説明

建築用スラリー状物供給装置

【課題】建築用スラリー状物を、熟練を要することなく、しかも均質なものとして、機械的かつ自動的に生成できる建築用スラリー状物供給装置を提供すること。
【解決手段】天端レベリング材やモルタル等の建築用スラリー状物20となる材料21が投入される撹拌槽11と、この撹拌槽11により、材料21を吸引して撹拌槽11内に戻す撹拌機12とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天端レベリング材やモルタルのような建築用のスラリー状物を確実に生成し、また、施工場所に供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築現場においては、天端レベリング材やモルタルのような建築用のスラリー状物を使用して、基礎コンクリートなどの表面仕上げがなされている。例えば、ベタ基礎や布基礎等の基礎は、その完成後の表面が完全な水平面を有していなければならないから、従来より一般に行われていた基礎施工では、コンクリート等で大まかな基礎を形成しておいて、モルタルを使用したコテ作業による均しや、図12に示すような、天端レベリング材の流し込みによって基礎の上面を水平状にすることがなされていた。
【0003】
しかし、このようなコテ作業や流し込みは、非常に手間も時間も掛かるだけでなく、これらの天端レベリング材やモルタルはスラリー状になっているため、その生成箇所から施工場所への運搬や給送は困難な作業となっていた。
【0004】
しかも、これらの天端レベリング材やモルタルのような建築用のスラリー状物は、固化や変化し易いものであるため、施工現場において生成し、生成後直ちに施工しなければならないものが多い。特に、天端レベリング材は、流し込んで水平を形成するものであるため所定の流動性が必要なものであり、この流動性は時間が経つと少なくなるから、その生成と施工は短時間内に行わなければならない。
【0005】
以上のように、天端レベリング材やモルタルのような建築用のスラリー状物は、人の手によって生成したり給送したりすることが困難であることから、本発明者等が機械的かつ自動的に生成が行えるものがないかと種々検討したが、特にそのような要望に応えることのできる技術は存在していなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者等は、天端レベリング材やモルタルのような建築用のスラリー状物を、機械的かつ自動的に生成できるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0007】
すなわち、本発明の目的とするところは、まず、建築用スラリー状物を、熟練を要することなく、しかも均質なものとして、機械的かつ自動的に生成できる建築用スラリー状物供給装置を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の他に目的とするところは、均質な建築用スラリー状物を、熟練を要することなく機械的かつ自動的に生成できることは勿論のこと、生成後短時間内に施工場所への給送も行うことができる建築用スラリー状物供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「天端レベリング材やモルタル等の建築用スラリー状物20となる材料21が投入される撹拌槽11と、この撹拌槽11により、材料21を吸引して撹拌槽11内に戻す撹拌機12とを備えたことを特徴とする建築用スラリー状物供給装置10」
である。
【0010】
すなわち、この請求項1に係る建築用スラリー状物供給装置10は、図1〜図9に示すように、撹拌槽11を有しているのであるが、この撹拌槽11の内部または外部には撹拌機12が配置してある。この撹拌機12は、供給された水やセメント等の材料21を吸引するとともに撹拌槽11内に戻すことによって、材料21を撹拌槽11の内外で撹拌して、建築用スラリー状物20を生成するものである。つまり、この建築用スラリー状物供給装置10は、例えば図1及び2に示すように、まず撹拌槽11内に水を入れておき、この水の中に建築用スラリー状物20とすべき材料21を撹拌槽11内に投入しながら、撹拌機12を作動させることにより使用されるのである。
【0011】
つまり、撹拌槽11内に水を入れた状態で撹拌機12を作動させると、この撹拌機12によって水が吸引されて、この撹拌機12の吐出口12aから撹拌槽11内に吐出される。このとき、撹拌槽11内、つまり底壁11a上にセメントや砂等の材料21が投入してあれば、吐出された水が、これらの材料21を撹拌機12の下側に流し込むとともに、材料21と混じり合うのである。
【0012】
これらの材料21と水とは、再び撹拌機12によって吸引されて、吐出口12aから撹拌槽11内に戻され、一定の時間これが繰り返される。この結果、水と材料21とは、撹拌槽11内での循環時は勿論、撹拌機12自体による吸引や給送によって均等に混じり合い、均質な建築用スラリー状物20が生成されるのである。そして、撹拌機12を動かし続ければ、当該撹拌機12による吸引や給送、及び撹拌槽11内での循環が繰り返されるから、建築用スラリー状物20は常に均等に混じり合った状態を維持することになって、当該建築用スラリー状物20が不均一になったり硬化したりすることがなく、建築用スラリー状物20の施工が常に安定した状態で行えるのである。
【0013】
この建築用スラリー状物の生成の従来の方法では、作業者の経験と勘を頼りに手で行っていたのであるが、当該建築用スラリー状物供給装置10を使用すれば、そのような熟練を要することなく、均質な建築用スラリー状物20を簡単に生成できるのである。
【0014】
以上の結果、建築用スラリー状物供給装置10を使用すれば、均質な建築用スラリー状物20を簡単に生成できるのである。この建築用スラリー状物20が、基礎コンクリート30上に水平面を形成するための「セルフレベリング材」である場合には、自らが流れて水平面を形成するための十分な「流動性」が必要なのであるが、この建築用スラリー状物供給装置10を使用すれば、撹拌槽11内にて生成した建築用スラリー状物20を均等なものとして基礎コンクリート30上に供給できるのであるから、打設された建築用スラリー状物20に流動性の変化はなく、「セルフレベリング材」としての機能を十分発揮させ得るのである。
【0015】
従って、この請求項1の建築用スラリー状物供給装置10は、手作業によって生成したものに比較すれば、建築用スラリー状物20を、機械的かつ自動的に、しかも非常に均質なものとして生成できるものとなっているのである。
【0016】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の建築用スラリー状物供給装置10について、
「撹拌機12を、撹拌槽11の底壁11a上に備えたこと」
である。
【0017】
すなわち、この請求項2の建築用スラリー状物供給装置10では、上記請求項1のそれについて、図1〜図4、及び図7〜図9に示すように、撹拌機12を撹拌槽11の底壁11a上に備えたものであり、これにより、当該建築用スラリー状物供給装置10の外部に撹拌機12を大きく突出させることがなく、コンパクトな建築用スラリー状物供給装置10とすることができるのである。
【0018】
また、撹拌槽11の底壁11a上に撹拌機12を備える構造とすれば、この撹拌機12として、その底部に吸引口を有するタイプのものを採用することができて、この撹拌機12自身が有する吸引口から、周囲にある材料21を特別な接続管を要することなく吸引することができるのである。
【0019】
従って、この請求項2の建築用スラリー状物供給装置10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、全体の構成をコンパクトにすることができて、施工現場への運搬等を容易にし得るものとなっているのである。
【0020】
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の建築用スラリー状物供給装置10について、
「撹拌槽11に取出口13を設け、この取出口13の外側に撹拌機12を備えたこと」
である。
【0021】
すなわち、この請求項3の建築用スラリー状物供給装置10では、図6に示すように、底壁11aや側壁に取出口13を設け、この取出口13の外側に撹拌機12を備えるようにしたものである。このように、底壁11aに取出口13を設けて、この取出口13の外側に撹拌機12を設けたことによって、当該撹拌機12を底壁11a上に設置する場合に比較して、撹拌機12の大きさや機能について制限を受けることが無くなる。つまり、少なくともこの撹拌機12の表面の洗浄については行わなくてよいし、撹拌機12の大きさも撹拌槽11の容量によって制限を受けることもない。
【0022】
勿論、撹拌槽11の底壁11aに取出口13を設けたのであるから、当該取出口13から均質な建築用スラリー状物20を、直ちに外部に取り出せる。そして、この取出口13については、その下で建築用スラリー状物20を受け取るようにしてもよいが、図6にも示すように、撹拌機12が接続されるのであるから、この撹拌機12の給送力をそのまま利用して、戻し管14によって撹拌槽11内に建築用スラリー状物20を戻していたのを、撹拌機12の吐出口12aに設けた三方弁16によって図示しない供給管15からホース18側に供給するようにすれば、生成された建築用スラリー状物20の給送を施工現場、あるいはその直近にまで行うことができて、有利となる。
【0023】
従って、この請求項3に係る建築用スラリー状物供給装置10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、撹拌機12を撹拌槽11外に設置することができて、撹拌機12としての制限を少なくすることができ、しかもこの撹拌機12を利用して建築用スラリー状物20の取り出しを簡単に行えるものとなっている。
【0024】
さらに、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項2または請求項3に記載の建築用スラリー状物供給装置10について、
「底壁11aの少なくとも一部を、撹拌槽11の底壁11a上の撹拌機12、または、取出口13に向けて下方に傾斜させたこと」
である。
【0025】
すなわち、この請求項4に係る建築用スラリー状物供給装置10は、図1〜図4、図6〜図8、あるいは図9に示すように、底壁11aの少なくとも一部を傾斜させたものであり、これにより、供給され、あるいは混合された材料21を、必要箇所、つまり底壁11a上の撹拌機12、または、取出口13に向けて流すようにしたものである。
【0026】
図1〜図4、図6〜図8に示す例では、底壁11aの一部に傾斜している投入面11bを形成し、この投入面11b上に供給された材料21または建築用スラリー状物20を図示左側に形成してある水平な収集凹所11cに流し込むようにし、ここに設置してある撹拌機12の周囲、またはこの収集凹所11cに形成してある取出口13に向けて材料21や建築用スラリー状物20を流し込めるようにしているのである。
【0027】
図9に示す例では、撹拌槽11の底壁11a全体を最初から斜めにしておくことにより、この底壁11aを下方に傾斜させて、材料21または建築用スラリー状物20を撹拌機12の周囲あるいは取出口13に向けて流れるようにしたものである。
【0028】
以上のように、底壁11aの少なくとも一部を、撹拌機12の周囲または取出口13に向けて下方に傾斜させることによって、撹拌槽11内に生成された建築用スラリー状物20の量が少なったときに、撹拌機12または取出口13の周囲に最後の建築用スラリー状物20まで集中させることができるから、建築用スラリー状物20の取り出しを最後のものまで行えることになるのである。
【0029】
従って、この請求項4の建築用スラリー状物供給装置10は、請求項2または請求項3のそれと同様な機能を発揮する他、最後の建築用スラリー状物20まで取り出しが簡単に行えるものとなっているのである。
【0030】
また、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の建築用スラリー状物供給装置10について、
「撹拌槽11内に、材料21または建築用スラリー状物20を受けて、当該撹拌槽11内に吐出する漏斗19を配置したこと」
である。
【0031】
すなわち、この請求項5に係る建築用スラリー状物供給装置10は、図7及び図8に示すように、撹拌槽11内に漏斗19を配置したものであるが、この漏斗19は材料21または建築用スラリー状物20を受けて、撹拌槽11内、特に、底壁11a上に吐出するものである。
【0032】
一般に、材料21の中のセメントは、水との混合が直ちになされるものではなく、ある程度掻き混ぜないと、十分馴染むことにはならないものである。つまり、セメントの「ダマ」が出来やすいのであるが、このダマが撹拌機12に吸引されると、撹拌機12に詰まりが発生し易くなる。また、ある程度の建築用スラリー状物20となったものと共に材料21を流すと、この材料21が「塊」となって撹拌槽11の底壁11a上に溜まることにもなる。
【0033】
この点、この請求項5の建築用スラリー状物供給装置10では、撹拌槽11内に漏斗19を配置したから、建築用スラリー状物20や材料21等をこの漏斗19内に投入するようにすれば、この漏斗19内で建築用スラリー状物20や材料21等の乱流を発生して当該漏斗19にてプレ混合されながら撹拌槽11内に流下するから、上記のような「ダマ」や「塊」は発生しにくくなるのである。
【0034】
また、この漏斗19によって、材料21が撹拌槽11の、特に傾斜している投入面11b上に必ず流下するようになれば、周囲の材料21が飛び散ることがなく、しかも流下による乱流と投入面11b自体の傾斜によって各材料21の混合が確実になされて上述した「ダマ」の発生がない。それだけでなく、投入面11bを通して撹拌機12または取出口13の周囲に直接的に流されて、撹拌機12による給送または取出口13からの取り出しが確実に行えるのである。
【0035】
従って、この請求項5の建築用スラリー状物供給装置10は、上記請求項1〜請求項4のそれと同様な機能を発揮する他、漏斗19によってセメントのダマや塊を発生させにくくして、建築用スラリー状物20を常に均質なものにするのである。
【0036】
さらに、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項5に記載の建築用スラリー状物供給装置10について、
「撹拌機12の吐出口12aに、撹拌槽11内への戻しを行う戻し管14と、前記施工現場側への給送を行う供給管15とを接続したこと」
である。
【0037】
すなわち、この請求項6の建築用スラリー状物供給装置10では、図3及び図4に示すように、撹拌機12の吐出口12aに戻し管14と供給管15とを接続したものであり、戻し管14は、材料21等の撹拌槽11内への戻しを行い、供給管15は、前記施工現場側への給送を行うものである。
【0038】
換言すれば、この請求項6の建築用スラリー状物供給装置10では、撹拌機12が有している一本の吐出口12aに戻し管14と供給管15とを接続したものであり、撹拌機12が作動していれば、これらの戻し管14及び供給管15からのそれぞれの場所への給送が同時に行えるのである。勿論、供給管15の先にはホース18が接続されているから、給送されてきた建築用スラリー状物20を施工現場に確実に打設し得ることになるし、ホース18の手元バルブを締めれば、建築用スラリー状物20は戻し管14から撹拌槽11内に戻されることになる。
【0039】
従って、この請求項6に係る建築用スラリー状物供給装置10は、上記請求項1〜請求項5のそれと同様な機能を発揮する他、材料21や建築用スラリー状物20の戻しと施工現場側への給送とを確実に行えるものとなっているのである。
【0040】
そして、上記課題を解決するために、請求項7に係る発明の採った手段は、上記請求項6に記載の建築用スラリー状物供給装置10について、
「戻し管14、供給管15及び撹拌機12の吐出口12a間に、弁16または17を介装したこと」
である。
【0041】
すなわち、この請求項7に係る建築用スラリー状物供給装置10は、図3に示すように、戻し管14、供給管15及び撹拌機12の吐出口12a間に弁16または17、具体的には三方弁16を介装したものであり、この三方弁16の操作によって、撹拌機12が給送してきた材料21や建築用スラリー状物20等を、戻し管14から撹拌槽11内へ戻すか、供給管15からホース18を介して施工現場に給送するかを選択することができる。勿論、開閉弁17を採用した場合には、戻し管14、供給管15または撹拌機12の吐出口12aのそれぞれの開閉を独立して行えることは言うまでもない。
【0042】
従って、この請求項7に係る建築用スラリー状物供給装置10は、上記請求項6に係るそれと同様な機能を発揮する他、弁16によって建築用スラリー状物20等の給送方向を簡単に選択できるのである。
【発明の効果】
【0043】
以上、説明した通り、本発明においては、
「天端レベリング材やモルタル等の建築用スラリー状物20となる材料21が投入される撹拌槽11と、この撹拌槽11より、材料21を吸引して撹拌槽11内に戻す撹拌機12とを備えたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、
建築用スラリー状物20を、熟練を要することなく、しかも均質なものとして、機械的かつ自動的に生成できる建築用スラリー状物供給装置10を提供することができるのである。
【0044】
特に、本発明の建築用スラリー状物供給装置10が、
「撹拌機12の吐出口12aに、撹拌槽11内への戻しを行う戻し管14と、施工現場側への給送を行う供給管15とを接続した」
ものであれば、均質な建築用スラリー状物20を、熟練を要することなく機械的かつ自動的に生成できることは勿論のこと、生成後短時間内に施工場所への給送も行うことができる建築用スラリー状物供給装置10を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である建築用スラリー状物供給装置10について説明すると、図1には、この建築用スラリー状物供給装置10によって生成した、天端レベリング材やモルタル等の建築用スラリー状物20をホース18等を使用して基礎コンクリート30上に施工している様子が示してある。この建築用スラリー状物供給装置10は、建築用スラリー状物20となる材料21が投入される撹拌槽11と、この撹拌槽11より、材料21を吸引して撹拌槽11内に戻す撹拌機12とを備えたものである。
【0046】
この建築用スラリー状物供給装置10は、その全体を、図1に示したような枠体によって支持して、運搬可能な構成にしてあるが、この枠体そのものは、当該建築用スラリー状物供給装置10の必須要件ではない。また、この建築用スラリー状物供給装置10において、材料21の吸引や給送、そして撹拌を行う撹拌機12は、図1〜図5に示したように、撹拌槽11内に設置することもあるが、図6に示したように、撹拌槽11の外側に設置することもある。
【0047】
撹拌槽11は、金属や合成樹脂を材料として一体的なものに形成されるものであるが、その底壁11aの形状は、場合に応じて種々変更される。例えば図1〜図8の撹拌槽11については、図2にも示したように、材料21を直接受ける投入面11bと、この投入面11bの下端側になる収集凹所11cとを有するものとしてある。この収集凹所11c内には、図2に示したように、撹拌機12が設置されるとともに、この収集凹所11cに連通する取出口13が形成されるものであり、これらの取出口13や撹拌機12の下部に向けて、水を含む材料21または建築用スラリー状物20が流れ込むものである。
【0048】
この収集凹所11c内に、水を含む材料21や建築用スラリー状物20が流れ込めば、内部(撹拌槽11内)設置型の撹拌機12による吸引及び戻しが効率的になされることは当然として、これら材料21の混合が撹拌機12の作動中は確実になされるから、少なくとも施工現場に施工するまでの間、建築用スラリー状物20を均質なものに維持することができる。
【0049】
換言すれば、底壁11aが投入面11bと収集凹所11cとからなる建築用スラリー状物供給装置10では、撹拌機12の吸引及び戻しを効率的に行え、かつ建築用スラリー状物20を常に均質なものにするのである。
【0050】
一方、図9に示した底壁11aでは、投入面11bや収集凹所11cは有していないが、その全体を傾斜させたものであり、この傾斜した底壁11aの下方部分には、後述する取出口13が形成してある。この底壁11a全体を傾斜させるには、当該建築用スラリー状物供給装置10の撹拌槽11全体を枠体に対して傾斜状体で支持する(図9に示した状態)方法か、側壁は垂直になっているが、この側壁に対して底壁11aを傾斜状体で取り付ける方法が採用できる。
【0051】
つまり、この建築用スラリー状物供給装置10については、撹拌槽11の底壁11aの少なくとも一部を、取出口13に向けて下方に傾斜させたものであり、これによって、撹拌槽11内に生成された建築用スラリー状物20の量が少なったときに、取出口13の周囲に最後の建築用スラリー状物20まで集中させることができ、建築用スラリー状物20の給送を最後のものまで行えるのである。
【0052】
特に、本最良形態の建築用スラリー状物供給装置10では、図2〜図4に示したように、撹拌槽11の底壁11aの一部を、撹拌槽11の上部開口11dに向けて開放されるとともに、撹拌機12の下方に向けて傾斜する投入面11bとしてある。
【0053】
すなわち、この最良形態の建築用スラリー状物供給装置10では、撹拌槽11の底壁11aの一部を投入面11bとしたものであるが、この投入面11bは、図3及び図4に示したように、撹拌槽11の上部開口11dから外方に向けて大きく開放されるようにしたものである。換言すれば、この投入面11b上は、図3及び図4に示したように、撹拌槽11の上部開口11dからよく見えるものとなっており、しかも、図2に示したように、撹拌機12の下方に向けて傾斜しているものである。
【0054】
このような投入面11bを底壁11aに設けることによって、撹拌槽11の上部開口11dからの、水や材料21の投入が行い易くなっている。すなわち、投入面11bが撹拌槽11の上部開口11dからよく見えるため、水や材料21の投入先である投入面11bの確認が簡単に行え、撹拌機12に水や材料21を直接投下することにはならないことになる。これにより、撹拌機12の保護が行えることは当然として、投入した水や材料21を当該投入面11bによって直ちに撹拌機12の下方に流し込むことができる。
【0055】
また、撹拌機12から戻された水や、これと材料21との混合物を、図2あるいは図3に示したように、当該投入面11b上に直接戻すようにすれば、この投入面11b上を撹拌機12の下方に向けて流れる混合物の様子・状態を上部開口11dから直接視認できることになる。つまり、投入面11b上を流れるものにセメントが多いか少ないかを簡単に確認できるから、セメント等の材料21の投下量の調節(セメントを足すか、水を足すか)が簡単に行え、良好な建築用スラリー状物20とすることができるのである。
【0056】
一方、撹拌機12は、図5に示したように、内部で回転する羽根を有しているものであり、この羽根が回転することにより、ストレーナスタンドに形成した穴から水や材料21を吸引しながら混合し、この混合物を吐出口12aから撹拌槽11内に吐出するものである。つまり、この撹拌機12は、その羽根によって水や材料21の吸引と混合を行いながら、自身の吐出口12aに向けて圧送するものである。
【0057】
つまり、この建築用スラリー状物供給装置10は、所定量の水と建築用スラリー状物20とすべき材料21を入れた撹拌槽11内に設置するか、図6に示したように、底壁11aに設けた取出口13に外部で接続した撹拌機12を作動させれば、水を含む材料21を混合しながら撹拌機12から撹拌槽11内に戻すとともに、これを繰り返すことによって材料21を均等に混ぜることになり、建築用スラリー状物20を、熟練を要することなく簡単に生成するのである。この作動中の撹拌機12は、その吐出口12aから材料21の混合物または建築用スラリー状物20を戻し管14や供給管15に向けて圧送しているのである。
【0058】
取出口13は、図1〜図9に示したように、底壁11aに設けてあるが、このように、底壁11aに取出口13を設けたことによって、生成された建築用スラリー状物20自体は勿論のこと、当該建築用スラリー状物供給装置10の撹拌槽11内を洗浄した排水を、この取出口13から直ちに外部に排出することができる。
【0059】
勿論、図1〜図5に示したもののように、この取出口13に単なるドレンパイプを接続して、この取出口13を上記洗浄済みの排水の排水口としたり、図6に示したように、この取出口13の外部に撹拌機12の吸引口を接続して、当該取出口13を撹拌機12のための供給口とすることができるものである。なお、図2に示した例のように、取出口13を排水口とする場合には、これに開閉弁17を設けておけばよい。
【0060】
そして、この建築用スラリー状物供給装置10においては、図3または図4にも示したように、撹拌機12の吐出口12aに、撹拌槽11内への戻しを行う戻し管14と、施工現場側への給送を行う供給管15とを接続し、これらの戻し管14、供給管15及び撹拌機12の吐出口12a間に、弁16または17が介装してある。
【0061】
戻し管14は、撹拌機12によって撹拌した、あるいは撹拌槽11内にて循環させるべき材料21を、文字通り再び撹拌槽11内に戻すためのものであり、撹拌機12の吐出口12aに接続されるものである。一方、供給管15は、生成した建築用スラリー状物20を基礎コンクリート30上等に供給するためのものであり、その基端は撹拌機12側に接続され、先端は直接基礎コンクリート30上に引き出されるか、基礎コンクリート30上にまで届くホース18に接続される。
【0062】
これらの戻し管14及び供給管15は、図3または図4に示したように、三方弁16や開閉弁17を利用して、同時に撹拌機12側の一つの吐出口12aに接続してある。図3に示した例では、これら両戻し管14及び供給管15を一つの三方弁16を介して撹拌機12の吐出口12aに接続しており、図4に示した例では、これら両戻し管14及び供給管15を一つの三方弁16を介して撹拌機12の吐出口12aに接続するとともに、戻し管14及び供給管15のそれぞれに開閉弁17を介装するようにしているものである。
【0063】
換言すれば、この建築用スラリー状物供給装置10については、戻し管14、供給管15及び撹拌機12の吐出口12a間に、弁16または17を介装したものであり、例えば図3に示した例では、三方弁16の操作によって、撹拌機12が給送してきた材料21や建築用スラリー状物20等を、戻し管14から撹拌槽11内へ戻すか、供給管15からホース18を介して施工現場に給送するかを選択することができるようにしているのである。
【0064】
図4に示した例では、戻し管14及び供給管15に、それぞれ開閉弁17を介装したものであり、これらの開閉弁17を別個独立して操作することによって、撹拌機12が給送してきた材料21や建築用スラリー状物20等を、戻し管14から撹拌槽11内へ戻すか、供給管15からホース18を介して施工現場に給送するか、それとも両方を停止したり給送可能にしたりしたものである。
【0065】
この開閉弁17を採用した場合には、三方弁16の場合とは異なって、戻し管14及び供給管15の両方へ同時に給送できる場合が増加するから、その場合には、ホース18の手元バルブの開閉による撹拌機12側への負荷を、戻し管14側への給送を許容することによって軽減できることになり、開閉弁17によって建築用スラリー状物20等の給送時における撹拌機12の負荷を軽減できる。
【0066】
そして、図7及び図8に示した建築用スラリー状物供給装置10では、撹拌槽11内に、材料21または建築用スラリー状物20を受けて底壁11a上に吐出する漏斗19が配置してあるが、この漏斗19は、投入された材料21または建築用スラリー状物20を受けて、その吐出口19aから底壁11a上に吐出するものである。
【0067】
一般に、材料21の中のセメントは、水との混合が直ちになされるものではなく、ある程度掻き混ぜないと、十分馴染むことにはならないものである。つまり、セメントの「ダマ」が出来やすいのであるが、このダマが撹拌機12に吸引されると、撹拌機12に詰まりが発生し易くなる。また、ある程度の建築用スラリー状物20となったものと共に材料21を流すと、この材料21が「塊」となって撹拌槽11の底壁11a上に溜まることにもなる。
【0068】
この点、この図7及び図8に示した建築用スラリー状物供給装置10では、撹拌槽11内に漏斗19を配置したから、建築用スラリー状物20や材料21等をこの漏斗19内に投入するようにすれば、この漏斗19内で建築用スラリー状物20や材料21等の乱流を発生して当該漏斗19にてプレ混合されながら撹拌槽11内に流下するから、上記のような「ダマ」や「塊」は発生しにくくなるのである。
【0069】
さて、本発明に係る建築用スラリー状物供給装置10によって建築用スラリー状物20が生成できた後には、撹拌機12の吐出口12a側に接続したホース18によって、建築用スラリー状物20は、例えば図1に示す基礎コンクリート30上に零れ出ることなく供給され、建築用スラリー状物供給装置10から基礎コンクリート30上に効率良く供給される。
【0070】
つまり、従来では、図12に示すように、できた建築用スラリー状物20を基礎コンクリート30上に手作業で打設するようにしていたため、打設先にある邪魔物を避けたり垂れ落ちないように注意を払わなければならなかったのであるが、本発明に係る建築用スラリー状物供給装置10では、ホース18の先を打設先に移動させるだけで簡単に供給でき、建築用スラリー状物20が垂れ落ちることもないのである。
【0071】
また、この建築用スラリー状物供給装置10を使用すれば、建築用スラリー状物20は、生成された後直ちに打設場所に供給できるから、その流動性に変化を生ずることはない。この建築用スラリー状物20が、基礎コンクリート30上に水平面を形成するための「セルフレベリング材」である場合には、自らが流れて水平面を形成するための十分な「流動性」が必要なのであるが、この建築用スラリー状物供給装置10を使用すれば、撹拌槽11内にて生成した建築用スラリー状物20を硬化する前に直ちにホース18によって基礎コンクリート30上に供給できるのであるから、打設された建築用スラリー状物20に流動性の変化はなく、「セルフレベリング材」としての機能を十分発揮させ得るのである。
【0072】
以上のような建築用スラリー状物20の生成と施工場所への供給(打設)が終了すれば、この建築用スラリー状物20を構成している撹拌槽11、撹拌機12及びホース18内を洗浄しなければならないが、その場合には、撹拌槽11内に水を入れて撹拌機12を作動させれば、これらの各部の洗浄は簡単に行える。入れた水は、撹拌機12によって撹拌槽11内に戻されるから、撹拌槽11内の洗浄が行なわれるからである。なお、撹拌槽11内を洗浄した水は、取出口13から排水すればよい。
【0073】
図10及び図11には、本発明に係る建築用スラリー状物供給装置10の他の実施例が示してある。これらの図10及び図11に示した建築用スラリー状物供給装置10で、前述した実施例において使用しているのと同じ機能を有する部材については、図面中に同一符号を付してその説明は省略する。
【0074】
この実施例で使用している撹拌機12は、その吐出口12aが、図11に示したように、撹拌槽11内の上部に突出するタイプのものを採用したもので、この吐出口12aの先端は、撹拌槽11を通して外に出されて、戻し管14の途中に接続してある。一方、漏斗19は、撹拌槽11の上端に載置されており、この漏斗19内に、上記戻し管14の先端を開口させてある。なお、この漏斗19の吐出口19aは、当該漏斗19の底部から撹拌槽11内に延び、その下端は、撹拌槽11の投入面11bに向けて開口させてある。
【0075】
この図10及び図11に示した建築用スラリー状物供給装置10では、まず材料の一つである水を漏斗19内に流し込み、撹拌機12で汲み上げできる量まで撹拌槽11内に投入する。そして、図11の図示左側の開閉弁17を閉じるとともに、図示右側の開閉弁17を開いて撹拌機を作動させる。そうすると、水が戻し管14を介して撹拌槽11と漏斗19との間を循環することになる。そこで、この水が循環している漏斗19内にセメントなどの他の材料を投入することにより、ダマを生ずることなく建築用スラリー状物20が形成されていく。
【0076】
適宜粘性と十分な量の建築用スラリー状物20が完成すれば、今度は、図11の図示右側に示した開閉弁17を閉じ、左側のそれを開いて、建築用スラリー状物20を撹拌機11のポンプ力によって供給管15を送るようにする。この供給管15から先のことは図1に示した通りであり、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る建築用スラリー状物供給装置によって基礎コンクリート上に建築用スラリー状物を施工している様子を示す説明斜視図である。
【図2】図1に示した建築用スラリー状物供給装置の拡大断面図である。
【図3】同建築用スラリー状物供給装置の三方弁のみを使用した場合の平面図である。
【図4】同建築用スラリー状物供給装置の三方弁及び開閉弁を使用した場合の平面図である。
【図5】同建築用スラリー状物供給装置において採用した撹拌機の部分破断拡大正面図である。
【図6】撹拌機を撹拌槽の外側に接続した例を示す拡大縦断面図である。
【図7】撹拌槽内に漏斗を設けた建築用スラリー状物供給装置の拡大縦断面図である。
【図8】同平面図である。
【図9】撹拌槽の底壁を傾斜させた例を示す拡大縦断面図である。
【図10】本発明に係る建築用スラリー状物供給装置の他の実施例を示す斜視図である。
【図11】同建築用スラリー状物供給装置の縦断面図である。
【図12】従来技術を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
10 建築用スラリー状物供給装置
11 撹拌槽
11a 底壁
11b 投入面
11c 収集凹所
11d 上部開口
12 撹拌機
12a 吐出口
13 取出口
14 戻し管
15 供給管
16 三方弁
17 開閉弁
18 ホース
19 漏斗
19a 吐出口
20 建築用スラリー状物
21 材料
30 基礎コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天端レベリング材やモルタル等の建築用スラリー状物となる材料が投入される撹拌槽と、この撹拌槽より、前記材料を吸引して前記撹拌槽内に戻す撹拌機とを備えたことを特徴とする建築用スラリー状物供給装置。
【請求項2】
前記撹拌機を、撹拌槽の底壁上に備えたことを特徴とする請求項1に記載の建築用スラリー状物供給装置。
【請求項3】
前記撹拌槽に取出口を設け、この取出口の外側に撹拌機を備えたことを特徴とする請求項1に記載の建築用スラリー状物供給装置。
【請求項4】
前記底壁の少なくとも一部を、前記撹拌槽の底壁上の撹拌機、または、前記取出口に向けて下方に傾斜させたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の建築用スラリー状物供給装置。
【請求項5】
前記撹拌槽内に、前記材料または建築用スラリー状物を受けて、当該撹拌槽内に吐出する漏斗を配置したことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載の建築用スラリー状物供給装置。
【請求項6】
前記撹拌機の吐出口に、前記撹拌槽内への戻しを行う戻し管と、施工現場側への給送を行う供給管とを接続したことを特徴とする請求項1〜請求項5に記載の建築用スラリー状物供給装置。
【請求項7】
前記戻し管、供給管及び前記撹拌機の吐出口間に、弁を介装したことを特徴とする請求項6に記載の建築用スラリー状物供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−37806(P2010−37806A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201718(P2008−201718)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(506125720)株式会社KSK (23)
【Fターム(参考)】