説明

建築物

【課題】建築物のボイド部の換気を効率良く行う。
【解決手段】本発明に係る建築物1は、各階を上下に貫通するボイド部2と、略水平に貫通するように形成されて風を取り込むことができる通風部3と、を備えており、これらのボイド部2と通風部3とは連通されている。そして、該通風部3の内部であって前記ボイド部2に対向する部分には導風手段4が配置されていて、通風部3に流れる風がボイド部2に導かれるようになっている。これにより、ボイド部2の換気を効率良く行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイド部の換気を行うようにした建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層集合住宅等の建築物には、各階を上下に貫通するようにボイド部(吹き抜け部)が形成されたものがあり、該ボイド部を換気する方法として種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図11(a) は、建築物のボイド部内を換気する従来方法の一例を示す垂直断面図であり、同図(b) は、その平面図である。図中の符号202は、ボイド部を示し、符号203は、ボイド部202の下部に連通するように形成された空気取り入れ口を示し、符号204は、周囲が低くて中央部が高くなるように屋上に設置されたフードを示し、符号204aは、前記ボイド部202に連通するように前記フード204に形成された貫通孔を示す。屋上付近では、フード204の上面に沿って矢印Wのように風が流れるため、空気取り入れ口203→ボイド部202→貫通孔204aを流れてきた風がフード204の上方に吸い出されることとなり、その風の流れを利用してボイド部202の換気を行うことができる。
【特許文献1】特許第2760686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来例のように屋上にフード204を設けた場合には、設備が大掛かりになったり、屋上を他の目的に使用することができなかったりするという問題があった。
【0005】
本発明は、簡単な装置でありながら有効にボイド部を換気できる建築物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1及び図9に例示するものであって、各階を上下に貫通するボイド部(2,102)を備えた建築物(1,101)において、
該建築物(1,101)を略水平に貫通して風を取り込むことができると共に前記ボイド部(2,102)に連通された通風部(3,103)と、
該通風部(3,103)の内部であって前記ボイド部(2,102)に対向する部分に設けられて、前記通風部(3,103)を流れる風を前記ボイド部(2,102)に導くための導風手段(4,104)と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記通風部(3)は、前記建築物の周囲の風が吹き抜けるように該建築物の下層部(L)に形成されたオープン型の駐車場であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記建築物の下層部(L)は、該下層部(L)の上方に構築される上層部(U)よりも床面積が広くて略水平方向に出っ張るように形成され、
前記通風部(103)は、前記下層部(L)の上面に形成されていることを特徴とする。
【0009】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至3に係る発明によれば、通風部に吹き込んだ風は、前記導風手段によってボイド部に導かれることとなり、ボイド部の換気に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1乃至図10に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここで、図1は、本発明に係る建築物の構造の一例を示す垂直断面図であり、図2は、本発明に係る建築物の駐車場部分の構造の一例を示す水平断面図である。また、図3(a) は、導風手段の形状の一例を示す平面図であり、同図(b) は、その垂直断面図である。さらに、図4乃至図8は、導風手段の形状の例を示す平面図であり、図9は、本発明に係る建築物の構造の他の例を示す垂直断面図であり、図10(a)
は、通風部の構造の一例を示す詳細断面図であり、同図(b) は、通風部の構造の他の例を示す詳細断面図である。
【0012】
本発明に係る建築物は、図1に符号1で例示するものであって、各階を上下に貫通して屋上部で開口するように設けられたボイド部(吹き抜け部)2を備えている。そして、この建築物1には、略水平に貫通して風を取り込むことのできる通風部3が形成されており、これらのボイド部2と通風部3とは連通されている。さらに、該通風部3の内部であって、前記ボイド部2に対向する部分には、該通風部3を流れる風(矢印W参照)をボイド部2に導くための導風手段4が配置されている。このように構成した場合には、通風部3に吹き込んだ風Wは、前記導風手段4によってボイド部2に導かれることとなり、ボイド部2の換気に利用することができる。
【0013】
この通風部3は、1つの階だけに設けるようにしても、複数の階にそれぞれ設けるようにしても、どちらでも良い。なお、図1に示す建築物1では、建築物の周囲の風(図2の矢印W参照)が吹き抜けるようなオープン型の駐車場(外壁や仕切り壁を少なくして風の通りを良くしたオープン型の駐車場)が下層部Lに形成されていて、該駐車場を通風部3として利用している。図2中の符号5は駐車スペースを示し、符号2はボイド部を示し、符号6は、該ボイド部内に立設されるタワーパーキングを示し、符号7は、該ボイド部内に上下に延設される縦動線部(エレベータや階段が配設された部分)を示す。図2に示す構造のものでは、縦動線部7やタワーパーキング6が駐車場(つまり、通風部)及びボイド部2に亘って立設されることとなり、駐車場に吹き込んだ水平方向の風Wは、該縦動線部7やタワーパーキング6の外壁に当たってその方向を変え、ボイド部2に導かれることとなる。つまり、縦動線部7やタワーパーキング6の外壁が上述の導風手段としての役割を果たすこととなる。
【0014】
ところで、導風手段を、図3(a) (b) に符号14で示すような形状にしても良い。それらの図において、符号10は、建築物の外壁を示し、符号13は、駐車場(通風部)を示し、矢印Wは、該駐車場内部に吹き込んだ風を示し、符号12は、ボイド部を示す。この導風手段14は、図3(a)
の平面視において略十字状となるように構成されており、駐車場13に吹き込んだ風Wは該導風手段14に衝突して向きを変え、ボイド部12に導かれることとなる。この略十字状の導風手段は、図4に符号24で示すように、ボイド部12よりも大きくても良く、また、図5に符号34で示すように枚数を多くしても良く、図6に符号44で示すように枚数を少なくしても良い。さらに、図7に符号54で示すように、互いに離間した状態の複数の壁部材によって導風手段を構成しても良く、図8に符号64で示すような形状に構成しても良い。また、図3乃至図8に示す壁状部材(各導風手段を構成する壁状部材)は平板状であるが、もちろんこれに限られるものではなく、湾曲させても良い。さらに、それらの壁状部材は、垂直に立設配置しても良いが、傾斜させても良い。
【0015】
ところで、図9に示すように、建築物101の下層部Lを、上層部(該下層部の上方に構築される部分)Uよりも床面積が広くて略水平方向に出っ張るように形成し、該下層部Lの上面に通風部103(つまり、建築物101を略水平に貫通して風を取り込むことができると共に前記ボイド部102に連通された通風部)を設けても良い。建築物101に吹き付けられた風の一部W10は、符号W11に示すように建築物の外壁に沿って下降し、下層部Lの上面にまで到達するが、上述のように通風部103を設けていると、符号W12で示すように、その通風部103を通り抜けてボイド部102に侵入する。このボイド部102には、導風手段としてのタワーパーキング104が設けられているので、ボイド部102に侵入した風は該タワーパーキング104に当たってその方向を上向きに変え、ボイド部102を上昇し、建築物の屋上から排出されることとなる。そのようにした場合には、ビル風を有効に利用してボイド部102の換気を行うことができる。また、ビル風の一部をボイド部102の換気に利用しているので、地上に吹き付けられるビル風の量を低減することが可能となり、風害を低減することができる。
【0016】
なお、図10(a)
に詳示するように、上述の風W11が吹き付ける部分(下層部Lの上面であって、同図に符号103aで示す部分)を他の部分(符号105で示す部分)よりも低くして凹部(風取込み用凹部)を形成しておき、該風W11が通風路103に効率よく吸い込まれるようにしておくと良い。また、図10(b)
に符号106で示すような傾斜面を設けておいて、風速があまり落ちないようにすると良い。さらに、通風路103を設ける部分を免震階としておいても良い。また、図10(a)
(b) では下層部Lは駐車場となっているが、もちろんこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る建築物の構造の一例を示す垂直断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る建築物の駐車場部分の構造の一例を示す水平断面図である。
【図3】図3(a) は、導風手段の形状の一例を示す平面図であり、同図(b)は、その垂直断面図である。
【図4】図4は、導風手段の形状の例を示す平面図である。
【図5】図5は、導風手段の形状の例を示す平面図である。
【図6】図6は、導風手段の形状の例を示す平面図である。
【図7】図7は、導風手段の形状の例を示す平面図である。
【図8】図8は、導風手段の形状の例を示す平面図である。
【図9】図9は、本発明に係る建築物の構造の他の例を示す垂直断面図である。
【図10】図10(a) は、通風部の構造の一例を示す詳細断面図であり、同図(b)は、通風部の構造の他の例を示す詳細断面図である。
【図11】図11(a) は、建築物のボイド部内を換気する従来方法の一例を示す垂直断面図であり、同図(b)は、その平面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 建築物
2 ボイド部
3 通風部(駐車場)
4 導風手段
101 建築物
102 ボイド部
103 通風部
104 導風手段
L 下層部
U 上層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階を上下に貫通するボイド部を備えた建築物において、
該建築物を略水平に貫通して風を取り込むことができると共に前記ボイド部に連通された通風部と、
該通風部の内部であって前記ボイド部に対向する部分に設けられて、前記通風部を流れる風を前記ボイド部に導くための導風手段と、
を備えたことを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記通風部は、前記建築物の周囲の風が吹き抜けるように該建築物の下層部に形成されたオープン型の駐車場である、
ことを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記建築物の下層部は、該下層部の上方に構築される上層部よりも床面積が広くて略水平方向に出っ張るように形成され、
前記通風部は、前記下層部の上面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−133075(P2009−133075A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308341(P2007−308341)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】