移動局24の位置を特定する目的で建物26の位置を識別する。適切な標識が認識され、建物26の位置が識別されると、移動局の位置を、例えば、建物の住所、経度および緯度、または他の位置特定座標として報告することができる。
【0020】
図2は、一手法例を要約したフローチャート図30を含んでいる。32において、移動局の位置が必要とされているかについて、判定が行われる。移動局の位置の一使用例は、上述したように、緊急サービス・コールへの適切な応答を提供することである。例えば、移動局が建物内に存在するために、他の位置特定技法が利用不可能である場合など、他の状況が移動局の位置情報を必要とすることもある。開示される実施例は、緊急サービス・コールのために特に役立つが、移動局の位置情報のそのような使用に必ずしも限定されるものではない。移動加入者に加入者が所在する近所に関する情報を提供することも、移動局の位置情報のそのような一使用例である。
【0021】
34において、無線通信のために移動局によって使用される少なくとも1つの信号に関連づけられた少なくとも1つの標識が、単一の知られた建物の位置を指示しているかどうかについて、判定が行われる。移動局の位置を高い精度で特定するためには、個別的かつ一意的に知られる建物の位置が望ましい。
【0022】
いくつかの異なる標識が、本発明の実施において使用できる。図2の例は、36において、基地局/セクタ識別情報が単一の知られた建物の位置を指示するための標識として役立つかどうかについての判定を含む。図3は、建物40を含む一構成例を概略的に図示している。建物40の内部(またはいくつかの例では建物40の内部の一部)に排他的にサービスするために、基地局トランシーバ(BTS)セクタを確立するための機器42が配置される。図3では、DAS44は、建物40(または建物の少なくとも一部)内でBTSセクタ無線カバレージを提供するために、機器42に関連づけられる。
【0023】
そのような一例では、セクタは建物40内の空間の少なくとも一部に専用され、特定の機器42がどこに設置されているかも分かるので、BTSセクタ機器42と関連セクタの識別情報も建物40を識別する。言い換えると、図3の例におけるBTSセクタ機器42の基地局/セクタ識別情報は、建物40の位置におけるセクタの位置の表示を提供する。したがって、移動局が建物40内のセクタ内でサービスを受けている場合は常に、サービスする基地局とセクタの識別情報が、この例では建物40の位置と同じであるセクタの位置の標識を提供する。
【0024】
36において行われる判定の場合、基地局/セクタ識別情報が決定されると、その基地局/セクタ識別情報が特定の建物に対応するかどうかについて、事前設定されたデータベースに対して照合が行われ、その後、経度/緯度座標または建物住所などの適切な位置決定が、データベースから引き出されることができる。その後、その情報は、決定された位置を報告するために役立てることができる。
【0025】
いくつかの例では、BTSセクタは、単一の建物の位置に専用されない。図2の例は、そのような状況において、単一の知られた建物の位置を指示するための他の可能な標識を含む。50において、RF信号遅延が単一の知られた建物の位置を指示するための標識を提供するかどうかについて、判定が行われる。移動局24によって使用される信号に関連する信号遅延が、コールを発信するために使用された移動局24を中に含む建物の位置を特定するのに十分な情報を提供できる、いくつかの方法が存在する。
【0026】
図4は、BTSセクタ機器52が、第1の建物54内で建物54に専用されるDAS56を使用して無線通信カバレージを提供する構成を概略的に図示している。この例におけるBTSセクタ機器52は、第2の建物60内で無線通信カバレージを提供することに専用される別のDAS58にも関連づけられる。この例では、機器52が2つ以上の建物内で無線通信カバレージを提供するので、機器52のBTSセクタは、単一の建物を一意的に識別しない。この例では、移動局が建物54または建物60のどちらの中に配置されているかを一意的に識別するために、RF信号遅延が役立つ。
【0027】
移動局と基地局の間のRF信号遅延を測定するための知られた技法が存在する。CDMAセルラ・システムは、例えば、移動局と基地局の間のRF信号遅延を継続的に測定する。GSMおよびUMTSシステムも、緊急サービス・コール時に移動局と基地局の間のRF信号遅延を測定する。選択された建物の位置におけるRF遅延を遅延に曖昧性がないように戦略的に制御することによって、特定の建物を一意的に識別するために遅延が役立つ。
【0028】
図4の例では、各DAS56および58に関連する遅延スプレッド(delay spread)がそれぞれ存在する。BTSセクタ機器52と各DASへの入力の間にもRF遅延が存在する。説明の目的で、BTSセクタ機器52は、DAS56と共に建物54内に配置される。この例では、そのような直接接続に関連する遅延tは、事実上はゼロである。他方、BTSセクタ機器52と建物60内のDAS58の間の遅延は、より大きな値tを有する。建物54および建物60において移動局によって使用されるRF信号に関連する遅延は、移動局24がその中からコールを発信している建物の表示を決定された遅延が提供するように、互いに異なり、区別可能であるように構成される。
【0029】
2つの図示された建物内におけるDAS遅延スプレッドを、それぞれS1およびS2とする。BTSセクタ機器52までの各建物におけるDAS RF遅延は、コールがどこから発信されたかに応じて、tまたはtからt+S1またはt+S2までの大きさになり得る。DAS遅延は一般に、BTSセクタ機器52に最も近いDASのアンテナのすぐ近くでコールが発信された場合に最短になる。DAS遅延は一般に、BTSセクタ機器52から最も遠くでコールが発信された場合に最長になる。tがt+S1より大きい場合、各建物からのRF信号から測定された遅延は、曖昧性なしに区別され得る。すなわち、建物60内におけるRF遅延は、{t,t+S2}の間の範囲にある。他の建物54における{t,t+S1}との重複はない。したがって、RF遅延がこれらの規準を満たす場合、各建物54および60に関連するRF遅延は、関連する建物を一意的に識別する。その後、経度/緯度座標または所在地住所に基づいた建物の位置が、例えば、特定の遅延値を特定の建物と関連づける、事前設定されたデータベースから決定されることができる。
【0030】
専用基地局セクタによってサービスされる建物が3つ以上存在する場合、移動局によって通信用に使用されるRF信号に関連する遅延を適切に制御することによって、各建物を一意的に識別することが可能である。例えば、遅延の組{t+Sj}、j=1,2,3を仮定する。専用基地局までの各建物jにおけるDAS遅延は、コールがどこから発信されたかに応じて、tまたはtまたはtからt+S1またはt+S2またはt+S3までの大きさになり得る。t+S1<t<t+S1+S2とすると、建物2からの最短遅延は、{t+S1,t+S1+S2}の間にあり、最長遅延は、{t+S1+S2,t+S1+2S2}の間にある。これらの制約をtに課すことで、建物1と建物2の間の遅延は、一意的に区別され得る。t+S1+2S2<tとする。建物3からの遅延は、{t+S1+2S2,t+S1+2S2+S3}の間の範囲にある。したがって、tに課されるこれらの制約が実施される場合、建物3からの遅延は、建物1または2のどちらから測定された遅延からも一意的に区別され得る。この説明を与えることで、当業者であれば、特定の状況の必要性を満たすように多数の建物を一意的に区別するために、遅延をどのように選び出し、実施し、または選択すべきかを理解するであろう。
【0031】
図5および図6は、そのような遅延を実施する一方法例を概略的に図示している。図5では、BTSセクタ62が、知られた方法で確立される。無線(OTA:over the air)リピータ64が、BTSセクタ62から信号を受信し、それらをリピートして建物DAS66に提供する。一例では、OTAリピータ64は、DAS66が中に配置されている単一の建物に専用される。
【0032】
OTAリピータ64は、空中で発生するRF伝播遅延に加えて、リピータ内で発生する遅延に基づいた遅延を与える。そのような遅延は、ほとんどの場合、建物を一意的に識別するのに十分である。例えば、BTSセクタ62が建物内に配置されるか、または建物のDASに直接接続され、OTAリピータ64がBTSセクタ信号を別の建物にリピートするために使用される構成を考える。この場合におけるOTAリピータ64に関連する遅延は、多くの場合、OTAリピータ64およびDAS66に関連する建物を他の建物と比較して一意的に識別するのに十分である。OTAリピータ64に関連する遅延を測定するために、知られた技法が使用でき、その後、知られた方法で測定され得る関連する遅延によって、移動局がDAS66を介していつ通信しているかを決定するために、データベース内の情報が使用できる。
【0033】
いくつかの場合には、OTAリピータが使用されるときに、付加的な遅延を追加することが望ましいことがある。図6は、これを達成するための一構成例を概略的に図示している。この例では、OTAリピータ64は、受信アンテナ68と、低雑音増幅器(LNA)70とを含む。ベースバンド混合器72と、アナログ/デジタル変換器74と、復調器76が、RF信号が遅延バッファ78にバッファされ得るように、RF信号を復調する。バッファリングを追加することによって、付加的な遅延がRF信号に追加される。図6の構成は、例えば、DAS66への提供用に信号をアナログRF信号に変調し戻すために、デジタル/アナログ変換器80と、RF混合器82と、出力増幅器84と、出力アンテナ86とを含む。
【0034】
図7は、特定の建物の位置を一意的に識別するために信号遅延が役立つ、別の構成を概略的に示している。この例では、BTSセクタ機器90は、光リピータ構成に関連づけられ、光リピータ構成は、BTSセクタ機器90のすぐ近くに配置される光リピータ・マスタ部92と、光ファイバ・ケーブル94と、光リピータ・マスタ部92から少なくともいくらか離れて配置される光リピータ・スレーブ部96とを含む。建物DAS98は、光リピータ・スレーブ部96に接続される。
【0035】
この例では、光ファイバ・ケーブル94は、マスタ部92とスレーブ部96の間を物理的に接続するのに必要とされる長さを超える追加ケーブル長を含む。一例は、その接続の部分として一巻の追加ケーブルを含む。光ファイバ・ケーブルの追加長は、BTSセクタ90からDAS98に提供される信号に付加的な遅延を追加する。そのような例では、どれだけの光ファイバ・ケーブルが使用されるかを選択的に制御することによって、どれだけの遅延が導入されるかを選択的に制御することができる。遅延量を戦略的に選択することが、無線通信信号がそこから取得される異なるDASを、したがって、移動局がそこからコールを発信できる異なる建物を、戦略的かつ一意的に識別することを可能にする。
【0036】
図2に戻ると、別の可能な標識が、100において検討されている。この場合には、セル・コードの組合せが特定の建物の位置の表示を提供するかどうかについて、判定が行われる。この説明で使用される「セル・コード」とは、CDMAシステムで使用される疑似雑音(PN)オフセット、UMTSシステムで使用されるスクランブル・コード、または同等のセル識別子のことである。この例では、特定の建物を一意的に識別するセル・コードの一意的な組合せを提供するために、付加的なセル・コードが、無線通信のために使用される信号に追加される。特定の位置に対してセル・コードの特定の組合せを選択し、それらに関するデータベースを確立することが、移動局によって報告されるセル・コードの組合せを単一の建物の位置の標識として使用することを可能にする。
【0037】
図8は、CDMA実施例において複数のPNオフセットを生成するための汎用的リピータ102の一例を概略的に図示している。この例では、低雑音増幅器104と、ベースバンド混合器106と、アナログ/デジタル変換器108と、復調器110が、CDMA基地局から受信されたPNオフセットを含む信号を処理する。復調パイロット信号が112で提供される。バッファ114および116は、例えば、メモリ・タップ(memory tap)を使用して量を変化させることによって、復調パイロット信号を遅延させる。その後、遅延114および116の出力は、加算器118を使用して、復調パイロット信号112と一緒に合算される。これが、多数のPNオフセットを有する信号を生成する。メモリ・タップのサイズが、PNオフセットの特定の組合せを決定する。特定の建物内の移動局からだけ分かるPNオフセットの一意的な組合せを使用することによって、セル・コード(例えばPNオフセット)の組合せが、建物の位置の表示を提供する。
【0038】
図8の例では、遅延促進部(delay advanced portion)120と、デジタル/アナログ変換器122と、RF混合器124が、信号を出力増幅器126に提供されるアナログRF信号にモジュール(module)し戻す。
【0039】
リピータ102から出力された信号を受信する移動局は、元のパイロット信号を、そのPNオフセットと他の生成されたPNオフセットの組合せと一緒に検出する。移動局は、これらPNオフセットのすべてをネットワーク(すなわち、当該コールを現在処理しているモバイル交換センタ)に報告する。その後、PNオフセットの組合せが知られた建物の位置に対応するかどうかを判定するために、適切なルックアップ・データベースが使用できる。対応する場合、その建物の位置が、セル・コードの組合せによって指示される。
【0040】
GSMまたはUMTSシステムでは、特定の建物の位置内から通信を行う場合に、セル・コードの一意的な組合せが移動局によって報告されるよう、付加的なスクランブル・コードまたは同等のセル・コードを生成するために、類似手法が使用できる。
【0041】
図2の130に示されるように、建物の位置情報を提供した標識に基づいて移動局の位置を決定するために、建物の位置が使用される。
【0042】
図2の例は、単一の知られた建物の位置を指示するための標識の3つの可能なタイプを含む。特定の状況の必要性に応じて、それらのどの1つも単独で使用でき、またはそれらの2つ以上の組合せも使用できる。例えば、移動局位置決定アルゴリズムは、建物の位置を決定するのに基地局/セクタ識別情報が十分かどうかを最初に検査することができる。十分でない場合、RF信号遅延に関する情報を検討することができる。それでも結論が得られない場合、移動局によって報告されたセル・コードの組合せが知られた建物の位置を指示するかどうかの決定が使用できる。別の実施は、標識のタイプ例の少なくとも2つを並行して検討することを含む。標識の3つ以上のタイプが検討される場合、例えば、ある標識を解析した結果は、冗長検査として使用されてよい。他の実施は、特定の通信構成がどのように設定されているかに応じて、標識のタイプ例の1つだけを検討することができる。
【0043】
上記の説明は本質的に、限定的というよりも、むしろ例示的なものである。本発明の核心から必ずしも逸脱しない開示された実施例に対する変形および修正が、当業者には明らかになるであろう。本発明に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信のために使用される移動局の位置を特定する方法であって、
無線通信のために前記移動局によって使用される信号に関連づけられた少なくとも1つの標識が単一の知られた建物の位置を識別するかどうかを決定するステップと、
前記決定された標識に基づいて前記移動局の位置を前記知られた建物の位置として決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの標識が、
(i)前記移動局がその中でサービスを受けた基地局セクタを識別する基地局/セクタ表示、
(ii)前記移動局との通信のために使用される無線周波信号の遅延、または
(iii)前記移動局によって報告されるセル・コードの組合せ、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移動局との通信のために使用される無線周波信号の遅延に基づいて、前記少なくとも1つの標識を確立するステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基地局セクタ機器と分散アンテナ・システムの間の送信信号に関連する遅延、または前記分散アンテナ・システムに関連する遅延スプレッドの少なくとも一方に基づいて、選択された建物についての前記遅延の量を制御するステップ
を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
単一の基地局セクタの部分である複数の建物の位置の各々について一意的な遅延の量を確立するステップ
を含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記遅延が、基地局セクタ信号をリピートするために使用される無線リピータに関連する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記移動局によって報告されるセル・コードの組合せが単一の知られた建物の位置を識別するかどうかを決定するステップ
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
選択された建物の位置を一意的に識別する組合せで複数のセル・コードを生成するステップと、
前記生成されたセル・コードを前記移動局に提供される信号と関連づけるステップと
を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生成されたセル・コードが、PNオフセットまたはスクランブル・コードの少なくとも一方を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
パイロット信号を復調することによって前記セル・コードを生成するステップと、
複数の異なる量だけ前記復調された信号を遅延させるステップと、
前記復調された信号と前記遅延させられた信号を合算するステップであって、それによって、多数のPNオフセットを前記セル・コードとして生成する、合算するステップと
を含む請求項8に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−509890(P2010−509890A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537182(P2009−537182)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/023814
【国際公開番号】WO2008/063489
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】