引き戸
【課題】 引手を障子の框内に出没可能にし、かつ、この出没操作に連動して障子の錠を解除あるいは施錠することができるとともに、防犯性能も向上できる引き戸を提供すること。
【解決手段】把手11の動作に連動して錠装置20の鎌錠22によって解錠または施錠が行われるため、操作性を向上できる。さらに、施錠時は把手11が戸先框8A内に没しているため、引違い窓1の外観をシンプルにでき、意匠性を向上できる。また、解錠時は把手11が戸先框8Aから引き出されているので、障子の開閉操作がし易くなり、利き手の違いの影響も軽減でき、操作性を向上できる。トリガー24と錠作動部材23のガイド溝23Aとによって構成された移動規制手段を備えているので、障子5Aを閉めるまでは把手11を戸先框8A内に押し込むことはできないため、把手11を持って障子を開閉する際に安定して操作できる。
【解決手段】把手11の動作に連動して錠装置20の鎌錠22によって解錠または施錠が行われるため、操作性を向上できる。さらに、施錠時は把手11が戸先框8A内に没しているため、引違い窓1の外観をシンプルにでき、意匠性を向上できる。また、解錠時は把手11が戸先框8Aから引き出されているので、障子の開閉操作がし易くなり、利き手の違いの影響も軽減でき、操作性を向上できる。トリガー24と錠作動部材23のガイド溝23Aとによって構成された移動規制手段を備えているので、障子5Aを閉めるまでは把手11を戸先框8A内に押し込むことはできないため、把手11を持って障子を開閉する際に安定して操作できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片引き戸や三枚引き戸等の窓やドア部分に設けられる引き戸に関する。
【背景技術】
【0002】
片引き戸や三枚引き戸等の各種引き戸において、障子を開閉するための引手としては、従来、障子の框部分に凹部を形成した掘込み型の引手や、固定ハンドル式の引手が用いられていた。
しかし、掘込み型の引手は、障子の室内面に形成すると框部分に形成された凹部が室内などに露出して意匠性が低下するという問題がある。また、掘込み型の引手を障子の室内面に直交する側面に形成すると、その開口の向きによって左手または右手のいずれかでは操作し難くなり、操作性が低下するという問題がある。
また、固定ハンドル式の引手も、障子の框からガラス面に突出して形成され、意匠性が低下するという問題がある。
【0003】
これに対し、揺動開閉構造のドアにおいて、ドアを開閉操作する把手をドア体に出没可能に構成した出没式ドア把手装置が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1では、ドア体の表面に出没される把手本体を設け、この把手本体の出没操作に伴い、ドア体の周囲側縁部から出没してドア開口部周囲枠の係合凹所に係合するロック機構をドア体内に設けている。そして、ロック機構は、把手本体の出没によって伸縮する伸縮手段と、この伸縮手段に連結されたスライドロッドと、スライドロッドの先端に連繋され、前記係合凹所に係合するドアラッチとを備えている。
【0004】
この出没式ドア把手装置は、把手本体をドア体から引き出すと、スライドロッドを介してドアラッチをドア体内に没入させ、ドアラッチと係合凹所との係合が解除され、ドア体を開くことができる。
一方、把手本体をドア体内に押し込むと、スライドロッドを介してドアラッチがドア体から突出し、係合凹所に係合してドア体がロックされる。但し、ドアラッチはバネによってスライドロッドに対してスライド可能に設けられているから、ドア体を開いた状態で把手本体をドア体内に押し込んでドアラッチがドア体から突出し、ドア体を閉めた際にドアラッチがドア開口部周囲枠に摺接しても、ドアラッチの案内傾斜面によってドアラッチがラッチ収納部内に押し込まれてドア体を閉めることができるように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−98853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の出没式ドア把手装置では、ドアラッチはスライドロッドに対してスライド可能になっているため、把手をドア本体内に押し込んでも、必ずしも、ドアラッチが係合凹所内に係合されていないおそれがあった。例えば、係合凹部が何らかの部材で塞がれていた場合、把手をドア本体内に押し込んでドアラッチを係合凹部内に係合させたと思っていても、ドアラッチがスライドロッドに対してスライドしており、係合凹部内に係合していない状態が生じるおそれがあった。
このため、把手がドア本体内に押し込まれているためドアがロックされていると誤認するおそれがあり、この点で、防犯性能があまり高くないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、引手を障子の框内に出没可能にし、かつ、この出没操作に連動して障子の錠を解除あるいは施錠することができるとともに、防犯性能も向上できる引き戸を提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の引き戸は、枠および枠内をスライド移動可能に設けられた障子とを備える引き戸であって、前記障子の框には、框に対して障子のスライド方向に出没可能に設けられた把手と、前記框内に配置され、かつ前記把手の出没動作に連動して框の長手方向に進退移動可能に設けられた連動部材と、この連動部材の進退移動に連動して移動され、かつ前記把手が框内に押し込まれた状態では前記枠に形成された錠受部に係合して施錠状態とされ、前記把手が框から引き出された状態では前記枠に形成された錠受部から外れて解錠状態とされる錠部材と、前記把手が設けられた框が枠から離れた状態では、把手を框から引き出された状態に維持し、框内に押し込み不能に規制し、かつ、前記把手が設けられた框が枠に当接した状態では、把手を框に対して出没可能にする移動規制手段とが設けられたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、把手の動作に連動して解錠または施錠が行われるため、操作性を向上できる。さらに、施錠時は把手が框内に没しているため、引き戸の外観をシンプルにでき、意匠性を向上できる。また、解錠時は把手が框から引き出されているので、障子の開閉操作がし易くなり、利き手の違いの影響も軽減でき、操作性を向上できる。
その上、移動規制手段を備えているので、障子を閉めるまでは把手を框内に押し込むことはできないため、把手を持って障子を開閉する際に安定して操作できる。
また、障子が閉められた際つまり框が枠に当接した状態で初めて把手を押し込んで施錠できるので、框が枠に当接する前に錠部材が框から突出することがなく、錠部材が枠に当接することもない。従って、特許文献1のように、錠部材を連動部材に対してスライド移動可能に設けて枠に当接した場合に錠部材を逃がすような構成を採用する必要が無い。このため、把手は、施錠時は必ず框内に押し込まれ、解錠時は必ず框から突出されることになる。このため、把手の位置によって解錠状態であるか施錠状態であるかを確認でき、防犯性能も向上できる。
【0010】
本発明においては、前記錠部材は、框に対して回動自在に軸支され、かつこの回動軸から偏心した位置で前記連動部材に軸支され、連動部材の進退駆動に連動して框内に収納された状態および框内から突出して枠の錠受部に係合した状態に回動される鎌錠で構成されていることが好ましい。
錠部材としては、横方向にスライドする障子であれば、障子の上側または下側に出没して上枠や下枠に係合するデッドボルト式の錠部材を用いてもよいが、この場合、把手と錠部材とが離れるため、連動部材の長さ寸法が長くなり、開閉操作にある程度の力が必要になると共に、上下のいずれか一方のみで係合させると、障子が傾きやすくバランスが悪くなる。
これに対し、本発明のように、鎌錠を用いれば、把手の近傍に配置できて連動部材もコンパクトに形成でき、開閉操作も比較的小さな力で行え、かつ鎌錠の配置箇所が1カ所であっても障子が傾くことがなく、バランスよく施錠できる。
【0011】
本発明においては、前記移動規制手段は、框の枠当接面から出没可能に設けられかつガイドピンを有するトリガーと、このトリガーを框から突出する方向に付勢する付勢手段と、前記連動部材に形成されて前記トリガーのガイドピンが配置されるガイド溝とを備えて構成され、前記ガイド溝は、前記トリガーが突出された状態にある際に前記ガイドピンが係合して前記連動部材が移動不能にされる係止溝部と、前記トリガーが枠に当接して框内に押し込まれた状態にある際に前記ガイドピンが配置されて前記連動部材が移動可能にされる長溝部とで構成されていることが好ましい。
【0012】
このような移動規制手段を備えていれば、トリガーが枠に当接し、付勢手段の付勢力に抗して框内に没入した場合のみ連動部材が移動可能とされるため、把手の出没操作および施錠・解錠操作が可能になる。従って、障子が開いており、その框が枠から離れている場合には、付勢手段によってトリガーが框から突出され、把手が框から突出された状態で連動部材は移動不能に維持される。すなわち、ガイドピン付のトリガーと、バネ等の付勢手段と、連動部材に形成されたガイド溝のみで移動規制手段を構成できるので、移動規制手段を簡単な構造で構成でき、コストも低減できる。
【0013】
本発明の引き戸には、前記連動部材を進退操作可能なスイッチが設けられていることが好ましい。
連動部材を進退操作可能なスイッチを備えていれば、把手が框内に没入されている際に前記スイッチで連動部材を移動することで把手を框から突出させることができる。このため、把手自体を掴んで框から引き出す必要が無く、把手の引き出し操作を簡単にでき、意匠性を向上できる。すなわち、把手自体を掴んで引き出す場合には、把手に框から突出する部分を設けたり、框の一部を凹ませて把手を掴むことができるように構成する必要がある。このため、引き出し操作を簡単にするためには、突出部や凹部を大きくして把手を掴みやすくしなければならないが、その分、框表面に凹凸が生じ、意匠が低下する。これに対し、本発明では、別のスイッチで連動部材を進退させることで把手を框から突出させることができるので、把手部分を掴んで引き出す必要が無く、前記突出部や凹部を形成する必要がないので外観意匠を向上できる。
【0014】
本発明において、前記把手を出没方向に交差した両側から挟む位置には、一対の弾性部材が設けられ、この弾性部材には凸部または凹部が形成され、前記把手には、框内に押し込まれた状態および框から最も突出した状態の際に前記弾性部材の凸部または凹部に係合する凹部または凸部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、把手は少なくとも框内に押し込まれた状態および最も突出した状態の2つの位置で前記一対の弾性部材に係合するため、把手をその2つの位置で安定して保持できるとともに、弾性部材の力が把手に加わるためにガタを抑えることができる。
【0015】
本発明において、前記框から引き出された状態の把手を框内に押し込み不能に規制するロック手段が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、障子を閉じる際に框が枠に当接して移動規制手段の規制が外れても、ロック手段で規制されているため把手が框内に押し込み不能となり、このロック手段の規制を外すことで把手が框内に押し込み可能となる。従って、把手を操作して障子を閉じる際の勢いのままで把手を框内に押し込んでしまうことがなく、把手と框との間に指等を挟んでしまうことが防止できる。さらに、障子を閉じた後に、利用者が施錠する意図を持ってロック手段の規制を外すとともに、把手を框内に押し込むことで障子を施錠することができるので、意図せずに把手を框内に押し込んで障子を施錠してしまうことがなく、頻繁に障子を開け閉めする場合に煩わしさを感じたり、子供等を屋外に閉めだしてしまったりなどという不都合が防止できる。
【0016】
この際、前記ロック手段は、前記連動部材の進退移動を規制するロック部材を有して構成され、このロック部材は、前記連動部材に係合可能な係合部と室内側から操作可能に設けられた規制解除部とを有して形成され、前記係合部が前記連動部材に係合する方向に付勢されて前記框に対して回動自在に支持されるとともに、前記規制解除部の操作により前記係合部の係合が解除可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、係合部が連動部材に係合する方向にロック部材が付勢されているので、把手が框から引き出された状態において、自動的に係合部が連動部材に係合するようにでき、利用者がロック操作しなくても確実かつ容易に把手の移動規制を実行することができる。また、規制解除部の操作により係合部の係合を外して把手の移動規制を解除することで、この状態で把手を框内に押し込めば障子を施錠することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る引き戸としての3枚連動式の引違い窓1について、図1〜図12に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の引違い窓1を示す横断面図である。図2は、引違い窓1における縦枠および障子を断面して示す斜視図である。なお、本発明のサッシ窓は、3枚の障子を有する引違い窓1に限らず、通常の引違い窓や片引き窓等であってもよい。
【0019】
図1において、引違い窓1は、テラスやバルコニーなどの出入り可能な窓に設けられ、窓枠1Aと、この窓枠1Aの内側に開閉自在に支持された障子5とを備えて構成されている。
窓枠1Aは、図示しない上枠および下枠と、左右の縦枠4とを四周枠組みして構成される。本実施形態では、各枠は、室外側および室内側の各アルミ押出形材を断熱材で連結した断熱枠で構成されているが、その材質や構造は実施形態のものに限定されない。
【0020】
障子5は、それぞれ図示しない上框および下框と、左右の縦框8とを四周框組みした内部に、ガラスパネル9を嵌め込んで形成されている。3枚設けられた各障子5は、開閉時に互いに連動して開閉する連動式の障子とされている。すなわち、最も室内側の障子5Aと、中間の障子5Bと、室外側の障子5Cとで構成されており、室外側の障子5Cは、窓枠1Aに対して移動不能のFIX障子とされ、障子5Bは、障子5Aの開閉操作に応じて連動して開閉されるように構成されている。
【0021】
室内側障子5Aの戸先框8Aには、図2にも示すように、障子5Aを開閉操作する際に用いられる引手装置10が設けられている。
引手装置10は、戸先框8Aにおける框内周面81つまり戸先框8Aの室内面に直交する2つの側面81,82のうち、框内周側の面81から出没可能な把手11を備えている。すなわち、把手11は、障子5のスライド方向に出没可能に設けられており、戸先框8Aの側面81から突出した状態の把手11を手で掴んで図1の右方向に引くことで障子5A,5Bを開放することができ、把手11や戸先框8Aを図1の左方向に押すことで障子5A,5Bを閉じることができるようになっている。そして、障子5A,5Bを閉じた状態で把手11を戸先框8Aに没入させることで、把手11が側面81から出っ張らない障子5Aの外観が得られるようになっている。
また、戸先框8Aには、把手11の出没に連動する錠装置20(後述)が設けられており、この錠装置20によって障子5が施錠または解錠されるようになっている。
【0022】
次に、引手装置10および錠装置20について、図3〜図7も参照して詳しく説明する。
図3および図4は、それぞれ引手装置10および錠装置20を示す縦断面図であり、障子5Aの戸先框8Aを断面した図である。図5は、引手装置10を示す横断面図であり、図3の矢視V−V線断面図である。図6および図7は、それぞれ引手装置10を断面して示す斜視図である。
引手装置10は、戸先框8Aの側面81に形成された装着孔81Aに装着され、この装着孔81Aに嵌る外装体12と、この外装体12に固定されて戸先框8A内部に挿入されるケース体13と、このケース体13の内側に設けられるスライド体14と、このスライド体14の上端部に連結されたスイッチ15とを有して構成されている。
【0023】
引手装置10の外装体12は、金属製または樹脂製の部材であって、戸先框8Aの室内側および室外側の側面から螺合されるビス等によって戸先框8Aに固定されている。そして、外装体12には、把手11を出没させるための開口部12Aが設けられている。ケース体13は、外装体12の開口部12Aに向かって開口した断面略コ字形の金属製または樹脂製部材であって、対向した一対のケース体側面部13Aと、これらのケース体側面部13Aを連結するケース体背面部13Bとを有して形成されている。そして、ケース体背面部13Bと戸先框8Aの側面82との間には、熱伝導率の低い樹脂等の材料から形成されたスペーサ18が介装されている。スライド体14は、ケース体13と同様の断面略コ字形に形成されてケース体13の内部に摺接可能に支持された金属製または樹脂製部材であって、戸先框8Aの長手方向(上下方向)に進退(スライド)移動可能になっている。そして、スライド体14は、ケース体側面部13Aに沿った一対のスライド体側面部14Aと、これらのスライド体側面部14Aを連結するスライド体背面部14Bとを有して形成されている。
【0024】
把手11は、手で掴むための金属製または樹脂製部材であって、一対のスライド体側面部14Aおよび外装体12の開口部12Aに案内され、この開口部12Aから出没可能に構成されている。そして、把手11は、上下に延びて設けられ手で掴んで操作するための操作部11Aと、この操作部11Aに対向してケース体13内部側に設けられる案内部11Bと、これらの操作部11Aおよび案内部11Bの上下端同士を連結する一対の水平部11Cとを有して形成されている。また、把手11の上下端における操作部11Aの反対側には、水平部11Cよりも上方または下方に突出した一対の当接部11Dが形成され、案内部11Bにおける上端寄りおよび下端寄りの2箇所には、把手11の出没方向に交差した戸先框8Aの見込み方向に突出する案内ピン11Eが設けられている。
【0025】
スライド体14のスライド体側面部14Aにおける把手11の案内ピン11Eに対応した位置には、案内ピン11Eが挿入される案内溝14Cが設けられている。この案内溝14Cは、スライド体14の進退方向および把手11の出没方向に対して傾斜して形成されており、この案内溝14Cに沿って案内ピン11Eが案内されることで、スライド体14の進退移動と把手11の出没移動とが連動されるようになっている。また、スライド体側面部14Aにおける上端寄りおよび下端寄りの2箇所には、スライド体14の進退(上下)方向に沿った長孔14Dが形成されており、この長孔14Dには、一対のケース体側面部13A間に渡って設けられたピン13Cが挿入され、このピン13Cによってスライド体14が上下方向に案内されるようになっている。
【0026】
スイッチ15は、棒状のスイッチ本体15Aと、このスイッチ本体15Aから外装体12側に突出したスイッチ操作部15Bと、スイッチ本体15Aの上端部に設けられた連結部15Cとを有して形成され、スイッチ本体15Aの下端部がスライド体14の上端部にピン接合されている。外装体12には、上下に長く形成されてスイッチ操作部15Bを挿通可能な挿通孔12Bが設けられており、室内側からスイッチ操作部15Bを上下に移動操作可能に構成されている。そして、スイッチ操作部15Bを操作することで、スライド体14が上下に進退移動されるとともに、把手11が外装体12から出没移動されるようになっている。
【0027】
以上のような引手装置10の把手11、ケース体13、スライド体14、およびスイッチ15では、図3、6に示すように、スイッチ操作部15Bを下方に操作して把手11がケース体13内部に没入された状態において、案内ピン11Eは、スライド体背面部14B側の案内溝14C端部(一端部)に位置し、スライド体14は、進退移動可能範囲の下端に位置するようになっている。そして、把手11が没入された状態では、把手11の当接部11Dがケース体背面部13Bに当接して、その位置よりも奥側に把手11が没入せず、操作部11A側面と外装体12表面とが略面一に揃えられるようになっている。
【0028】
一方、図4、7に示すように、スイッチ操作部15Bを上方に操作して把手11がケース体13から突出された状態において、案内ピン11Eは、外装体12側の案内溝14C端部(他端部)に位置し、スライド体14は、進退移動可能範囲の上端に位置するようになっている。そして、把手11が突出された状態では、把手11の当接部11Dが外装体12の開口部12A上下端縁に当接して、その位置よりも外側に把手11が突出せず、操作部11Aを引くことで障子5Aを開放操作できるようになっている。
【0029】
次に、錠装置20は、図3、4に示すように、戸先框8Aの縦枠4側の側面82に装着された錠ケース21と、この錠ケース21内に回動自在に軸支された錠部材としての鎌錠22と、この鎌錠22に連結されかつ錠ケース21内に進退可能に支持された錠作動部材23と、錠作動部材23に一端(基端)側が係合されかつ他端(先端)側が戸先框8Aの側面82から出没可能に設けられたトリガー24とを備えて構成されている。錠作動部材23は、錠ケース21内に戸先框8Aの長手方向(上下方向)に進退可能に支持されている。そして、錠作動部材23の下端部には、連結部材25がピン結合されており、この連結部材25の下端部に設けた連結ピン25Aにスイッチ15の連結部15Cが結合されている。このような連結部材25で連結することで、錠装置20の錠作動部材23と引手装置10のスライド体14およびスイッチ15とが連動して進退移動するようになっている。
以上のように、引手装置10のスライド体14およびスイッチ15と、錠装置20の連結部材25および錠作動部材23とによって、本発明の連動部材が構成されている。
【0030】
錠装置20の鎌錠22は、軸支ピン22Aによって錠ケース21に軸支されるとともに、軸支ピン22Aと偏心した位置の連結ピン22Bで錠作動部材23に軸支(ピン結合)され、錠作動部材23の進退移動に伴って回動するようになっている。そして、鎌錠22は、回動軸である軸支ピン22A回りに回動し、図3に示すように、縦枠4に設けられた錠受穴4Aの錠受部4Bに係合した施錠状態と、図4に示すように、錠受部4Bから外れて錠ケース21内に収納された解錠状態とが切り換えられる。すなわち、前述のように、把手11がケース体13内部に没入された状態において、錠作動部材23によって鎌錠22の連結ピン22B側が下方に引き下げられ、鎌錠22が回動して錠受部4Bに係合した施錠状態となる。一方、把手11がケース体13から突出された状態において、錠作動部材23によって鎌錠22の連結ピン22B側が上方に押し上げられ、鎌錠22が錠受部4Bから外れた解錠状態となる。
【0031】
錠作動部材23には、トリガー24の一端側に設けられたガイドピン24Aと係合するガイド溝23Aが設けられている。このガイド溝23Aは、錠作動部材23の進退移動方向に沿った長溝部23Bと、この長溝部23B下端からトリガー24の先端側に折れ曲がった係止溝部23Cとを有して略L字形に形成されている。一方、トリガー24には、当該トリガー24を戸先框8Aの側面82から突出する方向に付勢する付勢手段としてのばね部材24Bが設けられている。従って、錠作動部材23が上方に移動された解錠状態(図4)において、ばね部材24Bにより付勢されたトリガー24が戸先框8Aの側面82から突出し、ガイドピン24Aがガイド溝23Aの係止溝部23Cに位置することになる。この状態では、ガイドピン24Aが係止溝部23Cに係合することで、錠作動部材23が下方に移動不能になり、これにより引手装置10のスライド体14およびスイッチ15が進退移動不能になり、把手11がケース体13から突出された状態を維持することとなる。
【0032】
一方、障子5Aが閉じられてトリガー24の先端が縦枠4に当接し、ばね部材24Bの付勢力に抗してトリガー24が戸先框8A内に押し込まれた状態(図3)において、ガイドピン24Aがガイド溝23Aの長溝部23Bに位置することになる。この状態では、ガイドピン24Aが係止溝部23Cから外れることで、錠作動部材23が下方に移動可能になり、これにより引手装置10のスライド体14およびスイッチ15が進退移動可能になる。従って、把手11をケース体13内に押し込んでスライド体14およびスイッチ15を下方に移動させることで、連結部材25および錠作動部材23を介して鎌錠22を回動させて錠受部4Bに係合させる施錠状態とすることができるようになっている。このような施錠状態は、スイッチ15を上方に操作して鎌錠22を錠受部4Bから外すまで維持される。
以上のように、ガイドピン24Aおよびばね部材24Bを有したトリガー24と、ガイド溝23Aを有した錠作動部材23とによって、本発明の移動規制手段が構成されている。
【0033】
なお、以上のような引手装置10の各部において、図8〜図12に示す構成を採用することができる。
図8および図9は、それぞれ本実施形態の引手装置10における把手11の変形例を示す断面図および斜視図であり、把手11の位置決め手段を示す図である。図10は、把手11の変形例を示す断面図であり、図8、9と異なる把手11の位置決め手段を示す図である。図11は、把手11の変形例を示す側面図であり、把手11の音鳴り防止手段を示す図である。図12は、把手11の変形例を示す分解斜視図であり、把手11のガタ防止手段を示す図である。
【0034】
図8、9において、把手11の操作部11Aおよび案内部11Bの側面には、把手11の突没方向に交差した方向に突出する凸部11Fが形成されている。また、把手11の凸部11Fに対応したケース体13のケース体側面部13Aには、把手11を挟んで配置され、かつ把手11に向かって付勢された一対の弾性部材である板ばね16が設けられている。この板ばね16には、把手11の凸部11Fに係合する凹部16Aが形成されている。そして、把手11がケース体13内に押し込まれた状態において、操作部11Aの凸部11Fと板ばね16の凹部16Aとが係合することで、この位置で把手11が保持されるようになっている。また、把手11がケース体13から最も突出した状態において、案内
部11Bの凸部11Fと板ばね16の凹部16Aとが係合することで、この位置で把手11が保持されるようになっている。以上のように、把手11の凸部11Fと板ばね16の凹部16Aとによって把手11の位置決め手段が構成されている。
【0035】
また、把手11の位置決め手段としては、図10に示す構成が採用できる。すなわち、把手11の操作部11Aおよび案内部11Bの側面に把手11の突没方向に交差した方向に凹んだ凹部11Gを形成し、この凹部11Gに対応した位置の板ばね16に凸部16Bを形成し、これらの凹部11Gおよび凸部16Bが係合するような構成でもよい。
【0036】
図11において、把手11の当接部11Dの両面には、音鳴り防止手段である緩衝材17が設けられている。すなわち、把手11をケース体13内に押し込んだ状態でケース体背面部13Bに当接する当接部11Dの面と、および把手11をケース体13から最も突出させた状態で外装体12の開口部12A上下端縁に当接する当接部11Dの面とに、緩衝材17が設けられている。この緩衝材17は、例えば、スポンジや軟質ゴム等の衝撃を吸収可能な材料から形成されており、これにより、把手11を出没移動させた際に、把手11とケース体13や外装体12とがぶつかっても、音鳴りを防止することができる。
【0037】
図12において、把手11の案内部11Bの側面には、複数の切欠き溝11Hが形成され、把手11の水平部11Cおよび当接部11Dの交差部分には、一対の突起11Iが形成されている。また、外装体12の開口部12Aにおける切欠き溝11Hに対応した位置には、突起12Cが形成され、突起11Iに対応した位置には、一対の凹み12Dが形成されている。そして、把手11がケース体13から最も突出した状態において、案内部11Bの切欠き溝11Hと外装体12の突起12Cとが係合し、一対の突起11Iと凹み12Dとが係合することで、この位置における把手11のガタが防止されるようになっている。以上のように、把手11の切欠き溝11Hおよび突起11Iと外装体12の突起12Cおよび凹み12Dとによって把手11のガタ防止手段が構成されている。
【0038】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、把手11の動作に連動して錠装置20の鎌錠22によって解錠または施錠が行われるため、操作性を向上できる。さらに、施錠時は把手11が戸先框8A内に没しているため、引違い窓1の外観をシンプルにでき、意匠性を向上できる。また、解錠時は把手11が戸先框8Aから引き出されているので、障子5の開閉操作がし易くなり、利き手の違いの影響も軽減でき、操作性を向上できる。
【0039】
(2)さらに、トリガー24と錠作動部材23のガイド溝23Aとによって構成された移動規制手段を備えているので、障子5Aを閉めるまでは把手11を戸先框8A内に押し込むことはできないため、把手11を持って障子5Aを開閉する際に安定して操作できる。
【0040】
(3)また、障子5Aが閉じられた際つまりトリガー24が戸先框8Aに没入した状態で初めて把手11を押し込んで施錠できるので、トリガー24が戸先框8Aに没入する前に鎌錠22が戸先框8Aから突出することがなく、鎌錠22が縦枠4に当接することもない。従って、従来の出没式ドア把手装置のように、錠部材を連動部材に対してスライド移動可能に設けて枠に当接した場合に錠部材を逃がすような構成を採用する必要が無い。このため、把手11は、施錠時は必ず戸先框8A内に押し込まれ、解錠時は必ず戸先框8Aから突出されることになる。このため、把手11の位置によって解錠状態であるか施錠状態であるかを確認でき、防犯性能も向上できる。
【0041】
(4)さらに、トリガー24が縦枠4に当接し、ばね部材24Bの付勢力に抗して戸先框8A内に没入した場合のみ錠作動部材23が移動可能とされるため、把手11の出没操作および施錠・解錠操作が可能になる。従って、障子5Aが開いており、その戸先框8Aが縦枠4から離れている場合には、ばね部材24Bによってトリガー24が戸先框8Aから突出され、把手11が戸先框8Aから突出された状態で錠作動部材23は移動不能に維持される。すなわち、ガイドピン24A付のトリガー24と、ばね部材24Bと、錠作動部材23に形成されたガイド溝23Aのみで移動規制手段を構成できるので、移動規制手段を簡単な構造で構成でき、コストも低減できる。
【0042】
(5)また、錠装置20において、錠作動部材23に連動して回動する鎌錠22を用いたので、従来のドア把手装置と比較して、鎌錠22が把手11の近傍に配置できて錠作動部材23もコンパクトに形成でき、開閉操作も比較的小さな力で行え、かつ鎌錠22の配置箇所が1カ所であっても障子5Aが傾くことがなく、バランスよく施錠できる。
【0043】
(6)また、スライド体14および錠作動部材23を進退操作可能なスイッチ15が設けられているので、把手11が戸先框8A内に没入されている際にスイッチ15でスライド体14を移動することで把手11を框から突出させるとともに、錠作動部材23をスライドさせることで鎌錠22を錠受部4Bから外すことができる。このため、把手11自体を掴んで戸先框8Aから引き出す必要が無く、把手11の引き出し操作を簡単にでき、意匠性を向上できる。
【0044】
(7)また、ケース体13と戸先框8Aとの間にスペーサ18が介装されているので、室温よりも外気温が低くなって戸先框8Aが冷やされた場合でも、引手装置10の把手11や外装体12、ケース体13の温度低下を抑えて、これらの各部における結露の発生を防止することができる。
【0045】
(8)さらに、図8、9または図10に示すような把手11の位置決め手段を用いることで、把手11は少なくとも戸先框8A内に押し込まれた状態および最も突出した状態の2つの位置で板ばね16に係合するため、把手11をその2つの位置で安定して保持できるとともに、板ばね16の力が把手11に加わるためにガタを抑えることができる。
【0046】
(9)また、図11に示すような緩衝材17を把手11の当接部11Dに設けることで、把手11を出没操作した際のケース体13や外装体12との衝突音を防止することができる。
【0047】
(10)さらに、図12に示すような把手11のガタ防止手段を用いることで、把手11が戸先框8Aから最も突出した状態において、把手11のガタを防止することができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係る引手装置10Aについて、図13〜図19に基づいて説明する。
図13および図14は、それぞれ本実施形態の引手装置10Aおよび錠装置20を示す縦断面図である。図15は、引手装置10Aの一部を拡大して示す断面図である。図16は、引手装置10Aを断面して示す斜視図である。図17および図18は、引手装置10Aの一部を示す分解斜視図である。図19(A),(B)は、引手装置10Aの一部を示す断面図である。
【0049】
本実施形態の引手装置10Aは、前記第1実施形態の引手装置10と略同様の把手11、外装体12、ケース体13、スライド体14、およびスイッチ15を有し、把手11を戸先框8A内に押し込み不能に規制するロック手段であるロック部19が追加されている。また、本実施形態において、錠装置20の構成は、第1実施形態と略同様である。
なお、第1実施形態では、スライド体14と錠装置20の連結部材25とを連結してスイッチ15が設けられていたが、本実施形態の引手装置10Aにおいては、スイッチ15が戸先框8Aに取り付けられており、連結部材25がスライド体14に連結されている。そして、スイッチ15は、上下にスライド自在に支持されたスイッチ本体15Aを有し、このスイッチ本体15Aから延びる突出部15Dが連結部材25の凹部25Bに係合され、スイッチ操作部15Bの操作により連結部材25、錠作動部材23およびスライド体14が上下に進退駆動されるようになっている。すなわち、スイッチ本体15Aを上方にスライド操作することで、錠作動部材23を介して鎌錠22が解錠状態に移動されるとともに、スライド体14を介して把手11がケース体13から突出されるようになっている。
【0050】
引手装置10Aのロック部19は、図15、図16に示すように、外装体12に回動自在に支持されたロック部材191と、このロック部材191を軸支する回動軸192と、この回動軸192の回りに設けられてロック部材191を付勢するねじりコイルばね193とを有して構成されている。ロック部材191は、連結部材25に形成された非係合部25Cに係合可能な係合部191Aと、この係合部191Aの回動軸192を挟んで反対側に室内側から操作可能に設けられた規制解除部である操作部191Bとを有して形成されている。そして、ロック部材191は、ねじりコイルばね193の付勢力によって、係合部191Aが連結部材25に向かって回動する方向(図15に矢印で示す方向)、つまり操作部191Bが室内側に突出する方向に付勢されている。
【0051】
以上のロック部19では、スイッチ15により連結部材25が上方にスライド移動され、連結部材25の非係合部25Cがロック部材191の係合部191A位置まで移動された場合に、ねじりコイルばね193で付勢されたロック部材191が回動して係合部191Aが非係合部25Cに係合する。これにより、連結部材25のスライド移動が規制される、つまり連結部材25に連結された錠作動部材23およびスライド体14の移動が規制される。従って、鎌錠22が解錠状態に維持されるとともに、把手11が突出された状態に維持されるようになっている。
【0052】
一方、ロック部材191の操作部191Bをねじりコイルばね193の付勢力に抗してケース体13内方に押し込むと、ロック部材191が回動されて係合部191Aと非係合部25Cとの係合が外れ、連結部材25、錠作動部材23およびスライド体14のスライド移動の規制が解除される。従って、障子5Aを閉じてトリガー24が戸先框8A内に没入した状態において、操作部191Bを押して、把手11をケース体13内方に押し込めば、スライド体14、連結部材25、および錠作動部材23を介して鎌錠22が施錠方向に回動されて障子5Aが施錠されるようになっている。
なお、本実施形態のスライド体14に形成された案内溝14Cは、そのスライド方向に対する傾斜角度が途中で切り替えられており、鎌錠22が施錠方向に回動される把手11の押し込み後半において、スライド体14のスライド量が大きくなるように形成されている。すなわち、鎌錠22の回動後半における回動量を大きくして、鎌錠22と錠受部4B(図3)とが確実に係合されるようになっている。
【0053】
また、本実施形態の引手装置10Aにおいて、把手11には、図17に示すように、スライド体14の内面に沿って摺動する摺動部材111が設けられている。摺動部材111は、断面略コ字形に形成された樹脂製の部材であって、把手11における案内ピン11Eを挿通させる2箇所の挿通部11Jを挟んで取り付けられ、これらを貫通する案内ピン11Eにより把手11に固定されている。そして、摺動部材111は、その外形幅寸法が把手11の幅寸法よりも若干大きく形成されており、摺動部材111がスライド体14内面に摺動し把手11とスライド体14との接触を防止することで、把手11の出没操作時における音なりや摩耗が防止できるようになっている。
【0054】
さらに、ケース体13の開口側端縁には、図18、図19に示すように、把手11の幅寸法と略同一の間隔で対向した一対の案内部材131が複数組(3組)設けられている。これらの案内部材131は、断面略コ字形に形成された樹脂製のピース材であって、ケース体13の開口側端縁に形成された切り欠き部13Dに嵌められ、外装体12で係止されることで取り付けられている。そして、図19(A)に示すように、把手11をケース体13内に押し込んだ際に、把手11の操作部11Aが一対の案内部材131に挟まれることで、施錠時における把手11のガタが防止できるようになっている。また、図19(B)に示すように、把手11をケース体13から突出させた際に、把手11の案内部11Bが一対の案内部材131に挟まれることで、障子5Aの開閉操作時における把手11のガタや傷が防止できるようになっている。
【0055】
このような本実施形態によれば、前記(1)〜(6)の効果に加えて以下のような効果がある。
(11)すなわち、ケース体13から突出させた際に把手11がロック部19でロックされるので、把手11を操作して障子5Aを閉じる際の勢いのままで把手11をケース体13内に押し込んでしまうことがなく、把手11と戸先框8Aとの間に指等を挟んでしまうことが防止できる。さらに、障子5Aを閉じた後に、利用者が施錠する意図を持ってロック部19のロックを外すとともに、把手11をケース体13内に押し込むことで障子5Aが施錠できるので、意図せずに施錠してしまうことが防止できる。
【0056】
(12)また、ロック部材191がねじりコイルばね193に付勢されているので、スイッチ15により把手11を突出させれば、自動的に係合部191Aが連結部材25の非係合部25Cに係合するようにでき、利用者がロック操作しなくても確実かつ容易に把手11をロックすることができる。また、ロック部材191の操作部191Bを押し込むだけの操作で係合部191Aの係合を外して把手11のロックを解除することができ、この状態で把手11をケース体13内に押し込めば障子5Aを施錠することができる。
【0057】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、3枚連動式の引違い窓1における最も室内側の障子5Aの戸先框8Aに引手装置10および錠装置20が設けられていたが、引き戸が室内外一対の障子を備えた引違い窓である場合には、室内外の各障子の戸先框に引手装置10および錠装置20を設けてもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、錠装置20の鎌錠22を回動移動させる錠作動部材23にガイド溝23Aを形成した、つまり錠作動部材23を連動部材として機能させたが、これに限らず、引手装置10のスライド体14やスイッチ15、連結部材25等を連動部材として機能させてもよい。すなわち、連動部材としては、把手11の出没移動と連動して框の長手方向に進退移動する部材であればよく、これらの部材に、前記ガイド溝23Aと同様の溝等を形成し、前記トリガー24と同様の部材によって移動規制手段を構成してもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、スイッチ15を上方に操作することにより把手11を突出移動させるとともに、把手11をケース体13内に押し込むことによりスライド体14およびスイッチ15を下方に移動させ、これらの操作に連動して鎌錠22を回動移動させるように構成したが、スイッチとしては他の構成が採用できる。例えば、スライド体14や錠作動部材23に連結されたスイッチ本体と、このスイッチ本体の移動を規制しかつ框から出没自在に設けられたプッシュボタンと、スイッチ本体を把手11が框から突出する方向に付勢するばね部材とを有してスイッチが構成されてもよい。このような構成では、把手11を框に押し込んだ状態で、スイッチ本体にプッシュボタンが係合してスイッチ本体の移動が規制されるとともに、ばね部材に機械的エネルギが蓄積される。そして、プッシュボタンを押し込むことで、スイッチ本体の規制が解除され、ばね部材の機械的エネルギによってスイッチ本体が移動され、スイッチ本体に連動して把手11が框から飛び出すようにすることができる。
【0060】
また、前記第2実施形態では、連動部材のうちの連結部材25の非係合部25Cにロック部19のロック部材191を係合させることで、把手11を戸先框8A内に押し込み不能に規制したが、このような構成に限られない。すなわち、戸先框8Aから引き出された把手11自体やスライド体14にロック部19が係合することで、把手11を押し込み不能に規制してもよい。ただし、第2実施形態のように、把手11の上側における外装体12に支持されたロック部材191を有してロック部19を構成し、連結部材25のスライド体14側端部近傍に係合させることで、把手11を持ったままでロック部19の操作部191Bを操作することができ、操作性を良好にすることができる。
【0061】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る引き戸を示す横断面図である。
【図2】前記引き戸における縦枠および障子を断面して示す斜視図である。
【図3】前記引き戸に設けられた引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図4】前記引き戸に設けられた引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図5】前引手装置を示す横断面図であり、図3の矢視V−V線断面図である。
【図6】前記引手装置を断面して示す斜視図である。
【図7】前記引手装置を断面して示す斜視図である。
【図8】前記引手装置における把手の変形例を示す断面図である。
【図9】前記引手装置における把手の変形例を示す斜視図である。
【図10】図8、9とは異なる前記把手の変形例を示す断面図である。
【図11】図8〜10とは異なる前記把手の変形例を示す側面図である。
【図12】図8〜11とは異なる前記把手の変形例を示す分解斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図14】前記引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図15】前記引手装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図16】前記引手装置を断面して示す斜視図である。
【図17】前記引手装置の一部を示す分解斜視図である。
【図18】前記引手装置の一部を示す分解斜視図である。
【図19】(A),(B)は、前記引手装置の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1…引き戸である引違い窓、1A…窓枠、4…縦枠、4B…錠受部、5,5A,5B,5C…障子、8A…戸先框、11…把手、11F…凸部、11G…凹部、15…スイッチ、16…弾性部材である板ばね、16A…凹部、16B…凸部、19…ロック手段であるロック部、22…錠部材である鎌錠、23…錠作動部材、23A…ガイド溝、23B…長溝部、23C…係止溝部、24…トリガー、24A…ガイドピン、24B…付勢手段であるばね部材、191…ロック部材、191A…係合部、191B…規制解除部である操作部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、片引き戸や三枚引き戸等の窓やドア部分に設けられる引き戸に関する。
【背景技術】
【0002】
片引き戸や三枚引き戸等の各種引き戸において、障子を開閉するための引手としては、従来、障子の框部分に凹部を形成した掘込み型の引手や、固定ハンドル式の引手が用いられていた。
しかし、掘込み型の引手は、障子の室内面に形成すると框部分に形成された凹部が室内などに露出して意匠性が低下するという問題がある。また、掘込み型の引手を障子の室内面に直交する側面に形成すると、その開口の向きによって左手または右手のいずれかでは操作し難くなり、操作性が低下するという問題がある。
また、固定ハンドル式の引手も、障子の框からガラス面に突出して形成され、意匠性が低下するという問題がある。
【0003】
これに対し、揺動開閉構造のドアにおいて、ドアを開閉操作する把手をドア体に出没可能に構成した出没式ドア把手装置が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1では、ドア体の表面に出没される把手本体を設け、この把手本体の出没操作に伴い、ドア体の周囲側縁部から出没してドア開口部周囲枠の係合凹所に係合するロック機構をドア体内に設けている。そして、ロック機構は、把手本体の出没によって伸縮する伸縮手段と、この伸縮手段に連結されたスライドロッドと、スライドロッドの先端に連繋され、前記係合凹所に係合するドアラッチとを備えている。
【0004】
この出没式ドア把手装置は、把手本体をドア体から引き出すと、スライドロッドを介してドアラッチをドア体内に没入させ、ドアラッチと係合凹所との係合が解除され、ドア体を開くことができる。
一方、把手本体をドア体内に押し込むと、スライドロッドを介してドアラッチがドア体から突出し、係合凹所に係合してドア体がロックされる。但し、ドアラッチはバネによってスライドロッドに対してスライド可能に設けられているから、ドア体を開いた状態で把手本体をドア体内に押し込んでドアラッチがドア体から突出し、ドア体を閉めた際にドアラッチがドア開口部周囲枠に摺接しても、ドアラッチの案内傾斜面によってドアラッチがラッチ収納部内に押し込まれてドア体を閉めることができるように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−98853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の出没式ドア把手装置では、ドアラッチはスライドロッドに対してスライド可能になっているため、把手をドア本体内に押し込んでも、必ずしも、ドアラッチが係合凹所内に係合されていないおそれがあった。例えば、係合凹部が何らかの部材で塞がれていた場合、把手をドア本体内に押し込んでドアラッチを係合凹部内に係合させたと思っていても、ドアラッチがスライドロッドに対してスライドしており、係合凹部内に係合していない状態が生じるおそれがあった。
このため、把手がドア本体内に押し込まれているためドアがロックされていると誤認するおそれがあり、この点で、防犯性能があまり高くないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、引手を障子の框内に出没可能にし、かつ、この出没操作に連動して障子の錠を解除あるいは施錠することができるとともに、防犯性能も向上できる引き戸を提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の引き戸は、枠および枠内をスライド移動可能に設けられた障子とを備える引き戸であって、前記障子の框には、框に対して障子のスライド方向に出没可能に設けられた把手と、前記框内に配置され、かつ前記把手の出没動作に連動して框の長手方向に進退移動可能に設けられた連動部材と、この連動部材の進退移動に連動して移動され、かつ前記把手が框内に押し込まれた状態では前記枠に形成された錠受部に係合して施錠状態とされ、前記把手が框から引き出された状態では前記枠に形成された錠受部から外れて解錠状態とされる錠部材と、前記把手が設けられた框が枠から離れた状態では、把手を框から引き出された状態に維持し、框内に押し込み不能に規制し、かつ、前記把手が設けられた框が枠に当接した状態では、把手を框に対して出没可能にする移動規制手段とが設けられたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、把手の動作に連動して解錠または施錠が行われるため、操作性を向上できる。さらに、施錠時は把手が框内に没しているため、引き戸の外観をシンプルにでき、意匠性を向上できる。また、解錠時は把手が框から引き出されているので、障子の開閉操作がし易くなり、利き手の違いの影響も軽減でき、操作性を向上できる。
その上、移動規制手段を備えているので、障子を閉めるまでは把手を框内に押し込むことはできないため、把手を持って障子を開閉する際に安定して操作できる。
また、障子が閉められた際つまり框が枠に当接した状態で初めて把手を押し込んで施錠できるので、框が枠に当接する前に錠部材が框から突出することがなく、錠部材が枠に当接することもない。従って、特許文献1のように、錠部材を連動部材に対してスライド移動可能に設けて枠に当接した場合に錠部材を逃がすような構成を採用する必要が無い。このため、把手は、施錠時は必ず框内に押し込まれ、解錠時は必ず框から突出されることになる。このため、把手の位置によって解錠状態であるか施錠状態であるかを確認でき、防犯性能も向上できる。
【0010】
本発明においては、前記錠部材は、框に対して回動自在に軸支され、かつこの回動軸から偏心した位置で前記連動部材に軸支され、連動部材の進退駆動に連動して框内に収納された状態および框内から突出して枠の錠受部に係合した状態に回動される鎌錠で構成されていることが好ましい。
錠部材としては、横方向にスライドする障子であれば、障子の上側または下側に出没して上枠や下枠に係合するデッドボルト式の錠部材を用いてもよいが、この場合、把手と錠部材とが離れるため、連動部材の長さ寸法が長くなり、開閉操作にある程度の力が必要になると共に、上下のいずれか一方のみで係合させると、障子が傾きやすくバランスが悪くなる。
これに対し、本発明のように、鎌錠を用いれば、把手の近傍に配置できて連動部材もコンパクトに形成でき、開閉操作も比較的小さな力で行え、かつ鎌錠の配置箇所が1カ所であっても障子が傾くことがなく、バランスよく施錠できる。
【0011】
本発明においては、前記移動規制手段は、框の枠当接面から出没可能に設けられかつガイドピンを有するトリガーと、このトリガーを框から突出する方向に付勢する付勢手段と、前記連動部材に形成されて前記トリガーのガイドピンが配置されるガイド溝とを備えて構成され、前記ガイド溝は、前記トリガーが突出された状態にある際に前記ガイドピンが係合して前記連動部材が移動不能にされる係止溝部と、前記トリガーが枠に当接して框内に押し込まれた状態にある際に前記ガイドピンが配置されて前記連動部材が移動可能にされる長溝部とで構成されていることが好ましい。
【0012】
このような移動規制手段を備えていれば、トリガーが枠に当接し、付勢手段の付勢力に抗して框内に没入した場合のみ連動部材が移動可能とされるため、把手の出没操作および施錠・解錠操作が可能になる。従って、障子が開いており、その框が枠から離れている場合には、付勢手段によってトリガーが框から突出され、把手が框から突出された状態で連動部材は移動不能に維持される。すなわち、ガイドピン付のトリガーと、バネ等の付勢手段と、連動部材に形成されたガイド溝のみで移動規制手段を構成できるので、移動規制手段を簡単な構造で構成でき、コストも低減できる。
【0013】
本発明の引き戸には、前記連動部材を進退操作可能なスイッチが設けられていることが好ましい。
連動部材を進退操作可能なスイッチを備えていれば、把手が框内に没入されている際に前記スイッチで連動部材を移動することで把手を框から突出させることができる。このため、把手自体を掴んで框から引き出す必要が無く、把手の引き出し操作を簡単にでき、意匠性を向上できる。すなわち、把手自体を掴んで引き出す場合には、把手に框から突出する部分を設けたり、框の一部を凹ませて把手を掴むことができるように構成する必要がある。このため、引き出し操作を簡単にするためには、突出部や凹部を大きくして把手を掴みやすくしなければならないが、その分、框表面に凹凸が生じ、意匠が低下する。これに対し、本発明では、別のスイッチで連動部材を進退させることで把手を框から突出させることができるので、把手部分を掴んで引き出す必要が無く、前記突出部や凹部を形成する必要がないので外観意匠を向上できる。
【0014】
本発明において、前記把手を出没方向に交差した両側から挟む位置には、一対の弾性部材が設けられ、この弾性部材には凸部または凹部が形成され、前記把手には、框内に押し込まれた状態および框から最も突出した状態の際に前記弾性部材の凸部または凹部に係合する凹部または凸部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、把手は少なくとも框内に押し込まれた状態および最も突出した状態の2つの位置で前記一対の弾性部材に係合するため、把手をその2つの位置で安定して保持できるとともに、弾性部材の力が把手に加わるためにガタを抑えることができる。
【0015】
本発明において、前記框から引き出された状態の把手を框内に押し込み不能に規制するロック手段が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、障子を閉じる際に框が枠に当接して移動規制手段の規制が外れても、ロック手段で規制されているため把手が框内に押し込み不能となり、このロック手段の規制を外すことで把手が框内に押し込み可能となる。従って、把手を操作して障子を閉じる際の勢いのままで把手を框内に押し込んでしまうことがなく、把手と框との間に指等を挟んでしまうことが防止できる。さらに、障子を閉じた後に、利用者が施錠する意図を持ってロック手段の規制を外すとともに、把手を框内に押し込むことで障子を施錠することができるので、意図せずに把手を框内に押し込んで障子を施錠してしまうことがなく、頻繁に障子を開け閉めする場合に煩わしさを感じたり、子供等を屋外に閉めだしてしまったりなどという不都合が防止できる。
【0016】
この際、前記ロック手段は、前記連動部材の進退移動を規制するロック部材を有して構成され、このロック部材は、前記連動部材に係合可能な係合部と室内側から操作可能に設けられた規制解除部とを有して形成され、前記係合部が前記連動部材に係合する方向に付勢されて前記框に対して回動自在に支持されるとともに、前記規制解除部の操作により前記係合部の係合が解除可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、係合部が連動部材に係合する方向にロック部材が付勢されているので、把手が框から引き出された状態において、自動的に係合部が連動部材に係合するようにでき、利用者がロック操作しなくても確実かつ容易に把手の移動規制を実行することができる。また、規制解除部の操作により係合部の係合を外して把手の移動規制を解除することで、この状態で把手を框内に押し込めば障子を施錠することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る引き戸としての3枚連動式の引違い窓1について、図1〜図12に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の引違い窓1を示す横断面図である。図2は、引違い窓1における縦枠および障子を断面して示す斜視図である。なお、本発明のサッシ窓は、3枚の障子を有する引違い窓1に限らず、通常の引違い窓や片引き窓等であってもよい。
【0019】
図1において、引違い窓1は、テラスやバルコニーなどの出入り可能な窓に設けられ、窓枠1Aと、この窓枠1Aの内側に開閉自在に支持された障子5とを備えて構成されている。
窓枠1Aは、図示しない上枠および下枠と、左右の縦枠4とを四周枠組みして構成される。本実施形態では、各枠は、室外側および室内側の各アルミ押出形材を断熱材で連結した断熱枠で構成されているが、その材質や構造は実施形態のものに限定されない。
【0020】
障子5は、それぞれ図示しない上框および下框と、左右の縦框8とを四周框組みした内部に、ガラスパネル9を嵌め込んで形成されている。3枚設けられた各障子5は、開閉時に互いに連動して開閉する連動式の障子とされている。すなわち、最も室内側の障子5Aと、中間の障子5Bと、室外側の障子5Cとで構成されており、室外側の障子5Cは、窓枠1Aに対して移動不能のFIX障子とされ、障子5Bは、障子5Aの開閉操作に応じて連動して開閉されるように構成されている。
【0021】
室内側障子5Aの戸先框8Aには、図2にも示すように、障子5Aを開閉操作する際に用いられる引手装置10が設けられている。
引手装置10は、戸先框8Aにおける框内周面81つまり戸先框8Aの室内面に直交する2つの側面81,82のうち、框内周側の面81から出没可能な把手11を備えている。すなわち、把手11は、障子5のスライド方向に出没可能に設けられており、戸先框8Aの側面81から突出した状態の把手11を手で掴んで図1の右方向に引くことで障子5A,5Bを開放することができ、把手11や戸先框8Aを図1の左方向に押すことで障子5A,5Bを閉じることができるようになっている。そして、障子5A,5Bを閉じた状態で把手11を戸先框8Aに没入させることで、把手11が側面81から出っ張らない障子5Aの外観が得られるようになっている。
また、戸先框8Aには、把手11の出没に連動する錠装置20(後述)が設けられており、この錠装置20によって障子5が施錠または解錠されるようになっている。
【0022】
次に、引手装置10および錠装置20について、図3〜図7も参照して詳しく説明する。
図3および図4は、それぞれ引手装置10および錠装置20を示す縦断面図であり、障子5Aの戸先框8Aを断面した図である。図5は、引手装置10を示す横断面図であり、図3の矢視V−V線断面図である。図6および図7は、それぞれ引手装置10を断面して示す斜視図である。
引手装置10は、戸先框8Aの側面81に形成された装着孔81Aに装着され、この装着孔81Aに嵌る外装体12と、この外装体12に固定されて戸先框8A内部に挿入されるケース体13と、このケース体13の内側に設けられるスライド体14と、このスライド体14の上端部に連結されたスイッチ15とを有して構成されている。
【0023】
引手装置10の外装体12は、金属製または樹脂製の部材であって、戸先框8Aの室内側および室外側の側面から螺合されるビス等によって戸先框8Aに固定されている。そして、外装体12には、把手11を出没させるための開口部12Aが設けられている。ケース体13は、外装体12の開口部12Aに向かって開口した断面略コ字形の金属製または樹脂製部材であって、対向した一対のケース体側面部13Aと、これらのケース体側面部13Aを連結するケース体背面部13Bとを有して形成されている。そして、ケース体背面部13Bと戸先框8Aの側面82との間には、熱伝導率の低い樹脂等の材料から形成されたスペーサ18が介装されている。スライド体14は、ケース体13と同様の断面略コ字形に形成されてケース体13の内部に摺接可能に支持された金属製または樹脂製部材であって、戸先框8Aの長手方向(上下方向)に進退(スライド)移動可能になっている。そして、スライド体14は、ケース体側面部13Aに沿った一対のスライド体側面部14Aと、これらのスライド体側面部14Aを連結するスライド体背面部14Bとを有して形成されている。
【0024】
把手11は、手で掴むための金属製または樹脂製部材であって、一対のスライド体側面部14Aおよび外装体12の開口部12Aに案内され、この開口部12Aから出没可能に構成されている。そして、把手11は、上下に延びて設けられ手で掴んで操作するための操作部11Aと、この操作部11Aに対向してケース体13内部側に設けられる案内部11Bと、これらの操作部11Aおよび案内部11Bの上下端同士を連結する一対の水平部11Cとを有して形成されている。また、把手11の上下端における操作部11Aの反対側には、水平部11Cよりも上方または下方に突出した一対の当接部11Dが形成され、案内部11Bにおける上端寄りおよび下端寄りの2箇所には、把手11の出没方向に交差した戸先框8Aの見込み方向に突出する案内ピン11Eが設けられている。
【0025】
スライド体14のスライド体側面部14Aにおける把手11の案内ピン11Eに対応した位置には、案内ピン11Eが挿入される案内溝14Cが設けられている。この案内溝14Cは、スライド体14の進退方向および把手11の出没方向に対して傾斜して形成されており、この案内溝14Cに沿って案内ピン11Eが案内されることで、スライド体14の進退移動と把手11の出没移動とが連動されるようになっている。また、スライド体側面部14Aにおける上端寄りおよび下端寄りの2箇所には、スライド体14の進退(上下)方向に沿った長孔14Dが形成されており、この長孔14Dには、一対のケース体側面部13A間に渡って設けられたピン13Cが挿入され、このピン13Cによってスライド体14が上下方向に案内されるようになっている。
【0026】
スイッチ15は、棒状のスイッチ本体15Aと、このスイッチ本体15Aから外装体12側に突出したスイッチ操作部15Bと、スイッチ本体15Aの上端部に設けられた連結部15Cとを有して形成され、スイッチ本体15Aの下端部がスライド体14の上端部にピン接合されている。外装体12には、上下に長く形成されてスイッチ操作部15Bを挿通可能な挿通孔12Bが設けられており、室内側からスイッチ操作部15Bを上下に移動操作可能に構成されている。そして、スイッチ操作部15Bを操作することで、スライド体14が上下に進退移動されるとともに、把手11が外装体12から出没移動されるようになっている。
【0027】
以上のような引手装置10の把手11、ケース体13、スライド体14、およびスイッチ15では、図3、6に示すように、スイッチ操作部15Bを下方に操作して把手11がケース体13内部に没入された状態において、案内ピン11Eは、スライド体背面部14B側の案内溝14C端部(一端部)に位置し、スライド体14は、進退移動可能範囲の下端に位置するようになっている。そして、把手11が没入された状態では、把手11の当接部11Dがケース体背面部13Bに当接して、その位置よりも奥側に把手11が没入せず、操作部11A側面と外装体12表面とが略面一に揃えられるようになっている。
【0028】
一方、図4、7に示すように、スイッチ操作部15Bを上方に操作して把手11がケース体13から突出された状態において、案内ピン11Eは、外装体12側の案内溝14C端部(他端部)に位置し、スライド体14は、進退移動可能範囲の上端に位置するようになっている。そして、把手11が突出された状態では、把手11の当接部11Dが外装体12の開口部12A上下端縁に当接して、その位置よりも外側に把手11が突出せず、操作部11Aを引くことで障子5Aを開放操作できるようになっている。
【0029】
次に、錠装置20は、図3、4に示すように、戸先框8Aの縦枠4側の側面82に装着された錠ケース21と、この錠ケース21内に回動自在に軸支された錠部材としての鎌錠22と、この鎌錠22に連結されかつ錠ケース21内に進退可能に支持された錠作動部材23と、錠作動部材23に一端(基端)側が係合されかつ他端(先端)側が戸先框8Aの側面82から出没可能に設けられたトリガー24とを備えて構成されている。錠作動部材23は、錠ケース21内に戸先框8Aの長手方向(上下方向)に進退可能に支持されている。そして、錠作動部材23の下端部には、連結部材25がピン結合されており、この連結部材25の下端部に設けた連結ピン25Aにスイッチ15の連結部15Cが結合されている。このような連結部材25で連結することで、錠装置20の錠作動部材23と引手装置10のスライド体14およびスイッチ15とが連動して進退移動するようになっている。
以上のように、引手装置10のスライド体14およびスイッチ15と、錠装置20の連結部材25および錠作動部材23とによって、本発明の連動部材が構成されている。
【0030】
錠装置20の鎌錠22は、軸支ピン22Aによって錠ケース21に軸支されるとともに、軸支ピン22Aと偏心した位置の連結ピン22Bで錠作動部材23に軸支(ピン結合)され、錠作動部材23の進退移動に伴って回動するようになっている。そして、鎌錠22は、回動軸である軸支ピン22A回りに回動し、図3に示すように、縦枠4に設けられた錠受穴4Aの錠受部4Bに係合した施錠状態と、図4に示すように、錠受部4Bから外れて錠ケース21内に収納された解錠状態とが切り換えられる。すなわち、前述のように、把手11がケース体13内部に没入された状態において、錠作動部材23によって鎌錠22の連結ピン22B側が下方に引き下げられ、鎌錠22が回動して錠受部4Bに係合した施錠状態となる。一方、把手11がケース体13から突出された状態において、錠作動部材23によって鎌錠22の連結ピン22B側が上方に押し上げられ、鎌錠22が錠受部4Bから外れた解錠状態となる。
【0031】
錠作動部材23には、トリガー24の一端側に設けられたガイドピン24Aと係合するガイド溝23Aが設けられている。このガイド溝23Aは、錠作動部材23の進退移動方向に沿った長溝部23Bと、この長溝部23B下端からトリガー24の先端側に折れ曲がった係止溝部23Cとを有して略L字形に形成されている。一方、トリガー24には、当該トリガー24を戸先框8Aの側面82から突出する方向に付勢する付勢手段としてのばね部材24Bが設けられている。従って、錠作動部材23が上方に移動された解錠状態(図4)において、ばね部材24Bにより付勢されたトリガー24が戸先框8Aの側面82から突出し、ガイドピン24Aがガイド溝23Aの係止溝部23Cに位置することになる。この状態では、ガイドピン24Aが係止溝部23Cに係合することで、錠作動部材23が下方に移動不能になり、これにより引手装置10のスライド体14およびスイッチ15が進退移動不能になり、把手11がケース体13から突出された状態を維持することとなる。
【0032】
一方、障子5Aが閉じられてトリガー24の先端が縦枠4に当接し、ばね部材24Bの付勢力に抗してトリガー24が戸先框8A内に押し込まれた状態(図3)において、ガイドピン24Aがガイド溝23Aの長溝部23Bに位置することになる。この状態では、ガイドピン24Aが係止溝部23Cから外れることで、錠作動部材23が下方に移動可能になり、これにより引手装置10のスライド体14およびスイッチ15が進退移動可能になる。従って、把手11をケース体13内に押し込んでスライド体14およびスイッチ15を下方に移動させることで、連結部材25および錠作動部材23を介して鎌錠22を回動させて錠受部4Bに係合させる施錠状態とすることができるようになっている。このような施錠状態は、スイッチ15を上方に操作して鎌錠22を錠受部4Bから外すまで維持される。
以上のように、ガイドピン24Aおよびばね部材24Bを有したトリガー24と、ガイド溝23Aを有した錠作動部材23とによって、本発明の移動規制手段が構成されている。
【0033】
なお、以上のような引手装置10の各部において、図8〜図12に示す構成を採用することができる。
図8および図9は、それぞれ本実施形態の引手装置10における把手11の変形例を示す断面図および斜視図であり、把手11の位置決め手段を示す図である。図10は、把手11の変形例を示す断面図であり、図8、9と異なる把手11の位置決め手段を示す図である。図11は、把手11の変形例を示す側面図であり、把手11の音鳴り防止手段を示す図である。図12は、把手11の変形例を示す分解斜視図であり、把手11のガタ防止手段を示す図である。
【0034】
図8、9において、把手11の操作部11Aおよび案内部11Bの側面には、把手11の突没方向に交差した方向に突出する凸部11Fが形成されている。また、把手11の凸部11Fに対応したケース体13のケース体側面部13Aには、把手11を挟んで配置され、かつ把手11に向かって付勢された一対の弾性部材である板ばね16が設けられている。この板ばね16には、把手11の凸部11Fに係合する凹部16Aが形成されている。そして、把手11がケース体13内に押し込まれた状態において、操作部11Aの凸部11Fと板ばね16の凹部16Aとが係合することで、この位置で把手11が保持されるようになっている。また、把手11がケース体13から最も突出した状態において、案内
部11Bの凸部11Fと板ばね16の凹部16Aとが係合することで、この位置で把手11が保持されるようになっている。以上のように、把手11の凸部11Fと板ばね16の凹部16Aとによって把手11の位置決め手段が構成されている。
【0035】
また、把手11の位置決め手段としては、図10に示す構成が採用できる。すなわち、把手11の操作部11Aおよび案内部11Bの側面に把手11の突没方向に交差した方向に凹んだ凹部11Gを形成し、この凹部11Gに対応した位置の板ばね16に凸部16Bを形成し、これらの凹部11Gおよび凸部16Bが係合するような構成でもよい。
【0036】
図11において、把手11の当接部11Dの両面には、音鳴り防止手段である緩衝材17が設けられている。すなわち、把手11をケース体13内に押し込んだ状態でケース体背面部13Bに当接する当接部11Dの面と、および把手11をケース体13から最も突出させた状態で外装体12の開口部12A上下端縁に当接する当接部11Dの面とに、緩衝材17が設けられている。この緩衝材17は、例えば、スポンジや軟質ゴム等の衝撃を吸収可能な材料から形成されており、これにより、把手11を出没移動させた際に、把手11とケース体13や外装体12とがぶつかっても、音鳴りを防止することができる。
【0037】
図12において、把手11の案内部11Bの側面には、複数の切欠き溝11Hが形成され、把手11の水平部11Cおよび当接部11Dの交差部分には、一対の突起11Iが形成されている。また、外装体12の開口部12Aにおける切欠き溝11Hに対応した位置には、突起12Cが形成され、突起11Iに対応した位置には、一対の凹み12Dが形成されている。そして、把手11がケース体13から最も突出した状態において、案内部11Bの切欠き溝11Hと外装体12の突起12Cとが係合し、一対の突起11Iと凹み12Dとが係合することで、この位置における把手11のガタが防止されるようになっている。以上のように、把手11の切欠き溝11Hおよび突起11Iと外装体12の突起12Cおよび凹み12Dとによって把手11のガタ防止手段が構成されている。
【0038】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、把手11の動作に連動して錠装置20の鎌錠22によって解錠または施錠が行われるため、操作性を向上できる。さらに、施錠時は把手11が戸先框8A内に没しているため、引違い窓1の外観をシンプルにでき、意匠性を向上できる。また、解錠時は把手11が戸先框8Aから引き出されているので、障子5の開閉操作がし易くなり、利き手の違いの影響も軽減でき、操作性を向上できる。
【0039】
(2)さらに、トリガー24と錠作動部材23のガイド溝23Aとによって構成された移動規制手段を備えているので、障子5Aを閉めるまでは把手11を戸先框8A内に押し込むことはできないため、把手11を持って障子5Aを開閉する際に安定して操作できる。
【0040】
(3)また、障子5Aが閉じられた際つまりトリガー24が戸先框8Aに没入した状態で初めて把手11を押し込んで施錠できるので、トリガー24が戸先框8Aに没入する前に鎌錠22が戸先框8Aから突出することがなく、鎌錠22が縦枠4に当接することもない。従って、従来の出没式ドア把手装置のように、錠部材を連動部材に対してスライド移動可能に設けて枠に当接した場合に錠部材を逃がすような構成を採用する必要が無い。このため、把手11は、施錠時は必ず戸先框8A内に押し込まれ、解錠時は必ず戸先框8Aから突出されることになる。このため、把手11の位置によって解錠状態であるか施錠状態であるかを確認でき、防犯性能も向上できる。
【0041】
(4)さらに、トリガー24が縦枠4に当接し、ばね部材24Bの付勢力に抗して戸先框8A内に没入した場合のみ錠作動部材23が移動可能とされるため、把手11の出没操作および施錠・解錠操作が可能になる。従って、障子5Aが開いており、その戸先框8Aが縦枠4から離れている場合には、ばね部材24Bによってトリガー24が戸先框8Aから突出され、把手11が戸先框8Aから突出された状態で錠作動部材23は移動不能に維持される。すなわち、ガイドピン24A付のトリガー24と、ばね部材24Bと、錠作動部材23に形成されたガイド溝23Aのみで移動規制手段を構成できるので、移動規制手段を簡単な構造で構成でき、コストも低減できる。
【0042】
(5)また、錠装置20において、錠作動部材23に連動して回動する鎌錠22を用いたので、従来のドア把手装置と比較して、鎌錠22が把手11の近傍に配置できて錠作動部材23もコンパクトに形成でき、開閉操作も比較的小さな力で行え、かつ鎌錠22の配置箇所が1カ所であっても障子5Aが傾くことがなく、バランスよく施錠できる。
【0043】
(6)また、スライド体14および錠作動部材23を進退操作可能なスイッチ15が設けられているので、把手11が戸先框8A内に没入されている際にスイッチ15でスライド体14を移動することで把手11を框から突出させるとともに、錠作動部材23をスライドさせることで鎌錠22を錠受部4Bから外すことができる。このため、把手11自体を掴んで戸先框8Aから引き出す必要が無く、把手11の引き出し操作を簡単にでき、意匠性を向上できる。
【0044】
(7)また、ケース体13と戸先框8Aとの間にスペーサ18が介装されているので、室温よりも外気温が低くなって戸先框8Aが冷やされた場合でも、引手装置10の把手11や外装体12、ケース体13の温度低下を抑えて、これらの各部における結露の発生を防止することができる。
【0045】
(8)さらに、図8、9または図10に示すような把手11の位置決め手段を用いることで、把手11は少なくとも戸先框8A内に押し込まれた状態および最も突出した状態の2つの位置で板ばね16に係合するため、把手11をその2つの位置で安定して保持できるとともに、板ばね16の力が把手11に加わるためにガタを抑えることができる。
【0046】
(9)また、図11に示すような緩衝材17を把手11の当接部11Dに設けることで、把手11を出没操作した際のケース体13や外装体12との衝突音を防止することができる。
【0047】
(10)さらに、図12に示すような把手11のガタ防止手段を用いることで、把手11が戸先框8Aから最も突出した状態において、把手11のガタを防止することができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係る引手装置10Aについて、図13〜図19に基づいて説明する。
図13および図14は、それぞれ本実施形態の引手装置10Aおよび錠装置20を示す縦断面図である。図15は、引手装置10Aの一部を拡大して示す断面図である。図16は、引手装置10Aを断面して示す斜視図である。図17および図18は、引手装置10Aの一部を示す分解斜視図である。図19(A),(B)は、引手装置10Aの一部を示す断面図である。
【0049】
本実施形態の引手装置10Aは、前記第1実施形態の引手装置10と略同様の把手11、外装体12、ケース体13、スライド体14、およびスイッチ15を有し、把手11を戸先框8A内に押し込み不能に規制するロック手段であるロック部19が追加されている。また、本実施形態において、錠装置20の構成は、第1実施形態と略同様である。
なお、第1実施形態では、スライド体14と錠装置20の連結部材25とを連結してスイッチ15が設けられていたが、本実施形態の引手装置10Aにおいては、スイッチ15が戸先框8Aに取り付けられており、連結部材25がスライド体14に連結されている。そして、スイッチ15は、上下にスライド自在に支持されたスイッチ本体15Aを有し、このスイッチ本体15Aから延びる突出部15Dが連結部材25の凹部25Bに係合され、スイッチ操作部15Bの操作により連結部材25、錠作動部材23およびスライド体14が上下に進退駆動されるようになっている。すなわち、スイッチ本体15Aを上方にスライド操作することで、錠作動部材23を介して鎌錠22が解錠状態に移動されるとともに、スライド体14を介して把手11がケース体13から突出されるようになっている。
【0050】
引手装置10Aのロック部19は、図15、図16に示すように、外装体12に回動自在に支持されたロック部材191と、このロック部材191を軸支する回動軸192と、この回動軸192の回りに設けられてロック部材191を付勢するねじりコイルばね193とを有して構成されている。ロック部材191は、連結部材25に形成された非係合部25Cに係合可能な係合部191Aと、この係合部191Aの回動軸192を挟んで反対側に室内側から操作可能に設けられた規制解除部である操作部191Bとを有して形成されている。そして、ロック部材191は、ねじりコイルばね193の付勢力によって、係合部191Aが連結部材25に向かって回動する方向(図15に矢印で示す方向)、つまり操作部191Bが室内側に突出する方向に付勢されている。
【0051】
以上のロック部19では、スイッチ15により連結部材25が上方にスライド移動され、連結部材25の非係合部25Cがロック部材191の係合部191A位置まで移動された場合に、ねじりコイルばね193で付勢されたロック部材191が回動して係合部191Aが非係合部25Cに係合する。これにより、連結部材25のスライド移動が規制される、つまり連結部材25に連結された錠作動部材23およびスライド体14の移動が規制される。従って、鎌錠22が解錠状態に維持されるとともに、把手11が突出された状態に維持されるようになっている。
【0052】
一方、ロック部材191の操作部191Bをねじりコイルばね193の付勢力に抗してケース体13内方に押し込むと、ロック部材191が回動されて係合部191Aと非係合部25Cとの係合が外れ、連結部材25、錠作動部材23およびスライド体14のスライド移動の規制が解除される。従って、障子5Aを閉じてトリガー24が戸先框8A内に没入した状態において、操作部191Bを押して、把手11をケース体13内方に押し込めば、スライド体14、連結部材25、および錠作動部材23を介して鎌錠22が施錠方向に回動されて障子5Aが施錠されるようになっている。
なお、本実施形態のスライド体14に形成された案内溝14Cは、そのスライド方向に対する傾斜角度が途中で切り替えられており、鎌錠22が施錠方向に回動される把手11の押し込み後半において、スライド体14のスライド量が大きくなるように形成されている。すなわち、鎌錠22の回動後半における回動量を大きくして、鎌錠22と錠受部4B(図3)とが確実に係合されるようになっている。
【0053】
また、本実施形態の引手装置10Aにおいて、把手11には、図17に示すように、スライド体14の内面に沿って摺動する摺動部材111が設けられている。摺動部材111は、断面略コ字形に形成された樹脂製の部材であって、把手11における案内ピン11Eを挿通させる2箇所の挿通部11Jを挟んで取り付けられ、これらを貫通する案内ピン11Eにより把手11に固定されている。そして、摺動部材111は、その外形幅寸法が把手11の幅寸法よりも若干大きく形成されており、摺動部材111がスライド体14内面に摺動し把手11とスライド体14との接触を防止することで、把手11の出没操作時における音なりや摩耗が防止できるようになっている。
【0054】
さらに、ケース体13の開口側端縁には、図18、図19に示すように、把手11の幅寸法と略同一の間隔で対向した一対の案内部材131が複数組(3組)設けられている。これらの案内部材131は、断面略コ字形に形成された樹脂製のピース材であって、ケース体13の開口側端縁に形成された切り欠き部13Dに嵌められ、外装体12で係止されることで取り付けられている。そして、図19(A)に示すように、把手11をケース体13内に押し込んだ際に、把手11の操作部11Aが一対の案内部材131に挟まれることで、施錠時における把手11のガタが防止できるようになっている。また、図19(B)に示すように、把手11をケース体13から突出させた際に、把手11の案内部11Bが一対の案内部材131に挟まれることで、障子5Aの開閉操作時における把手11のガタや傷が防止できるようになっている。
【0055】
このような本実施形態によれば、前記(1)〜(6)の効果に加えて以下のような効果がある。
(11)すなわち、ケース体13から突出させた際に把手11がロック部19でロックされるので、把手11を操作して障子5Aを閉じる際の勢いのままで把手11をケース体13内に押し込んでしまうことがなく、把手11と戸先框8Aとの間に指等を挟んでしまうことが防止できる。さらに、障子5Aを閉じた後に、利用者が施錠する意図を持ってロック部19のロックを外すとともに、把手11をケース体13内に押し込むことで障子5Aが施錠できるので、意図せずに施錠してしまうことが防止できる。
【0056】
(12)また、ロック部材191がねじりコイルばね193に付勢されているので、スイッチ15により把手11を突出させれば、自動的に係合部191Aが連結部材25の非係合部25Cに係合するようにでき、利用者がロック操作しなくても確実かつ容易に把手11をロックすることができる。また、ロック部材191の操作部191Bを押し込むだけの操作で係合部191Aの係合を外して把手11のロックを解除することができ、この状態で把手11をケース体13内に押し込めば障子5Aを施錠することができる。
【0057】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、3枚連動式の引違い窓1における最も室内側の障子5Aの戸先框8Aに引手装置10および錠装置20が設けられていたが、引き戸が室内外一対の障子を備えた引違い窓である場合には、室内外の各障子の戸先框に引手装置10および錠装置20を設けてもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、錠装置20の鎌錠22を回動移動させる錠作動部材23にガイド溝23Aを形成した、つまり錠作動部材23を連動部材として機能させたが、これに限らず、引手装置10のスライド体14やスイッチ15、連結部材25等を連動部材として機能させてもよい。すなわち、連動部材としては、把手11の出没移動と連動して框の長手方向に進退移動する部材であればよく、これらの部材に、前記ガイド溝23Aと同様の溝等を形成し、前記トリガー24と同様の部材によって移動規制手段を構成してもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、スイッチ15を上方に操作することにより把手11を突出移動させるとともに、把手11をケース体13内に押し込むことによりスライド体14およびスイッチ15を下方に移動させ、これらの操作に連動して鎌錠22を回動移動させるように構成したが、スイッチとしては他の構成が採用できる。例えば、スライド体14や錠作動部材23に連結されたスイッチ本体と、このスイッチ本体の移動を規制しかつ框から出没自在に設けられたプッシュボタンと、スイッチ本体を把手11が框から突出する方向に付勢するばね部材とを有してスイッチが構成されてもよい。このような構成では、把手11を框に押し込んだ状態で、スイッチ本体にプッシュボタンが係合してスイッチ本体の移動が規制されるとともに、ばね部材に機械的エネルギが蓄積される。そして、プッシュボタンを押し込むことで、スイッチ本体の規制が解除され、ばね部材の機械的エネルギによってスイッチ本体が移動され、スイッチ本体に連動して把手11が框から飛び出すようにすることができる。
【0060】
また、前記第2実施形態では、連動部材のうちの連結部材25の非係合部25Cにロック部19のロック部材191を係合させることで、把手11を戸先框8A内に押し込み不能に規制したが、このような構成に限られない。すなわち、戸先框8Aから引き出された把手11自体やスライド体14にロック部19が係合することで、把手11を押し込み不能に規制してもよい。ただし、第2実施形態のように、把手11の上側における外装体12に支持されたロック部材191を有してロック部19を構成し、連結部材25のスライド体14側端部近傍に係合させることで、把手11を持ったままでロック部19の操作部191Bを操作することができ、操作性を良好にすることができる。
【0061】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る引き戸を示す横断面図である。
【図2】前記引き戸における縦枠および障子を断面して示す斜視図である。
【図3】前記引き戸に設けられた引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図4】前記引き戸に設けられた引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図5】前引手装置を示す横断面図であり、図3の矢視V−V線断面図である。
【図6】前記引手装置を断面して示す斜視図である。
【図7】前記引手装置を断面して示す斜視図である。
【図8】前記引手装置における把手の変形例を示す断面図である。
【図9】前記引手装置における把手の変形例を示す斜視図である。
【図10】図8、9とは異なる前記把手の変形例を示す断面図である。
【図11】図8〜10とは異なる前記把手の変形例を示す側面図である。
【図12】図8〜11とは異なる前記把手の変形例を示す分解斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図14】前記引手装置および錠装置を示す縦断面図である。
【図15】前記引手装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図16】前記引手装置を断面して示す斜視図である。
【図17】前記引手装置の一部を示す分解斜視図である。
【図18】前記引手装置の一部を示す分解斜視図である。
【図19】(A),(B)は、前記引手装置の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1…引き戸である引違い窓、1A…窓枠、4…縦枠、4B…錠受部、5,5A,5B,5C…障子、8A…戸先框、11…把手、11F…凸部、11G…凹部、15…スイッチ、16…弾性部材である板ばね、16A…凹部、16B…凸部、19…ロック手段であるロック部、22…錠部材である鎌錠、23…錠作動部材、23A…ガイド溝、23B…長溝部、23C…係止溝部、24…トリガー、24A…ガイドピン、24B…付勢手段であるばね部材、191…ロック部材、191A…係合部、191B…規制解除部である操作部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠および枠内をスライド移動可能に設けられた障子とを備える引き戸であって、
前記障子の框には、
框に対して障子のスライド方向に出没可能に設けられた把手と、
前記框内に配置され、かつ前記把手の出没動作に連動して框の長手方向に進退移動可能に設けられた連動部材と、
この連動部材の進退移動に連動して移動され、かつ前記把手が框内に押し込まれた状態では前記枠に形成された錠受部に係合して施錠状態とされ、前記把手が框から引き出された状態では前記枠に形成された錠受部から外れて解錠状態とされる錠部材と、
前記把手が設けられた框が枠から離れた状態では、把手を框から引き出された状態に維持し、框内に押し込み不能に規制し、かつ、前記把手が設けられた框が枠に当接した状態では、把手を框に対して出没可能にする移動規制手段とが設けられた引き戸。
【請求項2】
前記錠部材は、框に対して回動自在に軸支され、かつこの回動軸から偏心した位置で前記連動部材に軸支され、連動部材の進退駆動に連動して框内に収納された状態および框内から突出して枠の錠受部に係合した状態に回動される鎌錠で構成されている請求項1に記載の引き戸。
【請求項3】
前記移動規制手段は、框の枠当接面から出没可能に設けられかつガイドピンを有するトリガーと、このトリガーを框から突出する方向に付勢する付勢手段と、前記連動部材に形成されて前記トリガーのガイドピンが配置されるガイド溝とを備えて構成され、
前記ガイド溝は、前記トリガーが突出された状態にある際に前記ガイドピンが係合して前記連動部材が移動不能にされる係止溝部と、前記トリガーが枠に当接して框内に押し込まれた状態にある際に前記ガイドピンが配置されて前記連動部材が移動可能にされる長溝部とで構成されている請求項1または請求項2に記載の引き戸。
【請求項4】
前記連動部材を進退操作可能なスイッチが設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の引き戸。
【請求項5】
前記把手を出没方向に交差した両側から挟む位置には、一対の弾性部材が設けられ、この弾性部材には凸部または凹部が形成され、
前記把手には、框内に押し込まれた状態および框から最も突出した状態の際に前記弾性部材の凸部または凹部に係合する凹部または凸部が形成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の引き戸。
【請求項6】
前記框から引き出された状態の把手を框内に押し込み不能に規制するロック手段が設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の引き戸。
【請求項7】
前記ロック手段は、前記連動部材の進退移動を規制するロック部材を有して構成され、このロック部材は、前記連動部材に係合可能な係合部と室内側から操作可能に設けられた規制解除部とを有して形成され、前記係合部が前記連動部材に係合する方向に付勢されて前記框に対して回動自在に支持されるとともに、前記規制解除部の操作により前記係合部の係合が解除可能に構成されている請求項6に記載の引き戸。
【請求項1】
枠および枠内をスライド移動可能に設けられた障子とを備える引き戸であって、
前記障子の框には、
框に対して障子のスライド方向に出没可能に設けられた把手と、
前記框内に配置され、かつ前記把手の出没動作に連動して框の長手方向に進退移動可能に設けられた連動部材と、
この連動部材の進退移動に連動して移動され、かつ前記把手が框内に押し込まれた状態では前記枠に形成された錠受部に係合して施錠状態とされ、前記把手が框から引き出された状態では前記枠に形成された錠受部から外れて解錠状態とされる錠部材と、
前記把手が設けられた框が枠から離れた状態では、把手を框から引き出された状態に維持し、框内に押し込み不能に規制し、かつ、前記把手が設けられた框が枠に当接した状態では、把手を框に対して出没可能にする移動規制手段とが設けられた引き戸。
【請求項2】
前記錠部材は、框に対して回動自在に軸支され、かつこの回動軸から偏心した位置で前記連動部材に軸支され、連動部材の進退駆動に連動して框内に収納された状態および框内から突出して枠の錠受部に係合した状態に回動される鎌錠で構成されている請求項1に記載の引き戸。
【請求項3】
前記移動規制手段は、框の枠当接面から出没可能に設けられかつガイドピンを有するトリガーと、このトリガーを框から突出する方向に付勢する付勢手段と、前記連動部材に形成されて前記トリガーのガイドピンが配置されるガイド溝とを備えて構成され、
前記ガイド溝は、前記トリガーが突出された状態にある際に前記ガイドピンが係合して前記連動部材が移動不能にされる係止溝部と、前記トリガーが枠に当接して框内に押し込まれた状態にある際に前記ガイドピンが配置されて前記連動部材が移動可能にされる長溝部とで構成されている請求項1または請求項2に記載の引き戸。
【請求項4】
前記連動部材を進退操作可能なスイッチが設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の引き戸。
【請求項5】
前記把手を出没方向に交差した両側から挟む位置には、一対の弾性部材が設けられ、この弾性部材には凸部または凹部が形成され、
前記把手には、框内に押し込まれた状態および框から最も突出した状態の際に前記弾性部材の凸部または凹部に係合する凹部または凸部が形成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の引き戸。
【請求項6】
前記框から引き出された状態の把手を框内に押し込み不能に規制するロック手段が設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の引き戸。
【請求項7】
前記ロック手段は、前記連動部材の進退移動を規制するロック部材を有して構成され、このロック部材は、前記連動部材に係合可能な係合部と室内側から操作可能に設けられた規制解除部とを有して形成され、前記係合部が前記連動部材に係合する方向に付勢されて前記框に対して回動自在に支持されるとともに、前記規制解除部の操作により前記係合部の係合が解除可能に構成されている請求項6に記載の引き戸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−125179(P2006−125179A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63997(P2005−63997)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
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