説明

建設機械における燃料タンク

【課題】燃料タンクを他の機器部材の下方に配するにあたり、該燃料タンクの他の機器部材とのあいだに、フィラーチューブ引き出し用のスペースを確保する必要をなくして、スペースの有効利用を図る。
【解決手段】燃料タンク9を、上下前後左右の各面部を有し、且つ、前面視および後面視において上面部9aが下面部9bよりも左右幅が狭くなる等脚台形状に形成すると共に、該燃料タンク9の左面部9e或いは右面部の上部から、フィラーチューブ17を引き出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイ−ルロ−ダ等の建設機械における燃料タンクの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホイールロ−ダ等の建設機械には、燃料を貯溜するための燃料タンクが搭載されるが、該燃料タンクを機体に配置するにあたり、特に小型の機種においては、限られたスペースのなかで他の各種機器部材のレイアウトも考慮しながら最適箇所に配置することが要求される。そこで従来、燃料タンクを、エンジンルームの後部に配されるラジエータの下方に配置したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−133492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、燃料タンクには、燃料を補給するための給油口が形成されるが、前記特許文献1のように、燃料タンクの上方にラジエータ等の他の機器部材が配置されているものでは、該他の機器部材に邪魔されることなく燃料を補給できるように、先端に給油口が形成されたフィラーチューブを燃料タンクから適宜位置まで引き出す必要がある。しかるに、フィラーチューブは、一般的に燃料タンクの上面から引き出されるから、燃料タンクと該燃料タンクの上方に配される他の機器部材とのあいだにフィラーチューブを引き出すためのスペースが必要となり、このため、スペース的に余裕がない場合には、燃料タンク、或いは燃料タンクの上方に配される他の機器部材( 特許文献1のものではラジエータ)を小型化せざるを得ないという問題がある。
一方、燃料タンクの上面に段差状に低位となる低位部分を形成し、該低位部分をフィラーチューブ引き出し用のスペースにすることも提唱されるが、この場合には、燃料タンクの形状が複雑になってコスト高になるという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、建設機械に搭載される燃料タンクであって、該燃料タンクは、上下前後左右の各面部を有し、且つ、前面視および後面視において上面部が下面部よりも左右幅が狭くなる等脚台形状に形成されると共に、該燃料タンクの左面部或いは右面部の上部からフィラーチューブを引き出したことを特徴とする建設機械における燃料タンクである。
請求項2の発明は、燃料タンクは、後方がカウンタウエイトに覆蓋されるエンジンルームに配される一方、燃料タンクの左右面部の上部外方を、エンジンルームからカウンタウエイトに延びる機器部材の配設スペースにしたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械における燃料タンクである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、燃料タンクの上方に、フィラーチューブを引き出すためのスペースを確保する必要がなくなり、而して、燃料タンクの上方に配される機器部材の配設スペースを大きくとれる、或いは他の機器部材の配設スペースとして利用できることになり、特に、スペースに余裕がない小型機種においては有用である。しかも、燃料タンクは等脚台形状であるから、フィラーチューブ引き出し部分の下方は燃料タンクとなり、その分タンク容量を確保できると共に、タンク形状が複雑化することなく、コストの抑制に貢献できる。
請求項2の発明とすることにより、燃料タンクの左右面部の上部外方のスペースを、フィラーチューブ引き出し用のスペースとしてだけでなく、エンジンルームからカウンタウエイトに延びる機器部材の配設スペースとしても利用できることになって、スペースの有効利用に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は建設機械の一例であるホイ−ルロ−ダであって、該ホイ−ルロ−ダ1は、前輪2が設けられる前部車両1Aと、後輪3が設けられる後部車両1Bとを、連結部1Cを介して左右揺動自在に連結して構成されている。そして、前部車両1Aには、バケット4、アーム5等からなる作業装置6が装着される一方、後部車両1Bには、エンジン7等の動力関連機器装置、運転席部8、燃料タンク9、図示しない作動油タンク等の各種部材が設けられている等の基本的構成は従来通りである。
【0007】
10は前記後部車両1Bに設けられるエンジンルームであって、該エンジンルーム10の下半部の左右側方は、後部車両1Bの機体フレームを構成する左右のサイドフレーム11L、11Rによって覆蓋され、またエンジンルーム10の下半部の後方は、カウンタウエイト12によって覆蓋されている。さらに、該エンジンルーム10の上半部は、前半側が運転席部8によって覆蓋され、後半側が開閉自在なエンジンフード13によって覆蓋されている。
【0008】
前記エンジンルーム10には、運転席部8の後部下方の位置にエンジン7が配されていると共に、該エンジン7の後方には、ラジエータやオイルクーラー等の冷却機器14が配されている。また、エンジン7の下部右方(機体前方から視て右方)にはマフラー15が配されている。さらにエンジンルーム10には、エンジン7の後部下方から冷却機器14の下方に亘って、燃料タンク9が配設されている。さらにまた、エンジンルーム10には、図示しないが、エアクリーナやバッテリ、燃料フィルター、油圧ポンプ等の各種動力関連機器装置が配されている。
【0009】
前記燃料タンク9は、上下前後左右の各面部9a〜9fを有する六面体からなるが、前面部9cおよび後面部9dは、上辺の左右長が下辺の左右長よりも短い等脚台形状をしていると共に、下面部9bに対して垂直状に設けられている。また、左面部9eおよび右面部9fは、長方形状をしていると共に、上側ほど左面部9eと右面部9fとの間隔が狭くなるよう下面部9bに対して傾斜状に設けられており、而して、燃料タンク9は、前面視および後面視において上面部9aが下面部9bよりも左右幅が狭くなる等脚台形状に形成されている。尚、図中、16は燃料タンク9の前面部9cおよび左右面部9e、9fに止着される断熱材である。
【0010】
そして、前記燃料タンク9は、後面部9dがカウンタウエイト12に対向し、左面部9eおよび右面部9fが左右のサイドフレーム11L、11Rに対向する状態で配されているが、この場合、なるべく大きなタンク容量を確保できるよう、下面部9bの左右幅は、左右のサイドフレーム11L、11R間の左右幅よりも僅かに短い寸法に設計されていて、下面部9bの左右側縁部は左右のサイドフレーム11L、11Rに近接する状態になっている。一方、上面部9aは下面部9bよりも左右幅が狭いため、左面部9eおよび右面部9fの上部外方には、左右のサイドフレーム11L、11Rとの間にスペースSが形成されるようになっている。
【0011】
さらに、17は先端に給油口17aが形成されたフィラーチューブであって、該フィラーチューブ17は、燃料タンク9の左面部9eの上部から、該左面部9eの上部外方のスペースSに引き出され、該スペースSおよび冷却機器14の側方を通って上方に延びて、給油口17aがカウンタウエイト12よりも上方のエンジンフード13覆蓋部位にまで至るように配設されている。これにより、エンジンフード13を開ければ、給油口17aから燃料を補給することができるようになっている。尚、図中、17bは給油口17aを開閉自在に覆うキャップである。
【0012】
一方、マフラー15は、前述したようにエンジン7の下部右方に配されているが、該マフラー15に接続されるテールパイプ18は、燃料タンク9の右面部9fの上部外方のスペースSを通って後方に延びて、カウンタウエイト12に開設される開孔12aに至り、該開孔12aから機体外部に臨むように構成されている。
【0013】
さらに、カウンタウエイト12には、ブレーキランプやテールランプ等のランプ19が装備されているが、該ランプ19に接続される電気配線(図示せず)は、前記燃料タンク9の左面部9eおよび右面部9fの上部外方のスペースSを通って、エンジンルーム10からカウンタウエイト12に至るように配線されている。この場合、電気配線は、適宜箇所でクリップ等によりサイドフレーム11L、11R或いは燃料タンク9の左右面部9e、9fに固定されるようになっている。
【0014】
叙述の如く構成された本形態において、燃料タンク9は、上下前後左右の面部9a〜9fを有し、且つ、前面視および後面視において上面部9aが下面部9bよりも左右幅が狭くなる等脚台形状をしていると共に、フィラーチューブ17は、左面部9eの上部から引き出されている。
【0015】
この結果、燃料タンク9の上面部9aの上方に、フィラーチューブ17を引き出すためのスペースを確保する必要がなくなり、而して、燃料タンク9の上方に配される冷却機器14の配設スペースを大きくとれる、或いは冷却機器14だけでなく他の機器部材の配設スペースとして利用することも可能となり、特に、スペースに余裕がない小型機種においては有用である。
【0016】
しかも、前記燃料タンク9は等脚台形状であって、下面部9bの左右幅は上面部9aよりも広いから、フィラーチューブ17の引き出しに用いられるスペースSの下方は燃料タンク9となり、その分タンク容量を確保できると共に、フィラーチューブ17の引き出し用スペースのために段差状の低位部を形成するもののようにタンク形状が複雑化することなく、コストの抑制に貢献できる。
【0017】
またこのものでは、燃料タンク9の右面部9fの上部外方のスペースSは、エンジンルーム10から後方に延びてカウンタウエイト12に至るテールパイプ18の配設スペースとして利用されている。さらに、燃料タンク9の左右面部9e、9fの上部外方のスペースSは、カウンタウエイト12に装備のランプ19に接続される電気配線の配設スペースとしても、利用されている。この結果、等脚台形状の燃料タンク9の左右面部9e、9fの上部外方のスペースSを、フィラーチューブ17引き出し用のスペースとしてだけでなく、エンジンルーム10からカウンタウエイト12に延びる機器部材の配設スペースとしても利用できることになって、スペースの有効利用に大きく貢献できる。因みに、カウンタウエイト12に装備されるブレーキランプやテールランプ等のランプ19は通常左右対になって設けられているため、左右両方の面部9e、9fの上部外方のスペースSを電気配線の配設スペースとして利用できることで、配線作業を容易に行うことができる。
【0018】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、フィラーチューブは、上記実施の形態では燃料タンクの左面部から引き出されているが、他の機器部材のレイアウト等を考慮して、左右何れの面部から引き出しても良い。また、左右面部の上部外方のスペースに配される機器部材として、上記実施の形態ではテールパイプと電気配線を例示したが、他の機器部材の配設スペースとすることもできる。さらに、本発明は、ホイ−ルロ−ダ以外の建設機械にも実施できることは勿論であるが、特にミニホイ−ルロ−ダ等の小型の機種にあっては有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ホイ−ルロ−ダの側面図である。
【図2】エンジンルームの一部側面図である。
【図3】エンジンルームの背面図である。
【図4】後面部側から視た燃料タンクの斜視図である。
【図5】燃料タンクの正面図である。
【図6】燃料タンクの左側面図である。
【図7】燃料タンクの右側面図である。
【符号の説明】
【0020】
9 燃料タンク
9a 上面部
9b 下面部
9c 前面部
9d 後面部
9e 左面部
9f 右面部
17 フィラーチューブ
18 テールパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に搭載される燃料タンクであって、該燃料タンクは、上下前後左右の各面部を有し、且つ、前面視および後面視において上面部が下面部よりも左右幅が狭くなる等脚台形状に形成されると共に、該燃料タンクの左面部或いは右面部の上部からフィラーチューブを引き出したことを特徴とする建設機械における燃料タンク。
【請求項2】
燃料タンクは、後方がカウンタウエイトに覆蓋されるエンジンルームに配される一方、燃料タンクの左右面部の上部外方を、エンジンルームからカウンタウエイトに延びる機器部材の配設スペースにしたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械における燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−1088(P2009−1088A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162065(P2007−162065)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】