説明

建物

【課題】部屋の裏側の通気経路において空気を浄化するように多孔質材料を該通気経路に設けてなり、且つ該通気経路の空気流通がスムーズである建物を提供する。
【解決手段】外気はベントキャップ1、ダクト2を介して、床下3に配置された機能チャンバ4に導入される。空気はエアフィルタ6で除塵された後、分岐用チャンバ7及びそれから分岐したダクト8を介して床下3へ流出する。1階の部屋10の壁裏の通気経路11、2階の部屋20の壁裏の通気経路21、2階床下スペース22を通って小屋裏スペース24にまで上昇する。ダクト25、合流用チャンバ26及びダクト27を介して前記機能チャンバ4へ戻る。パネル40や、前記部屋10,20の壁裏、床裏、天井裏及び床下コンクリート9に、酸化チタンなどの光触媒を表面に担持した多孔質板材50が取り付けられている。これらの多孔質板材50に向って紫外線を照射するための紫外線光源として、UVLED51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に係り、特に部屋の壁や天井、床などの裏側に通気経路が設けられている建物に関する。
【背景技術】
【0002】
部屋の壁裏に設けられた通気経路内に粒塊状の調湿材を充填し、部屋内の空気をこの通気経路を通して循環させて室内の空気環境を改善することが特開2001−279833号に記載されている。この場合、通気経路に粒塊を充填しているので、通気経路の流通抵抗が大きい。
【0003】
特開2001−271430号には、住宅の床下に、酸化チタン展着ゼオライトを敷きつめ、この酸化チタン展着ゼオライトに紫外線を照射し、酸化チタンの光触媒作用により床下の防カビ、悪臭除去、防汚を図ることが記載されている。
【0004】
特開2000−273972号には、光触媒を保持した調湿建材が記載されている。
【特許文献1】特開2001−279833号
【特許文献2】特開2001−271430号
【特許文献3】特開2000−273972号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、部屋の裏側の通気経路において空気を浄化するように多孔質材料を該通気経路に設けてなり、且つ該通気経路の空気流通がスムーズである建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)の建物は、部屋を区画する建築板材の裏側に通気経路が設けられている建物において、該通気経路を形成する壁面に多孔質板材を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の建物は、請求項1において、該多孔質板材は光触媒を保持しており、該多孔質板材に紫外線を照射する紫外線光源が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の建物は、請求項1又は2において、該多孔質板材は、比表面積が10m/g以上であり、半径300Å以上の細孔の容積が0.1cm/g以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建物では、部屋の壁、天井、床下などの裏側に設けた通気経路の壁面に多孔質板材を設けており、この通気経路を流通する空気が調湿あるいはVOC(揮発性有機化合物)吸着等の処理を受けて浄化される。本発明では、多孔質板材を該通気経路に臨むように設けているので、この通気経路の空気流通抵抗が小さい。
【0010】
請求項2の建物では、防カビ、悪臭除去、防汚等の光触媒作用が奏される。なお、多孔質板材に付着した有機物が光触媒作用で分解されるため、調湿あるいはVOC吸着等の多孔質体の作用が継続して高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る建物としての住宅を示す縦断面図である。
【0012】
外気はベントキャップ1、ダクト2を介して、床下3に配置された機能チャンバ4に導入される。このチャンバ4内には熱交換器5とエアフィルタ6とファン(図示略)とが設置されている。熱交換器5へは、冬季などに、建物外のボイラ5Aから温水が供給され、空気が加温可能とされている。
【0013】
機能チャンバ4内のエアフィルタ6は、その表面に光触媒を担持している。機能チャンバ4内にはこのエアフィルタ6に向け紫外線を照射する紫外線光源(LED、ランプ、ELなど)が設けられていて、これによりフィルタ6への吸着物を分解することができる。機能チャンバ4には、内部の機器の点検などを行うための蓋が設けられていて、この蓋が開いたときには紫外線光源が消灯するように制御されている。
【0014】
必要に応じ該熱交換器5で加温された空気はエアフィルタ6で除塵された後、分岐用チャンバ7及びそれから分岐したダクト8を介して床下3へ流出する。符号9は床下コンクリートを示す。
【0015】
床下3へ流出した空気は、1階の部屋10の壁裏の通気経路11と、2階の部屋20の壁裏の通気経路21を通って小屋裏スペース24にまで上昇する。なお、一部の空気は2階の床下スペース22を流れる。
【0016】
小屋裏スペース24内の空気は、集気用ダクト25、合流用チャンバ26及びダクト27を介して前記機能チャンバ4へ戻る。このダクト27からの戻り空気と、ダクト2からの新しい空気とが合流し、エアフィルタ6を通って上記の通り循環する。
【0017】
1階及び2階の壁裏の通気経路11,21内に流入した空気の一部は、各部屋10,20内に導入され、その後、排気管31、内部にファンを備えた集合用チャンバ32、ダクト33及びフード34を介して建物外部に放出される。トイレなど一部の部屋10,20にあっては、換気用ダクト35や室内に設けた換気扇(図示略)を介して室内の空気が建物外へ排出される。
【0018】
前記通気経路11,21、小屋裏24には仕切りパネル40が配設され、住宅外壁や屋根との間に通気スペース41が形成されている。この通気スペース41へは、自然通風又は強制通風により、下部の吸気口から空気が吸い込まれ、棟排気口43から排気が行われる。
【0019】
このパネル40や、前記部屋10,20の壁裏、床裏、天井裏及び床下コンクリート9に、酸化チタンなどの光触媒を表面に担持した多孔質板材50が取り付けられている。これらの多孔質板材50に向って紫外線を照射するための紫外線光源として、UVLED51が設けられている。
【0020】
多孔質板材50は、調湿や、VOCや臭気、ダストの吸着除去を行うと共に、UVLED51から紫外線が照射されることにより、光触媒作用を奏し、防カビ、有機物分解除去等が行われる。また、この有機物分解作用により、多孔質板材50の調湿作用や吸着機能が継続して高く維持される。このため、循環空気が常に新鮮なものとなる。なお、各通気経路11,21の流路断面積が広いので、通気抵抗が小さい。
【0021】
多孔質板材50としては、比表面積が10m/g以上であり、半径300Å以上の細孔の容積が0.1cc/g以上、好ましくは、比表面積が20m/g以上であり、半径300Å以上の細孔の容積が0.2cc/g以上の無機質多孔板が好適である。
【0022】
なお、比表面積が10m/g未満では、十分な吸放湿量を得ることができず、また、半径300Å以上の細孔の容積が0.1cc/g未満では、高い吸放湿速度を達成することはできない。この半径300Å以上の細孔の半径は500〜10000Åであることが好ましい。
【0023】
次に本発明で用いる多孔質板材の好適な一例について説明する。この多孔質板材としては例えば次のようなものが挙げられる。
(1) 施釉焼成体
(2) 無釉焼成体
(3) 非焼成体
【0024】
まず、(1)施釉焼成体について説明する。
この施釉焼成体は、例えば、鹿沼土、大沢土及び膠質土、水土、味噌土と呼ばれる各地の火山軽石層や珪藻土、酸性白土、活性白土、ゼオライト、ハロイサイト、セピオライトなどの調湿性原料に木節粘土、蛙目粘土等の粘土や珪石、陶石、蝋石、長石その他のガラス質成分等を下記の配合割合及び化学組成で混合し、押し出し成形又はプレス成形し、得られた成形体に施釉した後焼成することにより、或いは、成形体を素焼きした後施釉し、その後更に焼成することにより製造することができる。
〈配合割合(重量部)〉
鹿沼土等の調湿性原料:100
粘土:100〜1000
ガラス質成分:0〜500
【0025】
このように表面を施釉することにより、表面が釉薬によるガラス層で覆われて、吸放湿速度は若干遅くなるが、吸放湿容量には殆ど変わりはなく、調湿建材としての機能が大きく損なわれることはない。
【0026】
このようにして表面に施釉した後も、表面が通気性能を高く維持していることが重要である。そのためには、施釉面積や施釉厚さを制御することが重要であり、素地表面への施釉は、下記A及びBの少なくとも一方の条件を満たすように行うのが好ましい。施釉はスプレー法、幕掛け、プリントなどで良く、方法は問わない。
A 釉薬によって生成するガラス層が、素地の表面を占める面積領域(以下「施釉面積割合」と称す。)が90%以下。
B 釉薬によって生成するガラス層の最大厚み(以下、単に「最大厚み」と称す。)が300μm以下。
【0027】
このようにガラス層を薄くすると素地の全面に施釉した場合でも表面の通気性能を高く維持できる理由は、薄いガラス層を形成した場合には、素地の欠陥や焼成過程で発生するガスなどにより、素地内部にまで貫通した微細なホールがガラス層にまで生じやすいためではないかと考えられる。
【0028】
多孔質板材としての(2)無釉焼成体は、施釉を行わないこと以外は、上記(1)施釉焼成体と同様にして製造される。
【0029】
多孔質板材としての(3)非焼成体としては、ケイカル板又はスレート板を酸処理することにより気孔率を増大させたものが好ましい。
【0030】
ケイカル板としては、市販のケイカル板を用いることができ、また、石灰質原料とケイ酸質原料に必要に応じて補強繊維混和剤を配合した混合原料をプレス成形により成形し、オートクレーブ養生するなどの方法で製造したものを用いても良い。
【0031】
スレート板としても市販のスレート板を用いることができるが、セメントと石綿とを所定の割合で混合し、成形、養生するなどの方法で製造したものを用いても良い。
【0032】
上記実施の形態ではUVLEDを用いているが、紫外線ランプや有機ELなどの紫外線光源であってもよい。
【0033】
図示の住宅は本発明の一例であり、本発明は図示のものに限定されるものではない。上記多孔質板材50は、図示以外の箇所、例えばダクト内などにも設けられてもよい。
【0034】
なお、機能チャンバ4内にカビセンサ及び/又は有機物(VOCなど)センサを設け、その検知結果に基づいてUVLED51などの紫外線光源からの光量の調節を行うようにしてもよい。
【0035】
本発明では、各ダクトの入口にマイナスイオン発生装置を取り付け、ダクトを通過する空気を除菌したり、また、ダクト内側表面に菌が付着するのを防ぐようにしてもよい。
【0036】
サプライ側ダクトについては、サプライ側分岐ダクトの入口ではなく、サプライ側分岐チャンバにマイナスイオン発生装置を搭載してもよい。
【0037】
リターンダクトについては、リターンダクトの入口ではなくサプライ側分岐チャンバにマイナスイオン発生装置を搭載してもよい。
【0038】
本発明では、床下→壁の中→天井裏→再び床下、と繋がる空気循環経路に流れる空気にマイナスイオンを付加させるようにしてもよい。これにより、循環する空気中に浮遊するカビ菌や雑菌を退治し、カビ菌や雑菌が建物に付着するのを防ぐことができ、建物の耐久性をより高くすることができる。
【0039】
前記フード1,34や熱交換器5の空気と接する面に光触媒をコーティング等により担持させ、光ファイバやUVLED、有機EL、紫外線ランプなどによって紫外線を照射させ、熱交換器5の内面の防カビ、防汚等を図ってもよい。
【0040】
空調システムで、空気の経路となる部材の内部表面に光触媒を保持させ、ダクト内部に紫外線ランプを設置することにより、空調用部材内部表面にカビ菌や雑菌が付着し、繁殖するのを防ぐことができ、アレルギーやシックハウス症候群などを予防することができる。
【0041】
第2図ないし第5図はそれぞれ光触媒コーティングを有したベントキャップ又はフードの一例を示す斜視図である。第2図は平型ガラリ付きベントキャップ60を示すものであり、60aはガラリを示す。
【0042】
第3図は防虫網61aを有したベントキャップを示す。
【0043】
第4図はガラリ63aを有した丸型フード63を示す。ガラリ63aの代わりに防虫網が設けられてもよい。
【0044】
第5図は、下向きの開口部64aにガラリ又は防虫網を設けた深型フード64を示す。
【0045】
第2図〜第5図のドットを付した箇所に光触媒のコーティングが施されているが、さらに他の部位にまで光触媒コーティングが設けられてもよい。また、図示は省略するが、この光触媒に紫外線を照射するようにUVLEDやELなどの紫外線光源が設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態に係る建物としての住宅を示す縦断面図である。
【図2】ベントキャップの斜視図である。
【図3】別のベントキャップの斜視図である。
【図4】フードの斜視図である。
【図5】別のフードの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10,20 部屋
11,21 通気経路
24 小屋裏
50 多孔質板材
51 UVLED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋を区画する建築板材の裏側に通気経路が設けられている建物において、
該通気経路を形成する壁面に多孔質板材を設けたことを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1において、該多孔質板材は光触媒を保持しており、
該多孔質板材に紫外線を照射する紫外線光源が設けられていることを特徴とする建物。
【請求項3】
請求項1又は2において、該多孔質板材は、比表面積が10m/g以上であり、半径300Å以上の細孔の容積が0.1cm/g以上であることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−291663(P2006−291663A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117210(P2005−117210)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】