説明

建物

【課題】空調装置の負荷軽減を図ることができる建物を提供する。
【解決手段】建物10には、玄関11、廊下12、リビング13、機械室14が設けられている。機械室14には空調装置20が設置され、機械室14は玄関ホール(廊下12と玄関11との連続空間)に隣接している。機械室14には、廊下側出入口26を通じて玄関ホールから出入り可能とされており、その廊下側出入口26には引き戸27が設けられている。引き戸27が閉められた状態では、廊下側出入口26を通じた玄関ホールと機械室14との間の通気が遮断される。リビング13は、玄関ホールに対して仕切壁19を隔てて設けられ、機械室14に対して仕切壁25を隔てて隣接している。仕切壁25には、リビング13から機械室14への出入りを可能とするリビング側出入口28が設けられ、その出入口28を通じてリビング13と機械室14との間で通気可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において、共通の空調装置を用いて全館空調を行う全館空調システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の空調システムを有する建物では、空調装置を設置するための機械室(空調機械室)が設けられている場合がある。全館空調システムでは、空調装置が空調空気(すなわち冷気又は暖気)を生成し、その空調空気を空調対象となる各部屋に供給することで、各部屋の冷暖房を行うものとなっている。そして、各部屋に供給された空調空気は機械室に還気として戻り、空調装置はその還気をもととして空調空気を生成するようになっている。
【0003】
この種の空調装置は、定期的にメンテナンス(保守点検)が行われたり、故障時には修理が行われたりする。空調装置のメンテナンスや修理に際しては、例えばメンテナンス業者等から作業者が派遣され、その作業者が機械室に入ってメンテナンス作業等を行うこととなる。そのため、機械室は、作業者が出入りし易いように、建物への出入口となる玄関口から近い場所、例えば玄関ホールの隣りに設けられることが考えられる。この場合、玄関ホールから機械室に出入りするための出入口が設けられる。かかる構成では、空調装置より各部屋に供給された空調空気が玄関ホールに流れ、その後玄関ホールから出入口(例えば出入口に設けられたドアのアンダーカット等)を通じて機械室に還気として戻ることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−229587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、玄関ホールは建物への出入口となる玄関口に通じているため、屋外からの熱の出入りが生じ易い。例えば、ユーザが玄関ドアを開けて建物へ出入りする際には、玄関口を通じて玄関ホールに外気の出入りが生じ、それに伴って熱の出入りが生じうる。したがって、玄関ホールの温度は屋外の温度に依存して高くなったり低くなったりし易く、例えば、夏場においては、屋外の熱の影響により温度が高くなった玄関ホールの空気が機械室に流れ込み、その後空調装置に還気として取り込まれることが想定される。この場合、空調装置は、冷房運転に際し、その温度の高い空気を温度調整(すなわち冷却)して空調空気(冷気)を生成することとなるため、空調装置の負荷増大が懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空調装置の負荷軽減を図ることができる建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物は、空調装置が設置された機械室が玄関ホールに隣接して設けられており、前記空調装置は、前記機械室に流れ込む空気を取り込んで空調空気を生成するとともに、その空調空気を空調対象となる屋内空間に供給して冷暖房を行うものであり、前記機械室は、その周囲が囲い部により囲まれ、玄関側出入口を介して前記玄関ホールからの出入りが可能であり、前記囲い部は、前記玄関側出入口を開閉する玄関側建具を有し、前記玄関側建具は、前記玄関側出入口を閉じた状態で、前記玄関側出入口を通じた前記玄関ホールと前記機械室との間の通気を遮断するものであり、前記玄関ホールに対して仕切壁を隔てて設けられるとともに、前記機械室に前記囲い部を隔てて隣接する隣接屋内空間を備え、前記囲い部には、前記隣接屋内空間を前記機械室と通気可能に連通させた第1通気部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、玄関ホールから機械室に出入りするための玄関側出入口に設けられた玄関側建具を閉めることにより、玄関ホールの空気が玄関側出入口を通じて機械室に流れ込むのを遮断できる。すなわち、屋外からの熱の出入りが多い玄関ホールの空気が機械室に流れ込むのを防止できる。そして、機械室には、囲い部に設けられた第1通気部を通じて隣接屋内空間の空気を取り込むことができる。隣接屋内空間は玄関ホールに対して仕切壁を隔てて設けられており、それ故屋外からの熱の出入りが少ない空間となっている。この熱の出入りの少ない隣接屋内空間からの空気をもとに空調装置による空調空気の生成が行われるため、空調装置の負荷軽減を図ることができる。
【0009】
第2の発明の建物は、第1の発明において、前記隣接屋内空間は居室であり、前記機械室は、居室側出入口を介して前記居室からの出入りが可能であり、前記囲い部は、前記居室側出入口を開閉する居室側建具を有し、前記居室側建具に前記第1通気部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
ところで、一般に機械室は空調装置の設置スペースとして用いられているだけで、その他の用途では利用されることのないスペースとなっている。これは、建物内のスペースの有効利用の観点からすると好ましくないといえる。そこで、機械室を、例えば衣服等の物品を収納する収納スペースとして利用する等、他の用途で用いることが考えられる。ここで、かかる他の用途で機械室を使用することを考えると、居住者等のユーザが居住する場、例えば居室から機械室へ出入りできるようにすることが望ましい。そこで、本発明では、機械室への出入口を玄関ホール側だけでなく、居室側にも設ける構成としている。これにより、居室から機械室へのアクセスがよくなるため、機械室を他の用途で利用する場合には都合がよい。
【0011】
そして、本発明では、さらに、この居室側出入口を開閉する居室側建具に第1通気部を形成している。囲い部における壁部分に第1通気部を設ける場合には、囲い部周辺の意匠性が損なわれるおそれがある。この点、囲い部において居室側建具に第1通気部を形成すれば意匠性が損なわれるのを回避しつつ、上記第1の発明の効果を得ることができる。なお、第1通気部の構成としては、例えば居室側建具にガラリ部を設け、そのガラリ部を第1通気部とすることが考えられる。
【0012】
第3の発明の建物は、第1又は第2の発明において、前記空調装置の作動時において、前記玄関側建具が開いているか否かを検知する開閉検知手段と、前記玄関側建具を開閉駆動する開閉駆動手段と、前記開閉検知手段により前記玄関側建具が開いていることが検知された場合に、前記玄関側建具を閉じるよう前記開閉駆動手段を制御する建具制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、空調装置の作動時すなわち屋内空間の空調を実施している最中に、玄関側建具が開いている場合には、開閉駆動手段により玄関側建具が自動で閉められる。これにより、空調実施時において玄関側出入口を確実に閉鎖でき、その結果玄関ホールから機械室への空気の流れ込みを確実に防止できる。
【0014】
第4の発明の建物は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記囲い部には、前記第1通気部に加え、前記玄関ホールを前記機械室と通気可能に連通させる第2通気部が設けられており、前記第1通気部及び前記第2通気部は、各々通気状態と非通気状態とで切替可能となっていることを特徴とする。
【0015】
例えば夏場においては、外出中に建物内に熱がこもることが考えられ、その場合帰宅して空調装置の運転(冷房運転)を開始した直後等に、玄関ホールの温度よりも隣接屋内空間の温度が高くなっていることがある。この場合、空調装置の負荷軽減の観点からすると、比較的低温である玄関ホールの空気を機械室に取り込むことが望ましい。そこで、本発明では、この点に着目し、第1通気部を通じて隣接屋内空間の空気を機械室に取り込み可能とすることに加え、第2通気部を通じて玄関ホールの空気を機械室に取り込み可能としている。そして、これら各通気部をそれぞれ通気状態と非通気状態とに切替可能としている。これによれば、いずれか一方の通気部を通気状態、他方の通気部を非通気状態とすることにより、機械室への空気の取り込み先を隣接屋内空間及び玄関ホールのいずれかに切り替えることができる。したがって例えば、夏場において玄関ホールの温度よりも隣接屋内空間の温度が高くなっている場合には、比較的低温である玄関ホールの空気を機械室に取り込むことができる。これにより、空調装置の負荷をより一層軽減することができる。
【0016】
第5の発明の建物は、第4の発明において、前記玄関ホールの温度を検知する玄関温検知手段と、前記隣接屋内空間の温度を検知する隣接屋内温検知手段と、前記各検知手段により検知された前記玄関ホール及び前記隣接屋内空間の各温度を比較し、その比較結果に基づいて、前記第1通気部及び前記第2通気部のうちいずれかを前記通気状態とする通気制御手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、玄関ホールの温度と隣接屋内空間の温度とが比較されその比較結果に基づいて、第1通気部及び第2通気部のうちいずれかが通気状態とされる。具体的には、空調装置の冷房運転時においては、玄関ホールの温度が隣接屋内空間の温度よりも低い場合には第2通気部を通気状態とし、玄関ホールの温度が隣接屋内空間の温度以上である場合には第1通気部を通気状態とするよう、通気制御手段による通気制御を行う。これにより、空調装置の冷房運転時には、玄関ホールの空気及び隣接屋内空間の空気のうち、比較的温度の低い空気が機械室に自動的に取り込まれる。また、空調装置の暖房運転時においては、玄関ホールの温度が隣接屋内空間の温度よりも高い場合には第1通気部を通気状態とし、玄関ホールの温度が隣接屋内空間の温度以下である場合には第2通気部を通気状態とするよう、通気制御手段による通気制御を行う。これにより、空調装置の暖房運転時には、玄関ホールの空気及び隣接屋内空間の空気のうち、比較的温度の高い空気が機械室に自動的に取り込まれる。よって、この場合、上記第4の発明の効果を得るにあたって、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】建物の間取りを示す平面図。
【図2】機械室における引き戸周辺の構成を示す縦断面図。
【図3】空調制御処理を示すフローチャート。
【図4】他の実施形態における建物の間取りを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物の間取りを示す平面図である。
【0020】
図1に示すように、建物10には、屋内スペースとして、玄関11と、廊下12と、リビング13と、機械室14とが設けられている。玄関11には玄関出入口16が設けられ、この玄関出入口16を通じて建物10への出入りが可能となっている。玄関出入口16には、同出入口16を開閉する玄関ドア17が設けられている。玄関ドア17は、例えば回動式のドアよりなる。廊下12は玄関11に連続して設けられており、玄関11と廊下12との連続スペースが玄関ホールに相当するものとなっている。
【0021】
リビング13は、仕切壁19を隔てて玄関11及び廊下12と隣接している。仕切壁19には、廊下12とリビング13との間を行き来するための出入口21が設けられており、出入口21にはドア22が設けられている。ドア22は、例えば回動式のドア(開き戸)からなる。ドア22はアンダーカットされており、ドア22の下端部とその下方の床面との間の隙間が通気部(図示略)となっている。なお、リビング13が、隣接屋内空間及び居室に相当する。
【0022】
機械室14(空調機械室)には、空調装置20が設置されている。機械室14は、仕切壁25によって四方を囲まれており、仕切壁25を隔てて廊下12及びリビング13と隣接している。仕切壁25において機械室14を廊下12と仕切る壁部25aには廊下側出入口26が設けられている。この廊下側出入口26を通じて廊下12から機械室14へ出入りすることが可能となっている。廊下側出入口26には、当該出入口26を開閉する引き戸27が設けられている。ここで、引き戸27が玄関側建具に相当するものとなっている。引き戸27が閉められた状態では廊下側出入口26の開口全域が閉鎖されるようになっている。この場合(詳細には、さらに後述する通気開口部31を閉鎖した場合)、廊下12と機械室14との間で廊下側出入口26を通じた通気が遮断される。また、引き戸27には、開閉駆動手段としての引き戸駆動部45が設けられている。引き戸駆動部45は、引き戸27の開閉駆動を行うものであり、例えば電動モータ等の電動式の駆動機構からなる。
【0023】
仕切壁25において機械室14をリビング13と仕切る壁部25bにはリビング側出入口28が設けられている。このリビング側出入口28を通じてリビング13から機械室14への出入りが可能となっている。具体的には、壁部25bは上記の壁部25aと対向して設けられており、それ故リビング側出入口28は廊下側出入口26と対向する位置関係で配置されている。リビング側出入口28には、当該出入口28を開閉する引き戸29が設けられている。ここで、引き戸29が居室側建具に相当するものとなっている。引き戸29が閉められた状態ではリビング側出入口28の開口全域が閉鎖されるようになっている。この場合(詳細には、さらに後述する通気開口部33を閉鎖した場合)、リビング13と機械室14との間でリビング側出入口28を通じた通気が遮断される。
【0024】
なお、仕切壁25及び各引き戸27,29によって囲い部が構成されている。
【0025】
図2は、機械室14における引き戸27,29周辺の構成を示す縦断面図である。なお、図2では機械室14に設置された空調装置20等の図示を省略している。図2に示すように、廊下12側の引き戸27には、廊下12と機械室14とを連通する通気開口部31が設けられている。通気開口部31には、横方向に長尺状をなす複数のスラット32が上下に並べて設けられている。これら各スラット32はそれぞれ回動可能に軸支されており、回動することにより通気開口部31を開放する開状態と、通気開口部31を閉鎖する閉状態とに移行可能とされている。また、引き戸27には、各スラット32を回動駆動するスラット駆動部36が設けられている。スラット駆動部36は、例えば周知の電動式モータからなる。
【0026】
リビング13側の引き戸29には、リビング13と機械室14とを連通する通気開口部33が設けられている。通気開口部33には、上記通気開口部31と同様に、複数のスラット34が上下に並べて設けられ、それら各スラット34が回動可能に軸支されている。そして、各スラット34が回動することにより、通気開口部33を開放する開状態と、通気開口部33を閉鎖する閉状態とに移行可能とされている。また、引き戸29には、各スラット34を回動駆動するスラット駆動部37が設けられ、同駆動部37は例えば周知の電動式モータからなる。
【0027】
図1の説明に戻り、本実施形態の建物10には、機械室14に設置された空調装置20を有して構成される全館空調システムが導入されている。この全館空調システムでは、建物10内における空調対象となる複数の部屋に対して、共通の空調装置20より通気ダクト23(図1において波線で示す)を通じて空調空気(冷気又は暖気)を供給することで、それら各部屋の冷暖房を行うこととしている。本実施形態では、空調対象の部屋として例えばリビング13を含んでおり、通気ダクト23の一部がリビング13に設置された吹出グリル24に接続されている。この場合、吹出グリル24には通気ダクト23を介して空調装置20から空調空気が供給され、その供給された空調空気が吹出グリル24よりリビング13に吹き出される。
【0028】
空調装置20は、少なくとも冷房及び暖房機能を有する室内機として構成されている。空調装置20は、機械室14に流れ込む空気を還気RAとして取り込んで温度調整を行うことにより空調空気(冷気又は暖気)を生成し、その生成した空調空気を各部屋に供給する。
【0029】
また、機械室14は、空調装置20の設置スペースとして用いられている他、衣服を収納する収納スペースとして用いられている。これにより、機械室14のスペースについて有効利用が図られている。具体的には、機械室14には、衣服を掛けるためのハンガーラック39が設けられており、ハンガーラック39には例えば居住者のコート等の上着(アウター)が掛けられている。したがって、居住者が外出する際には、玄関11近くの機械室14より上着を取り出すことができ都合がよい。
【0030】
なお、機械室14を、上着以外の衣類を収納するスペースとして用いたり、生活用品等衣類以外の物品を収納するスペースとして用いたりしてもよい。また、機械室14に物品を収納する収納部としてクローゼットや収納棚等を設置してもよい。
【0031】
続いて、空調システムの電気的構成について説明する。
【0032】
廊下12には、玄関温検知手段としての廊下温センサ41が設けられている。廊下温センサ41は、廊下12の温度を検知するセンサであり、例えば廊下12の壁面に設けられている。なお、廊下温センサ41に代えて、玄関11の温度を検知する温度センサを玄関温検知手段として設けてもよい。リビング13には、居室温検知手段としてのリビング温センサ42が設けられている。リビング温センサ42は、リビング13の温度を検知するセンサであり、例えばリビング13の壁面に設けられている。また、廊下12側の引き戸27の近くには、開閉検知手段としての開閉検知センサ44が設けられている。開閉検知センサ44は、引き戸27が開いているか否か(開閉状態)を検知するセンサであり、例えば壁部25aに設けられている。
【0033】
建物10には、建具制御手段及び通気制御手段としてのコントローラ40が設けられている。コントローラ40は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを主体に構成されており、例えばリビング13の内壁面に設けられている。コントローラ40には、空調装置20からの空調実施情報が逐次入力される。具体的には、空調実施情報として、空調装置20が作動中であるか否かに関する作動情報や、空調装置20が冷房及び暖房のいずれの運転を行っているかに関する冷暖房情報等がコントローラ40に入力される。また、コントローラ40には、廊下温センサ41、リビング温センサ42及び開閉検知センサ44から逐次検知結果が入力される。コントローラ40は、空調実施情報及び各温度センサ41,42からの検知結果に基づいて各スラット駆動部36,37に駆動信号を出力するとともに、空調実施情報及び開閉検知センサ44からの検知結果に基づいて引き戸駆動部45に駆動信号を出力する。
【0034】
続いて、コントローラ40により実施される空調制御の内容について図3のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は所定の周期で繰り返し実行される。
【0035】
図3において、まずステップS11では、空調実施情報(作動情報)に基づいて空調装置20が作動しているか否かを判定する。空調装置20が作動していない場合には本処理を終了する。空調装置20が作動している場合にはステップS12に進む。
【0036】
ステップS12では、開閉検知センサ44からの検知結果に基づいて廊下12側の引き戸27が開いているか否かを判定する。引き戸27が閉じている場合にはステップS14に進む。引き戸27が開いている場合にはステップS13に進み、引き戸駆動部45に閉信号を出力して引き戸27を閉じる。これにより、空調装置20の作動時、すなわち建物10内における空調実施時において、引き戸27が開けられたとしても、引き戸27が自動で閉められるため、引き戸27の閉状態を確実に維持できる。
【0037】
ステップS14では、空調実施情報(冷暖房情報)に基づいて空調装置20が冷房運転及び暖房運転のいずれの運転を実施しているかを判定する。空調装置20が冷房運転中である場合には、ステップS15に進み、廊下温サンサ41及びリビング温センサ42からの検知結果に基づいて、リビング13の温度よりも廊下12の温度が低くなっているか否かを判定する。廊下12の温度がリビング13の温度以上となっている場合にはステップS16に進む。
【0038】
ステップS16では、リビング13側のスラット駆動部37に開信号を出力し、各スラット34を開状態とする。これにより、リビング13側の通気開口部33が開放される。続くステップS17では、廊下12側のスラット駆動部36に閉信号を出力し、各スラット32を閉状態とする。これにより、廊下12側の通気開口部31が閉鎖される。この場合、比較的温度の高い廊下12の空気(詳細にはリビング13の温度と同じ温度である廊下12の空気も含む)が機械室14に流れ込むのが防止されるとともに、比較的温度の低いリビング13の空気(詳細には廊下12の温度と同じ温度であるリビング13の空気も含む)が通気開口部33を通じて機械室14に取り込まれる。
【0039】
一方、ステップS16においてリビング13の温度よりも廊下12の温度が低くなっている場合にはステップS18に進む。ステップS18では、廊下12側のスラット駆動部36に開信号を出力し、各スラット32を開状態とする。これにより、廊下12側の通気開口部31が開放される。続くステップS19では、リビング13側のスラット駆動部37に閉信号を出力し、各スラット34を閉状態とする。これにより、リビング13側の通気開口部33が閉鎖される。この場合、比較的温度の高いリビング13の空気が機械室14に流れ込むのが防止されるとともに、比較的温度の低い廊下12の空気が通気開口部31を通じて機械室14に取り込まれる。よって、空調装置20の冷房運転時には、廊下12の空気及びリビング13の空気のうち、温度の低い側の空気が機械室14に取り込まれるようになっている。
【0040】
一方、先のステップS14において空調装置20が暖房運転中である場合には、ステップS20に進み、廊下温サンサ41及びリビング温センサ42からの検知結果に基づいて、リビング13の温度よりも廊下12の温度が高くなっているか否かを判定する。廊下12の温度がリビング13の温度以下となっている場合にはステップS21に進む。
【0041】
ステップS21と続くステップS22とは上述したステップS16及びS17と同様の処理である。すなわち、これらのステップS21,S22を実施することで、リビング13側の通気開口部33が開放されるとともに、廊下12側の通気開口部31が閉鎖される。この場合、比較的温度の低い廊下12の空気(詳細にはリビング13の温度と同じ温度である廊下12の空気も含む)が機械室14に流れ込むのが防止されるとともに、比較的温度の高いリビング13の空気(詳細には廊下12の温度と同じ温度であるリビング13の空気も含む)が通気開口部33を通じて機械室14に取り込まれる。
【0042】
ステップS20においてリビング13の温度よりも廊下12の温度が高くなっている場合にはステップS23に進む。ステップS23と続くステップS24とは上述したステップS18及びS19と同様の処理である。すなわち、これらのステップS23,S24を実施することで、廊下12側の通気開口部31が開放されるとともに、リビング13側の通気開口部33が閉鎖される。この場合、比較的温度の低いリビング13の空気が機械室14に流れ込むのが防止されるとともに、比較的温度の高い廊下12の空気が通気開口部31を通じて機械室14に取り込まれる。よって、空調装置20の暖房運転時には、廊下12の空気及びリビング13の空気のうち、温度の高い側の空気が機械室14に取り込まれるようになっている。
【0043】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
空調装置20が設置された機械室14を玄関ホール(すなわち玄関11及び廊下12との連続空間)に隣接して設け、機械室14には廊下側出入口26を通じて廊下12からの出入りを可能とし、機械室14の周囲を囲む囲い部の一部として廊下側出入口26を開閉する引き戸27を設けた。そして、この引き戸27を、当該引き戸27により廊下側出入口26を閉じた状態で廊下側出入口26を通じた廊下12と機械室14との間の通気を遮断するものとした。この場合、屋外からの熱の出入りが多い玄関ホールの空気が機械室14に流れ込むのを防止できる。また、玄関ホールに対して仕切壁19を隔ててリビング13を設け、リビング13を機械室14に仕切壁25を隔てて隣接させるとともに、リビング13を機械室14と通気可能に連通させる第1通気部(具体的には通気開口部33及びスラット34をリビング13側の引き戸29に設けた。この場合、リビング13は屋外からの熱の出入りが少ない空間となっており、かかる空間から機械室14に空気が取り込まれ、その空気をもとに空調装置20による空調空気の生成が行われる。これにより、空調装置20の負荷軽減を図ることができる。
【0045】
リビング13から機械室14へ出入りするためのリビング側出入口28を設け、囲い部の一部として、リビング側出入口28を開閉する引き戸29を設けた。これにより、リビング13から機械室14へのアクセスがよくなるため、機械室14において衣服を収納したり整理したりする場合には都合がよい。そして、リビング13側の引き戸29に第1通気部(通気開口部33及びスラット34)を設けたため、仕切壁25に第1通気部を設ける場合と比べ、仕切壁25周辺の意匠性が損なわれるのを回避することができる。
【0046】
また、玄関ホールから機械室14へ出入りするための廊下側出入口26と、機械室14からリビング13へ出入りするためのリビング側出入口28とに加え、玄関ホールとリビング13とを仕切る仕切壁19に玄関ホールからリビング13へ出入りするための出入口21を設けた。この場合、玄関ホールからリビング13に至る動線を2通り確保できるため、リビング13に客がいるか否かに応じてリビング13への入り方を変える等の対応が可能となる。
【0047】
空調装置20の作動時において、廊下12側の引き戸27が開いているか否かを検知する開閉検知センサ44と、引き戸27を開閉駆動する引き戸駆動部45とを設け、開閉検知センサ44により引き戸27が開いていることが検知された場合に、引き戸27を閉じるよう引き戸駆動部45を制御した。この場合、空調装置20の作動時に、引き戸27が開けられたとしても引き戸27が自動で閉められるため、空調実施時において廊下側出入口26を確実に閉鎖でき、ひいては玄関ホールから機械室14への空気の流れ込みを確実に防止できる。
【0048】
リビング13側の引き戸29に第1通気部を設けることに加え、廊下12側の引き戸27に玄関ホールを機械室14と通気可能に連通させる第2通気部(通気開口部31及びスラット32)を設けた。そして、これら各通気部について、それぞれ通気状態と非通気状態とで切替可能とした。具体的には、第1通気部についてはリビング13側の通気開口部33に設けられたスラット34を開閉することにより通気/非通気の切替を行うようにした。一方、第2通気部については、廊下12側の通気開口部31に設けられたスラット32を開閉することにより通気/非通気の切替を行う構成とした。この場合、各通気開口部31,33のうちいずれか一方を開放させることで通気状態とし、他方を閉鎖することで非通気状態とすることにより、機械室14への空気の取り込み先をリビング13及び廊下12のいずれかに切り替えることができる。これにより、夏場においては、帰宅して空調装置20を運転開始した直後等、廊下12の温度よりもリビング13の温度が高くなっている場合には、比較的低温である廊下12の空気を機械室14に取り込むことが可能となる。これにより、空調装置20の負荷軽減をより一層図ることが可能となる。
【0049】
廊下温センサ41により検知された廊下12の温度と、リビング温センサ42により検知されたリビング13の温度とを比較し、その比較結果に基づいて、第1通気部及び第2通気部のうちいずれかを通気状態とするよう制御した。具体的には、上記比較結果に基づいて、リビング13側の通気開口部33及び廊下12側の通気開口部31のうちいずれかを選択的に開放させるよう、リビング13側のスラット34及び廊下12側のスラット32を開閉制御するようにした。より詳しくは、空調装置20の冷房運転時においては、廊下12の温度がリビング13の温度よりも低い場合には廊下12側の通気開口部31を開き、廊下12の温度がリビング13の温度以上である場合にはリビング13側の通気開口部33を開くよう、各スラット32,34を開閉制御する構成とした。これにより、空調装置20の冷房運転時には、廊下12の空気及びリビング13の空気のうち、比較的温度の低い空気が機械室14に自動的に取り込まれる。また、空調装置20の暖房運転時においては、廊下12の温度がリビング13の温度よりも高い場合には廊下12側の通気開口部31を開き、廊下12の温度がリビング13の温度以下である場合にはリビング13側の通気開口部33を開くよう、各スラット32,34を開閉制御する構成とした。これにより、空調装置20の暖房運転時には、廊下12の空気及びリビング13の空気のうち、比較的温度の高い空気が機械室14に自動的に取り込まれる。よって、この場合、各通気開口部31,33のうちいずれかを通じた通気を可能とすることで、空調装置20の負荷のより一層の軽減を図るという上述の効果を得るにあたって、利便性を高めることができる。
【0050】
隣接屋内空間としてのリビング13を空調装置20による空調対象とした。この場合、リビング13の冷暖房を効率よく行うことができる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0052】
(1)上記実施形態では、第1通気部(具体的には通気開口部33及びスラット34)を囲い部においてリビング13側の引き戸29に設けたが、これを変更し、仕切壁25、具体的には仕切壁25においてリビング13と機械室14とを仕切る壁部(例えば壁部25b等)に設けてもよい。なお、この場合、リビング側出入口28を設けない構成とすることができる。また、第1通気部の構成として、単に通気開口部33を設けるだけの構成(すなわち、スラット34を設けない構成)としてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、機械室14への空気の取り込み先となる隣接屋内空間を居室としてのリビング13としたが、これを変更して、隣接屋内空間を納戸や廊下(詳細には玄関ホールに対して仕切壁により隔てられた廊下)等の非居室空間としてもよい。また、上記実施形態では、機械室14への出入口26,28として、廊下側出入口26及びリビング側出入口28を設けたが、さらに、その他の屋内空間から機械室14に出入りするための出入口を設けてもよい。その一例を図4に示す。図4に示す建物50には、玄関11、廊下12、リビング13、機械室14に加えてサニタリ51が設けられている。サニタリ51は、図示しない浴室と隣接しており、脱衣所として利用されている。機械室14には、廊下12及びリビング13の他にサニタリ51が隣接しており、機械室14を囲む仕切壁52においてサニタリ51と機械室14とを仕切る壁部52aにはサニタリ51から機械室14への出入りを可能とする出入口53が設けられている。すなわち、本例の建物50では、機械室14への出入口として、廊下12側の出入口54、リビング13側の出入口55、サニタリ51側の出入口53の計3つの出入口が設けられている。この場合、機械室14へのアクセス性を高めることができるため、機械室14を物を収納する収納スペースとして利用する等、空調装置20の設置以外の用途として利用する際には都合がよい。また、サニタリ51と廊下12との間に機械室14を設けたことにより、屋外からの熱の出入りが多い廊下12からサニタリ51に直接空気が流れ込むのを防止できる。この場合、サニタリ51の温度が屋外の温度の影響により変動するのを抑制できるため、例えばサニタリ51で着替えを行う際に居住者がヒートショックを起こす等の不都合を抑制できる。
【0054】
(3)上記実施形態では、空調装置20による空調対象として、隣接屋内空間としてのリビング13を含めたが、必ずしも隣接屋内空間を空調対象に含める必要はない。
【0055】
(4)開閉検知センサ44により廊下12側の引き戸27が開かれていることが検知されている場合には、空調装置20の作動を一時的に停止するようにしてもよい。これにより、引き戸27が開かれている場合には、空調装置20による空調空気の生成が、ひいては空調装置20による機械室14の空気の取り込みが行われないため、開放された廊下側出入口26を通じて廊下12の空気が機械室14に流れ込むのを抑制できる。
【0056】
(5)上記実施形態では、玄関側建具及び居室側建具として引き戸27,29を設けたが、これら各建具のうち少なくともいずれかを回動式の開き戸としてもよい。例えば、玄関側建具を開き戸とした場合には、開き戸は廊下側出入口26を閉鎖した状態で、廊下側出入口26を通じた機械室14と廊下12との間を通気を遮断するものとする。また、居室側建具を開き戸とした場合には、開き戸はリビング側出入口28を閉鎖した状態で、リビング側出入口28を通じた機械室14とリビング13との間の通気を遮断するものとする。
【0057】
(6)上記実施形態では、第2通気部(具体的には通気開口部31及びスラット32)を囲い部において廊下12側の引き戸27に設けたが、これを変更し、仕切壁25(具体的にはその壁部25a)に設けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…建物、11…玄関、12…廊下、13…隣接屋内空間及び居室としてのリビング、14…機械室、20…空調装置、25…仕切壁、26…玄関側出入口としての廊下側出入口、27…玄関側建具としての引き戸、28…居室側出入口としてのリビング側出入口、29…居室側建具としての引き戸、31…通気開口部、32…スラット、33…通気開口部、34…スラット、40…建具制御手段及び通気制御手段としてのコントローラ、41…玄関温検知手段としての廊下温センサ、42…居室温検知手段としてのリビング温センサ、44…開閉検知手段としての開閉検知センサ、45…引き戸駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置が設置された機械室が玄関ホールに隣接して設けられており、
前記空調装置は、前記機械室に流れ込む空気を取り込んで空調空気を生成するとともに、その空調空気を空調対象となる屋内空間に供給して冷暖房を行うものであり、
前記機械室は、その周囲が囲い部により囲まれ、玄関側出入口を介して前記玄関ホールからの出入りが可能であり、
前記囲い部は、前記玄関側出入口を開閉する玄関側建具を有し、前記玄関側建具は、前記玄関側出入口を閉じた状態で、前記玄関側出入口を通じた前記玄関ホールと前記機械室との間の通気を遮断するものであり、
前記玄関ホールに対して仕切壁を隔てて設けられるとともに、前記機械室に前記囲い部を隔てて隣接する隣接屋内空間を備え、
前記囲い部には、前記隣接屋内空間を前記機械室と通気可能に連通させた第1通気部が設けられていることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記隣接屋内空間は居室であり、
前記機械室は、居室側出入口を介して前記居室からの出入りが可能であり、
前記囲い部は、前記居室側出入口を開閉する居室側建具を有し、
前記居室側建具に前記第1通気部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記空調装置の作動時において、前記玄関側建具が開いているか否かを検知する開閉検知手段と、
前記玄関側建具を開閉駆動する開閉駆動手段と、
前記開閉検知手段により前記玄関側建具が開いていることが検知された場合に、前記玄関側建具を閉じるよう前記開閉駆動手段を制御する建具制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記囲い部には、前記第1通気部に加え、前記玄関ホールを前記機械室と通気可能に連通させる第2通気部が設けられており、
前記第1通気部及び前記第2通気部は、各々通気状態と非通気状態とで切替可能となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物。
【請求項5】
前記玄関ホールの温度を検知する玄関温検知手段と、
前記隣接屋内空間の温度を検知する隣接屋内温検知手段と、
前記各検知手段により検知された前記玄関ホール及び前記隣接屋内空間の各温度を比較し、その比較結果に基づいて、前記第1通気部及び前記第2通気部のうちいずれかを前記通気状態とする通気制御手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241350(P2012−241350A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109984(P2011−109984)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】