説明

引戸錠装置

【課題】施錠具を上下動して施解錠する引戸錠装置で、引戸の左右の勝手違いにも対応して取り付けられること。
【解決手段】錠本体1は、錠箱5に、作動具6を軸支し、伝達具7、変換具8及び連係ピン13を介して、ガイド具9に案内される錠片10を引戸Hの開閉方向と直交する方向に出没させるように設けて成る。上下動可能な伝達具7には、斜めに誘導孔17を設けてある変換具8が取り付けられる。変換具8は、伝達具7と一緒に上下動し、その表裏を反転にすると、誘導孔17の傾斜が逆になる。ガイド具9は、変換具8の前面位置に固定され、背板部15には、横長の案内孔19を設け、前面上下部に相対向する案内溝20・20を設け、ここに、錠片10の突起21・21が摺動自在に案内されて取り付けられる。錠片10には係合孔22を設けてあり、変換具8の誘導孔17に係合しガイド具9の案内孔19を貫通した連係ピン13が係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施錠具を上下動することによって、施解錠するタイプの引戸錠装置であって、建物の開口に外付けで取付施工するいわゆるアウトセット引戸に使用するのに適しているものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特開2000−8671号発明のように、施錠具を上下動することによって、鎌錠片を回動させ引戸の見込面から出没させて施解錠するタイプの引戸錠装置は提案されている。また、特開2005−163294号発明のように、施錠具であるサムターンを回動することによって、ロック棒を引戸開閉方向と直交する向きに出没させる引戸錠と、該引戸錠と対向する扉開口部の開口縁に錠受入れ凹部を形成し、ロック棒を錠受入れ凹部に対し係脱してなる引戸錠装置も提案されている。
【特許文献1】特開2000−8671号公報
【特許文献2】特開2005−163294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記前者の従来例においては、アウトセット引戸に適用しようとすると、鎌錠片の鎌受具を、該引戸の見込面に位置するように壁面に突出して取り付けなければならず、鎌受具が大きく突出して美観を損ねるし、歩行の邪魔にもなるという問題がある。また、この問題を解決した上記後者の従来例は、施錠具を回動操作して施解錠するものであるが、通常引き違いできるようにするために引戸の表面から突出しないように施錠具を設ける場合が多く、その場合には施錠具が大きくできないので、操作性が良好とはいえず、特に高齢者等には操作しにくいという問題がある。
【0004】
本発明は、これらの問題を解決し、さらには、引戸の左右の勝手違いにも対応して取り付けることができることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、施錠具を上下動することによって、ガイド具に案内される錠片が引戸開閉方向と直交する方向に出没する錠本体と、錠片が突出して係合する受具とから成り、施錠具を上下動すると、作動具を介して伝達具が上下動し、伝達具には、共に上下動する変換具を表裏反転しても取り付けられように構成し、変換具には、斜め方向に伸びる誘導孔を設け、ガイド具には、横方向に伸びる案内孔を設け、誘導孔と案内孔は交差するように設けられ、錠片に係合する連係ピンをその交差部に貫通するように設けて成り、変換具が上下動することによって、連係ピンが誘導孔と案内孔に案内されて横方向に移動して錠片が出没し施解錠されるように構成し、変換具を表裏逆にして誘導孔の傾斜の向きを逆にすると共に、錠片の突出方向を逆にすることによって、錠片を逆向きに突出させることができるように構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、施錠具を上下動することによって、錠片を引戸開閉方向と直交する方向に出没させて施解錠することができるので、施解錠の操作が簡単で高齢者等にも操作しやすいという効果と、錠片の受具は取付壁面から大きく突出させる必要がなく、美観の低下を抑えることができるという効果とを併せ持つ引戸錠装置を提供することができるものである。
【実施例】
【0007】
錠本体1は、錠箱5に、作動具6を軸支し、伝達具7、変換具8及び連係ピン13を介して、ガイド具9に案内される錠片10を引戸Hの開閉方向と直交する方向に出没させるように設けて成り、その表面は表面板11で被覆され、ねじ30・30で引戸Hに固定される。また、取付の際に引戸Hの切り欠いた部分を隠すために、錠片10が出没する孔を明けた化粧プレート12を取り付けてある。
【0008】
作動具6は、一端を錠箱5の後方から突出させて連係孔28を設け、他端を伝達具7に連結させてあり、伝達具7は、上下動可能で、前面上下部に2本のボス16・16を立設してあり、このボス16・16に、変換具8のボス孔18・18が係合するようになっている。
【0009】
変換具8は、正方形の板状で、ボス孔18・18の間に斜めに誘導孔17を設けてあり、誘導孔17の上下両端には垂直外方に伸びる直線部分がある。この変換具8は、ボス孔18・18がボス16・16に係合して伝達具7と一緒に上下動するもので、その表裏を反転しても、ボス孔18・18がボス16・16に係合し、誘導孔17はその傾斜が逆になるようになっている。
【0010】
ガイド具9は、変換具8の前面に位置するように、ビス29・29で錠箱5に固定され、その背板部15には、中央に横長の案内孔19を設けると共に、前面上下部に相対向する案内溝20・20を設けてある。ガイド具9が錠箱5に固定されると、その案内孔19は、変換具8の誘導孔17と交差する。
【0011】
錠片10は、一端部上下に突起21・21を設けてあり、ガイド具9の案内溝20・20に摺動自在に案内され、後面には、連係ピン13が係合する係合孔22を設けてある。連係ピン13は、変換具8の誘導孔17に係合すると共に、ガイド具9の案内孔19を貫通して、錠片10の係合孔22に係合するようになっている。
【0012】
引手3は、室内側に配設され、手掛け部23内の上部に施錠具14を上下動可能に設けてあり、引手4は、室外側に配設され、手掛け部23に対向するように、手掛け部24を設け、その上部に表示窓25を設けてある。その表示窓25の部分に、非常解錠片26を上下動可能に設けてある。そして、施錠具14と非常解錠片26は、連動バー27で連係されており、一緒に上下動するようになっている。この連動バー27は、作動具6の連係孔28に挿通され、施錠具14又は非常解錠片26を上下動すると、連動バー27により、作動具6は回動するものである。
【0013】
図1に示すような左勝手の引戸Hに使用する場合には、図4及び図5に示すように、変換具8を、誘導孔17が右上から左下方向になるように、ボス16・16にボス孔18・18を係合させて、伝達具7に取り付ける。そして、錠片10を見込面から見て左側に突出するように、突起21・21を案内溝20・20に係合させて、ガイド具9に取り付け、連係ピン13の一端を、案内孔19を貫通して係合孔22に嵌め、他端を誘導孔17に係合させ、ガイド具9をビス29・29で錠箱5に固定する。
【0014】
左勝手から右勝手の引戸用に変更する方法について説明する。図7の状態からビス29・29を外してガイド具9を外し、連係ピン13を抜き(図8の状態)、変換具8を外し表裏反転して、誘導孔17が左上から右下方向になるように、ボス16・16にボス孔18・18を係合させて、伝達具7に取り付ける。さらに、錠片10が取り付けられたガイド具9を上下逆にするか、錠片10だけを案内溝20・20から抜いて上下逆にして案内溝20・20に取り付けて、錠片10の突出方向を逆にして(図9の状態)、ガイド具9を取り付けると、錠片10は逆向き(見込面から見て右側)に突出し、右勝手の引戸用に変更することができる(図10の状態)。
【0015】
左勝手の引戸Hの場合の施錠動作について説明する。解錠時は、連係孔28を設けた作動具6の一端部が上位置にあり、伝達具7と変換具8は下がり、錠片10は引っ込んでいる状態であり(図5及び図11の状態)、この状態から施錠具14を下げると、連動バー27が連係孔28を押し下げて作動具6の他端を上方に回動し、伝達具7と変換具8は上方に移動する。すると、連係ピン13は、変換具8の誘導孔17とガイド具9の案内孔19に案内されて、左方に移動し、この連係ピン13に係合している錠片10が左方に移動し、引戸Hから突出する(図2、図6及び図12の状態)。そして、この錠片10が受具2に係合し、引戸Hは施錠状態となる。
【0016】
次に解錠動作について説明する。上記の状態(図2、図6及び図12の状態)から、施錠具14を上げると、連動バー27が連係孔28を押し上げて作動具6の他端を下方に回動し、伝達具7と変換具8は下方に移動する。すると、連係ピン13は、変換具8の誘導孔17とガイド具9の案内孔19に案内されて、見込面から見て右方に移動し、この連係ピン13に係合している錠片10が右方に移動し引っ込んで、解錠状態となる(図5及び図11の状態)。
【0017】
右勝手の引戸Hの場合の施解錠動作については、上述した左勝手の場合とは錠片10の左右の動きが逆になるだけである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】引戸に取り付けた解錠状態を示す全体斜視図。
【図2】引戸に取り付けた施錠状態を示す要部の斜視図。
【図3】表面板を外した状態の分解斜視図。
【図4】全体の分解斜視図。
【図5】表面板とガイド具を外した解錠状態の正面図(錠片を仮想線で描いてある)。
【図6】表面板とガイド具を外した施錠状態の正面図(錠片を仮想線で描いてある)。 図7〜図10は、左右勝手を変更する過程を示す、表面板を外した状態の斜視図である。
【図7】左勝手の引戸に使用する時の斜視図。
【図8】図7の状態から、ガイド具を外した状態の斜視図。
【図9】図8の状態から、錠片の突出方向を逆にすると共に、変換具の表裏を逆にして誘導孔の傾斜を逆にした状態の斜視図。
【図10】図9の状態から、ガイド具を取り付けた状態の斜視図。
【図11】図5のA−A線断面図。
【図12】図6のB−B線断面図。
【図13】引戸に取り付けた解錠状態を示す引手部分の断面図。
【図14】引戸に取り付けた施錠状態を示す引手部分の断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 錠本体
5 錠箱
8 変換具
9 ガイド具
10 錠片
13 連係ピン
14 施錠具
17 誘導孔
19 案内孔
H 引戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠具を上下動することによって、ガイド具に案内される錠片が引戸開閉方向と直交する方向に出没する錠本体と、錠片が突出して係合する受具とから成り、施錠具を上下動すると、作動具を介して伝達具が上下動し、伝達具には、共に上下動する変換具を表裏反転しても取り付けられように構成し、変換具には、斜め方向に伸びる誘導孔を設け、ガイド具には、横方向に伸びる案内孔を設け、誘導孔と案内孔は交差するように設けられ、錠片に係合する連係ピンをその交差部に貫通するように設けて成り、変換具が上下動することによって、連係ピンが誘導孔と案内孔に案内されて横方向に移動して錠片が出没し施解錠されるように構成し、変換具を表裏逆にして誘導孔の傾斜の向きを逆にすると共に、錠片の突出方向を逆にすることによって、錠片を逆向きに突出させることができる引戸錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−231807(P2008−231807A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73973(P2007−73973)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000148070)株式会社川口技研 (48)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(598088712)株式会社フォリス (2)