説明

引張杭併用コンクリート基礎及びその構築方法

【課題】根切りの大きさを小さくしたコンクリート基礎であっても、併用した杭の形状・構造を工夫することにより、引き抜き抵抗の高い基礎を提供する。
【解決手段】掘削された根切り穴の中央に、連結棒13と、その下端に平面部及びその両側端から略垂直に立ち上がる縦壁部を持つ抵抗板14と、当該抵抗板14の平面部縦壁部中央に下端が取り付けられ、連結棒13の上端に結合環16が設けられている引張杭を構築した後、前記連結棒13の上部及び結合環16を埋め込むように前記根切り内に基礎コンクリート2を打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨構造物等、建築物の柱材を安定的に支える引張杭併用コンクリート基礎及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば倉庫等の骨組みを形鋼で構築した鉄骨構造物では、地中に埋め込んだ鉄筋コンクリート製の基礎の上に柱材を立てている。
通常、鉄筋コンクリート製基礎は、根切りによって形成した穴に割ぐり石を敷き、その割ぐり石を転圧した後、必要に応じて捨てコンクリートを打設した後、鉄筋を配筋し、しかる後、割ぐり石、或いは捨てコンクリートの上に基礎コンクリートを打設している。さらに、必要に応じて、その基礎コンクリート上に仮枠を組立て、立上りコンクリートを打設して構築されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、一般の建築設計では用いないが平鋼を捩じったねじり平鋼を、複数本地面に捩じ込み、各ねじり平鋼の上部を、上部にアンカーボルトを出した鉄骨入りのコンクリートブロックで固めて構造物の基礎を構築する工法も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−179152号公報
【特許文献2】特開2001−323479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築物用基礎としての鉄筋コンクリート製基礎は、建物が水平力を受けた場合の柱に作用する引き抜き力に対して、コンクリート及び埋め戻し土の重量によって抵抗するように設計するのが一般的であり、筋かい構造などの柱の引き抜き力が大きくなるような建物では、基礎の重量を大きくするため、基礎の容積自体が大きくならざるを得ない。
【0005】
したがって、根切りによって形成する穴を大きくすることが必要となる。掘削に要するコストが高くなるばかりでなく、残土の処理費用もかさむことになる。また、多量の鉄筋を配することに伴って、費用が嵩む結果となっている。
【0006】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、根切りの大きさを小さくしたコンクリート基礎であっても、併用した杭の形状・構造を工夫することにより、引き抜き抵抗の高い基礎及びそれを構築する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の引張杭併用コンクリート基礎は、その目的を達成するため、基礎コンクリートとその下部に立設された鋼製引張杭からなり、鋼製引張杭が、連結棒と、その下端に取り付けられた抵抗板を備えるとともに、連結棒上部に結合環が形成されており、該結合環及び連結棒の上部が前記基礎コンクリート中に埋め込まれていることを特徴とする。
また、連結棒上端の結合環は、基礎コンクリート中に配設した鉄筋を挿通させていることが好ましい。
【0008】
このような引張杭併用コンクリート基礎は、掘削された根切り穴の中央に、引張杭を設置する。
請求項2の溝形抵抗板付き杭は、アースオーガー等を用いて穴を掘り、該溝形抵抗板付き杭を設置し、掘削した土を数回にわけ転圧する。
請求項3のスクリュー杭は、専用治具をつけた回転工具で所定の位置まで回転させながら設置する。
請求項4の拡張型杭は、専用治具にて所定の位置まで打込み、抵抗板を広げ設置する。
なお、上記のような引張杭は1つの基礎コンクリートに対して複数本設けることが好ましい。
これらの引張杭を構築した後、前記連結棒の上部を埋め込むように前記根切り内に基礎コンクリートを打設することにより構築される。
連結棒上端に結合環が設けられている態様では、当該結合環に引張杭固定用鉄筋を挿通した後、連結棒の上部を埋め込むように前記根切り内に基礎コンクリートを打設することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の引張杭併用コンクリート基礎は、通常の基礎コンクリートの下部に、引き抜き耐力の極めて大きい鋼製引張杭が立設されている。
このため、大きなコンクリート基礎を構築するための大きな根切りを掘削する必要がなくなり、残土の処理も軽便に行うことができるため、結果的に耐力の大きい基礎を低コストで構築することができる。そして、設置する引張杭の本数により、引き抜き耐力を増減させることができる。
さらに、残土処理が少なくなり環境に優しい点が挙げられる。
さらにまた、1箇所あたりに設置する引張杭の本数により、引き抜き耐力を増減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者等は、鉄骨構造物における柱材を立てる基礎として、引き抜き耐力の極めて大きい基礎を、大きな根切りを掘削することなく構築する方法について検討し、本発明に到達した。
以下に、添付図面を参照しながら、その詳細を説明する。
本発明の引張杭併用コンクリート基礎1は、基礎コンクリート2とその下部に立設された鋼製引張杭3から構成されている。
【0011】
基礎コンクリートそのものには特に工夫を凝らす必要はない。通常の基礎と同様、コンクリート基礎そのものの耐力向上のため、通常と同様の主筋4、帯筋5が配されている。柱9を固定するためのアンカーボルト10も埋め込まれる。図1は立上り部を有する基礎を示し、かつ鋼製引張杭3に溝形抵抗板付き杭を取り付けた場合を示す。図2は、同じく立上り部を有する基礎を示し、かつスクリュー杭を用いた場合を示すものである。図3は立上がりのない埋め込み型の基礎を示し、かつ溝形抵抗板付き杭を取り付けた場合を示す。さらに図4は、同じく立上がりのない埋め込み型の基礎を示し、かつ拡張型杭を示すものである。そして、6は通常の割ぐり石であり、7は捨てコンクリートである。
なお、図中、12はベースプレート11を水平に取り付けるためのレベル調整用モルタルであり、8は本発明引張杭を固定するための鉄筋である。
【0012】
基礎コンクリートの下部に立設された鋼製引張杭3は、上端が基礎コンクリートに埋め込まれ、下方は土中に埋め込まれている。
引き抜き抵抗を大きくするために、鋼製引張杭3を構成する連結棒13の下端に、各種抵抗板が取り付けられる。図1や図3の場合、平面部及びその両側端から略垂直に立ち上がる縦壁部をもち、平面部の縦壁部中央が前記連結棒の下端を取り付けられる抵抗板14を具えている。
【0013】
また、図2の場合、鋼製引張杭3を構成する連結棒13の下端に、鋼板をスクリュー状に成型した抵抗板15を取り付けている。
さらに、図4の場合、連結棒13の下端に二枚の抵抗板17が取り付けられ、抵抗板17のそれぞれの他端には補助棒18の下端が取り付けられ、2本の補助棒18の上端は上方で一体化されて、前記連結棒13の中間部に接続されている。
なお、図示はしていないが、先端に抵抗板を備えた鋼製引張杭3を複数本、基礎コンクリート2の下部に立設することが好ましい。
【0014】
抵抗板14,15,17としては、引き抜き耐力を増加する意味では、面積の広いものほど好ましい。前記したように、杭の引き抜き耐力は杭の抵抗板の面積と埋め込み深さで決まる。したがって、抵抗板14,15,17が広く、かつ、深く埋設されているほど引き抜き耐力が向上することになる。抵抗板14,15,17に用いる材料としては鋼板で十分である。耐久性を良くするためには、めっき鋼板、例えばZn−Al−Mg系のめっきを施したものを用いることが好ましい。
【0015】
連結棒13の上端に、棒体先端を湾曲させて形作った結合環16が設けられている。この結合環16は、基礎コンクリート中に配設する際に杭固定用鉄筋8を挿通させて基礎コンクリートの引き抜き耐力向上に寄与するものである。
【0016】
次にこのような引張杭併用コンクリート基礎を構築する方法について、図1の溝形抵抗板14付き杭を例に、説明する。
本件引張杭併用コンクリート基礎を構築する位置を確認し、所定の大きさの根切り用の穴を掘削する(図5のa)。その穴の略中央に、溝形抵抗板付き杭の抵抗板14の大きさ及び本体棒の長さに応じた穴を、抱きスコップ等を用いて人力で、或いはアースオーガー等を用いて機械的に掘る(図5のb)。作業性を考慮すると、アースオーガーを用いることが好ましい。
【0017】
この穴の底面に、溝形抵抗板付き杭を設置し(図5のc)、掘削した土を埋め戻す(図5のd)。アンカー杭の引抜き力を高くするためには、埋め戻しの際に、埋め戻した土を締め固める必要がある。
締め固め力を高めるためには、埋め戻しを数回に分割し、その都度、角材やランマー等を用いて突き固めたり、専用の突き固め治具を用いて突き固めたりすることが好ましい。
【0018】
引張杭を構築した後、割ぐり石の敷設と捨てコンクリートの打設を行う(図5のe)。その後、捨てコンクリート上に配筋を施す。この際、通常の主筋、帯筋の他に杭固定用の鉄筋を別途配する。そして、前記連結棒の先端に設けた結合環にこの杭固定用の鉄筋を挿通させる(図5のf)。
配筋がなされた基礎部の底盤部に底盤用型枠を配し(図5のg)、底盤部コンクリートを打設する(図5のh)。
【0019】
底盤部コンクリートが固化した後、その上に立上り部用型枠を配し(図5のi)、立上り部コンクリートを打設する(図5のj)。そして、立上り部コンクリートが固化した後、型枠を撤去し(図5のk)、根切り穴を埋め戻して(図5のl)、引張杭併用コンクリート基礎の構築作業を終える。
なお、図5では、立上り部を有する基礎の構築手順を説明したが、立上り部のない基礎底盤部のみからなる基礎を構築する際には、図5のi,jの工程が省略され、kの工程の型枠撤去後に柱を立設し、その後に埋め戻されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明引張杭併用コンクリート基礎の構造を説明する概略図
【図2】本発明引張杭併用コンクリート基礎の他の構造を説明する概略図
【図3】本発明引張杭併用コンクリート基礎の他の構造を説明する概略図
【図4】本発明引張杭併用コンクリート基礎の他の構造を説明する概略図
【図5】本発明引張杭併用コンクリート基礎の構築手順を説明する図
【符号の説明】
【0021】
1:引張杭併用コンクリート基礎 2:基礎コンクリート 3:引張杭
4:主筋 5:帯筋 6:割ぐり石 7:捨てコンクリート 8:杭固定用鉄筋 9:柱 10:アンカーボルト 11:レベル調整用モルタル
12:ベースプレート 13:連結棒 14,15,17:抵抗板 16:結合環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートとその下部に立設された鋼製引張杭から構成されていることを特徴とする引張杭併用コンクリート基礎。
【請求項2】
基礎コンクリートとその下部に立設された鋼製引張杭から構成されており、
鋼製引張杭が、連結棒と、該連結棒の上端に取り付けられた連結環と、前記連結棒の下端に取り付けられた抵抗板からなり、該抵抗板が平面部及びその両側端から略垂直に立ち上がる縦壁部とをもち、前記抵抗板平面部の縦壁部中央に前記連結棒の下端が取り付けられているとともに、
前記連結棒の上部及び結合環が前記基礎コンクリート中に埋め込まれていることを特徴とする引張杭併用コンクリート基礎。
【請求項3】
基礎コンクリートとその下部に立設された鋼製引張杭から構成されており、
鋼製引張杭が、連結棒と、該連結棒の上端に取り付けられた連結環と、前記連結棒の下端に取り付けられた抵抗板からなり、該抵抗板が鋼板をスクリュー状に成型したものであるとともに、
前記連結棒の上部及び結合環が前記基礎コンクリート中に埋め込まれていることを特徴とする引張杭併用コンクリート基礎。
【請求項4】
基礎コンクリートとその下部に立設された鋼製引張杭から構成されており、
鋼製引張杭が、連結棒と、該連結棒の上端に取り付けられた連結環と、前記連結棒の下端に一端が取り付けられて側方に拡がる二枚の抵抗板と、該二枚の抵抗板のそれぞれの他端に下端が取り付けられ、上端が上方で一体化されて前記連結棒の中間部に接続される二本の補助棒とからなるとともに、
前記連結棒の上部及び結合環が前記基礎コンクリート中に埋め込まれていることを特徴とする引張杭併用コンクリート基礎。
【請求項5】
1つの基礎コンクリートに対して複数本の引張杭が立設されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の引張杭併用コンクリート基礎。
【請求項6】
連結棒上端の結合環に基礎コンクリート内の引張杭固定用鉄筋が挿通されている請求項2〜5のいずれか1項に記載の引張杭併用コンクリート基礎。
【請求項7】
掘削された根切り穴の中央に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼製引張杭を埋め込んだ後、鋼製引張杭の上部を埋め込むように前記根切り内に基礎コンクリートを打設することを特徴とする引張杭併用コンクリート基礎の構築方法。
【請求項8】
掘削された根切り穴の中央に、請求項2〜6のいずれか1項に記載の鋼製引張杭を埋め込み、鋼製引張杭を構成する連結棒上端の結合環に引張杭固定用鉄筋を挿通した後、鋼製引張杭の上部を埋め込むように前記根切り内に基礎コンクリートを打設することを特徴とする引張杭併用コンクリート基礎の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−308945(P2008−308945A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159895(P2007−159895)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(593023785)日新総合建材株式会社 (23)
【出願人】(397072695)平林物産株式会社 (9)
【Fターム(参考)】