説明

建築材の表面架飾方法

【課題】 リアルでより自然感のある模様を建築材の表面に形成する。
【解決手段】 電磁弁開閉式のディスペンサー2の下端部に備えた噴射ノズル3の周囲に加圧エアーを供給し、噴射ノズルから吐出量が制御されて噴射された塗料を加圧エアーにより霧化し、印刷または塗装された建築材1の表面に霧化された塗料を付着させ、ぼかし模様を付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建築材の表面に模様を形成する建築材の表面架飾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築用の外装材および内装材として用いられる建築材については、自然感のある表面模様が形成されるように、様々な塗装方法が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1に記載された塗装方法では、異なる色の塗料が供給される複数のスプレーガンを建築板の搬送方向と直交する方向に往復移動させながら、各スプレーガンを間欠的にオン/オフして各スプレーガンから異なる色の塗料を建築板の表面に間欠的に噴霧し、建築板の表面に自然な風合いの多色ぼかし模様を塗装している。
【特許文献1】特許第3377146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
だが、より自然でリアルな模様を建築材の表面に形成させるためには、さらなる検討が必要とされている。
【0005】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、リアルでより自然感のある模様を建築材の表面に形成することのできる建築材の表面架飾方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上記の課題を解決するために、第1には、電磁弁開閉式のディスペンサーの下端部に備えた噴射ノズルの周囲に加圧エアーを供給し、噴射ノズルから吐出量が制御されて噴射された塗料を加圧エアーにより霧化し、印刷または塗装された建築材の表面に霧化された塗料を付着させ、ぼかし模様を付加することを特徴としている。
【0007】
本願発明は、第2には、塗料が、クリアー塗料に着色顔料が混合されたカラークリアー塗料であることを特徴としている。
【0008】
本願発明は、第3には、塗料は、フォードカップ4号式で10〜300秒の粘度範囲にあるものであることを特徴としている。
【0009】
本願発明は、第4には、電磁弁の開閉のサイクルが3mmsecまで短縮化されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願の第1の発明によれば、先に印刷または塗装された建築材の表面に霧化された塗料を付着させ、ぼかし模様を付加するため、建築材の表面にリアルでより自然感のある模様を形成することができる。また、ディスペンサーは電磁弁開閉式であるため、電磁弁の開閉時間を制御することにより噴射ノズルからの塗料の吐出量を制御することができ、模様の濃淡を塗料の濃度を調節することなく表現することができる。
【0011】
本願の第2の発明によれば、耐候性を維持したまま自然感のあるぼかし模様を形成することができる。
【0012】
本願の第3の発明によれば、高粘度の塗料の使用が可能となる。
【0013】
本願の第4の発明によれば、電磁弁の応答が速くなり、塗料の吐出量を細かく制御することができ、細かな濃淡の表現が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本願発明の建築材の表面架飾方法におけるぼかし模様を表現するための塗料のディスペンサーとその周辺を示した要部断面図である。
【0015】
金属板、無機質板、樹脂板等の建築材1の表面にぼかし模様を形成させる塗料は、ディスペンサー2から供給される。ディスペンサー2は、電磁弁開閉式のものであり、下端部に塗料を建築板1に向けて噴射する噴射ノズル3を備えている。ディスペンサー2の噴射ノズル3の周辺には塗料の霧化装置4が付設されている。
【0016】
霧化装置4は、中央部にエアー噴出口5を有している。ディスペンサー2の噴射ノズル2は、このエアー噴出口5の内部に配置されている。エアー噴出口5の上端部から側方には水平なエアー供給路6が形成されていて、エアー供給路6は、霧化装置4の側部に突設されたエアー配管接続継手7に連通している。
【0017】
ディスペンサー2内の塗料が噴射ノズル3から噴射する時、霧化装置4では、エアー供給路6を通じて加圧エアーがエアー噴出口5に供給される。加圧エアーは噴射ノズル3の周囲に噴出し、噴射ノズル3から噴射する塗料をより微細なミスト状にし、霧化させる。このようにして霧化した塗料が建築材1の表面に落下し、付着する。
【0018】
建築材1は、霧化塗料の塗装以前に、表面が所望の表面模様に応じてロール印刷、スクリーン印刷、スプレー塗装などにより印刷または塗装されている。表面は、フラットであっても、0.1〜10.0mmのエンボスが形成されたもの、さらに大きな凹凸を有するものであってもよい。石やレンガなどのように凹凸を有するもの、木目模様に合わせて凹凸を有するものなどとすることができる。霧化塗料の付着は、印刷または塗装された建築材1の表面にぼかし模様を付加させ、建築材1の表面とあいまって、石や木目の雰囲気を引き立たせ、また、独特の自然に汚れた感じや色の変化を表現することができ、リアルでより自然感のある模様を実現する。
【0019】
塗料の霧化は、建築材1の表面に付着する塗料の玉の境界を分かりにくくし、より自然な模様とする。霧化せずに塗料を噴射ノズル3から噴射すると、塗料が玉となって建築材1の表面に落下し、不自然な模様となってしまう。
【0020】
ディスペンサー2は、上記の通り、電磁弁開閉式である。開閉時間は自在に変化させることができ、開閉時間の長短によって塗料の吐出量を制御することができる。開時間が長いと、噴射ノズル3からの塗料の吐出量は多くなり、その結果、建築材1の表面に形成される模様は濃くなる。開時間が短いと塗料の吐出量は少なくなり、模様は薄くなる。このため、塗料の濃度を調整しなくとも、電磁弁の開閉時間を変化させることによって、模様の濃淡を表現することができる。電磁弁の開閉時間は、たとえば1サイクルで3mmsecまで短縮化することができる。電磁弁の応答を速くすることにより、噴射ノズル3からの塗料の吐出量を細かく変化させることができ、細かな濃淡の表現が可能となる。
【0021】
塗料については、クリアー塗料に着色顔料が混合されたカラークリアー塗料を好ましいものとして例示することができる。カラークリアー塗料によってさらに自然感のあるぼかし模様が可能となる。エナメル塗料は、建築材1の表面を隠蔽するため、塗装によって非常に濃い不自然な模様が形成されてしまう。ぼかした感じを表現するためには、エナメル塗料を数十倍に薄める必要があるが、希釈すると、耐候性が低下することから紫外線カットを目的として保護層を追加して塗装する必要が生じる。クリアー塗料を主成分とするカラークリアー塗料には、エナメル塗料におけるそのような不都合がなく、扱いやすいものである。耐候性を維持したまま、自然感のあるぼかし模様を可能とする。なお、クリアー塗料には、必要に応じて酸化亜鉛等の紫外線カット材を添加することができる。
【0022】
また、カラークリアー塗料には、溶剤系、水系、高粘度、低粘度を問わずに使用することができる。粘度の測定器具として知られているフォードカップ4号で測定した時に、10〜300秒の粘度範囲にあるものが例示される。高粘度の塗料までも使用可能であり、霧化も可能である。
【0023】
なお、霧化装置4において、エアー噴出口5と噴射ノズル3との間の隙間aは、0.2〜0.8mm、好ましくは、0.4〜0.5mm、エアー噴出口5と噴射ノズル3の先端との距離bは、0.5〜3.0mm、エアー供給路6の口径cは1.0〜3.0mmが適当である。
【0024】
噴射ノズル3からの塗料の吐出量は、10〜30g/分程度とし、噴射ノズル3から噴射する塗料を霧化する加圧エアーの圧力としては、たとえば0.2〜0.4MPaの範囲が例示される。この範囲にある加圧エアーは塗料の霧化に好適である。
【0025】
霧化装置4の下端から建築材1の表面までの距離dは、一般に40〜60mmが適当である。40mmより近いと、模様が強くなり、ぼかした感じが損なわれ、60mmより遠いと、塗料が広がるので模様がぼやけた感じなり過ぎ、いずれの場合も所望のぼかし模様が形成されにくくなる。
【0026】
建築材1の表面を架飾する際には、建築材1の幅方向に複数の噴射ノズル3を並設し、建築材1の全幅の塗装が可能となるようにする。各噴射ノズル3には霧化装置4を装着しておく。
【0027】
ぼかし模様の塗装パターンは、あらかじめパソコンやシーケンサーなどによりデータ処理し、プログラムとして登録することができる。所望の模様に応じて塗装パターンを適宜選択できるようにしておく。たとえば、自然石調のプレス模様が形成された建築材1の表面に自然な汚れ感を表現する場合、同一のプレス模様に対して数種の異なる塗装パターン(たとえば、濃淡、塗装位置(塗る位置と塗らない位置)、色など)をあらかじめ登録しておき、その中から適当なものを選定するようにする。また、塗装パターンは、エンボスなどの凹凸模様に合わせて塗装可能なようにしておく。
【0028】
塗装パターンをパソコンのデータから選定し、塗装を開始すると、霧化装置4により加圧エアーが噴射ノズル3の周囲に供給され、電磁弁が、コントローラーにより制御されて開閉し、噴射ノズル3の下方を自動搬送される建築材1の表面に霧化塗料が塗布される。建築材1の表面の架飾を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明の建築材の表面架飾方法におけるぼかし模様を表現するための塗料のディスペンサーとその周辺を示した要部断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 建築材
2 ディスペンサー
3 噴射ノズル
4 霧化装置
5 エアー噴出口
6 エアー供給路
7 エアー配管接続継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁開閉式のディスペンサーの下端部に備えた噴射ノズルの周囲に加圧エアーを供給し、噴射ノズルから吐出量が制御されて噴射された塗料を加圧エアーにより霧化し、印刷または塗装された建築材の表面に霧化された塗料を付着させ、ぼかし模様を付加することを特徴とする建築材の表面架飾方法。
【請求項2】
塗料が、クリアー塗料に着色顔料が混合されたカラークリアー塗料である請求項1記載の建築材の表面架飾方法。
【請求項3】
塗料は、フォードカップ4号式で10〜300秒の粘度範囲にあるものである請求項1または2記載の建築材の表面架飾方法
【請求項4】
電磁弁の開閉のサイクルが3mmsecまで短縮化されている請求項1ないし3いずれか1項に記載の建築材の表面架飾方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−29831(P2007−29831A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215097(P2005−215097)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】