説明

張力装置

【課題】 機械部品に螺合するボルトを、機械部品に螺合していない状態で、液体圧力を作用して伸ばすことを可能にし、適用場所を広範囲にし得る張力装置を提供する。
【解決手段】 一方の機械部品3に螺合するねじ部5を一端部に有するボルト4を備える。一端部を他方の機械部品2に接離自在に設けて内部に液体を供給排出する室21を液密に区画形成するシリンダ本体14を、ボルト4のロッド部6と固定ナット19で固定する。室21には供給した液体圧力をボルト4の伸長方向へ作用する受圧面21Aを形成する。ボルト4は受圧面21Aに作用する液体圧力に基づく作用力でロッド部6を軸方向へ伸長可能に設ける。シリンダ本体14はボルト4のロッド部6の伸長に応じて蓋部材20を他方の機械部品2から離間する方向へ移動可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト等に液体圧力で張力を発生させて保持する張力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の張力装置は、機械部品にねじ端部を螺合したボルトを備え、このボルトのボルトヘッドには、筒状のピストン本体の上方部を嵌合して室を区画形成し、ピストン本体にはボルトヘッドの端部と接離自在にしてロッキングリングを螺合し、室に液体を供給して加圧すると、加圧に基づく作用力でピストン本体が機械部品に押し付けられ、この反力でボルトに引張応力を発生させてボルトが軸方向に伸び、ボルトヘッドの端部からロッキングリングが離間する。そして、ロッキングリングを回動操作してボルトヘッドの端部に当接し、この状態で、室の液体を排出して圧力を低下し、ボルトに張力を生じた状態で機械部品に螺合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−264909号公報(段落0048、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の張力装置では、ボルトを機械部品に螺合しなければ、室を加圧してボルトに引張応力を発生させることができないため、ボルトを機械部品から離脱した遠隔地で室を加圧して引張応力を発生させることができず、適用場所が限定される問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、ボルトを機械部品に螺合しない状態で、液体圧力の作用で伸長可能にし、適用場所を広範囲にし得る張力装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
少なくとも2個の機械部品を有し、一方の機械部品に螺合するねじ部を一端部に有するボルトを備え、一端部を他方の機械部品に接離自在に設けて内部に液体を供給排出する室を液密に区画形成するシリンダ本体を設け、シリンダ本体をボルトと固定して設け、室には供給した液体圧力をボルトの伸長方向へ作用する受圧面を形成し、ボルトは受圧面に作用する液体圧力に基づく作用力で軸方向へ伸長可能に設け、シリンダ本体はボルトの伸長に応じて一端部を他方の機械部品から離間する方向へ移動可能に設けたことを特徴とする張力装置がそれである。
【0007】
この場合、前記シリンダ本体には前記ボルトを収装する収装孔を穿設し、前記ボルトの前記ねじ部を前記シリンダ本体の前記一端部から突出して設け、収装孔は小径孔部と大径孔部とを連設して成し、小径孔部と大径孔部との連設段部に前記受圧面を形成しても良い。また、前記ボルトは前記収装孔の前記小径孔部に収装するロッド部を有し、ロッド部を前記シリンダ本体と固定し、前記受圧面へ作用する液体圧力に基づく作用力でロッド部を伸長可能に設けても良い。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、シリンダ本体内部の室に液体を供給して受圧面に液体圧力を作用し、ボルトを受圧面へ作用する液体圧力に基づく作用力で軸方向へ伸長し、シリンダ本体はボルトの伸長に応じて軸方向へ移動して一端部を他方の機械部品から離間する。そして、シリンダ本体の一端部を他方の機械部品に当接するまでボルトを回動操作し、室の液体を排出すると、伸長したボルトへ縮み方向に引張応力が作用してシリンダ本体の一端部を他方の機械部品に強く押し付けて一方と他方の機械部品を強固に結合する。このため、ボルトの伸長に応じて軸方向へ移動するシリンダ本体の内部に、受圧面へ圧力を作用する液体を供給排出する室を液密に区画形成するから、ボルトを機械部品に螺合しない状態で、液体圧力の作用で伸長可能にでき、適用場所を広範囲にすることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加え、シリンダ本体にはボルトを収装する収装孔を穿設し、ボルトのねじ部をシリンダ本体の一端部から突出し、収装孔は小径孔部と大径孔部とを連設して成し、小径孔部と大径孔部との連設段部に受圧面を形成した。このため、径方向寸法が制約される場所であっても、大径孔部の寸法を許容される寸法にして小径孔部の寸法を適宜設定することで、所望する作用力を得るための受圧面の面積を容易に設定することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明の効果に加え、ボルトに収装孔の小径孔部に収装するロッド部を有し、ロッド部をシリンダ本体と固定し、受圧面へ作用する液体圧力に基づく作用力でロッド部を伸長可能に設けた。このため、ボルトは機械部品に螺合するねじ部に影響を及ぼすことなく、ロッド部の径寸法や長さ寸法を適宜設定できて用途に応じた最適の伸長を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示した張力装置の縦断面図である。
【図2】図1の作動状態を示した縦断面図である。
【図3】図2とは異なる作動状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1は張力装置で、2つの機械部品2、3を結合するためのボルト4を備える。ボルト4は一方の機械部品3に備えたナット7に螺合するねじ部5を軸方向の一端部に形成すると共に、ロッド部6を軸方向の他端部に形成している。ロッド部6は軸方向の端部に、拡径した大径部8と、第2ねじ部10と、図示しない工具を係合する横断面が略四方形の工具係合部11とを順次連設して有し、作用力の付与により軸方向へ伸長可能に設けている。12はボルト4に有するピストンで、ねじ部5とロッド部6との間に固定ナット13により固定している。
【0013】
14は円筒状のシリンダ本体で、ボルト4を収装する収装孔15を軸方向へ貫通形成している。収装孔15は軸方向の一端部に開口する大径孔部16と大径孔部16より小径の小径孔部17と軸方向の他端部に開口するねじ孔部18とを連設して構成している。ボルト4は、ピストン12をシリンダ本体14の収装孔15の大径孔部16に軸方向へ摺動自在に液密に嵌挿し、ロッド部6を小径孔部17に径方向へ間隙を有して収装し、大径部8を小径孔部17へ液密に摺接し、第2ねじ部10をねじ孔部18に位置し、工具係合部11をシリンダ本体14の軸方向他端部より突出し、ねじ部5をシリンダ本体14の軸方向一端部より突出している。
【0014】
19はボルト4をシリンダ本体14に固定する筒状の固定ナットで、外周部に形成の雄ねじ部を収装孔15のねじ孔部18に螺着すると共に内周部に形成の雌ねじ部をボルト4の第2ねじ部10に螺着している。20はシリンダ本体14に有する蓋部材で、シリンダ本体14の軸方向一端部に取付けて収装孔15の大径孔部16の開口を閉塞してボルト4のねじ部5を貫通すると共に、他方の機械部品2に接離自在に設けている。
【0015】
21はシリンダ本体14の内部に有する室で、ロッド部6とロッド部6の大径部8とピストン12と収装孔15の大径孔部16、小径孔部17とで液密に区画形成し、液体を供給排出する。21Aは室21に供給する液体の圧力が作用する受圧面で、収装孔15の大径孔部16と小径孔部17との連設段部に形成し、作用する液体圧力に基づく作用力でボルト4のロッド部6を伸長する。22は室21に液体を供給排出する流路で、室21に接続してシリンダ本体14に穿設し、図示しない液圧源と低圧側のタンクとに切換える切換手段を備える配管を着脱自在に取り付ける。
【0016】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図1に示す状態は、ボルト4のねじ部5を一方の機械部品3のナット7に螺合し、シリンダ本体14の蓋部材20は他方の機械部品2に当接している。そして、室17には液体を供給しておらず、ロッド6は伸長していない。
【0017】
この状態で、図2に示す如く、流路22より室21に液体を供給すると、受圧面21Aに液体圧力が作用し、ボルト4のロッド部6は受圧面21Aに作用する液体圧力に基づく作用力で図示上方向へ軸方向に伸長する。固定ナット19でロッド部6の第2ねじ部10と固定したシリンダ本体14は、ロッド部6の軸方向への伸長に応じて図2の上方向へ移動し、蓋部材20が他方の機械部品2から離間する。
【0018】
この状態で、図3に示す如く、ボルト4の工具係合部11に図示しない工具を係合し、蓋部材20が他方の機械部品2に当接するまで回動操作すると、ボルト4とシリンダ本体14がともに回動しながら図示下方向へ移動する。そして、蓋部材20が他方の機械部品2に当接すると回動操作を停止し、室21の液体を流路22から排出すると、軸方向に伸長していたボルト4は、受圧面21Aに作用していた液体圧力に基づく作用力が解除されて縮み方向に引張応力が作用し、ねじ部5がナット7に螺合する一方の機械部品3と蓋部材20との間で他方の機械部品2を強く挟持し、一方の機械部品3と他方の機械部品2を強固に結合する。
【0019】
この状態で、工具係合部11に工具を係合して前述と逆方向に回動操作すると、ボルト4とシリンダ本体14がともに回動しながら図示上方向へ移動して、図1の状態に復帰し、一方の機械部品3と他方の機械部品2との強固な結合を解除する。
【0020】
かかる作動において、シリンダ本体14内部の室21に液体を供給して受圧面21Aに液体圧力を作用し、ボルト4のロッド部6を受圧面21Aへ作用する液体圧力に基づく作用力で軸方向へ伸長し、シリンダ本体14はボルト4のロッド部6の伸長に応じて軸方向へ移動して一端部に有する蓋部材20を他方の機械部品2から離間する。そして、シリンダ本体14の一端部に有する蓋部材20を他方の機械部品2に当接するまで、ボルト4を回動操作し、室21の液体を排出すると、伸長したボルト4のロッド部6へ縮み方向に引張応力が作用してシリンダ本体14の一端部に有する蓋部材20を他方の機械部品2に強く押し付けて一方の機械部品3と他方の機械部品2を強固に結合する。このため、ボルト4のロッド部6の伸長に応じて軸方向へ移動するシリンダ本体14の内部に、受圧面21Aへ圧力を作用する液体を供給排出する室21を液密に区画形成するから、ボルト4を機械部品3に備えるナット7に螺合しない状態で、液体圧力の作用で伸長可能にでき、適用場所を広範囲にすることができる。
【0021】
また、シリンダ本体14にはボルト4を収装する収装孔15を穿設し、ボルト4のねじ部5をシリンダ本体14の一端部から突出し、収装孔15は小径孔部17と大径孔部16とを連設して成し、小径孔部17と大径孔部16との連設段部に受圧面21Aを形成した。このため、径方向寸法が制約される場所であっても、大径孔部16の寸法を許容される寸法にして小径孔部17の寸法を適宜設定することで、所望する作用力を得るための受圧面21Aの面積を容易に設定することができる。
【0022】
また、ボルト4に収装孔15の小径孔部17に収装するロッド部6を有し、ロッド部6をシリンダ本体14と固定し、受圧面21Aへ作用する液体圧力に基づく作用力でロッド部6を伸長可能に設けた。このため、ボルト4は機械部品3のナット7に螺合するねじ部5に影響を及ぼすことなく、ロッド部6の径寸法や長さ寸法を適宜設定できて用途に応じた最適の伸長を得ることができる。
【0023】
なお、一実施形態では、機械部品3にナット7を備え、ナット7にボルト4のねじ部5を螺合したが、機械部品に雌ねじ部を形成し、この雌ねじ部にボルトのねじ部を螺合しても良い。また、ボルト4の伸長方向に液体圧力を作用する受圧面21Aを、収装孔15の小径孔部17と大径孔部16との連設段部に形成したが、ボルト4の伸長方向に液体圧力を作用する受圧面をボルト4のロッド部6の大径部8との連設段部に形成しても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
2、3:機械部品
4:ボルト
5:ねじ部
6:ロッド部
14:シリンダ本体
21:室
21A:受圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の機械部品を有し、一方の機械部品に螺合するねじ部を一端部に有するボルトを備え、一端部を他方の機械部品に接離自在に設けて内部に液体を供給排出する室を液密に区画形成するシリンダ本体を設け、シリンダ本体をボルトと固定して設け、室には供給した液体圧力をボルトの伸長方向へ作用する受圧面を形成し、ボルトは受圧面に作用する液体圧力に基づく作用力で軸方向へ伸長可能に設け、シリンダ本体はボルトの伸長に応じて一端部を他方の機械部品から離間する方向へ移動可能に設けたことを特徴とする張力装置。
【請求項2】
前記シリンダ本体には前記ボルトを収装する収装孔を穿設し、前記ボルトの前記ねじ部を前記シリンダ本体の前記一端部から突出して設け、収装孔は小径孔部と大径孔部とを連設して成し、小径孔部と大径孔部との連設段部に前記受圧面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の張力装置。
【請求項3】
前記ボルトは前記収装孔の前記小径孔部に収装するロッド部を有し、ロッド部を前記シリンダ本体と固定し、前記受圧面へ作用する液体圧力に基づく作用力でロッド部を伸長可能に設けたことを特徴とする請求項2に記載の張力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−159137(P2012−159137A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19133(P2011−19133)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000241267)豊興工業株式会社 (63)
【Fターム(参考)】