説明

引戸

【課題】矩形の一部分が欠けた形状の開口部を完全に閉鎖することができる引戸を提供すること。
【解決手段】引戸1の外ドア3の一部にスリット11を設け、スリット11から出し入れ可能な内ドア5を設ける。内ドア5と外ドア3とは、内ドア5に設けられたガイド溝21と、外ドア3のスリット11の内部に設けられたガイド25とを噛み合わせることにより、連結される。内ドア5、外ドア3は、それぞれ、上端面16、上端面8に固定された吊車15、吊車9を用いて天井17に固定されたレール7に吊り下げられる。開口部55を開閉する際には、外ドア3は、吊車9と、ガイド溝21およびガイド25とを用いて、レール7と内ドア5とに支持された状態で移動し、戸袋63から出し入れされる。内ドア5は、吊車15を用いてレール7に支持された状態で移動し、外ドア3のスリット11から出し入れされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部の開放時には、複数枚の引戸を重ねて格納しておき、開口部の閉鎖時には、手前側の引戸をスライドさせ、奥側に隣接する引戸を順次連動して移動させる連動式の引戸が使用されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、引戸の収納空間の幅を縮小するために、引戸を前後に区分し、前方の前扉を後方の後扉内に収納可能とするものがあった。この引戸では、前扉と後扉とを引戸収納壁の奥底を支点に取付けられた連動杆に連結することにより、両扉を連動して移動させていた。また、後扉の前後の吊車を引戸上枠に取付けられたレールに吊り下げ、後扉に備えた前扉支持用レールに前扉の後部吊車を吊り下げることにより、前扉の後扉への収納を容易にしていた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−108007号公報
【特許文献2】特開2000−192740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の引戸は、連動する複数枚の戸板を用いて矩形の開口部を閉鎖するためのものであった。そのため、矩形の一部分が欠けた形状の開口部を閉鎖するには不適であった。例えば、キッチンとリビングルームの間の開口部の一部にカウンターが位置する場合、カウンターの上方の開口部を閉鎖できないため、リビングルームに対してキッチンを完全に目隠しすることができなかった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、矩形の一部分が欠けた形状の開口部を完全に閉鎖することができる引戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明は、外ドアと、前記外ドアの一部に設けられたスリット内に格納される内ドアと、前記内ドアに設けられた第1のガイド溝と、前記外ドアの前記スリットの内部に設けられた第1のガイドと、を具備し、前記第1のガイド溝と前記第1のガイドとを噛み合わせつつ、前記内ドアを、前記外ドアに対して平行移動させて前記スリットから出し入れすることを特徴とする引戸である。
【0008】
本発明では、第1のガイド溝を内ドアの下端部付近に設け、第1のガイドを外ドアのスリットの下隅部付近に設け、外ドアを、第1のガイドおよび第1のガイド溝によって内ドアで支持するのが望ましい。第1のガイドは、外ドアのスリットの戸先側の下隅部付近に設けられる。
【0009】
内ドアは、例えば、上端面の戸先側と戸尻側とに固定された吊車を用いて、天井に固定されたレールに吊り下げられる。外ドアは、例えば、上端面の戸尻側に固定された吊車を用いて、同一のレールに吊り下げられる。この時、内ドアは、戸先側および戸尻側がレールに支持された状態で移動する。外ドアは、戸尻側がレールに、戸先側が内ドアに支持された状態で移動する。
【0010】
本発明では、必要に応じて、外ドアの下端面に第2のガイド溝を設ける。そして、外ドアを、第2のガイド溝と床に固定された第2のガイドとを噛み合わせつつ、移動させる。第2のガイドは、戸袋の戸先側の端部付近に設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、矩形の一部分が欠けた形状の開口部を完全に閉鎖することができる引戸を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、引戸1の斜視図を示す。図2は引戸1の立面図を示す。図2は、天井17、床19、壁59、壁59の凸部61、戸袋63に囲まれた開口部55(図8の(a)図)を閉鎖した状態の引戸1の立面図である。図3および図4は、引戸1の垂直方向の断面図である。図3は、図2に示す矢印B−Bによる断面図、図4は、図2に示す矢印C−Cによる断面図である。
【0013】
図1から図4に示すように、引戸1は、外ドア3、内ドア5、レール7等からなる。外ドア3は、上端面8と戸先側の端面10とが成す隅部に、所定の大きさのスリット11を有する。また、外ドア3は、上端面8の戸尻側に吊車9が固定される。外ドア3は、下端面14に1条のガイド溝13を有する。外ドア3は、スリット11の内側の戸先側の下隅部に、ガイド25が固定される。外ドア3は、側面4の戸先側に引手27を有する。
【0014】
内ドア5は、外ドア3のスリット11の内部に格納可能な大きさとする。内ドア5は、上端面16の戸尻側に吊車15aが、戸先側に吊車15bが固定される。内ドア5は、側面6の下端部付近に、ガイド溝21を有する。ガイド溝21は、外ドア3のスリット11に固定されたガイド25に対応するものである。内ドア5は、戸先側の端面12に引手29を有する。
【0015】
レール7は、天井17に埋設される。レール7には、吊車9、吊車15が吊り下げられる。床19には、ガイド23が固定される。図2に示すように、ガイド23は、戸袋63の戸先側の端部に配置される。外ドア3に設けられたガイド溝13は、このガイド23に対応するものである。
【0016】
図5は、図4の範囲Dに示す部分の拡大図である。図5に示すように、天井17に埋設されるレール7は、断面がコの字型の本体41の側部39を内側に折り曲げ、溝部37を形成したものである。レール7は、2本の溝部37が下面となるように配置される。
【0017】
図5に示すように、内ドア5に固定される吊車15aは、吊部材31、回転軸33、車輪35等からなる。吊部材31は、下端部が内ドア5の上端面16に固定された鉛直材である。回転軸33は、吊部材31の上端部に設けられた水平材である。車輪35は、回転軸33の両端に設けられる。
【0018】
内ドア5に固定される吊車15bは、図5に示す吊車15aと同様の構成である。内ドア5は、吊車15a、吊車15bの車輪35をレール7の溝部37内に配置することにより、レール7に吊り下げられる。内ドア5は、戸先側および戸尻側が、吊車15aおよび吊車15bを用いてレール7に支持される。
【0019】
外ドア3に固定される吊車9も、図5に示す吊車15aと同様の構成である。但し、吊車9は、吊部材31の下端部が外ドア3の上端面8(図1)に固定される。外ドア3は、吊車9の車輪35をレール7の溝部37内に配置することにより、レール7に吊り下げられる。外ドア3は、戸尻側が、吊車9を用いてレール7に支持される。
【0020】
図6は、図4の範囲Eに示す部分の拡大図である。図6に示すように、内ドア5に埋設されるガイド溝21は、断面がロの字型の本体47に、1条の開口部49を設けたものである。ガイド溝21は、開口部49が外ドア3と対向するように配置される。外ドア3に設けられるガイド25は、外ドア3に固定されるピン43と、ピン43に一体化された頭部45とからなる。
【0021】
ガイド25は、頭部45がガイド溝21の本体47の内部に配置され、ピン43がガイド溝21の開口部49に配置される。このように、ガイド25とガイド溝21とを噛み合わせることにより、外ドア3の戸先側は、内ドア5に支持される。
【0022】
図7は、図4の範囲Fに示す部分の拡大図である。図7に示すように、外ドア3に埋設されるガイド溝13は、断面がコの字型の部材である。ガイド溝13は、開口面が下面にくるように配置される。床19に設けられるガイド23は、床19に固定されるピン51と、ピン51に一体化された頭部53とからなる。ガイド23は、ガイド溝13の内部に配置される。
【0023】
図8は、引戸1周辺の立面図を示す。図8では、図1から図7に示すような構造の引戸1を用いて、矩形の一部分が欠けた形状の開口部55を開閉する方法について説明する。
【0024】
図8の(a)図は、開口部55を開放した状態の立面図を示す。図8の(a)図に示すように、開口部55は、天井17と床19と壁59と戸袋63とに挟まれた部分である。壁59は、一部に凸部61を有する。開口部55は、例えば、キッチンとリビングルームの間の開口部であり、凸部61はカウンターである。
【0025】
図8の(a)図に示すように、開口部55を開放した状態のときは、引戸1は戸袋63に格納される。引戸1の内ドア5は、外ドア3のスリット11内に格納される。
【0026】
図8の(b)図は、開口部55のうち壁59の凸部61の上方の開口部55aを除く部分を閉鎖した状態の立面図を示す。図8の(b)図は、引戸1の外ドア3のみを閉鎖した状態である。図8の(a)図に示す状態から図8の(b)図に示す状態とするには、引戸1の外ドア3の引手27(図1)を用いて、外ドア3を図8の(a)図の矢印Gに示す方向に引き出す。
【0027】
図8の(b)図に示す状態から図8の(a)図に示す状態とするには、引戸1の外ドア3を図8の(b)図の矢印Iに示す方向に移動させ、戸袋63に格納する。
【0028】
このとき、内ドア5は、戸先側および戸尻側が、吊車15aおよび吊車15bを用いてレール7に支持された状態で移動する。外ドア3は、戸尻側が吊車9を用いてレール7に支持され、戸先側がガイド25とガイド溝21とを噛み合わせることにより内ドア5に支持され、下端部14のガイド溝13が床19に固定されたガイド23と噛み合わされた状態で移動する。
【0029】
図8の(c)図は、壁59の凸部61の上方の開口部55aを含む、開口部55の全面を閉鎖した状態の立面図を示す。図8の(c)図は、引戸1の外ドア3と内ドア5の双方を閉鎖した状態である。図8の(b)図に示す状態から図8の(c)図に示す状態とするには、引戸1の内ドア5の引手29(図1)を用いて、内ドア5を外ドア3のスリット11から図8の(b)図の矢印Hに示す方向に引き出す。
【0030】
図8の(c)図に示す状態から図8の(b)図に示す状態とするには、引戸1の内ドア5を図8の(c)図の矢印Jに示す方向に移動させ、外ドア3のスリット11の内部に格納する。
【0031】
このとき、内ドア5は、戸先側および戸尻側が吊車15aおよび吊車15bを用いてレール7に支持され、下端部のガイド溝21が外ドア3に固定されたガイド23と噛み合わされた状態で、外ドア3に対して平行に移動し、スリット11から出し入れされる。
【0032】
なお、内ドア5をスリット11から出し入れする間や、引き出した後も、外ドア3の戸先側は、ガイド25とガイド溝21とを噛み合わせることにより内ドア5に支持される。
【0033】
図8の(a)図に示す状態から図8の(c)図に示す状態とするには、引戸1の内ドア5の引手29(図1)を用いて、内ドア5を図8の(a)図の矢印Gに示す方向に引き出す。内ドア5が外ドア3のスリット11から引き出され、ガイド25がガイド溝21の戸尻側の端部に到達すると、内ドア5に連なって外ドア3が戸袋63から引き出される。
【0034】
図8の(c)図に示す状態から図8の(a)図に示す状態とするには、引戸1の内ドア5を図8の(c)図の矢印Jに示す方向に移動させる。内ドア5が外ドア3のスリット11の内部に押し入れられ、ガイド25がガイド溝21の戸先側の端部に到達すると、内ドア5に連なって外ドア3が戸袋63に押し入れられる。
【0035】
このとき、内ドア5は、戸先側および戸尻側が吊車15aおよび吊車15bを用いてレール7に支持され、下端部のガイド溝21が外ドア3に固定されたガイド23と噛み合わされた状態で、外ドア3に対して平行に移動し、スリット11から出し入れされる。
外ドア3は、戸尻側が吊車9を用いてレール7に支持され、戸先側がガイド25とガイド溝21とを噛み合わせることにより内ドア5に支持され、下端部のガイド溝13が床19に固定されたガイド23と噛み合わされた状態で移動する。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、引戸1の外ドア3の一部にスリット11を設け、外ドア3に対して平行に移動し、スリット11に出し入れ可能な内ドア5を設ける。引戸1を用いれば、外ドア3から内ドア5を引き出すことより、矩形の一部が欠けた形状の開口部55を完全に閉鎖できる。
【0037】
なお、本実施の形態では、内ドア5の一方の側面にガイド溝21を設けたが、ガイド溝21の設置位置や設置数はこれに限らない。例えば、内ドア5の下端面にガイド溝21を設け、それに対応するガイド25を外ドア3のスリット11の下端面に設ける場合や、内ドア5の両側面にガイド溝21を設け、それらに対応するガイド25を外ドア3のスリット11の両側面に設ける場合もある。
【0038】
また、外ドア3の下端面14に設けるガイド溝13の数量は、2条以上でもよい。内ドア5の上端面16に設ける吊車15の設置数や設置位置は、図1に示すものに限らない。吊車15の設置数や設置位置は、レール7で内ドア5を支持できるように設定される。
【0039】
さらに、レール7と吊車9および吊車15、ガイド溝13とガイド23、ガイド溝21とガイド25の仕様は、図1から図7に示すものでなくてもよい。レール7と吊車9および吊車15の仕様は、外ドア3や内ドア5を吊り下げつつ、滑らかに移動させることができるものであればよい。
【0040】
ガイド溝13とガイド23は、外ドア3の移動時に、外ドア3の下端部のふらつきを防止できるものであればよい。ガイド溝21とガイド25は、外ドア3を内ドア5で支持しつつ、内ドア5を外ドア3のスリット11から滑らかに出し入れできるものであればよい。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる引戸の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】引戸1の斜視図
【図2】引戸1の立面図
【図3】引戸1の垂直方向の断面図
【図4】引戸1の垂直方向の断面図
【図5】図4の範囲Dに示す部分の拡大図
【図6】図4の範囲Eに示す部分の拡大図
【図7】図4の範囲Fに示す部分の拡大図
【図8】引戸1周辺の立面図
【符号の説明】
【0043】
1………引戸
3………外ドア
5………内ドア
7………レール
9、15、15a、15b………吊車
11………スリット
13、21………ガイド溝
23、25………ガイド
55、55a………開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ドアと、
前記外ドアの一部に設けられたスリット内に格納される内ドアと、
前記内ドアに設けられた第1のガイド溝と、
前記外ドアの前記スリットの内部に設けられた第1のガイドと、
を具備し、
前記第1のガイド溝と前記第1のガイドとを噛み合わせつつ、前記内ドアを、前記外ドアに対して平行移動させて前記スリットから出し入れすることを特徴とする引戸。
【請求項2】
前記第1のガイド溝が、前記内ドアの下端部付近に設けられ、
前記第1のガイドが、前記スリットの下隅部付近に設けられ、
前記外ドアが、前記第1のガイドおよび前記第1のガイド溝によって前記内ドアに支持されることを特徴とする請求項1記載の引戸。
【請求項3】
前記内ドアおよび前記外ドアを、上端面に固定された吊車を用いて天井に固定されたレールに吊り下げ、前記内ドアを前記レールに支持された状態で移動させ、前記外ドアを前記レールおよび前記内ドアに支持された状態で移動させることを特徴とする請求項2記載の引戸。
【請求項4】
前記外ドアの下端面に第2のガイド溝が設けられ、前記第2のガイド溝と床に固定された第2のガイドとを噛み合わせつつ、前記外ドアを移動させることを特徴とする請求項1記載の引戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−38399(P2008−38399A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211805(P2006−211805)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】