説明

引戸の外れ止め具

【課題】構造が簡単な外れ止め具の提供を目的とする。
【解決手段】引戸の外れ止め具6は、下枠上を走行して上枠2の案内レール7により案内される引戸の上部に取り付けられ、引戸の上部から上方に突出可能に設けられた突出部材11と、突出部材11の側面に形成されたラック部14と噛合するピニオン部17を有する突出部材11の突出高さを調製する調整部材12とを備え、調整部材12の一端側に設けられた操作部19が操作されてピニオン部17が回転することにより突出部材11の突出高さが調整される引戸の外れ止め具6において、調整部材12の他端側を回動自在に抜け止め固定する固定部30を引戸又は固定部材に設けた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の外れ止め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の引戸用外れ止め具として、引戸の上部に取り付けられ、引戸の上部から上方に突出可能に設けられた突出部材と、突出部材の側面に形成されたラック部と噛合するピニオン部を有する突出部材の突出高さを調製する調整部材とを備え、調整部材の一端側に設けられた操作部が操作されてピニオン部が回転することにより突出部材の突出高さが調整されるといった技術が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭和63−201182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の外れ止め具は、突出部材を容易に上方に突出させることができるが、この外れ止め具を構成する調整部材は突出部材を所定位置で固定するため、ケース内においてバネによって付勢されるといった複雑な構造を有する。よって、製造の手間とコストがかかるという問題を生じている。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、構造が簡単な外れ止め具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る引戸の外れ止め具は、下枠上を走行して上枠の案内レールにより案内される引戸の上部に取り付けられ、引戸の上部から上方に突出可能に設けられた突出部材と、突出部材の側面に形成されたラック部と噛合するピニオン部を有する突出部材の突出高さを調製する調整部材とを備え、調整部材の一端側に設けられた操作部が操作されてピニオン部が回転することにより突出部材の突出高さが調整される引戸の外れ止め具において、調整部材の他端側を回動自在に抜け止め固定する固定部を引戸又は固定部材に設けた構成にしてある。
【0007】
また、前記構成において、固定部は、突出部材の当接面に開口し、ピニオン部の歯先円直径よりも小径の小径孔を備え、小径孔の底部に調整部材の他端側を回動自在に係止する係止部を設けるとともに、調整部材の他端側に固定部と係合する係合部を設け、係合部に前記小径孔に挿通可能な挿通部と、挿通部に連接して設けられる前記係止部に係止される被係止部を備え、且つ、係合部に他端側端部から所定深さの分割溝を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
そして、前記した各構成において、係合部に小径孔への係合部の挿通の際に弾性的に膨張収縮可能な空間部が形成されたものである。
【0009】
更に、前記した各構成の引戸の外れ止め具を備えた引戸である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る引戸の外れ止め具によれば、調整部材の他端側を回動自在に抜け止め固定する固定部を引戸または固定部材に設けたので、調整部材を固定部に固定することで、調整部材に設けられた操作部を回転操作することによりピニオン部を回転し、ピニオン部と噛合するラック部を備えた突出部材の突出高さを容易に調整し、所定位置に固定することができる。
【0011】
また、固定部は小径孔を備え、小径孔の底部に調整部材の他端側端部を回動自在に係止する係止部を設けるとともに、調整部材の他端側に固定部と係合する係合部を設け、係合部に前記小径孔に挿通可能な挿通部と、挿通部に連接して設けられる被係止部を備え、且つ、係合部に分割溝を設けた場合には調整部材の被係止部を固定部の係止部に係止するだけで容易に調整部材を抜け止め固定することができる。
【0012】
そして、係合部に、小径孔への係合部の挿通の際に弾性的に膨張収縮可能な空間部が形成された場合は、係合部の小径孔への挿通が容易となる。
【0013】
更に、引戸の外れ止め具を備えた引戸は、枠体へ引戸を建て込む際に、引戸を枠体から外れにくくする作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る引戸1が枠体5に建て込まれた状態の全体側面図、図2は前記引戸1の前側上端部の分解斜視図、図3は前記引戸1の上端部の縦断面図である。各図において、この実施形態に係る引戸1は、上枠2、下枠3及び前後一対の縦枠4,4を有してなる枠体5に建て込まれ、下枠3上を走行して上枠2の案内レール7により案内されている。引戸1は、上框9、下框10及び、前後一対の縦框8,8を框組してなる引戸本体35の前後一対の縦框8,8の上端部に外れ止め具6が取り付けられた構造を有する。尚、本実施形態では、引戸1の一実施形態として網戸を用いているが、これに限定されず、引戸は、ガラス戸、障子、襖又は板戸等であってもよい。
【0015】
図2に示すように、外れ止め具6は突出部材11と調整部材12とを備えている。尚、ここでは、引戸本体35の前側上端部に取り付けられた外れ止め具6に関し記載するが、後側上端部の外れ止め具6についても同様である。
【0016】
突出部材11は、略直方体状をなし、上部には上枠2の案内レール7に案内される案内溝13が設けられるとともに、中央部から下部にわたって一方の内側縁である側面にラック部14が形成された上下方向に延びる長孔15を備えている。突出部材11は縦框8上端部に設けられた取り付け部23,23に上下摺動可能に挿通されることにより縦框8に取り付けられる。
【0017】
案内溝13の下部には、上枠2の垂下レール7に当接する当接部材33を備えている。図4(a)に突出部材11の正面図を、同図(b)に突出部材11の正断面図を示す。当接部材33は、合成樹脂製または金属製などの板状部材により構成され、前端部が案内溝13の底部に接着または螺合等により固定されると共に、板状部材の中央部から後端部にかけて円弧状に湾曲された構造を有している。当接部材33の後端部近傍は垂下レール7の下部に当接しており、引戸1が枠体5内を前後に摺動するのに伴って、当接部材33は前端部を支持部とし後端部が弾性変形し上下に振動する。これにより、引戸1が枠体5内で浮き上がるのを非常に効果よく防止することができる。
【0018】
突出部材11の上端部には、取り付け部23内に挿通された突出部材11が自重により縦框8内に陥入することのないよう縦框8の上縁に係止可能な係止突部16,16が設けられている。
【0019】
調整部材12は、突出部材11に形成されたラック部14と噛合するピニオン部17を有し、このピニオン部17が回転することにより突出部材11の突出高さが調整される。図5(a)に調整部材12の側面図、同図(b)に調整部材12の背面図を示す。同図(a)に示すように、調整部材12は長手方向略中央部から一端側である前側にピニオン部17が設けられ、ピニオン部17に連接して一端側に操作部19が、他端側に係合部24がそれぞれ設けられている。ピニオン部17は突出部材11の長孔15に嵌挿してラック部14と噛合する。
【0020】
ピニオン部17の歯幅Lは、突出部材11の前後方向の長さA(図2参照)と殆ど同一又は歯幅Lの方が僅かに短く構成されている。係合部24が後述する引戸本体35に設けられた固定部30に固定されると、突出部材11は操作部19の背面と、引戸本体35の走行方向に直交し、縦枠4の左右方向に延びる面と対向し、突出部材11の背面が当接する縦框8の前突出部材11の背面が当接する前面Mとの間に挟み込み、突出部材11を所定位置で固定することができる。そして、ドライバー等の工具によって操作部19が回転操作された場合にのみ、ピニオン部17が回転し、ドライバー等の工具を十字溝18から外した後は、もはや突出部材11は上下に摺動することなく、固定される。
【0021】
操作部19には、ピニオン部17の回転軸心C上で交差する十字溝18が形成され、ドライバー等による回転操作が可能となっている。
【0022】
係合部24は、突出部材11の長孔15に挿通された後、引戸本体35に設けられた固定部30に挿入されて係合し、調整部材12を引戸本体35に抜け止め固定すると共に、突出部材11を所定位置に固定する。係合部24は、ピニオン部17に連接して設けられた後述する固定部30の小径孔25に挿通可能な挿通部20と、挿通部20に連接して他端側端部に設けられた、挿通部20の外径dsより大径の大径部21とを備えている。挿通部20と大径部21の境界部分に形成された両者の径の差に対応した段差は、後述する固定部30の係止部31に係止される被係止部27となっている。また、挿通部20の外径dsは、ピニオン部17の歯先円直径Dより小径に構成される。
【0023】
また、係合部24には、他端側端部から所定の長さに亘って、調整部材11の回転軸心Cを中心とする円柱状の膨張収縮可能な空間部28が形成され、また同じく他端側端部から所定の長さに亘って、調整部材12の他端側端部を回転軸心C方向に4分割する分割溝22が形成され、係合部24が回転軸心C方向に分岐した構造となっている。空間部28及び分割溝22の回転軸心C方向の長さは、少なくとも他端側端部から被係止部27を構成する段差までの長さより長くなっている。
【0024】
これより、係合部24が固定部30に固定される際、大径部21より径の小さい後述する小径孔25内に押入されると、分割溝22が狭くなり空間部28が収縮し大径部21が弾性変形することができる。また、大径部21の先端は僅かにテーパ状に縮径している。
【0025】
引戸本体35の縦框8には係合部24と係合して、調整部材12の他端側を回動自在に抜け止め固定する固定部30が形成されている。この固定部30は、小径孔25及び大径孔26を備えている。
【0026】
小径孔25は、縦框8の縦枠4と対向し突出部材11の背面が当接する前面Mに開口している。小径孔25の内径は、ピニオン部17の歯先円直径Dよりも小径であり、かつ、挿通部20を嵌合可能な大きさとされている。更に、小径孔25の内径は、係合部24を前面Mの開口部より挿入した際、係合部24が弾性変形して小径孔25内を挿通可能となる寸法である。すなわち、係合部24を前面Mの開口部より挿入した際、分割溝22が潰れ、空間部28が収縮し、大径部21が軸心方向に縮径した状態における大径部21の被係止部27近傍の外径と等しいかまたは大径部21の方が僅かに大きくなっている。
【0027】
小径孔25の前後方向の長さは挿通部20の前後方向の長さと略等しいか小径孔25の方が僅かに短くなっている。
【0028】
小径孔25の後方には、小径孔25の底部に連通して小径孔25よりも大径の大径孔26が設けられている。小径孔25と大径孔26との境界部分に形成された段差は、調製部材12の他端側に形成された被係止部27を回動自在に係止する係止部31を構成している。また、大径孔26の内径は大径部21を嵌合可能な大きさとされている。また、大径孔26の前後方向の長さは大径部21を収容可能な長さとなっている。
【0029】
引続き、外れ止め具6を備えた引戸1の動作につき以下に説明する。外れ止め具6を引戸本体35へ取り付ける際は、まず、縦框8の上方より突出部材11を取り付け部23内に挿入する。次に、調整部材12の係合部24を長孔15に挿通し、ピニオン部17をラック部14と噛合させ、更に係合部24を小径孔25に押入する。すると、大径部21が先端のテーパによって案内されて小径孔25内に進入する。
【0030】
図6(a)〜(c)に調整部材12を固定部30に押入する際の縦断面図を示す。同図(a)は押入前の状態を示す。大径部21を小径孔25に押入すると、分割溝22は小径孔25の内壁に押圧されて潰れ、これに伴って空間部28は収縮し、大径部21が軸心側に、つまり大径部21の径を縮小する方向に弾性変形する。(図6(b)参照)
【0031】
そして、大径部21が小径孔25を通過し、大径孔26に達すると、小径孔25の内壁が大径部21外周に及ぼしていた力が解除されるので、大径部21が弾性復帰して分割溝22がもとの状態に戻るとともに空間部28が膨張し、この状態で被係止部27が係止部31に係止される(図6(c)参照)。これにより、調整部材12が突出部材11を挟んだ状態で引戸本体35の縦框8に固定される。
【0032】
また、挿通部20の外径dsは小径孔25の内径と、大径部21の外径は大径孔26の内径と、それぞれ等しいか、僅かに大きく設定され、挿通部20の軸心方向の長さは小径孔25の前後方向の長さと等しいか僅かに短く設定されているので、挿通部20が小径孔25に、大径部21が大径孔26にそれぞれ嵌合して固定され、調整部材12はドライバー等の工具なしには回転困難となっている。更に、歯幅Lは突出部材11の前後方向の長さAと等しいか、わずかに小さく設定されているので、突出部材11が、操作部19の背面と縦框8の突出部材11の背面が当接する前面Mによって挟み込まれ固定される。
【0033】
このようにして、外れ止め具6を取り付けた後、引戸本体35を枠体5に建て込むと、ドライバーなどにより操作部19を回転操作し、突出部材11を縦框8の上方に突出させ、突出部材11の上端を上枠2に当接する位置とする。これにより、外れ止め具6を備えた引戸1の枠体5への建て込み作業が完了する。引戸1を枠体5から外す際には、上記とは逆の動作を行い、ドライバーなどにより操作部19を取り付けの際とは逆回転操作し、突出部材11を取り付け部23に案内させて下方に摺動させ、突出部材11を縦框8上端部に収容し、その後枠体5から引戸1を外す。
【0034】
以上より、本実施形態に係る引戸1の外れ止め具6は、調整部材12の他端側を回動自在に抜け止め固定する固定部30を引戸本体35に設けたので、調整部材12を固定部30に固定することで、外れ止め具6を非常に容易に固定することができる。また、調整部材11に設けられたピニオン部17を回転操作することで、ピニオン部17と噛合するラック部14を備えた突出部材11の突出高さを容易に調整し、固定することができる。
【0035】
また、固定部30に設けられた小径孔25の底部に調製部材11の他端側を回動自在に係止する係止部31を設け、係止部31に係止される被係止部27を調整部材11の他端側に設けた係合部24に備え、且つ、係合部24に他端側端部から所定長さの分割溝22を設けたので、調整部材12の被係止部27を固定部30の係止部31に係止するだけで容易に調整部材を抜け止め固定することができる。また、係合部24は分割溝22を有する分岐した構造という非常に簡単な構造なので製造が容易となりコストを低減することが可能となる。
【0036】
そして、係合部24に固定部30への押入の際に膨張収縮可能な空間部28が形成されているので、係合部24の固定部30への押入の際に弱い力によって係合部24を弾性変形させることが可能となり、調整部材11の固定部30への取り付け時の作業性が向上する。
【0037】
図7に調整部材の他の実施形態を示す。同図より、調整部材12aの係合部24aは、ピニオン部17aに連接する断面長方形状の挿通部20aと、挿通部20aに連接した他端側端部に回転軸心Caから放射状に屈曲した被係止部27aとを備えている。挿通部20aの縦断面における長方形の各辺の長さはいずれもピニオン部17aの歯先円直径Daの長さより短くされており、ピニオン部17aと挿通部20aの境界部分に形成された段差が突出部材11の背面が当接する縦框8の前面Mに当接する。
【0038】
また、被係止部27aの放射状に屈曲した部分の両端間の長さは固定部30の大径孔26に収容可能な長さである。
【0039】
係合部24aには、回転軸心Caに他端側端部から所定長さの分割溝22aが形成され、この分割溝22aが空間部28aを兼ねている。分割溝22aの長さは、少なくとも調整部材12aの他端側端部から被係止部27aまでの長さより長くなっている。係合部24aを小径孔25へ押入した際には、分割溝22aが潰れ、つまり空間部28aが収縮して、被係止部27aが軸心Ca側に縮径するよう弾性変形する。被係止部27aが小径孔25を通過した後は被係止部27aが弾性復帰する。
【0040】
図8は、固定部の他の実施形態を示す縦断面図である。固定部30bは、小径孔25bが所定の厚さの平板32に貫通孔として形成され、上記実施形態における小径孔25の後方に小径孔25に連接して設けられた大径孔26を形成せず、貫通孔の後端部を係止部31bとして用い、被係止部27bを係止している。
【0041】
更に、図9に本発明に係る引戸の他の実施形態の縦断面図を示す。同図より、この実施形態に係る引戸1cの調整部材12cの係合部24cは、挿通部20cに連接して挿通部20cと同じ外径を有する被係止部27cを備えている。ここで、挿通部20cと被係止部27cの境界部分には段差は設けられていない。被係止部27cには上記各実施形態と同様に他端側端部から所定長さの空間部28c及び分割溝22cが設けられている。
【0042】
また、固定部30cは小径孔25cが所定の位置より後方側が、内径が徐々に小さくなるテーパ状に形成されることで係止部31cを構成している。
【0043】
調整部材12cの係合部24cを固定部30cに係合させる際は、調整部材12cの他端側端部の先端が小径孔25c後方側のテーパ状部分に当接する位置まで、係合部24cを所定長さだけ小径孔25c内へ挿入した後、操作部19cを固定部30c側に押圧しつつ回転操作することで、調整部材12cの他端側を固定部30c内に強く押し込み、テーパ状に形成された係止部31cの内壁に被係止部27cが押圧され、分割溝22cが潰れ、空間部28cが収縮される。これに対し、被係止部27cは弾性復帰しようとする力を係止部31cの内壁面に加えることとなるので、調整部材12cの他端側は固定部30cに固定される。
【0044】
更に、これと同時にピニオン部17cは突出部材11cのラック部14cと噛合しているので、操作部19cの回転操作により突出部材11cを縦框8cの上部から突出させることができる。よって、このような構造においては、突出部材11cの摺動作業と、調整部材12cを固定部30cへ係合する作業とを一の動作により行うことが可能となり、作業性が向上する。
【0045】
図10に本発明に係る引戸の更に他の実施形態の縦断面図を示す。同図より、この実施形態に係る引戸1dの調整部材12dは一体形成されたピニオン部17d及び係合部24dと、操作部19dとが別部材により構成されている。操作部19dの背面に、例えば4個といった複数の半球状の突起である凸部37が形成され、ピニオン部17dの前面に前記凸部37に咬合する凹部36が形成されている。
【0046】
また、調整部材12dの大径部21dには、雄ネジが形成され、固定部30dの小径孔25dに前記大径部21dの雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。
【0047】
調整部材12dの係合部24dを固定部30dに係合させる際は、調整部材12dを突出部材11dの長孔15dに挿通した後、操作部19dの凸部37をピニオン部17dの凹部36に咬合し、ドライバー等の工具を用いて操作部を回転操作し、大径部21dの雄ネジを小径孔25dの雌ネジに螺合させる。すると、分割溝22dは小径孔25dの内壁に押圧されて潰れ、空間部28dが収縮し、大径部21dが軸心側に、つまり大径部21dの径を縮小する方向に弾性変形する。
【0048】
調整部材12dが所定量だけ螺進すると、ピニオン部17dがラック部14dに噛合し、ピニオン部17dの回転に伴い突出部材11dが上方に摺動する。大径部21dの雄ネジが小径孔25dの雌ネジを通過し、大径孔26dに達すると、小径孔25dの内壁が大径部21dの外周に及ぼしていた力が解除され、大径部21dが弾性復帰して分割溝22dがもとの状態に戻り空間部28dが膨張する。この状態で被係止部27dが係止部31dに係止される。
【0049】
この時点で、未だ突出部材11dの当接部材(図示せず)が垂下レールに当接していない場合には、当接部材が垂下レールに当接するまで更に操作部10dを回転し、突出部材11dを上方に摺動させる。このようにして、外れ止め具6dの取り付けが完了する。この実施形態にかかる外れ止め具6dはピニオン部17d及び係合部24dと、操作部19dとが別部材により構成されているので、引戸1dが玄関用の木製の引戸などといった大型の場合であっても、外れ止め具6を容易に引戸本体35dに取付けることができる。
【0050】
また、大径部21dに形成された雄ネジと、小径孔25dに形成された雌ネジとを螺合させることで、大径部21dを小径孔25dに挿通するので、上記実施形態のように体系部21を小径孔25に押入する場合に比較して、容易に、より少ない力によって調整部材12dを引戸本体35dへ固定することができる。
【0051】
尚、上記の各実施形態では、固定部30,30b,30cは引戸本体35の縦框8上部に設けられたが、本発明の引戸の外れ止め具及び引戸はそれに限定されるものでなく、例えば、固定部の設けられた固定部材を別部材として備え、この固定部材の固定部が調整部材の他端側を回動自在に抜け止め固定してもよい。その際、固定部材は接着、螺合又は嵌合などによって引戸本体に取り付けられる。また、固定部30,30b,30c及び係合部24,24a,24cは上記各実施形態に限定されず、螺合等他の方法により調整部材の他端側を抜け止め固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る引戸が枠体に建て込まれた状態の全体側面図である。
【図2】前記引戸の前側上端部の分解斜視図である。
【図3】前記引戸の前側上端部の縦断面図である。
【図4】前記引戸の突出部材の正面図及び正断面図である。
【図5】前記引戸の調整部材の側面図及び背面図である。
【図6】前記引戸の調整部材を固定部に押入する際の縦断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る引戸の調整部材の斜視図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係る引戸の固定部の縦断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態に係る引戸の縦断面図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態にかかる引戸の縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 引戸
2 上枠
3 下枠
6 外れ止め具
7 案内レール
11 突出部材
12,12a,12c 調整部材
14,14c ラック部
17,17a,17c ピニオン部
19,19c 操作部
20,20a,20c 挿通部
22,22a,22c 分割溝
24,24a,24c 係合部
25,25b,25c 小径孔
27,27a,27c 被係止部
28,28a,28c 空間部
30,30b,30c 固定部
31,31b,31c 係止部
35 引戸本体
D 歯先円直径
M 突出部材の当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠上を走行して上枠の案内レールにより案内される引戸本体の上部に取り付けられ、引戸本体の上部から上方に突出可能に設けられた突出部材と、突出部材の側面に形成されたラック部と噛合するピニオン部を有する、突出部材の突出高さを調製する調整部材とを備え、調整部材の一端側に設けられた操作部が操作されてピニオン部が回転することにより突出部材の突出高さが調整される引戸の外れ止め具において、調整部材の他端側を回動自在に抜け止め固定する固定部を引戸本体又は固定部材に設けたことを特徴とする引戸の外れ止め具。
【請求項2】
固定部は、突出部材の当接面に開口し、ピニオン部の歯先円直径よりも小径の小径孔を備え、小径孔の底部に調製部材の他端側を回動自在に係止する係止部を設けるとともに、調整部材の他端側に固定部と係合する係合部を設け、係合部に前記小径孔に挿通可能な挿通部と、挿通部に連接して設けられる前記係止部に係止される被係止部を備え、且つ、係合部に他端側端部から所定長さの分割溝を設けたことを特徴とする請求項1に記載の引戸の外れ止め具。
【請求項3】
係合部に、小径孔への係合部の挿通の際に弾性的に膨張収縮可能な空間部が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の引戸の外れ止め具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の引戸の外れ止め具を備えた引戸。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−297711(P2008−297711A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141939(P2007−141939)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(507176116)
【Fターム(参考)】