説明

建設目的のため、特に化学的アンカーリングのために適した樹脂モルタル

【課題】本発明は、脂肪族アミンおよびペルオキシドにより硬化可能な樹脂成分(A)、および少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)が含まれる硬化剤成分(H)を含む建設目的に適する樹脂モルタル組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)は少なくとも1種の無機フィラーを含み、および樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)は、前記成分の混合前の任意の反応を抑制するために互いから空間的に分離されており、樹脂成分(A)は、ラジカル重合を受けることが可能な化合物(a)、アミンと反応することが可能な化合物(b)、Cu、MnおよびFeの化合物からなる群より選ばれる遷移金属の化合物(c)、ゲル時間を調節するために少なくとも1種のインヒビター(d)および少なくとも2つの反応官能性を有する架橋性化合物(e)で、その1つの官能性はラジカル(共)重合を受けることが可能であり、および1つの官能性はアミンと反応することが可能であるものを含むことを特徴とする樹脂モルタル組成物、建設目的のための、好ましくは、ねじ式アンカーロッド、強化鉄、ねじ式スリーブ、およびスクリューの任意の種類の基材のボアホールでの固定のための、前記組成物の使用、および前記樹脂モルタル組成物を硬化させることによって得られる硬化した構造物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族アミンおよびペルオキシドにより硬化可能な樹脂成分(A)、および少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)が含まれる硬化剤成分(H)を含む建設目的に適する樹脂モルタル組成物であって、少なくとも1種の樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)は少なくとも1種の無機フィラーを含み、および樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)は、前記成分の混合前の任意の反応を抑制するために互いから空間的に分離されているものに、前記組成物の使用に、およびそれをもって得られた硬化構造物に関する。
【0002】
本明細書内で用いる技術的な表現を定めるために、樹脂モルタルは、モルタルの反応性およびレオロジー(流動学)を調節するために、硬化可能な樹脂、フィラー(充填剤)およびさらなる添加物を含む。通常、それは第1の成分中の充填された樹脂、および第2の成分中の硬化剤からなる2成分系(システム)として適用される。樹脂モルタルの適用は、その使用に先立って樹脂-および硬化剤-の成分を混合することを必要とする。
【0003】
ゲル化時間は、樹脂-および硬化剤-の成分を混合した後の硬化の開始の時間を定める。硬化の開始を遅らせることは、前記モルタルを適用するとき、ユーザー(使用者)のための十分な作業時間を確実にするために、たとえば、モルタルをボアホール中に注入した後、その者が固定要素(fastening element)を挿入し、そして調節することを可能にするために要求される。
【0004】
相互貫入重合体網状構造(Interpenetrating Polymer Network)IPNを得るために、対応するハイブリッド(混成)硬化樹脂組成物が用いられる。ここで用いるように、相互貫入ポリマーネットワークは、少なくとも2つの化学的に異なるポリマーネットワークの組成であり、それらは分子スケール上で少なくとも部分的に組み合わされ、そしてそれらは互いに随意に共有結合する。共有結合がポリマーネットワークの間に存在しない真のIPNsの他に、またセミIPNsを形成することができる。セミIPNにおいては、ラジカル重合を受けることができるだけでなく、アミンと反応することができる連結性成分を介して、2つのネットワークは共有結合的に連結される。共有結合がポリマーネットワークの間で存在する場合に、IPNはセミIPNと呼ばれる。IPNにおいて、各々のネットワークはその個々の特性を保持することができる。その結果として、IPNなどで少なくとも2つのネットワークの個々の特性が組み合わされるので、特性での改善を到達することができる。
【0005】
論文“Curing behaviour of IPNs formed from model VERs and epoxy systems I amine cured epoxy(モデルVERsおよびエポキシシステムIアミン硬化エポキシから形成されたIPNsの硬化挙動)”、K. Dean(ディーン)、W.D. Cook(クック)、M. D. Zipper(ジッパー)、P. Burchill(バーチル)、Polymer(ポリマー)42(2001)、1345-1359において、ペルオキシド(過酸化物)のようなラジカルな開始剤を用いてスチレンにおいて溶解されたビニルエステル樹脂のラジカル重合によって、1種の熱硬化性ポリマーネットワークが形成されることが記述されている。逐次共重合(step growth copolymerization)によってアミンを用いてエポキシ化合物を硬化させることで、他の熱硬化性ポリマーネットワークが形成される。一級アミンは、次いで二級アミンの反応が続くエポキシ基と、まず最初に反応する。クメンヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドまたはメチルエチルケトンペルオキシドが、コバルトオクトアートの有無にかかわらず、ラジカルな開始システムとして使われたとき、開始剤システムの早期減少が起こることも記述されている。後者はラジカル硬化にとって不利益である。さらに、硬化は高められた温度、すなわち少なくとも75℃で生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Curing behaviour of IPNs formed from model VERs and epoxy systems I amine cured epoxy", K. Dean, W.D. Cook, M.D. Zipper, P. Burchill, Polymer 42 (2001), 1345-1359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
構造用樹脂モルタルのためのより一層多くの厳しい構造的な適用(more demanding structural applications)のうちの1種は、この適用で、機械的強さ、コンクリートへの接着および鋼への接着が非常に良好でなければならず、それで化学的なアンカリングの適用である。機械的強さ、コンクリートへの接着および鋼への接着を評価するための試験はプルアウトテスト(引き出し試験)である。低いプルアウト値は、低い引っ張り強さ、低い金属へのおよび/またはコンクリートへの接着を表す。化学的なアンカリングの適用では、プルアウト値は、異なる状況の下で高いのが好ましく、それには、低温の状況(冬期および/または高緯度)ならびに高温の状況(夏期および/または低緯度)のようなひどい条件下が含まれる。
【0008】
さらに、樹脂システムの低温性能は、上述のCook(クック)の参考文献にて用いられるように、脂肪族アミンおよびペルオキシドを、ハイブリッド樹脂組成物であって不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂から選ばれる(a)ラジカル硬化可能な樹脂および(b)エポキシド樹脂を含むものに加えることで得られ、それが良くないことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、そのような樹脂システムの低温性能を改善することであり、および化学的なアンカーリングの適用において、特にこの増加した低温性能を示す適切な樹脂モルタルを提供することである。
【0010】
これを上記の樹脂モルタル組成物で達成することができることが見出され、そこでは、樹脂成分(A)は、ラジカル重合を受けることが可能な化合物(a)、アミンと反応することが可能な化合物(b)、Cu、MnおよびFeの化合物からなる群より選ばれる遷移金属の化合物(c)、ゲル化時間を調節するために少なくとも1種のインヒビター(抑制剤)(d)および少なくとも2つの反応官能性(reactive functionalities)を有する架橋性化合物(bridging compound)(e)で、その1つの官能性はラジカル(共)重合を受けることが可能であり、および1つの官能性はアミンと反応することが可能であり、それらのものを含む。
【0011】
本発明の主題は、したがって、脂肪族アミンおよびペルオキシドにより硬化可能な樹脂成分(A)、および少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)が含まれる硬化剤成分(H)を含む建設目的に適する樹脂モルタル組成物であって、少なくとも1種の樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)は少なくとも1種の無機フィラーを含み、および樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)は、前記成分の混合前の任意の反応を抑制するために互いから空間的に分離されており、樹脂成分(A)は、ラジカル重合を受けることが可能な化合物(a)、アミンと反応することが可能な化合物(b)、Cu、MnおよびFeの化合物からなる群より選ばれる遷移金属の化合物(c)、ゲル化時間を調節するために少なくとも1種のインヒビター(d)および少なくとも2つの反応官能性を有する架橋性化合物(e)で、その1つの官能基はラジカル(共)重合を受けることが可能であり、および1つの官能基はアミンと反応することが可能であるものを含む。
【0012】
前記樹脂モルタル組成物は、ペルオキシドおよび脂肪族アミンによって硬化可能であり、硬化は遷移金属化合物で速められ、そしてゲル化時間は抑制剤で調節され、そして追加のフィラーおよび添加物が含まれる。硬化すると、硬化ハイブリッド樹脂モルタルが得られる。
【0013】
本発明に従う樹脂モルタル組成物の追加的な利益は、良好な硬化を低温条件および高温条件を含むいくつかの条件の下で得ることができることである。
【0014】
本発明に従う樹脂組成物を適用することができるエンドセグメントは、化学的なアンカーリングであるが、更なる建設の適用において用いることもできる。ここに意味されるように、化学的なアンカーリングは、アンカー要素、たとえば、タイバー(転轍棒)、ダウエル(だぼ)、ロックボルト、スクリュー(ねじ)、アンカーロッドのようなものの、たとえば、コンクリート、自然なおよび人工的な岩でのボアホールにおけるの化学的固定に言及する。
【0015】
本発明の樹脂モルタル組成物の樹脂成分(A)は、好ましくは、ラジカルな重合を受けることが可能な成分(a)として、不飽和ポリエステル樹脂、より一層具体的には以下により定められるビニルエステル樹脂、およびウレタンメタクリラート樹脂と称することもできるビニルエステルウレタン樹脂を含む。
【0016】
ラジカル重合を受けることが可能な化合物(a)は、好ましくは不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂である。好ましくは、樹脂組成物にはラジカル硬化可能な化合物としてビニルエステル樹脂が含まれる。より一層好ましくは、ラジカル重合を受けることが可能な化合物はビニルエステル樹脂である。
【0017】
本発明の関連で用いられる不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂は、熟練した者に知られているような任意の樹脂であることができる。その例は、M. Malik(マリク)らの総説、J.M.S. - Rev. Macromol. Chem. Phys., C40 (2&3), p.139-165 (2000)に見出すことができる。著者は、そのような樹脂の分類を説明し、-それらの構造に基づき-次の5つのグループである。
(1)オルト樹脂:これらは、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、またはフマル酸およびグリコールに基づくもので、たとえば、1,2-プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールまたは水素化されたビスフェノール-Aのようなものである。普通に、1,2-プロピレングリコールから導かれるものは、スチレンのような反応希釈剤と組み合わせて用いられる。
(2)イソ樹脂(Iso-resins):これらは、イソフタル酸、マレイン酸無水物またはフマル酸、およびグリコールから調製される。これらの樹脂は、オルト樹脂よりも高い割合の反応希釈剤を含むことができる。
(3)ビスフェノール-A-フマラート:これらは、エトキシル化ビスフェノール-Aおよびフマル酸に基づく。
(4)クロレンディック(Chlorendics):UP樹脂の調製において無水物またはフェノール類を含む塩素/臭素から調製される樹脂である。
(5)ビニルエステル樹脂:これらは、その加水分解抵抗性および優れた機械的特性のため、ならびにそれらの低いスチレン放出に関して主に使われる樹脂であり、それは末端の位置においてだけ不飽和の部位をもち、エポキシ樹脂(たとえば、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル、フェノール-ノボラックタイプのエポキシ、またはテトラブロモビスフェノール-Aに基づくエポキシ)と(メタ)アクリルとの反応によって導入される。また、(メタ)アクリル酸の代わりに、(メタ)アクリルアミドも用いることができる。
【0018】
Malik(マリク)らで記載するようなビニルエステル樹脂の他に、また、ビニルエステルウレタン樹脂〔またウレタンメタアシラート(methacylate)樹脂にも言及する〕のクラスを区別することができる。
【0019】
好ましくは、ラジカル重合を受けることが可能な化合物(a)は、少なくとも200ダルトンの、より一層好ましくは少なくとも300ダルトンの、およびさらにより一層好ましくは少なくとも500ダルトンの分子量をもつ。好ましくは、ラジカル重合を受けることが可能な化合物は、多くても10,000ダルトン、およびより一層好ましくは、多くても5000ダルトンの分子量をもつ。
【0020】
好ましくは、アミンとのラジカル重合可能な化合物の塩形成を防ぐために、ラジカルな重合を受けることが可能な化合物(a)は、できるだけ低い酸価をもつ。好ましくは、ラジカルな重合を受けることが可能な化合物(a)は、多くても60の、より一層好ましくは多くても40の、より一層好ましくは多くても10の、さらにより一層好ましくは多くても5の、およびさらにより一層好ましくは0の酸価をもつ。この点から見れば、ビニルエステル樹脂は好ましくは、ラジカルな重合を受けることが可能な化合物(a)として適用される。
【0021】
樹脂組成物は好ましくは、アミンと反応することが可能な化合物(b)として、エポキシド官能基の(epoxide functional)樹脂を含む。アミンおよびエポキシド官能基の樹脂と反応することが可能な化合物(b)は、その酸化物官能基の(oxide functional)樹脂がより一層好ましくは、エポキシド官能基としてグリシジルエーテル官能基を含む。より一層好ましくは、アミンと反応することが可能な化合物(b)は好ましくは、エポキシド官能基の樹脂、すなわち、少なくとも1種のエポキシド基を含む樹脂である。最も好ましくは、エポキシド官能性(functionalitiy)はグリシジルエーテルである。
【0022】
好ましくは、アミンと反応することが可能な化合物(b)は、少なくとも300ダルトンの、より一層好ましくは少なくとも500ダルトンの、およびさらにより一層好ましくは少なくとも750ダルトンの分子量をもつ。好ましくは、アミンと反応することが可能な化合物は、多くても10,000ダルトンの、およびより一層好ましくは多くても5000ダルトンの分子量をもつ。
【0023】
樹脂組成物は、Cu、MnまたはFeの化合物(c)として、好ましくは、前記遷移金属の塩または複合体(錯体)を含む。Cu、MnまたはFeの化合物は好ましくは、Cu、MnまたはFeのカルボキリラート、より一層好ましくはC1-C30のカルボキシラートおよびより一層好ましくはC1-C16のカルボキシラートである。最も好ましくは、樹脂組成物は遷移金属化合物(c)として、Cuの化合物および/またはMnの化合物を含む。
【0024】
この技術において知られるように、早期ゲル化の防止用に、すなわち貯蔵寿命を保証するために、保存安定剤(storage stabilizers)〔この技術においてしばしば重合インヒビター(抑制剤)と称される〕が通常、硬化可能な樹脂組成物に存在する。保存安定性に対するこの影響の他に、インヒビター(d)は、硬化剤の添加による硬化のゲル時間を調整するのに用いることができる。概して、インヒビターは、ラジカルを消費するので、すべてのインヒビターは、重合を遅らせ、すなわち、硬化剤の添加による硬化のゲル化時間を長くする。
【0025】
今回意外にも、安定なオキシルラジカルだけが、脂肪族アミンおよびペルオキシドの添加により、ラジカルな重合を受けることが可能な化合物およびアミンと反応することが可能な化合物を含む樹脂組成物の硬化のゲル化時間を長くすることが可能であることを見出した。
【0026】
フェノール化合物またはジヒドロキシ芳香族化合物は、メタクリレートのための保存安定剤としてしばしば適用されるが、それを使うことは、硬化速度(率)に対する所望の抑制効果を与えない。特に、フェノール化合物、たとえば、BHT(2,6-ジ-タートブチル-4-メチルフェノール)およびp-メトキシフェノールのようなものは意外にも、ゲル化時間にほとんど影響せず、その一方で、ジヒドロキシ芳香族化合物は、たとえば、ヒドロキノンおよびカテコールのようなものは、硬化の抑制の代わりに、硬化を驚くほど促進させる。
【0027】
本発明に従う樹脂組成物は、このように重合インヒビター(d)として安定な(室温で)オキシルラジカルなインヒビターをさらに含む。ここで用いるように、重合インヒビターは、ペルオキシドおよび脂肪族アミンの添加により、ラジカルな重合を受けることが可能な化合物およびアミンと反応することが可能な化合物を含む組成物の硬化の始まりを遅らせ、そしてしたがってゲル化時間を長くする化合物である。
【0028】
安定なオキシルラジカルは好ましくは、以下の式に従う安定なN-オキシルラジカルの群から選ばれる。
【化1】

式中、RおよびR’は、同じであるか、または異なるC1-C20アルキル、またはC7-C20アルキルアリールである。RおよびR’は、シクロアルキル基の一部分であることができる。好ましくは、RおよびR’は、同じであるか、または異なるC1-C20アルキル、より一層好ましくはタート.アルキルである。
【0029】
本発明によれば、ペルオキサイドおよび脂肪族アミンの添加により、ラジカルな重合を受けることが可能な化合物(a)およびアミンと反応することが可能な化合物(b)を含む組成物の硬化の始まりは、前記安定なオキシルラジカルなインヒビター(d)の存在下に硬化が生じることによって遅れる。この技術に熟練した者は、そのような安定なオキシルラジカルの適切な量は硬化速度の望ましい減少を達成するために用いられるように定めることができる。
【0030】
本発明の樹脂モルタル組成物の樹脂成分(A)は、2つの別々の化合物として化合物(a)および化合物(b)を含み、およびさらに少なくとも2つの反応官能性を有し、それらの1つの官能性はラジカルな(共)重合を受けることが可能であり、および1つの官能性はアミンと反応することが可能である。そのような架橋性化合物(e)の存在は、低温性能がましてやなおさら向上されることがもたらされることを見出した。
【0031】
好ましくは、架橋性化合物(e)は、アクリラート、メタクリラート、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびアリルエーテルの官能性、より一層好ましくは、メタクリラートまたはアクリラートおよびさらにより一層好ましくは、メタクリラート官能性から選ばれるラジカルな硬化可能な官能性を含む。より一層好ましくは、架橋性化合物(e)のラジカルな硬化可能な官能性は、アクリラート、メタクリラート、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびアリルエーテルの官能性から選ばれ、より一層好ましくは、メタクリラートまたはアクリラートであり、およびさらにより一層好ましくは、メタクリラートの官能性である。
【0032】
好ましくは、架橋性化合物(e)は、アミンと反応することが可能な官能基として、イソシアナート、エポキシドまたは環状カーボナート、より一層好ましくは、エポキシド、およびさらにより一層好ましくは、グリシジルエーテルを含む。より一層好ましくは、アミンと反応することが可能な架橋性化合物(e)の官能性は、イソシアナート-、エポキシド-、環状カーボナート-、アセトアセトキシ-およびオキサミド(oxalic-amide、シュウ酸アミド)-官能性から選ばれ、より一層好ましくはエポキシドであり、そしてさらにより一層好ましくはグリシジルエーテル官能性である。
【0033】
好ましい具体化において、架橋性化合物のラジカルな(共)重合可能な官能性はメタクリラートであり、そしてアミン反応官能性はエポキシド官能性である。
【0034】
好ましくは、架橋性化合物の分子量Mnは、これが低温性能をより一層多く改善することをもたらすように、400ダルトン未満であり、より一層好ましくは、350ダルトンより少なく、さらにより一層好ましくは300ダルトンより少なく、そしてなおさらに好ましくは250ダルトンより少ない。
【0035】
好ましい具体化において、樹脂組成物は、架橋性化合物(e)としてグリシジルメタクリラートを含む。より一層好ましい具体化において、架橋性化合物(e)はグリシジルメタクリラートである。
【0036】
ラジカル重合可能な官能性およびアミンと反応することが可能な官能性のモル比は、好ましくは、10:1から1:10までであり、より一層好ましくは5:1から1:5まで、そしてさらにより一層好ましくは3:1から1:3までである。
【0037】
固形か、または液状であるにせよ、樹脂モルタル組成物は、ペルオキシド(B)として有機または無機のペルオキシドを含む。好ましくは、ペルオキシド(B)はヒドロペルオキシド、ペルエーテル、ペルエステル、ペルアンヒドリド(過無水物)およびペルカルボナート、より一層好ましくは、ペルオキシベンゾアート、そして最も好ましくはタート-ブチル-ペルオキシベンゾアートから選ばれる。
【0038】
好ましくは、アミンと反応することが可能な化合物(b)を硬化するのに用いるアミン(C)は、一級および/または二級の脂肪族アミンまたは脂肪族または芳香脂肪族(araliphatic)のポリアミンである。好ましくは、少なくとも一級脂肪族アミンが、化合物(b)を硬化させるのに用いられる。より一層好ましくは、化合物(b)を硬化させるのに、一級脂肪族アミンならびに二級脂肪族アミンを用いる。ポリアミンは、それが好ましくは、少なくとも2つの一級脂肪族アミノ基を保有するという事実によって区別される。それはまた、一級、二級、または三級のキャラクター(性質)を有する更なるアミノ基を保有することもできる。さらにまた、ポリアミノアミドおよびポリアルキレンオキシド-ポリアミンまたはアミン付加物、たとえば、アミン-エポキシ樹脂付加物またはマンニッヒ塩基のようなものも、適当である。
【0039】
適切な脂肪族および芳香脂肪族のポリアミンの例は、1,2-ジ-アミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタンおよび高級同族体(higher homologues)、ならびに2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,3-ジアミノペンタン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ジメチル-l,1,3-ジアミノプロパン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3-アザペンタン-1,5-ジアミン、4-アザヘプタン-1,7-ジアミン、3,6-ジアザオクタン(diazoctane)-1,8-ジアミン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカン、3-メチル-3-アザペンタン-1,5-ジアミン、少なくとも1種、好ましくは1よりも多くの一級および二級の脂肪族アミノ基を有する線状または分枝の脂肪族アミノ基〔たとえば、Huntsman Corporation(ハンツマン・コーポレーション)からのJeffamine(ジェファミン)タイプ、好ましくはジェファミンD-230、ジェファミンD-400、ジェファミンT-403のようなもの〕および2-ブチル-2-エチル-l,1,5-ジアミノペンタンである。
【0040】
本発明によれば、樹脂成分(A)および/または硬化剤成分(H)は、石英(クォーツ)、ガラス、コランダム、磁器、せっ器、ライトスパー(light spar)、重晶石(ヘビースパー)、石膏、滑石、チョークまたはそれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーを含み、これらのフィラーは、砂、粉末(flours)または成形品の形態において、特に繊維またはスフィア(球体)の形態にて含まれる。
【0041】
別の具体化において、本発明に従う樹脂組成物は、安定なN-オキシルラジカルなインヒビター(d)および追加的なジヒドロキシベンゼン化合物を含む。適切なジヒドロキシベンゼン化合物の例は、ヒドロキノン、カテコールおよびレゾルシノールである。本発明のこの具体化では、ペルオキシドおよび脂肪族アミンの添加により、ラジカルな重合を受けることが可能な化合物およびアミンと反応することが可能な化合物を含む樹脂組成物の、硬化速度は、安定なオキシルラジカルおよびジヒドロキシベンゼン化合物の存在において硬化を生じさせることによって調整することができる。安定なオキシルラジカルの、およびジヒドロキシベンゼン化合物の適切な量を選ぶことによって、所望のように硬化速度を調整することができる。この技術における熟練者は、そのような安定なオキシルラジカルおよびジヒドロキシベンゼン化合物の適切な量を、硬化速度の所望の調整効果の達成のために用いられるように定めることができる。好ましいジヒドロキシベンゼン化合物は、1,2-および1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物で、そしてそれらの化合物はさらに、随意にベンゼン基上に他の置換基を含む。
【0042】
さらに意外にも、本発明に従う樹脂組成物において安定なオキシルラジカルならびにジヒドロキシベンゼン化合物の存在は、性能を引き出すことでの相乗効果をもたらすことが見出された。
【0043】
好ましい具体化において、樹脂組成物はさらに反応性希釈剤を含む。希釈剤は、例として、その取扱いをより一層簡単にするために、樹脂組成物の粘性の調節のために適用される。さらに、希釈剤が樹脂における反応性部分と反応する基を含む場合、硬化した製品での架橋結合の調節が達成されうる。このような場合、希釈剤は反応性希釈剤と呼ばれる。反応性希釈剤はありとあらゆるそのような反応性基を含むことができるが、それらの基はまた、樹脂において反応性部分と同一であってよい。
【0044】
好ましくは、反応性希釈剤の少なくとも一部分は、ラジカルな(共)重合が可能である。適切なモノマーの例は、例として、アルケニル芳香族モノマー(単量体)、たとえば、スチレン、スチレン誘導体およびジビニルベンゼン、(メタ)アクリラート、ビニルエーテルおよびビニルアミドのようなものであり、しかし、熟練者に知られるように熱硬化性樹脂の分野での使用のために他のすべての反応性モノマーを用いることができる。好ましいモノマーは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリラート、タート.ブチルスチレン、タート.ブチルアクリラート、ブタンジオールジメタクリラートおよびそれらの混合物である。(メタ)アクリラート反応性希釈剤の適切な例は、PEG200 ジ(メタ)アクリラート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、2,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、PPG250ジ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメチルオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートである。好ましくは、(メタ)アクリラートが反応性希釈剤として使われる。
【0045】
好ましくは、反応性希釈剤の少なくとも一部分は、アミンと反応することが可能である。より一層好ましくは、反応性希釈剤の少なくとも一部分は、双方ともアミンと反応することが可能であり、ならびにセミIPNが形成されるケースにおいてラジカルな(共)重合が可能である。
【0046】
樹脂組成物は好ましくは、その保存安定性をさらに改善するために、保存安定剤をさらに含む。好ましくは、保存安定剤は、安定なラジカル、フェノール化合物、ヒドロキノン、カテコールおよびフェノチアジンの群から選ばれる。本発明による樹脂組成物の保存安定性を改善するために用いることができる保存安定剤の適切な例は、例として、2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリス-ジメチルアミノメチルフェノール、4,4'-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-イソプロピリデンジフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-メチレンジ-p-クレゾール、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノン、2,3,5-トリメチルヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコール、4,6-ジ-t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン(napthoquinone、naphthoquinone)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(また、TEMPOLと称される化合物)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(また、TEMPONと称される化合物)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-カルボキシル-ピペリジン(また、4-カルボキシ-TEMPOと称される化合物)、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシルピロリジン(また、3-カルボキシ-PROXYLと称される)、ガルビノキシル、アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジンおよび/またはこれらの化合物の任意の誘導体または組合せである。
【0047】
モルタル成分の粘性および流動作用(flow behavior)を調節するために、ヒュームドシリカ(二酸化ケイ素)、重合体の(polymeric)肥厚剤(thickening agents、増粘剤)、クレイ(粘土)などのような更なる添加物を、1種または任意のそれらの成分のどちらでも組み込むことができる。
【0048】
このように、本発明は、少なくとも2つの成分、すなわち、上述したように樹脂成分(A)、およびペルオキシド(B)と脂肪族アミン(C)とを含む硬化剤成分(H)が含まれる多成分系(マルチコンポーネントシステム)に関する。別の具体化において、マルチコンポーネントシステムは、上述したような樹脂成分(A)、ペルオキシド(B)およびアミン(C)からなる3成分システムである。ペルオキシドは好ましくは、ペルエステルまたはモノペルカーボナートである。脂肪族アミンは好ましくは、一級および/または二級の脂肪族アミンである。
【0049】
本発明の好適な具体化によれば、2つまたはそれよりも多くのチャンバーを含み、それらは互いから分離され、そして樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)、または樹脂成分(A)と硬化剤成分(H)の少なくとも1つの過酸化物(B)と少なくとも1つのアミン(C)のそれぞれが、どんな反応でも抑制するように互いから分離されて含まれるカートリッジ、容器、カプセルまたはフィルムバッグ中に、樹脂モルタル組成物は含まれる。
【0050】
本発明はまた、建設目的のための上記に規定した樹脂モルタル組成物の使用に関し、それには、樹脂成分(A)を硬化剤成分(H)と、または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1つのペルオキシド(B)および少なくとも1つのアミン(C)を混合することによってその組成物を硬化することを含む。
【0051】
より一層好ましくは、本発明の樹脂モルタル組成物は、ねじ式(threaded)アンカーロッド、強化鉄、ねじ式スリーブ、およびスクリューの任意の種類の基材のボアホールにおける固定のために使用され、それには、樹脂成分(A)を硬化剤成分(H)と、または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)と混合すること、前記混合物を前記ボアホール中に挿入すること、前記ボアホールにおける前記混合物中に、前記ねじ式アンカーロッド、強化鉄、ねじ式スリーブおよびスクリューを導入すること、および前記混合物を硬化することを含む。
【0052】
ペルオキシド(B)および脂肪族アミン(C)が樹脂成分(A)中に別々に混合される場合、好ましくは、その具体化では、使用が、上述したように3つの成分樹脂系で形成され、好ましくは、最初に脂肪族アミン(C)が樹脂成分(A)に加えられ、それにペルオキシド(B)を加えることが続く。別の具体化において、アミン(C)およびペルオキシド(B)は最初に混ぜられ(成分Bが与えられ)、そして結果として生じる混合物が本発明に従う樹脂成分(A)中に混合される。この具体化では、好ましくは使用は上述したように2つ成分系で形成される。
【0053】
本発明に従う樹脂モルタル組成物の硬化は、好ましくは、-20から+200℃までの範囲で、好ましくは-20から+100℃までの範囲で、そして最も好ましくは-10から+60℃までの範囲での温度で生じる〔いわゆる自然乾燥(cold curing)〕。
【0054】
好ましい具体化において、樹脂モルタル組成物の硬化は、一級脂肪族アミンおよび/または二級脂肪族アミンを用い、およびペルエステルを用いて生じさせる。
【0055】
本発明の主題はさらに、上記に規定した樹脂モルタル組成物を硬化することによって得られるか、または上記で定めるような使用によって得られる硬化した構造物である。
【0056】
本発明はさらに、建設の、特に化学的アンカーリングの領域のどこかでの、硬化された対象物の使用に関する。
【0057】
本発明を次に、一連の例および比較例によって示す。すべての例は、請求の範囲が及ぼす範囲を支持する。しかしながら、本発明は、例で示すような特定の具体化に制限されない。
【0058】
ゲル化時間
混合物のゲル化時間は、このように樹脂成分(A)および2-成分反応樹脂の硬化剤成分(H)から得られ、25℃および40℃での温度での慣習的な商業上のデバイス(ゲルタイマー)を用いて決定される。この目的のために、成分(A)および(H)を、試験管にリムの下およそ4cmまで容量によって3:1の比率で取り入れ、その試験管を25℃または40℃の温度に維持する(DIN 16945、DIN EIN ISO 9396)。ガラスのロッドまたはスピンドルは、1分につき10リフトで、樹脂中で上から下まで動かす。ゲル化時間は、試験管が振動するロッドによって持ち上げられる時間である。ランダムな試験は、ゲル点〔示差走査熱量測定(DSC)によって測定される〕での硬化の程度が測定の精度内で一定であることを示した。
【0059】
結合強度
硬化した組成物の荷重値(load values)を測定するために、ねじ式M12アンカーロッドを用い、それは14mmの直径および72mmの深さを有する具体的なボアホール中に本発明の2-成分樹脂モルタルを用いてダウエルで接合される。平均破壊荷重(failure load)は、高強度のねじ式アンカーを使用して、狭い閉じ込め(narrow confinement)を中央に有するねじ式アンカーロッドを引き出すことによって定められる。それぞれの場合、3つのねじ式アンカーロッドはその中にてダウエルで接合され、そしてそれらの荷重値を概して、硬化の24時間後に定める。荷重値は、そのようにして得られ、平均値(kN)としてもリストされる。異なるボアホール条件および/または硬化条件が試験され、下記に示す。結合強度(N/mm2)は、ねじ式アンカーロッドの接合面によって荷重値を割ることによって荷重値から得られる。
【0060】
【表1】

【0061】
樹脂混合物A
樹脂調剤物を、1.93kgのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(化合物(a))、5.14kgのビスフェノールAジグリシジルエーテル(化合物(b))、1.28kgのブタンジオールジメタクリラートBDDMA(インヒビター(d))、および1.61kgのグリシジルメタクリラート(架橋剤(e))を混合することによって調製した。
【0062】
比較の樹脂混合物B(架橋剤(e)なし)。
樹脂調剤物を、1.93kgのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート、5.14kgのビスフェノールAジグリシジルエーテル、および2.89kgのブタンジオールジメタクリラートBDDMAを混合することによって調製した。
【0063】
【表2】

【0064】
例1-2および比較例
下の表にリストするように、最終的な調剤物を調製した。
【0065】
【表3】

【0066】
結論
上記のデータは、以下を示す。
・本発明の樹脂モルタル組成物は、古典的なエポキシアミンモルタルのような非常に高い結合強度レベルを達成する。
・本発明の樹脂モルタル組成物は、低温で速く硬化することを示し、そこでは古典的なエポキシアミン系は失敗するか、または非常に遅い。
・それでも、それらは速い硬化のメタクリラート系より長いゲル-時間=ワーキング時間を示す。
・本発明のシステムは、古典的なエポキシアミン系と比較して著しく向上した耐熱性を示す。
・架橋剤の存在は、かなりの改善を特に低温性能のために提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族アミンおよびペルオキシドにより硬化可能な樹脂成分(A)、および少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)が含まれる硬化剤成分(H)を含む建設目的に適する樹脂モルタル組成物であって、少なくとも1種の樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)は少なくとも1種の無機フィラーを含み、および樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)は、前記成分の混合前の任意の反応を抑制するために互いから空間的に分離されており、樹脂成分(A)は、ラジカル重合を受けることが可能な化合物(a)、アミンと反応することが可能な化合物(b)、Cu、MnおよびFeの化合物からなる群より選ばれる遷移金属の化合物(c)、ゲル化時間を調節するために少なくとも1種のインヒビター(d)および少なくとも2つの反応官能性を有する架橋性化合物(e)で、その1つの官能性はラジカル(共)重合を受けることが可能であり、および1つの官能性はアミンと反応することが可能であるものを含むことを特徴とする樹脂モルタル組成物。
【請求項2】
ラジカル重合を受けることが可能な化合物(a)は不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂および/またはビニルエステルウレタン樹脂であることを特徴とする、請求項1に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項3】
アミンと反応することが可能な化合物(b)はエポキシド官能基の樹脂であることを特徴とする、請求項1に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項4】
エポキシド官能基の樹脂のエポキシド官能基はグリシジルエーテル官能基であることを特徴とする、請求項3に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項5】
インヒビター(d)は安定なオキシルラジカルインヒビターであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項6】
安定なオキシルラジカルインヒビターは、以下の式
【化1】

による安定なN-オキシルラジカルの群より選ばれ、式中、RおよびR’は同じか、または異なるC1-C20アルキルまたはC7-C20アルキルアリールであり、RおよびR’はシクロアルキルの一部分であることができることを特徴とする、請求項5に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項7】
安定なオキシルラジカルインジヒビターは、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOL)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TEMPON)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-カルボキシル-ピペリジン(4-カルボキシ-TEMPO)、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシルピロリジン(3-カルボキシ-PROXYL)、ガルビノキシルおよび/またはこれらの化合物の任意の誘導体または組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項6に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項8】
架橋性化合物(e)は、アクリラート-、メタクリラート-、ビニルエーテル-、ビニルエステル-およびアリルエーテル-官能性より選ばれるラジカル硬化可能な官能性およびイソシアナート-、エポキシド-、サイクリックカルボナート-、アセトアセトキシ-およびオキサミド-官能性より選ばれるアミンと反応することが可能な官能性を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項9】
架橋性化合物(e)のラジカル(共)重合可能な官能性は、メタクリラート官能性であり、およびアミン反応官能性はエポキシド官能性であることを特徴とする、請求項8に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項10】
架橋性化合物(e)は400ダルトン未満の数平均分子量Mnを有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項11】
ラジカル重合可能な官能性および架橋性化合物(e)のアミンと反応することが可能な官能性とのモル比は、好ましくは、10:1から1:10まで、より一層好ましくは5:1から1:5まで、およびさらにより一層好ましくは3:1から1:3までであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項12】
架橋性化合物(e)はグリシジルメタクリラートであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項13】
ペルオキシド(B)は、ヒドロペルオキシド、ペルエーテル、ペルエステル、ペルアンヒドリドおよびペルカルボナート、好ましくはペルオキシベンゾアート、最も好ましくはタート-ブチルペルオキシベンゾアートから選ばれることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項14】
アミン(C)は、脂肪族アミン、好ましくは一級および/または二級の脂肪族アミン、脂肪族およびアルアリファティックのポリアミンから選ばれることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項15】
脂肪族および芳香脂肪族のポリアミン(C)は、1,2-ジ-アミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタンおよび高級同族体、ならびに2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,3-ジアミノペンタン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ジメチル-l,1,3-ジアミノプロパン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3-アザペンタン-1,5-ジアミン、4-アザヘプタン-1,7-ジアミン、3,6-ジアザオクタン-1,8-ジアミン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカン、3-メチル-3-アザペンタン-1,5-ジアミンおよび2-ブチル-2-エチル-l,1,5-ジアミノペンタンを含む群より選ばれることを特徴とする、請求項14に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項16】
樹脂成分(A)および/または硬化剤成分(H)は、石英、ガラス、コランダム、磁器、せっ器、ライトスパー、重晶石、石膏、滑石、チョークまたはそれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーを含み、これらのフィラーは、砂、粉末または成形品の形態において、特に繊維またはスフィアの形態において含まれることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項17】
樹脂成分(A)は、追加のインヒビターとして、ヒドロキノン、カテコールおよびレゾルシノール、より一層好ましくは、1,2-および1,4-ジヒドロキシベンゼン化合物で、その化合物が随意にベンゼン環上のさらに他の置換基を含むものが含まれる群より選ばれるジヒドロキシベンゼン化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項18】
樹脂成分(A)は反応性希釈剤を含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項19】
反応性希釈剤の少なくとも一部分はラジカル(共)重合が可能であり、および/またはアミンと反応することが可能であることを特徴とする、請求項18に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項20】
反応性希釈剤は、スチレン、スチレン誘導体、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリラート、ビニルエーテルおよびビニルアミドを含む群より選ばれることを特徴とする、請求項19に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項21】
反応性希釈剤は、アルファ-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリラート、タート.ブチルスチレン、タート.ブチルアクリラート、ブタンジオールジメタクリラート、PEG200ジ(メタ)アクリラート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、2,3-ブタン-ジオールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、PPG250ジ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメチルオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパン-トリ(メタ)アクリラートおよびそれらの混合物を含む群より選ばれることを特徴とする、請求項20に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項22】
それは、カートリッジ、容器、カプセルまたはフィルム(薄膜)バッグに含まれ、それには2つまたはそれよりも多くのチャンバーが含まれ、それらは互いから分離され、およびそこでは樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)、または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)がそれぞれ、任意の反応を抑制するために互いから分離されて含まれることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物。
【請求項23】
樹脂成分(A)と硬化剤成分(H)との、または樹脂組成物(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)を混合することによって組成物を硬化させることを含む、建設目的のための請求項1〜22のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物の使用。
【請求項24】
ねじ式アンカーロッド、強化鉄、ねじ式スリーブ、およびスクリューの任意の種類の基材のボアホールにおける固定のための、樹脂モルタル組成物の使用であって、樹脂成分(A)と硬化剤成分(H)と、または樹脂成分(A)および硬化剤成分(H)の少なくとも1種のペルオキシド(B)および少なくとも1種のアミン(C)を混合すること、前記混合物を前記ボアホール中に挿入すること、前記ボアホールにおける前記混合物中に、前記ねじ式アンカーロッド、強化鉄、ねじ式スリーブ、およびスクリューを導入すること、および前記混合物を硬化させることを含む、請求項23に従う樹脂モルタル組成物の使用。
【請求項25】
-20から+200℃までの範囲で、好ましくは-20から+100℃までの範囲で、および最も好ましくは-10から+60℃までの範囲での温度で硬化がもたらされることを特徴とする、請求項23および24のいずれか一項に従う使用。
【請求項26】
請求項1〜22のいずれか一項に従う樹脂モルタル組成物を硬化させることによって得られるか、または請求項23〜25に従う使用によって得られた硬化構造物。

【公開番号】特開2011−162787(P2011−162787A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−27032(P2011−27032)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】