説明

弁装置

【課題】通気孔から弁室内に斜めに流入する燃料の流速を低減して、開口部からの燃料漏れを効果的に防止できる、弁装置を提供する。
【解決手段】この弁装置10は、開口部35が形成された仕切壁を介して、下方に弁室、上方に通気室が設けられたハウジング20と、弁室内に昇降可能に配置されたフロート弁80とを備え、周壁31の仕切壁よりも下方に、弁室に連通する通気孔45が形成され、ハウジング内周の通気孔45に対応する位置に、前記ハウジングの軸方向における長さ及び周方向における長さが、通気孔45よりも大きい主壁部50が設けられ、この主壁部50の周方向端部から副壁部52が延出され、この副壁部52の軸方向長さは、主壁部50の軸方向長さよりも短く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、カットバルブや満タン規制バルブ等として用いられる弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料タンクには、自動車が旋回したり傾いたりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止するカットバルブや、給油時に給油量の上限値で給油を停止させるための満タン規制バルブ等が取付けられている。
【0003】
上記バルブとしては、例えば、開口部を有する仕切壁により上方空間及び下方空間が画成されたハウジングと、その下方空間内に昇降可能に配置されたフロート弁とを備えるものが用いられている。そして、燃料タンク内の燃料液面に応じて、フロート弁が昇降し、仕切壁の開口部を開閉することにより、燃料漏れや満タン規制が図られている。
【0004】
また、前記ハウジングの周壁には、下方空間に連通した通気孔が形成されている。そして、フロート弁が下降して開口部が開いた状態で、燃料タンク内の圧力が上昇すると、燃料タンク内の燃料蒸気が、前記通気孔を通じて開口部から排出されて、燃料タンク外のキャニスタ等へ送られて、燃料タンク内の圧力が低減されるようになっている。
【0005】
上記通気孔は燃料蒸気の排出用として設けられているが、車両が揺れたり旋回したり、振動を受けたりした場合には、燃料タンク内の燃料が揺れて、飛沫状の燃料が通気孔を通じて開口部から漏れてしまう虞れがあった。
【0006】
上記のような、液体状の燃料漏れを防止するためのものとして、下記特許文献1には、内部に収納空間を画して、上部に開口部を有する弁座が設けられたハウジングと、該ハウジングの収納空間内に上下動可能に配されるフロートバルブとを備え、ハウジングの上部壁面に内外側を連通させる通孔を設けると共に、該通孔と対応するハウジングの内側に矩形状の壁片を設けた、燃料漏れ防止弁が記載されている。
【0007】
上記の燃料漏れ防止弁においては、燃料しぶきが、通孔を通じてハウジング内に流入しても、通孔に対応した位置に設けられた壁片に衝突するので、燃料が開口部から漏れにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−166825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記燃料漏れ防止弁において、通孔から斜めに燃料が流入した場合には、壁片に衝突せずに、ハウジング内に入り込んで開口部から漏れてしまう虞れがあった。これを防止するため、ハウジング内周に沿って壁片を伸ばした場合には、斜めに流入した燃料を壁片に衝突させることができる。しかし、この場合には、ハウジングと壁片との間に画成された幅狭の燃料流路が長く伸びるので、通孔から燃料流路に流入した燃料の流速が増大して、かえって開口部から漏れやすくなるという問題があることがわかった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、通気孔から弁室内に斜めに流入した燃料による開口部からの燃料漏れも効果的に防止することができる弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の弁装置は、開口部が形成された仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられたハウジングと、該ハウジングの前記弁室内に昇降可能に配置されたフロート弁とを備え、前記ハウジングの周壁の、前記仕切壁よりも下方に、前記弁室に連通する通気孔が形成され、前記ハウジングの内周であって前記通気孔に対応する位置に、前記ハウジングの軸方向における長さ及び周方向における長さが、前記通気孔よりも大きく形成された主壁部が設けられ、この主壁部の周方向端部から副壁部が延出されており、この副壁部の、ハウジングの軸方向に沿った長さは、前記主壁部の、ハウジングの軸方向に沿った長さよりも短く形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の弁装置においては、前記ハウジングの周壁内面からリブが突設され、このリブの両側に前記主壁部が連結され、各主壁部の先端に前記副壁部が連結されていることが好ましい。
【0013】
本発明の弁装置においては、前記フロート弁の内部に、周囲をリブで囲まれ、下面を開口された複数の空隙が形成され、前記フロート弁の上壁に前記空隙の全てではないいくつかに連通する抜き孔が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の弁装置においては、前記フロート弁の外周には、その昇降動作時に前記主壁部及び前記副壁部に干渉しない長さで、フロート弁の軸方向に沿ってガイドリブが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の振動や旋回等により、燃料タンク内において燃料のしぶきが生じたり燃料液面が傾いたりして、通気孔からハウジング内に燃料が勢いよく流入しても、ハウジングの内周の通気孔に対応する位置に、通気孔よりも大きな主壁部が設けられているので、この主壁部に流入した燃料が衝突して、その勢いが低減されて、仕切壁の開口部から通気室へ燃料が漏れることを抑制することができる。また、主壁部の周方向端部から副壁部が延出しているので、通気孔に対して燃料が斜めに勢いよく流入しても、燃料を副壁部に衝突させて、その勢いを低減することができ、仕切壁の開口部からの漏れを抑制することができる。
【0016】
そして、副壁部の軸方向長さが、主壁部の軸方向長さよりも短く形成されているので、通気孔からハウジング内に流入した燃料が主壁部に衝突して、周壁と主壁部との隙間を流れ、更に周壁と副壁部との隙間を流れて、ハウジング内の広い空間に流入する際、周壁と副壁部との隙間を流れる流路が軸方向に短いことから、途中で流れの一部が広い空間に開放されるので、そこで燃料の流速を低下させて仕切壁の開口部に勢いよく衝突するのを防止できる。その結果、フロート弁が閉じる前に、仕切壁の開口部に燃料が高速でぶつかり、漏れが生じることを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る弁装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同弁装置の断面図である。
【図3】同弁装置の要部拡大斜視図である。
【図4】同弁装置を構成するハウジングの底面図である。
【図5】同弁装置の、主壁部及び副壁部を示しており、(a)はその正面図、(b)は(a)のB−B矢示線における断面図である。
【図6】同弁装置を構成するフロート弁を示しており、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のA−A矢示線における断面図である。
【図7】同弁装置の、図3とは直交した状態での断面図である。
【図8】同弁装置において、図7におけるフロート弁が上昇したときの断面図である。
【図9】弁装置の揺動試験において、(a)は揺動試験機の揺動方向と弁装置の接続管との向きを合せてセットした状態を示す概略平面図、(b)は揺動方向と接続管とを直交させてセットした状態を示す概略平面図、(c)は揺動方向と接続管との向きが45°傾いてセットした状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜8を参照して、本発明の弁装置の一実施形態について説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、この弁装置10は、仕切壁33を介して下方に弁室R1、上方に通気室R2が形成されたハウジング20と、このハウジング20の前記弁室R1内に昇降可能に配置されたフロート弁80とを有している。
【0020】
この実施形態におけるハウジング20は、略筒状をなすハウジング本体30と、このハウジング本体30の下方開口部に装着されるロアキャップ60と、前記ハウジング本体30の上方に装着されるアッパーキャップ70とから構成されている。図2に示すように、ハウジング本体30及びロアキャップ60により、燃料タンク1内に連通する前記弁室R1が画成され、ハウジング本体30及びアッパーキャップ70により、燃料タンク1の外部に連通する前記通気室R2が画成されている。
【0021】
前記ハウジング本体30は、下方が開口した略円筒状の周壁31と、その上面を閉塞する円板状の仕切壁33とを有している。前記仕切壁33の中央には、円形状の開口部35が形成されており、前記弁室R1と前記通気室R2とが連通されている。この開口部35の下面周縁からは、円筒状をなした弁座35aが所定高さで突設されている(図2参照)。
【0022】
図1に示すように、前記ハウジング本体30の外周の所定箇所には、箱状の弁収容部36が設けられており、その底壁にはボール弁37が接離する開口36aが形成されている(図2参照)。この弁収容部36内にボール弁37が収容されると共に、ボール弁用スプリング38が収容され、ボール弁37が開口36a側へ付勢されて、開口36aが常時閉塞されている。また、弁収容部36には、図示しないキャニスタに連通する配管が接続される接続管39が一体形成されている。そして、燃料タンク内の圧力が所定値以上に高まったときに、ボール弁用スプリング38の付勢力に抗して、ボール弁37が開口36aから離れ、接続管39を通じて燃料蒸気が燃料タンク外へ排出されるようになっている。
【0023】
ハウジング本体30の仕切壁33の上面及び弁収容部36の上方には、枠状のキャップ取付部41が突設されており、その上方開口部にアッパーキャップ70が装着されるようになっている。また、キャップ取付部41の接続管39とは反対側からは、係合片41aが延設されており、これが図1に示すブラケット3に係合して、同ブラケット3を介して燃料タンク1に弁装置10が取付けられるようになっている。更に、前記周壁31の下方には、係合突起43が周方向に沿って複数突設されている。
【0024】
前記周壁31の前記仕切壁33よりも下方には、前記弁室R1に連通する通気孔45が形成されている。この通気孔45は、燃料タンク1内の燃料蒸気や燃料を弁室R1内へ流入させ、或いは、燃料タンク1外の空気を燃料タンク1内に流入させるものである。図3及び図4に示すように本実施形態では、周壁31の上方の、仕切壁33のほぼ真下であって、前記接続管39及び前記係合片41aに直交し、かつ、周壁31の周方向に対向した位置に、円形状の一対の通気孔45,45がそれぞれ形成されている。また、図4及び図5(b)に示すように、一対の通気孔45,45は、互いにほぼ平行となるように周壁31に形成されている。
【0025】
なお、上記通気孔45は、例えば、周壁31の周方向に3つ以上配列したり、周壁31の軸方向に複数配列したり、更には周壁31の周方向に配列したものを軸方向に沿って複数配列したりしてもよく、弁装置10を取付ける燃料タンク1の形状や適用箇所等に応じて、適宜形成することができる。
【0026】
そして、前記周壁31の内周であって、前記通気孔45に対応する位置に、主壁部50が形成されている。図3〜5に示すように本実施形態では、周壁31の内周の、前記一対の通気孔45,45の間から、各通気孔45の開口方向と平行となるように、リブ48が所定長さで突設されており、このリブ48の先端部両側に、矩形板状の主壁部50,50がそれぞれ連結されている。なお、前記リブ48及び各主壁部50,50は、その上端面が前記仕切壁33の下面に連結されている(図2及び図5(a)参照)。
【0027】
図5(a),(b)に示すように、各主壁部50は、ハウジング本体30の軸方向における長さH1(以下、「軸方向長さH1」という)及び周方向における長さL1(以下、「周方向長さL1」という)が、前記通気孔45の内径よりも大きく形成されており、通気孔45全体をカバーできるようになっている。具体的には、上記軸方向長さH1は、通気孔45の軸方向長さ(この実施形態では円形の孔をなすので、その直径)の1〜2倍が好ましく、上記周方向長さL1は、通気孔の周方向長さ(この実施形態では円形の孔をなすので、その直径)の1〜1.7倍が好ましい。
【0028】
また、図5(b)に示すように、各主壁部50は、その断面形状が周壁31の周方向に沿って緩やかに湾曲した形状となっており、周壁31と主壁部50との間に画成される燃料流路F1の幅、すなわち、ハウジング本体30を軸方向から見たときに、燃料流路F1の、ハウジング本体30の半径方向における幅が、ほぼ一定となっている。なお、図5(a)に示すように本実施形態では、主壁部50は、軸方向下端部寄りの部分であって、リブ48からやや離れた位置で、前記通気孔45をカバーするようになっている。
【0029】
上記構造の各主壁部50の周方向先端部からは、矩形板状の副壁部52がそれぞれ延出されている。
【0030】
そして、各副壁部52は、ハウジング本体30の軸方向における長さH2(以下、「軸方向長さH2」という)が、前記主壁部50の軸方向長さH1よりも短く形成されている。具体的には、各副壁部52の軸方向長さH2は、主壁部50の軸方向長さH1の0.6〜0.8倍とされていることが好ましい。
【0031】
また、この実施形態における各副壁部52は、ハウジング本体30の周方向における長さL2(以下、「周方向長さL2」という)が、前記主壁部50の周方向長さL1よりも短く形成されている。具体的には、各副壁部52の周方向長さL2は、主壁部50の周方向長さL1の0.4〜0.6倍とされていることが好ましい。
【0032】
更に図5(b)に示すように、各副壁部52は、ハウジング本体30の半径方向外方に向けて、周壁31に近づくように主壁部50に対してやや屈曲した形状をなし、副壁部52が延びるにつれて周壁31と副壁部52との間隔が次第に狭くなっている。なお、各副壁部52は、前記リブ48及び前記各主壁部50と同様に、その上端面が前記仕切壁33の下面に連結されている(図2及び図5(a)参照)。
【0033】
また、図5(b)に示すように、前記主壁部50の周方向先端部の内周面における接線Cに対する、各副壁部52の傾斜角度θは、10〜13°であることが好ましい。
【0034】
上記構造をなしたハウジング本体30の下方開口部に装着されるロアキャップ60は、円形状の底壁61と、この底壁61の周縁から立設した周壁63とを有している。前記底壁61には、燃料を通過可能な透孔61aが形成されていると共に、その中央から、フロート弁用スプリング65の一端部を支持する支持突部61bが突設されている。また、前記周壁63には、前記ハウジング本体30の係合突起43が係合する、係合孔63aが所定間隔で形成されている。
【0035】
前記弁室R1内に昇降可能に収容されるフロート弁80は、円筒状の周壁81と、その上面開口部を閉塞する上壁83とを有している。図2及び図6(c)に示すように、上壁83は、中央が最も高く突出し、外径方向に向かって次第に高さが低くなる傾斜面となっている。この上壁83の中央からは、前記ハウジング本体30の弁座35aに接離して、開口部35を開閉する弁頭83aが突設されている(図7,8参照)。
【0036】
図1及び図6に示すように、前記周壁81の外周には、フロート弁80の軸方向に沿って伸びるガイドリブ85が、周方向に所定間隔をあけて複数突設されている。これらのガイドリブ85が、前記ハウジング本体30の周壁31の内周に摺接して、フロート弁80の昇降動作がガイドされるようになっている。また、これらのガイドリブ85のうち、フロート弁80の周方向に対向する位置に設けられた所定のガイドリブ85a,85aが、フロート弁80の上昇時に(図8参照)、前記主壁部50及び前記副壁部52に干渉しないように、前記上壁83に到達しない長さで、他のガイドリブ85よりも短く形成されている(図1参照)。
【0037】
また、図1及び図6(a)に示すように、前記周壁81の上方外周であって、短いガイドリブ85aに整合した位置からは、その両側に設けられた長いガイドリブ85,85よりもやや手前に至る幅で、凹部87,87が周方向に対向して形成されている。この凹部87,87には、フロート弁80の上昇時に、前記主壁部50及び前記副壁部52が入り込んで、フロート弁80と、主壁部50及び副壁部52との干渉が防止されるようになっている(図8参照)。また、図1に示すように、周壁81の下部外周の所定位置には、フロート弁80の内周に連通する、複数の開口孔89が形成されている。
【0038】
図6(b),(c)に示すように、前記上壁83の下面中央からは、前記フロート弁用スプリング65が挿入される、筒部91が突設されている。図6(b)に示すように、この筒部91と前記周壁81とは、放射状に均等な間隔をあけて配置されたリブ93で連結されており、下面側が開口した複数の空隙95が、フロート弁80の内部に画成されている。また、図1及び図6に示すように、前記上壁83の、前記凹部87の幅方向両側には、円形状の抜き孔97が前記空隙95に連通してそれぞれ形成されており、合計で4つの抜き孔97が設けられている。この実施形態では、4つの空隙95が、上記抜き孔97により軸方向に貫通した構造をなし、残りの4つの空隙95は、上面が閉塞されて下面のみが開口している。なお、この抜き孔97は前記空隙95に連通した位置に形成されていればよく、その位置や個数は特に限定されない。
【0039】
そして、フロート弁80の凹部87,87を、ハウジング本体30の主壁部50及び副壁部52に整合させて、ハウジング本体30の弁室R1内にフロート弁80を収容し、その筒部91内にフロート弁用スプリング65を挿入する。また、同フロート弁用スプリング65の下端部を、ロアキャップ60の支持突部61bに支持させて、その状態でハウジング本体30の下方開口部外周にロアキャップ60の周壁63を被せて、ハウジング本体30の係合突起43をロアキャップ60の係合孔63aに係合させる。その結果、ハウジング本体30の下方開口部にロアキャップ60が取付けられて、弁室R1内にフロート弁80が昇降可能に収容される(図2参照)。
【0040】
上記のように弁室R1内に収容されたフロート弁80は、燃料に浸漬しない場合には、その自重によりフロート弁用スプリング65を圧縮して、ロアキャップ60の底壁61上に載置されて、ハウジング本体30の開口部35が開いた状態に保持される(図2及び図7参照)。そして、燃料タンク1内の燃料液面が上昇して、フロート弁80が所定高さまで浸漬されると、フロート弁用スプリング65の付勢力にフロート弁80自体の浮力が加わって、フロート弁80が上昇して、弁頭83aが弁座35aに当接して、開口部35を閉塞するようになっている(図8参照)。
【0041】
次に本発明の弁装置の作用効果について説明する。
【0042】
この実施形態における弁装置10は、燃料タンク1に溶接されたブラケット3の外側縁に、係合片41aを係合させることにより、ブラケット3に装着されて、燃料タンク1の内部に取付けられる(図2参照)。また、接続管39に、燃料タンク1の外部に配置された図示しないキャニスタに連結された配管が接続されて、燃料タンク1の外部と通気室R2とが連通されている。
【0043】
そして、車両が揺れず、燃料タンク1内の燃料の液面が傾かずに、フロート弁80が燃料に浸漬されていない状態では、フロート弁80の自重により、フロート弁用スプリング65が圧縮されて、フロート弁80の弁頭83aが弁座35aから離れて、開口部35が開いた状態となっている(図2及び図7参照)。
【0044】
上記状態で、車両が旋回したり大きく傾いたりして、燃料液面が上昇し、フロート弁80に燃料が所定高さ以上浸漬すると、フロート弁80に浮力が作用すると共に、フロート弁用スプリング65の付勢力によって、フロート弁80が浮き上がり、図8に示すように、弁頭83aが弁座35aに当接して開口部35が閉塞される。その結果、燃料が開口部35を通って、通気室R2内に流入することが阻止されて、燃料タンク1の外部への燃料漏れを防止することができる。また、燃料液面が下降した場合には、フロート弁80が自重により下降して、弁頭83aが弁座35aから離れて、開口部35が再び開いた状態となる。
【0045】
上記のフロート弁80の昇降動作の際には、フロート弁80の外周に設けられたガイドリブ85が、ハウジング本体30の周壁31の内周に摺接して、フロート弁80の昇降動作がガイドされる。そして、この実施形態では、主壁部50及び副壁部52に干渉しない長さでガイドリブ85aを設けたので、フロート弁80が上昇したときに、主壁部50及び副壁部52に当接することが防止されて、フロート弁80の昇降動作を確実にガイドすることができ、フロート弁80のガタ付きや傾きが抑制されて、その弁頭83aを弁座35aにしっかりと当接させてシール性を向上させることできる。
【0046】
また、フロート弁80には、その上昇時に主壁部50及び副壁部52が入り込む凹部87を設けたので、主壁部50及び副壁部52が干渉することを、確実に防止することができる。更に、主壁部50及び副壁部52の長さH1,H2,L1,L2や、燃料流路F1,F2(図3及び図5(b)参照)の幅等の、自由度を高めることができる。
【0047】
更に、この実施形態では、フロート弁80の内周に、下面が開口した空隙95が複数設けられており、その内のいくつかは抜き孔97に連通していないので(図6(b)参照)、これらを空気を溜めるための空気室として活用することができ、燃料が浸漬することによりフロート弁80に作用する浮力を高めることができ、フロート弁80の安定動作に寄与する。
【0048】
ところで、燃料に浸漬されたフロート弁80が上昇したときに、上壁83の上面に燃料が溜まることがある(図8参照)。このように上壁83の上面に燃料が溜まった状態で、フロート弁80の弁頭83aが、ハウジング本体30の弁座35aに当接して開口部35が閉塞された後、フロート弁80が下降すると、燃料タンク1の内部圧力と外部圧力との差から、上壁83の上面に溜まった燃料が、開口部35から通気室R2に漏れてしまうことがあった。
【0049】
これに対して本実施形態では、フロート弁80の上壁83に、前記空隙95に連通する抜き孔97が形成されているので、上壁83の上面に溜まった燃料を、図8の矢印に示すように、抜き孔97から空隙95を介して、フロート弁80の下方から排出することができる。その結果、上壁83の上面に溜まった燃料を、開口部35から通気室R2へ漏れることを効果的に防止することができる。
【0050】
そして、車両が悪路を走行して上下に振動したり左右に揺動したり、或いは、急旋回したりすると、燃料液面から生じた微細な飛沫状の燃料しぶきや、燃料タンク1内で大きく揺動した燃料が、通気孔45から弁室R1内に勢いよく流入することとなる(図7参照)。
【0051】
このとき、ハウジング本体30の内周の、通気孔45に対応する位置に、通気孔45よりも大きく形成された主壁部50が配置されているので、図4、図5(b)及び図7に示すように、この主壁部50に、弁室R1内に流入した燃料が衝突し、その勢いを低減させることができ、ハウジング本体30の開口部35から通気室R2へ燃料が漏れることを抑制することができる。
【0052】
また、主壁部50の周方向端部から副壁部52が延出しているので、図5(b)の矢印Y1に示すように、弁室R1内に、通気孔45に対して燃料が斜めに勢いよく流入しても、燃料を副壁部52に衝突させて、その勢いを低減することができ、開口部35からの燃料漏れを抑制することができる。
【0053】
そして、通気孔45から弁室R1内に流入した燃料は、図5(b)の矢印Y2に示すように、燃料流路F1を通ると共に燃料流路F2を通って弁室R1内を流動する。このとき、図5(a)に示すように、副壁部52の軸方向長さH2が、主壁部50の軸方向長さH1よりも短く形成されているので、燃料流路F2の軸方向長さを、燃料流路F1の軸方向長さよりも、軸方向に短くすることができる(図3参照)。また、図5(b)に示すように、副壁部52の周方向長さL2も、主壁部50の周方向長さL1よりも短く形成されているので、燃料流路F2の周方向長さを、燃料流路F1の周方向長さよりも、周方向に短くすることができる(図3参照)。
【0054】
上記のように、通気孔45から弁室R1内に流入した燃料が、主壁部50に衝突して、燃料流路F1及び燃料流路F2を流れるときに、燃料流路F2の軸方向長さ及び周方向長さが短くなっているため、燃料は、そこの部分で、その流れの一部が広い空間に開放されることとなるので、そこで燃料の流速を低下させて、仕切壁33の開口部35に勢いよく衝突するのを防止でき、開口部35からの漏れを生じることを効果的に防止することができる。
【0055】
また、この実施形態では、ハウジング本体30の周壁31の内周面から突設したリブ48の両側に、主壁部50,50が連結され、これらの各主壁部50の周方向先端部から、副壁部52がそれぞれ延出されているので、1つのリブ48を介して2組の主壁部50,50と副壁部52,52とを設けることができ、主壁部50及び副壁部52の設置スペースを小さくして、フロート弁80の体積を大きく確保することができる。
【実施例】
【0056】
フロート弁を備える各種の弁装置を揺動試験機をセットして、開口部から、燃料がどの程度漏れるかを試験した。
【0057】
(実施例)
図1〜8に示す本発明に係る弁装置10を製造した。主壁部50の軸方向長さH1は5.2mmで、周方向長さL1は5.3mmであり、副壁部52の軸方向長さH2は3.4mmで、周方向長さL2は2.8mmであり、軸方向長さH1と軸方向長さH2との差は1.8mmで、周方向長さL1と周方向長さL2との差は2.5mmであった。通気孔45は円形をなし、その内径は3.2mmであった。
【0058】
(比較例1)
副壁部52を設けない以外は、上記実施例と同様の構造で、比較例1を製造した。
【0059】
(比較例2)
副壁部52の軸方向長さH2を、主壁部50の軸方向長さH1と同一とした以外は、上記実施例と同様の構造で、比較例2を製造した。
【0060】
(試験方法)
図9の平面図には、試験方法の概略が示されている。まず、実施例及び比較例1,2の弁装置を、水が所定量充填されると共に、3kPaの圧力が付加された容器5に、弁装置の下面と水面との距離が50mmとなるように設置した。この容器5を揺動試験機7にセットした。
【0061】
ここでは、図9(a)に示すように、揺動試験機7の揺動方向と、弁装置の接続管との向きを合せてセット(X方向セット)、図9(b)に示すように、揺動試験機7の揺動方向と、弁装置の接続管とを直交させてセット(Y方向セット)、図9(c)に示すように、揺動試験機7の揺動方向と、弁装置の接続管との向きが45°傾かせてセットした(45°セット)。
【0062】
そして、実施例、比較例1,2を上記の向きで、揺動試験機7にセットした後、揺動試験機7を作動させて容器5を揺動させた。その際の、開口部からの燃料の漏れ量を測定した。これを実施例、比較例1,2の各弁装置について、X方向セット、Y方向セット、45°セットで複数個行い、その平均を求めた。その結果を、下記表1にまとめて示す。
【0063】
【表1】

【0064】
上記表1に示すように、実施例の弁装置においては、X方向セット、Y方向セット、45°セットのいずれの向きにおいても、開口部からの燃料漏れ量が少なく、燃料漏れを効果的に抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0065】
10 弁装置
20 ハウジング
31 周壁
33 仕切壁
35 開口部
35a 弁座
45 通気孔
48 リブ
50 主壁部
52 副壁部
80 フロート弁
83 上壁
85,85a ガイドリブ
93 リブ
95 空隙
97 抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられたハウジングと、
該ハウジングの前記弁室内に昇降可能に配置されたフロート弁とを備え、
前記ハウジングの周壁の、前記仕切壁よりも下方に、前記弁室に連通する通気孔が形成され、
前記ハウジングの内周であって前記通気孔に対応する位置に、前記ハウジングの軸方向における長さ及び周方向における長さが、前記通気孔よりも大きく形成された、主壁部が設けられ、
この主壁部の周方向端部から副壁部が延出されており、この副壁部の、ハウジングの軸方向に沿った長さは、前記主壁部の、ハウジングの軸方向に沿った長さよりも短く形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記ハウジングの周壁内面からリブが突設され、このリブの両側に前記主壁部が連結され、各主壁部の先端に前記副壁部が連結されている請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記フロート弁の内部に、周囲をリブで囲まれ、下面を開口された複数の空隙が形成され、前記フロート弁の上壁に前記空隙の全てではないいくつかに連通する抜き孔が形成されている請求項1又は2記載の弁装置。
【請求項4】
前記フロート弁の外周には、その昇降動作時に前記主壁部及び前記副壁部に干渉しない長さで、フロート弁の軸方向に沿ってガイドリブが設けられている請求項1〜3のいずれか1つに記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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