説明

建設シミュレーション方法、及び、装置

【課題】発電プラントの機器,配管の複雑な据付けに対応して、合理的に建設計画工程を立案することができなかった。据付実績工程を論理的に分析して、処理する作業は時間と手間がかかるため、据付物量や作業工数のデータベースをもとにした工程自動生成は部分的な適用にとどまっていた。
【解決手段】既設3Dモデルと、実績工程データと、新設3Dモデルを記録したデータベースとを有し、前記既設3Dモデル及び前記新設3Dモデルの比較により得られた、建物内の機器又は配管の据付位置の類似性を判定する3D部品配置位置一致度判定部と、前記既設3Dモデルと前記実績工程データを対応付けた対応関係データから、新設3Dモデルのうち前記3D部品配置位置一致度判定部で抽出された既設3Dモデルの一致部分に対応する実績工程データを選択して前記新設3Dモデルに対応する計画工程データとする実績工程選択部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの設計・調達・建設などに係わる分野の、CADデータや設計データをもとにした、工程データ作成支援に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力・火力などの発電プラントの建設においては、発電設備を納める建物のみならず、配管や機器などの複雑な据付けに対応した計画を、建設開始前に立案する必要がある。
【0003】
建設計画立案に関して、近年、3D CADデータや電子的工程データが多用されている。建設工事に必要な部材の見積もりは3D CADデータと関連づいている属性データを集計することで可能となり、工数の見積もりは工程データを電子的に利用することで自動集計できるようになってきた。
【0004】
しかしながら、工程の最も初期のデータは計画者が作成する必要があり、建設に関わる経験とノウハウが豊富な熟練者でも、非常に時間を要する仕事になっている。
【0005】
特許文献1の「工程表作成支援方法」では、建築工事のタクト工程では階工区の施工数量が異なっていても、採用する構・工法およびその工区に含まれる部材の属性が全く同じ場合が多く、その場合はタクト工程(必要となる作業とその作業名や手順)も同じになる。そこで、採用する構・工法および工区に含まれる部材の属性が全く同じであり、階工区に共通で使用できるタクト工程を「基本タクト工程」として作成することが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−18673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術で述べたように、あらかじめ整理した据付物の物量や工法をもとに、例えば、一般的な建物の建築工程を生成することができる。しかしながら、原子力や火力の発電プラントのように、機器,配管の複雑な据付けに対応して、据付手順や工数を、新規建設プラント向けに利用して、詳細な計画工程を生成することが難しかった。このように、据付実績工程を論理的に分析して、処理する作業は時間と手間がかかるため、据付物量や作業工数のデータベースをもとにした工程自動生成は部分的な適用にとどまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
既存のプラント設計3Dモデル(以下、既設3Dモデル)を記録したデータベースと、既存のプラントの据付実績工程データ(以下、実績工程データ)を記録したデータベースと、新規に建設するプラントの設計3Dモデル(以下、新設3Dモデル)を記録したデータベースとを有し、前記既設3Dモデル及び前記新設3Dモデルの比較により得られた、建物内の機器又は配管の据付位置の類似性を判定する3D部品配置位置一致度判定部と、前記既設3Dモデルと前記実績工程データを対応付けた対応関係データから、新設3Dモデルのうち前記3D部品配置位置一致度判定部で抽出された既設3Dモデルの一致部分に対応する実績工程データを選択して前記新設3Dモデルに対応する計画工程データとする実績工程選択部とを有する建設シミュレーション装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建設シミュレーション装置により、機器,配管の複雑な据付けに対応して、据付手順や工数を、新規建設プラント向けに計画工程を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明からなる建設シミュレーション装置の構成を示す図である(実施例1)。
【図2】建設シミュレーション装置の工程パターン判定部の構成を示す図である。
【図3】建設シミュレーション装置の工程パターン判定部の中の3D部品配置の類似性判定部の構成を示す図である。
【図4】3D部品配置の類似性判定部の機器配置の類似性を判定する処理の流れを示す図である。
【図5】機器仕様を利用した機器配置類似性判定の例を示す図である。
【図6】機器サイズ、配置座標を利用した機器配置類似性判定の例を示す図である。
【図7】配管ルートの類似性判定処理の流れを示す図である。
【図8】系統番号、配管仕様を利用した配管ルートの類似性判定の例を示す図である。
【図9】接続する機器の番号を利用した配管ルートの類似性判定の例を示す図である。
【図10】実績工程の例を示す図である。
【図11】実績工程選択処理の流れを示す図である。
【図12】3D部品のグループ化を利用した実績工程の選択の例を示す図である。
【図13】経験的知識を利用した実績工程の選択の例を示す図である。
【図14】実績工程未割当箇所判定処理の流れを示す図である。
【図15】工程合成部の構成を示す図である。
【図16】作業詳細構造(WBS)テンプレートの構成を示す図である。
【図17】物量割り当て処理の流れを示す図である。
【図18】物量割り当ての例を示す図である。
【図19】工程生成処理の流れを示す図である。
【図20】工程合成処理の流れを示す図である。
【図21】合成した工程の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
新設プラントと既設プラントの設計データ(機器仕様,配管ルート,溶接点)のうち一致する部分を判定し、据付実績に基づき、新設プラントの据付計画工程を自動生成する手段に基づき実現した例を実施例1に示す。
【実施例1】
【0012】
(1)装置構成(図1〜図3)
図1は、本発明の一実施例の建設シミュレーション装置の構成図であって、入出力装置100,3D CADシステム110,工程パターン判定部120,工程合成部160,妥当性確認部170,工程編集部180からなり、工程生成の素材となるデータとして、既設プラントの3Dデータベース210,新設プラントの3Dデータベース220,実績工程データベース230,工程テンプレートデータベース240,計画工程データベース250,マイルストーンデータベース260を利用する。
【0013】
図2は、建設シミュレーション装置の工程パターン判定部の構成を示す図である。工程パターン判定部は、さらに細分化され、部品−アクティビティ対応付部130,3D類似性比較部140,実績工程抽出部150からなる。
【0014】
部品−アクティビティ対応付部130は図12で後述し、実績工程抽出部150の処理で利用する。
【0015】
図3は、建設シミュレーション装置の工程パターン判定部の中の3D部品配置の類似性判定部の構成を示す図である。3D類似性比較部140は機器配置比較部1410,配管ルート比較部1420を用いて比較結果1430を出力するようになっている。これらのいずれか又は両方を用いることができ、後述の(2)(3)で詳述する。
【0016】
(2)機器配置の類似性比較(図4〜図6)
図4は3D機器配置の類似性判定部の機器配置の類似性を判定する処理の流れを示す図である。プラントの建物,部屋,機器に関して、処理の繰り返し(ステップ1410−p1〜p3)により、1)機器の仕様,サイズ,配置座標がすべて類似するもの(ステップ1410−p4,−p5,−p6,−p9)、2)仕様とサイズが類似し、配置座標が相違するもの(ステップ1410−p4,−p5,−p6,−p8)、3)仕様が類似し、サイズと配置座標が異なるもの(ステップ1410−p4,−p5,−p6,−p7)に分類し、それぞれについて、実績工程の利用方法を変える情報を作成する。仕様,サイズ,座標のいずれかを用いて類似の判定をしても良い。また、類似と相違の分類は予め定めた所定の範囲内に入るか否かを判定したり、所定の関数を用いるなどにより行うことができる。
【0017】
図5は機器仕様を利用した機器配置類似性判定の例を示す図である。機器種別(2100−a),容量(2100−b),最大圧力(2100−c),最大温度(2100−d),接続ノズル数(2100−e),作成メーカ名(2100−f)などの値、文字列の一致が多いほど、既設又は新設プラントの間で機器の仕様上の類似度が高いものと判定する。機器A(2100−1)が既設プラント、機器B(2200−1)が新設プラントである場合、これら機器の上記の仕様のいずれか、又は複数を用いて類似性を判定する。
【0018】
図6は機器サイズ,配置座標を利用した機器配置類似性判定の例を示す図である。既設/新設プラントの間で比較すべき機器(2100−E1,2100−E2)のサイズの奥行(D1),高さ(H1,H2),幅(W1)などの寸法パラメータ,ノズル数と位置(N1−1,N1−2,N1−3,N1−4,N2−1,N2−2,N2−3,N2−4)、機器の配置原点の座標(L1,L2)をもとに、図4に述べた処理により比較し、形状、及び、配置上の類似度を比較する。上述した機器サイズ,配置座標のいずれか、又は複数を用いて類似性を判定する。
【0019】
(3)配管ルートの類似性比較(図7〜図9)
図7は配管ルートの類似性判定処理の流れを示す図である。図4の機器同士の比較と同様、建物,部屋,配管の系統に関して処理を繰り返す(ステップ1420−p1,−p2,−p3)。接続機器が一致する場合(1420−p4)に、1)接続機器,配管口径,ルート点情報が類似する配管ルート(1420−p5,−p6,−p9)、2)接続機器,配管口径が一致し、ルート点情報が異なる配管ルート(1420−p5,−p6,−p8)、3)接続機器のみ一致し、配管口径,ルート点情報の利用法が異なる配管ルート(1420−p5,−p6,−p7)に分類し、それぞれについて、実績工程の利用方法を変える情報を作成する。接続機器,口径,ルート点のいずれかを用いて類似の判定をしても良い。また、類似と相違の分類は予め定めた所定の範囲内に入るか否かを判定したり、所定の関数を用いるなどにより行うことができる。
【0020】
図8は系統番号,配管仕様を利用した配管ルートの類似性判定の例を示す図である。プラントA−系統A−ライン1(2100−2)とプラントB−系統A−ライン2(2200−2)を比較する。比較のための接続機器,口径,接続点数を表形式で整理して、利用する。また、プラントA−系統A−ライン1(2100−2)について接続点情報に関してはライン番号(2100−PL)と接続点番号(2100−PL−1)をペアとして、点の三次元座標(2100−PL−2,2100−PL−3,2100−PL−4)をデータベースへ記録し、プラントB−系統A−ライン2(2200−2)についても同様の項目データをデータベースへ記録する(P2,P3の座標は省略)。既設/新設プラント(2100−2,2200−2)間で比較することにより、あらかじめ定めた距離Δ内に点が収まれば、近傍に接続点があると判断し、類似度の評価値を上げていく。
【0021】
図9は接続する機器の番号を利用した配管ルートの類似性判定の例を示す図である。図8で述べた、接続点を三次元モデル上で説明するものである。図8のプラントA−系統A−ライン1(2100−2)は、図9左のタンクからのラインPA−SA−L001であり、図8のプラントB−系統A−ライン2(2200−2)は、図9右のタンクからのラインPA−SA−L002である。図9の2100−E1はプラントAのタンクの名称T001であり、2200−E1はプラントBのタンクの名称T001である。
【0022】
(4)実績工程抽出処理(図10〜図12)
図10は実績工程(2301)の例を示す図である。建物を構築し、部屋(エリアA)を組み上げたあと(2301−a)、内部に据付ける機器,配管,サポートなどの据付作業に取り掛かれる。据付実績においては機器を据付けたあと(2301−b)、配管(2301−c),サポート(2301−d)を据付けている。さらに配管を据付単位(配管スプール)ごと(2301−c−1,2301−c−2,2301−c−6)に見ると詳細な実績データをとることもできるため、計画工程作成時にも詳細な据付順序を検討することができるようになる。機器の据付けも詳細な据付単位(2301−b−1,2301−b−2,2301−b−3)を記録し、サポートの据付けも詳細な据付単位(2301−d−1,2301−d−2,2301−d−3)を記録している。
【0023】
図11は実績工程選択処理の流れを示す図である。図4に示した機器配置類似性判定の処理や図7の配管ルートの類似性判定処理により得られた情報(1500−p1,1500−p2,1500−p6,1500−p7)をもとに1)実績工程をそのままコピーして新設プラント用工程にする場合(1500−p3,1500−p8)、2)実績工程に搬入作業量や溶接作業量の増減を加えて、アクティビティの期間とリソース(おもに作業人員)を調整する場合(1500−p4,1500−p5,1500−p9)、3)配管口径などの変更により係数を掛けることによりアクティビティ期間とリソースを調整する場合(1500−p10)に分けて、実績工程から新設プラント用の工程データを生成する。
【0024】
図12は3D部品のグループ化を利用した実績工程の選択の例を示す図である。部品−アクティビティ対応付部130で、既設プラントの3Dデータベース210と実績工程データベース230を対応づける設定を受付けてアクティビティの番号に対応して3Dの部品グループを生成したテーブルを図12に示す。このテーブルは、既設3Dモデルと実績データを対応付けた対応関係データである。このテーブルは作成された後、既設プラントの3Dデータベース210又は実績工程データベース230に記録しても良い。この対応関係をもとに、3D製品データの類似性の判断をされた情報から実績工程の新設プラント向けへの利用部分を抽出する。抽出された工程データが図12の下の表である。例えば図8のプラントAが既設であり、プラントBが新設である場合に、新設のプラントBの工程データは既設のプラントAのタンクT001や配管と類似していると判定されれば、図12のプラントAの既設3Dモデルと実績データを対応付けた対応関係データであるテーブルを参照して、そのアクティビティ番号に対応する工程データを実績工程DB230から抽出することができる。
【0025】
この抽出された工程データを新設3Dモデル向けの計画工程データへ割り当てることで新設3Dモデル向けの計画工程データを生成する。生成された計画工程データは、図1の工程合成部160,妥当性確認部170,工程編集部180を行わずに、計画工程データベース250へ記録される。
【0026】
上述したように、既存のプラント設計3Dモデルと据付実績工程データに基づいて、新規に建設するプラントの設計3Dモデルに対応する据付計画工程データを生成する建設シミュレーション装置において、前記既設3Dモデル及び前記新設3Dモデルの比較により得られた、建物内の機器又は配管の据付位置の類似性を判定する3D部品配置位置一致度判定部と、既設3Dモデルと実績工程データを対応付けた対応関係データから、新設3Dモデルのうち前記3D部品配置位置一致度判定部で抽出された既設3Dモデルの一致部分に対応する実績工程データを選択する実績工程選択部とを有する建設シミュレーション装置によって、新旧プラントの据付位置の類似箇所を判定することにより、機器,配管の複雑な据付けに対応して、据付手順や工数を、新規建設プラント向けに計画工程を生成することができる。また、実績工程に基づき、新設プラント用の計画工程データを自動的に作成することができ、建設計画業務の合理化に寄与することができるとともに、ぶれのない高精度な建設計画を実現することができる。
【0027】
(5)工程データ生成処理(図13〜図20)
図13は経験的知識を利用した実績工程の選択の例を示す図である。図に示すルールに基づき、生成したアクティビティ間の時間的な関係を決めるのに利用する。ルール番号に対応して、ルール内容とその優先度を対応付けたデータを記録している。工程パターン判定部120と工程合成部160での作業工程の順序を規定することが必要な場合に本ルールを参照して工程を生成することができる。
【0028】
図14は実績工程未割当箇所判定処理の流れを示す図である。実績工程が割り当てられなかった部分に関しては、システム的にアクティビティのデータを生成する。そのための実績未割当部分を抽出(1550−p1,1550−p3)して、一時的に記憶(1550−p2,1550−p4)しておき、図19に示す工程生成処理に利用する。
【0029】
図15は工程合成部の構成を示す図である。工程合成部160は工程パターン判定部120の出力である据付けパターンの判定結果120−o1をもとに工程テンプレート選択部1610、選択したテンプレート中のアクティビティに物量を割り当て、アクティビティの時間的長さを確定する物量割当部1620、アクティビティを組み合わせることにより工程を生成する工程生成部1630,実績工程抽出部150で選択した実績工程部分と生成した工程を組み合わせる工程合成部1640からなる。工程合成部の出力である合成後の工程160−o1は計画工程データベース250に格納される。
【0030】
図16は作業詳細構造(WBS:Work Breakdown Structure)テンプレートの構成を示す図である。これは作業の階層を示す構成情報である作業階層構成情報である。WBSではアクティビティの前後の順序関係を扱えるようにしておき、実績工程から抽出したアクティビティや、システムで生成したアクティビティの順序関係を規定して、工程データを作りだすための基礎データとして利用する。例えば、機械工事(2400−A−1)作業には、機器(2400−B−1)工事作業と、配管(2400−B−2)工事作業と、サポート(2400−B−3)工事作業がある。機器工事作業にはポンプ(2400−C−1)工事作業と、タンク(2400−C−2)工事作業がある。配管工事作業にはポンプ出入口配管(2400−C−3)工事作業と、タンク出入口配管(2400−C−4)工事作業がある。ポンプ工事作業には、ポンプA(2400−D−1)工事作業と、ポンプB(2400−D−2)工事作業がある。タンク工事作業には、タンクA(2400−D−3)工事作業と、タンクB(2400−D−4)工事作業がある。これら作業の順序関係のデータを設定しデータベースへ記録しておく。また、これら作業について、機器の重量などの新設プラントの設計情報と作業工数の対応関係のデータや、配管の溶接点と作業工数の対応関係のデータなども記録しておく。部品点数,寸法情報と作業工数の対応関係を記録しておいても良い。工程テンプレート選択部1610では工程テンプレートデータベース240からWBSテンプレートを入力する。
【0031】
図17は物量割り当て処理の流れを示す図である。物量割当部1620は、工程テンプレート選択部1610で選択したテンプレート中のアクティビティに物量を割り当て、アクティビティの時間的長さを確定する。本装置で工程を生成する際に、作業未割り当ての機器,配管(ステップ1620−p1,1620−p3)について、図16に示すWBSとCADデータの作業物量を用いて自動的に工数計算(ステップ1620−p2,1620−p4,1620−p5)により求める。工数計算の例としては、作業未割り当ての機器,配管に対応する工程をWBSテンプレートから抽出するなどがある。追加の工数計算として後述する図18の物量割り当てを行っても良い。工数計算より求めたアクティビティを連結して、工程を生成する。機器,配管の両方について工数計算を行っているがいずれかを行っても良い。
【0032】
図18は物量割り当ての他の例を示す図である。機器,配管に関して、重量の増加や配管長の増加に伴い、どの程度の単位で作業量を増やすか、あるいは減らすかを物量割当部1620で計算する。図18に示す数値は工程テンプレートの補助的な情報として工程テンプレートデータベース240へ格納しておくものとする。
【0033】
図19は工程生成処理の流れを示す図である。工程生成部1630により処理が実行される。実績工程が割り当てられなかった機器および配管について生成された工程(1630−p1,1630−p3)について、工程テンプレートの情報に基づき、アクティビティ間を順序づけして連結する(1630−p2,1630−p4)ことにより、工程を生成する。配管工程は関連する機器のアクティビティに連結される(1630−p5)。
【0034】
図20は工程合成処理の流れを示す図である。工程合成部1640により処理が実行され、機器又は配管について(1640−p1,1640−p5)工程生成部1630で生成した工程と、実績工程抽出部150で3D製品の類似度に基づいて抽出した実績工程を連結(1640−p3,1640−p4,1640−p7,1640−p8)することにより、新設プラント向けの据付計画工程を完成させる。機器と配管の実績工程割当可能かどうか(1640−p2,1640−p6)により、生成した工程と実績工程(1640−p3,1640−p4,1640−p7,1640−p8)の組み合わせで合成できる。
【0035】
なお、本発明では機器と配管について、類似度計算,工程生成,合成について述べたが、本方式は、その他の配管サポート,電気ケーブル・トレイ,空調ダクトなどの発電プラントの構成製品の据付けにも汎用的に適用可能である。
【0036】
上述したように、新設3Dモデルのうち既設3Dモデルに不一致の部分を実績工程未割当箇所として、前記3D部品配置位置一致度判定部の判定に基づいて抽出する実績工程未割当箇所判定部と、前記実績工程未割当箇所に対して、機器又は配管の標準工程の作業階層構成情報、新設3Dモデルの設計情報を用いて計算される作業工数をもとに、実績工程を部分的に割り当てることができない部分に対して、工程を生成する工程生成部とを有し、前記実績工程選択部で選択した工程データと前記工程生成部の出力結果を合成して、新設3Dモデル向けの計画工程データを生成する工程データ合成部を有する建設シミュレーション装置により、実績工程データを利用できない部分も工程を作成することができる。
【0037】
(6)生成した工程の可視化(図21)
図21は合成した工程の例を示す図である。建設シミュレーション装置は、入出力装置100の画面へ表示情報を出力する出力部を有する。工程を生成する対象を選択する画面100−cにより、対象プラント,工程種別,部屋番号,表示製品種別,「搬入」,「基礎据付」などの作業選択を作業者が入出力装置100から実施し、上述した新設プラント用の計画工程を生成し、新設プラント計画工程画面100−aに表示する。建設シミュレーション装置は、画面表示上に、実績工程を組み合わせて表示した部分のアクティビティと、実績から生成できず自動生成した3Dモデルとの不一致部分のアクティビティを区分けして表示するとともに、新設プラントの3Dデータ表示画面100−bに対応関係を表示する。生成した計画工程に関わる部品を3D CADシステム上で可視化表示することにより、実績工程から生成した部分と、システムで自動生成した部分に分けて表示することができ、生成工程の確認作業を効率化することができる。
【0038】
妥当性確認部170は、計画工程データベース250の工程データを読み出し、マイルストーンデータベース260のマイルストーンデータを読み出す。マイルストーンデータは工程の制約を規定したデータであり、例えば、遅延が許されない節目となる工程の制約を規定したデータや、工程の前後関係の制約を規定したデータなどが予め設定されて記録されている。また、3DCADの空間的な制約を規定したデータを記録しても良い。これらの制約データを用いて対応する工程や、CADデータとを比較して制約を満たしているか確認する処理を実行する。図21のインターフェイスへ工程データとマイルストーンデータを表示することで、作業者に妥当性の確認を促すこととしても良い。
【0039】
上述したように、予め設定した、工程の制約を規定したマイルストーンデータに対して、前記工程データ合成部で生成した工程が制約を満たしているかどうかを判定する工程マイルストーン妥当性判定部を有する建設シミュレーション装置と、機器、または、配管の3Dモデルをもとに生成した据付空間を加算した空間を用いて、予め設定され、制約を規定したデータに対して、据付けが成立するかどうかを判定する据付空間妥当性判定部を有する建設シミュレーション装置と、工程マイルストーン妥当性判定部は、据付作業の順序制約を規定したマイルストーンデータに基づき、工程の妥当性を判定する据付順序妥当性判定部を有する建設シミュレーション装置の、3つの装置により、生成した計画工程について、工程上のマイルストーン、3D空間上での据付空間の制約、作業順序の制約に基づき、妥当な計画であることを自動的に確認することができる。
【0040】
このとき、マイルストーンとなる期限を越えた工程データは他と区別して表示することで工程の修正について作業者を支援することができる。新設プラントのCADデータを記録した新設プラントの3Dデータベースと、前記新設プラントのCADデータと対応した工程データを記録した計画工程データベースと、遅延が許されない節目となる工程の期限データを記録したマイルストーンデータベースとを有する建設シミュレーション装置が、前記計画工程データベースから工程データを読み出し、前記マイルストーンデータベースから期限データを読み出し、マイルストーンとなる期限を越えた工程データは他と区別して表示することを特徴とする建設シミュレーション方法により、工程の修正について作業者を支援することができる。
【0041】
また、新設プラントの3DデータベースからCADデータを読み出し、図15の新設プラントの3Dデータベース220からのCADデータから工程生成部1630で生成した工程の対応関係に基づいて、マイルストーンとなる期限を越えた工程に対応するCADデータの該当部分を他と区別して表示しても良い。つまり、計画工程データベースの新設プラントのCADデータと対応した工程データの対応関係を用いて、前記マイルストーンとなる期限を越えた工程に対応するCADデータの該当部分を他と区別して表示することを特徴とする建設シミュレーション方法により、マイルストーンの期限を越えた後の物量をCADデータにより把握でき、修正の必要度合いをCAD上で把握できる。
【0042】
工程編集部180は、計画工程データベース250の工程データを読み出し、新設プラントの3DデータベースからCADデータを読み出し、図21のインターフェイスへ工程データと新設プラントのCADデータを対応させて表示する。作業者は入出力装置100から工程を編集することができる。編集は、工程の最小単位であるアクティビティに対して、工程の背景情報を付与する。工程の背景情報は、アクティビティに関連する情報であり、一例として、作業者のメモなどが挙げられる。工程の編集機能を備えることにより、計画者の判断により工程を現実的なものに変更することを可能にし、編集後の工程も、本発明の機能を適用することにより、妥当性を効率的に確認することができ、計画作成から妥当性確認、再編集による修正の業務の循環を効率化することができる。
【0043】
上述したように、計画工程を生成する際に、3D CAD表示システム上で、実績工程データに関わる部分と、それ以外の部分に分けて色分けして可視化する出力手段を有する建設シミュレーション装置により、実績工程から生成した部分と、システムで自動生成した部分に分けて表示することができ、生成工程の確認作業を効率化することができる。
【0044】
また、工程の最小単位であるアクティビティに対して、工程の背景情報を付与する工程編集部を有する建設シミュレーション装置により、計画者の判断により工程を現実的なものに変更することを可能にし、編集後の工程も、本発明の機能を適用することにより、妥当性を効率的に確認することができ、計画作成から妥当性確認、再編集による修正の業務の循環を効率化することができる。
【0045】
尚、妥当性確認部170と工程編集部180は、工程パターン判定部120と工程合成部160の処理を前提としていたが、これらの処理で生成されたデータを各データベースに格納した状態を前提としても良い。
【0046】
上述した内容の他、本発明の建設シミュレーション装置は、3D CADデータベースと工程データベースをもとに、前回の設計のCADデータと今回の設計のCADデータの機器,配管,溶接点属性に部分的に一致する部分を検索し、一致したCADデータに対応する前回の設計の工程データを組み合わせて新たな工程として作成する工程作成手段、及び、据付手順可視化手段を提供することを目的として、3D CADシステムを利用して作成した既設プラントの3Dデータベースと新設プラントの3Dデータベースに格納される3Dモデル(幾何形状データ)と属性データに基づき、既設プラントの3Dモデルの中の部品データと実績工程データの中の作業最小単位(アクティビティ)の対応関係を抽出する手段と、新設/既設の両プラントの配置機器間の類似性を属性、配置座標などから抽出する手段と、新設/既設の両プラントの据付配管ルート間の類似性を属性、配置座標(配管の中心線の一致度)などから抽出する手段と、一致した機器,配管ルートに関わる工程を実績工程から抽出する手段と、実績工程から作成できない部分の工程に関して作業未割当部分を判定し、工程データを生成する手段と、抽出した実績工程と生成工程を連結し、新設プラント用の工程データを作成する手段を備えることとしても良い。
【0047】
また、本発明の建設シミュレーション装置は、工程のマイルストーン、3D空間上での非干渉性,作業順序制約をもとに、作成した工程の妥当性を確認する手段を備えても良い。
【0048】
さらに、本発明の建設シミュレーション装置は、3D CAD表示システム上で、実績工程データに関わる部分と、それ以外の部分に分けて色分けして可視化する手段を備えても良い。
【0049】
さらに、本発明の建設シミュレーション装置は、合成した工程を編集する手段と、工程の最小単位であるアクティビティに対して、工程の背景情報を付与する手段を備えても良い。
【0050】
なお、上記の各構成,機能,処理部,処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成,機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム,テーブル,ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク,SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード,SDカード,DVD等の記録媒体に置くことができる。よって、各処理,各構成は処理ユニットやプログラムモジュールとして各機能を実現可能である。
【0051】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0052】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
火力,原子力などの発電プラントにおける建設業務に適用可能で、3D CADデータと電子的工程データを設計初期から取り入れることにより、高精度な建設計画を短期間で実施することが要求される分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
100 入出力装置
110 3D CADシステム
120 工程パターン判定部
130 部品−アクティビティ対応付部
140 3D類似性比較部
150 実績工程抽出部
160 工程合成部
170 妥当性確認部
180 工程編集部
210 既設プラントの3Dデータベース
220 新設プラントの3Dデータベース
230 実績工程データベース
240 工程テンプレートデータベース
250 計画工程データベース
260 マイルストーンデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存のプラント設計3Dモデル(以下、既設3Dモデル)を記録したデータベースと、既存のプラントの据付実績工程データ(以下、実績工程データ)を記録したデータベースと、新規に建設するプラントの設計3Dモデル(以下、新設3Dモデル)を記録したデータベースとを有し、
前記既設3Dモデル及び前記新設3Dモデルの比較により得られた、建物内の機器又は配管の据付位置の類似性を判定する3D部品配置位置一致度判定部と、
前記既設3Dモデルと前記実績工程データを対応付けた対応関係データから、新設3Dモデルのうち前記3D部品配置位置一致度判定部で抽出された既設3Dモデルの一致部分に対応する実績工程データを選択して前記新設3Dモデルに対応する計画工程データとする実績工程選択部とを有する建設シミュレーション装置。
【請求項2】
請求項1において、新設3Dモデルのうち既設3Dモデルに不一致の部分を実績工程未割当箇所として、前記3D部品配置位置一致度判定部の判定に基づいて抽出する実績工程未割当箇所判定部と、
前記実績工程未割当箇所に対して、機器又は配管の標準工程の作業階層構成情報、新設3Dモデルの設計情報を用いて計算される作業工数をもとに、実績工程を部分的に割り当てることができない部分に対して、工程を生成する工程生成部とを有し、
前記実績工程選択部で選択した工程データと前記工程生成部の出力結果を合成して、新設3Dモデル向けの計画工程データを生成する工程データ合成部を有する建設シミュレーション装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、予め設定した、工程の制約を規定したマイルストーンデータに対して、前記工程データ合成部で生成した工程が制約を満たしているかどうかを判定する工程マイルストーン妥当性判定部を有する建設シミュレーション装置。
【請求項4】
請求項1から3記載のいずれかにおいて、機器、または、配管の3Dモデルをもとに生成した据付空間を加算した空間を用いて、予め設定され、制約を規定したデータに対して、据付けが成立するかどうかを判定する据付空間妥当性判定部を有する建設シミュレーション装置。
【請求項5】
請求項3において、前記工程マイルストーン妥当性判定部は、据付作業の順序制約を規定したマイルストーンデータに基づき、工程の妥当性を判定する据付順序妥当性判定部を有する建設シミュレーション装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかにおいて、計画工程を生成する際に、3D CAD表示システム上で、実績工程データに関わる部分と、それ以外の部分に分けて色分けして可視化する出力手段を有する建設シミュレーション装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかにおいて、工程の最小単位であるアクティビティに対して、工程の背景情報を付与する工程編集部を有する建設シミュレーション装置。
【請求項8】
既存のプラント設計3Dモデル(以下、既設3Dモデル)を記録したデータベースと、既存のプラントの据付実績工程データ(以下、実績工程データ)を記録したデータベースと、新規に建設するプラントの設計3Dモデル(以下、新設3Dモデル)を記録したデータベースとを有する建設シミュレーション装置が、
前記既設3Dモデル及び前記新設3Dモデルの比較により得られた、建物内の機器又は配管の据付位置の類似性を判定し、
前記既設3Dモデルと前記実績工程データを対応付けた対応関係データから、新設3Dモデルのうち前記判定により抽出された既設3Dモデルの一致部分に対応する実績工程データを選択して前記新設3Dモデルに対応する計画工程データとして実績工程を選択することを特徴とする建設シミュレーション方法。
【請求項9】
請求項1において、新設3Dモデルのうち既設3Dモデルに不一致の部分を実績工程未割当箇所として、前記3D部品配置位置一致度判定部の判定に基づいて抽出し、
前記実績工程未割当箇所に対して、機器又は配管の標準工程の作業階層構成情報、新設3Dモデルの設計情報を用いて計算される作業工数をもとに、実績工程を部分的に割り当てることができない部分に対して、工程を生成し、
前記実績工程選択部で選択した工程データと前記工程生成部の出力結果を合成して、新設3Dモデル向けの計画工程データを生成する建設シミュレーション方法。
【請求項10】
請求項1又は2において、予め設定した、工程の制約を規定したマイルストーンデータに対して、前記工程データ合成部で生成した工程が制約を満たしているかどうかを判定する建設シミュレーション方法。
【請求項11】
請求項1から3記載のいずれかにおいて、機器、または、配管の3Dモデルをもとに生成した据付空間を加算した空間を用いて、予め設定され、制約を規定したデータに対して、据付けが成立するかどうかを判定する建設シミュレーション方法。
【請求項12】
請求項3において、前記判定は、据付作業の順序制約を規定したマイルストーンデータに基づき、工程の妥当性を判定する建設シミュレーション方法。
【請求項13】
請求項1から5のいずれかにおいて、計画工程を生成する際に、実績工程データに関わる部分と、それ以外の部分に分けて色分けして可視化する建設シミュレーション方法。
【請求項14】
請求項1から5のいずれかにおいて、工程の最小単位であるアクティビティに対して、工程の背景情報を付与する建設シミュレーション方法。
【請求項15】
新設プラントのCADデータを記録した新設プラントの3Dデータベースと、前記新設プラントのCADデータと対応した工程データを記録した計画工程データベースと、遅延が許されない節目となる工程の期限データを記録したマイルストーンデータベースとを有する建設シミュレーション装置が、
前記計画工程データベースから工程データを読み出し、
前記マイルストーンデータベースから期限データを読み出し、
マイルストーンとなる期限を越えた工程データは他と区別して表示することを特徴とする建設シミュレーション方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記計画工程データベースの新設プラントのCADデータと対応した工程データの対応関係を用いて、前記マイルストーンとなる期限を越えた工程に対応するCADデータの該当部分を他と区別して表示することを特徴とする建設シミュレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−14309(P2012−14309A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148469(P2010−148469)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】