説明

建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法

【課題】建物最上階部分の室内空調設備の負荷を効率よく低減する。
【解決手段】建物10の屋根部分15に雨滴を受承可能な状態で石炭灰25を敷設するようにする。また雨滴は通過させるが石炭灰25は通過させない編み目が形成されたシート状の覆い30を石炭灰25に被せるようにする。また屋根部分15に上方が開口する一つ以上のケース30を敷設して、ケース30に雨滴を受承可能な状態で石炭灰25を収容するようにする。また石炭灰25を、石炭灰25、セメント、及びベントナイトを加水混合して造粒した粒状体として屋根部分15に敷設するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、都市環境の急激な変化に伴いヒートアイランド現象が問題になっている。ヒートアイランド現象に対する対策として、例えば、特許文献1には、フィルター層と、路盤材に補足材として石炭灰造粒物を混合した保水性路盤材からなる保水性路盤層と、透水性を備えた表層とが順次積層されてなる、路床層上に築造される透水性舗装構造体が記載されている。
【0003】
また特許文献2には、表面がピートモスで覆われたクリンカアッシュを骨材とする多孔質コンクリートからなる保水性コンクリートブロックが記載されている。
【0004】
また特許文献3には、開粒度アスファルトコンクリートの間隙部に石炭灰を主体とするスラリーを充填させた表層を成すアスファルト保水層と、このアスファルト保水層の下側に位置するとともに、石炭灰固化砕石を主体とし所定の密度に締め固められた石炭灰固化砕石貯水層とからなる給水型保水性舗装構造が記載されている。
【0005】
また特許文献4には、屋上緑化技術に関し、保水性及び保肥性を有する緑化用材料として、ゼオライト50〜90重量%と、可塑性粘土5〜49.9重量%と、アルカリ(土類)金属化合物0.1〜30重量%とを含むゼオライト含有組成物が記載されている。
【0006】
また特許文献5には、建物等の屋根上にパーライト等保水性を有する軽量人工土壌材を敷き込み軽量人工土壌材層とし、その上に砂利を敷設し砂利層とした軽量保水性断熱屋根が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−229707号公報
【特許文献2】特開2008−303620号公報
【特許文献3】特開2006−214147号公報
【特許文献4】国際公開WO2006/054718号
【特許文献5】特開2002−364130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
地球温暖化やヒートアイランド現象により、建物に設けられている空調設備の負荷の上昇が問題になっている。建物を冷却するために、例えば、特許文献1乃至3で用いられているような保水性の高い素材を用いた場合には、製造にかかる手間や高額な導入コストが問題となる。また例えば、特許文献4,5に記載されているように屋上緑化を行うことで、建物の冷却効果をある程度期待できるが、屋上緑化は一般に撒水や土壌の管理に要する手間やコストが問題になる。
【0009】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、建物最上階部分の室内空調設備の負荷を効率よく低減することが可能な室内空調設備の負荷低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一つは、建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、前記建物の屋根部分に雨滴を受承可能な状態で石炭灰を敷設することとする。
【0011】
このように建物の屋根部分に雨滴を受承可能な状態で石炭灰を敷設するようにすれば、降雨時に石炭灰が雨水を吸収し、晴天時にこの水が蒸発して気化熱を奪うため特に建物の最上階部分が冷却される。そのため、建物の最上階部分の室内空調設備の負荷を確実に軽減することができる。また火力発電所等における廃棄物である石炭灰を有効に利用することができる。
【0012】
上記目的を達成するための本発明の他の一つは、上記の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、雨滴は通過させるが前記石炭灰は通過させない編み目が形成されたシート状の覆いを前記石炭灰に被せることとする。
【0013】
このように雨滴は通過させるが石炭灰は通過させないシート状の覆いを石炭灰に被せるようにすれば、降雨時は雨滴を石炭灰に確実に吸収させることができるとともに、乾燥時は風による石炭灰の飛散を確実に防ぐことができる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の他の一つは、上記の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、前記屋根部分に上方が開口する一つ以上のケースを敷設し、前記ケースに雨滴を受承可能な状態で石炭灰を収容することとする。
【0015】
このように石炭灰を上方が開口するケースに収容した状態で敷設するようにすることで、石炭灰の取り扱いが容易になり、屋根部分に機械基礎等の障害物が存在して十分なスペースが確保できないような状況でも、石炭灰を屋根部分に容易に敷設することができる。
【0016】
上記目的を達成するための本発明の他の一つは、上記の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、貯水槽に貯水されている雨水を前記石炭灰に撒水することとする。
【0017】
このように、貯水槽に貯水されている雨水を石炭灰に撒水するようにすれば、降雨が少ない時期でも石炭灰を含水状態にすることができ、降雨が少ない時期でも建物最上階部分の冷却効果を期待することができる。
【0018】
上記目的を達成するための本発明の他の一つは、上記の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、送風機構により前記石炭灰に向けて風を送り込むこととする。
【0019】
このように送風機構により積極的に石炭灰に風を送り込むようにすることで、石炭灰が吸収した水分の蒸発を促進することができ、建物を効率よく冷却することができる。
【0020】
上記目的を達成するための本発明の他の一つは、前記石炭灰を、石炭灰、セメント、及びベントナイトを加水混合して造粒した粒状体として前記屋根部分に敷設することとする。
【0021】
石炭灰としてこのような成分で造粒されたものを用いることで、石炭灰を粒状体のまま長期間安定して維持することができ、石炭灰の飛散を確実に防ぐことができる。
【0022】
上記目的を達成するための本発明の他の一つは、前記粒状体は、石炭灰を88%、セメントを9%、ベントナイトを含んだ粘土を3%、の割合で混合して造粒することとする。
【0023】
石炭灰としてこのような成分割合で造粒されたものを用いた場合は石炭灰を粒状体の状態に長期に亘って安定して維持することができ、自然崩壊により石炭灰が飛散してしまうのを確実に防ぐことができる。
【0024】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、建物最上階部分の室内空調設備の負荷を効率よく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法の一実施形態を説明する図である。
【図2】建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法の一実施形態を説明する図である。
【図3】シート状の覆いを被せた屋根部分15を説明する図である。
【図4】石炭灰25を収容するケース40を説明する図である。
【図5】ネット80を装着したケース40を説明する図である。
【図6】貯水槽50を設けた屋根部分15を説明する図である。
【図7】送風機構60を設けた屋根部分15を説明する図である。
【図8】石炭灰25の粒状体を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2に、建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法の一実施形態を示している。これらの図に示しているように、エアコン、空気清浄機等の室内空調設備11が最上階部分に設けられている建物10(ビル、工場、住宅、病院、ホテル、学校、倉庫等)の屋根部分15に、火力発電所などで発生した石炭灰25を、雨滴を受承可能な状態で敷設している。
【0028】
ここで石炭灰25は、吸水性、保水性が高く、図1に示す如く雨天時には屋根部分15に敷設された石炭灰25が雨滴を効率よく吸収する。一方、雨天時以外の期間においては、図2に示す如く石炭灰25に吸収されている水が蒸発して建物10から気化熱を奪い建物10の最上階部分が冷却される。
【0029】
このように、上記負荷低減方法によれば、石炭灰25に吸収された水の気化熱を利用して建物10の最上階部分を効率よく冷却することができる。そのため、無駄なエネルギーを要さずして建物10の最上階部分に設けられている室内空調設備11の負荷を効率よく低減することができる。
【0030】
ところで、屋根部分15に敷設する石炭灰25として砂状のものを用いた場合は風で石炭灰25が飛散しやすく、建物10の外壁を汚したり周辺の空気を汚すなど、周囲の環境に影響を与える虞もある。そこで例えば、図3に示す如く、敷設した石炭灰25の上に雨滴は通過させるが石炭灰25は通過させない編み目が形成されたシート状の覆い(符号30)を被せて石炭灰25の飛散を防ぐようにしてもよい。
【0031】
また屋根部分15に直に石炭灰25を敷設してしまうと、屋根部分15を汚してしまう虞があり、また石炭灰25の交換や撤去時等に作業負担が大きくなって取り扱いも不便である。そこで、例えば、図4に示す如く、石炭灰25を雨滴を受承可能な状態で上方が開口するケース40に収容し、このケース40を単数もしくは複数個、屋根部分15の適所に敷設するようにしてもよい。
【0032】
このように石炭灰25をケース40に収容してユニット化した状態で敷設することで、屋根部分15を汚してしまう虞がなくなり、石炭灰25の取り回しも容易になる。またケース40の大きさを適切に設定すれば、屋根部分15に機械基礎等の障害物が存在しているような状況においても容易に石炭灰25を敷設することができる。
【0033】
尚、このように石炭灰25をユニット化して敷設する場合には、例えば、図5に示す如く、ユニット(ケース40)ごとにネット80(シート状の覆い)を被せ、ネット80の周囲を固定具82等を用いて固定するようにしてもよい。
【0034】
降雨が少ない時期は石炭灰25の含水量が減って建物10の最上階部分の冷却効果が低下してしまうこともある。そこで例えば図6に示す如く、雨水を貯留する貯水槽50を設け、貯水槽50に貯留された水をポンプ機構等を用いて積極的に石炭灰25に撒水するようにしてもよい。
【0035】
また逆に湿潤な時期等には、石炭灰25からの水の蒸発量が減って建物10の最上階部分の冷却効果が低下してしまう。そこで例えば図7に示す如く、屋根部分15に送風機構60を設けて石炭灰25に向けて積極的に風を送り込み、石炭灰25からの水の蒸発を促進させるようにしてもよい。
【0036】
石炭灰25は、例えば、粒状体として屋根部分15に敷設するようにしてもよい。図8に粒状に成形した石炭灰25の一例を示している。この粒状体は、例えば石炭灰25を88%、セメントを9%、ベントナイトを含んだ粘土を3%、の割合で混合(加水混合)して造粒したものである。粒状体の直径は10mm以上である。このように石炭灰25として粒状に成形したものを用いた場合は、砂状の場合に比べて取り扱いが容易になる上、風による石炭灰25の飛散も防ぐことができる。
【0037】
ところで、以上に説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、石炭灰25の保水性を向上すべく、屋根部分15やケース40の底に導水性シートを敷き、その上に石炭灰25を敷設(収容)するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 建物
11 室内空調設備
15 屋根部分
25 石炭灰
40 ケース
50 貯水槽
60 送風機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、前記建物の屋根部分に雨滴を受承可能な状態で石炭灰を敷設することを特徴とする建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、雨滴は通過させるが前記石炭灰は通過させない編み目が形成されたシート状の覆いを前記石炭灰に被せることを特徴とする建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、前記屋根部分に上方が開口する一つ以上のケースを敷設し、前記ケースに雨滴を受承可能な状態で石炭灰を収容することを特徴とする建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、貯水槽に貯水されている雨水を前記石炭灰に撒水することを特徴とする建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、送風機構により前記石炭灰に向けて風を送り込むことを特徴とする建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、前記石炭灰を、石炭灰、セメント、及びベントナイトを加水混合して造粒した粒状体として前記屋根部分に敷設することを特徴とする建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法。
【請求項7】
請求項6に記載の建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法であって、前記粒状体は、石炭灰を88%、セメントを9%、ベントナイトを含んだ粘土を3%、の割合で混合して造粒したものであることを特徴とする建物最上階部分の室内空調設備の負荷低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−162916(P2012−162916A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24088(P2011−24088)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】