説明

建物外壁部における垂れ壁の通気構造

【課題】垂れ壁内における通気性を良好に確保しながらも、通気用開口を目立ち難くして、垂れ壁の見栄えを良好に維持することができる建物外壁部における垂れ壁の通気構造を提供する。
【解決手段】この通気構造は、壁躯体10と、この壁躯体10を挟むようにして張り付けた外壁パネル11、12と、壁躯体10の下端部及び外壁パネル11、12の下端部を覆う見切材13とを備え、外壁パネル11、12の下端面とその直下に位置する見切材13の側端部31、31の上面との間の間隙部40、40にシール材41、41を充填するとともに、表面全体に吹付塗装43を施してなる垂れ壁1において、間隙部40、40の要所要所に、通気用開口42・・となるシール材非充填箇所を設けて、垂れ壁1内に設けた通気路21、22を、通気用開口42・・を介して外気に連通させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として木造住宅の外壁部における垂れ壁の通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木造住宅の外壁部では、壁体内での結露の発生を抑制するために、外気に連通する通気路を壁体内に設けて、壁体内の湿気を外部へ排出させるようにしている。
【0003】
玄関ポーチ等の開口部上方部分、オーバーハング部分やバルコニー腰壁部分等に施工される垂れ壁においても同様に、結露対策として壁体内に通気路が設けられていることが多く、この通気路を外気に連通させるために、例えば壁体の下端部を覆う見切材等に通気用開口を形成した構造のものが見受けられる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283386号公報
【特許文献2】特開2002−201725号公報
【特許文献3】特開2001−90219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような垂れ壁においては、下方から見上げたときに、見切材等に形成した通気用開口が目立ってしまって、見栄えを損なうといった不具合があった。また、壁体と見切材との間に生じる間隙部をシール材で埋めて、これら表面全体に亘って吹付塗装を施すことで、壁体と見切材とを外観上見境なく一体化させて、意匠性を高めるようにした垂れ壁が提案されているが、特にこのような垂れ壁においては、通気用開口が目立つことになると、見栄えを著しく損なってしまうといった不具合があった。
【0006】
この発明は、上記の不具合を解消して、垂れ壁内における通気性を良好に確保しながらも、通気用開口を目立ち難くして、垂れ壁の見栄えを良好に維持することができる建物外壁部における垂れ壁の通気構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の建物外壁部における垂れ壁の通気構造は、壁躯体10と、この壁躯体10を挟むようにして張り付けた外壁パネル11、12と、前記壁躯体10の下端部及び外壁パネル11、12の下端部を覆う見切材13とを備え、前記外壁パネル11、12の下端面とその直下に位置する前記見切材13の側端部31、31の上面との間の間隙部40、40にシール材41、41を充填するとともに、前記外壁パネル11、12の表面、見切材13の表面及びシール材41、41の表面に亘って吹付塗装43を施してなる垂れ壁1において、前記間隙部40、40の要所要所に、通気用開口42・・となるシール材非充填箇所を設けて、前記垂れ壁1内に設けた通気路21、22を、前記通気用開口42・・を介して外気に連通させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、前記外壁パネル11、12のうち屋内側に位置する外壁パネル12の下端面とその直下に位置する前記見切材13の側端部31の上面との間の間隙部40に、前記通気用開口42・・となるシール材非充填箇所を設けている。また、前記見切材13の側端部31上面に、前記間隙部40に突出する複数の立ち上がり片35・・を立設して、これら立ち上がり片35、35間の隙間を、前記通気用開口42・・となるシール材非充填箇所としている。さらに、前記立ち上がり片35・・を、前記外壁パネル12の下端面に当接させて、前記間隙部40、40を確保するためのスペーサとしている。また、前記見切材13の側端部31、31を、前記外壁パネル11、12の表面よりも側方へ張り出させるようにしている。さらに、前記通気路21、22は、前記壁躯体10内に設けた躯体内通気路21と、前記壁躯体10と外壁パネル11、12との間に設けた外壁裏面通気路22、22とからなる。さらにまた、前記垂れ壁1は、その下端部分がアーチ状に湾曲して形成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、垂れ壁内に設けた通気路が通気用開口を介して外気に連通されていて、垂れ壁内の通気性を良好に確保することができ、垂れ壁内部での結露の発生を抑制して、垂れ壁の耐久性の向上を図ることができる。しかも、通気用開口は、外壁パネルの下端面と見切材の側端部上面との間の間隙部において断続的に形成されており、垂れ壁を下方から見上げたときに、目立ち難くなっていることから、吹付塗装を施して意匠性を高めた垂れ壁の見栄えを良好に維持することができる。特に、屋内側に位置する外壁パネルの下端面と見切材の側端部上面との間の間隙部において通気用開口を形成することで、垂れ壁を屋外側から見たときに通気用開口が見えなくなって、垂れ壁の見栄えをより一層良好に維持することができ、さらに通気用開口からの雨水の侵入等も防止することができる。
【0010】
また、見切材の複数の立ち上がり片によって間隙部を区切って、シール材非充填箇所とした立ち上がり片間の隙間において通気用開口を形成しているので、例えば間隙部にシール材を単に断続的に充填して通気用開口を形成する場合と比べて、通気用開口をきっちりと確保することができる。
【0011】
さらに、見切材の複数の立ち上がり片を、外壁パネルの下端面に当接させて、間隙部を確保するためのスペーサとすることで、見切材を精度良く取り付けて、間隙部をその長さ方向全長に亘って均一に確保することができ、通気用開口をバラツキなく安定して確保することができる。
【0012】
さらにまた、見切材の側端部を、外壁パネルの表面よりも側方へ張り出させることで、垂れ壁を下方から見上げたときに、張り出した見切材の側端部によって視線が遮られて、通気用開口を見え難くすることができ、垂れ壁の見栄えをより一層良好に維持することができる。
【0013】
また、垂れ壁内に躯体内通気路及び外壁裏面通気路を設けて、これら通気路を通気用開口を介して外気に連通させることで、垂れ壁内の通気をより効果的に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態に係る木造住宅の外壁部における垂れ壁の正面図である。
【図2】垂れ壁の一部破断正面図である。
【図3】垂れ壁のシール材充填箇所の縦断面図である。
【図4】垂れ壁のシール材非充填箇所の縦断面図である。
【図5】見切材の斜視図である。
【図6】見切材の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る木造住宅の外壁部における垂れ壁1は、図1に示すように、その下端部分がアーチ状に湾曲して形成されていて、玄関ポーチ2の上方に配されている。
【0016】
この垂れ壁1は、図2乃至図4に示すように、壁躯体10と、この壁躯体10を挟むようにして壁躯体10の屋外側及び屋内側(玄関ポーチ2に面する側)の表面に張り付けた外壁パネル11、12と、これら壁躯体10、外壁パネル11、12の下端部を覆う見切材(回り縁)13とを備えている。なお、図3及び図4において、14は、玄関ポーチ2における軒裏天井部材である。
【0017】
壁躯体10は、例えば柱材や横架材を組み付けてなる木製の下地フレーム15を挟み込むようにして、合板16、16を張り付けることによって構成されている。外壁パネル11、12は、例えばサイディング材からなり、縦胴縁等を介して壁躯体10に取り付けられている。なお、外壁パネル11、12の下端部は、上向きに湾曲して形成されている。
【0018】
そして、壁躯体10内には、下地フレーム15の要所要所にスリット20・・を形成することによって、躯体内通気路21が形成されている。また、外壁パネル11、12と壁躯体10の合板16、16との間には、外壁裏面通気路22、22が形成されている。
【0019】
見切材13は、例えばアルミニウム製の長尺材であって、外壁パネル11、12の下端部に沿うように、上向きに湾曲して形成されている。この見切材13は、図5及び図6に示すように、湾曲帯板状の本体部30と、この本体部30の長手方向に沿った両端部分をコ字状に折曲してなる一対の側端部31、31とからなる。
【0020】
側端部31、31は、本体部30から外向きに延出した下片32と、この下片32の側端から上向きに延出した垂直片33と、この垂直片33の上端から内向きに延出した上片34とを備えている。
【0021】
側端部31、31のうち屋外側の側端部31の上面(上片34の上面)には、その長手方向の全長に亘って発泡樹脂製のシール用バックアップ材36が取り付けられている。また、屋内側(玄関ポーチ2に面する側)の側端部31の上面(上片34の上面)には、複数の立ち上がり片35・・が長手方向に適宜間隔をあけて立設されている。これら立ち上がり片35・・は、上片34の幅方向に沿って、上片34よりも内方へ張り出すようにして配されている。そして、屋内側(玄関ポーチ2に面する側)の側端部31の上面(上片34の上面)においては、離間して配置された立ち上がり片35、35間の隙間においてバックアップ材36が取り付けられ、近接して配置された立ち上がり片35、35間の隙間にはバックアップ材36を取り付けないようにしている。さらに、双方の側端部31、31の上片34、34には、複数のL字状の取付金具37・・が長手方向に適宜間隔をあけて取り付けられている。
【0022】
そして、上記のようにして構成された見切材13は、図2乃至図4に示すように、取付金具37・・を壁躯体10の合板16、16の下端部にビスや釘等の固定具によって止め付けることで、壁躯体10、外壁パネル11、12の下端部を覆うようにして取り付けられている。
【0023】
この見切材13の取付状態において、屋外側に位置する側端部31が、屋外側に位置する外壁パネル11の表面よりも側方(屋外方向)へ張り出すようにして、外壁パネル11の下端面の直下に位置しており、また屋内側(玄関ポーチ2に面する側)に位置する側端部31が、屋内側(玄関ポーチ2に面する側)に位置する外壁パネル12の表面よりも側方(屋内方向)へ張り出すようにして、外壁パネル12の下端面の直下に位置している。
【0024】
また、外壁パネル11の下端面と側端部31の上面(上片34の上面)との間、外壁パネル12の下端面と側端部31の上面(上片34の上面)との間には、間隙部40、40がそれぞれ形成されている。屋内側(玄関ポーチ2に面する側)に位置する間隙部40においては、見切材13の立ち上がり片35・・が間隙部40を区切るように突出して、外壁パネル12の下端面に当接されている。このように、立ち上がり片35・・をスペーサとして介在させることで、間隙部40、40をその長さ方向全長に亘って均一に確保している。さらに、間隙部40、40には、バックアップ材36、36が充填された状態となっている。
【0025】
そして、屋外側に位置する間隙部40には、その長さ方向の全長に亘ってシール材41が充填されており、屋内側(玄関ポーチ2に面する側)に位置する間隙部40には、バックアップ材36が存在する離間配置された立ち上がり片35、35間の隙間においてシール材41が充填され、バックアップ材36が存在しない近接配置された立ち上がり片35、35間の隙間にはシール材41が充填されていない。すなわち、屋内側(玄関ポーチ2に面する側)に位置する間隙部40においては、その要所要所に小幅のシール材非充填箇所が設けられ、それらシール材非充填箇所が通気用開口42・・とされている。これにより、垂れ壁1内に設けた躯体内通気路21及び外壁裏面通気路22、22が、通気用開口42・・を介して外気に連通されている。
【0026】
さらに、外壁パネル11の表面、外壁パネル12における軒裏天井部材14よりも下方へ張り出した下端部表面、見切材13の表面及びシール材41、41の表面、すなわち、垂れ壁1の屋外に露出している表面全体に亘って、吹付塗装43が施されている。これにより、見切材13やシール材41、41が覆い隠されて、垂れ壁1全体が一様の外観を呈するようになり、意匠性が高められている。
【0027】
上記構成の垂れ壁1においては、その内部に設けた躯体内通気路21及び外壁裏面通気路22、22が、通気用開口42・・を介して外気に連通されていて、通気性を良好に確保することができ、結露の発生を抑制して耐久性の向上を図ることができる。
【0028】
しかも、通気用開口42・・は、屋内側(玄関ポーチ2に面する側)に位置する外壁パネル12の下端面とその直下に位置する見切材13の側端部31の上面との間の間隙部40において形成されており、その上、見切材13の側端部31が、外壁パネル12の表面よりも側方(屋内方向)へ張り出していることから、垂れ壁1を下方から見上げたときに、通気用開口42・・が目立たなくなって、見栄えを良好に維持することができる。
【0029】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、この発明の通気構造を備えた垂れ壁は、木造住宅の外壁部における垂れ壁だけに限らず、例えば鉄骨住宅の外壁部における垂れ壁であっても良い。また、玄関ポーチ等の開口部上方部分に施工する垂れ壁だけに限らず、オーバーハング部分やバルコニー腰壁部分に施工する垂れ壁であっても良い。さらに、下端部分をアーチ状に湾曲して形成した垂れ壁に限らず、下端部分を水平に形成した垂れ壁であっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1・・垂れ壁、10・・壁躯体、11、12・・外壁パネル、13・・見切材、21・・躯体内通気路、22・・外壁裏面通気路、31・・側端部、35・・立ち上がり片、40・・間隙部、41・・シール材、42・・通気用開口、43・・吹付塗装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁躯体(10)と、この壁躯体(10)を挟むようにして張り付けた外壁パネル(11)(12)と、前記壁躯体(10)の下端部及び外壁パネル(11)(12)の下端部を覆う見切材(13)とを備え、前記外壁パネル(11)(12)の下端面とその直下に位置する前記見切材(13)の側端部(31)(31)上面との間の間隙部(40)(40)にシール材(41)(41)を充填するとともに、前記外壁パネル(11)(12)表面、見切材(13)表面及びシール材(41)(41)表面に亘って吹付塗装(43)を施してなる垂れ壁(1)において、前記間隙部(40)(40)の要所要所に、通気用開口(42)・・となるシール材非充填箇所を設けて、前記垂れ壁(1)内に設けた通気路(21)(22)を、前記通気用開口(42)・・を介して外気に連通させるようにしたことを特徴とする建物外壁部における垂れ壁の通気構造。
【請求項2】
前記外壁パネル(11)(12)のうち屋内側に位置する外壁パネル(12)の下端面とその直下に位置する前記見切材(13)の側端部(31)上面との間の間隙部(40)に、前記通気用開口(42)・・となるシール材非充填箇所を設けた請求項1記載の建物外壁部における垂れ壁の通気構造。
【請求項3】
前記見切材(13)の側端部(31)上面に、前記間隙部(40)に突出する複数の立ち上がり片(35)・・を立設して、これら立ち上がり片(35)(35)間の隙間を、前記通気用開口(42)・・となるシール材非充填箇所とした請求項1又は2記載の建物外壁部における垂れ壁の通気構造。
【請求項4】
前記立ち上がり片(35)・・を、前記外壁パネル(12)の下端面に当接させて、前記間隙部(40)(40)を確保するためのスペーサとした請求項3記載の建物外壁部における垂れ壁の通気構造。
【請求項5】
前記見切材(13)の側端部(31)(31)を、前記外壁パネル(11)(12)の表面よりも側方へ張り出させるようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の建物外壁部における垂れ壁の通気構造。
【請求項6】
前記通気路(21)(22)は、前記壁躯体(10)内に設けた躯体内通気路(21)と、前記壁躯体(10)と外壁パネル(11)(12)との間に設けた外壁裏面通気路(22)(22)とからなる請求項1乃至5のいずれかに記載の建物外壁部における垂れ壁の通気構造。
【請求項7】
前記垂れ壁(1)は、その下端部分がアーチ状に湾曲して形成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の建物外壁部における垂れ壁の通気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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