説明

強加工方法及び強加工装置

【課題】本発明は、材料の断面積の減少(サイズダウン)を伴うことなく、金属材料に対し高いひずみを効果的に導入することができる、工業的に実用可能な強加工方法及び強加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】空洞の横断面積が加工対象の金属材料の横断面積に等しく、且つ、各空洞の横断面の形状が互いに異なる複数の金型を用意し、これらの金型を順次用いて金属材料を複数回にわたって圧縮成形する。本発明の方法によれば、材料のサイズを維持したまま、金属材料の横断面方向にひずみを重層的に付与することができる。また、本発明の強加工方法は、既存の型鍛造装置を用いて容易に実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強加工方法及び強加工装置に関し、より詳細には、材料の断面積の減少を伴うことなく、金属材料に対し高いひずみを効果的に導入することができる強加工方法及び強加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属材料において二律背反の関係にあると考えられていた強度と靭性は、金属の結晶粒を微細化することによって、その両方が好適に向上することが発見された。これを受け、金属材料の結晶粒を微細化するための加工法が種々検討されており、そのような加工法のひとつとして、強ひずみ加工法を挙げることができる。強ひずみ加工法とは、金属材料に対し、大きな塑性ひずみを付与することによって、結晶粒をナノサイズまで微細化するというものである。この点につき、非特許文献1は、代表的な強ひずみ加工法である、Equal Channel Angular Pressing法(ECAP法)を開示する。
【0003】
図8は、ECAP法を概念的に示す図である。図8に示されるように、ECAP法は、大きく屈曲したパスを有する金型60を通して金属材料62を押し出すことによって、屈曲部64において金属材料62に大きなせん断ひずみを与えるというものである。ECAP法においては、加工によって材料の径が変わらないため、何度でも上記プロセスを繰り返すことができ、金属材料62の断面積の減少を伴うことなく、金属材料62に大きなひずみを付与することができる。しかしながら、ECAP法においては、ひずみを与える方向が1方向しかないため、材料の向きを変え何度も加工を繰り返す非連続的プロセスとならざるを得ず、長尺物の材料に適用することができないという問題があった。さらにECAP法の最も深刻な問題は、金属材料62と金型60のパスの壁面との摩擦力に対抗するために非常に大きな加工力を要することであり、この点が工業的な実用化を妨げていた。
【0004】
この点につき、同じく金属材料の断面積の減少(サイズダウン)を伴わない強ひずみ加工の別法として、非特許文献2は、加熱とねじり変形を組合わせたSevere Torsion Straining Process法(STSP法)を開示する。図9は、STSP法を概念的に示す図である。図9に示されるように、STSP法においては、電流コイル70の中に円柱状の金属材料72を通しつつ、電流コイル70の両端近傍から冷却水74を放出することによって、金属材料72に対して局所的な誘導加熱を行なうと同時に、金属材料72を図中の矢印R方向に捻ることによって、加熱部分に集中的に塑性ひずみを生じさせる。この状態で金属材料72を長手方向に順次移動させことによって、金属材料72全長にわたって塑性ひずみを付与することができる。
【0005】
この方法は、金型を必要としないため、摩擦力に起因する加工力の増大の問題が回避され、また、連続的プロセスであるため、長尺物に対し大きなひずみを連続的に付与することができる点で、工業的な実用性に対し一定の可能性を示すものであった。しかしながら、加熱効果を利用して結晶粒を微細化する上記方法は、熱の影響を受けて再結晶しやすい材料には適用することができないため、適用材料が限定されるという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Segal,V.M.,Reznikov,V.I.,Drobyshevsky,A.E.and Kopylov,V.I.:Russian Metallurgy,1,p.99(1981)
【非特許文献2】K.Nakamura,K.Neishi,K.Kaneko,M.Nakagaki and Z.Horita:Materials Transactions 45, 12,3338-3342,(2004) " Development of Severe Torsion Straining Process forRapid Continuous Grain Refinement "
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、材料の断面積の減少を伴うことなく、金属材料に対し高いひずみを効果的に導入することができる、工業的に実用可能な強加工方法及び強加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、金属材料に対し高いひずみを効果的に導入することができる、工業的に実用可能な強加工方法につき検討した結果、空洞の横断面の面積(以下、横断面積という)が加工対象の金属材料の横断面積に等しく、且つ、各空洞の横断面の形状が互いに異なる複数の金型を用意し、これらの金型を順次用いて金属材料を複数回にわたって圧縮成形することによって、金属材料のサイズを減少させることなく、その内部に塑性ひずみを重層的に蓄積することができることを見出し、本発明に至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、異なる複数の金型を順次用いて金属材料を圧縮成形する強加工方法であって、前記複数の金型が備える空洞は、その横断面積がいずれも前記金属材料の横断面積に等しく、且つ、その横断面の形状が互いに異なることを特徴とする強加工方法が提供される。本発明においては、前記空洞を円柱状または角柱状とすることができ、前記空洞の長さを前記金属材料の長さに等しくすることができる。また、本発明においては、前記空洞の両端を開放したものとすることができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、円柱状または角柱状の長尺物の金属材料を強加工する装置であって、加工軸方向に並設された複数の金型と、前記金属材料を前記複数の金型に対して送り出す搬送手段と、前記搬送手段が前記金属材料を送り出す度に、前記複数の金型を加圧して前記金属材料を圧縮成形する加圧手段とを備え、前記複数の金型が備える空洞は、いずれも両端が開放された円柱状または角柱状であって、その横断面積がいずれも前記金属材料の横断面積に等しく、且つ、隣接する金型が備える空洞の横断面の形状が互いに異なることを特徴とする装置が提供される。本発明においては、前記複数の金型の前記空洞は、いずれも同じ長さを有し、前記搬送手段の1回の送り出し長さは、前記空洞の長さに等しいものとすることができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、金属材料を一つの金型を用いて繰り返し圧縮成形することによって強加工する方法であって、前記金型が備える空洞は、その横断面積が前記金属材料の横断面積に等しく、且つ、その横断面の形状が前記金属材料の横断面の形状と異なる正円形以外の形状であり、2回目以降の圧縮成形工程は、圧縮成形後の前記金属材料を前記金型から取り出し、長手方向軸回りに回転させた状態で再び前記金型に挿嵌して圧縮成形する工程であることを特徴とする強加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明によれば、材料の断面積の減少を伴うことなく、金属材料に対し高いひずみを効果的に導入することができる、工業的に実用可能な強加工方法及び強加工装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の強加工方法に用いる金型を示す図。
【図2】本実施形態の強加工方法のスケジュールを示す図。
【図3】本実施形態の強加工方法のスケジュールを示す図。
【図4】本実施形態の強加工方法のスケジュールを示す図。
【図5】本実施形態の強加工方法のスケジュールを示す図。
【図6】両端が開放された金型を示す図。
【図7】本実施形態の強加工方法のスケジュールを示す図。
【図8】ECAP法を概念的に示す図。
【図9】STSP法を概念的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0015】
本発明は、円柱状または角柱状の金属材料を加工するのに適した新規な強加工方法を提供する。本発明の強加工方法について、正円形の横断面を有する棒状の金属材料を加工する場合の実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態において、横断面とは、長手方向に垂直な断面をいう。図1は、本実施形態の強加工方法に用いる金型を示す。本実施形態においては、正円形の横断面を有する棒状の金属材料10を、図1に示す3種類の金型(A、B、C)を使用して4パスで強加工する。
【0016】
金型Aは、上金型12と下金型14から構成され、上金型12および下金型14には、それぞれ上孔型12cおよび下孔型14cが形成されている。同様に、金型Bは、上金型22と下金型24から構成され、上下金型には、それぞれ上孔型22cおよび下孔型24cが形成されており、金型Cは、上金型32と下金型34から構成され、上下金型には、それぞれ上孔型32cおよび下孔型34cが形成されている。
【0017】
図1においては、金型A〜Cの上部に、それぞれの上下金型が当接した状態における断面図を示している。金型Aは、上下金型が当接することによって、上孔型12cおよび下孔型14cが正八角形の横断面Rを有する角柱状の空洞を形成するように構成されている。同じく、金型Bは、上下金型が当接することによって、上孔型22cおよび下孔型24cが扁平した八角形の横断面Rを有する角柱状の空洞を形成するように構成されており、金型Cは、上下金型が当接することによって、上孔型32cおよび下孔型34cが正円形の横断面Rを有する円柱状の空洞を形成するように構成されている。
【0018】
本実施形態においては、金型A〜Cに形成される各空洞は、その横断面(R、R、R)の形状が互いに異なるように構成されている。一方、各空洞は、その横断面(R、R、R)の面積がいずれも加工対象である金属材料10の横断面(R)の面積と等しくなるように構成されており、その長さLがいずれも金属材料10の長さLに等しくなるように構成されている。以上、本実施形態の強加工方法に用いる金型について説明してきたが、次に、これらの金型を使用した金属材料10の強ひずみ加工のスケジュールについて、図2〜5を参照して、以下詳細に説明する。
【0019】
まず、図2に示すように、正円形の横断面を有する棒状の金属材料10を、金型Aの下金型14に形成された下孔型14cに嵌挿する(1)。次に、金属材料10の上部が上孔型12cに嵌合するように上金型12をセットする(2)。この状態から上金型12を下金型14に当接するまでプレスする(3)。その結果、金属材料10の横断面は正円形から正八角形に塑性変形し、この変形に伴って、金属材料10の内部に横断面内でのひずみが生じる。
【0020】
続いて、金型をAからBに切り換えた後、図3に示すように、横断面が正八角形となった金属材料10を、金型Bの下金型24に形成された下孔型24cに嵌挿する(4)。次に、金属材料10の上部が上孔型22cに嵌合するように上金型22をセットする(5)。この状態から上金型22を下金型24に当接するまでプレスする(6)。その結果、金属材料10の横断面は正八角形から扁平した八角形に塑性変形し、この変形に伴って、金属材料10の内部にさらに横断面内でのひずみが追加される。
【0021】
続いて、金型をBからAに切り換えた後、図4に示すように、横断面が扁平した八角形となった金属材料10を、再び金型Aの下金型14に形成された下孔型14cに嵌挿する。なお、この際、金属材料10が下孔型14c内に収まるように、金型Bから取り出したときの状態から金属材料10を長手方向軸まわりに90°回転させて下孔型14cに嵌挿する(7)。次に、金属材料10の上部が上孔型12cに嵌合するように上金型12をセットする(8)。この状態から上金型12を下金型14に当接するまでプレスする(9)。その結果、金属材料10の横断面は扁平した八角形から正八角形に塑性変形し、この変形に伴って、金属材料10の内部にさらに横断面内でのひずみが追加される。
【0022】
続いて、金型をAからCに切り換えた後、図5に示すように、横断面が再び正八角形となった金属材料10を、金型Cの下金型34に形成された下孔型34cに嵌挿する(10)。次に、金属材料10の上部が上孔型32cに嵌合するように上金型32をセットする(11)。この状態から上金型32を下金型34に当接するまでプレスして、加工を終了する(12)。その結果、金属材料10の横断面は正八角形から加工前の正円形に塑性変形し、この変形に伴って、金属材料10の内部にさらに横断面内でのひずみが追加される。
【0023】
以上、図2〜5を参照して説明したように、本実施形態の強加工方法においては、金型を変える度に金属材料10の横断面形状が変化し、これに伴って、金属材料10の内部の横断面内でのひずみが生じる。しかしながら、1種類の金型による圧下方向は横断面方向で一様ではないため、各パス単体で見れば、そこで発生したひずみは均質ではない。この点につき、本実施形態においては、互いに横断面の形状が異なり、且つ、その横断面積の等しい複数の孔型を使用して金属材料10を複数回にわたって圧縮成形することによって、金属材料10の内部の横断面において、異なる方向からひずみを重層的に付与する。
【0024】
本実施形態の強加工方法によれば、その加工過程において、金属材料10の横断面積が減少しないため、金属材料10の大きさを維持するためにパスの回数を制限する必要がなく、必要に応じて何度でも工程を繰り返すことができ、パスを重ねる度にひずみを蓄積することができる。すなわち、本実施形態の強加工方法によれば、金属材料10のサイズを減少させることなく、その内部に大きなひずみを均一に発生させることが可能になる。また、本実施形態の強加工方法は、従来のECAP法に比べてその加工力が格段に小さいため、既存の型鍛造装置を用いて容易に実施することができる。
【0025】
なお、上述した実施形態においては、正円形の横断面を有する棒状の金属材料に対して、3種類の孔型を用いて4工程で加工する形態について説明したが、本発明は、孔型の横断面の形状および圧縮成形の工程数をこれに限定するものではない。本発明においては加工対象材料の変形特性(加工硬化、結晶系、集合組織など)を考慮した上で、高いひずみを均一に付与することができるように、用いる孔型の横断面の形状、当該横断面の形状の変遷の態様、ならびに圧縮成形の工程数を最適化することが好ましい。また、上述した実施形態においては、金属材料の加工前の横断面の形状と最終加工後の横断面の形状とが等しい態様を示したが、本発明においては、加工後の横断面の最終形状については適宜決定することができ、最終工程における孔型の形状を加工前の金属材料の横断面の形状と異なるものにすることによって、素材形状と加工後の最終形状を異ならしめることもできる。
【0026】
以上、本発明を、孔型の長さが加工対象の金属材料の長さと等しく構成された密閉型の金型を使用する実施形態をもって説明したが、本発明の強加工方法に用いることのできる金型は、密閉型に限定されるものではなく、孔型(空洞)の両端が開放された金型を用いて本発明の強加工方法を実施することもできる。
【0027】
図6は、孔型の両端が開放された金型A’、金型B’、および金型C’について示す。図6に示した金型A’、金型B’、および金型C’は、それぞれ、図1に示した金型A、金型B、および金型Cの各孔型の両端を開放したものであり、金型A’〜C’の各孔型の横断面の形状およびその面積については、図1について説明したのと同様である。加工対象となる金属材料が長尺物である場合、金属材料と金型との間に大きな摩擦抵抗が生じるため、孔型(空洞)の両端が開放された金型を用いて圧縮成形しても金属材料は長手方向に伸長されない。したがって、長尺物の金属材料に本発明の強加工方法を適用する場合には、図6に示したような開放型の金型を用いることによって、強加工を連続プロセスとして行なうことができる。以下、図6および図7を参照して、正円形の横断面を有する長尺物の金属材料の強ひずみ加工を連続的に行なうプロセスについて説明する。
【0028】
図7は、強ひずみ加工を連続プロセスとして行なう強加工装置50による強加工方法のスケジュールを示す。強加工装置50においては、金型A’〜C’が加工軸方向に並設されている。具体的には、紙面左から、金型A’、金型B’、金型A’、金型C’の順番で配置されており、左から3番目の金型A’は、図6に示すように1番目の金型A’に対して加工軸方向に90°回転した状態で配置されている。また、金型A’〜C’は、その長手方向の長さLが等しく構成されている。さらに、強加工装置50は、長尺物の金属材料10を金型A’〜C’に対して送り出すための図示しない搬送手段を備える。
【0029】
本実施形態においては、長尺物の金属材料10を金型A’〜C’に対して「長さL」づつ送り出す度に金型A’〜C’を加圧プレスする工程を繰り返す。図7(1)は、長尺物の金属材料10を強加工装置50に導入して4パス目の加圧プレスを実行している状態を示し、図7(2)は、4パス目の加圧プレスが終了した際の長尺物の金属材料10を示している。図7(2)に示すように、4パス目が終了した時点で、長尺物の金属材料10は5つの加工状態を有しており、左端の1/5が未加工の状態、左から2番目の1/5が1パス終了した状態(正円形→正八角形)、左から3番目の1/5が2パス終了した状態(正円形→正八角形→扁平八角形)、左から4番目の1/5が3パス終了した状態(正円形→正八角形→扁平八角形→正八角形)、そして、左から5番目の1/5が4パス終了した状態(正円形→正八角形→扁平八角形→正八角形→正円形)となっている。
【0030】
次に、図7(2)に示した状態から、長尺物の金属材料10は、「長さL」分、白抜き矢印の方向に送り出した後、図7(3)に示すように、5パス目の加圧プレスが実行される。図7(4)は、5パス目の加圧プレスが終了した長尺物の金属材料10を示している。図7(4)に示すように、5パス目が終了した時点で、長尺物の金属材料10は4つの加工状態を有しており、左端の1/5が1パス終了した状態(正円形→正八角形)、左から2番目の1/5が2パス終了した状態(正円形→正八角形→扁平八角形)、左から3番目の1/5が3パス終了した状態(正円形→正八角形→扁平八角形→正八角形)、そして、左から4番目の2/5が4パス終了した状態(正円形→正八角形→扁平八角形→正八角形→正円形)となっている。以下、上述したのと同様の工程を繰り返すことによって、最終的には、長尺物の金属材料10の全長にわたって、4パスの加工が実施されることになる。
【0031】
なお、図7は、搬送手段の1回の送り出し長さが金型(すなわち、金型が備える空洞)の長さLに等しい場合について示したが、これに限定されるものではなく、本発明における搬送手段の送り出し長さは、金型(空洞)の長さLを超えない長さであればよく、金型(空洞)の長さLよりも短い送り出し長さを採用することもできる。また、図7は、金型(空洞)の長さLが全て等しい場合について示したが、本発明における金型(空洞)の長さLは、それぞれが異なっていてもよく、その場合には、搬送手段の送り出し長さは、一番短い金型(空洞)の長さLを超えない長さに設定すればよい。以上、説明した方法によれば、長尺物の金属材料に対して、連続的に強ひずみ加工を施すことが可能になり、作業のスループットが格段に向上する。
【0032】
また、本発明においては、上述したのと同様の効果を奏する強加工を、一つの金型を用いて実施することもできる。この場合の金型は、上述した実施形態と同様に、備える空洞の横断面積が金属材料の横断面積に等しく、且つ、その横断面の形状が加工前の金属材料の横断面の形状と異なる正円形以外の形状であればよい。この実施形態においては、当該金型を使用して初回の圧縮成形をした後、この圧縮成形後の金属材料を金型から取り出し、長手方向軸回りに所定角度回転させた状態で再び同じ金型に挿嵌して圧縮成形する。2回目以降の圧縮成形工程は、この作業の繰り返しとなる。例えば、正円形の横断面を有する棒状の金属材料を、楕円形の横断面を有する空洞を備えた金型で圧縮成形をした後、2回目以降は、楕円柱状になった金属材料を、パスを重ねる度に、長手方向軸回りに90°回転させて同じ金型で圧縮するという工程を繰り返す。このような方法によって、最終的に、強ひずみを付与された楕円形の横断面を有する金属材料を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上、説明したように、本発明によれば、金属材料に対し高いひずみを効果的に導入することができる新規な強加工方法および強加工装置が提供される。本発明によって、強ひずみ加工の工業化への道が開かれることが期待される。
【符号の説明】
【0034】
10…金属材料、12…上金型、14…下金型、22…上金型、24…下金型、32…上金型、34…下金型、50…強加工装置、60…金型、62…金属材料、64…屈曲部、70…電流コイル、72…金属材料、74…冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の金型を順次用いて金属材料を圧縮成形する強加工方法であって、
前記複数の金型が備える空洞は、その横断面積がいずれも前記金属材料の横断面積に等しく、且つ、その横断面の形状が互いに異なることを特徴とする
強加工方法。
【請求項2】
前記空洞は、円柱状または角柱状である、請求項1に記載の強加工方法。
【請求項3】
前記空洞の長さは、前記金属材料の長さに等しい、請求項2に記載の強加工方法。
【請求項4】
前記空洞は、その両端が開放されている、請求項1〜3にいずれか1項に記載の強加工方法。
【請求項5】
円柱状または角柱状の長尺物の金属材料を強加工する装置であって、
加工軸方向に並設された複数の金型と、
前記金属材料を前記複数の金型に対して送り出す搬送手段と、
前記搬送手段が前記金属材料を送り出す度に、前記複数の金型を加圧して前記金属材料を圧縮成形する加圧手段とを備え、
前記複数の金型が備える空洞は、いずれも両端が開放された円柱状または角柱状であって、その横断面積がいずれも前記金属材料の横断面積に等しく、且つ、隣接する金型が備える空洞の横断面の形状が互いに異なることを特徴とする
装置。
【請求項6】
前記複数の金型の前記空洞は、いずれも同じ長さを有し、前記搬送手段の1回の送り出し長さは、前記空洞の長さに等しい、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
金属材料を一つの金型を用いて繰り返し圧縮成形することによって強加工する方法であって、
前記金型が備える空洞は、その横断面積が前記金属材料の横断面積に等しく、且つ、その横断面の形状が前記金属材料の横断面の形状と異なる正円形以外の形状であり、
2回目以降の圧縮成形工程は、圧縮成形後の前記金属材料を前記金型から取り出し、長手方向軸回りに回転させた状態で再び前記金型に挿嵌して圧縮成形する工程であることを特徴とする
強加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−11252(P2011−11252A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159813(P2009−159813)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】