説明

弁当用飯の冷却方法及び飯冷却用容器

【課題】 飯の製造工程を微生物が繁殖しにくい状況に保ちつつ、摂食時にほぐれやすく、分割成型のための油脂無添加で、食味がよく、結露をほとんど発生させることなく、色艶の良い、粒感のある飯を大量に製造するための冷却用容器、及び方法の提供。
【解決手段】 底部が通風性を有する冷却用容器に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて飯を30℃以下に冷却する冷却工程を有することを特徴とする弁当用飯の冷却方法。
弁当一食分の容量の飯冷却用容器であって、当該飯冷却用容器の底部が通風性を有する構造であることを特徴とする飯冷却用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食味の優れた弁当用飯の冷却方法及び飯冷却用容器に関するもので、特に近時隆盛しているコンビニエンスストアなどで大量に販売される弁当に用いる飯の冷却方法及び飯冷却用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア等の普及にともない、弁当やおにぎり等の飯加工食品を生産することが頻繁に行われている。コンビニエンスストア等で毎日大量に販売されている弁当用ご飯は、工場において毎日大量に炊飯処理することで製造されている。この弁当用飯製造において考慮すべき事は、第一に安全な製品の製造であり、特に微生物の繁殖・増殖防止である。そのため、加工時に細菌、特に腐敗菌が活発に繁殖し易い40〜60℃の温度領域を長時間保持することを避けるため、短時間で飯を冷却するための工夫がなされている。具体的には、炊飯直後に急速冷却を行い、その後、盛り付け作業を行うか、或いは、盛り付け作業を飯の温度が60度以上の状態で行いその後急速冷却を行うといういずれかの工程が行われている。
【0003】
前者の方法としては、炊きたての飯を冷却胴の一端側から他端側へ移送する飯移送コンベアを設け、前記コンベア上の飯に常温風及び冷風を吹き付け冷却する方法がある(特許文献1)。
【0004】
後者の方法としては、先ず炊飯器などで炊かれた飯をホッパ状の収納部に投入し、上記収納部の下方でご飯はほぐし羽根でほぐされたうえで、その下の秤量装置に落下し、秤量室で秤量され所定重量に達するごとにご飯が落下し、さらにその下にあるコンベヤにより供給される弁当箱等の容器に盛り付け、盛り付けられた飯内にノズルを挿入し、飯を内部から冷却するという方法がある(特許文献2)。
【0005】
また、炊飯した飯を少なくとも50℃以上の温熱状態で成型して弁当用容器上に載置し、そのまま25℃以下に冷却する方法(特許文献3)や、被冷却物としての食物を、多数の小孔を有するプレートに載せて、該プレートの下部のバキュームチャンバを負圧にして空気流を前記食物の内部を上から下に通過させて前記食物を内部から冷却する方法(特許文献4)がある。
【特許文献1】実開平6−23484号公報
【特許文献2】特開2003−210120号公報
【特許文献3】特許第3442030号公報
【特許文献4】特開2003−299449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の方法、すなわち特許文献1に記載された方法の場合、一度冷却してから飯を分割成型するので、冷えて粘着性の強い飯に力を加えて塊をほぐす必要が生じるため、飯のつぶれが生じていた。また、分割成型するに際して、粘着性が強いため正確に計量することが難しかった。そのため、従来は、飯を一食分の分量に分割するために、炊飯時に少量の油脂(食用油)を加えていたが、油脂の添加により飯の食味が損なわれていた。
【0007】
後者のうち、先ず、特許文献2に記載された方法の場合、弁当箱の形状、大きさ、飯を盛り付ける位置によって、ノズルの位置調整が必要になるという問題があった。また、ノズル噴出口周辺のみが冷却され、飯全体が均一に冷却されないという問題があり、更には、ノズルにご飯が付着したり、ノズル表面に結露が生じ、しずくがご飯に落ち、食感が損なわれるという問題があった。
【0008】
また、特許文献3の方法による場合、弁当用容器内で温熱状態の飯をそのまま冷却することから、弁当用容器の内面に結露して水滴を生じ、水滴が弁当容器内側にたまり、飯が該水滴を吸収して水分増加により食味の低減を引き起こしやすい。そこで、この結露を防止するため、特許文献3では、前記飯を成型するサイズと、容器上への載置位置とを調整して、前記飯が弁当容器の内壁に接触しないようにしたり、また、飯をその底面に溝を設けるように成型して弁当容器と接触する面の空気の通過量を増大させるようにすることが開示されているが、これらの特殊な成型作業は非常に煩雑で実施が困難なものである。そもそも、飯の底部と弁当用容器の内底面との接触は避けられない。
【0009】
さらにまた、特許文献4の方法による場合、冷却風が上から下に通過することから飯に対して重力と吸引力とこの冷却風の風力が上から下に作用することになり飯が圧迫されて目が詰まったり、飯の色艶や粒感が劣るものとなるおそれがあり、また、自然に上昇する飯の熱を逆に押し下げているので、その分だけ冷却効率は悪くなる。
【0010】
そこで本発明は上記事情に鑑みて、飯の製造工程を微生物が繁殖しにくい状況に保ちつつ、摂食時にほぐれやすく、分割成型のための油脂無添加で、食味がよく、結露をほとんど発生させることなく、色艶の良い、粒感のある飯を大量に製造するための冷却用容器、及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、底部が通風性を有する冷却用容器に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて、好ましくは飯内だけに通過させ、飯を30℃以下に冷却する冷却工程を有することを特徴とする弁当用飯の冷却方法である。
【0012】
前記冷却用容器の底部は、メッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底であることを特徴とし、その場合、本発明は、底部が通風性を有する冷却用容器、好ましくはメッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底である冷却用容器、に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて、好ましくは飯内だけに通過させ、飯を30℃以下に冷却する冷却工程を有することを特徴とする弁当用飯の冷却方法である。
【0013】
上記冷却工程が、冷却用容器の下方から冷却用エアーを供給して冷却する工程であり、その場合、本発明は、底部が通風性を有する冷却用容器、好ましくはメッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底である冷却用容器、に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて、好ましくは飯内だけに通過させ、飯を30℃以下に冷却する冷却工程を有すること、該冷却工程が、冷却用容器の下方から冷却用エアーを供給して冷却する工程であることを特徴とする弁当用飯の冷却方法である
【0014】
冷却工程より前に、少なくとも60℃以上の温熱状態でほぐした飯を弁当用に成形し、冷却用容器に盛り付ける第1の工程と、飯が盛り付けられた1以上の冷却用容器を冷却用コンベアー、好ましくは冷却用容器を載置する載置面の一部または全部が通風性を有する、好ましくはその載置面上の載置部だけが通風性を有する冷却用コンベアー上に載置する第2の工程と、を有しており、その場合、本発明は、少なくとも60℃以上の温熱状態でほぐした飯を弁当用に成形し、冷却用容器に盛り付ける第1の工程と、飯が盛り付けられた1以上の冷却用容器を冷却用コンベアー、より具体的には冷却用容器を載置する載置面の一部または全部が通風性を有する、好ましくはその載置面上の載置部だけが通風性を有する冷却用コンベアー、上に載置する第2の工程と、底部が通風性を有する冷却用容器、好ましくはメッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底である冷却用容器、に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて、好ましくは飯内だけに通過させ、飯を30℃以下に冷却する第三の工程を有すること、好ましくは第三の工程が、冷却用容器の下方から冷却用エアーを供給して冷却する工程であることを特徴とする弁当用飯の冷却方法である。
【0015】
上記冷却工程は、併せて冷却用容器の上方から暖気を吸引しながら行うこと、好ましくは密閉空間を有する冷却室内で行うことを特徴としており、その場合、本発明は、底部が通風性を有する冷却用容器、好ましくはメッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底である冷却用容器、に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて、好ましくは飯内だけに通過させ、飯を30℃以下に冷却する冷却工程を有し、該冷却工程が、併せて冷却用容器の上方から暖気を吸引しながら行うこと、好ましくは密閉空間を有する冷却室内で行うこと、必要に応じ該冷却工程が冷却用容器の下方から冷却用エアーを供給して冷却する工程であること、また、必要に応じ冷却工程より前に、少なくとも60℃以上の温熱状態でほぐした飯を弁当用に成形し、冷却用容器に盛り付ける第1の工程と、飯が盛り付けられた1以上の冷却用容器を冷却用コンベアー、好ましくは冷却用容器を載置する載置面の一部または全部が通風性を有する、好ましくはその載置面上の載置部だけが通風性を有する冷却用コンベアー上に載置する第2の工程と、を有することを特徴とする弁当用飯の冷却方法である。
【0016】
前記冷却工程後、冷却用容器から飯を取り出し、弁当用容器に盛り付けることを特徴としており、その場合、本発明は、底部が通風性を有する冷却用容器、好ましくはメッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底である冷却用容器、に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて、好ましくは飯内だけに通過させ、飯を30℃以下に冷却する冷却工程を有すること、必要に応じ該冷却工程が冷却用容器の下方から冷却用エアーを供給して冷却する工程であること、併せて冷却用容器の上方から暖気を吸引しながら行うこと、好ましくは密閉空間を有する冷却室内で行うこと、また、必要に応じ冷却工程より前に、少なくとも60℃以上の温熱状態でほぐした飯を弁当用に成形し、冷却用容器に盛り付ける第1の工程と、飯が盛り付けられた1以上の冷却用容器を冷却用コンベアー、好ましくは冷却用容器を載置する載置面の一部または全部が通風性を有する、好ましくはその載置面上の載置部だけが通風性を有する冷却用コンベアー上に載置する第2の工程と、を有すること、前記冷却工程後、冷却用容器から飯を取り出し、弁当用容器に盛り付けることを特徴とする弁当用飯の冷却方法である。
【0017】
また、本発明は、弁当一食分の容量の飯冷却用容器であって、当該飯冷却用容器の底部が通風性を有する構造となっていることを特徴とする飯冷却用容器である。
【0018】
前記冷却用容器の底部は、メッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底であることを特徴としており、その場合、本発明は、弁当一食分の容量の飯冷却用容器であって、当該飯冷却用容器の底部がメッシュ底、より具体的には飯が詰まらない程度の細かさの目のメッシュ底の通風性を有する構造となっていることを特徴とする飯冷却用容器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る冷却方法によれば、飯が60℃以上の温熱状態で計量・成形を行うので、微生物の繁殖を抑えつつ分割成型のための油脂を添加しなくても計量・成形を正確に行う事が容易であり、その後に急速冷却を行うので、流通経路にのせるまでの間、微生物の繁殖を抑えることが可能となるだけでなく、底部が通風性を有する冷却用容器に飯を盛り付けて冷却することから、弁当用容器に入れた状態で冷却する前記従来技術よりも冷却の効率がよく、結露もしにくい。しかも、冷却用ノズルが飯に接触することもないため、ノズルからの細菌汚染のおそれもない。
【0020】
また、飯内に重力に逆らって下方から上方に冷却用エアーを通過させるため、冷却用メッシュの目詰まりを抑えることも可能であり、しかも米粒同士がほぐれやすく、ふんわりした状態の飯となる。
更には、飯から上昇する湯気を自然な流れで押し上げるので効率的に冷却することが可能であり、結露もしにくい。
【0021】
また、本発明は、特許文献2、3に記載された従来技術のようにノズルで部分的に冷気を吹き付ける方法とは異なり、飯内全体に冷却用エアーを通過させることにより、飯を冷却することから、全体的に均一に冷却しうる。
【0022】
また、前記冷却用容器の底部を、メッシュ底とすると簡易に通風性を得ることができ、さらに、このメッシュ底の目を飯がつまらない程度の細かさとすると冷却後の飯がメッシュ底の底部につまることなく円滑に連続的な作業が行える。
冷却用コンベアーのベルトの載置面が通風性を有する構造とすると、冷却用容器に盛り付けた飯を該載置面に載置して移動させながら、または移動の途中で一時停止した状態で冷却することが可能となり、連続的な冷却が可能となり、より効率よく冷却できる。
【0023】
また、前記コンベアーの載置面の冷却用容器を載置する載置部だけが通風性を有する構造とすると、冷却用エアーをその部分だけに集中して通過させることができ、より効率的な冷却が可能となる。
また、前記冷却工程において、併せて冷却用容器の上方から暖気を吸引しながら行うことにより、より冷却能力を向上させることができる。
さらにまた、前記冷却工程において、飯の冷却を密閉空間を有する冷却室内で行うようにすると、冷却能力がより向上する。
【0024】
本発明に係る冷却用容器によれば、弁当用容器の内底面に結露が生じないため、弁当用飯の底部が水分を必要以上に含んでふやけるようなことがなく、食味の優れた弁当用飯を大量生産することができる。
また、冷風のあたる飯の面積が広いため、飯全体を均一に冷却することが可能となる。 また、弁当種別毎に異なる計量を行う際にも、冷却用容器を大きめのサイズにしておくことで対応することができ、弁当メニューの変更に柔軟に対応することができる。
なお、本明細書中での「成型」は「成形」と同じ意味である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、図を使って説明する。
【0026】
本発明に係る冷却方法は、図1に示すように、洗米・計量・加水の後に加熱することで炊飯し(STEP1)、必要に応じて炊飯した飯を保温し(STEP2)、その後少なくとも60℃以上、好ましくは65〜70℃以上の飯を飯盛り機にて定量化して弁当用飯に適した形状に成型し(STEP3)、冷却用容器に投入し(STEP4)、順次冷却用コンベアに移載する(STEP5)。冷却用コンベア上に複数個の冷却用容器が溜まったら、必要に応じて上方及び/又は下方から蓋をかぶせて冷却室を形成し(STEP6)、下方から冷却用エアーを供給しながら、好ましくは上方より暖気を吸引することによって、飯を30℃以下に急速冷却する(STEP7)。その後、冷却用容器から飯を取り出し、弁当用容器に盛り付ける(STEP8)。なお、STEP2、STEP4、STEP5及びSTEP8は、ハンドワークで行ってもよいし、機械化してもよい。上記作業工程をイメージ図にしたものが図2である。
【0027】
図3は、冷却用容器を上方から見た模式図である。図3に示すとおり、本発明に係る冷却用容器は、その底部が通風性を有する構造となっている。これにより、冷却中の結露の発生を効果的に防止することが可能となり、更には、飯全体を均一に冷却することが可能となる。なお、図3は、冷却用容器の一態様を示したものであり、容器の形状、底部の目の粗さや面積は同図に限定されるものではない。また、冷却容器は繰り返して利用できることは言うまでもない。
【0028】
冷却用容器の大きさは、弁当用に成形された飯の大きさに合わせて設定する。
通常、弁当用飯は重量が200g〜250gくらいであり、また、略直方体形状に成形されて縦10cm〜20cm×横10cm〜15cmくらいで、厚さ2cm〜4cmくらいの大きさであるから、冷却用容器は、これに合わせて具体的には、例えば、縦20cm、横15cm、深さ3cm程度とすれば複数種類の弁当用飯に対応しうる。また、容器の材質は耐久性や衛生面からポリプロピレン、フィラー入りポリプロピレン等の合成樹脂が望ましい。容器の底部のみをステンレスとすることがより望ましい。
【0029】
また、容器の底部をメッシュ底とする場合、メッシュの大きさは6〜32メッシュとするのが望ましい。すなわち、メッシュ底の目に飯がつまらない程度の細かさとすることが望ましく、通常の飯粒の大きさを考慮すると、目が粗すぎると飯がつまるおそれがあることから、6メッシュ以上が望ましく、また、メッシュ穴が小さすぎると冷却エアーの通りが悪くなることから、32メッシュ以下とすることが望ましく、10〜20メッシュとすることがより望ましい。
【0030】
本発明に使用する飯は、通常の炊飯機で炊飯したものでよく、その後の分割(計量)成形・冷却用容器への盛り付けは、通常の飯盛り機で自動的に行うことができる。もちろん、飯盛り機を使用せずにハンドワークにより分割(計量)・冷却用容器への盛り付けを行うこともできる。
炊飯後の飯をすぐに、飯盛り機にて成形してもよいが、一般に飯盛り機による成形のスピードと、炊飯器による炊飯するスピードが異なることから、大量に連続的に処理する場合には、ある程度の量の炊飯米をまとめて、そのまま高温の状態で保管しておくと効率がよく、望ましい。この場合、炊飯後の飯を軽くほぐして、10kg〜20kgぐらいずつ保温ボックスに入れて、望ましくは少なくとも60℃以上、より望ましくは65℃〜70℃程度の温度で保管しておく。
【0031】
また、飯内に通過させるために冷却用容器の下方から供給する冷却用エアーの温度は、10℃〜25℃とするのが望ましい。
冷却用エアーはファン等を用いて全体的に均一に下方から供給するとよい。
具体的には、例えば、容器の上方と下方に略密封空間ができるようにして、上下の空間のうち、下方の空間を加圧し、及び/又は上方の空間を減圧することにより、相対的に下方の空間の内圧を上方の空間の内圧より大きくして、両方の空間の差圧により下方から上方へ全体的に均一に風が供給されるようにしてもよい(なお、米飯の冷却工程については詳しくは後述の通り)。
冷却用容器内の飯は盛り付けられたとき、60℃以上、好ましくは65〜70℃であるが、上述の冷却用エアーによる冷却により、30℃以下、好ましくは25〜30℃まで冷却される。
【0032】
飯が盛り付けられた冷却用容器を載置するための冷却用コンベアーは、具体的には例えば、70cm程度の幅の無端ベルトを、少なくとも2以上のローラーに巻回して、そのうち少なくとも一つのローラーを動力により回転させることにより、ベルトが走行するような構造とすればよい。該無端ベルトは耐性や衛生面から合成樹脂を素材とし、表面をテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂又は同種の化学物質で表面加工したものが望ましい。
また、該無端ベルトは、冷却用容器を載置する載置面が通風性を有するように、パンチング等により小孔を開けたり、あるいはメッシュ状とすることが望ましく、この際、前記載置面上の(冷却用容器が載置される)載置部だけが通風性を有するようにすることがより望ましい。具体的には、例えば、上述のように冷却用容器を10メッシュのメッシュ底とした場合、これに合わせて冷却用コンベアベルトも10メッシュのメッシュ状とすればよい。
【0033】
また、冷却用エアー供給設備は、冷却用コンベアーベルト上の、冷却用容器を載置する載置面の下方から、冷却用エアーを供給しうるように、適宜に任意の形態で設ければよく、具体的には、例えば、冷却用コンベアーベルトの下方に、上に開いた送風口を有する下側ダクトを設け、該下側ダクトに冷却用エアーを供給するためのファン等を設けて、該送風口から冷却用エアーを供給することが考えられる。
【0034】
冷却工程において、冷却用容器の上方から暖気を吸引することが望ましく、具体的な方法としては、例えば、冷却用コンベアーの上方に、下に開いた吸気口を有する上側ダクトを設け、該上側ダクト内に暖気を吸引するためのファン等を設け、該上側ダクトの吸気口から暖気を吸引することが考えられる。
【0035】
冷却効率を考えると、冷却工程は、密閉空間を有する冷却室内で行うことが望ましい。但し、ここでいう密閉空間とは、厳密な気密性を有するものはなく、ある程度の気密性を有するものであればよい。
「冷却室」は、ある程度の気密性を有する空間を有するようなものであれば、大きさや形状に限定はなく、用途や工場レイアウトにより適宜に調整して、様々な大きさ、形態に設けるようにすればよい。この「冷却室」は、少なくとも、冷却工程において冷却用エアーを供給するときに、一時的に形成するようにしてもよい。もちろん、ある程度の気密性を保持する空間を常に有するような常設の「冷却室」としてもよい。これらのどちらにするかは任意である。
【0036】
前者の一時的に「冷却室」を形成する場合としては、具体的には、例えば、上述の上側ダクトの吸気口に、“蓋”状のカバーを形成し、かつ、上下動可能に設け、冷却時に上方から適宜の高さまで下降させて、冷却コンベアーの冷却用容器載置面にかぶせることで、冷却コンベアーの冷却容器載置面と吸気口の縁部を近接させ、好ましくは当接するようにするとともに、上記下側ダクトの送風口にも“蓋”状のカバーを形成し、かつ、上下動可能に設け、該供給口が適宜の高さまで上昇して、冷却コンベアーの冷却容器載置面の下面に近接させ、好ましくは当接するようにすることにより、これら上下の“蓋”で冷却コンベアーの冷却用容器載置面を挟み込んで、「密閉空間を有する冷却室」を形成することが考えられる。
【0037】
後者の常設の「冷却室」の具体例としては、例えば、冷却用コンベアー全体を上下、前後、左右の壁で取り囲むものが考えられ、この冷却室内に、冷却用コンベアーの下方から全体的に均一に冷却用エアーを供給するエアー供給口を設けるとともに、該冷却用コンベアー上に載置される冷却用容器の上方に暖気を吸引する吸気口を設けることができる。あるいは、冷却用コンベアーベルト上の載置面を上下、前後、左右の壁で取り囲むようにしてもよい。そして、これら常設の「冷却室」の場合、冷却用容器の搬入・搬出のため、冷却用コンベアーの上流側と下流側に面する壁に、それぞれ開閉式の扉を設けるとよい。
【0038】
また、このように「冷却室」は、冷却工程時にある程度の気密性を有する空間内で冷却用コンベアー上の冷却用容器に盛り付けた飯を冷却しうるものであれば、様々な態様なものが可能である。
例えば、上述の上側ダクト吸気口の“蓋”と冷却用コンベアーとを組み合わせるだけであっても、該蓋で冷却用コンベアー上の一又は複数の冷却用容器を覆い、該蓋の縁部と該冷却用コンベアーとを当接させることで冷却時にある程度の気密性を有する空間内を構成しうる場合は「冷却室」ということができる。
また、「冷却室」は、複数個の冷却用容器をまとめて対象とするものでもよいし、個々の冷却用容器を対象とするものでもよい。
【0039】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されることはない。
【実施例】
【0040】
図4は、実施例に係る飯冷却方法を実施するための飯冷却装置を側面図、正面図、及び平面図を示したものである。図4を見ると分かるように、本実施例に係る飯冷却装置は、全体的には、ステンレス板により直方体状に形成されている。直方体の内部はある程度の気密性を有する密閉空間であり、本発明の冷却室に相当する。直方体の上部には排気ダクト51が、側部には送風ファン53が設けられている。図5及び図6は、送風ファン53を別の角度から示した図面である。
【0041】
また、図4に示すように、4つのローラーに樹脂製の無端コンベアベルト50を巻回した冷却用コンベアーを、冷却装置の内部に、前記無端コンベアベルト50の一部が入り込むようにして設け、これにより冷却装置内の密閉空間は、該冷却用コンベアーベルト50により上下のチャンバーに区切られている。冷却用容器載置面52を、冷却装置の内部でコンベアーベルト50上に一度に容器が3つ載置されるように、3箇所を一組として、2組設け、これにより冷却用コンベアー上に、冷却用容器32を載置する場所として、計6箇所に直径0.5mmのパンチング穴を多数空けた冷却用容器載置面52を有する。
冷却用容器32は、縦17.5cm、横12.5cm、深さ3cmのポリプロピレン容器であり、その底面は16メッシュのメッシュ底としている。
【0042】
走行する冷却用コンベアー上の冷却用容器載置面52に、炊飯した約65℃の飯を約220g盛り付けた冷却用容器32を順次に3つ載置し、冷却装置内に3つの容器が所定の位置にきた時に冷却用コンベアーを停止し、下方より冷却用エアー供給することで飯を冷却する。すなわち、送風ファン53から冷却装置内部に空気を供給することによりステンレス板50の下部にあるチャンバーの空気圧を陽圧としつつ、排気ダクト51から吸引した空気を排気することにより上部にあるチャンバーの空気圧を陰圧とすることで、冷却用容器32に盛り付けられた飯内に冷却用エアーを通過させることで、飯を急速冷却することを可能としている。なお、図示はしないが、冷却用容器を冷却装置内に冷却コンベアーにより搬入するための入口と、逆に冷却装置内から外部へ搬出するための出口とを、それぞれ開閉式のものを設けている。入口は冷却用容器を搬入する直前に開き、冷却用容器が3つ所定の位置にきて冷却コンベアーが停止したときに閉じる。出口は冷却工程後に冷却コンベアーが再走行する直前に開き、3つの冷却用容器が全て搬出されたときに閉じる。もちろん、冷却工程中は入口も出口も閉じている。
【0043】
本実施例においては、流量11,000L/minの送風ファン53で流量を調整しながらパンチング穴を通過する冷却用エアーの風速を3m/secとなるように調節し、約10℃の冷却用エアを25秒間吹き付けたところ、飯の温度を約65℃から約20℃に下げることができた。冷却工程後、冷却コンベアーを再走行させて、冷却用容器32を冷却装置の外まで搬送し、冷却用容器32から飯を取り出し、弁当用容器に盛り付けた。弁当用容器内には一切結露が生じなかった。弁当用容器に盛り付けられたご飯を食したところ、ご飯はふんわりとした、食味の優れた良好な状態であった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る飯冷却方法の流れ図である。
【図2】本発明に係る飯冷却方法の作業工程イメージ図である。
【図3】本発明に係る冷却用容器を上方から見た模式図である。
【図4】実施例に係る飯冷却装置を側面、正面、及び上方から見た図である。
【図5】実施例に係る飯冷却装置の送風ファン取り付け部の側面図である。
【図6】実施例に係る飯冷却装置の送風ファン取り付け部の正面図である。
【符号の説明】
【0045】
21 冷却用容器枠
22 メッシュ
32 冷却用容器
40 飯冷却装置
50 冷却用コンベアー
51 排気ダクト
52 冷却用容器載置面
53 送風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が通風性を有する冷却用容器に盛り付けた飯内に冷却用エアーを下方から上方に通過させて飯を30℃以下に冷却する冷却工程を有することを特徴とする弁当用飯の冷却方法。
【請求項2】
前記冷却工程において、飯内だけに冷却用エアーを通過させることを特徴とする請求項1の弁当用飯の冷却方法。
【請求項3】
前記冷却用容器の底部は、メッシュ底であることを特徴とする請求項1または2の弁当用飯の冷却方法。
【請求項4】
前記メッシュ底の目は、飯が詰まらない程度の細かさであることを特徴とする請求項3の弁当用飯の冷却方法。
【請求項5】
上記冷却工程が、冷却用容器の下方から冷却用エアーを供給して冷却する工程である請求項1ないし4のいずれかの弁当用飯の冷却方法。
【請求項6】
前記冷却工程より前に、少なくとも60℃以上の温熱状態でほぐした飯を弁当用に成形し、冷却用容器に盛り付ける第1の工程と、飯が盛り付けられた1以上の冷却用容器を冷却用コンベアー上に載置する第2の工程と、を有する請求項1ないし5のいずれかの弁当用飯の冷却方法。
【請求項7】
前記冷却用コンベアーは冷却用容器を載置する載置面の一部または全部が通風性を有することを特徴とする請求項6の弁当用飯の冷却方法。
【請求項8】
前記冷却用コンベアーは、その載置面上の載置部だけが通風性を有することを特徴とする請求項7の弁当用飯の冷却方法。
【請求項9】
前記冷却工程は、併せて冷却用容器の上方から暖気を吸引しながら行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの弁当用飯の冷却方法。
【請求項10】
前記冷却工程は、密閉空間を有する冷却室内で行うことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかの弁当用飯の冷却方法。
【請求項11】
前記冷却工程後、冷却用容器から飯を取り出し、弁当用容器に盛り付けることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの弁当用飯の冷却方法。
【請求項12】
弁当一食分の容量の飯冷却用容器であって、当該飯冷却用容器の底部が通風性を有する構造であることを特徴とする飯冷却用容器。
【請求項13】
前記冷却用容器の底部は、メッシュ底であることを特徴とする請求項12の飯冷却用容器。
【請求項14】
前記メッシュ底の目は、飯が詰まらない程度の細かさであることを特徴とする請求項13の飯冷却用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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