説明

建物用庇の取付構造

【課題】庇板の寄せ付けによる継手接合で庇体を形成しても、水密性があり、強固で安定したものとなることをその課題とする。
【解決手段】一側面に挿着部19を他側面に受部20を有する庇板3の基端部に、L形固定具29の重合部29aを重ねて、両者に第1ボルト27を通し、その頭27aを取付部材2の横片2bに形成された係止溝10に係合させ、上記L形固定具29の立上片29bには第2ボルト32を通して、その頭32aを取付部材2の縦片2aに形成された係止溝7に係合させて、第1ボルト27と第2ボルト32に第1ナット34と第2ナット35を仮締めして、庇板3の寄せ付けを係止溝10と係止溝7に案内させて行い、庇板3が受部20と挿着部19の嵌合で接合されると、第1ナット34と第2ナット35を本締めする操作を繰り返して水密性がある強固な建物用庇を簡単に速やかに構成すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部材に中空の庇板を継手接合しながら取り付けて庇体を構成させる建物用庇の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁面より前方に張り出すように設けられる庇であって、庇板と、建物の外壁面に固着され前記庇板の基端部を全幅にわたって保持する保持具と、前記庇板の先端側に装着される樋状の縁板から成り前記庇板は、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向に連結される複数の中間板材と、両側位置の中間板材の外側端面にそれぞれ装着される側板材とで構成され、各中間板材は両側端面に、各側板材は内側端面に、それぞれ他の板材と係脱可能な係合部が形成されて成る庇は知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記庇は、接合する各板材の基端側を建物にアンカーボルトで取付けられる保持基板の垂直板部に押し付けると、接合された各板材の先端側が一線に揃うようにしているが、上記アンカーボルトは板材の後端内側に入り込むように垂直部より突出しているので、板材を上記垂直板部に基端部が当った状態で横方向に動かすと、側壁がアンカーボルトによって動きを止められ、板材を先の板材に係合することができない。そこで、板材を基端側の側壁がアンカーボルトに当たらない位置まで引き出して、板材を先の板材に係合した後、板材を基端側に戻す為、板材の先端をハンマーで叩く等して先端を揃えるようにしている。このため、段違いが生じた各板材の先端を一線に揃える必要があるから、作業には手間がかかって、板材の先端側を損傷若しくは変形をさせ易く、更に、各板材の対応側面に形成される係合部の隙間にはシール部材を備えないから、雨水が係合部を通過して庇下に漏れ落ち易いという問題点があった。
【0004】
上記問題点を解決するため、本発明者は、建物躯体に中空の庇板を接合して形成した庇体を取付部材で取付け、この庇体の基部に水切りカバー材を、先端に化粧カバー材を取付けてなる建物用庇において、上記取付部材は、庇体を取付ける横片の上側に頭を係合させてボルトを支持する係止溝を長手方向に形成され、上記中空の庇板は、相互の対応側面に接合用の受部と挿着部を、一部にシール部材を支持し得るように形成されて、基端部には上下方向の孔があけられて、この中空の庇板を、上記係止溝に頭を係合させたボルトに、孔を嵌めてナットを仮締めすることで支持させ、該ボルトとともに移動させると受部と挿着部の係合による庇板の接合が行われ、接合後にナットを本締めすると庇板の取付部材への固定が行われるようにした建物用庇を提供した(特許文献2参照)。
【0005】
上記建物用庇体は、取付部材の横片に形成した係止溝に頭を係合させてボルトを支持させ、このボルトに中空の庇板の基端部にあけた孔に嵌めて上記ボルトにナットを仮締めすると、庇板がボルトに支持されてボルトと共に移動させれば、庇板の先端が一線をなす接合が行われて、接合後にボルトを本締めすると庇板を取付部材に固定することができるので、上記操作を繰り返すと簡単迅速に庇体が形成されるだけでなく、庇板の固定構造は、その孔を通したボルトにナットを締め込むだけの至って簡単なものであり、しかも、庇板を接合する受部と挿着部は一部にシール部材を備えて、このシール部材で受部と挿着部の隙間を密封して漏水しない庇体を実現することができた。しかしながら、最近は、出巾方向の長い庇や、デザイン上の理由より補強の吊りアームを付設しない庇が要求される為、改善が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−162415号公報
【特許文献2】特開2009−97326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、庇板の寄せ付けによる継手接合で庇体を形成しても、水密性があり、強固で安定したものになることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、建物躯体に取り付けた取付部材に中空の庇板を継手で接合しながら取り付けて庇体を構成させる建物用庇の取付構造であって、上記取付部材は、建物躯体に取り付ける縦片と庇体を支持する横片に、ボルトの頭を移動自在に係合させる長手方向の係止溝を形成され、上記中空の庇板は、相互の対応側面に接合用の受部と挿着部を、基端部の上側には後部に立上片を有するL形固定具を重ねられ、該庇板の基端部とこれに重ねたL形固定具は、下から上に第1ボルトを通され、上記L形固定具の立上片は後から前に第2ボルトを通されて、上記第1ボルトは、頭を上記横片に形成される係止溝に係合され、第2ボルトは頭を上記縦片に形成される係止溝に係合されて、第1ナットと第2ナットの仮締め時は、両ボルトで庇板の直線移動を案内して、受部と挿着部の嵌合による庇板の接合を行わせ、第1ナットと第2ナットを本締めすると、接合された庇板が固定されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記第1ボルトと第2ボルトが、取付部材の横片に形成された係止溝と、縦片に形成された係止溝とに、頭を係合させて必要本数を所定の間隔で支持されて、これらボルトに一方から他方にと順次に庇板とL形固定具が取り付けられることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記庇板の基端部に重ねるL形固定具の第1ボルトを通す孔は
、前後方向の長孔に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記取付部材の縦片に孔と係止溝を設けてあることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記中空の庇板に形成される挿着部の下側のものが樋形をなし、対応する受部の間には、上記挿着部に漏水を導く導水片が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記水切りカバー材の基端部と建物躯体の隙間、及び先端部と庇体との隙間が、充填溝へのコーキング材の充填で封塞されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、上記庇体の先端部に取り付けられる化粧カバー材が、上方に開口する樋形に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、上記化粧カバー材は、後部に漏水を集めて排出する樋部を形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、上記庇体の張出しが大きくて吊りアームによる支持を必要とする場合、吊りアームを取り付けられる中空の庇材は、取付部に対応する空間内に受部材を挿入し、この受部材に基端側を建物躯体に取り付たけた吊りアームの先端側に設けられる取付具をねじ等で止着してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、庇板の基端部とこれに重ねたL形固定具に、取付部材の横片に形成された係止溝に頭を係合させた第1ボルトを通し、上記L形固定具の立上片に取付部材の縦片に形成された係止溝に頭を係合する第2ボルトを通すから、上記両ボルトにナットを仮締めすれば、庇板は一対の係止溝に案内されて直線移動するが、止めてナットを本締めすればその位置に固定されるから、次の庇板をナットの仮締め状態で移動させて、先の庇板に寄せ付ける操作を繰り返し行えば、両庇板は受部と挿着部の嵌合で先端に段違いを生ずることなく1線状に接合されて、取付部材の強度を増す。また、庇板の側面に形成される受部と挿着部は、雨水等を支持し易い形成をしているため、継手部から漏水が生じた場合でも、漏水を受けて庇体の傾斜で化粧カバー材の排水樋に送り、庇体からの漏水を起こしにくい特徴を有する。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、取付部材の横片に形成される係止溝と、縦片に形成される係止溝に必要数の第1ボルトと第2ボルトを所定の間隔で支持させて置いて、これらボルトに一方から順次に庇板とL形固定具を支持させ、先の庇板から第1ナットと第2ナットの締め込みで固定し、後の庇板を順次先の庇板に寄せ付けて受部と挿着部の嵌合で接合する操作を行って庇体の構成を簡単に速かに行うことができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、L形固定具にあけて第1ボルトを通す孔が前後方向の長孔であるため、この長孔の範囲内でL形固定具を前後に移動させて、後部に設けられた立上片の孔に取付部材の縦片から突出する第2ボルトを容易に通すことができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、建物躯体へ取り付けるための孔と、L形固定具を介して庇板を支持するための係止溝が別々に設けられているため、建物躯体の材質に限定されることなく、取り付けられる。
【0021】
請求項5の発明によれば、庇板の接合部から漏水があっても、漏水を導水片で樋に導いて、樋から化粧カバー材に設けられた樋部に排出させるから、庇体からの漏水防止に有効である。
【0022】
請求項6の発明によれば、水切りカバー材の基端側と建物躯体の隙間及び先端側と庇体との隙間が充填溝へのコーキングの充填で封塞されるため、漏水を生じ易い庇体の取付部からの漏水を防止するのに有効である。
【0023】
請求項7の発明によれば、化粧カバー材を上方が開口する樋形にすると、庇体上を流れた雨水が樋形部に集められて排水口から排出されて綺麗に処理される。
【0024】
請求項8の発明によれば、庇板同士の接合部の表面から漏水すると、導水片が漏水を受けて樋部に送り、庇体の先端から化粧カバー材の樋部へ排出するので、庇板同士の接合部の裏面へ漏水を防止するのに有効である。
【0025】
請求項9の発明によれば、張出しが大きい庇体を用いても吊りアームを取り付ける事で強度を増して、安全、確実に支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る取付構造で構成された建物用庇の斜視図。
【図2】同上の一部分を省略した縦断側面図。
【図3】取付部材の横片に形成された係止溝に第1ボルトが、縦片に形成された係止溝に第2ボルトが間隔を隔てて配置されて、上記のボルトの一部で庇板が取り付けられた斜視図。
【図4】取付部材の横片に形成された係止溝に頭を係合させた第1ボルトに庇板の基端部を取り付けた説明図。
【図5】庇板の基端部の上側に乗せたL形固定具を、立上片の孔から縦片に形成された係止溝に支持された第2ボルトが出るように移動させた説明図。
【図6】L形固定具の長孔から出た第1ボルトと、立上片の孔から出た第2ボルトにナットを締め込んでL形固定具と庇板を固定した説明図。
【図7】取付部材の上端部とL形固定具の先端部に跨って水切りカバー材を取り付けた説明図。
【図8】取付部材の両端に蓋板を取り付けた説明図。
【図9】上記水切りカバー材の基端側と建物躯体との隙間、及び水切りカバー材の先端部と庇体との充填溝にコーキングを充填して封塞した説明図。
【図10】庇体の先端に取付材と化粧カバー材を取り付けた説明図。
【図11】化粧カバー材の両端に蓋板を取り付けた説明図。
【図12】取付部材の一端に固定された先の庇板に、次の庇板を係止溝に案内させて寄せ付ける説明図。
【図13】隣り合う庇板が寄せ付けによる受部と挿着部の嵌合で接合された態様の説明図。
【図14】中間用の庇板の端面図。
【図15】左端用の庇板の端面図。
【図16】右端用の庇板の端面図。
【図17】(a)(b)は左端用の庇板の裏面に形成された模様の例を示す部分図。
【図18】庇体の先端部に取り付けた三角形の化粧カバー材を示す説明図。
【図19】庇体の先端部に取り付けた丸形の化粧カバー材を示す説明図。
【図20】庇体の先端部に取り付けた四角形の化粧カバー材を示す説明図。
【図21】建物用庇を吊りアームで建物躯体に吊った側面図。
【図22】吊りアームの基端用の取付具を示す斜視図。
【図23】吊りアームの先端用の取付具を示す斜視図。
【図24】吊りアームの受金具の構造と庇板への装着状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0027】
図1及び図2において符号Aは、本発明の取付構造で構成された建物用庇を示す。この建物用庇Aは、図1及び図2に示す通り建物躯体1に取り付けられた取付部材2に、中空の庇板3を接合しながら取り付けて庇体4を構成させ、この庇体4の基端部の上側に水切りカバー材5を取り付け、先端部には化粧カバー材6を取付けて完成させたものである。
【0028】
上記取付部材2は、図2〜図7に示す通り建物躯体1に固定する縦片2aと、庇体4の基端部を支持させる横片2bとでL形をなして、縦片2aの幅方向の中央部には前向きの長手方向の係止溝7と、該係止溝7の張出しに合わせた後記L形固定具の受片11が存在し、上端には前側へ突出する水切りカバー材5の支持片9が存在し、また、横片2bの幅方向の中央部には上向きの長手方向の係止溝10が、該係止溝10の前側と後側には、係止溝10の突出に合わせた庇板3の受片8と、庇板3の基端縁を押し当てて庇板3同士の一線を揃える定規片12が、上記係止溝10の前側の基部と、定規片12の後側の基部には、ねじ受用の小円溝13と小円溝13が存在するようにアルミニウムの押出成形で成形した長尺材を必要な長さに切断して形成したものであり、縦片2aの上部と下部には、図3に示す通り建物躯体1にアンカーボルト14で取付けるための孔15を離隔させて複数個あけられる。
【0029】
上記中空の庇板3は、多く使用される中間用を図14に示す通り、適当な幅と厚さを有する長方形断面の中空体で内側に、ねじ受け用の小円溝17を外面の中央部に形成された一対の補強リブ18と補強リブ18が離隔して存在し、左側面の上側及び下側には、挿着部19と挿着部19が存在し、右側面の上側と下側及び中間には、受部20と受部20及び先下りに傾斜する導水片21が存在するアルミニウム材の押出成形で形成した長尺材を必要な長さに切断して形成したものであり、上記挿着部19、挿着部19は、先端に立上片19a及び立上片19aを有して、上側の挿着部19は図12及び図13に示すシール部材22の支持部23を形成し、下側の挿着部19は漏水を集める樋24を形成するようにしてあり、特に下側の挿着部19は対応する受部20への嵌合が円滑に行われるように角部に面取19bを施してある。
【0030】
上記中間用の中空の庇板3は、接合して庇体4を形成した際、左端に位置するものは図15に示す通り、右側面に受部20、受部20が、右端に位置するものは図16に示す通り、左側面に挿着部19、挿着部19が形成され、左端用の庇板3aは左側面が平面であり、右端用の庇板3bは右側面が平面である。
【0031】
なお、中間用の庇板3、左端用の庇板3a、右端用の庇板3bは、庇板3aに付いて示す通り、裏面には図17(a)に示す通りの低い凹凸条25か、図17(b)に示す通りの補強リブ26を長手方向に配置して意匠価値を高めさせ、建物躯体1に取り付ける基端部には、図4に示す第1ボルト27を挿し通す孔28を図3〜図7に示す通り上下の方向にあけられている。
【0032】
上記庇板3、庇板3a、庇板3bの基端部の上側へ載置するL形固定具29は、図5〜図6に示される通り、例えば庇板3の基端部に重ねる重合部29aと、その後端に立上がる立上片29bとでL形をなして、重合部29aの先端には後述の水切カバー材の先端を引っ掛ける為の引掛部30を有するように形成されて、上記重合部29aには、庇板2の基端部にあけられた孔28に合わせて、頭27aを係止溝10に係合させた第一ボルト27を通す長孔31を前後方向に長くあけられ、立上片29bには、頭32aを係止溝7に係合させた第2ボルト32を通す孔33をあけられるため、図5のように長孔31を第1ボルト27が通り、孔33を第2ボルト32が通るようにL形固定具29がセットされたら、図6に示す通り第1ボルト27には第1ナット34を、第2ボルト32には第2ナット35を仮締めして、隣接する庇板3との寄せ付けによる接合を行い、接合後には両ナット34、35を本締めして庇板3が取付部材2へ固定されるようにする。
【0033】
上記水切りカバー材5は、図7に示す通り、取付部材2の上部からL形固定具29の前部まで斜めに延び出す斜片部5aが、上端の後側に段落部5bを形成され、下端の後側に段落部5cを形成されて、段落部5bと段落部5cの角部にはそれぞれ図8に示すねじ41を締め込む小円溝37、小円溝37が形成されるようにアルミニウム材の押出成形で形成した長尺材を必要な長さに切断して形成したものであり、一方の段落部5bの横片5dは取付部材2の支持片9へ重ね、他方の段落部5cの横片5eは、L形固定具29に形成された引掛部30に係合させて水切りカバー材5の下端を係止させる。
【0034】
両端が開放している上記水切りカバー材5と取付部材2へ、図8に示す通り開放に形状を合わせた蓋板40を当てて、この蓋板40に取付部材2の横片2bに形成された小円溝13、小円溝13と水切りカバー材5に形成された小円溝37、小円溝37に位置合わせして孔39、39、39、39をあけ、これらの孔からねじ41を小円溝37に締め込んで、図9に示す通り取付部材2及び水切りカバー材5へ取り付ける。
【0035】
上記蓋板40の取り付け後に、水切りカバー材5の段落部5b、段落部5cで図8に示す通り形成される充填溝42と充填溝43には、図9に示す通りコーキング材44を充填して、庇体4の基端部と建物躯体1との隙間及び水切りカバー材5と庇体4との隙間を封塞させて漏水が防止されるようにする。
【0036】
上記の通り基端部に水切りカバー材5が取り付けられた庇体4は、先端が開口するから、この部分に化粧カバー材6の取付材45を取り付ける。この取付材45は前面の上部に化粧カバー材6の支持片45aが張り出し、下部に先下がりに傾く導水片45bが張り出すように形成されていて、庇板3の補強リブ18に形成された小円溝17に合う位置にあく孔46から小円溝17にねじ47を締め込んで、取付材45を庇体4に固定する。
【0037】
上記取付材45が庇体4に取り付けられたら、この取付材45に化粧カバー材6を取り付けて庇体4の先端を飾る。この化粧カバー材6は、雨樋を兼ねさせる場合は、図10に示す通り、上方に開口するコ字形の主体6aの前壁の上部と下部に飾片6bと飾片6bが突出し、後壁の上部には取付材45の支持片45aに乗る取付片6cが突出し、下部には庇板3等の先端下部に臨む樋部6dが形成され、主体6aの前壁の上部と後壁の下部に図11に示すねじ57を締め込む小円溝49、小円溝49が形成されるようにアルミニウム材の押出成形で形成した長尺材を必要な長さに切断して形成するものであって、図10に示す通り取付片6cにあけた孔50からねじ51を支持片45aにあけたねじ孔52に締め込めば、庇体4の先端に取り付けられるから、両端の開口部に主体6aに対応する排水口53と樋部6dに対応する排水口54を有する蓋板55を図11の通り当てて、上記小円溝49、小円溝49の位置にあく孔56から小円溝49、小円溝49にねじ57を締め込んで蓋板55を化粧カバー材6に取り付ける。
【0038】
上記化粧カバー材6は、これの形態によって庇体4の意匠性が左右されるので、意匠性を主眼として樋を兼ねさせない場合は、例えば、図18に示す三角形、図19に示す丸形、図20に示す角形、その他の形状が適用されるものであって、図18に示す三角形の場合は、主体6fが斜面を前方に向けた中空の三角形をなし、先端部の下側に垂下片6gを有して、後壁の上部には取付材45の支持片45aに重ねる取付片6hを有し、下部には庇体4の先端下部まで臨む樋部6iを有し、更に、主体6f内部の上隅と前下隅及び縦壁の後側には、小円溝58、小円溝58、小円溝58が形成され、両端には上記樋部6iに対応する位置に排水口59を有する蓋板60が取り付けられる。
【0039】
図19に示す丸形の場合は、三角形の前角側を丸く湾曲させた主体6Jの、先端下部に垂下片6kを有し、縦壁の上部に取付材45の支持片45aに乗る取付片6lを有し、下部に庇体4の先端下部まで臨む樋部6mを有して、主体6Jの内側の前部と上隅及び縦壁の後面の3箇所に小円溝61、小円溝61、小円溝61が形成され、両端には上記樋部6mに対応する位置に排水口62を有する蓋板63が取り付けられる。
【0040】
図20に示す角形の化粧カバー材6の場合は、コ字形をなす主体6nの上側の横壁が取付材45の支持片45aに乗る取付片6oとなり、下側の横壁が庇体4の先端下側に臨む樋部6pとなって、主体6nの後側に離隔させて2つの小円溝64、小円溝64が形成され、両端には上記樋部6pに対応する位置に排水口65を有する蓋板66が取り付けられる。
【0041】
上記三角形、丸形、角形の化粧カバー材6の取り付けは、図10及び図11に示した樋を兼ねる化粧カバー材6と同様に行われるもので、これら3タイプに関する取り付けの説明は省略する。
【0042】
本発明の取付構造で建物用庇Aを構成するには、建物躯体1の庇体4を取付ける位置に図4に示す通り、取付部材2の縦片2aを建物躯体1に添えて孔15に通したアンカーボルト14等で建物躯体1に固定する。そして、取付部材2の縦片2aの前側に形成される係止溝7と、横片2bの上側に形成される係止溝10とに、図4に示す通り第1ボルト27と第2ボルト32を、頭27a及び頭32aを係止溝10と係止溝7に係合させて、図3に示すように配置する。そして、第1ボルト27の例えば左端のものに、左端の庇板3aの基端部にあけた孔28を通して、基端部を横片2bに支持させ、基端部の上側にL形固定具29の重合部29aにあけた長孔31に第1ボルト27を通すことで乗せて、このL形固定具29を図5に示す通り、第2ボルト32に向かって移動させると、立上片29bにあけた孔33を第2ボルト32が通るので、この状態で第1ボルト27と第2ボルト32に第1ナット34と第2ナット35を仮締めして置いて、庇板3aの位置を決め、第1ナット34と第2ナット35を本締めすれば、左端の庇板3aが取付部材2の縦片2aと横片2bに固定される。そこで、次の第1ボルト27に孔28を通して中間用の庇板3の基端部を支持させ、この基端部の上にL形固定具29の重合部29aにあけた長孔31に第1ボルト27を通すことで乗せて、このL形固定具29を後側に移動させて、立上片29bにあけられた孔33から第2ボルト32を出して、この第2ボルト32と第1ボルト27に第2ナット35と第1ナット34を仮締めして、庇板3を左端用の庇板3aに寄せ付ければ、庇板3aの側面に形成された受部20、受部20に、庇板3の側面に形成された挿着部19、挿着部19が図13に示す通り嵌合されて、支持部23に事前にシール部材22を収容して置けば、このシール部材22により挿着部19と受部20との隙間が封塞される。しかも、庇板3の庇板3aへの寄せ付けは、第1ボルト27の頭27aが係止溝10に、第2ボルト32の頭32aが係止溝7に係合していて、係止溝7と係止溝10で直線誘導されるから、上記操作を繰り返して必要数の庇板3a、庇板3、庇板3bの接合を行えば、庇板が水密を保持して段違いなく一線状に接合された庇体4が形成される。なお、支持部23にシール部材22を収容せず、庇板材同士の接合だけでも良い。
【0043】
上記の通り庇体4が形成されたら、水切りカバー材5を、図7に示す通り上側に設けた段落部5bの横片5dが取付部材2の縦片2aの上端に設けられた支持片9に重なり、先端側に設けた段落部5cの横片5eがL形固定具29の重合部29aに設けた引掛部30へ係合するように置いて、横片5dをねじ38で支持片9に締め付ければ、庇体4の基端部の上側は水切りカバー材5の主部5aで覆われる。そこで、取付部材2と水切りカバー材5の両端部に図8に示す通り蓋板40を当て、この蓋板40を取付部材2と水切りカバー材5にねじ41の締め付けで取り付けて、水切りカバー材5の上部と下部に生じたコーキング44の充填溝42と充填溝43に、図9に示す通りコーキング44を充填して、水切りカバー材5の基端側と建物躯体1の隙間及び水切りカバー材5の先端側と庇体4との隙間の封塞を行わせた後、庇体4の先端に取付材45を庇板3の小円溝17へねじ47で締め付けて取り付け、この取付材45の支持片45aに化粧カバー材6の取付片6cを重ねてねじ51で支持片45aに締め付ければ、庇体4の基端部が水切りカバー材6で止水され、先端側が化粧カバー材6で装飾された建物用庇Aを簡単に構成されるものである。
【0044】
図21は、庇板3が建物躯体1からの張出しが大きい為、吊りアーム67で建物躯体1へ吊る事で安定された建物用庇Aを示す。この建物用庇Aの構成は上記と同様であるので、以下に吊りアーム67と該吊りアーム67を庇体4へ取付ける構造について説明する。
【0045】
上記吊りアーム67は、図21に示す通り円筒で形成されて、基端部に取付用の孔68を横方向にあけられ、先端部の内側にナット69を固定されて、このナット69には、一方に左ねじ70aを、他方に右ねじ70bを形成された調整ボルト70の例えば左ねじ70aが螺合され、調整ボルト70の右ねじ70bは、庇体4の先端部の上側に取り付けられた連結駒71に固定されるナット72に螺合される。従って、上記調整ボルト70を左ねじ70aと右ねじ70bでナット69とナット72の引き寄せが行われる方向に回転させると、連結駒71が吊りアーム67側に移動して庇体4の先端部を引き上げ、先垂れを生じない状態に保つ作用を行う。なお、上記調整ボルト70の左ねじ70aと右ねじ70bには、調整時は緩めて調整ボルト70の回転を自在とし、調整後は締めて調整ボルト70の回転を制止するロックナット73とロックナット74が螺合される。
【0046】
上記吊りアーム67の基端部を図21に示す取り通り建物躯体1に取り付ける取付具75は、図22に示す通り縦の基片75aの中央部の両側から前方に一対の支持片75b、支持片75bを突出させたもので、上記基片75aは上部と下部にあけた孔76、孔76に通したアンカーボルト77、アンカーボルト77で建物躯体1に取り付けられ、上記一対の支持片75b、支持片75bの間には、吊りアーム67の基端部を挟ませて、支持片75b、支持片75bの先端側にあけた孔78、孔78と、吊りアーム67の基端部にあけた孔68を合わせて取付軸79を通すことで、吊りアーム67の基端部を上下方向の回動が可能となるように建物躯体1へ取り付ける。
【0047】
上記連結駒71を図21に示す通り庇板3に取り付ける取付具80は、図23に示す通り、横の基片80aの中央部の両側から上方に一対の支持片80b、支持片80bを突出させたもので、上記基片80aを前部と後部にあけた孔81、孔81に通したボルト82、ボルト82を、庇板3内に収容した後記受部材に締め込むことで庇板3に取り付け、上記一対の支持片80b、支持片80bの間には、連結駒71を挟んで、支持片80b、支持片80bの先端側にあけた孔83、孔83と連結駒71にあけた孔84に取付軸85を通すことで、連結駒71を回動可能に支持させる。
【0048】
上記取付具80に対応させて庇板3内に収容する受部材86は、庇板3内の一対の補強リブ18、補強リブ18の間にある空間に収容するもので、図24に示す通り、一対の側板86a、側板86aを離隔させた一対のリブ86b、リブ86bで接合して、上記リブ86b、リブ86bの外側には、長ナット87、長ナット87を空転させない形状の収容部86c、収容部86cを形成されている。そして、これら収容部86c、収容部86cには長ナット87、長ナット87を収容し、上記リブ86b、リブ86bの外面の中央部にはねじ受け用の小円溝88、小円溝88を形成して、この受部材86を、庇板3の空間に挿入して、庇板3の上面へ図21の円内に示す通りあけた孔89、孔89に長ナット87、長ナット87が合い、孔90、孔90に小円溝88、小円溝88が合った位置で止め、孔90、孔90から小円溝88、小円溝88にねじ91、ねじ91を締め込んで受部材86を庇板3に止めて、上記取付具80の孔81、孔81に通したボルト82、ボルト82による庇板3への強固な取付が簡単にできるようにしてある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
中空の庇材の所要数を簡単に接合して、コストアップなく水密性があり、強固な建物用庇体を構成するのに利用できる。
【符号の説明】
【0050】
A 建物用庇
1 建物躯体
2 取付部材
2a 縦片
2b 横片
3 庇板
4 庇体
5 水切りカバー材
7 係止溝
10 係止溝
19、19 挿着部
20、20 受部
27 第1ボルト
27a 第1ボルトの頭
29 L形固定具
32 第2ボルト
32a 第2ボルトの頭
34 第1ナット
35 第2ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に取り付けた取付部材に中空の庇板を継手で接合しながら取り付けて庇体を構成させる建物用庇の取付構造であって、
上記取付部材は、建物躯体に取り付ける縦片と庇体を支持する横片に、ボルトの頭を移動自在に係合させる長手方向の係止溝を形成され、
上記中空の庇板は、相互の対応側面に接合用の受部と挿着部を、基端部の上側には後部に立上片を有するL形固定具を重ねられ、
該庇板の基端部とこれに重ねたL形固定具は、下から上に第1ボルトを通され、上記L形固定具の立上片は、後から前に第2ボルトを通されて、
上記第1ボルトは、頭を上記横片に形成される係止溝に係合され、第2ボルトは頭を上記縦片に形成される係止溝に係合されて、第1ナットと第2ナットの仮締め時は、両ボルトで庇板の直線移動を案内して、受部と挿着部の嵌合による庇板の接合を行わせ、第1ナットと第2ナットを本締めすると、接合された庇板が固定されるようにした
ことを特徴とする建物用庇の取付構造。
【請求項2】
上記第1ボルトと第2ボルトが、取付部材の横片に形成された係止溝と、縦片に形成された係止溝に、頭を係合させて必要本数を所定の間隔で支持されて、これらボルトに一方から他方にと順次に庇板とL形固定具が取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の建物用庇の取付構造。
【請求項3】
上記庇板の基端部に重ねるL形固定具の第1ボルトを通す孔は、前後方向の長孔に形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物用庇の取付構造。
【請求項4】
上記取付部材の縦片に孔と係止溝を設けてある
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の建物用庇の取付構造。
【請求項5】
上記中空の庇板に形成される挿着部の下側のものが樋形をなし、対応する受部の間には上記挿着部に漏水を導く導水片が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の建物用庇の取付構造。
【請求項6】
上記水切りカバー材の基端部と建物躯体の隙間、及び先端部と庇体との隙間が充填溝へのコーキング材の充填で封塞されている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の建物用庇の取付構造。
【請求項7】
上記庇体の先端部に取り付けられる化粧カバー材が、上方に開口する樋形に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の建物用庇の取付構造。
【請求項8】
上記化粧カバー材は、後部に漏水を集めて排出する樋部を形成されている
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の建物用庇の取付構造。
【請求項9】
上記庇体の張出しが大きくて吊りアームによる支持を必要とする場合、吊りアームを取り付けられる中空の庇材は、取付部に対応する空間内に受部材を挿入し、この受部材に基端側を建物躯体に取り付たけた吊りアームの先端側に設けられる取付具をねじ等で止着してある
ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の建物用庇の取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2011−111755(P2011−111755A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267382(P2009−267382)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)
【Fターム(参考)】