説明

建物外壁の断熱装置

【課題】外壁の断熱性能を高めることができる建物外壁の断熱装置を提供する。
【解決手段】建物10の外周部に設けられる複数の外壁構造体11のうち、太陽光が当たる南面に設けられた外壁構造体11cには、その屋外側に集熱パネル28が設けられ、該集熱パネル28と外壁構造体11cとの間には集熱空間30が形成されている。これにより、集熱空間30の空気は集熱パネル28を介して暖められる。一方、北面及び西面に設けられた外壁構造体11a,11bには、その屋外側に断熱パネル33が設けられ、該断熱パネル33と外壁構造体11a,11bとの間には断熱空間36が形成されている。そして、集熱空間30と断熱空間36とは互いに連通されている。この場合、集熱空間30で暖められた空気は断熱空間36に供給される。そのため、例えば冬場においては、外壁構造体11a,11bの断熱性能を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外壁の断熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽光の熱を利用して建物内空間の空気を暖める技術が各種提案されている。例えば特許文献1に記載されている構成では、建物の外壁の屋外側に鋼板等の集熱板が設けられ、外壁と集熱板との間に空気層が形成されている。この空気層は、建物において当該外壁に隣接して設けられた居室と通気ダクトを介して連通されている。この構成によれば、空気層の空気が集熱板を介して太陽光により暖められ、その暖められた空気が暖気として居室に供給される。これにより、例えば冬期において太陽光からの熱を利用して居室の暖房を行うことができる。
【0003】
また、上記の集熱板は、日当たりのよい建物の南面に設置されることが考えられる。この場合、上記特許文献1の構成では、建物において南面の外壁に隣接する居室すなわち南向きの居室に対して暖気が供給されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−326077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建物の外壁はその設置された方角によって日当たりの良し悪しが異なる。例えば、建物において北面の外壁は日当たりがなく、そのため冬場には低温となり易い。したがって、北面の外壁に隣接する部屋(すなわち北向きの部屋)では、外壁を通じて屋外への熱漏れが生じ易く、それ故暖房負荷の増大といった種々の不都合が生じることが懸念される。
【0006】
そこで、上述の太陽熱を利用した特許文献1の構成を北向きの部屋の暖房に用いることにより、上記の不都合を防止することが考えられる。しかしながら、上記の構成は、集熱板が設置される南面の外壁に隣接する部屋(南向きの部屋)を対象に暖房を行うものであり、集熱板から離れて設けられる北向きの部屋について暖房することは困難であると考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外壁の断熱性能を高めることができる建物外壁の断熱装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物外壁の断熱装置は、建物の外周部に設けられる複数の外壁のうち、太陽光が当たる所定の方角に設けられた第1外壁には、その屋外側に集熱パネルが設けられ、該集熱パネルと当該第1外壁との間には集熱空間が形成されており、前記所定の方角とは異なる方角に設けられた第2外壁には、その屋外側に断熱パネルが設けられ、該断熱パネルと当該第2外壁との間には断熱空間が形成されており、前記集熱空間と前記断熱空間とは互いに連通されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、太陽光が当たる所定の方角に設けられた建物の第1外壁(例えば南面の外壁)において集熱空間の空気が集熱パネルを介して太陽熱により暖められる。また、集熱パネルが設けられた所定の方角とは異なる方角、例えば太陽光が当たらない又は当たりにくい方角に設けられた第2外壁(例えば北面の外壁)においては断熱パネルと第2外壁との間に形成された断熱空間に対して、集熱空間で暖められた空気(暖気)が供給される。そのため、例えば冬場において外壁(第2外壁)の断熱性能を高めることができる。
【0010】
第2の発明の建物外壁の断熱装置は、第1の発明において、前記第2外壁と前記断熱パネルとの間に前記断熱空間を蓄熱空間とする気密囲い部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第2外壁と断熱パネルとの間に気密囲い部が設けられているため、集熱空間で暖められた空気(暖気)を断熱空間において同空気が外部に漏れ出るのを抑制しつつ蓄えることができる。これにより、断熱空間において好適な蓄熱が可能となり、夜間においても第2外壁の断熱性向上を図ることができる。
【0012】
第3の発明の建物外壁の断熱装置は、第1又は第2の発明において、前記集熱空間と前記断熱空間との連通を遮断する遮断手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、集熱空間と断熱空間との連通を遮断手段により遮断した状態で、集熱空間で暖められた空気(暖気)を断熱空間に蓄えることができる。これにより、暖気が集熱空間に流れ込むのを抑制できるため好適な蓄熱が可能となる。
【0014】
例えば、集熱空間と断熱空間との連続空間が閉空間からなる構成においては、集熱空間と断熱空間とを連通させた状態で、集熱空間で暖められた空気(暖気)を断熱空間に蓄えることも考えられる。(換言すると、この場合には、暖気が断熱空間と集熱空間とに跨って蓄えられることとなる。)しかしながら、かかる構成では、断熱空間に蓄えられた暖気が集熱空間に流れ込み、その後同空気に含まれる熱が集熱パネルを介して屋外に放出されることが想定される。特に、集熱パネルは、太陽熱を効率よく集めるためにアルミニウム等の熱伝導性の高い金属材料により形成されており、かかる材料は放熱性も高いことからかかる不都合が生じる可能性は高いと考えられる。この点、断熱空間と集熱空間とを遮断手段により遮断した状態で断熱空間に暖気を蓄えられる上記の構成であれば、このような不都合を回避しつつ好適な蓄熱が可能となる。
【0015】
第4の発明の建物外壁の断熱装置は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記建物には、浴室及び脱衣室が、前記第2外壁を隔てて前記断熱空間と隣接して設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、浴室及び脱衣室において断熱性能を高めることができるため、冬場におけるヒートショックの抑制を図ることができる。
【0017】
第5の発明の建物外壁の断熱装置は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記断熱空間を、該断熱空間に前記第2外壁を隔てて隣接する屋内空間と連通させる給気通路を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、断熱空間に第2外壁を隔てて隣接する屋内空間、すなわち日当たりのない又は悪い外壁に隣接する屋内空間に断熱空間の空気(暖気)を給気通路を介して供給できる。これにより、第2外壁(ひいては屋内空間)の断熱性向上を図りつつ、屋内空間の暖房を行うことができる。
【0019】
第6の発明の建物外壁の断熱装置は、第5の発明において、前記給気通路を開閉する通路開閉部材と、前記屋内空間の温度を検知する屋内温度検知手段と、前記断熱空間の温度を検知する断熱空間温度検知手段と、前記断熱空間の温度が前記屋内空間の温度よりも高いことを条件として、前記給気通路を開くよう前記通路開閉部材を制御する開閉制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、断熱空間の温度が屋内空間の温度よりも高い場合に限って、給気通路が開放され、同通路を介した断熱空間の空気(暖気)の屋内空間への供給が可能となる。これを換言すると、断熱空間の空気に含まれる熱が第2外壁の断熱に利用される等することで、同空気の温度が屋内空間の温度以下になった場合には給気通路が開かれず、同空気の屋内空間への供給が禁止される。これにより、断熱空間の空気が低温であるにもかかわらず屋内空間に供給され、かえって屋内空間が冷やされる等の不都合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】建物の概要を示す平面図。
【図2】南面の外壁構造体周辺の構成を示す横断面図。
【図3】北面の外壁構造体周辺の構成を示す横断面図。
【図4】外壁断熱装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】外壁暖房処理を示すフローチャート。
【図6】昼間暖房処理を示すフローチャート。
【図7】夜間暖房処理を示すフローチャート。
【図8】他の実施形態における建物の概要を示す平面図。
【図9】他の実施形態における建物の概要を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は本実施形態における建物の概要を示す平面図である。
【0023】
図1に示すように、建物10の外周部には外壁構造体11が設けられている。外壁構造体11は、後述するように外壁パネルや内壁材等を有して構成される壁体であり、外壁に相当するものである。外壁構造体11は、建物内空間を四方から囲むように設けられており、それら各外壁構造体11a〜11dのうち、外壁構造体11aが北面、外壁構造体11bが西面、外壁構造体11cが南面、外壁構造体11dが東面にそれぞれ設けられている。
【0024】
建物10には、主な屋内スペースとして、玄関12、第一居室13、第二居室14、脱衣室15、浴室16及び機械室17が設けられている。第一居室13は南面の外壁構造体11cに隣接して設けられ、第二居室14、脱衣室15及び浴室16はそれぞれ北面の外壁構造体11aに隣接して設けられている。
【0025】
脱衣室15は浴室16に隣接して設けられており、脱衣室15から浴室16へ出入りするための出入口21には開閉扉22が設けられている。この開閉扉22にはガラリ(図示略)が設けられており、このガラリによって脱衣室15と浴室16との間の通気が可能となっている。
【0026】
機械室17には空調装置19が設けられている。空調装置19は少なくとも暖房機能を有する室内機として構成されており、本実施形態では、この空調装置19より複数の部屋に対して空調空気(暖気)を供給することで、それら各部屋の暖房を行うこととしている。具体的には、空調装置19には複数の通気ダクト24(図1において破線で示す)が接続されており、それら各通気ダクト24にはそれぞれ吹出グリル25が接続されている。吹出グリル25は、第一居室13、第二居室14及び脱衣室15にそれぞれ設けられ、空調装置19から各通気ダクト24を介して各吹出グリル25に暖気が供給されると、その暖気が各吹出グリル25より第一居室13、第二居室14及び脱衣室15にそれぞれ吹き出されるようになっている。
【0027】
各吹出グリル25にはそれぞれ各々の吹出口(図示略)を開閉する通気ガラリ26が設けられている。図1では便宜上、通気ガラリ26を通気ダクト24の途中に図示している。通気ガラリ26は、図示しない駆動部(モータ等)によって電気的に開閉駆動されるものであり、駆動部が制御されることにより開状態と閉状態とに切替可能となっている。ここで、通気ガラリ26が開状態とされると、吹出グリル25が開放され同グリル25からの空調空気(暖気)の吹き出しが許容される。それに対して、通気ガラリ26が閉状態とされると、吹出グリル25が閉鎖され同グリル25からの空調空気の吹き出しが禁止される。
【0028】
ところで、本実施形態の建物10には外壁断熱装置20が設けられている。外壁断熱装置20は、建物10において日当たりのない北面の外壁構造体11a、及び、日当たりの悪い西面の外壁構造体11bについて断熱性能を高めるためのものである。以下、この外壁断熱装置20について説明する。
【0029】
外壁断熱装置20は、南面の外壁構造体11cに設けられた集熱パネル28を備えている。集熱パネル28は外壁構造体11cの屋外側に設けられており、建物10の南面(詳しくは南面の一部)において屋外面を形成している。集熱パネル28は、アルミニウム等の鋼鉄材により板状に形成されており、熱伝導率が比較的高いものとなっている。具体的には、集熱パネル28は、板材が波状に折り曲げられて形成された折曲板からなり、上下方向に延び且つ横並びとされた複数の溝部を有している。なおここで、南面の外壁構造体11cが第1外壁に相当する。
【0030】
集熱パネル28は、外壁構造体11cに対して屋外側に離間しかつ対向して設けられており、これにより集熱パネル28と外壁構造体11cとの間には集熱空間30が形成されている。集熱パネル28に対して太陽光が照射されると、その太陽熱が集熱パネル28を介して集熱空間30の空気に伝達され、これにより集熱空間30の空気が暖められるようになっている。
【0031】
集熱空間30は、外壁構造体11cの壁面に沿って拡がる空間となっており、その上端部に設けられた上板(図示略)により屋外と区画されており、その下端部に設けられた底板47により屋外と区画されている。また、集熱空間30は、その左右方向の一端部、詳しくは後述する断熱空間36とは反対側の端部において側板49により屋外と区画されている。上板、底板47及び側板49はそれぞれ集熱パネル28と外壁構造体11cとの間に配設されて、集熱パネル28を外壁構造体11cに連結する連結部材として機能している。
【0032】
集熱パネル28には、集熱空間30と屋外とを連通する取込口31が設けられている。取込口31は、集熱空間30に屋外の空気を取り込むための開口である。取込口31は、集熱パネル28において左右方向の一端部、具体的には後述する断熱空間36とは反対側の端部に設けられている。また、取込口31は、集熱パネル28において下部に設けられている。なお、取込口31は、集熱パネル28において左右方向における中央部に設けたり、上部に設けたりする等その位置は任意としてよい。また、取込口31は、集熱パネル28に代えて底板47に設けられてもよい。
【0033】
また、取込口31の屋外側には取込ファン32が設けられている。取込ファン32は、取込口31を通じて屋外の空気を集熱空間30に積極的に取り込むためのものであり、集熱パネル28の屋外側面に取り付けられている。
【0034】
外壁断熱装置20は、さらに北面及び西面の外壁構造体11a,11bにそれぞれ設けられた断熱パネル33を備えている。断熱パネル33は、各外壁構造体11a,11bの屋外側にそれぞれ設けられており、それら各断熱パネル33がそれぞれ建物10の北面及び西面において屋外面を形成している。なおここで、各外壁構造体11a,11bがそれぞれ第2外壁に相当する。
【0035】
各断熱パネル33はそれぞれ、各々の外壁構造体11a,11bに対して屋外側に離間しかつ対向して設けられており、これにより外壁構造体11aと断熱パネル33との間、及び外壁構造体11bと断熱パネル33との間にはそれぞれ断熱空間36が形成されている。これら各断熱空間36はそれぞれ、各々の外壁構造体11a,11b(又は断熱パネル33)の壁面に沿って拡がっており、互いに連通(連続)している。これにより、各断熱空間36同士の間で空気の流通が可能となっている。
【0036】
各断熱空間36はそれぞれ、その上端部に設けられた上板(図示略)により屋外と区画され、その下端部に設けられた底板58により屋外と区画されている。上板と底板58とはそれぞれ断熱パネル33と外壁構造体11a,11bとの間に配設されて、断熱パネル33を外壁構造体11a,11bに連結する連結部材として機能している。また、北面の断熱空間36は、その左右方向における一端部、詳しくは西面の断熱空間36とは反対側の端部において側板59により屋外と区画されている。この側板59は、断熱パネル33と外壁構造体11aとの間に配設され、断熱パネル33を外壁構造体11aに連結する連結部材として機能している。このように、上板、底板58及び側板59は断熱空間36を囲む位置にそれぞれ設けられており、後述する遮断部材38とともに気密囲い部を構成している。
【0037】
また、断熱空間36(詳しくは西面の断熱空間36)は、上述した集熱空間30に連通(連続)しており、集熱空間30と断熱空間36との間で空気の流通が可能となっている。したがって、本建物10では、外壁構造体11a〜11cの屋外側において、南面の集熱空間30、西面の断熱空間36及び北面の断熱空間36が連続してなる連続空間が形成されている。
【0038】
北面の外壁構造体11aには、断熱空間36と第二居室14とを連通する居室側給気通路41と、断熱空間36と脱衣室15とを連通する脱衣室側給気通路43とが設けられている。これにより、断熱空間36の空気を居室側給気通路41を介して第二居室14に供給でき、脱衣室側給気通路43を介して脱衣室15に供給できる。また、脱衣室側給気通路43の屋内側(脱衣室15側)には給気ファン45が設けられており、この給気ファン45を作動させることにより、断熱空間36の空気を脱衣室15に積極的に取り込むことが可能となっている。
【0039】
北面の断熱パネル33には、断熱空間36と屋外とを連通する排気通路46が設けられている。排気通路46は、当該断熱パネル33において左右方向の一端部、具体的には西面の断熱パネル33とは反対側の端部に設けられている。また、排気通路46は、北面の断熱パネル33において上部に設けられている。したがって、集熱空間30と断熱空間36との連続空間は、その一端側において取込口31を介して屋外と連通され、他端側において排気通路46を介して屋外と連通されている。なお、排気通路46は、北面の断熱パネル33において左右方向における中央部に設けたり、下部に設けたりする等その位置は任意としてよい。また、排気通路46は、断熱パネル33に代えて上板に設けられてもよい。
【0040】
断熱空間36と集熱空間30との境界部には、それら両空間30,36の連通を遮断する遮断手段としての遮断部材38が設けられている。遮断部材38は、断熱空間36の通路断面と同じ形状でかつ同じ大きさを有する縦長の平板よりなり、上記境界部において回動可能に設けられている。遮断部材38は回動することにより、集熱空間30と断熱空間36とを連通させる連通状態(図1の実線)と、集熱空間30と断熱空間36との連通を遮断する遮断状態(図1の一点鎖線)とに切替可能とされている。また、遮断部材38は、周知の電動モータ等からなる遮断用駆動部39によって回動駆動される構成となっており、かかる駆動によって連通状態と遮断状態とに切り替えられるようになっている。
【0041】
続いて、集熱パネル28が設けられた南面の外壁構造体11c周辺の構成を図2を用いて説明する。図2は、南面の外壁構造体11c周辺の構成を示す横断面図である。
【0042】
図2に示すように、外壁構造体11cにおいて屋外側には外壁パネル48が設けられている。外壁パネル48は、外壁面材51と、その裏面側(屋内面側)に設けられた外壁フレーム52とを備える。外壁面材51は、例えば窯業系サイディングボードにより構成され、外壁フレーム52は、溝形鋼が複数連結されることにより構成されている。また、外壁フレーム52は図示しない梁部材に対してボルト等で固定されており、これにより外壁パネル48が建物10に固定されている。
【0043】
外壁フレーム52の屋内側には下地フレーム54が固定されており、同フレーム54の屋内側には内壁面材55が固定されている。内壁面材55は、例えば石膏ボードにより構成されており、内壁面材55の裏面側(屋外面側)にはグラスウールからなる壁内断熱材56が設けられている。壁内断熱材56は、内壁面材55に沿って板状に形成されており、壁内断熱材56と外壁面材51との間には壁内通気層57が形成されている。そして、外壁パネル48(外壁面材51)の屋外側に集熱パネル28が設けられ、外壁パネル48と集熱パネル28との間に集熱空間30が形成されている。
【0044】
次に、断熱パネル33が設けられた北面の外壁構造体11a周辺の構成を図3を用いて説明する。図3は、北面の外壁構造体11a周辺の構成を示す横断面図である。
【0045】
図3に示すように、北面の外壁構造体11aは、基本的に上述した南面の外壁構造体11cと同様の構成を有しており、その屋外側に外壁パネル48が設けられ、同パネル48の屋内側には内壁面材55や壁内断熱材56が設けられている。
【0046】
外壁パネル48(外壁面材51)の屋外側には断熱パネル33が設けられている。断熱パネル33は、屋外面を形成する外装材34と、その裏面に設けられた断熱材35とを備える。外装材34は、例えば窯業系サイディングボードにより形成されており、熱伝導率が比較的低いものとなっている。
【0047】
断熱材35は、発泡ウレタンフォーム等の樹脂系断熱材により板状に形成されており、外装材34の裏面に重ね合わせられて設けられている。断熱材35と外壁面材51との間には所定の隙間が形成されており、この隙間が上述した断熱空間36となっている。この場合、断熱空間36を挟んだ屋内外方向の両側にそれぞれ断熱材35,56が設けられており、この点からすると断熱空間36を断熱空間部と称することもできる。
【0048】
外壁構造体11aには、当該構造体11aを貫通する2つの通路部材61,65が設けられている。これら各通路部材61,65は矩形形状の開口断面を有するダクトからなり、居室側通路部材61により断熱空間36と第二居室14とを連通する居室側給気通路41が形成され、脱衣室側通路部材65により断熱空間36と脱衣室15とを連通する脱衣室側給気通路43が形成されている。
【0049】
居室側給気通路41には、同通路41を開閉する開閉板62が設けられている。開閉板62は、矩形平板状をなしており、居室側給気通路41を塞ぐことが可能な大きさを有してなる。開閉板62は、居室側通路部材61に設けられた回動軸64によって回動可能に軸支されており、回動することにより居室側給気通路41を開閉する構成となっている。開閉板62が開状態(図3の実線)とされると、断熱空間36と第二居室14とが居室側給気通路41を介して連通され、開閉板62が閉状態(図3の一点鎖線)とされると、断熱空間36と第二居室14との連通が開閉板62により遮断される。
【0050】
脱衣室側給気通路43には、同通路43を開閉する開閉板66が設けられている。開閉板66は、矩形平板状をなしており、脱衣室側給気通路43を塞ぐことが可能な大きさを有してなる。開閉板66は、脱衣室側通路部材65に設けられた回動軸69によって回動可能に軸支されており、回動することにより脱衣室側給気通路43を開閉する構成となっている。開閉板66が開状態(図3の実線)とされると、断熱空間36と脱衣室15とが脱衣室側給気通路43を介して連通され、開閉板66が閉状態(図3の一点鎖線)とされると、断熱空間36と脱衣室15との連通が開閉板66により遮断される。なお、上記各開閉板62,66がそれぞれ通路開閉部材に相当する。
【0051】
断熱パネル33(詳しくは外装材34及び断熱材35)には、同パネル33を貫通するようにして排気用通路部材71が設けられている。この排気用通路部材71により断熱空間36と屋外とを連通する排気通路46が形成されている。排気通路46の屋外側には、当該通路46を開閉する複数のスラット72が設けられている。これら各スラット72が開状態(図3の実線)とされることにより、断熱空間36と屋外とが連通され、各スラット72が閉状態(図3の一点鎖線)とされることで断熱空間36と屋外との連通が遮断される。また、これら各スラット72は、スラット駆動部73により開閉駆動されるものとなっている。スラット駆動部73は、例えば周知の電動式モータ等からなる。
【0052】
なお、図示は省略するが、西面の外壁構造体11bについても、上述した北面の外壁構造体11aと同様の構成を有しており、外壁構造体11b(外壁パネル48)の屋外側には外装材34及び断熱材35を有してなる断熱パネル33が設けられ、同断熱材35と外壁パネル48との間には断熱空間36が形成されている。
【0053】
続いて、上述した外壁断熱装置20の作用について説明する。
【0054】
遮断部材38を連通状態とすることにより断熱空間36と集熱空間30とを連通させた状態で取込ファン32を作動させると、取込口31を通じて屋外の空気が集熱空間30に取り込まれる。この取り込まれた空気は集熱空間30において集熱パネル28を介して太陽熱により暖められ暖気となり、その後集熱空間30から断熱空間36に流れ込む。これにより、冬場においては、断熱空間36に流れ込んだ暖気によって日当たりの悪い北面及び西面の外壁構造体11a,11bについて断熱性能を高めることができる。
【0055】
また、かかる取込ファン32の作動状態(かつ、集熱空間30と断熱空間36との連通状態)において、開閉板62を開状態とし居室側給気通路41を開放させると、同通路41を通じて断熱空間36の暖気が第二居室14に供給される。この場合、その暖気によって第二居室14が暖められる。また、同じく取込ファン32の作動状態において、開閉板66を開状態とし脱衣室側給気通路43を開放させると、同通路43を通じて断熱空間36の暖気が脱衣室15に供給される。この場合、その暖気によって脱衣室15(ひいては浴室16)が暖められる。また、同じく取込ファン32の作動状態において、スラット72を開状態とし排気通路46を開放させると、同通路46を通じて断熱空間36の空気が屋外に排出される。
【0056】
図1の説明に戻り、第二居室14には、同居室14の温度を検知する居室温度センサ75が設けられ、脱衣室15には、当該脱衣室15の温度を検知する脱衣室温度センサ76が設けられている。また、断熱空間36には、当該断熱空間36の温度を検知する断熱空間温度センサ77が設けられている。ここで、居室温度センサ75及び脱衣室温度センサ76がそれぞれ屋内温度検知手段に相当し、断熱空間温度センサ77が断熱空間温度検知手段に相当する。
【0057】
次に、外壁断熱装置20の電気的構成について図4に基づいて説明する。なお、図4は外壁断熱装置20の電気的構成を示すブロック図である。
【0058】
図4に示すように、建物10には、開閉制御手段としてのコントローラ80が設けられている。コントローラ80は、CPU等を周知のマイクロコンピュータを主体に構成されており、例えば第一居室13の内壁面に設けられている。
【0059】
コントローラ80には、居室温度センサ75、脱衣室温度センサ76及び断熱空間温度センサ77から逐次検知結果が入力される。また、コントローラ80には、空調装置19からの空調実施情報が逐次入力される。空調実施情報としては、空調装置19が暖房運転をしているか否かに関する暖房運転情報や、暖房設定温度に関する設定温度情報等がコントローラ80に入力される。
【0060】
コントローラ80は、上記各センサ75〜77からの検知結果及び空調装置19からの空調実施情報に基づいて、取込ファン32、給気ファン45、開閉駆動部63,67、スラット駆動部73、遮断用駆動部39及び通気ガラリ29をそれぞれ駆動制御する。
【0061】
次に、コントローラ80により実行される外壁暖房処理について図5に基づいて説明する。なお、図5は外壁暖房処理を示すフローチャートである。また、本処理は所定の周期で繰り返し実行される。
【0062】
図5に示すように、まずステップS11では、現在の時刻が所定の昼間時間帯であるか否かを判定する。ここで、所定の昼間時間帯は集熱パネル28に対して太陽光が照射される時間帯に設定されており、例えば10:00〜16:00に設定されている。現在の時刻が所定の昼間時間帯である場合にはステップS12に進み、昼間暖房処理を実行する。
【0063】
ここで、昼間暖房処理について図6に基づいて説明する。図6は昼間暖房処理を示すフローチャートである。図6に示すように、昼間暖房処理ではまずステップS31において、遮断用駆動部39に駆動信号を出力して遮断部材38を連通状態に移行させる。これにより、集熱空間30と断熱空間36とが連通された状態となる。続くステップS32では、取込ファン32に駆動信号を出力し同ファン32を作動させる。これにより、取込口31を通じて屋外の空気が集熱空間30に流れ込み同空間30にて暖められるとともに、その暖められた空気が集熱空間30から断熱空間36に流れ込む。これにより、冬場においては断熱空間36の暖気により外壁構造体11a,11bの断熱性能が高められる。
【0064】
ステップS33では、居室温度センサ75及び断熱空間温度センサ77からの検知結果に基づいて、断熱空間36の温度が第二居室14の温度よりも高いか否かを判定する。断熱空間36の温度が第二居室14の温度よりも高い場合にはステップS38に進む。
【0065】
ステップS38では、第二居室14側の開閉駆動部63に開信号を出力して第二居室14側の開閉板62を開状態とし、続くステップS39では脱衣室15側の開閉駆動部67に閉信号を出力して脱衣室15側の開閉板66を閉状態とし、続くステップS40ではスラット駆動部73に閉信号を出力してスラット72を閉状態とする。この場合、居室側給気通路41が開放されるとともに、脱衣室側給気通路43及び排気通路46が閉鎖される。これにより、断熱空間36の暖気が居室側給気通路41を通じて第二居室14に流れ込み、その流れ込んだ暖気によって第二居室14が暖められる。
【0066】
また、ステップS33において、断熱空間36の温度が第二居室14の温度以下である場合にはステップS34に進む。ステップS34では、脱衣室温度センサ76及び断熱空間温度センサ77からの検知結果に基づいて、断熱空間36の温度が脱衣室15の温度よりも高いか否かを判定する。断熱空間36の温度が脱衣室15の温度よりも高い場合には、ステップS35に進む。
【0067】
ステップS35では、第二居室14側の開閉駆動部63に閉信号を出力して第二居室14側の開閉板62を閉状態とし、続くステップS36では脱衣室15側の開閉駆動部67に開信号を出力して脱衣室15側の開閉板66を開状態とし、続くステップS37ではスラット駆動部73に閉信号を出力してスラット72を閉状態とする。この場合、脱衣室側給気通路43が開放されるとともに、居室側給気通路41及び排気通路46が閉鎖される。これにより、断熱空間36の暖気が脱衣室側給気通路43を通じて脱衣室15に流れ込み、その流れ込んだ暖気によって脱衣室15が暖められる。
【0068】
ステップS34において、断熱空間36の温度が脱衣室15の温度以下である場合にはステップS41に進む。ステップS41では、第二居室14側の開閉駆動部63に閉信号を出力して第二居室14側の開閉板62を閉状態とし、続くステップS42では脱衣室15側の開閉駆動部67に閉信号を出力して脱衣室15側の開閉板66を閉状態とし、続くステップS43ではスラット駆動部73に開信号を出力してスラット72を開状態とする。この場合、排気通路46が開放されるとともに各給気通路41,43が閉鎖される。これにより、断熱空間36の空気が排気通路46を通じて屋外に排出される。したがって、断熱空間36の空気(熱)が外壁構造体11a,11bの断熱性能を高めるために利用される等して、同空気の温度が第二居室14の温度以下で、かつ、脱衣室15の温度以下となった場合には、断熱空間36の空気が第二居室14及び脱衣室15のいずれに対しても供給されないようになっている。以上が、昼間暖房処理についての説明である。
【0069】
図5の説明に戻り、ステップS11おいて現在の時刻が所定の昼間時間帯でない場合にはステップS13に進み、現在の時刻が所定の蓄熱時間帯であるか否かを判定する。本実施形態では、昼間に集熱空間30で暖められた空気(暖気)を断熱空間36で蓄えることにより、その蓄えられた暖気(熱)を夜間において脱衣室15を暖めるために利用することとしている。そのため、ステップS14〜S16の各処理は断熱空間36に暖気(熱)を蓄えるための蓄熱処理に相当するものとなっており、この蓄熱処理を所定の蓄熱時間帯に実施することとしている。なおここで、所定の蓄熱時間帯は、太陽光の照射が弱まる夕方の時刻から、蓄えた熱により脱衣室15の暖めを開始する時刻(詳しくは後述する夜間暖房処理の開始時刻)までとなっており、例えば16:00〜20:00に設定されている。ステップS13において、現在の時刻が所定の蓄熱時間帯であると判定された場合には、ステップS14に進む。
【0070】
ステップS14では、取込ファン32に対する駆動信号の出力を停止して、取込ファン32の作動を停止させる。続くステップS15では、遮断用駆動部39に閉信号を出力して遮断部材38を閉状態とする。これにより、遮断部材38により集熱空間30と断熱空間36との連通が遮断された状態となる。ステップS16では、各開閉駆動部63,67及びスラット駆動部73に閉信号を出力し、各開閉板62,66及びスラット72を閉状態とする。これにより、断熱空間36は第二居室14、脱衣室15及び屋外のいずれに対しても開放されていない状態となり、その結果断熱空間36の空気ひいては熱が外部に漏れ出るのが抑制された状態(すなわち蓄熱状態)となる。
【0071】
ステップS13において、現在の時刻が蓄熱時間帯でない場合にはステップS17に進み、現在の時刻が所定の夜間時間帯であるか否かを判定する。本実施形態では、所定の夜間時間帯において、上述した蓄熱処理(ステップS14〜S16)により蓄えた暖気(熱)を用い脱衣室15の暖め等を行う夜間暖房処理を実施することとしている。ここで、所定の夜間時間帯は、居住者が浴室16を利用する時間帯に設定されており、例えば20:00〜21:00に設定されている。ステップS17において現在の時刻が所定の夜間時間帯である場合にはステップS18に進み、夜間暖房処理を実行する。
【0072】
続いて、夜間暖房処理について図7に基づいて説明する。図7は夜間暖房処理を示すフローチャートである。図7に示すように、夜間暖房処理ではまずステップS51において脱衣室温度センサ76からの検知結果及び空調装置19からの設定温度情報に基づいて、脱衣室15の温度が暖房設定温度よりも低いか否か、すなわち脱衣室15の暖房が必要か否かを判定する。脱衣室15の温度が暖房設定温度よりも低い場合には、ステップS52に進み、脱衣室温度センサ76及び断熱空間温度センサ77からの検知結果に基づいて、断熱空間36の温度が脱衣室15の温度よりも高いか否かを判定する。断熱空間36の温度が脱衣室15の温度よりも高い場合にはステップS53に進む。
【0073】
ステップS53では、脱衣室15側の開閉駆動部67に開信号を出力して脱衣室15側の開閉板66を開状態とする。これにより、断熱空間36と脱衣室15とが脱衣室側給気通路43を介して連通される。次のステップS54では、給気ファン45に駆動信号を出力して同ファン45を作動させる。この場合、断熱空間36内に蓄えられた暖気が脱衣室側給気通路43を通じて脱衣室15に供給され、その暖気によって脱衣室15が暖められる。
【0074】
ステップS55では、脱衣室15の通気ガラリ26に閉信号を出力して脱衣室15の吹出グリル25(詳しくはその吹出口)を閉じる。これにより、空調装置19から脱衣室15への暖気の供給が停止される。すなわち、本処理では、断熱空間36の温度が脱衣室15の温度よりも高い場合には、脱衣室15の暖気を空調装置19からの暖気よりも優先して脱衣室15に供給するようにしている。
【0075】
ステップS52において、断熱空間36の温度が脱衣室15の温度以下である場合には、ステップS56に進み、脱衣室15側の開閉駆動部67に閉信号を出力して脱衣室15側の開閉板66を閉状態とする。これにより、断熱空間36と脱衣室15との連通が遮断される。次のステップS57では、給気ファン45に対する駆動信号の出力を停止して給気ファン45の作動を停止させる。この場合、断熱空間36に蓄えられた空気すなわち暖気が脱衣室15に供給されず、同空間36に蓄えられたままとなる。
【0076】
ステップS58では、脱衣室15の通気ガラリ26に開信号を出力して脱衣室15の吹出グリル25を開く。これにより、空調装置19より脱衣室15に暖気が供給される。すなわち、本処理では、断熱空間36の温度が脱衣室15の温度以下である場合には、断熱空間36の空気を脱衣室15に供給せず、空調装置19からの暖気を脱衣室15に供給するようにしている。
【0077】
先のステップS51において、脱衣室15の温度が空調装置19の暖房設定温度以下である場合、すなわち脱衣室15の暖房が必要でない場合には、ステップS59に進んで脱衣室15側の開閉板66を閉状態とし、次のステップS60にて給気ファン45の作動を停止する。そして、続くステップS61では脱衣室15の通気ガラリ26を閉状態として脱衣室15の吹出グリル25を閉じる。よって、この場合、断熱空間36及び空調装置19のいずれからも脱衣室15に対して暖気の供給が行われない。
【0078】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0079】
南面の外壁構造体11cの屋外側に集熱パネル28を設けることで、集熱パネル28と外壁構造体11cとの間に集熱空間30を形成したため、集熱空間30の空気を集熱パネル28を介して太陽熱によって暖めることができる。また、北面及び西面の外壁構造体11a,11bの屋外側に断熱パネル33を設けることで、断熱パネル33と外壁構造体11a,11bとの間に断熱空間36を形成し、この断熱空間36を集熱空間30と連通させた。これにより、冬場においては集熱空間30で暖められた空気を断熱空間36に供給することにより、日当たりのない北面の外壁構造体11a及び、日当たりの悪い西面の外壁構造体11bについて断熱性能を高めることができる。したがって、これらの外壁構造体11a,11bに隣接する第二居室14や脱衣室15において暖房効率の向上を図ったり暖房負荷の低減を図ったりすることができる。
【0080】
また、集熱空間30から断熱空間36への空気の流れを生じさせる気流発生手段としての取込ファン32を設けたため、集熱空間30で暖められた空気を積極的に断熱空間36に供給できる。そのため、上記の効果を好適に奏することができる。
【0081】
北面及び西面の外壁構造体11a,11bと断熱パネル33との間に、断熱空間36を囲む気密囲い部として遮断部材38、上板、底板58及び側板59を設け、同断熱空間36を蓄熱空間として構成した。この場合、集熱空間30で暖められた空気(暖気)を断熱空間36において同空気が外部に漏れ出るのを抑制しつつ蓄えることができる。これにより、断熱空間36において好適な蓄熱が可能となり、夜間においても外壁構造体11a,11bの断熱性向上を図ることができる。
【0082】
集熱空間30と断熱空間36との連通を遮断する遮断部材38を設けたため、遮断部材38により両空間30,36を遮断した状態で、集熱空間30で暖められた空気(暖気)を断熱空間36において蓄えることができる。これにより、断熱空間36の暖気が集熱空間30に流れ込むのを抑制できるため、断熱空間36において好適な蓄熱が可能となる。
【0083】
断熱空間36を、北面の外壁構造体11aを隔てて脱衣室15及び浴室16に隣接させて設けたため、脱衣室15及び浴室16において断熱性能を高めることができる。これにより、冬場におけるヒートショックの抑制を図ることができる。
【0084】
断熱空間36と第二居室14とを居室側給気通路41を介して連通させたため、断熱空間36の空気(暖気)を第二居室14に同通路41を介して供給できる。これにより、外壁構造体11a,11bの断熱性能を高めつつ、第二居室14の暖房を行うことができる。したがって、第二居室14における暖房負荷をより一層軽減させることができる。また、これと同様に、断熱空間36と脱衣室15とを脱衣室側給気通路43を介して連通させたため、断熱空間36の空気(暖気)を同通路43を介して脱衣室15に供給でき、これによって脱衣室15の暖房を行うことができる。
【0085】
居室側給気通路41を開閉する開閉板62を設け、断熱空間温度センサ77により検知された断熱空間36の温度が、居室温度センサ75により検知された第二居室14の温度よりも高いことを条件として、同通路41を開くよう開閉板62を制御した。この場合、断熱空間36の温度が第二居室14の温度よりも高い場合に限り、断熱空間36の空気(暖気)について同通路41を介した第二居室14への供給が可能となる。換言すると、断熱空間36の空気に含まれる熱が外壁構造体11a,11bの断熱に利用される等することで、同空気の温度が第二居室14の温度以下となった場合には、居室側給気通路41が開かれず、同空気の第二居室14への供給が禁止される。これにより、断熱空間36の空気が低温であるにもかかわらず第二居室14に供給されてかえって第二居室14が冷やされるといった不都合が生じるのを回避できる。また、これと同様に、脱衣室側給気通路43を開閉する開閉板66を設け、断熱空間36の温度が、脱衣室温度センサ76により検知された脱衣室15の温度よりも高いことを条件として、同通路43を開くよう開閉板66を制御したため、脱衣室15についても上記同様の効果が得られる。
【0086】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0087】
(1)上記実施形態では、取込ファン32を作動させることで、集熱空間30から断熱空間36に向かう空気の流れを生じさせ、この気流により集熱空間30で生成された暖気を断熱空間36に導くようにしたが、取込ファン32を用いずに、自然対流によって集熱空間30の暖気を断熱空間36に導くようにしてもよい。例えば、二階建ての建物10において、断熱パネル33を二階部分の西面の外壁構造体11bに設置することで二階部分に断熱空間36を形成し、これにより一階部分の集熱空間30から二階部分の断熱空間36に向かう上昇気流を発生させる。そして、かかる上昇気流を利用して集熱空間30の空気を断熱空間36に導くことが考えられる。また、本実施形態のように、集熱空間30と断熱空間36とが同一階同士にある場合においても、取込口31を集熱パネル28において下端部付近に形成するとともに排気通路46を断熱パネル33において上端部付近に形成すれば、すなわち取込口31と排気通路46との間の上下高さを大きくすれば、集熱空間30と断熱空間36との連続空間において取込口31から排気通路46に向かう上昇気流を生じさせることが可能となる。
【0088】
(2)上記実施形態では、建物10において北面及び西面に断熱空間36を形成したが、さらに東面にも断熱空間36を形成して東面の断熱空間36を北面の断熱空間36と連通させてもよい。そうすれば、建物10において日当たりのよい南面以外の各面において外壁構造体11a,11b,11dの断熱性能を高めることができる。
【0089】
また、東面の断熱空間36をさらに集熱空間30と連通させ、各断熱空間36(三面の断熱空間36)と集熱空間30との連続空間を閉環状の空間としてもよい。図8にはかかる構成が図示されている。図8では、集熱空間30を挟んで両側に断熱空間36a,36bが設けられており、集熱空間30はそれら各断熱空間36a,36bにそれぞれ連通されている。ここで、集熱空間30と西面の断熱空間36aとの間にはそれら両空間30,36aの連通を遮断する第1遮断部材38aが設けられ、この第1遮断部材38aは遮断用駆動部39aによって連通状態(図8の実線)と遮断状態(図8の一点鎖線)とに切り替えられるものとなっている。また、集熱空間30と東面の断熱空間36bとの間にはそれら両空間30,36bの連通を遮断する第2遮断部材38bが設けられ、この第2遮断部材38bは遮断用駆動部39bによって連通状態(図8の実線)と遮断状態(図8の一点鎖線)とに切り替えられるものとなっている。したがって、本例においては、これら各遮断部材38a,38bにより、集熱空間30を各断熱空間36のうちいずれと連通させるかを切り替えられるようになっている。
【0090】
かかる構成によれば、第1遮断部材38aを連通状態とし、第2遮断部材38bを遮断状態とすることにより、集熱空間30で暖められた空気(暖気)を西面の断熱空間36aに供給できる一方、第1遮断部材38aを遮断状態とし、第2遮断部材38bを連通状態とすることにより、集熱空間30の暖気を東面の断熱空間36bに供給できる。したがって、例えば朝方の時間帯等、建物10の東面に太陽光が照射されている場合には、西面の断熱空間36aに暖気を供給して、日陰となる西面の外壁構造体11bの断熱性能を高めることができる。また、夕方の時間帯等、建物10の西面に太陽光が照射されている場合には、東面の断熱空間36bに暖気を供給して、日陰となる東面の外壁構造体11dの断熱性能を高めることができる。つまり、この場合、太陽光の日射向き(日射角度)に応じて暖気の供給先を切り替えることで、外壁構造体11a,11b,11dの断熱性能を好適に高めることができる。
【0091】
また、上記の構成において、建物10に、太陽光の日射向きを検知する日射センサ81を設け、同センサ81により検知された日射向きに基づいて、各断熱空間36a,36bのうちいずれに集熱空間30の空気を供給するかを切り替えてもよい。すなわち、コントローラ80には日射センサ81から逐次検知結果が入力され、コントローラ80はその検知結果に基づき、各遮断用駆動部39a,39bを駆動制御する。具体的には、日射センサ81により日射向きが東向きであることが検知された場合には、第1遮断部材38aを連通状態、第2遮断部材38bを遮断状態とし、日射センサ81により日射向きが西向きであることが検知された場合には、第1遮断部材38aを遮断状態、第2遮断部材38bを連通状態とするよう各遮断用駆動部39a,39bを制御する。この場合、日射向きに応じて集熱空間30の暖気の供給先が自動で切り替えられるため、上述の効果を得る上で利便性を高めることができる。
【0092】
(3)建物10において西面には断熱空間36を形成せず、北面のみに断熱空間36を形成してもよい。この場合、北面の断熱空間36と南面の集熱空間30とを例えば通気ダクト等の通路部材を介して連通させることが考えられる。例えば、かかる通気ダクトを西面の外壁構造体11bの屋外側面において南北に延びるように配設することが考えられる。
【0093】
(4)上記実施形態では、集熱空間30と断熱空間36との連続空間(以下、単に連続空間ともいう)に取込口31より屋外の空気を取り込み、その取り込んだ空気を連続空間において流通させ、その後同空気を排気通路46及び各給気通路41,43のうちいずれかを通じて連続空間外部に放出する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、集熱空間30と断熱空間36との連続空間を密閉空間とし、その密閉空間内で集熱空間30と断熱空間36との間で空気の流通を行わせるようにしてもよい。この場合、上記連続空間において外気の出入りがない状態で空気の流通が行われるため、同空間内の空気の温度を高い状態に保持し易い。そのため、断熱空間36の温度を上記実施形態と比べ高い温度にすることができ、その結果外壁構造体11a,11bの断熱効果を高めることができる。
【0094】
(5)図9に示すように、集熱空間30と空調装置19とを接続する通気ダクト91を設け、集熱空間30において暖められた空気を通気ダクト91を通じて空調装置19に供給可能としてもよい。そうすれば、集熱空間30から空調装置19に供給された暖気を、空調装置19により各通気ダクト24を通じて各吹出グリル25に供給できるため、かかる暖気によって複数の部屋13〜15の暖房を行うことが可能となる。つまり、かかる構成では、建物10において共通の空調装置19を用いて複数の部屋13〜15の空調を行う空調システムが導入されており、このシステムを用いて集熱空間30の暖気を各部屋13〜15に供給するようにしているため、通気ダクト91を設ける等の比較的簡単な作業を行うだけで上記の効果を実現できる。
【0095】
また、かかる構成において、集熱空間30からの暖気と空調装置19により生成された暖気とを合わせ、その合わせた暖気(以下、合わせ暖気ともいう)を空調装置19を用いて各部屋13〜15に供給するようにしてもよい。こうすることで、空調装置19により生成された暖気により暖めを補うことができるため、好適な暖房を行うことができる。
【0096】
部屋13〜15の温度に基づいて、空調装置19により生成される暖気の温度を調整し、これによって合わせ空気の温度を調整するようにしてもよい。例えば、脱衣室温度センサ76により検知された脱衣室15の温度に基づき、空調装置19により生成される暖気の温度を調整することが考えられる。これにより、脱衣室15の温度が所定の目標温度に達していない場合には空調装置19により生成される暖気の温度を上げて、脱衣室15の暖房効果を高める等の調整が可能となる。
【0097】
(6)上記実施形態では、昼間暖房処理において、脱衣室15よりも第二居室14に優先して断熱空間36の空気(暖気)を供給するようにしたが、この優先順位を逆にして、第二居室14よりも脱衣室15に優先して断熱空間36の空気を供給するようにしてもよい。そうすれば、昼間の間に脱衣室15(及び浴室16)を断熱空間36の暖気によってある程度暖めておくことができる。
【0098】
また、建物10においてトイレが北面の外壁構造体11a又は西面の外壁構造体11bに隣接して設けられている場合には、トイレと断熱空間36とを連通する連通路を設け、その連通路を通じて断熱空間36の空気(暖気)をトイレに供給できるようにしてもよい。また、この場合、断熱空間36の空気を脱衣室15及びトイレに供給する構成において、脱衣室15を第1優先、トイレを第2優先として供給を行うようにしてもよい。
【0099】
(7)上記実施形態の構成において、建物10の天井部において天井を形成する天井面材の上方に、同天井面材と対向するように断熱パネルを設け、天井面材と断熱パネルとの間に断熱空間を形成してもよい。そして、かかる天井側の断熱空間を集熱空間30と(断熱空間36を介して又は断熱空間36を介さないで)連通させて、集熱空間30で暖められた空気を天井側の断熱空間に供給できるようにしてもよい。そうすれば、天井側の断熱空間に供給される暖気によって天井部の断熱性能を高めることができる。その結果、暖房負荷のより一層の低減を図ることが可能となる。
【0100】
(8)上記実施形態では、建物10において南面の外壁構造体11cにのみ集熱パネル28を設けたが、これを変更してもよい。例えば、西面の外壁構造体11bにおける断熱パネル33に代えて集熱パネル28を設け、建物10において南面と西面とにそれぞれ集熱空間30を形成してもよい。この場合、太陽熱の集熱能力を高めることができるため、北面の外壁構造体11aについて断熱性能をより一層高めることができる。
【0101】
また、集熱パネル28を建物10における屋根の屋外側に設け、屋根(屋根面)と集熱パネル28との間に集熱空間30を形成してもよい。この場合においても、集熱空間30を断熱空間36と連通させることで、集熱空間30にて暖められた空気を断熱空間36に供給することができる。
【0102】
(9)浴室16に換気装置(例えば24時間換気装置)を設置してもよい。そうすれば、断熱空間36から脱衣室15に供給された暖気を開閉扉22のガラリを通じて浴室16に取り込みやすくすることができ、浴室16におけるヒートショックの抑制を好適に図ることが可能となる。
【0103】
(10)脱衣室温度センサ76により検知された脱衣室15の温度が10℃以下である場合において、脱衣室15と第二居室14との温度差が5℃以下となるように、第二居室14及び脱衣室15に対する吹出グリル25からの空調空気(暖気)の吹き出しを通気ガラリ26により制御してもよい。そうすれば、脱衣室15の低温時においてヒートショックが生じるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…建物、11a,11b…第2外壁としての外壁構造体、11c…第1外壁としての外壁構造体、14…屋内空間としての第二居室、15…屋内空間としての脱衣室、20…外壁断熱装置、28…集熱パネル、30…集熱空間、32…取込ファン、33…断熱パネル、36…断熱空間、38…遮断手段としての遮断部材、41…給気通路としての居室側給気通路、43…給気通路としての脱衣室側給気通路、56…壁内断熱材、62…通路開閉部材としての開閉板、66…通路開閉部材としての開閉板、75…屋内温度検知手段としての居室温度センサ、76…屋内温度検知手段としての脱衣室温度センサ、77…断熱空間温度検知手段としての断熱空間温度センサ、80…開閉制御手段としてのコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周部に設けられる複数の外壁のうち、太陽光が当たる所定の方角に設けられた第1外壁には、その屋外側に集熱パネルが設けられ、該集熱パネルと当該第1外壁との間には集熱空間が形成されており、
前記所定の方角とは異なる方角に設けられた第2外壁には、その屋外側に断熱パネルが設けられ、該断熱パネルと当該第2外壁との間には断熱空間が形成されており、
前記集熱空間と前記断熱空間とは互いに連通されていることを特徴とする建物外壁の断熱装置。
【請求項2】
前記第2外壁と前記断熱パネルとの間に前記断熱空間を蓄熱空間とする気密囲い部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物外壁の断熱装置。
【請求項3】
前記集熱空間と前記断熱空間との連通を遮断する遮断手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物外壁の断熱装置。
【請求項4】
前記建物には、浴室及び脱衣室が、前記第2外壁を隔てて前記断熱空間と隣接して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物外壁の断熱装置。
【請求項5】
前記断熱空間を、該断熱空間に前記第2外壁を隔てて隣接する屋内空間と連通させる給気通路を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建物外壁の断熱装置。
【請求項6】
前記給気通路を開閉する通路開閉部材と、
前記屋内空間の温度を検知する屋内温度検知手段と、
前記断熱空間の温度を検知する断熱空間温度検知手段と、
前記断熱空間の温度が前記屋内空間の温度よりも高いことを条件として、前記給気通路を開くよう前記通路開閉部材を制御する開閉制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の建物外壁の断熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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