建築用パネル、及びその建築用パネルの製造方法、並びにその建築用パネルの施工工法
【課題】従来の建築用パネルに比べて著しく軽量化を図ることができ、その結果、パネルの厚みを厚くすることができ、また施工現場でのパネルの取り扱いや施工性を著しく良好とすることができ、製造コストも低廉化することができ、しかも断熱性も良好となるような建築用パネルを提供することを課題とする。
【解決手段】建築用パネルが、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されてなることを特徴とすることを特徴とする。
【解決手段】建築用パネルが、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されてなることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用パネル、及びその建築用パネルの製造方法、並びにその建築用パネルの施工工法、さらに詳しくは、建築、構築物の壁面等に貼着して施工する建築用パネルと、その建築用パネルの製造方法、並びにその建築用パネルを施工する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築、構築物の壁面等に貼着して用いるパネルとしては種々のものが用いられ、たとえば外観を美化し、高級感を現出するために、天然石のパネル等も用いられている。天然石としては、たとえば大理石や御影石等が用いられるが、パネルの厚さが厚くなると、重量が増大し、取り扱いにくく、施工性も悪く、またコスト高にもなる。
【0003】
そこで、このような問題を解決すべく、実際には天然石を用いずに、パネルの表面を天然石調にしたパネルも種々開発されており、そのような技術として、たとえば下記特許文献1又は2のような特許出願がなされている。
【0004】
特許文献1に係る発明は、当該特許文献1の請求項1にも記載されているように、「軽量無機質不燃材の芯材の片面又は両面に天然石材の表面材を設けた建築用パネル」である。しかし、この特許文献1に係る発明は、当該特許文献の明細書の段落[0008]にも記載されているように、軽量無機質不燃材の芯材として、たとえばガラス繊維を混入した火山礫板が用いられており、また表面材は天然石自体で構成されているので、パネル全体が天然石で構成されている場合に比べると軽量ではあるものの、重量を軽減し、或いは取り扱いや施工性を良好とするには限界がある。また接着剤を介して芯材の表面に天然石を貼着するので、施工現場で施工する前のパネルの製造自体も煩雑となっていた。
【0005】
さらに、特許文献2に係る発明は、当該特許文献2の請求項1に記載されているように、「0.1〜5.0mmの骨材を熱硬化性樹脂と混合し、加熱圧縮成形するもので、骨材を熱硬化性樹脂と所定の比率で混合して製造される土木、建築用パネル」に係るものである。しかし、当該特許文献2の明細書の段落[0010]にも記載されているように、骨材として石、セラミック、ガラス等の無機粒体が使用され、且つ請求項1等にも記載されているように、骨材と樹脂の混合比率が骨材100重量部に対して樹脂が2〜15重量部であるため、パネル全体が天然石で構成されている場合に比べて軽量ではあるが、軽量化を図り、或いは取り扱いや施工性を良好とするには、やはり限界がある。
【0006】
一方、天然石よりも軽量であることから、人工大理石のような人造石を用いた建築用パネルも開発されており、そのような人造石の建築用パネルに関する発明として、たとえば下記特許文献3のような特許出願がなされている。しかし、この特許文献3に係る発明は、人工大理石からなるパネルに金属製の縁枠を取り付けたものであるため、本質的に軽量化が図れるわけではなく、また取り扱いや施工性を良好とするにもやはり限界がある。
【0007】
さらに、上記のような天然石や人造石にはもともと断熱性が十分ではないので、これら天然石や人造石からなるパネルにも良好な断熱性を具備させることはできない。従って、このようなパネルは、たとえば壁面の外断熱工法に単独では適用することはできない。
【0008】
【特許文献1】特開平5−71211号公報
【特許文献2】特開2003−160367号公報
【特許文献3】特開2001−234680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、上記のような従来の建築用パネルに比べて著しく軽量化を図ることができ、その結果、パネルの厚みを厚くすることができ、また施工現場でのパネルの取り扱いや施工性を著しく良好とすることができ、製造コストも低廉化することができ、しかも断熱性も良好となるような建築用パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されてなることを特徴とする建築用パネルを提供するものである。
【0011】
基材の表面には、好ましくは複数条の溝部が形成され、該溝部内に下地層が充填されて該下地層のリブが形成されるように構成される。また、好ましくは、下地層内にはメッシュが具備される。仕上げ層は、たとえば砕石、セメント、及び合成樹脂等で構成される。
【0012】
また本発明は、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地材を塗布し、乾燥硬化させて下地層を形成し、型枠内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層を表面に形成した基材を前記仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料、下地層、及び基材を前記型枠から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地層を介して仕上げ層が設けられた建築用パネルを製造することを特徴とする建築用パネルの製造方法を提供するものである。
【0013】
基材の表面に複数条の溝部を形成しておくことで、該基材に下地材を塗布する工程で、前記基材の溝部内に下地材が充填され、それによって、上記のように、下地材によって構成された下地層のリブが形成されることとなる。
【0014】
さらに本発明は、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工することを特徴とする建築用パネルの施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建築用パネルは、上述のように、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されたものであり、基材が発泡性合成樹脂からなるので、従来の建築用パネルに比べて著しく軽量となる。この結果、パネルの厚みを厚くすることができ、それによって重厚感を現出させることができ、また、たとえば仕上げ層を天然石調等にすることによって、重厚感とともに高級感を現出させることができるという効果がある。
【0016】
また、上記のように基材を発泡性合成樹脂で構成してパネルを著しく軽量化することができるので、施工現場でのパネルの取り扱いや施工性を、従来に比べて著しく良好とすることができる。
【0017】
さらに、基材が発泡性合成樹脂で構成されているので、パネルの断熱性も良好となり、たとえば壁面の外断熱工法への適用も可能になるという利点がある。
【0018】
さらに、基材の表面に複数条の溝部を形成し、該溝部内に下地材が充填されて該下地層のリブが形成されるように構成した場合には、そのような下地層のリブと基材の溝部との嵌合構造により、基材と下地層とがともに補強されることとなり、パネルの強度が向上するだけでなく、基材からの下地層の剥離が好適に防止されるという効果がある。
【0019】
さらに、下地層内にメッシュを具備させた場合には、下地層の強度もより向上し、基材からの下地層の剥離がさらに好適に防止されることとなる。
【0020】
さらに、本発明の建築用パネルの製造方法は、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地材を塗布し、乾燥硬化させて下地層を形成し、型枠内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層を表面に形成した基材を前記仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料、下地層、及び基材を前記型枠から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地層を介して仕上げ層が設けられた建築用パネルを製造する方法であるため、全体の製造工程が簡易であり、パネルの製造コストも低廉化することができるという効果がある。
【0021】
さらに本発明の建築用パネルの施工方法は、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工する方法であるため、予め発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された、取り扱いの容易な建築用パネルを準備しておくことで、そのような建築用パネルを壁面等の被施工箇所に貼着するだけの簡易な作業で施工することができ、その施工作業が著しく容易になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の建築用パネルは、上述のように、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されてなるものである。
【0023】
基材を構成する発泡性合成樹脂の種類は特に限定されるものではないが、たとえば発泡ポリスチレンを好適に使用することができる。軽量であるとともに、取り扱いが容易であり、コストが安価で、合成樹脂としての汎用性も高いからである。ただし、発泡ポリスチレン以外の合成樹脂、たとえば発泡ポリエチレン等を用いることも可能である。
【0024】
また、基材の形状も問うものではなく、施工箇所に応じて任意の形状に形成することが可能であるが、複数のパネルを壁面等の施工箇所に貼着する作業の便宜からは、一般には長方形や正方形に形成される。
【0025】
さらに、基材の表面には、好ましくは複数条の溝部が形成される。このような複数条の溝部を基材に形成することで、その基材の表面に下地材を塗布したときに、その下地材が基材の溝部内に充填され、下地材が硬化して下地層が形成されたときに、基材の溝部内に充填された下地層の部分がリブ状となり、そのリブ状となった下地層の部分と基材の溝部とが相互に嵌合状態となる。その結果、下地層のリブと基材の溝部との嵌合構造により、基材と下地層とがともに補強されることとなり、パネルの強度が向上する。また基材からの下地層の剥離も好適に防止されることとなる。
【0026】
複数の溝部は、たとえば基材の表面の縦横に交差させて格子状に形成することが可能である。ただし、基材の表面に現出される溝部の形状は格子状に限定されるものではなく、任意の形状に形成することが可能である。また、基材の正面側と背面側の双方に溝部を形成してもよく、また正面側と背面側のいずれか一方のみに形成することも可能である。
【0027】
さらに、基材の側面に目地を形成することも可能である。このような目地を形成することで、発泡性合成樹脂からなる基材に透湿性を具備させることができる。
【0028】
下地層は、たとえばポリマーセメントモルタルで構成され、またポリマーセメントモルタル以外の下地材で下地層を構成することも可能である。また下地層にはメッシュを具備させることができる。メッシュとしては、たとえばガラス繊維製や合成樹脂製の網状体を使用することができる。
【0029】
仕上げ層は、たとえば砕石、セメント、及び合成樹脂等の仕上げ材で構成することができ、これ以外の仕上げ材で構成することも可能である。このような任意の仕上げ材を用いて、たとえば砂岩調、テラゾー調等、任意の化粧層に仕上げることが可能である。
【0030】
また本発明の建築用パネルの製造方法は、上述のように、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地材を塗布し、乾燥硬化させて下地層を形成し、型枠内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層を表面に形成した基材を前記仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料、下地層、及び基材を前記型枠から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地層を介して仕上げ層が設けられた建築用パネルを製造する方法である。
【0031】
下地層にメッシュを具備させる場合には、先ず基材の表面に下地材を塗布して一次塗装を行った後、その下地材上にメッシュを載置し、次に下地材を塗布して二次塗装を行う。このようにすることで、一次塗装及び二次塗装によって塗布された2層の下地材間にメッシュが装填されることとなる。ただし、一次塗装された下地材が完全に硬化する前に二次塗装がなされるので、一次塗装及び二次塗装される下地材は、明確な層間を生じさせることがない。
【0032】
下地材の塗布作業は、たとえば基材の表裏面のいずれか一面側に下地材を塗布した後、基材を反転させて他面側に下地材を塗布し、その後、基材の側面側に下地材を塗布することによって行う。
【0033】
型枠内に仕上げ用材料を流し込み、下地層を表面に形成した基材を仕上げ用材料に押し当て、仕上げ用材料が乾燥した後に脱型することで、基材の一面側に下地層を介して仕上げ層が形成されることになるが、その仕上げ層が形成された基材の一面側と反対側の他面側に仕上げ用材料を塗布することで、基材の正面及び背面に下地層を介して仕上げ層を形成することも可能となる。仕上げ層は、型枠表面の形状を任意に選択することにより、起伏のある表面に形成し或いは平滑な表面に形成する等、多様な意匠性を具備させることができる。
【0034】
さらに本発明の建築用パネルの施工方法は、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工する方法である。
【0035】
被施工箇所は、壁面に限定されるものではなく、たとえば床面、屋根等に本発明の建築用パネルを施工することも可能である。
【0036】
以下、本発明のより具体的な実施形態について、図面に従って説明する。
【0037】
(実施形態1)
本実施形態の建築用パネル1は、図1に示すように全体が正面略長方形状からなり、図2のように所定の厚みを有して形成されたものである。そして、この建築用パネル1は、図3に示すように基材2の表面全面に下地層3が設けられた構成からなる。下地層3内には、同図に示すように、メッシュ5が具備されている。尚、図3の断面図においては、便宜上、メッシュ5が四方に連続しているように図示されているが、実際には1枚のメッシュで基材2を包囲するようにメッシュを折り曲げながら下地層3内に具備させるので、折り曲げられたメッシュの両端部はわずかに離間した状態となっている。
【0038】
基材2は、発泡ポリスチレンによって構成されており、下地層3はポリマーセメントモルタルによって構成されており、メッシュ5は、ガラス繊維製や合成樹脂製の網状体によって構成されている。
【0039】
さらに、基材2の正面側には、前記下地層3を介して仕上げ層4が設けられている。この仕上げ層4は、たとえば砕石、セメント、及び合成樹脂等によって構成されており、これら砕石、セメント、及び合成樹脂等が下地層3に塗着されることによって、たとえば砂岩調、テラゾー調等に仕上げられている。
【0040】
そして、このような構成からなる建築用パネル1を製造する製造方法について説明する。先ず、図4に示すように全体が正面略長方形状からなり、図5のように所定の厚みを有する基材2を準備する。
【0041】
次に、図6に示すように、基材2の表面に下地材を塗布して下地層3を形成する。より具体的には、先ず下地材を塗布して一次塗装を行い、その後に該下地材の上面にメッシュ5を載置し、さらに前記一次塗装した下地材が乾燥する前に下地材を塗布して二次塗装を行い、下地材を乾燥させる。
【0042】
このように一次塗装及び二次塗装された下地材を乾燥させることによって、両下地材間に介装されるような状態でメッシュ5が具備されることとなる。このような、メッシュ5を具備した下地層3の形成は、基材2の6面全体に対して行う。
【0043】
次に、図7に示すように型枠6を準備し、その型枠6内に、図8のように仕上げ用材料4aを流し込む。そして、上記のように下地層3が形成された基材2を、図9のように仕上げ用材料4aが流し込まれた型枠6内に収容した後、図10に示すように、型枠6内に収容された基材2を仕上げ用材料4aに押し当てる。
【0044】
仕上げ用材料4aが乾燥した後、図11に示すように、下地層3を介して仕上げ層4が設けられた基材2を型枠から脱型する。このような脱型によって、基材2の表面に下地層3が設けられ、該基材2の正面側に仕上げ層4が設けられた建築用パネル1の製造が完成する。
【0045】
このようにして製造された建築用パネル1を多数準備し、壁面等の施工現場に搬送し、その壁面等に多数の建築用パネル1を貼着することによって施工がなされることとなる。
【0046】
この場合において、建築用パネル1の基材2が上記のように軽量の発泡ポリスチレンで構成されているため、上記のように壁面等に建築用パネル1を貼着する場合に、建築用パネル1の取り扱いが非常に容易であり、施工性が非常に良好となる。建築用パネルの貼着は、一般のモルタル系接着剤や樹脂系接着剤を使用して行うことができる。
【0047】
(実施形態2)
図12は、他の実施形態の基材の正面図、図13は、図12のC−C線断面図である。本実施形態においては、図12及び図13に示すように、基材2の正面側及び背面側に、溝部8が形成されている。この溝部8は、同図のように、縦横にそれぞれ複数状ずつ配設され、相互に交差して全体として格子状となるように形成されている。
【0048】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、基材2の表面に下地材を塗布して下地層3を形成する。この場合、実施形態1と同様に下地層3内にメッシュ5を具備させる。
【0049】
本実施形態においては、基材2の正面側及び背面側に複数の溝部8が形成されているため、基材2の表面に下地材を塗布することで、下地材が基材2の溝部8内に充填される。そして、下地材が硬化することによって、下地層3が形成されたとき、その溝部8内に充填された下地層3の部分がリブ9として形成され、下地層3のリブ9と基材2の溝部8とが相互に嵌合状態となる。
【0050】
このように下地層3のリブ9と基材2の溝部8とが相互に嵌合状態となることによって、基材2と下地層3とがともに補強されることとなり、建築用パネル1の強度が向上するだけでなく、基材2からの下地層3の剥離が好適に防止されることとなる。
【0051】
さらに、このようにして基材2の表面に下地層3が設けられたものを、実施形態1と同様に、仕上げ用材料が流し込まれた型枠6内に収容し、仕上げ用材料に押し当て、仕上げ用材料を乾燥させた後、型枠から脱型することによって、図15に示すように、基材2の表面に下地層3が設けられ、該基材2の正面側に下地層3を介して仕上げ層4が設けられた建築用パネル1が製造されることとなる。
【0052】
本実施形態においても、基材2が発泡ポリスチレンで構成されているので、実施形態1と同様に壁面等に建築用パネル1を貼着する場合に、建築用パネル1の取り扱いが非常に容易であり、施工性が非常に良好となる。
【0053】
さらに、本実施形態では、上述のように下地層3のリブ9と基材2の溝部8とが相互に嵌合状態とされているため、施工後において、建築用パネル1の強度が維持されるとともに、基材2からの下地層3の不用意な剥離が好適に防止されることとなる。
【0054】
(実施形態3)
図16は、他の実施形態の基材の正面図である。本実施形態においても上記実施形態2と同様に、基材2の正面側及び背面側に複数の溝部8が形成されている。ただし、その溝部8は、図16に示すように、一の中央の溝部8に対して他の複数の溝部8が放射状に配置されるように設けられている。この点で、複数の溝部8が格子状に配置されていた実施形態2とは、その溝部8の配置態様が相違している。
【0055】
このように溝部8の配置態様が実施形態2とは相違しているが、溝部8内に下地材が充填され、基材2の溝部8と、その溝部8内に充填された下地層3のリブ9とが相互に嵌合状態となる点は、実施形態2と同様である。
【0056】
従って、本実施形態においても、基材2と下地層3とがともに補強されることとなり、建築用パネル1の強度が向上するだけでなく、基材2からの下地層3の剥離が好適に防止されることとなる。
【0057】
下地層3内にメッシュ5が具備される点、仕上げ層4が下地層3を介して基材2の正面側に設けられる点等は、上記実施形態1、2と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施形態においても、基材2が発泡ポリスチレンで構成されているので、実施形態1、2と同様に壁面等に建築用パネル1を貼着する場合に、建築用パネル1の取り扱いが非常に容易であり、施工性が非常に良好となる。
【0059】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態1乃至3では、基材2を正面略長方形状に形成し、従って、建築用パネル1も正面略長方形状に形成されることになるが、基材2及び建築用パネル1の形状は上記実施形態1乃至3に限定されるものではなく、たとえば正面略正方形状に形成することも可能である。また、これ以外の形状に形成することも可能である。
【0060】
また、上記各実施形態では、基材2が発泡ポリスチレンで構成されていたが、これ以外の素材で構成することも可能である。要は、発泡性合成樹脂で構成されていればよい。
【0061】
さらに、上記各実施形態では、建築用パネル1の正面側のみに仕上げ層4を設けたが、正面側及び背面側の双方に仕上げ層4を設けることも可能である。要は、建築用パネル1の表面に下地層3を介して仕上げ層4が設けられていればよいのである。
【0062】
さらに、上記各実施形態では、建築用パネル1を壁面に施工する場合について説明したが、壁面に限らず、たとえば床面や屋根等に施工することも可能である。特に、上記実施形態2、3のように、基材2に溝部8を形成し、その溝部8内に下地材が充填されて下地層3と溝部8とが相互に嵌合状態となるように構成した場合には、上記のように壁面に施工する場合のみならず、床面に施工するような場合にも、踏圧に対して強度を好適に発揮させることができるという効果がある。
【0063】
また、床面に施工する場合、基材2が発泡性合成樹脂からなるので、その基材2のクッション性によって踏圧に対する耐衝撃性も良好となる。床面に施工する場合には、仕上げ層4としてタイルを用いることも可能である。
【0064】
さらに、上記のように、基材2に溝部8を形成することに代えて、建築用パネル1の強度を向上させるために、杭を基材2に打ち込むことも可能である。また建築用パネル1は、貼着することによって被施工箇所に施工することが望ましいが、接着剤に代えてパネル同士を連結させる連結治具や、被施工箇所への留具を使用することも可能であり、またこれら連結治具や留具を接着剤と併用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】一実施形態の建築用パネルの正面図。
【図2】同側面図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】一実施形態の建築用パネルの製造方法において、基材を準備する工程を示す正面図。
【図5】図4のB−B線断面図。
【図6】下地層を形成する工程を示す断面図。
【図7】型枠を準備する工程を示す断面図。
【図8】型枠内に仕上げ用材料を流し込む工程を示す断面図。
【図9】仕上げ用材料が流し込まれた型枠内に、下地層を有する基材を収容する工程を示す断面図。
【図10】型枠内に基材を収容して仕上げ用材料に押し付ける工程を示す断面図。
【図11】下地層を介して仕上げ層が設けられた基材を型枠から脱型する工程を示す断面図。
【図12】他の実施形態の基材の概略正面図。
【図13】図12のC−C線断面図。
【図14】下地層を形成する工程を示す断面図。
【図15】仕上げ層を形成する工程を示す断面図。
【図16】さらに他の実施形態の建築用パネルの正面図。
【符号の説明】
【0066】
1 建築用パネル
2 基材
3 下地層
4 仕上げ層
5 メッシュ
8 溝部
9 リブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用パネル、及びその建築用パネルの製造方法、並びにその建築用パネルの施工工法、さらに詳しくは、建築、構築物の壁面等に貼着して施工する建築用パネルと、その建築用パネルの製造方法、並びにその建築用パネルを施工する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築、構築物の壁面等に貼着して用いるパネルとしては種々のものが用いられ、たとえば外観を美化し、高級感を現出するために、天然石のパネル等も用いられている。天然石としては、たとえば大理石や御影石等が用いられるが、パネルの厚さが厚くなると、重量が増大し、取り扱いにくく、施工性も悪く、またコスト高にもなる。
【0003】
そこで、このような問題を解決すべく、実際には天然石を用いずに、パネルの表面を天然石調にしたパネルも種々開発されており、そのような技術として、たとえば下記特許文献1又は2のような特許出願がなされている。
【0004】
特許文献1に係る発明は、当該特許文献1の請求項1にも記載されているように、「軽量無機質不燃材の芯材の片面又は両面に天然石材の表面材を設けた建築用パネル」である。しかし、この特許文献1に係る発明は、当該特許文献の明細書の段落[0008]にも記載されているように、軽量無機質不燃材の芯材として、たとえばガラス繊維を混入した火山礫板が用いられており、また表面材は天然石自体で構成されているので、パネル全体が天然石で構成されている場合に比べると軽量ではあるものの、重量を軽減し、或いは取り扱いや施工性を良好とするには限界がある。また接着剤を介して芯材の表面に天然石を貼着するので、施工現場で施工する前のパネルの製造自体も煩雑となっていた。
【0005】
さらに、特許文献2に係る発明は、当該特許文献2の請求項1に記載されているように、「0.1〜5.0mmの骨材を熱硬化性樹脂と混合し、加熱圧縮成形するもので、骨材を熱硬化性樹脂と所定の比率で混合して製造される土木、建築用パネル」に係るものである。しかし、当該特許文献2の明細書の段落[0010]にも記載されているように、骨材として石、セラミック、ガラス等の無機粒体が使用され、且つ請求項1等にも記載されているように、骨材と樹脂の混合比率が骨材100重量部に対して樹脂が2〜15重量部であるため、パネル全体が天然石で構成されている場合に比べて軽量ではあるが、軽量化を図り、或いは取り扱いや施工性を良好とするには、やはり限界がある。
【0006】
一方、天然石よりも軽量であることから、人工大理石のような人造石を用いた建築用パネルも開発されており、そのような人造石の建築用パネルに関する発明として、たとえば下記特許文献3のような特許出願がなされている。しかし、この特許文献3に係る発明は、人工大理石からなるパネルに金属製の縁枠を取り付けたものであるため、本質的に軽量化が図れるわけではなく、また取り扱いや施工性を良好とするにもやはり限界がある。
【0007】
さらに、上記のような天然石や人造石にはもともと断熱性が十分ではないので、これら天然石や人造石からなるパネルにも良好な断熱性を具備させることはできない。従って、このようなパネルは、たとえば壁面の外断熱工法に単独では適用することはできない。
【0008】
【特許文献1】特開平5−71211号公報
【特許文献2】特開2003−160367号公報
【特許文献3】特開2001−234680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、上記のような従来の建築用パネルに比べて著しく軽量化を図ることができ、その結果、パネルの厚みを厚くすることができ、また施工現場でのパネルの取り扱いや施工性を著しく良好とすることができ、製造コストも低廉化することができ、しかも断熱性も良好となるような建築用パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されてなることを特徴とする建築用パネルを提供するものである。
【0011】
基材の表面には、好ましくは複数条の溝部が形成され、該溝部内に下地層が充填されて該下地層のリブが形成されるように構成される。また、好ましくは、下地層内にはメッシュが具備される。仕上げ層は、たとえば砕石、セメント、及び合成樹脂等で構成される。
【0012】
また本発明は、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地材を塗布し、乾燥硬化させて下地層を形成し、型枠内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層を表面に形成した基材を前記仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料、下地層、及び基材を前記型枠から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地層を介して仕上げ層が設けられた建築用パネルを製造することを特徴とする建築用パネルの製造方法を提供するものである。
【0013】
基材の表面に複数条の溝部を形成しておくことで、該基材に下地材を塗布する工程で、前記基材の溝部内に下地材が充填され、それによって、上記のように、下地材によって構成された下地層のリブが形成されることとなる。
【0014】
さらに本発明は、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工することを特徴とする建築用パネルの施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建築用パネルは、上述のように、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されたものであり、基材が発泡性合成樹脂からなるので、従来の建築用パネルに比べて著しく軽量となる。この結果、パネルの厚みを厚くすることができ、それによって重厚感を現出させることができ、また、たとえば仕上げ層を天然石調等にすることによって、重厚感とともに高級感を現出させることができるという効果がある。
【0016】
また、上記のように基材を発泡性合成樹脂で構成してパネルを著しく軽量化することができるので、施工現場でのパネルの取り扱いや施工性を、従来に比べて著しく良好とすることができる。
【0017】
さらに、基材が発泡性合成樹脂で構成されているので、パネルの断熱性も良好となり、たとえば壁面の外断熱工法への適用も可能になるという利点がある。
【0018】
さらに、基材の表面に複数条の溝部を形成し、該溝部内に下地材が充填されて該下地層のリブが形成されるように構成した場合には、そのような下地層のリブと基材の溝部との嵌合構造により、基材と下地層とがともに補強されることとなり、パネルの強度が向上するだけでなく、基材からの下地層の剥離が好適に防止されるという効果がある。
【0019】
さらに、下地層内にメッシュを具備させた場合には、下地層の強度もより向上し、基材からの下地層の剥離がさらに好適に防止されることとなる。
【0020】
さらに、本発明の建築用パネルの製造方法は、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地材を塗布し、乾燥硬化させて下地層を形成し、型枠内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層を表面に形成した基材を前記仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料、下地層、及び基材を前記型枠から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地層を介して仕上げ層が設けられた建築用パネルを製造する方法であるため、全体の製造工程が簡易であり、パネルの製造コストも低廉化することができるという効果がある。
【0021】
さらに本発明の建築用パネルの施工方法は、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工する方法であるため、予め発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された、取り扱いの容易な建築用パネルを準備しておくことで、そのような建築用パネルを壁面等の被施工箇所に貼着するだけの簡易な作業で施工することができ、その施工作業が著しく容易になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の建築用パネルは、上述のように、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成されてなるものである。
【0023】
基材を構成する発泡性合成樹脂の種類は特に限定されるものではないが、たとえば発泡ポリスチレンを好適に使用することができる。軽量であるとともに、取り扱いが容易であり、コストが安価で、合成樹脂としての汎用性も高いからである。ただし、発泡ポリスチレン以外の合成樹脂、たとえば発泡ポリエチレン等を用いることも可能である。
【0024】
また、基材の形状も問うものではなく、施工箇所に応じて任意の形状に形成することが可能であるが、複数のパネルを壁面等の施工箇所に貼着する作業の便宜からは、一般には長方形や正方形に形成される。
【0025】
さらに、基材の表面には、好ましくは複数条の溝部が形成される。このような複数条の溝部を基材に形成することで、その基材の表面に下地材を塗布したときに、その下地材が基材の溝部内に充填され、下地材が硬化して下地層が形成されたときに、基材の溝部内に充填された下地層の部分がリブ状となり、そのリブ状となった下地層の部分と基材の溝部とが相互に嵌合状態となる。その結果、下地層のリブと基材の溝部との嵌合構造により、基材と下地層とがともに補強されることとなり、パネルの強度が向上する。また基材からの下地層の剥離も好適に防止されることとなる。
【0026】
複数の溝部は、たとえば基材の表面の縦横に交差させて格子状に形成することが可能である。ただし、基材の表面に現出される溝部の形状は格子状に限定されるものではなく、任意の形状に形成することが可能である。また、基材の正面側と背面側の双方に溝部を形成してもよく、また正面側と背面側のいずれか一方のみに形成することも可能である。
【0027】
さらに、基材の側面に目地を形成することも可能である。このような目地を形成することで、発泡性合成樹脂からなる基材に透湿性を具備させることができる。
【0028】
下地層は、たとえばポリマーセメントモルタルで構成され、またポリマーセメントモルタル以外の下地材で下地層を構成することも可能である。また下地層にはメッシュを具備させることができる。メッシュとしては、たとえばガラス繊維製や合成樹脂製の網状体を使用することができる。
【0029】
仕上げ層は、たとえば砕石、セメント、及び合成樹脂等の仕上げ材で構成することができ、これ以外の仕上げ材で構成することも可能である。このような任意の仕上げ材を用いて、たとえば砂岩調、テラゾー調等、任意の化粧層に仕上げることが可能である。
【0030】
また本発明の建築用パネルの製造方法は、上述のように、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地材を塗布し、乾燥硬化させて下地層を形成し、型枠内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層を表面に形成した基材を前記仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料、下地層、及び基材を前記型枠から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材の表面に下地層を介して仕上げ層が設けられた建築用パネルを製造する方法である。
【0031】
下地層にメッシュを具備させる場合には、先ず基材の表面に下地材を塗布して一次塗装を行った後、その下地材上にメッシュを載置し、次に下地材を塗布して二次塗装を行う。このようにすることで、一次塗装及び二次塗装によって塗布された2層の下地材間にメッシュが装填されることとなる。ただし、一次塗装された下地材が完全に硬化する前に二次塗装がなされるので、一次塗装及び二次塗装される下地材は、明確な層間を生じさせることがない。
【0032】
下地材の塗布作業は、たとえば基材の表裏面のいずれか一面側に下地材を塗布した後、基材を反転させて他面側に下地材を塗布し、その後、基材の側面側に下地材を塗布することによって行う。
【0033】
型枠内に仕上げ用材料を流し込み、下地層を表面に形成した基材を仕上げ用材料に押し当て、仕上げ用材料が乾燥した後に脱型することで、基材の一面側に下地層を介して仕上げ層が形成されることになるが、その仕上げ層が形成された基材の一面側と反対側の他面側に仕上げ用材料を塗布することで、基材の正面及び背面に下地層を介して仕上げ層を形成することも可能となる。仕上げ層は、型枠表面の形状を任意に選択することにより、起伏のある表面に形成し或いは平滑な表面に形成する等、多様な意匠性を具備させることができる。
【0034】
さらに本発明の建築用パネルの施工方法は、発泡性合成樹脂からなる基材と、該基材の表面に設けられた下地層と、該下地層の表面に設けられた仕上げ層とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工する方法である。
【0035】
被施工箇所は、壁面に限定されるものではなく、たとえば床面、屋根等に本発明の建築用パネルを施工することも可能である。
【0036】
以下、本発明のより具体的な実施形態について、図面に従って説明する。
【0037】
(実施形態1)
本実施形態の建築用パネル1は、図1に示すように全体が正面略長方形状からなり、図2のように所定の厚みを有して形成されたものである。そして、この建築用パネル1は、図3に示すように基材2の表面全面に下地層3が設けられた構成からなる。下地層3内には、同図に示すように、メッシュ5が具備されている。尚、図3の断面図においては、便宜上、メッシュ5が四方に連続しているように図示されているが、実際には1枚のメッシュで基材2を包囲するようにメッシュを折り曲げながら下地層3内に具備させるので、折り曲げられたメッシュの両端部はわずかに離間した状態となっている。
【0038】
基材2は、発泡ポリスチレンによって構成されており、下地層3はポリマーセメントモルタルによって構成されており、メッシュ5は、ガラス繊維製や合成樹脂製の網状体によって構成されている。
【0039】
さらに、基材2の正面側には、前記下地層3を介して仕上げ層4が設けられている。この仕上げ層4は、たとえば砕石、セメント、及び合成樹脂等によって構成されており、これら砕石、セメント、及び合成樹脂等が下地層3に塗着されることによって、たとえば砂岩調、テラゾー調等に仕上げられている。
【0040】
そして、このような構成からなる建築用パネル1を製造する製造方法について説明する。先ず、図4に示すように全体が正面略長方形状からなり、図5のように所定の厚みを有する基材2を準備する。
【0041】
次に、図6に示すように、基材2の表面に下地材を塗布して下地層3を形成する。より具体的には、先ず下地材を塗布して一次塗装を行い、その後に該下地材の上面にメッシュ5を載置し、さらに前記一次塗装した下地材が乾燥する前に下地材を塗布して二次塗装を行い、下地材を乾燥させる。
【0042】
このように一次塗装及び二次塗装された下地材を乾燥させることによって、両下地材間に介装されるような状態でメッシュ5が具備されることとなる。このような、メッシュ5を具備した下地層3の形成は、基材2の6面全体に対して行う。
【0043】
次に、図7に示すように型枠6を準備し、その型枠6内に、図8のように仕上げ用材料4aを流し込む。そして、上記のように下地層3が形成された基材2を、図9のように仕上げ用材料4aが流し込まれた型枠6内に収容した後、図10に示すように、型枠6内に収容された基材2を仕上げ用材料4aに押し当てる。
【0044】
仕上げ用材料4aが乾燥した後、図11に示すように、下地層3を介して仕上げ層4が設けられた基材2を型枠から脱型する。このような脱型によって、基材2の表面に下地層3が設けられ、該基材2の正面側に仕上げ層4が設けられた建築用パネル1の製造が完成する。
【0045】
このようにして製造された建築用パネル1を多数準備し、壁面等の施工現場に搬送し、その壁面等に多数の建築用パネル1を貼着することによって施工がなされることとなる。
【0046】
この場合において、建築用パネル1の基材2が上記のように軽量の発泡ポリスチレンで構成されているため、上記のように壁面等に建築用パネル1を貼着する場合に、建築用パネル1の取り扱いが非常に容易であり、施工性が非常に良好となる。建築用パネルの貼着は、一般のモルタル系接着剤や樹脂系接着剤を使用して行うことができる。
【0047】
(実施形態2)
図12は、他の実施形態の基材の正面図、図13は、図12のC−C線断面図である。本実施形態においては、図12及び図13に示すように、基材2の正面側及び背面側に、溝部8が形成されている。この溝部8は、同図のように、縦横にそれぞれ複数状ずつ配設され、相互に交差して全体として格子状となるように形成されている。
【0048】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、基材2の表面に下地材を塗布して下地層3を形成する。この場合、実施形態1と同様に下地層3内にメッシュ5を具備させる。
【0049】
本実施形態においては、基材2の正面側及び背面側に複数の溝部8が形成されているため、基材2の表面に下地材を塗布することで、下地材が基材2の溝部8内に充填される。そして、下地材が硬化することによって、下地層3が形成されたとき、その溝部8内に充填された下地層3の部分がリブ9として形成され、下地層3のリブ9と基材2の溝部8とが相互に嵌合状態となる。
【0050】
このように下地層3のリブ9と基材2の溝部8とが相互に嵌合状態となることによって、基材2と下地層3とがともに補強されることとなり、建築用パネル1の強度が向上するだけでなく、基材2からの下地層3の剥離が好適に防止されることとなる。
【0051】
さらに、このようにして基材2の表面に下地層3が設けられたものを、実施形態1と同様に、仕上げ用材料が流し込まれた型枠6内に収容し、仕上げ用材料に押し当て、仕上げ用材料を乾燥させた後、型枠から脱型することによって、図15に示すように、基材2の表面に下地層3が設けられ、該基材2の正面側に下地層3を介して仕上げ層4が設けられた建築用パネル1が製造されることとなる。
【0052】
本実施形態においても、基材2が発泡ポリスチレンで構成されているので、実施形態1と同様に壁面等に建築用パネル1を貼着する場合に、建築用パネル1の取り扱いが非常に容易であり、施工性が非常に良好となる。
【0053】
さらに、本実施形態では、上述のように下地層3のリブ9と基材2の溝部8とが相互に嵌合状態とされているため、施工後において、建築用パネル1の強度が維持されるとともに、基材2からの下地層3の不用意な剥離が好適に防止されることとなる。
【0054】
(実施形態3)
図16は、他の実施形態の基材の正面図である。本実施形態においても上記実施形態2と同様に、基材2の正面側及び背面側に複数の溝部8が形成されている。ただし、その溝部8は、図16に示すように、一の中央の溝部8に対して他の複数の溝部8が放射状に配置されるように設けられている。この点で、複数の溝部8が格子状に配置されていた実施形態2とは、その溝部8の配置態様が相違している。
【0055】
このように溝部8の配置態様が実施形態2とは相違しているが、溝部8内に下地材が充填され、基材2の溝部8と、その溝部8内に充填された下地層3のリブ9とが相互に嵌合状態となる点は、実施形態2と同様である。
【0056】
従って、本実施形態においても、基材2と下地層3とがともに補強されることとなり、建築用パネル1の強度が向上するだけでなく、基材2からの下地層3の剥離が好適に防止されることとなる。
【0057】
下地層3内にメッシュ5が具備される点、仕上げ層4が下地層3を介して基材2の正面側に設けられる点等は、上記実施形態1、2と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施形態においても、基材2が発泡ポリスチレンで構成されているので、実施形態1、2と同様に壁面等に建築用パネル1を貼着する場合に、建築用パネル1の取り扱いが非常に容易であり、施工性が非常に良好となる。
【0059】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態1乃至3では、基材2を正面略長方形状に形成し、従って、建築用パネル1も正面略長方形状に形成されることになるが、基材2及び建築用パネル1の形状は上記実施形態1乃至3に限定されるものではなく、たとえば正面略正方形状に形成することも可能である。また、これ以外の形状に形成することも可能である。
【0060】
また、上記各実施形態では、基材2が発泡ポリスチレンで構成されていたが、これ以外の素材で構成することも可能である。要は、発泡性合成樹脂で構成されていればよい。
【0061】
さらに、上記各実施形態では、建築用パネル1の正面側のみに仕上げ層4を設けたが、正面側及び背面側の双方に仕上げ層4を設けることも可能である。要は、建築用パネル1の表面に下地層3を介して仕上げ層4が設けられていればよいのである。
【0062】
さらに、上記各実施形態では、建築用パネル1を壁面に施工する場合について説明したが、壁面に限らず、たとえば床面や屋根等に施工することも可能である。特に、上記実施形態2、3のように、基材2に溝部8を形成し、その溝部8内に下地材が充填されて下地層3と溝部8とが相互に嵌合状態となるように構成した場合には、上記のように壁面に施工する場合のみならず、床面に施工するような場合にも、踏圧に対して強度を好適に発揮させることができるという効果がある。
【0063】
また、床面に施工する場合、基材2が発泡性合成樹脂からなるので、その基材2のクッション性によって踏圧に対する耐衝撃性も良好となる。床面に施工する場合には、仕上げ層4としてタイルを用いることも可能である。
【0064】
さらに、上記のように、基材2に溝部8を形成することに代えて、建築用パネル1の強度を向上させるために、杭を基材2に打ち込むことも可能である。また建築用パネル1は、貼着することによって被施工箇所に施工することが望ましいが、接着剤に代えてパネル同士を連結させる連結治具や、被施工箇所への留具を使用することも可能であり、またこれら連結治具や留具を接着剤と併用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】一実施形態の建築用パネルの正面図。
【図2】同側面図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】一実施形態の建築用パネルの製造方法において、基材を準備する工程を示す正面図。
【図5】図4のB−B線断面図。
【図6】下地層を形成する工程を示す断面図。
【図7】型枠を準備する工程を示す断面図。
【図8】型枠内に仕上げ用材料を流し込む工程を示す断面図。
【図9】仕上げ用材料が流し込まれた型枠内に、下地層を有する基材を収容する工程を示す断面図。
【図10】型枠内に基材を収容して仕上げ用材料に押し付ける工程を示す断面図。
【図11】下地層を介して仕上げ層が設けられた基材を型枠から脱型する工程を示す断面図。
【図12】他の実施形態の基材の概略正面図。
【図13】図12のC−C線断面図。
【図14】下地層を形成する工程を示す断面図。
【図15】仕上げ層を形成する工程を示す断面図。
【図16】さらに他の実施形態の建築用パネルの正面図。
【符号の説明】
【0066】
1 建築用パネル
2 基材
3 下地層
4 仕上げ層
5 メッシュ
8 溝部
9 リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性合成樹脂からなる基材(2)と、該基材(2)の表面に設けられた下地層(3)と、該下地層(3)の表面に設けられた仕上げ層(4)とで構成されてなることを特徴とする建築用パネル。
【請求項2】
基材(2)の表面に複数条の溝部(8)が形成され、該溝部(8)内に下地材が充填されて該下地材によって構成される下地層(3)のリブ(9)が形成されるように構成されている請求項1記載の建築用パネル。
【請求項3】
下地層(3)内にメッシュ(5)が具備されている請求項1又は請求項2記載の建築用パネル。
【請求項4】
仕上げ層(4)が、砕石、セメント、及び合成樹脂で構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の建築用パネル。
【請求項5】
発泡性合成樹脂からなる基材(2)の表面に下地材を塗布し、該下地材を乾燥硬化させて下地層(3)を形成し、型枠(6)内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層(3)を表面に形成した基材(2)を前記型枠(6)内の仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料によって形成される仕上げ層(4)、下地層(3)、及び基材(2)を前記型枠(6)から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材(2)の表面に下地層(3)を介して仕上げ層(4)が設けられた建築用パネルを製造することを特徴とする建築用パネルの製造方法。
【請求項6】
複数条の溝部(8)が形成された基材(2)に下地材を塗布することで、前記基材(2)の溝部(8)内に下地材を充填して該下地材で構成される下地層(3)のリブ(9)を形成する請求項5記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項7】
発泡性合成樹脂からなる基材(2)と、該基材(2)の表面に設けられた下地層(3)と、該下地層(3)の表面に設けられた仕上げ層(4)とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工することを特徴とする建築用パネルの施工方法。
【請求項1】
発泡性合成樹脂からなる基材(2)と、該基材(2)の表面に設けられた下地層(3)と、該下地層(3)の表面に設けられた仕上げ層(4)とで構成されてなることを特徴とする建築用パネル。
【請求項2】
基材(2)の表面に複数条の溝部(8)が形成され、該溝部(8)内に下地材が充填されて該下地材によって構成される下地層(3)のリブ(9)が形成されるように構成されている請求項1記載の建築用パネル。
【請求項3】
下地層(3)内にメッシュ(5)が具備されている請求項1又は請求項2記載の建築用パネル。
【請求項4】
仕上げ層(4)が、砕石、セメント、及び合成樹脂で構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の建築用パネル。
【請求項5】
発泡性合成樹脂からなる基材(2)の表面に下地材を塗布し、該下地材を乾燥硬化させて下地層(3)を形成し、型枠(6)内に仕上げ用材料を流し込み、前記下地層(3)を表面に形成した基材(2)を前記型枠(6)内の仕上げ用材料に押し当て、前記仕上げ用材料が乾燥した後、該仕上げ用材料によって形成される仕上げ層(4)、下地層(3)、及び基材(2)を前記型枠(6)から脱型して、発泡性合成樹脂からなる基材(2)の表面に下地層(3)を介して仕上げ層(4)が設けられた建築用パネルを製造することを特徴とする建築用パネルの製造方法。
【請求項6】
複数条の溝部(8)が形成された基材(2)に下地材を塗布することで、前記基材(2)の溝部(8)内に下地材を充填して該下地材で構成される下地層(3)のリブ(9)を形成する請求項5記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項7】
発泡性合成樹脂からなる基材(2)と、該基材(2)の表面に設けられた下地層(3)と、該下地層(3)の表面に設けられた仕上げ層(4)とで構成された建築用パネルを、壁面等の被施工箇所に貼着して施工することを特徴とする建築用パネルの施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−106554(P2010−106554A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279704(P2008−279704)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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